JP2004290114A - 高機能性食品素材、これを用いた食品及び飲料 - Google Patents

高機能性食品素材、これを用いた食品及び飲料 Download PDF

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Abstract

【課題】焼酎粕の有効利用及び、γ−アミノ酪酸(GABA)等のアミノ酸類の物質を安価に且つ大量に製造する方法を求めて本発明が完成された。すなわち、本発明の目的は、γ―アミノ酪酸等のアミノ酸類を豊富に含有する高機能性食品素材、これを用いた食品及び飲料を提供することにある。
【解決手段】本発明においては、蒸煮したソバに麹を作用させ発酵させた後、アルコールを主とする揮発成分を取り除いてなる物質を食品素材として用いる。上記のような物質(食品素材)は、そば焼酎の製造過程から焼酎粕として得ることができる。

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、γ−アミノ酪酸等のアミノ酸類を豊富に含有する高機能性食品素材、これを用いた食品及び飲料に関する。なお、本明細書において「アミノ酸類」とは、アミノ酸及びアミノ酸誘導体を含む概念であり、従って、γ−アミノ酪酸も含まれる。
【0002】
【従来の技術】
γ−アミノ酪酸等のアミノ酸類の物質は、高機能成分として知られている。γ−アミノ酪酸(γ−aminobutyric acid, GABA)はグルタミン酸からグルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamate decarboxylase, GAD)[EC.4.1.1.15]の作用により生成され、血圧上昇抑制作用(H.C. Stanton: Arch. Int. Pharmacodyn., 143, 195−204, 1963)を有することで注目されている。醸造品におけるGABAに関しては、味噌(宮間浩一、阿久津智美、渡辺恒夫、岡本竹己:みその科学と技術、46、168、1998)や清酒(片山浩平、岩井洋子、家村芳次、腹昌道:醸協91,658,1996)の製造工程におけるGABAの由来や挙動について報告がなされている。
【0003】
アミノ酸を豊富に含む飲食物を製造するに際し、焼酎等の蒸留粕を利用する動きがある。現在、焼酎蒸留粕は、南九州4県において年間440,000kLに達している(熊本国税局 平成12酒造年度焼酎調査書、2000)。焼酎粕の処理は、海洋投棄から陸上処理への転換が進んでいる。その中で、有効利用されている事例としては、濃縮乾燥加工後に家畜飼料としたり、メタン発酵によりエネルギー変換するものがある。また、遠心分離後上澄み液を焼酎仕込み水にする再利用法(土谷紀美、西村賢了、園田頼和:醸協、94,667−673,1999)についても提案されている。
【0004】
一方、泡盛蒸留粕の8%(2,000kL)については、糖などを添加あるいは無添加で、クエン酸やアミノ酸を豊富に含むことを特徴とした健康飲料として利用されている(沖縄県国税事務所:平成13年度泡盛調査書、2001)。また、横山らは焼酎粕を用いた減塩調味料の生産及びその機能性について報告している(横山定治、垂水彰二:生物工学、79、211−217、2001)。
【0005】
更に、麦焼酎粕の有する脂肪肝抑制効果(望月望、宮本安紀子、萩原美和子、竹島直樹、大森俊郎:醸協、96、559−563、2001)や乳酸菌増殖促進効果(Y. Furuta, H. takahashi, T. Omori, K. Sonomoto, K. Ishizaki: Ann.
N.Y. Acad. Sci., 864, 276−279, 1998)、芋焼酎粕に含まれる成長促進因子(L. D. Mahfuds, K. Hayashi,
Y. Otsuji, A. Ohtsuka, Y. Tomita: Jpn. Poult. Sci., 33, 1−5, 1996)やα−トコフェロールに関する報告(林國興:生物と化学、36、81−82、1998)がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような状況に鑑み、焼酎粕の有効利用及び、γ−アミノ酪酸(GABA)等のアミノ酸類の物質を安価に且つ大量に製造する方法を求めて本発明が完成された。すなわち、本発明の目的は、γ―アミノ酪酸等のアミノ酸類を豊富に含有する高機能性食品素材、これを用いた食品及び飲料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては、蒸煮したソバに麹を作用させ発酵させた後、アルコールを主とする揮発成分を取り除いてなる物質を食品素材として用いる。上記のような物質(食品素材)は、例えば、そば焼酎の製造過程から焼酎粕として得ることができる。
【0008】
焼酎製造において、もろみ中に含まれるγ−アミノ酪酸(GABA)等のアミノ酸類は、蒸留工程において、焼酎に移行せず蒸留粕に濃縮されていると考えられる。従って、本発明によれば、そば焼酎の製造工程において排出される焼酎粕を、今まで想像もつかなかった全く新たな用途に適用可能となる。
【0009】
また、本発明者は、蒸煮したソバに麹菌処理を施すことによって、グルタミン酸等の遊離アミノ酸が作られることを解明した。
【0010】
【発明の実施の形態】
今回、我々は穀類としてのソバとその発芽物、麹菌による処理物、及び焼酎粕を分析した結果、GABAが麹菌処理で著しく増えることを確認した。また、ソバ焼酎粕では、他の焼酎粕(麦、芋等)に比べて、遙かに高い値のアミノ酸類を確認した。
【0011】
表1に、各種酒類粕中のアミノ酸類の代表としてGABA及びグルタミン酸の含有量を示す。この表から明らかなように、そば焼酎粕にはグルタミン酸は含有されていないが、GABAが豊富に含有されていることが分かる。なお、表1に示した含有量は、各々乾燥物100g当たりの含量(重量)である。
【表1】
Figure 2004290114
【0012】
次に、本発明に係るソバ焼酎粕を利用した食品素材中のアミノ酸類(GABA,グルタミン酸)の含有量について説明する。表2は、焼酎製造工程に対応する各段階での成分量を示す。本分析は、コントロールの未処理ソバ;水に浸漬したソバ;麹菌処理を施したもの;焼酎粕の原液;焼酎粕の濃縮物について行われた。
【表2】
Figure 2004290114
【0013】
表2に示す分析において、材料となるソバとしては、(株)オーサワジャパンより提供されたものを使用した。ソバ焼酎粕は、減圧蒸留したもの、及び約6倍の濃縮物(水分68.7%)は、雲海酒造より提供されたものを使用した。Aspergillus oryzae(黄麹)及びAspergillus niger(黒麹)は岡山県テクノサポートより提供されたものを使用した。
【0014】
GABA及び遊離アミノ酸(アミノ酸類)の分析に際し、100倍量の0.02N塩酸でホモジナイズ後、0.2μmメンブランフィルターを通したものを試料とした。アミノ酸分析は、日立835型高速アミノ酸分析計を用い、データー処理装置として日立D−7000型インテグレーションを用いた。必要な薬品については、全てアミノ酸分析専用または試薬特級を用いた。
【0015】
表2に示すように、コントロールの未処理ソバに比べてそれを水に浸漬したものはGABAが増加することが確認された。また、蒸煮後麹菌で処理したものは更にGABA及びグルタミン酸(Glu)含量の増加することが確認された。
【0016】
一方、ソバ焼酎粕(減圧)及び蒸留粕の濃縮物はいずれも極めて高いGABA含量を示した。これら焼酎粕を50℃乾燥重量に換算すると、550mg/100g以上となる。しかし、このものにグルタミン酸(Glu)は含まれていなかった。
【0017】
表3は、焼酎製造工程に対応する各段階での主なアミノ酸類の成分量を示す。本分析は、表2の場合と同様に、コントロールの未処理ソバ;水に浸漬したソバ;麹菌処理を施したもの;焼酎粕の原液;焼酎粕の濃縮物について行われた。
【表3】
Figure 2004290114
【0018】
表4は、主なアミノ酸類の標準値を示す。
【表4】
Figure 2004290114
【0019】
表5〜表13は、以下に示すように、各製造過程毎の主なアミノ酸類の含有量を示す。
表5:未処理ソバ(コントロール)
表6:水に1日間浸漬したソバ
表7:水に2日間浸漬したソバ
表8:水に3日間浸漬したソバ
表9:黄色麹菌で1日間醗酵させたソバ
表10:黄色麹菌で3日間醗酵させたソバ
表11:黒麹菌で3日間醗酵させたソバ
表12:ソバ焼酎製造によって作られた焼酎粕原液
表13:焼酎粕原液の濃縮物
上述した表3は、理解を容易にするために、表5〜表13のデータのうち、含有量(濃度2)のみをまとめたものである。
【表5】
Figure 2004290114
【表6】
Figure 2004290114
【表7】
Figure 2004290114
【表8】
Figure 2004290114
【表9】
Figure 2004290114
【表10】
Figure 2004290114
【表11】
Figure 2004290114
【表12】
Figure 2004290114
【表13】
Figure 2004290114
【0020】
表3から分かるように、蒸煮したソバに麹菌を作用させ発酵させた後、アルコールを主とする揮発成分を取り除いた状態(焼酎粕原液)で、γ−アミノ酪酸,システイン(Cys),バリン(Val),フェニアラニン(Phe)の濃度が極めて高い。更に、焼酎粕原液を遠心分離して上清を濃縮した場合には、上記各アミノ酸類の濃度が上昇する。
【0021】
また、蒸煮したソバに麹(黄麹、黒麹)を作用させ発酵させた状態では、グルタミン酸、トレオニン(Thr)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ileu)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)の含有量が際だって高い。
【0022】
上述したソバ焼酎粕、ソバ焼酎粕の濃縮物、或いは、蒸煮したソバに麹及び酵母を作用させ発酵させた物質は、例えば、スプレードライ等の既知の方法によって乾燥させ、種々の食品及び飲料に添加することができる。
【0023】
なお、上記実施例においては、焼酎の製造工程を前提としているが、本発明に係る食品素材は、焼酎の製造とは別に製造可能であることは言うまでもない。
【0024】
以上、本発明の実施例(実施形態、実施態様)について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。

Claims (14)

  1. 蒸煮したソバに麹菌を作用させ発酵させた後、アルコールを主とする揮発成分を取り除いてなり、アミノ酸類を豊富に含有した食品素材。
  2. 前記アミノ酸類は、γ−アミノ酪酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の食品素材。
  3. 前記アミノ酸類は、システイン(Cys),バリン(Val),フェニアラニン(Phe)のうちの少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の食品素材。
  4. 30℃以上の常圧あるいは減圧状態で、前記アルコールを主とする揮発成分を取り除くことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の食品素材。
  5. 前記アルコールを主とする揮発成分を取り除いた後、更に、遠心分離して上清を濃縮してなることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の食品素材。
  6. 蒸煮したソバに麹菌を作用させ発酵させた後、アルコールを主とする揮発成分を取り除いてなり、γ−アミノ酪酸,システイン(Cys),バリン(Val),フェニアラニン(Phe)の全てを豊富に含むことを特徴とする食品素材。
  7. 前記アルコールを主とする揮発成分を取り除いた後、更に、遠心分離して上清を濃縮してなることを特徴とする請求項6に記載の食品素材。
  8. 請求項1に記載の食品素材を含有してなる飲料。
  9. 請求項1に記載の食品素材を含有してなる食品。
  10. 蒸煮したソバに麹を作用させ発酵させてなり、遊離アミノ酸を豊富に含有した食品素材。
  11. 前記遊離アミノ酸は、グルタミン酸を含むことを特徴とする請求項10に記載の食品素材。
  12. 前記遊離アミノ酸は、トレオニン(Thr)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ileu)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の食品素材。
  13. 請求項10に記載の食品素材を含有してなる飲料。
  14. 請求項10に記載の食品素材を含有してなる食品。
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