JP2004289441A - 弾性表面波素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電基板と、圧電基板上に形成された相互拡散防止層と、相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層を備える弾性表面波素子およびその製造方法において、高周波および大電力に対応した弾性表面波素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】圧電基板1は、相互拡散防止層2と、Alを主成分とする電極層3とを有するIDT電極4を備える。相互拡散防止層2は、金属酸化物または金属窒化物である。
【効果】これにより、使用時における劣化の少ない、高周波および大電力に対応した弾性表面波素子およびその製造方法の提供が可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】圧電基板1は、相互拡散防止層2と、Alを主成分とする電極層3とを有するIDT電極4を備える。相互拡散防止層2は、金属酸化物または金属窒化物である。
【効果】これにより、使用時における劣化の少ない、高周波および大電力に対応した弾性表面波素子およびその製造方法の提供が可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜素子、特に圧電基板上に形成された相互拡散防止層と、相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層とを備える高周波および大電力を扱う弾性表面波素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話や移動体通信の発展に伴い、圧電基板に所望の電極パターンが形成された弾性表面波素子が、弾性表面波フィルターや弾性表面波共振子として盛んに利用されている。この弾性表面波素子の電極膜には、比重が小さいこと、電気抵抗が小さいとの理由により、当初よりAlが使用されている。一方、弾性表面波素子における高周波化への対応は、その電極膜の薄膜化、また電極パターンの微細化が必要となる。圧電基板を用いた弾性表面波素子の動作状態におけるAl電極膜には、使用する周波数に対応した繰り返し応力が加わる。薄膜化および微細化されたAl電極膜は、Al電極膜に加わる応力により、Al原子のマイグレーションを生じる。これによりAl電極膜に欠陥が発生し、弾性表面波素子の特性を大きく劣化させるとの課題を有していた。
【0003】
そこで、圧電機能を有する基板上に、下層から、Tiからなる第一層、AlまたはAl合金からなる第二層、金属間化合物またはシリサイド層からなる第三層、AlまたはAl合金からなる第四層に順に形成された四層構造の電極膜を有している弾性表面波素子が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−185283号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術による弾性表面波素子においては、以下の問題点が存在する。
【0006】
特許文献1においては、部分的な配向の乱れによる耐電力性に対するバラツキを抑え、電極膜の信頼性を向上させるために、電極膜を四層の多層構成にする。
【0007】
このような多層構成は、電極膜形成における製造コストの観点より好ましくないとの課題を有する。また、主電極となるAl電極間に、異種金属間化合物や異種金属層を設けることは、必然的に主電極膜の電気抵抗値の増大をもたらす。その結果、弾性表面波素子の損失が増大することが考えられる。これは、高性能および高品質が求められる弾性表面波素子として使用できないとの課題を有する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決すべく本発明の弾性表面波素子は、圧電基板と、圧電基板上に形成された相互拡散防止層と、相互拡散防止層上に形成されたAlを主成分とする電極層とを備える弾性表面波素子である。相互拡散防止層は、金属酸化物または金属窒化物であることを特徴とする。また、相互拡散防止層は、Ti、Ni、Cr、Ru、Ce、Mo、W、Alのいずれかを主成分とする金属から構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の弾性表面波素子の製造方法は、圧電基板を用意する工程と、圧電基板上に相互拡散防止層を形成する工程と、相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層を形成する工程とを備えることを特徴とする。また、相互拡散防止層は、成膜装置内のH2O分圧が10−5Pa以上の雰囲気で形成したことを特徴とする。また、相互拡散防止層は、成膜装置内にO2またはN2を導入して形成することを特徴する。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とするもので、圧電基板の有する特性を劣化させることなく、耐電力性に優れ、電子機器の高性能化に対応した高精度および高信頼性な弾性表面波素子を製造コストの大幅な上昇させることなく提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の弾性表面波素子における一実施例の概略断面図を示す。
【0012】
図1に示した弾性表面波素子は、圧電基板1と、圧電基板1上に形成された相互拡散防止層2と、相互拡散防止層2上にAlを主成分とする電極層3とを有する。
【0013】
圧電基板1は、例えば、θ回転YカットX伝搬のLiNbO3基板またはLiTaO3基板が用いられる。圧電基板1のカット角は、その上に形成する膜の状態に影響を及ぼすことから、用いる圧電基板1に対応した適切な角度が設定される。また、相互拡散防止層2は、Ti、Ni、Cr、Ir、Ru、Ce、Mo、W、Alのうちのいずれかを主成分とする金属酸化物、または金属窒化物により構成される。更に、電極層3は、Alを主成分とする金属により構成される。
【0014】
以下に、本発明の弾性表面波素子の製造方法について説明する。
【0015】
先ず、フォトリソ技術を用いて、圧電基板1、例えば、38.5°回転YカットX伝搬のLiTaO3基板1上にIDT電極4を形成する。IDT電極4の形成は、先ず、圧電基板1をマルチソース対応のルツボを有する電子ビーム蒸着装置内にセットする。次に、電子ビーム蒸着装置内を、高真空ポンプにより真空状態とする。その後、電子ビーム蒸着装置内にH2Oを導入する。この時、電子ビーム蒸着装置内のH2O分圧が10−5〜10−4Paとなるように制御する。
【0016】
次に、電子ビーム蒸着法により、圧電基板1上に相互拡散防止層2として、Tiを20nm形成する。この時、電子ビーム蒸着装置に内在するH2OがTiと反応し、圧電基板1には、酸化したTiが形成される。
【0017】
次に、電子ビームの照射により高温になったルツボを冷却するために15分以上放置することで冷却する。同時に、電子ビーム蒸着装置内を高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。続いて、ルツボを回転させ、電極層3としてAlを150nm形成する。
【0018】
その際、圧電基板1に対し均一な膜厚の分布が得られるように、圧電基板1を5rpmの速度で自公転させることが好ましい。また、ルツボの上部にはシャッターが設けられ、所定の膜厚になるように、その開閉と蒸着時間により制御されている。また、成膜時の圧電基板1は、いずれも加熱は行っていない。
【0019】
この成膜方法は、電子ビーム蒸着法に限るものではなく、スパッタリング法等を用いても構わない。
【0020】
次に、形成された電極層上に、レジストをスピンコーター等を用いて、所定の膜厚を塗布し、所定のパターンが形成されたフォトリソマスクを介してレジストを露光する。続いて、現像処理およびエッチング処理することにより、IDT電極4が形成される。このパターン形成方法は、フォトリソグラフィ技術に限定するものではなく、ドライエッチング技術を用いても構わない。
【0021】
形成されたIDT電極4は、求められる機能に対するパターン形状、例えば、ラインアンドスペースが0.5μmの櫛形形状を有する。また、引き出し電極、パッド電極等が必要に応じて形成されている。その後、ダイシングおよびパッケージングなどの工程を経て、弾性表面波素子が得られる。
【0022】
図2に、上記に示した実施例により形成されたIDT電極4のSAM−depthプロファイルを示す。図2より、Ti層内にOが一定の割合で存在していることが確認できる。このOが存在する層が酸化Ti層である。また、この層の存在により、圧電基板1のTaが電極層3のAl内に拡散することが抑制されていることが認められる。
【0023】
励振部となる電極層3への圧電基板1のTaの拡散の抑制は、電極層3のAlの自己拡散を抑制する効果となり、マイグレーションを防止し、電極層3の耐電力性を向上させることになる。
【0024】
図3に、電子ビーム蒸着装置内にH2Oを導入しない従来技術により形成されたIDT電極のSAM−depthプロファイルを示す。Ti層内にOの存在は確認できるが、均一な安定した状態でないことが確認できる。これは、Tiが安定した酸化物状態でないことを示すものである。また、圧電基板1のTaがAl電極内に拡散していることが確認できる。これは、電極層3のAlと圧電基板1のTaとが相互拡散を起こしていることを示すものである。
【0025】
次に、図4に、装置内のH2O分圧と弾性表面波素子における寿命のと関係を示す。図4は、印加電力を1.4W、使用雰囲気温度を150℃とした加速試験により得られた実験結果を、実デバイスの使用条件である印加電圧を0.8W、使用雰囲気温度を50℃の値に換算した結果を示す。換算は、別の実験より求めた加速係数を使用した。使用した加速係数は、電力7乗則、温度12℃2倍則である。
【0026】
図4に示すように、本発明の弾性表面波素子は、装置内のH2O分圧が大きくなるにつれ破壊に至るまでの時間(寿命)が長くなる傾向が確認できる。また、H2O分圧が10−5Pa以上の所望する寿命の10000hrを安定してクリアすることから、この値を本発明における下限値とした。また、上限値は、成膜の安定性から設定した値である。
【0027】
次に、別な実施例として、以下に説明する。前記の実施例と同様の構成には同じの符号を使用する。
【0028】
圧電基板1、例えば、38.5°回転YカットX伝搬のLiTaO3基板1上にIDT電極4を形成する。
【0029】
IDT電極4の形成は、先ず、圧電基板1を所望する複数のターゲットが配置されたスパッタ装置内にセットする。
【0030】
この時、スパッタ装置内は、高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。その後、スパッタ装置内にスパッタガスとしてArガスとO2ガスまたはArガスとN2ガスとの混合ガスを導入する。導入するスパッタガスの混合比は、Ar50%−O250%またはAr50%−N250%ガスであることが好ましい。スパッタガス圧、混合ガスの導入量については、形成する相互拡散防止層2の状態により最適な値が設定される。次に、圧電基板1上に相互拡散防止層2として、スパッタリング法により、Tiを20nm形成する。この時、スパッタ装置に内在するOまたはNがTiが反応し、圧電基板1には、酸化したTiまたは窒化したTiが形成される。
【0031】
次に、スパッタ装置内を高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。その後、スパッタ装置内にスパッタガスのArのみを導入し、所定のスパッタガス圧に制御する。続いて、ターゲットを変更し、電極層3としてAlを150nm形成する。以降は、先に示した実施例の内容と同様であることから記載を省略する。
【0032】
上記実施例にて得られた弾性表面波素子の評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1より、本発明の弾性表面波素子は、O2ガスまたはN2ガスを導入しない従来技術により形成された弾性表面波素子に比較し、10倍以上寿命が向上したことが認められる。ここで示す結果は、印加電力を1.4W、使用雰囲気温度を150℃とした加速試験により得られた実験結果を、実デバイスの使用条件である印加電圧を0.8W、使用雰囲気温度を50℃の値に換算した結果を示す。換算は、別の実験より求めた加速係数を使用した。使用した加速係数は、電力7乗則、温度12℃2倍則である。
【0035】
また、相互拡散防止層2の形成方法は、上記に示した以外に、38.5°回転YカットX伝搬のLiTaO3圧電基板に電子ビーム蒸着法またはスパッタリング法によりTiを20nm形成する。次に、成膜装置内より取り出し、O2またはN2雰囲気にて熱処理して形成しても構わない。その後、再び成膜装置に内にセットし、成膜装置内を高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。以降は、先に示した実施例の内容と同様であることから記載を省略する。
【0036】
本発明の弾性表面波素子において、相互拡散防止層2を設けることでAlを主成分とした電極層3と圧電基板1の相互拡散が抑制される。その結果、高寿命化した弾性表面波素子が得られる。
【0037】
【発明の効果】
以上のような本発明の弾性表面波素子およびその製造方法によれば、金属酸化物はたは金属窒化物からなる相互拡散防止層を設けることでAl電極と圧電基板の相互拡散が抑制される。その結果、主電極膜であるAl膜の自己拡散が抑制され、高い信頼性を有する電極膜を提供できることが可能となる。
【0038】
よって、圧電基板が本来有する特性を劣化させることなく、耐電力性に優れ、電子機器の高性能化に対応した高精度および高信頼性な弾性表面波素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弾性表面波素子の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の弾性表面波素子の一実施例の状態を示すSAM−depthプロファイルである。
【図3】従来の弾性表面波素子の一実施例の状態を示すSAM−depthプロファイルである。
【図4】本発明の弾性表面波素子の一実施例における、H2O分圧による弾性表面波素子の寿命との関係を示す表すグラフである。
【符号の説明】
1…圧電基板
2…相互拡散防止層
3…電極層
4…IDT電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜素子、特に圧電基板上に形成された相互拡散防止層と、相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層とを備える高周波および大電力を扱う弾性表面波素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話や移動体通信の発展に伴い、圧電基板に所望の電極パターンが形成された弾性表面波素子が、弾性表面波フィルターや弾性表面波共振子として盛んに利用されている。この弾性表面波素子の電極膜には、比重が小さいこと、電気抵抗が小さいとの理由により、当初よりAlが使用されている。一方、弾性表面波素子における高周波化への対応は、その電極膜の薄膜化、また電極パターンの微細化が必要となる。圧電基板を用いた弾性表面波素子の動作状態におけるAl電極膜には、使用する周波数に対応した繰り返し応力が加わる。薄膜化および微細化されたAl電極膜は、Al電極膜に加わる応力により、Al原子のマイグレーションを生じる。これによりAl電極膜に欠陥が発生し、弾性表面波素子の特性を大きく劣化させるとの課題を有していた。
【0003】
そこで、圧電機能を有する基板上に、下層から、Tiからなる第一層、AlまたはAl合金からなる第二層、金属間化合物またはシリサイド層からなる第三層、AlまたはAl合金からなる第四層に順に形成された四層構造の電極膜を有している弾性表面波素子が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−185283号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術による弾性表面波素子においては、以下の問題点が存在する。
【0006】
特許文献1においては、部分的な配向の乱れによる耐電力性に対するバラツキを抑え、電極膜の信頼性を向上させるために、電極膜を四層の多層構成にする。
【0007】
このような多層構成は、電極膜形成における製造コストの観点より好ましくないとの課題を有する。また、主電極となるAl電極間に、異種金属間化合物や異種金属層を設けることは、必然的に主電極膜の電気抵抗値の増大をもたらす。その結果、弾性表面波素子の損失が増大することが考えられる。これは、高性能および高品質が求められる弾性表面波素子として使用できないとの課題を有する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決すべく本発明の弾性表面波素子は、圧電基板と、圧電基板上に形成された相互拡散防止層と、相互拡散防止層上に形成されたAlを主成分とする電極層とを備える弾性表面波素子である。相互拡散防止層は、金属酸化物または金属窒化物であることを特徴とする。また、相互拡散防止層は、Ti、Ni、Cr、Ru、Ce、Mo、W、Alのいずれかを主成分とする金属から構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の弾性表面波素子の製造方法は、圧電基板を用意する工程と、圧電基板上に相互拡散防止層を形成する工程と、相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層を形成する工程とを備えることを特徴とする。また、相互拡散防止層は、成膜装置内のH2O分圧が10−5Pa以上の雰囲気で形成したことを特徴とする。また、相互拡散防止層は、成膜装置内にO2またはN2を導入して形成することを特徴する。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とするもので、圧電基板の有する特性を劣化させることなく、耐電力性に優れ、電子機器の高性能化に対応した高精度および高信頼性な弾性表面波素子を製造コストの大幅な上昇させることなく提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の弾性表面波素子における一実施例の概略断面図を示す。
【0012】
図1に示した弾性表面波素子は、圧電基板1と、圧電基板1上に形成された相互拡散防止層2と、相互拡散防止層2上にAlを主成分とする電極層3とを有する。
【0013】
圧電基板1は、例えば、θ回転YカットX伝搬のLiNbO3基板またはLiTaO3基板が用いられる。圧電基板1のカット角は、その上に形成する膜の状態に影響を及ぼすことから、用いる圧電基板1に対応した適切な角度が設定される。また、相互拡散防止層2は、Ti、Ni、Cr、Ir、Ru、Ce、Mo、W、Alのうちのいずれかを主成分とする金属酸化物、または金属窒化物により構成される。更に、電極層3は、Alを主成分とする金属により構成される。
【0014】
以下に、本発明の弾性表面波素子の製造方法について説明する。
【0015】
先ず、フォトリソ技術を用いて、圧電基板1、例えば、38.5°回転YカットX伝搬のLiTaO3基板1上にIDT電極4を形成する。IDT電極4の形成は、先ず、圧電基板1をマルチソース対応のルツボを有する電子ビーム蒸着装置内にセットする。次に、電子ビーム蒸着装置内を、高真空ポンプにより真空状態とする。その後、電子ビーム蒸着装置内にH2Oを導入する。この時、電子ビーム蒸着装置内のH2O分圧が10−5〜10−4Paとなるように制御する。
【0016】
次に、電子ビーム蒸着法により、圧電基板1上に相互拡散防止層2として、Tiを20nm形成する。この時、電子ビーム蒸着装置に内在するH2OがTiと反応し、圧電基板1には、酸化したTiが形成される。
【0017】
次に、電子ビームの照射により高温になったルツボを冷却するために15分以上放置することで冷却する。同時に、電子ビーム蒸着装置内を高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。続いて、ルツボを回転させ、電極層3としてAlを150nm形成する。
【0018】
その際、圧電基板1に対し均一な膜厚の分布が得られるように、圧電基板1を5rpmの速度で自公転させることが好ましい。また、ルツボの上部にはシャッターが設けられ、所定の膜厚になるように、その開閉と蒸着時間により制御されている。また、成膜時の圧電基板1は、いずれも加熱は行っていない。
【0019】
この成膜方法は、電子ビーム蒸着法に限るものではなく、スパッタリング法等を用いても構わない。
【0020】
次に、形成された電極層上に、レジストをスピンコーター等を用いて、所定の膜厚を塗布し、所定のパターンが形成されたフォトリソマスクを介してレジストを露光する。続いて、現像処理およびエッチング処理することにより、IDT電極4が形成される。このパターン形成方法は、フォトリソグラフィ技術に限定するものではなく、ドライエッチング技術を用いても構わない。
【0021】
形成されたIDT電極4は、求められる機能に対するパターン形状、例えば、ラインアンドスペースが0.5μmの櫛形形状を有する。また、引き出し電極、パッド電極等が必要に応じて形成されている。その後、ダイシングおよびパッケージングなどの工程を経て、弾性表面波素子が得られる。
【0022】
図2に、上記に示した実施例により形成されたIDT電極4のSAM−depthプロファイルを示す。図2より、Ti層内にOが一定の割合で存在していることが確認できる。このOが存在する層が酸化Ti層である。また、この層の存在により、圧電基板1のTaが電極層3のAl内に拡散することが抑制されていることが認められる。
【0023】
励振部となる電極層3への圧電基板1のTaの拡散の抑制は、電極層3のAlの自己拡散を抑制する効果となり、マイグレーションを防止し、電極層3の耐電力性を向上させることになる。
【0024】
図3に、電子ビーム蒸着装置内にH2Oを導入しない従来技術により形成されたIDT電極のSAM−depthプロファイルを示す。Ti層内にOの存在は確認できるが、均一な安定した状態でないことが確認できる。これは、Tiが安定した酸化物状態でないことを示すものである。また、圧電基板1のTaがAl電極内に拡散していることが確認できる。これは、電極層3のAlと圧電基板1のTaとが相互拡散を起こしていることを示すものである。
【0025】
次に、図4に、装置内のH2O分圧と弾性表面波素子における寿命のと関係を示す。図4は、印加電力を1.4W、使用雰囲気温度を150℃とした加速試験により得られた実験結果を、実デバイスの使用条件である印加電圧を0.8W、使用雰囲気温度を50℃の値に換算した結果を示す。換算は、別の実験より求めた加速係数を使用した。使用した加速係数は、電力7乗則、温度12℃2倍則である。
【0026】
図4に示すように、本発明の弾性表面波素子は、装置内のH2O分圧が大きくなるにつれ破壊に至るまでの時間(寿命)が長くなる傾向が確認できる。また、H2O分圧が10−5Pa以上の所望する寿命の10000hrを安定してクリアすることから、この値を本発明における下限値とした。また、上限値は、成膜の安定性から設定した値である。
【0027】
次に、別な実施例として、以下に説明する。前記の実施例と同様の構成には同じの符号を使用する。
【0028】
圧電基板1、例えば、38.5°回転YカットX伝搬のLiTaO3基板1上にIDT電極4を形成する。
【0029】
IDT電極4の形成は、先ず、圧電基板1を所望する複数のターゲットが配置されたスパッタ装置内にセットする。
【0030】
この時、スパッタ装置内は、高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。その後、スパッタ装置内にスパッタガスとしてArガスとO2ガスまたはArガスとN2ガスとの混合ガスを導入する。導入するスパッタガスの混合比は、Ar50%−O250%またはAr50%−N250%ガスであることが好ましい。スパッタガス圧、混合ガスの導入量については、形成する相互拡散防止層2の状態により最適な値が設定される。次に、圧電基板1上に相互拡散防止層2として、スパッタリング法により、Tiを20nm形成する。この時、スパッタ装置に内在するOまたはNがTiが反応し、圧電基板1には、酸化したTiまたは窒化したTiが形成される。
【0031】
次に、スパッタ装置内を高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。その後、スパッタ装置内にスパッタガスのArのみを導入し、所定のスパッタガス圧に制御する。続いて、ターゲットを変更し、電極層3としてAlを150nm形成する。以降は、先に示した実施例の内容と同様であることから記載を省略する。
【0032】
上記実施例にて得られた弾性表面波素子の評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1より、本発明の弾性表面波素子は、O2ガスまたはN2ガスを導入しない従来技術により形成された弾性表面波素子に比較し、10倍以上寿命が向上したことが認められる。ここで示す結果は、印加電力を1.4W、使用雰囲気温度を150℃とした加速試験により得られた実験結果を、実デバイスの使用条件である印加電圧を0.8W、使用雰囲気温度を50℃の値に換算した結果を示す。換算は、別の実験より求めた加速係数を使用した。使用した加速係数は、電力7乗則、温度12℃2倍則である。
【0035】
また、相互拡散防止層2の形成方法は、上記に示した以外に、38.5°回転YカットX伝搬のLiTaO3圧電基板に電子ビーム蒸着法またはスパッタリング法によりTiを20nm形成する。次に、成膜装置内より取り出し、O2またはN2雰囲気にて熱処理して形成しても構わない。その後、再び成膜装置に内にセットし、成膜装置内を高真空ポンプにより7×10−4Pa以下の高真空にする。以降は、先に示した実施例の内容と同様であることから記載を省略する。
【0036】
本発明の弾性表面波素子において、相互拡散防止層2を設けることでAlを主成分とした電極層3と圧電基板1の相互拡散が抑制される。その結果、高寿命化した弾性表面波素子が得られる。
【0037】
【発明の効果】
以上のような本発明の弾性表面波素子およびその製造方法によれば、金属酸化物はたは金属窒化物からなる相互拡散防止層を設けることでAl電極と圧電基板の相互拡散が抑制される。その結果、主電極膜であるAl膜の自己拡散が抑制され、高い信頼性を有する電極膜を提供できることが可能となる。
【0038】
よって、圧電基板が本来有する特性を劣化させることなく、耐電力性に優れ、電子機器の高性能化に対応した高精度および高信頼性な弾性表面波素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弾性表面波素子の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の弾性表面波素子の一実施例の状態を示すSAM−depthプロファイルである。
【図3】従来の弾性表面波素子の一実施例の状態を示すSAM−depthプロファイルである。
【図4】本発明の弾性表面波素子の一実施例における、H2O分圧による弾性表面波素子の寿命との関係を示す表すグラフである。
【符号の説明】
1…圧電基板
2…相互拡散防止層
3…電極層
4…IDT電極
Claims (5)
- 圧電基板と、前記圧電基板上に形成された相互拡散防止層と、前記相互拡散防止層上に形成されたAlを主成分とする電極層とを備える弾性表面波素子であって、
前記相互拡散防止層は、金属酸化物または金属窒化物であることを特徴とする弾性表面波素子。 - 前記相互拡散防止層は、Ti、Ni、Cr、Ru、Ce、Mo、W、Alのいずれかを主成分とする金属から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の弾性表面波素子。
- 圧電基板を用意する工程と、成膜装置内のH2O分圧が10−5Pa以上の雰囲気で、前記圧電基板上に金属酸化物または金属窒化物からなる相互拡散防止層を形成する工程と、前記相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層を形成する工程とを備えることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
- 圧電基板を用意する工程と、前記圧電基板上に成膜装置内がO2またはN2雰囲気で、前記圧電基板上に金属酸化物または金属窒化物からなる相互拡散防止層を形成する工程と、前記相互拡散防止層上にAlを主成分とする電極層を形成する工程とを備えることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
- 前記相互拡散防止層は、Ti、Ni、Cr、Ru、Ce、Mo、W、Alのいずれかを主成分とする金属から構成したことを特徴とする、請求項3または4に記載の弾性表面波素子の製造方法。
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JP2003078265A JP2004289441A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | 弾性表面波素子およびその製造方法 |
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WO2021241434A1 (ja) * | 2020-05-28 | 2021-12-02 | 株式会社村田製作所 | 弾性波装置 |
-
2003
- 2003-03-20 JP JP2003078265A patent/JP2004289441A/ja active Pending
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