JP2004292663A - 導電性コーティング剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子装置や素子を静電気放電や電磁波障害などから保護するのに有効であり、そのほかに各種物品の静電気帯電に関する障害を防止するのにも有効な導電性コーティング剤を提供すること。
【解決手段】溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤とする。好ましい導電性ポリマーはポリアニリン又はその誘導体、好ましいドーパントは長鎖アルキル基を有する酸、特にC8〜C30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、好ましい分散安定剤はシクロヘキサノンなどの分子内に極性部分と非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物であり、分散安定剤としてアニリン、p−フェニレンジアミン、トルエン、キシレン等のアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物の使用も可能である。
【選択図】 なし
【解決手段】溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤とする。好ましい導電性ポリマーはポリアニリン又はその誘導体、好ましいドーパントは長鎖アルキル基を有する酸、特にC8〜C30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、好ましい分散安定剤はシクロヘキサノンなどの分子内に極性部分と非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物であり、分散安定剤としてアニリン、p−フェニレンジアミン、トルエン、キシレン等のアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物の使用も可能である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子装置や素子、又はそれらが接触などする器具、治具、基板などにコーティング膜を形成することにより、電子装置や素子を静電気放電(Electro−Static Discharge(ESD))や電磁波障害(Electro Magnetic Interference(EMI))などから保護する導電性コーティング剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、電子装置や素子の小型化、高速化、省エネルギー化等に伴い、電子装置や素子の構造の微細化が進み、静電気放電(ESD)、電磁波障害(EMI)等の障害に対する耐性低下が懸念されてきている。具体的な例として、例えば、ベアチップ実装などにおいては、基板からのESDにより素子を破壊する可能性があり、半導体デバイス端子部と基板の接合端子部を除く基板表面の帯電防止処理の必要などが生ずる。
【0003】
電子装置や素子に保護膜を形成するための従来の導電性コーティング材料としては、樹脂にカーボンブラック又は金属粉末等の導電性フィラー(充填材)を混合したもの、あるいは樹脂に界面活性剤を添加したものが知られていた。
【0004】
導電性フィラー充填材を樹脂に混合した従来の導電性コーティング材料は、剥がれにくい、強い膜を形成できるが、フィラーの脱落による周囲環境(例えばクリーンルーム)の汚染などの問題を生じさせる。金属酸化物の超微粒子フィラーを使用したコーティング材料も知られているが、フィラー脱落による汚染の懸念が払拭されるわけではない。
【0005】
フィラーを使用しない界面活性剤系の材料では、静電気放電などの抑制に有効な帯電防止効果を塗布により簡単に得られる。ところが、洗浄工程で界面活性剤が失われることにより効果が失われたり、空気中の水分を引き付けて帯電防止効果を得ているため、低湿度環境では帯電防止効果が低下するなどの問題がある。帯電防止効果が高いと言われるイオン性界面活性剤を添加した材料では、高湿度環境で金属を腐食するなどの問題がある。
【0006】
本発明は、フィラーや界面活性剤に頼ることなく電子装置や素子を静電気放電(ESD)や電磁波障害(EMI)などから保護するのを可能にする導電性コーティング剤を提供しようとするものである。ポリアニリンなどを使用する導電性ポリマー材料を開示する代表的特許文献として、特開平3−88819号公報、特開平11−172103号公報がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−88819号公報
【特許文献2】
特開平11−172103号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術における欠点を鑑みた場合、電子装置や素子を静電気放電や電磁波障害などから保護する新たな導電性コーティング剤は、
(1)分散したフィラーを含有しないこと、
(2)電子伝導性を持つこと、
(3)腐食性を持たないこと、
などの特性を持つ導電性物質を基にし、電子装置や素子に塗布することで簡単に導電性コーティングを形成できるものであるべきである。
【0009】
上記の条件を満足する物質として考えられるものに、導電性ポリマーとして知られる物質がある。しかし、一般に溶媒に対して難溶性である導電性ポリマーは、塗布対象物に塗布できる状態で、すなわち溶媒に溶解した状態で、長期間貯蔵しておくことができず、溶解後短時間のうちに凝集もしくはゲル化してしまう。この傾向は、導電性ポリマーに導電性発現のためのドーパントをドーピングすると一層強くなる。
【0010】
本発明の目的は、電子装置や素子、又はそれらが接触などする器具、治具、基板などにコーティング膜を形成することで、電子装置や素子、及びそれらに接触する可能性のある物質、物体の帯電を防止することにより、電子装置や素子を静電気放電や電磁波障害などから保護する導電性コーティング剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の導電性コーティング剤は、溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤である。
【0012】
この導電性コーティング剤は、前記導電性ポリマーの溶液に前記分散安定剤を混和し、その後に前記ドーパントを混和することを特徴とする方法により製造される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の導電性コーティング剤の主要成分は導電性ポリマーである。その候補としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアセチレン、あるいはこれらの誘導体など、いわゆる導電性高分子の範疇に含まれる材料が挙げられる。本発明においては、導電性を示す形で溶媒等に溶解するという条件から、ポリアニリンあるいはその誘導体(例えばスルホン基を導入したポリアニリンのような、自己ドープ型ポリアニリンとして知られる物質)、又はそれらの2種以上のものの混合物が望ましい。
【0014】
一般に、導電性ポリマーは有機溶媒に難溶性であり、導電性ポリマーを溶解する溶媒としては、通常、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような強い極性溶媒が使用される。
【0015】
本発明の導電性コーティングにおける導電性ポリマーは、ドーパントにより予め導電性を示す状態にされている。好ましいドーパントは長鎖アルキル基を有する酸である。ドーパントの長鎖アルキル基としては、炭素数8〜30のものが好ましい。好適なドーパントの例は、C8〜C30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸などである。
【0016】
長鎖アルキル基を有するドーパントが好ましい理由は、導電性ポリマーに導電性を発現させるためのドーピングを行う酸性部分、例えばスルホン酸の場合はスルホン酸基が、導電性ポリマーに弱く結合すると、ポリマーの凝集を起こしやすくなるのであるが、ドーパントに非常に嵩高い長鎖アルキルのような構造が存在すると、立体的に導電性ポリマー同士が近づくのを防ぎ、凝集を阻止できると考えられるからである。
【0017】
導電性ポリマーとして自己ドープ型のポリマーを使用する場合、ポリマーは既に導電性を示す状態にあるので、必ずしも新たにドーパントを加える必要はない。とは言え、長鎖アルキル基を有するドーパントを用いると上述のようにポリマーの凝集防止に有効なので、このドーパントを使用するのが有益である。
【0018】
ドーパントとしては、2種以上の混合物を用いることも可能である。
【0019】
導電性コーティング剤で使用されるドーパントは酸の一種である。そのため、ドーピングした導電性ポリマーを含むコーティング剤は、ドーパントの酸のため腐食性となりかねない。導電性ポリマーとしてアルカリ性の性質のポリアニリン又はその誘導体のようなポリマーを使用すると、ドーパントは中和された状態となり、従ってコーティング剤が腐食性を示すことはなくなる。この点でも、本発明においては導電性ポリマーとしてポリアニリン又はその誘導体を用いるのが有利である。
【0020】
本発明の導電性コーティング剤では、導電性ポリマーの分散を長期間、例えば少なくとも3ヶ月間、維持可能な分散安定剤を使用する。好適な分散安定剤の例を挙げると、シクロヘキサノン、エチレンジアミン、アミノシクロヘキサン等の、分子内にケトンやアミノ、イミノ基等の極性部分とアルキル基等の非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物である。このような分散安定剤を使用すると、極性部分がポリアニリンを溶解しているN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と結合することにより、これらの橋渡しを行い、そして非極性部分がドーパントの長鎖アルキル部分と結合を作り、導電性ポリマーを溶液内に安定に存在させるものと考えられる。
【0021】
本発明の導電性コーティング剤においては、アニリン、p−フェニレンジアミン、トルエン、キシレン等のアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物も、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤として使用可能である。
【0022】
分散安定剤としては、2種以上の混合物を用いることも可能である。
【0023】
こうして、本発明によれば、導電性ポリマーを導電性を示す状態、すなわちドーピングした状態で、導電性コーティング剤の長期の安定保存が可能となる。また、導電性ポリマーは既にドーピングした状態にあるので、本発明のコーティング剤は塗布対象物にそのまま塗布し、乾燥して製膜するだけで、導電性コート膜となる。導電性ポリマーを使用する従来の導電性コーティング剤では、ドーピングした状態で導電性ポリマーを安定状態に保つことができなかったため、ドーピングをコーティング剤の塗布の直前に行うか、又は膜形成後に膜の外からドープする必要があった。本発明によれば、この必要がなくなって、工数及び経費の低減が可能となる。
【0024】
本発明の導電性コーティング剤は、基材にコーティングする際に均一なコートを行うために、レベリング剤として、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを含有してもよい。このようなレベリング剤は導電性コーティング剤に適度な粘度をもたらすことにより、コートしたコーティング液を平坦に保ち、また乾燥などの処理を行った際のコーティング液の偏りを防ぐ。
【0025】
本発明のコーティング剤の作製を、導電性ポリマーとして好ましいポリアニリンを使用する場合を例に説明すれば、以下のとおりである。導電性ポリマー(ポリアニリン)のNMP溶液1質量部に、分散安定剤を0.5〜2質量部加え、攪拌混合する。その後、ドーパントをポリアニリンのアニリンユニット3に対し、0.2〜3分子加え、攪拌混合する。この際、分散安定剤とドーパントを加える順序を逆転すると、導電性ポリマーの凝集が発生するので、添加の順序はこの順とする。更に、必要であればレベリング剤を全体に対し1〜50wt%の範囲で添加する。
【0026】
以下に本発明に基づく実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0028】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成した後、JIS K 6911に準拠して表面抵抗率を測定(ADVANTEST社製TR−8411)した結果は、4×103Ω/□であった。また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0029】
〔実施例2〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン0.5質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0030】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は2×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0031】
〔実施例3〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0032】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は8×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0033】
〔実施例4〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.01質量部を加え、同様に混和した。
【0034】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は7×104Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0035】
〔実施例5〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.14質量部を加え、同様に混和した。
【0036】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は1×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
更に、組成物を冷間圧延鋼板(SPCC鋼板)上にスピンコートし、80℃で10分乾燥した後、50℃、80%相対湿度環境下で1週間放置したが、腐食は見られなかった。
【0037】
〔実施例6〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部とエチレングリコール0.1質量部を加え、同様に混和した。
【0038】
得られた組成物をガラス基板上にブレードにて20μmの膜厚でコートし、120℃で10分乾燥した後、目視により観察したところ、コート表面にムラは認められず、均一にコートされていた。
【0039】
レベリング剤のエチレングリコールを添加しないことを除き、上記と同一の手順及び条件で組成物を作製した。この組成物を使ってやはり上記と同一の条件でガラス基板上に形成したコート膜を目視により観察したところ、コート表面に濃淡のムラが認められた。これにより、本発明のコーティング剤においてレベリング剤を使用することの有効性が示された。
【0040】
〔実施例7〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にトルエン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0041】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は、4×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0042】
〔比較例1〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン0.3質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0043】
得られた組成物は50〜100μmの凝集塊が多数存在し、コートしても、平坦な表面が形成できなかった。また、常温環境中で保存したところ、1週間後にゲル化を起こし、固化した。
【0044】
〔比較例2〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2.3質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0045】
得られた組成物は50〜100μmの凝集塊が多数存在し、コートしても、平坦な表面が形成できなかった。また、常温環境中で保存したところ、1日で沈殿を発生し、分離した。
【0046】
〔比較例3〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.006質量部を加え、同様に混和した。
【0047】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は7×1012Ω/□であった。
【0048】
〔比較例4〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.18質量部を加え、同様に混和した。
【0049】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は8×102Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。しかし、この組成物を冷間圧延鋼板(SPCC鋼板)上にスピンコートし、80℃で10分乾燥後、50℃、80%相対湿度環境下で1週間放置すると、多数の錆が発生した。
【0050】
本発明は、以上説明したとおりであるが、その特徴を種々の態様ととも付記すれば、次のとおりである。
(付記1)溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤。
(付記2)前記導電性ポリマーの分散が少なくとも3ヶ月間維持される、付記1記載の導電性コーティング剤。
(付記3)前記導電性ポリマーがポリアニリン又はその誘導体である、付記1又は2記載の導電性コーティング剤。
(付記4)前記ドーパントが長鎖アルキル基を有する酸である、付記1から3までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
(付記5)前記長鎖アルキル基の炭素数が8〜30である、付記4記載の導電性コーティング剤。
(付記6)前記ドーパントが炭素数8〜30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸である、付記4記載の導電性コーティング剤。
(付記7)前記分散安定剤が、分子内に極性部分と非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物であるか、あるいはアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物である、付記1から6までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
(付記8)前記脂肪族又は脂環式の液体有機化合物が、シクロヘキサノン、エチレンジアミン又はアミノシクロヘキサンである、付記7記載の導電性コーティング剤。
(付記9)前記芳香族化合物が、アニリン、p−フェニレンジアミン、トルエン又はキシレンである、付記7記載の導電性コーティング剤。
(付記10)レベリング剤を更に含有する、付記1から9までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
(付記11)付記1から10までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤から形成された導電性コーティング膜。
(付記12)付記1から10までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤を製造する方法であって、前記導電性ポリマーの溶液に前記分散安定剤を混和し、その後に前記ドーパントを混和することを特徴とする導電性コーティング剤製造方法。
【0051】
【発明の効果】
以上示したように、本発明によれば、良好な導電性を持つ皮膜がそのまま形成でき、腐食性がなく、長期保存が可能な安定性を持つ、ドープされた導電性ポリマーコーティング剤を提供することができる。本発明の導電性ポリマーコーティング剤を使用することにより、電子部品分野に限らず、プラスティック製品などの分野においても、フィルムの巻き付き、張り付き、塵埃付着や、フィルム以外のプラスティック製品などにおける塵埃付着など、様々な静電気帯電に関する障害を防止できるようになる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子装置や素子、又はそれらが接触などする器具、治具、基板などにコーティング膜を形成することにより、電子装置や素子を静電気放電(Electro−Static Discharge(ESD))や電磁波障害(Electro Magnetic Interference(EMI))などから保護する導電性コーティング剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、電子装置や素子の小型化、高速化、省エネルギー化等に伴い、電子装置や素子の構造の微細化が進み、静電気放電(ESD)、電磁波障害(EMI)等の障害に対する耐性低下が懸念されてきている。具体的な例として、例えば、ベアチップ実装などにおいては、基板からのESDにより素子を破壊する可能性があり、半導体デバイス端子部と基板の接合端子部を除く基板表面の帯電防止処理の必要などが生ずる。
【0003】
電子装置や素子に保護膜を形成するための従来の導電性コーティング材料としては、樹脂にカーボンブラック又は金属粉末等の導電性フィラー(充填材)を混合したもの、あるいは樹脂に界面活性剤を添加したものが知られていた。
【0004】
導電性フィラー充填材を樹脂に混合した従来の導電性コーティング材料は、剥がれにくい、強い膜を形成できるが、フィラーの脱落による周囲環境(例えばクリーンルーム)の汚染などの問題を生じさせる。金属酸化物の超微粒子フィラーを使用したコーティング材料も知られているが、フィラー脱落による汚染の懸念が払拭されるわけではない。
【0005】
フィラーを使用しない界面活性剤系の材料では、静電気放電などの抑制に有効な帯電防止効果を塗布により簡単に得られる。ところが、洗浄工程で界面活性剤が失われることにより効果が失われたり、空気中の水分を引き付けて帯電防止効果を得ているため、低湿度環境では帯電防止効果が低下するなどの問題がある。帯電防止効果が高いと言われるイオン性界面活性剤を添加した材料では、高湿度環境で金属を腐食するなどの問題がある。
【0006】
本発明は、フィラーや界面活性剤に頼ることなく電子装置や素子を静電気放電(ESD)や電磁波障害(EMI)などから保護するのを可能にする導電性コーティング剤を提供しようとするものである。ポリアニリンなどを使用する導電性ポリマー材料を開示する代表的特許文献として、特開平3−88819号公報、特開平11−172103号公報がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−88819号公報
【特許文献2】
特開平11−172103号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術における欠点を鑑みた場合、電子装置や素子を静電気放電や電磁波障害などから保護する新たな導電性コーティング剤は、
(1)分散したフィラーを含有しないこと、
(2)電子伝導性を持つこと、
(3)腐食性を持たないこと、
などの特性を持つ導電性物質を基にし、電子装置や素子に塗布することで簡単に導電性コーティングを形成できるものであるべきである。
【0009】
上記の条件を満足する物質として考えられるものに、導電性ポリマーとして知られる物質がある。しかし、一般に溶媒に対して難溶性である導電性ポリマーは、塗布対象物に塗布できる状態で、すなわち溶媒に溶解した状態で、長期間貯蔵しておくことができず、溶解後短時間のうちに凝集もしくはゲル化してしまう。この傾向は、導電性ポリマーに導電性発現のためのドーパントをドーピングすると一層強くなる。
【0010】
本発明の目的は、電子装置や素子、又はそれらが接触などする器具、治具、基板などにコーティング膜を形成することで、電子装置や素子、及びそれらに接触する可能性のある物質、物体の帯電を防止することにより、電子装置や素子を静電気放電や電磁波障害などから保護する導電性コーティング剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の導電性コーティング剤は、溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤である。
【0012】
この導電性コーティング剤は、前記導電性ポリマーの溶液に前記分散安定剤を混和し、その後に前記ドーパントを混和することを特徴とする方法により製造される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の導電性コーティング剤の主要成分は導電性ポリマーである。その候補としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアセチレン、あるいはこれらの誘導体など、いわゆる導電性高分子の範疇に含まれる材料が挙げられる。本発明においては、導電性を示す形で溶媒等に溶解するという条件から、ポリアニリンあるいはその誘導体(例えばスルホン基を導入したポリアニリンのような、自己ドープ型ポリアニリンとして知られる物質)、又はそれらの2種以上のものの混合物が望ましい。
【0014】
一般に、導電性ポリマーは有機溶媒に難溶性であり、導電性ポリマーを溶解する溶媒としては、通常、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような強い極性溶媒が使用される。
【0015】
本発明の導電性コーティングにおける導電性ポリマーは、ドーパントにより予め導電性を示す状態にされている。好ましいドーパントは長鎖アルキル基を有する酸である。ドーパントの長鎖アルキル基としては、炭素数8〜30のものが好ましい。好適なドーパントの例は、C8〜C30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸などである。
【0016】
長鎖アルキル基を有するドーパントが好ましい理由は、導電性ポリマーに導電性を発現させるためのドーピングを行う酸性部分、例えばスルホン酸の場合はスルホン酸基が、導電性ポリマーに弱く結合すると、ポリマーの凝集を起こしやすくなるのであるが、ドーパントに非常に嵩高い長鎖アルキルのような構造が存在すると、立体的に導電性ポリマー同士が近づくのを防ぎ、凝集を阻止できると考えられるからである。
【0017】
導電性ポリマーとして自己ドープ型のポリマーを使用する場合、ポリマーは既に導電性を示す状態にあるので、必ずしも新たにドーパントを加える必要はない。とは言え、長鎖アルキル基を有するドーパントを用いると上述のようにポリマーの凝集防止に有効なので、このドーパントを使用するのが有益である。
【0018】
ドーパントとしては、2種以上の混合物を用いることも可能である。
【0019】
導電性コーティング剤で使用されるドーパントは酸の一種である。そのため、ドーピングした導電性ポリマーを含むコーティング剤は、ドーパントの酸のため腐食性となりかねない。導電性ポリマーとしてアルカリ性の性質のポリアニリン又はその誘導体のようなポリマーを使用すると、ドーパントは中和された状態となり、従ってコーティング剤が腐食性を示すことはなくなる。この点でも、本発明においては導電性ポリマーとしてポリアニリン又はその誘導体を用いるのが有利である。
【0020】
本発明の導電性コーティング剤では、導電性ポリマーの分散を長期間、例えば少なくとも3ヶ月間、維持可能な分散安定剤を使用する。好適な分散安定剤の例を挙げると、シクロヘキサノン、エチレンジアミン、アミノシクロヘキサン等の、分子内にケトンやアミノ、イミノ基等の極性部分とアルキル基等の非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物である。このような分散安定剤を使用すると、極性部分がポリアニリンを溶解しているN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と結合することにより、これらの橋渡しを行い、そして非極性部分がドーパントの長鎖アルキル部分と結合を作り、導電性ポリマーを溶液内に安定に存在させるものと考えられる。
【0021】
本発明の導電性コーティング剤においては、アニリン、p−フェニレンジアミン、トルエン、キシレン等のアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物も、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤として使用可能である。
【0022】
分散安定剤としては、2種以上の混合物を用いることも可能である。
【0023】
こうして、本発明によれば、導電性ポリマーを導電性を示す状態、すなわちドーピングした状態で、導電性コーティング剤の長期の安定保存が可能となる。また、導電性ポリマーは既にドーピングした状態にあるので、本発明のコーティング剤は塗布対象物にそのまま塗布し、乾燥して製膜するだけで、導電性コート膜となる。導電性ポリマーを使用する従来の導電性コーティング剤では、ドーピングした状態で導電性ポリマーを安定状態に保つことができなかったため、ドーピングをコーティング剤の塗布の直前に行うか、又は膜形成後に膜の外からドープする必要があった。本発明によれば、この必要がなくなって、工数及び経費の低減が可能となる。
【0024】
本発明の導電性コーティング剤は、基材にコーティングする際に均一なコートを行うために、レベリング剤として、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを含有してもよい。このようなレベリング剤は導電性コーティング剤に適度な粘度をもたらすことにより、コートしたコーティング液を平坦に保ち、また乾燥などの処理を行った際のコーティング液の偏りを防ぐ。
【0025】
本発明のコーティング剤の作製を、導電性ポリマーとして好ましいポリアニリンを使用する場合を例に説明すれば、以下のとおりである。導電性ポリマー(ポリアニリン)のNMP溶液1質量部に、分散安定剤を0.5〜2質量部加え、攪拌混合する。その後、ドーパントをポリアニリンのアニリンユニット3に対し、0.2〜3分子加え、攪拌混合する。この際、分散安定剤とドーパントを加える順序を逆転すると、導電性ポリマーの凝集が発生するので、添加の順序はこの順とする。更に、必要であればレベリング剤を全体に対し1〜50wt%の範囲で添加する。
【0026】
以下に本発明に基づく実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0028】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成した後、JIS K 6911に準拠して表面抵抗率を測定(ADVANTEST社製TR−8411)した結果は、4×103Ω/□であった。また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0029】
〔実施例2〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン0.5質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0030】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は2×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0031】
〔実施例3〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0032】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は8×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0033】
〔実施例4〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.01質量部を加え、同様に混和した。
【0034】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は7×104Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0035】
〔実施例5〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.14質量部を加え、同様に混和した。
【0036】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は1×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
更に、組成物を冷間圧延鋼板(SPCC鋼板)上にスピンコートし、80℃で10分乾燥した後、50℃、80%相対湿度環境下で1週間放置したが、腐食は見られなかった。
【0037】
〔実施例6〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部とエチレングリコール0.1質量部を加え、同様に混和した。
【0038】
得られた組成物をガラス基板上にブレードにて20μmの膜厚でコートし、120℃で10分乾燥した後、目視により観察したところ、コート表面にムラは認められず、均一にコートされていた。
【0039】
レベリング剤のエチレングリコールを添加しないことを除き、上記と同一の手順及び条件で組成物を作製した。この組成物を使ってやはり上記と同一の条件でガラス基板上に形成したコート膜を目視により観察したところ、コート表面に濃淡のムラが認められた。これにより、本発明のコーティング剤においてレベリング剤を使用することの有効性が示された。
【0040】
〔実施例7〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にトルエン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0041】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥してコート膜を形成した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は、4×103Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。
【0042】
〔比較例1〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン0.3質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0043】
得られた組成物は50〜100μmの凝集塊が多数存在し、コートしても、平坦な表面が形成できなかった。また、常温環境中で保存したところ、1週間後にゲル化を起こし、固化した。
【0044】
〔比較例2〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2.3質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.048質量部を加え、同様に混和した。
【0045】
得られた組成物は50〜100μmの凝集塊が多数存在し、コートしても、平坦な表面が形成できなかった。また、常温環境中で保存したところ、1日で沈殿を発生し、分離した。
【0046】
〔比較例3〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン1質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.006質量部を加え、同様に混和した。
【0047】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は7×1012Ω/□であった。
【0048】
〔比較例4〕
酸化型脱ドープポリアニリンの4質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液1質量部にシクロヘキサノン2質量部を加え、攪拌装置(シンキー(株)、MX−201)にて30秒攪拌、混和した。この後、ドデシルベンゼンスルホン酸0.18質量部を加え、同様に混和した。
【0049】
得られた組成物をガラス基板上にスピンコートし、80℃で10分乾燥した後、表面抵抗率を測定(ADVANTEST社、TR−8411)した結果は8×102Ω/□であった。
また、同組成物を常温環境中で保存したところ、3ヶ月後も凝集及び凝固等は見られず、作製時と同様の特性を示した。しかし、この組成物を冷間圧延鋼板(SPCC鋼板)上にスピンコートし、80℃で10分乾燥後、50℃、80%相対湿度環境下で1週間放置すると、多数の錆が発生した。
【0050】
本発明は、以上説明したとおりであるが、その特徴を種々の態様ととも付記すれば、次のとおりである。
(付記1)溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤。
(付記2)前記導電性ポリマーの分散が少なくとも3ヶ月間維持される、付記1記載の導電性コーティング剤。
(付記3)前記導電性ポリマーがポリアニリン又はその誘導体である、付記1又は2記載の導電性コーティング剤。
(付記4)前記ドーパントが長鎖アルキル基を有する酸である、付記1から3までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
(付記5)前記長鎖アルキル基の炭素数が8〜30である、付記4記載の導電性コーティング剤。
(付記6)前記ドーパントが炭素数8〜30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸である、付記4記載の導電性コーティング剤。
(付記7)前記分散安定剤が、分子内に極性部分と非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物であるか、あるいはアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物である、付記1から6までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
(付記8)前記脂肪族又は脂環式の液体有機化合物が、シクロヘキサノン、エチレンジアミン又はアミノシクロヘキサンである、付記7記載の導電性コーティング剤。
(付記9)前記芳香族化合物が、アニリン、p−フェニレンジアミン、トルエン又はキシレンである、付記7記載の導電性コーティング剤。
(付記10)レベリング剤を更に含有する、付記1から9までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
(付記11)付記1から10までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤から形成された導電性コーティング膜。
(付記12)付記1から10までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤を製造する方法であって、前記導電性ポリマーの溶液に前記分散安定剤を混和し、その後に前記ドーパントを混和することを特徴とする導電性コーティング剤製造方法。
【0051】
【発明の効果】
以上示したように、本発明によれば、良好な導電性を持つ皮膜がそのまま形成でき、腐食性がなく、長期保存が可能な安定性を持つ、ドープされた導電性ポリマーコーティング剤を提供することができる。本発明の導電性ポリマーコーティング剤を使用することにより、電子部品分野に限らず、プラスティック製品などの分野においても、フィルムの巻き付き、張り付き、塵埃付着や、フィルム以外のプラスティック製品などにおける塵埃付着など、様々な静電気帯電に関する障害を防止できるようになる。
Claims (5)
- 溶媒中に、ドーパントにより導電性を示す状態にされた導電性ポリマーと、導電性ポリマーの分散を長期間維持可能な分散安定剤とを含む導電性コーティング剤。
- 前記導電性ポリマーがポリアニリン又はその誘導体である、請求項1記載の導電性コーティング剤。
- 前記ドーパントが長鎖アルキル基を有する酸である、請求項1又は2記載の導電性コーティング剤。
- 前記分散安定剤が、分子内に極性部分と非極性部分を有する脂肪族又は脂環式の液体有機化合物であるか、あるいはアミノ基又はアルキル基を有する芳香族化合物である、請求項1から3までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤。
- 請求項1から4までのいずれか一つに記載の導電性コーティング剤を製造する方法であって、前記導電性ポリマーの溶液に前記分散安定剤を混和し、その後に前記ドーパントを混和することを特徴とする導電性コーティング剤製造方法。
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2003
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