JP3975924B2 - 表面波装置及びその製造方法 - Google Patents

表面波装置及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば表面波フィルタなどに用いられる表面波装置に関し、より詳細には、LiTaO3からなる圧電基板を用いた表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、帯域フィルタとして、40°〜42°回転Y板X伝搬LiTaO3基板を用いた表面波装置が知られている(例えば、下記の非特許文献1)。RF帯の帯域フィルタでは、上記40°〜42°回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、波長λで規格化された膜厚H/λが0.08〜0.10であるAl膜によりIDTが形成されていた。
【0003】
上記のように、40°〜42°回転Y板X伝搬LiTaO3基板を用いた従来の表面波装置では、周波数温度特性TCFが−33ppm/℃と比較的大きいため、より一層温度特性が良好である仕様を十分に満たすことができなかった。なお、従来、表面波装置の周波数温度特性TCFを改善する方法として、LiTaO3基板上にAlからなるIDTを形成した後に、SiO2層を形成する方法が知られている(下記の特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】
1997年電子情報通信学会総合大会論文集:SA−10−6、第500頁−501頁
【特許文献1】
特開平2−295212号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、AlからなるIDTを用いた共振子やフィルタを形成する場合、大きな電気機械結合係数Ksawや反射係数を得るには、後述の図4や図5に示すように、IDTの電極膜厚H/λ(Hは膜厚、λは表面波の波長)は、0.08〜0.10とかなり厚くしなければならない。このように、AlからなるIDTがかなり厚くされているため、図15(a)に示されているIDTが形成されている部分において、周波数温度特性を改善するためにSiO2膜がその上に形成されると、図15(b),(c)に示すように、SiO2膜において大きな段差が生じ、SiO2膜にクラックが生じることがあった。そのため、クラックの発生により、弾性表面波フィルタのフィルタ特性が悪化しがちであった。
【0006】
加えて、AlからなるIDTの電極膜厚が厚いため、SiO2膜の形成によるIDTの電極表面の凹凸を被覆する効果が十分でなく、それによって、周波数温度特性が十分に改善されないことがあった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、回転Y板X伝搬のLiTaO3基板を用いた弾性表面波装置において、SiO2膜の形成により周波数温度特性を改善し得るだけでなく、IDTの電極膜厚を薄くすることにより、SiO2膜におけるクラックを防止することができると共に減衰定数も大幅に低減でき、従って目的とするフィルタ特性などの電気的特性を得ることができ、かつIDTにおける電気機械結合係数及び反射係数が十分な大きさとされる、弾性表面波装置及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のある広い局面によれば、オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板と、前記圧電基板上に形成されており、少なくとも白金からなる電極層を有し、膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.005〜0.054の範囲にあるIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電基板上に形成されており、膜厚をHsとしたとき、表面波の波長λで規格化膜厚Hs/λが0.10〜0.40の範囲にあるSiO2膜とを備えることを特徴とする、表面波装置が提供される。
【0009】
本発明に係る表面波装置のある特定の局面では、前記圧電基板のオイラー角が(0±2°,90°〜155°,0±2°)であり、前記IDTの規格化膜厚H/λが0.01〜0.04の範囲にあり、それによって、電気機械結合係数を高めることができる。
【0010】
本発明に係る表面波装置の他の特定の局面では、前記LiTaO3からなる圧電基板のオイラー角と、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが下記の表3に示す組み合わせのいずれかであり、それによって、減衰定数αを0.05dB/λ以下、また、表3中の好ましいオイラー角の場合には、減衰定数αを0.025dB/λ以下とすることができる。
【0011】
【表3】
Figure 0003975924
【0012】
本発明に係る表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電基板のオイラー角が(0±2°,102°〜150°,0±2°)であり、前記IDTの規格化膜厚H/λが0.013〜0.033の範囲にあり、それによって、電気機械結合係数を高めることができる。
【0013】
本発明に係る表面波装置のさらに限定的な局面では、前記LiTaO3からなる圧電基板のオイラー角と、前記SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが下記の表4に示すいずれかの組み合わせであり、それによって、減衰定数αを0.05dB/λ以下、また、表4中の好ましいオイラー角の場合には、減衰定数αを0.025dB/λ以下とすることができる。
【0014】
【表4】
Figure 0003975924
【0015】
本発明に係る表面波装置のさらに他の特定の局面では、白金からなる電極層に積層された白金以外の金属からなる少なくとも1つの電極層をさらに備えていてもよく、IDTの全体の平均密度が白金の密度±20%の範囲であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0016】
本発明の別の広い局面によれば、オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板を用意する工程と、前記圧電基板上に、白金からなる電極層を少なくとも有する少なくもと1つのIDTを形成する工程と、前記IDTを形成した後に周波数調整を行う工程と、前記周波数調整後に、IDTを被覆するようにSiO2膜を前記圧電基板上に形成する工程とを備える、本発明の表面波装置の製造方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面波装置の模式的平面図である。表面波装置1は、縦結合共振子型表面波フィルタであり、オイラー角で(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3すなわち、0°〜70°回転Y板LiTaO3からなる圧電基板2を有する。
【0019】
圧電基板2上に、白金膜よりなるIDT3a,3b及び反射器5a,5bが形成されている。IDT3a,3bの規格化膜厚H/λは0.005〜0.054の範囲とされている。
【0020】
なお、IDTの規格化膜厚H/λにおいて、HはIDTの厚みを、λは表面波の波長を示す。
【0021】
また、IDT3a,3bを覆うように、圧電基板2上には、SiO2膜4が形成されている。SiO2膜4の規格化膜厚Hs/λは、0.10〜0.40の範囲とされている。なお、HsはSiO2膜の厚みを示し、λは表面波の波長を示す。
【0022】
本実施例では上記のように、オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板2と、H/λ=0.005〜0.054である白金よりなるIDT3a,3bと、Hs/λ=0.10〜0.40の範囲にあるSiO2膜4とを用いているため、周波数温度係数TCFが小さく、電気機械結合係数K2が大きく、かつ伝搬損失が小さい表面波装置を提供することができる。これを、以下の具体的な実験例に基づき説明する。
【0023】
LiTaO3基板を伝搬する表面波としては、レイリー波の他に、漏洩弾性表面波が存在する。漏洩弾性表面波は、レイリー波に比べて音速が速く、電気機械結合係数が大きい。しかしながら、漏洩弾性表面波は、エネルギーを基板内部に放射しながら伝搬する波である。従って、漏洩弾性表面波は、伝搬損失の原因となる減衰定数を有する。
【0024】
図2は、回転Y板X伝搬LiTaO3におけるオイラー角(0,θ,0)のθと、基板表面が電気的に短絡された場合の減衰定数(伝搬損失)αとの関係を示す。なお、回転角=θ−90度の関係である。
【0025】
図2から明らかなように、オイラー角のθが124〜126°の範囲で減衰定数αは小さい。この範囲を外れると、減衰定数αは大きくなる。
また、比較的膜厚が厚いAlからなるIDTを形成した場合には、θ=130°〜132°で減衰定数が小さくなることが知られている(例えば、前述した非特許文献1)。従って、従来、AlからなるIDTと、LiTaO3基板とを組み合わせた構成では、θ=130°〜132°の回転Y板X伝搬のLiTaO3基板が用いられていた。
【0026】
図3は、回転Y板X伝搬LiTaO3基板におけるオイラー角(0,θ,0)のθと電気機械結合係数K2との関係を示す。オイラー角のθが100°〜120°の範囲で大きな電気機械結合係数K2が得られることがわかる。しかしながら、θ=100°〜120°の範囲では、前述の図2から明らかなように減衰定数αが大きい。従って、このようなオイラー角のLiTaO3基板を用いることはできないことがわかる。
【0027】
図4は、36°回転Y板X伝搬[オイラー角で(0°,126°,0°)]のLiTaO3基板上に、電極膜として、白金膜またはアルミニウム膜を形成した場合の該電極膜の規格化膜厚H/λ(Hは膜厚を、λは表面波の波長を示す)と、電気機械結合係数K2との関係を示す。白金膜の規格化膜厚H/λ=0.005〜0.054の範囲では、電気機械結合係数K2は、H/λ=0(成膜しなかった場合)の場合の電気機械結合係数の1.5倍以上となり、H/λ=0.01〜0.04では、1.75倍以上となり、H/λ=0.013〜0.033では、1.85倍以上となることがわかる。
【0028】
従って、H/λ=0.005〜0.054とすることにより、電気機械結合係数K2を高めることができることがわかる。
【0029】
図5は、白金膜またはアルミニウム膜からなる電極膜の規格化膜厚H/λと、電極指1本あたりの反射係数との関係を示す図である。従来、AlからなるIDTでは、十分な反射係数と電気機械結合係数を得るためには、規格化膜厚H/λは0.08以上であることが必要であった。これに対して、白金膜からなるIDTでは、H/λが0.08以上のAl膜の場合と同等の反射係数を得るには、H/λは0.01以上であればよいことがわかる。
【0030】
よって、白金膜からなるIDTの規格化膜厚H/λは、0.005〜0.054の範囲、好ましくは0.01〜0.04の範囲、より好ましくは0.013〜0.033の範囲とすればよいことがわかる。
【0031】
次に、SiO2膜をLiTaO3基板上に形成した場合の周波数温度係数TCFの改善効果を説明する。図6は、θ=113°、126°及び129°の(0,θ,0)の各LiTaO3基板上にSiO2膜を成膜した場合の周波数温度係数TCFの変化を示す図である。
【0032】
図6から明らかなように、θが113°,126°及び129°のいずれの場合においても、SiO2の規格化膜厚Hs/λ(HsはSiO2膜の膜厚を、λは表面波の波長を示す)が0.10〜0.45の範囲において、TCFが−24〜+17ppm/℃の範囲にはいることがわかる。もっとも、SiO2膜の成膜には時間を要するため、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λは0.40以下であることが望ましい。従って、好ましくは、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λは、0.10〜0.40の範囲であり、それによって、短時間で成膜でき、かつTCFを−20〜+17ppm/℃の範囲とすることができる。
【0033】
従来、LiTaO3基板上に、Al電極を形成し、さらにSiO2膜を形成することにより、レイリー波などのTCFが改善されるという報告がいくつか存在する(例えば、特許文献1など)。しかしながら、LiTaO3基板−白金からなる電極−SiO2膜の積層構造において、電極の膜厚や漏洩弾性表面波の減衰定数を考慮にいれて実験が行われた報告は存在しない。
【0034】
図7及び図8は、オイラー角(0°,125°,0°)と、(0°,140°,0°)の各LiTaO3基板上に、種々の膜厚の白金からなるIDTと、種々の膜厚のSiO2膜とを形成した場合の減衰定数を示す図である。
【0035】
図7から明らかなように、θ=125°では、SiO2の膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつ白金よりなる電極の規格化膜厚H/λが0.005〜0.06の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図8から明らかなように、θ=140°では、白金からなる電極の規格化膜厚H/λが0.005〜0.06の範囲では、SiO2膜の膜厚の如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
【0036】
すなわち、TCFの絶対値を小さくし、大きな電気機械結合係数を得、かつ減衰定数を小さくするには、LiTaO3基板のカット角、SiO2膜の厚み及び白金からなる電極の膜厚の3つの条件を考慮しなければならないことがわかる。
【0037】
図9〜図14は、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及び白金からなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、θ(度)と減衰定数との関係を示す。
図9〜図14から明らかなように、白金からなる電極の規格化膜厚H/λが0.005〜0.054では、θは90°〜160°の範囲とすることが望ましいことがわかる。また、白金からなる電極の規格化膜厚H/λが0.01〜0.04及び0.013〜0.033においては、SiO2膜の膜厚と、最適なθとの関係は、減衰定数αを低下させることも考慮すると、下記の表5及び表6に示す通りとなる。ここで、表5及び表6における「LiTaO3のオイラー角」の範囲は、減衰定数が0.05dB/λ以下の範囲を規定したものである。また、表5及び表6におけるLiTaO3のオイラー角の「より好ましい」範囲は、減衰定数が0.025dB/λ以下の範囲を規定したものである。なお、この最適θは、白金電極の電極指幅のばらつきや単結晶基板のばらつきにより−2°〜+4°程度ばらつくことがある。
【0038】
【表5】
Figure 0003975924
【0039】
【表6】
Figure 0003975924
【0040】
すなわち、表5及び表6から明らかなように、白金よりなる電極の規格化膜厚H/λが、0.005〜0.054の場合、温度特性を改善するために、SiO2膜の膜厚を0.1〜0.4の範囲とした場合、LiTaO3のオイラー角におけるθは、90°〜160°の範囲、すなわち、回転角で0°〜70°の範囲を選択すればよいことがわかる。
【0041】
同様に、表5から明らかなように、白金膜からなる電極の規格化膜厚H/λが0.01〜0.04であり、周波数温度特性を改善するために、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO3基板のオイラー角のθは90°〜145°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO2膜の膜厚に応じて表5のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
【0042】
同様に、白金膜からなる電極の規格化膜厚H/λが0.013〜0.033であり、周波数温度特性を改善するために、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO3基板のオイラー角のθは、102°〜150°の範囲とすればよく、より好ましくは、SiO2膜の膜厚に応じて表6のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
【0043】
また、白金からなる電極膜の規格化膜厚が0.013〜0.033である場合のSiO2膜の膜厚とオイラー角の関係は、図9〜図14に示す白金からなる電極膜の規格化膜厚から換算して求めたものであり、それによって、表5及び表6のSiO2膜の膜厚とオイラー角の値を求めている。
【0044】
また、図16(a)〜(c)は、上記実施例の弾性表面波フィルタにおける表面の走査型電子顕微鏡写真である。ここでは、H/λ=0.02の規格化膜厚の白金からなるIDT上に、規格化膜厚Hs/λ=0.3のSiO2膜が形成される前後の結果が示されている。図16(b)の成膜後の写真から明らかなように、SiO2膜の表面にクラックは見られず、従って、クラックによる特性の劣化も生じ難いことがわかる。Al電極に比べ白金電極では、薄い膜厚で大きな電気機械結合係数と反射係数が得られる。そのため、薄い白金電極の上にSiO2が成膜されていても、図16(b),(c)に示すように、SiO2に大きな段差やクラックが生じないという利点がある。
【0045】
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に白金を主成分とする金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行い、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚のSiO2膜を成膜することが望ましい。これを、図17及び図18を参照して説明する。図17は、オイラー角(0°,126°,0°)の回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、種々の厚みH/λの白金からなるIDT上に種々の膜厚Hs/λのSiO2膜を形成した場合のSiO2膜厚に対する漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。また、図18は、同じオイラー角のLiTaO3基板上に、種々の膜厚H/λの白金からなるIDTとその上にSiO2膜を形成した場合の白金の膜厚に対する漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図17と図18を比較すれば明らかなように、白金の膜厚を変化させた場合の方が、SiO2膜の膜厚を変化させた場合よりも表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO2膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、白金からなるIDTを形成した後に、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどにより周波数調整を行うことが望ましい。
【0046】
なお、本発明は、上記のように、オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板、H/λ=0.005〜0.054である白金よりなるIDTと、Hs/λ=0.10〜0.40であるSiO2膜とを有することを特徴とするものであり、従って、IDTの数及び構造等については特に限定されない。すなわち、本発明は、図1に示した表面波装置だけでなく、上記条件を満たす限り、様々な表面波共振子や表面波フィルタ等のデバイスに適用することができる。
【0047】
また、白金からなる電極層の下や上に電極の密着強度を向上させるためやボンディングを容易とするために、TiやCr,Al等の他の金属からなる電極層を薄く成膜してもよく、その場合、IDT全体の平均密度が、白金の密度±20%以内であれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明に係る表面波装置では、オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板上に、規格化膜厚H/λが0.005〜0.054であり、かつ白金よりなるIDTが形成されており、IDTを覆うように、Hs/λ=0.10〜0.40のSiO2膜が形成されている、SiO2膜により周波数温度係数TCFが改善され、白金膜よりなるIDTの膜厚H/λが上記特定の範囲とされているため、電気機械結合係数と反射係数が大きく、さらにLiTaO3基板の回転角が上記特定の範囲とされているため、減衰定数が小さくされる。よって、周波数温度特性に優れ、大きな電気機械結合係数を有し、かつ伝搬損失が少ない表面波装置を提供することが可能となる。
【0049】
特に、IDTの膜厚H/λが0.010〜0.40、より好ましくは0.013〜0.033の範囲にある場合には、電気機械結合係数を効果的に高めることができる。
【0050】
また、白金電極が薄いため、この白金電極からなるIDT上にSiO2が成膜されてもSiO2に大きな段差やクラックができないため、Al電極の場合に生じるそれらに起因した挿入損失等の特性の劣化もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る表面波装置を示す模式的平面図。
【図2】オイラー角(0,θ,0)のLiTaO3基板のθと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図3】オイラー角(0,θ,0)のLiTaO3基板におけるθと電気機械結合係数K2との関係を示す図。
【図4】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に白金またはアルミニウムからなる電極膜を形成した構造における電極膜の規格化膜厚H/λと、電気機械結合係数K2との関係を示す図。
【図5】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金またはアルミニウムによりなる電極を形成した場合の電極の規格化膜厚と、電極指1本あたりの反射係数との関係を示す図。
【図6】オイラー角(0°,113°,0°)、(0°,126°,0°)及び(0°,129°0,0°)の各LiTaO3基板上にSiO2膜を形成した場合のSiO2膜の規格化膜厚Hs/λと、周波数温度係数TCFとの関係を示す図。
【図7】オイラー角(0°,125°,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みのSiO2膜及び様々な厚みの白金からなるIDTを形成した構造における減衰定数αの変化を示す図。
【図8】オイラー角(0°,140°,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みのSiO2膜及び様々な厚みの白金からなるIDTを形成した構造における減衰定数αの変化を示す図。
【図9】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金よりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.1のSiO2膜を形成した表面波装置におけるθと、白金よりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図10】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金よりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.15のSiO2膜を形成した表面波装置におけるθと、白金よりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図11】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金よりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.2のSiO2膜を形成した表面波装置におけるθと、白金よりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図12】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金よりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.25のSiO2膜を形成した表面波装置におけるθと、白金よりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図13】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金よりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.3のSiO2膜を形成した表面波装置におけるθと、白金よりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図14】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みの白金よりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.4のSiO2膜を形成した表面波装置におけるθと、白金よりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図15】(a)は、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に、膜厚H/λ=0.08のアルミニウム電極からなるIDTが形成された表面、(b)は、その上に厚みHs/λ=0.3のSiO2が成膜された表面、(c)は、その断面を示す各走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図16】(a)は、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に、厚みH/λ=0.02の白金からなるIDTが形成された表面、(b)は、その上に厚みHs/λ=0.3のSiO2が成膜された表面、(c)は、その断面を示す各走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図17】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に白金からなるIDTを形成し、さらにSiO2膜を形成した場合のSiO2膜の膜厚と、音速との関係を示す図。
【図18】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に白金からなるIDTを形成し、さらにSiO2膜を形成した場合の白金膜の膜厚と、音速との関係を示す図。
【符号の説明】
1…表面波装置
2…圧電基板
3a,3b…IDT
4…SiO2
5a,5b…反射器

Claims (7)

  1. オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板と、
    前記圧電基板上に形成されており、白金からなる電極層を有し、膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.005〜0.054の範囲にあるIDTと、
    前記IDTを覆うように前記圧電基板上に形成されており、膜厚をHsとしたとき、表面波の波長λで規格化膜厚Hs/λが0.10〜0.40の範囲にあるSiO2膜とを備えることを特徴とする、表面波装置。
  2. 前記圧電基板のオイラー角が(0±2°,90°〜155°,0±2°)であり、前記IDTの規格化膜厚H/λが0.01〜0.04の範囲にある、請求項1に記載の表面波装置。
  3. 前記LiTaO3からなる圧電基板のオイラー角と、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが下記の表1に示す組み合わせのいずれかである、請求項1または2に記載の表面波装置。
    Figure 0003975924
  4. 前記圧電基板のオイラー角が(0±2°,102°〜150°,0±2°)であり、前記IDTの規格化膜厚H/λが0.013〜0.033の範囲にある請求項1に記載の表面波装置。
  5. 前記LiTaO3からなる圧電基板のオイラー角と、前記SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが下記の表2に示すいずれかの組み合わせである、請求項4に記載の表面波装置。
    Figure 0003975924
  6. 白金からなる電極層に積層された白金以外の金属からなる少なくとも1つの電極層をさらに備え、IDTの全体の平均密度が白金の密度±20%の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の表面波装置。
  7. オイラー角(0±2°,90°〜160°,0±2°)のLiTaO3からなる圧電基板を用意する工程と、
    前記圧電基板上に、白金からなる電極層を少なくとも有する少なくもと1つのIDTを形成する工程と、
    前記IDTを形成した後に周波数調整を行う工程と、
    前記周波数調整後に、IDTを被覆するようにSiO2膜を前記圧電基板上に形成する工程とを備える、請求項1〜6のいずれかに記載の表面波装置の製造方法。
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