JP2004292737A - エポキシ樹脂用硬化剤組成物 - Google Patents

エポキシ樹脂用硬化剤組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】保存安定性及び硬化性に優れ、さらに高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化物を形成することができる一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し得るエポキシ樹脂用硬化剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)(a)活性水素基を有するアミン化合物及び(b)ポリグリシジル化合物を反応させてなる付加反応物、並びに(B)脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物を含有してなることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂用硬化剤組成物に関し、詳しくは、アミン化合物及びポリグリシジル化合物を反応させてなる付加反応物、並びに脂環式炭化水素含有フェノール化合物を含有してなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物に関する。該エポキシ樹脂用硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物と混合することにより、常温では安定で、加熱することで硬化可能なエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エポキシ樹脂は、各種基材への接着性に優れており、また、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させた硬化物は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性等が比較的優れているため、広い分野、特に、塗料あるいは接着剤の分野で賞用されている。
【0003】
従来、エポキシ樹脂組成物は、使用直前に硬化剤や硬化促進剤を添加する二成分系が主流であった。二成分系は、常温あるいは低温において硬化させることができるという特徴を有しているが、その反面、使用直前に計量、混合しなければならならず、さらに可使時間が短く、自動機械への適用が困難である等、その使用条件が制限されるという欠点を有している。このような問題点を解消するために、一成分硬化性エポキシ樹脂組成物が望まれている。
【0004】
このような一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を得るためには、室温では反応しないが、加熱により反応を開始し硬化する性質を有する硬化剤、いわゆる潜在性硬化剤が必要である。潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、グアナミン類、メラミン、イミダゾール類等が提案されている。しかし、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、グアナミン類をエポキシ樹脂と混合した一成分硬化性エポキシ樹脂組成物は、保存安定性には優れているが、150℃以上の高温で長時間の硬化条件を必要とするという欠点を有している。また、これらの潜在性硬化剤と硬化促進剤とを併用して硬化時間を短縮することも広く行われているが、保存安定性が著しく損なわれるという欠点が生じてしまう。一方、二塩基酸ジヒドラジドやイミダゾール類を用いた場合は、比較的低温で硬化はするが、保存安定性に乏しい。三フッ化ホウ素アミン錯塩を用いた場合は、保存安定性に優れ且つ硬化時間が短いという長所があるが、耐水性に劣り、そして金属に対する腐食性を持つ等、それぞれに欠点を有している。
【0005】
さらに、イミダゾール類にエポキシ化合物を付加することで安定性を調整しようとする試みも行われている。例えば、下記特許文献1には、イミダゾール化合物とポリエポキシ化合物との反応物を潜在性硬化剤とすることが記載され、ポリカルボン酸やフェノールノボラックもともに反応し得ることが記載されている。また、下記特許文献2には、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂及びグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂を組合せてなるエポキシ樹脂に対し、ジアミノジフェニルスルホン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物を付加させたイミダゾール化合物、ホウ酸又はホウ酸エステル化合物及びフェノール系化合物を組合せて使用することが記載されている。しかしながら、これらの特許文献に記載されているようなエポキシ化合物とイミダゾール化合物との付加物を使用した場合には、硬化性と安定性とのバランスが十分満足できるエポキシ樹脂組成物は得られない。
【0006】
また、高い機械的強度、耐熱信頼性及び耐候信頼性が硬化物に要求される用途においては、ポリエポキシ化合物と組合せて使用した場合に、高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化物を形成し得るような硬化剤が求められているが、一成分硬化性エポキシ樹脂組成物でこのような硬化物を提供し得るものは未だ見出されていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、保存安定性及び硬化性に優れ、さらに高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化物を形成することができる一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し得るエポキシ樹脂用硬化剤組成物を提供することにある。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第4066625号明細書
【特許文献2】
特開平9−296024号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、イミダゾール化合物及びポリグリシジル化合物を反応して得られる付加反応物と脂環式炭化水素基含有フェノール化合物との混合物が、ポリエポキシ化合物と組合せることで、保存安定性及び硬化性に優れ、かつ硬化物が高いガラス転移温度を示す一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、(A)(a)活性水素基を有するアミン化合物及び(b)ポリグリシジル化合物を反応させてなる付加反応物、並びに(B)脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物を含有してなることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤組成物を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物について詳細に説明する。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物には、(A)(a)活性水素基を有するアミン化合物及び(b)ポリグリシジル化合物を反応させてなる付加反応物(以下、(A)成分ともいう)が使用される。(a)活性水素基を有するアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、メシチレン−2,6−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン;アジピン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド;イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0013】
これらのアミン化合物の中でも、下記一般式(I)で表されるイミダゾール化合物を使用することで、少量の使用でより高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化物が得られるため好ましい。
【0014】
【化3】
Figure 2004292737
【0015】
上記一般式(I)中、R、R及びRで表される炭素原子数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ビニル、アリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、アミノメチル、アミノプロピル等の基が挙げられる。R、R及びRで表されるアリール基としては、フェニル、ナフチル等の基が挙げられ、あるいはこれらは上記に例示したアルキル基によって1乃至4置換されることもできる。
【0016】
上記一般式(I)で表されるイミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−アミノプロピルイミダゾール等が挙げられるが、特に、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールを使用した場合には樹脂との溶解性が優れるため好ましい。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物に使用される(b)ポリグリシジル化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエン等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。これらの中でも、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物が好ましい。
【0018】
ここで、(a)活性水素基を有するアミン化合物及び(b)ポリグリシジル化合物から付加反応物を得る際の反応は、(a)活性水素基を有するアミン化合物の活性水素が1当量となる量に対し、(b)ポリグリシジル化合物のエポキシ当量が、通常0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.5当量となる比率で行われ、エポキシ当量が0.5当量未満では、保存安定性が不十分なものとなるおそれがあり、2当量を超えて使用した場合には硬化性が低下するおそれがあるため好ましくない。さらに、(a)活性水素基を有するアミン化合物と(b)ポリグリシジル化合物との比率(前者:後者)が、質量基準では10〜70:90〜30の範囲となるようにするのが好ましい。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物に使用される(B)脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物(以下、(B)成分ともいう)は、フェノール化合物及び不飽和環状炭化水素化合物を反応せしめて得られる化合物である。あるいは、該化合物を、さらにアルデヒド類又はケトン類で縮合反応させて、高分子量化したものでもよい。
【0020】
上記フェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール等が挙げられる。
【0021】
上記不飽和環状炭化水素化合物は、置換基を有していてもよく、その場合にはアルキレン基を介してフェノール化合物と結合することもできる。具体的には、上記不飽和環状炭化水素化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等が挙げられる。
【0022】
ここで、上記フェノール化合物及び上記不飽和環状炭化水素化合物を反応せしめる際には、酸触媒下で反応が行われることが好ましい。該酸触媒としては、例えば、イオン交換樹脂、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素錯体(エーテル、フェノール、水、アルコール、アミン等)、三塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、塩化鉄、四塩化チタン、硫酸、フッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ゼオライト触媒あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
また、反応は、溶媒中で行うことができ、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒中で行う。
【0024】
(B)成分として、特に、下記一般式(II)で表されるようなフェノール化ジシクロペンタジエンを使用することで、保存安定性及び硬化性に優れ、かつ、高いガラス転移温度(Tg)の硬化物が得られるため好ましい。下記一般式(II)におけるnは、好ましくは0〜10である。
【0025】
【化4】
Figure 2004292737
【0026】
また、(B)成分として、テルペンフェノール化合物を使用することで、低温での硬化性に優れ、かつ、ガラス転移温度(Tg)の硬化物が得られるため好ましい。
【0027】
上記テルペンフェノ−ル化合物は、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の環状テルペン化合物にフェノール又はオルトクレゾール等のアルキルフェノール化合物を付加するかあるいはこれらを共重合して得られるものである。また、これらをアルデヒドあるいはケトン類によって縮合したものでもよい。
【0028】
上記テルペンフェノール化合物の具体的な例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【0029】
【化5】
Figure 2004292737
【0030】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物において、(B)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対し、好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは10〜100質量部であり、150質量部を超えても無駄であるばかりでなく、硬化性に悪影響を与えるおそれがあり好ましくない。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物には、さらに(B)成分以外のその他のフェノール化合物を併用することもできる。その他のフェノール化合物としては、例えば、カテコール、4−第三ブチルカテコール、ピロガロール、レゾルシン、ハイドロキノン、フロログルジノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ノボラック型あるいはレゾール型のフェノール樹脂、ポリビニルフェノール等が挙げられる。その他のフェノール化合物の使用量は、(B)成分100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物には、(C)ホウ酸又はホウ酸エステル化合物(以下、(C)成分ともいう)を使用することで、保存安定性が向上するため好ましい。該ホウ酸エステルは、ホウ酸とアルコール類あるいはフェノール類とから得られるものであり、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル等が挙げられる。
【0033】
(C)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対し、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは1〜20質量部であり、50質量部を超えても無駄であるばかりでなく、硬化性に悪影響を与えるおそれがあり好ましくない。
【0034】
上述した(B)成分、(C)成分及びその他のフェノール化合物は、(A)成分と単に混合して使用することもできるし、あるいは(A)成分のブロック剤として(A)成分と反応させて使用することもできる。
【0035】
また、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物には、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸を併用することもできる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、取り扱いを容易にするため種々の有機溶剤に溶解して使用することが出来る。該有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0037】
上記有機溶剤の使用量は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物中の固形分の合計量100重量部に対し、好ましくは0〜200重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。該使用量が200重量部を越えた場合には、揮発して危険性、有害性等を生じるため好ましくない。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物を主成分とする主剤と組み合わせて使用される。
【0039】
ポリエポキシ化合物及び本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を含有してなる本発明のエポキシ樹脂組成物について、以下に詳述する。
【0040】
上記ポリエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、ポリエポキシ化合物は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものあるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
【0041】
また、上記ポリエポキシ化合物は、エポキシ当量が100〜2000、特に150〜1500のものが好ましい。該エポキシ当量が100未満では、硬化性が低下するおそれがあり、2000よりも大きい場合には、十分な塗膜物性が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0042】
これらのポリエポキシ化合物は、取り扱いを容易にするため、種々の有機溶剤に溶解して用いることができ、該有機溶剤としては、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を溶解するのに用いることができる前述した有機溶剤の他、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等の高沸点パラフィン系溶剤等が挙げられる。
【0043】
上記有機溶剤の使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対し、好ましくは0〜200重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。該使用量が200重量部を越えた場合には、揮発して危険性、有害性等を生じるため好ましくない。
【0044】
また、ポリエポキシ化合物を主とする主剤には、反応性あるいは非反応性希釈剤を使用することもできる。該反応性希釈剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、p−第三ブチルフェノール、p−第三アミルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノールあるいはテルペンフェノール等のモノグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル化合物が挙げられ、該非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0045】
一成分系で硬化性を有する本発明のエポキシ樹脂組成物中において、上記ポリエポキシ化合物と本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の使用量は、前者のエポキシ当量と後者の活性水素当量とが等しくなる量で使用されるのが好ましく、これらの量は必要に応じて任意の範囲で変更することができるが、ポリエポキシ化合物と本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計量との比率(前者:後者、質量基準)が、10〜90:90〜10となる範囲で選択するのが好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物と、ポリエポキシ化合物を主体とする主剤とを組合せた本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料あるいは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材の粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料;積層板、半導体封止材等の電気・電子材料等の広範な用途に使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物及び本発明のエポキシ樹脂組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜8及び比較例1〜4においては、エポキシ樹脂用硬化剤組成物を作成し、実施例9〜16及び比較例5〜8においては、実施例1〜8及び比較例1〜4それぞれにおいて得られたエポキシ樹脂用硬化剤組成物を用いてエポキシ樹脂組成物を作成し、得られたエポキシ樹脂組成物の評価を行った。
【0048】
〔実施例1〕
加熱・冷却装置、攪拌装置、滴下装置及び脱水装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g及び2−メチルイミダゾール141gを仕込み、70〜75℃に昇温し、アデカレジンEP−4100E(旭電化工業(株)製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)409gを滴下し、その後110〜130℃で1時間熟成し、110〜130℃で1時間、次いで175〜185℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶剤を行い、イミダゾール−エポキシ付加反応物(IE−1)を得た。
そこへ、さらに175〜185℃でDPP−6125(日本石油化学(株)製;フェノール化ジシクロペンタジエン、軟化点約125℃)500gを分割して仕込み、その後ホウ酸トリブチル42gを滴下しながら脱ブタノールし、次いで180〜190℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶媒を行い、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−1)を得た。
【0049】
〔実施例2〕
加熱・冷却装置、攪拌装置、滴下装置及び脱水装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g及び2−メチルイミダゾール141gを仕込み、70〜75℃に昇温し、アデカレジンEP−4100E 260g及びアデカスタブEP−5100−75P(旭電化工業(株)製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂PGMカット品、エポキシ当量630)335gを滴下し、その後110〜130℃で1時間熟成し、110〜130℃で1時間、次いで175〜185℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶剤を行い、イミダゾール−エポキシ付加反応物(IE−2)を得た。
そこへ、さらに175〜185℃でDPP−6125 314gを分割して仕込み、その後ホウ酸トリブチル42gを滴下しながら脱ブタノールし、次いで180〜190℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶媒を行い、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−2)を得た。
【0050】
〔実施例3〕
加熱・冷却装置、攪拌装置、滴下装置及び脱水装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g及び2−エチル−4−メチルイミダゾール190gを仕込み、70〜75℃に昇温し、アデカレジンEP−4100E 409gを滴下し、その後110〜130℃で1時間熟成し、110〜130℃で1時間、次いで175〜185℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶剤を行い、イミダゾール−エポキシ付加反応物(IE−3)を得た。
そこへ、さらに175〜185℃でDPP−6125 451gを分割して仕込み、その後ホウ酸トリブチル42gを滴下しながら脱ブタノールし、次いで180〜190℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶媒を行い、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−3)を得た。
【0051】
〔実施例4〕
加熱・冷却装置、攪拌装置、滴下装置及び脱水装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g及び2−エチル−4−メチルイミダゾール190gを仕込み、70〜75℃に昇温し、アデカレジンEP−4100E 260g及びアデカスタブEP−5100−75P 335gを滴下し、その後110〜130℃で1時間熟成し、110〜130℃で1時間、次いで175〜185℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶剤を行い、イミダゾール−エポキシ付加反応物(IE−4)を得た。
そこへ、さらに175〜185℃でDPP−6125 265gを分割して仕込み、その後ホウ酸トリブチル42gを滴下しながら脱ブタノールし、次いで180〜190℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶媒を行い、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−4)を得た。
【0052】
〔実施例5〕
DPP−6125 500gに代えて、マイティエースK−125(ヤスハラケミカル社製;テルペンフェノール樹脂、軟化点約125℃)500gを用いた以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−5)を得た。
【0053】
〔実施例6〕
DPP−6125 314gに代えて、マイティエースK−125 314gを用いた以外は、実施例2と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−6)を得た。
【0054】
〔実施例7〕
DPP−6125 451gに代えて、マイティエースK−125 451gを用いた以外は、実施例3と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−7)を得た。
【0055】
〔実施例8〕
DPP−6125 265gに代えて、マイティエースK−125 265gを用いた以外は、実施例4と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(EH−8)を得た。
【0056】
〔比較例1〕
DPP−6125 500gに代えて、MP−800K(旭有機材製;フェノール樹脂、軟化点約75℃)500gを用いた以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(HEH−1)を得た。
【0057】
〔比較例2〕
DPP−6125 314gに代えて、MP−800K 314gを用いた以外は、実施例2と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(HEH−2)を得た。
【0058】
〔比較例3〕
DPP−6125 451gに代えて、MP−800K 451gを用いた以外は、実施例3と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(HEH−3)を得た。
【0059】
〔比較例4〕
DPP−6125 265gに代えて、MP−800K 265gを用いた以外は、実施例4と同様にして、エポキシ樹脂用硬化剤組成物(HEH−4)を得た。
【0060】
エポキシ樹脂用硬化剤組成物の軟化点測定
得られたエポキシ樹脂用硬化剤組成物EH−1〜3、5〜7及びHEH−1〜4それぞれを乳鉢ですりつぶしたものについて、ヤナコ社製の融点測定器を用いて軟化点を測定した。測定結果を表1及び2に示す。
【0061】
〔実施例9〜16及び比較例5〜8〕
アデカレジンEP−4100E 100質量部及びエポキシ樹脂用硬化剤組成物EH−1〜8及びHEH−1〜4のいずれか20質量部を配合し、3本ロールで2回かけして一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。得られた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物について、以下の性能評価(硬化性、保存安定性及びガラス転移温度)を行った。これらの結果を表1及び2に示す。
【0062】
(硬化性)
得られた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を製造直後にゲル化試験機(試験温度:80℃又は120℃)に入れて、糸を引かなくなるまでの時間(分)をゲル化時間として測定した。
【0063】
(保存安定性)
得られた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を25℃で放置し、粘度が2倍になるまでの時間(週)を確認した。
【0064】
(ガラス転移温度(Tg))
得られた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を150℃、1時間で硬化させたものについて、バイブロン(A&D製)を用いてTgを測定した。
【0065】
【表1】
Figure 2004292737
【0066】
【表2】
Figure 2004292737
【0067】
表2より明らかなように、イミダゾール化合物のエポキシ付加物と汎用のフェノール樹脂とを組合せて得られるエポキシ樹脂用硬化剤組成物を、潜在性硬化剤として、ポリエポキシ化合物と組合せて用いると、保存安定性に優れるが、硬化性が劣り、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)が低いという欠点がある。
【0068】
これに対して、表1から明らかなように、イミダゾール化合物のエポキシ付加物と脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物とを組合せて得られるエポキシ樹脂用硬化剤組成物を、潜在性硬化剤として、ポリエポキシ化合物と組合せて用いると、充分な保存安定性を示し且つ硬化性に優れ、しかも得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)が高いという特徴がある。
【0069】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物と組合せて用いると、保存安定性及び硬化性に優れ、かつ、高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化物を形成することから、高い機械的強度、耐熱信頼性及び耐候信頼性が要求される用途に好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. (A)(a)活性水素基を有するアミン化合物及び(b)ポリグリシジル化合物を反応させてなる付加反応物、並びに(B)脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物を含有してなることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
  2. 上記(a)活性水素基を有するアミン化合物が、下記一般式(I)で表されるイミダゾール化合物であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
    Figure 2004292737
  3. 上記一般式(I)で表されるイミダゾール化合物が、2−メチルイミダゾール又は2−エチル−4−メチルイミダゾールであることを特徴とする請求項2記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
  4. 上記(B)脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物が、下記一般式(II)で表されるフェノール化ジシクロペンタジエンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
    Figure 2004292737
  5. 上記(B)脂環式炭化水素により置換あるいは連結されてなるフェノール化合物が、テルペンフェノール化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
  6. (C)ホウ酸又はホウ酸エステル化合物を含有してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
  7. ポリエポキシ化合物及び請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を含有してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
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