JP2004294201A - 振動型角速度センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】振動体を駆動するときの駆動周波数が振動体の温度特性等の影響により変動したとしても、コリオリ力成分がその影響を受けることなく角速度を検出することができるようにする。
【解決手段】F/V変換回路15が増幅回路13の検知信号を周波数電圧変換し、この変換された直流電圧に応じて振幅を調整する。所定の共振周波数f0に対する駆動周波数fzとの差に応じて振幅を調整するため、駆動周波数fzが振動体2の温度特性に応じて変化したとしても、角周波数ωおよび最大振幅Lの積の値を略一定にする方向で調整することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動体と、この振動体の振動状態を交流信号として検知しこの検知信号を調整制御して振動体に与え振動体を駆動周波数で駆動させる駆動手段とを備え、前記振動体を駆動させ振動させることに基づいて角速度を検出する振動型角速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、振動型角速度センサは、例えば車両(例えば、自動車)の旋回,横滑り等を検出するための用途に使用されている。例えば車両安定制御システムや四輪舵角制御システムでは、この振動型角速度センサにより検出される角速度信号等に基づいて車両の横滑りを検出することで、車両の異常状態を検出してブレーキを制御し車両の安定走行を可能にしている。
【0003】
このような振動型角速度センサは振動体を備えており、この振動体を駆動させ振動させることに基づいてその振動方向と直交する方向に生じるコリオリ力の成分信号を検知することにより角速度を検出するようになっている。一般的に、物体の質量mのX軸方向の速度をvベクトル、そのv方向に直交する方向をY軸方向とし、その両軸に直交する方向をZ軸方向とし、このとき、Z軸周りに角速度Ωが生じると、周知のように、コリオリの力Fcが、
Fc = 2・m・(Ω×v) …(1)
としてY軸方向に働く(ΩはZ軸方向のベクトル、「×」は外積を表わす)。このため、振動体をX軸方向に振動させY軸方向に生じるコリオリ力成分信号を検出することにより角速度を検出することができる。
【0004】
さて、このようにして角速度を検出する振動型角速度センサの一例が、本願出願人により出願された特許文献1に開示されている。この角速度センサ1の概要を示す図4において、振動体2を駆動系回路3によりX軸方向に振動させ、Y軸方向に生じるコリオリ力成分信号を検知系回路4により検知し角速度を検出するようになっているが、このとき、特許文献1に開示されている駆動系回路3では、振動体2の振動状態を交流信号として検知し振幅制御回路5によりこの検知信号の振幅を供給電圧6に応じて調整制御し、この信号を90度移相回路7が90度移相した後、反転増幅回路8が反転増幅し、互いに反転した信号が再度振動体2に与えられ、振動体2をX軸方向に駆動周波数fzで駆動させ振動させている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−44540号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報の技術により供給電圧6に応じて調整制御された信号を振動体2に与えたとしても、振動体2の温度特性等の影響により所定の共振周波数f0に対して駆動周波数fzの変動が生じると、駆動周波数fzの変動に起因して生じるコリオリ力成分の変動に対処できないことが確認されている。すなわち、駆動周波数fzの変動に起因して生じるコリオリ力の変動成分を理論的に説明すると、Lを変位の最大振幅とし、ωを振動体2の振動時の角速度とし、tを時間として、
l = L・sinωt …(2)
で振動体2のX軸方向の振動変位lを表わしたとき、(1)式に示す振動体2の速度vは(2)式の振動変位lの微分成分のため、
v = L・ω・cosωt …(3)
で表わされる。この(3)式を(1)式に代入すると、Y軸方向に働くコリオリ力成分Fcは、
Fc = 2・m・|Ω|・L・ω・cosωt …(4)
で表わされる。したがって、コリオリ力成分は、振動体2の振動時の角速度ωに比例するように得られるが、振動体2を振動させるための駆動周波数fzが変化すると、それに応じて角速度ω=2πfzが変化し、コリオリ力成分が変化する。したがって、図4において、検知系回路4によりコリオリ力成分が検知されたとしても、そのコリオリ力成分は駆動周波数fzに依存するため、駆動周波数fzが何らかの影響により変動すると、この変動に対処することができないことが確認されている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、振動体を駆動するときの駆動周波数が振動体の温度特性等の影響により変動したとしても、コリオリ力成分がその影響を受けることなく角速度を検出することができる振動型角速度センサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明によれば、駆動手段は、振動体の振動状態を交流信号として検知し、所定の共振周波数に対する駆動周波数との差に応じて検知信号の振幅を調整して振動体に与えることにより振動体を駆動させるため、振動体は当該最大振幅Lで振動する。すなわち、振動体の温度特性等の影響により、駆動周波数fzが所定の共振周波数f0に対して増減したとしても、最大振幅Lを変化させることができるので、(4)式の最大振幅Lと角速度ωの積を略一定にする方向で調整することができ、この影響を受けることなくコリオリ力成分Fcを検出することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を圧電方式の振動型角速度センサに適用した第1の実施形態について、図1を参照しながら説明する。
図1は、振動型角速度センサにおける振動体の構造および電気的構成を概略的に示している。尚、従来技術と同一の構成については同一符号を付している。この振動型角速度センサ11は、ヨーレートセンサとしての用途として用いられる場合には、車両(例えば自動車)が旋回するときの角速度を検出するように用いられる。振動型角速度センサ11は振動体2を有しているが、この振動体2は、例えばPZTセラミックスによる圧電体を主として構成され、図1に示すように、一対のアーム部が対向配置されX軸方向に配列された状態で基端部側で連結されて音叉形状に形成されている。
【0010】
この振動体2の一対のアーム部には、それぞれ、前面(図示表面側)にX軸方向の振動状態を交流信号として検知するための検知用電極2a,2aや、駆動電圧を印加しX軸方向に振動体2を振動させるための駆動用電極2b,2bが形成されており、側面には、Y軸方向の振動状態を交流信号として検知するための検知用電極2c,2cが形成されている。また、図示しないが、後面にはGND電極が形成されており基準電位を得ることができる。尚、図1に示すように、X,Y,Z軸は互いに直交している。
【0011】
駆動手段としての駆動系回路12は、増幅回路13と、この増幅回路13から増幅信号が与えられる全波整流回路14およびF/V変換回路(変換回路)15と、全波整流回路14およびF/V変換回路15から信号が与えられる乗算回路16と、基準電圧発生回路17と、乗算回路16および基準電圧発生回路17から信号が与えられる差動増幅回路18と、差動増幅回路18および増幅回路13から信号が与えられる乗算回路19と、乗算回路19の出力結果を90度移相する90度移相回路7と、この90度移相回路7の出力結果を反転増幅する反転増幅回路8とから構成されている。増幅回路13は、検知用電極2a,2aから信号(検知信号)を検知して増幅し、全波整流回路14,F/V変換回路15および乗算回路19に増幅信号を与えるようになっている。
【0012】
全波整流回路14は、増幅回路13の増幅信号を全波整流し、この結果として直流電圧を乗算回路16に与え、F/V変換回路15は、増幅回路13の増幅信号を周波数に比例するように周波数電圧変換し、この変換された直流電圧を乗算回路16に与える。乗算回路16は、全波整流回路14およびF/V変換回路15から与えられた直流電圧を乗算し、この結果を差動増幅回路18の反転入力端子(−入力)に与えるようになっている。そして、差動増幅回路18は、基準電圧発生回路17から非反転入力端子(+入力)に与えられた直流電圧と乗算回路16により乗算された直流電圧を差動増幅し、この結果を乗算回路19に与える。乗算回路19は、増幅回路13の増幅信号と差動増幅回路18の増幅信号を乗算し、90度移相回路7に与える。
【0013】
90度移相回路7は、乗算された結果を90度移相し、90度移相された信号を反転増幅回路8に与えるとともに、アーム部の基端部側の内側に形成された駆動用電極2bに与え、反転増幅回路8は、90度移相回路7により移相された信号を−1倍に増幅することにより逆位相にしてアーム部の基端部側の外側の駆動用電極2bに与えるようになっている。したがって、反転増幅回路8により反転された電圧がそれぞれ駆動用電極2b,2bに対して与えられるため、この駆動用電極2b,2bには互いに逆位相の電圧が与えられる。このようにして駆動系回路12が形成され、自励発振回路が構成されている。
【0014】
駆動用電極2b,2bは、振動体2の各アーム部のZ軸方向に沿って形成されているので、駆動系回路12により駆動電圧が駆動用電極2b,2bに与えられると、一対のアーム部の内側がZ軸方向に伸張するときには当該アーム部の外側がZ軸方向に短縮し、逆に一対のアーム部の内側がZ軸方向に短縮するときには当該アーム部の外側がZ軸方向に伸張する。したがって、振動体2の各アーム部の先端部はX軸方向に振動する。
【0015】
一方、このような駆動系回路12によりX軸方向に駆動させ、振動体2が振動した状態でZ軸周りに角速度Ωが働くと、(1)式によりコリオリ力がY軸方向に働く。このとき、振動体2がY軸方向に伸張/短縮して歪むため、振動体2の各アーム部の側面に形成された検知用電極2cに圧電効果により電荷が発生する。増幅部4aは、このときの各アーム部に発生する電荷の時間変化(電流)を検知し、i/v変換増幅した後、このとき増幅された各アーム部に対応する電圧を差動増幅し、同期検波回路4bに与える。同期検波回路4bはコリオリ力と同位相(もしくは逆位相)成分に同期して検波し、フィルタ回路4cに与える。フィルタ回路4cは、ローパスフィルタにより形成されておりDC成分をDC増幅回路4dに与える。DC増幅回路4dは、この成分をDC増幅し、この結果、角速度を検出するようになっている。
【0016】
上述構成の作用について、本発明に関連する部分について中心に説明する。駆動系回路12が駆動電圧を駆動用電極2b,2bに印加することで、所定の共振周波数f0で振動体2をX軸方向に振動させることができる。このとき、従来技術においては、この所望(所定)の共振周波数f0で振動体2を振動させても、振動体2の温度特性の影響により駆動周波数fzが共振周波数f0に対して変化してしまうという問題が生じている。
【0017】
本実施形態においては、図1の回路構成を採用することによりこの問題点を解決している。すなわち、振動体2が実際に振動するときの駆動周波数をfzとすると、自励発振回路が機能しているときには、増幅回路13によりこの駆動周波数fzの検知信号が増幅され、全波整流回路14により増幅信号が整流される。また、F/V変換回路15により増幅信号が周波数電圧変換されると、この直流電圧は駆動周波数fzに比例しているので、乗算回路16が全波整流回路14により全波整流された直流電圧と乗算することにより駆動周波数fzに依存した直流電圧が出力される。
【0018】
差動増幅回路18は、この直流電圧と基準電圧発生回路17の基準電圧との差を増幅し、乗算回路19は、この増幅信号と増幅回路13の増幅信号とを乗算するため、増幅回路13の増幅信号が駆動周波数fzに応じた振幅に調整され、90度移相回路7および反転増幅回路8を介して振動体2の駆動用電極2b,2bに与えられる。このようにして、振動体2のX軸方向(駆動軸方向)の振動状態を交流信号として検知し、この検知信号を調整制御して振動体2に与え振動体2を駆動周波数fzで駆動させて、所定の共振周波数f0に対する駆動周波数fzとの差に応じて振幅を調整し振動体2を駆動させている。
【0019】
したがって、振動体2の温度特性の影響により、実際に駆動する駆動周波数fzが所定の共振周波数f0に対して増減したとしても、その増減分に応じて振幅が調整された状態で駆動電圧が振動体2の駆動用電極2b,2bに与えられるので、振動体2の各アーム部のX軸方向の変位の最大振幅((4)式のL)を変化させることができる。このとき、上述した回路構成により、駆動周波数fzが変動したとしても角周波数ω(=2πfz)および最大振幅Lの積の値を略一定にする方向で調整することができるので、(4)式で表わされるコリオリ力成分は駆動周波数fzの変動の影響を極力受けることのない状態で検知系回路4により検知され、角速度を検出することができる。
【0020】
このような第1の実施形態によれば、F/V変換回路15が増幅回路13を介して検知信号を周波数電圧変換し、この変換された直流電圧に比例して振幅を調整することで所定の共振周波数f0に対する駆動周波数fzとの差に応じて振幅を調整でき、駆動周波数fzが振動体2の温度特性等に応じて変化したとしても、角周波数ωおよび最大振幅Lの積の値を略一定にする方向で調整することができ、コリオリ力成分を略一定に保つことができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図2および図3は、第2の実施形態の説明を示すもので、第1の実施形態と異なる部分は、F/V変換回路15および乗算回路16に代えて、利得が周波数に応じて変化する周波数領域で検知信号を増幅する増幅回路を設けたところにある。第1の実施形態と同一部分については同一符号を付してその説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
駆動手段としての駆動系回路30は、増幅回路13,増幅回路31,全波整流回路14,基準電圧発生回路17,差動増幅回路18,乗算回路19および反転増幅回路8を有している。
【0022】
増幅回路13は、検知用電極2aの検知信号を増幅し、乗算回路19に与えると共に増幅回路31に与えるように構成されている。図3は、増幅回路31の構成の一例を示している。増幅回路31は、その入力信号が並列接続されたコンデンサC1および抵抗R1を介してオペアンプOPの反転入力端子に与えられ、オペアンプOPの非反転入力端子がグランドに接続されるようになっていると共に、オペアンプOPの出力端子から抵抗R2を介して反転入力端子にフィードバックするように構成されている。抵抗R1および抵抗R2の抵抗値をR、コンデンサC1の容量値をCとすると、このとき、出力信号Voおよび入力信号Viの関係および電圧利得Gは、
【数1】
Figure 2004294201
で表わされる。したがって、所定の共振周波数f0近隣の周波数fで2πf×CR>>1となるように容量値Cおよび抵抗値Rを予め設定することで、電圧利得Gは角周波数ω(=2πf)に略比例するようになる。この増幅回路31の出力は全波整流回路14に与えられ、この結果が全波整流されて差動増幅回路18の反転入力端子に与えられる。尚、この増幅回路31の出力信号電圧Voは入力信号電圧Viに比較して略90度の位相ずれが生じる。
【0023】
この場合、振動体2の温度特性等の影響により実際に駆動する駆動周波数fzが所定の共振周波数f0に対して増減したとしても、その増減分に応じて振幅が変化した状態で、90度移相回路7および反転増幅回路8を介して振動体2の駆動用電極2b,2bに駆動電圧が与えられるので、振動体2の各アーム部のX軸方向の変位の最大振幅((4)式のL)を変化させることができる。このとき、駆動周波数fzが変動したとしても角周波数ω(=2πfz)および最大振幅Lの積の値を略一定にする方向で調整することができるので、(4)式で表わされるコリオリ力成分は駆動周波数fzの変動の影響を極力受けることのない状態で検知系回路4により検知され、角速度を検出することができる。
【0024】
このような第2の実施形態によっても、第1の実施形態と略同様の作用効果を有する。
【0025】
(他の実施形態)
本発明は、上述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような変形または拡張が可能である。
振動型角速度センサ11としては、車両が回転する角速度を検出するためのヨーレートセンサの他、横揺れ角速度を検出するためのロールレートセンサや、ピッチレートセンサにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す電気的構成図
【図2】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図3】(a)増幅回路の構成例を示す図、(b)位相特性図
【図4】従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
図面中、2は振動体、11は振動型角速度センサ、13は増幅回路、15はF/V変換回路、30は駆動系回路(駆動手段)を示す。

Claims (1)

  1. 振動体と、この振動体の振動状態を交流信号として検知しこの検知信号を調整制御して前記振動体に与え当該振動体を駆動周波数で駆動させる駆動手段とを備え、前記振動体を振動させることに基づいて角速度を検出する振動型角速度センサにおいて、
    前記駆動手段は、所定の共振周波数に対する前記駆動周波数との差に応じて前記検知信号の振幅を調整して前記振動体に与え前記振動体を駆動させるように構成されていることを特徴とする振動型角速度センサ。
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