JP2004289031A - 窒化物系半導体の形成方法および窒化物系半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この窒化物系半導体の形成方法では、GaN基板1上に、約1μmの膜厚を有するMgをドープしたGaNからなる窒化物系半導体層6と、約2nm〜約50nmの膜厚を有するLaNi5からなる金属層7を順次形成した後、窒素ガス雰囲気中で、約360℃、約100時間の熱処理を施し、その後、金属層7をエッチングにより除去する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、窒化物系半導体の形成方法および窒化物系半導体素子に関し、特に、熱処理によりp型化を行う窒化物系半導体の形成方法および熱処理によりp型化された窒化物系半導体を用いる窒化物系半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、p型不純物が添加された窒化物系半導体上に触媒層を形成した後、熱処理を行うことにより、p型化する窒化物系半導体の形成方法が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
図16は、従来の第1の例による窒化物系半導体の形成方法を説明するための断面図である。図16を参照して、従来の窒化物系半導体の形成方法について説明する。
【0004】
従来の窒化物系半導体の形成方法では、図16に示すように、サファイア基板101上に、GaNからなるバッファ層102と、MgをドープしたGaNからなる窒化物系半導体層105とを、MOCVD法(Metal OrganicChemical Vapor Deposition:有機金属気相堆積法)を用いて順次形成する。そして、窒化物系半導体層105上に、蒸着法を用いて、Niからなる触媒層107を形成する。次に、各層102、105および107が形成されたサファイア基板101に対して、窒素ガス雰囲気中で、約800℃、約10分間の熱処理を施す。その後、触媒層107をエッチングにより除去する。これにより、従来の窒化物系半導体が形成される。
【0005】
上記従来の第1の例による窒化物系半導体の形成方法では、熱処理によって窒化物系半導体層105中の水素が触媒層107に向かって拡散し、水素と触媒層107とが反応する。これにより、窒化物系半導体層105中から水素が除去されるので、窒化物系半導体層105中のMgが活性化される。その結果、窒化物系半導体層105をp型化することができる。
【0006】
図17は、従来の第2の例による窒化物系半導体レーザ素子を説明するための断面図である。図17を参照して、従来の窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。
【0007】
従来の第2の例による窒化物系半導体レーザ素子では、図17に示すように、サファイア基板201上に、約20nmの膜厚を有するGaNからなる低温バッファ層202、約4μmの膜厚を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型コンタクト層231、約50nmの膜厚を有するSiがドープされたn型In0.1Ga0.9Nからなるn型クラック防止層232、約0.5μmの膜厚を有するSiがドープされたn型Al0.3Ga0.7Nからなるn型クラッド層233、多重量子井戸(MQW)からなる活性層を含む発光層204、および、Mgがドープされたp型Al0.3Ga0.7Nからなるp型クラッド層205が順次形成されている。
【0008】
p型クラッド層205には、約0.3μmの高さを有するメサ形状(台形状)の凸部205aが形成されている。その凸部205aの上面上には、MgがドープされたGaNからなるp型コンタクト層206が形成されている。このp型クラッド層205の凸部205aと、p型コンタクト層206とによって、電流通路部となるリッジ部が構成されている。また、p型コンタクト層206の上面上には、p側オーミック電極207が形成されている。
【0009】
また、p型クラッド層205からn型コンタクト層231までの一部の領域がエッチングにより除去されることによって、n型コンタクト層231が露出されている。上記露出したn型コンタクト層231上には、n側オーミック電極220およびn側パッド電極221が形成されている。
【0010】
また、p側オーミック電極207の上面上とn側オーミック電極220およびn側パッド電極221が形成される領域とを除く領域を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2からなる電流ブロック層208が形成されている。
【0011】
そして、p側オーミック電極207の上面および電流ブロック層208の上面の一部を覆うように、p側パッド電極209が形成されている。これにより、従来の第2の例による窒化物系半導体レーザ素子が形成されている。
【0012】
ここで、この従来の第2の例による窒化物系半導体レーザ素子においても、上記した従来の第1の例による方法と同様の方法を用いて、p型クラッド層205およびp型コンタクト層206に対して、p型ドーパントであるMgの活性化によるp型化を行う。具体的には、p型クラッド層205およびp型コンタクト層206を形成した後、p型クラッド層205からn型コンタクト層231までの一部の領域をエッチングにより除去する前に、p型コンタクト層206上に触媒層(図示せず)を形成する。その後、窒素ガス雰囲気中で、約800℃の熱処理を施すことによって、p型クラッド層205およびp型コンタクト層206をp型化する。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−145518号公報
【特許文献2】
特開平11−177134号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の第1の例による窒化物系半導体の形成方法では、通常、約800℃の高温で熱処理を行うため、窒化物系半導体層105から窒素が解離することになる。これにより、窒化物系半導体層105には結晶欠陥が発生するので、結晶性が低下するという問題点があった。
【0014】
また、上記した従来の第2の例による窒化物系半導体レーザ素子では、上記した従来の第1の例による窒化物系半導体の形成方法を用いてp型化されたp型クラッド層205およびp型コンタクト層206を用いているので、p型クラッド層205およびp型コンタクト層206の結晶性が悪くなるという不都合があった。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の発光特性が劣化したり、p型コンタクト層206とp側オーミック電極207との接触抵抗が増加するという問題点があった。
【0015】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、
この発明の1つの目的は、結晶性を良好に保ったまま、p型化することが可能な窒化物系半導体の形成方法を提供することである。
【0016】
この発明のもう1つの目的は、素子特性が良好で、かつ、p側オーミック電極の接触抵抗を小さくすることができる窒化物系半導体素子を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討した結果、p型不純物元素を含む窒化物系半導体層上に第1窒化物系半導体層からの水素脱離を促進する金属層を形成した後、従来よりも低温で、非常に長時間熱処理することによって窒化物系半導体層をp型化することができることを見い出した。
【0018】
すなわち、上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による窒化物系半導体の形成方法は、p型不純物元素を含む第1窒化物系半導体層を形成する工程と、第1窒化物系半導体層上に、第1窒化物系半導体層からの水素脱離を促進する第1金属層を形成する工程と、不活性ガスを主たる成分とする雰囲気中において第1窒化物系半導体層および第1金属層を10時間以上熱処理を行うことによって、第1窒化物系半導体層をp型化する工程とを備えている。
【0019】
この第1の局面による窒化物系半導体の形成方法では、上記のように、窒化物系半導体層および水素脱離を促進する第1金属層を熱処理することによって、窒化物系半導体層から第1金属層に拡散してくる水素の拡散速度が小さくなる熱処理温度が低い場合においても、拡散してきた水素を第1金属層により容易に脱離させることができる。このため、従来よりも低温で熱処理を行うことができるので、窒化物系半導体層中の窒素が解離しにくい。また、低温で熱処理を行う場合にも、10時間以上の熱処理を行うことにより、窒化物系半導体層中の水素を十分除去することができる。これらの結果、結晶性を良好に保ったまま、窒化物系半導体層をp型化することができる。
【0020】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1金属層は、Ni、La、Mg、Al、Mn、Cu、V、Cr、Ti、FeおよびPdからなるグループより選択される少なくとも1つの元素を含む。このように構成すれば、上記元素は水素の脱離を促進しやすいので、従来よりも低温の熱処理であっても窒化物系半導体層から第1金属層に拡散してくる水素を容易に脱離させることができる。これにより、窒化物系半導体層中の水素を除去することができるので、容易に、窒化物系半導体をp型化することができる。
【0021】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1金属層は、LaとNi、MgとNi、TiとCr、TiとMn、および、TiとVからなるグループより選択されるいずれかの組の2種類の元素を含む。このように構成すれば、これらの組の2種類の元素を含む金属は、水素を吸蔵および放出する能力を有するとともに、その反応速度が速いいわゆる水素吸蔵合金となるので、1種類の元素からなる第1金属層に比べて、窒化物系半導体層から第1金属層に拡散してくる水素をより容易に脱離させることができる。これにより、窒化物系半導体層中の水素をより有効に除去することができるので、より容易に、窒化物系半導体をp型化することができる。
【0022】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1金属層の膜厚は、20nm以下である。このように構成すれば、第1金属層中に侵入した水素は、第1金属層からさらに熱処理雰囲気中に放出されやすいので、窒化物系半導体層から第1金属層に向かって拡散しやすい。これにより、窒化物系半導体層から水素を除去しやすくなるので、さらに容易に窒化物系半導体をp型化することができるとともに、活性化効率を高めることができる。
【0023】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1窒化物系半導体層をp型化する工程を400℃以下の温度で行う。このように構成すれば、熱処理の温度が低いので、窒化物系半導体層中の窒素が解離しにくい。その結果、結晶性を良好に保ったまま、窒化物系半導体層をp型化することができる。
【0024】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1窒化物系半導体層をp型化する工程を100時間以上行う。このように構成すれば、窒化物系半導体層中から水素をより十分に除去することができる。これにより、結晶性を良好に保ったまま、窒化物系半導体をp型化することができるとともに、さらに、活性化効率を高めることができる。
【0025】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1窒化物系半導体層をp型化する工程に先立って、第1金属層と第1窒化物系半導体層との間に、第1金属層の構成元素の移動を抑制するための第2金属層を形成する工程をさらに備える。このように構成すれば、熱処理により第1金属層が窒化物系半導体上に偏在するのを抑制することができる。これにより、窒化物系半導体層から均一に水素を除去することができるので、窒化物系半導体を均一にp型化することができる。
【0026】
上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法において、好ましくは、第1金属層はPdを含み、第2金属層は、Ptを含む。このように構成すれば、Ptは第1金属層中のPdと窒化物系半導体との両方に対して付着性がよいので、Pdが窒化物系半導体表面で偏在するのを、容易に、抑制することができる。これにより、窒化物系半導体をより均一にp型化することができる。
【0027】
この発明の第2の局面による窒化物系半導体素子は、上記第1の局面による窒化物系半導体の形成方法により形成された窒化物系半導体を用いて製造される。すなわち、この窒化物系半導体素子は、p型不純物元素を含む第1窒化物系半導体層を形成する工程と、第1窒化物系半導体層上に、第1窒化物系半導体層からの水素の脱離を促進する第1金属層を形成する工程と、不活性ガスを主たる成分とする雰囲気中において第1窒化物系半導体層および第1金属層を10時間以上熱処理を行うことによって、第1窒化物系半導体層をp型化する工程とを備えた窒化物系半導体の形成方法によって形成された窒化物系半導体を用いて製造される。なお、本発明における「窒化物系半導体素子」とは、例えば、LEDおよび半導体レーザなどの窒化物系半導体発光素子を含む広い概念である。
【0028】
この第2の局面による窒化物系半導体素子では、上記のように、窒化物系半導体層および水素の脱離を促進する第1金属層を10時間以上の非常に長時間の熱処理を行うことによって形成されたp型窒化物系半導体を用いているので、従来よりも低温の熱処理を行うことができる。これにより、窒化物系半導体素子に含まれる窒化物系半導体から窒素が解離しにくくなるので、窒化物系半導体の結晶性を良好に保つことができる。その結果、窒化物系半導体素子における発光特性の劣化や電極の接触抵抗の増大を抑制することができるので、優れた特性を有する窒化物系半導体素子を得ることができる。
【0029】
上記第2の局面による窒化物系半導体素子において、好ましくは、第1金属層を含む電極層をさらに備えている。このように構成すれば、第1金属層を電極層として用いることができるので、第1金属層を除去する必要がない。これにより、製造工程を省略することが可能な窒化物系半導体素子を得ることができる。
【0030】
上記第2の局面による窒化物系半導体素子において、好ましくは、p型不純物元素を含まないとともに、格子定数が第1窒化物系半導体層よりも大きい第2窒化物系半導体層をさらに備えている。このように構成すれば、第2窒化物系半導体層は、第2窒化物系半導体層よりも格子定数の小さい第1窒化物系半導体層により圧縮応力を受けるので、第2窒化物系半導体層にはピエゾ電界が発生する。これにより、第2窒化物系半導体層の価電子帯が上昇するので、第2窒化物系半導体層中にはホールが多く形成される。さらに、第2窒化物系半導体層の膜厚は小さいので、p側電極から流れてくる電荷は第2窒化物系半導体層を容易にトンネリングすることができる。その結果、第1窒化物系半導体層と電極層との間に第2窒化物系半導体層が介在することにより、第1窒化物系半導体層と電極層との接触抵抗を低減させることができる。
【0031】
また、第2窒化物系半導体層はp型不純物元素を含んでいないので第2窒化物系半導体層は良好な結晶性を有しているとともに、上記説明した熱処理温度の低温化により、その結晶性が劣化することもない。これにより、第2窒化物系半導体層は良好な結晶性を維持することができるので、第2窒化物系半導体層に発生するピエゾ電界もより大きくなる。その結果、第1窒化物系半導体層と電極層との接触抵抗をさらに低減させることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体の形成方法を説明するための断面図である。この第1実施形態では、窒化物系半導体層上に水素の脱離を促進する金属層を形成することにより、従来よりも低い熱処理温度で窒化物系半導体層のp型化を行った例について説明する。
【0034】
図1を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体の形成方法について説明する。この第1実施形態による窒化物系半導体の形成方法では、図1に示すように、GaN基板1上に、MOCVD法を用いて、約1μmの膜厚を有するMgをドープしたGaNからなる窒化物系半導体層5を形成する。その後、窒化物系半導体層5上に、蒸着法を用いて、約2nm〜約50nmの膜厚を有するLaNi5からなる金属層7を形成する。ここで、窒化物系半導体層5は、本発明の「第1窒化物系半導体層」の一例であり、金属層7は、本発明の「第1金属層」の一例である。また、Mgは、本発明の「p型不純物元素」の一例であり、LaおよびNiは、本発明の「第1金属層に含まれる元素」の一例である。次に、窒化物系半導体層5および金属層7が形成されたGaN基板1に対して窒素ガス雰囲気中で、約360℃、約100時間の熱処理を施す。その後、金属層7をエッチングにより除去する。これにより、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体を形成する。
【0035】
図2は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体層のキャリア濃度と金属層7の膜厚との関係を示す特性図である。図2を参照して、上記第1実施形態による窒化物系半導体層5中のキャリア濃度は、金属層7の膜厚が約5nmのときに最大値(約4.5×1017cm−3)を示し、さらに膜厚の増加にともなって減少する傾向を示した。また、金属層7の膜厚が約20nmの場合において、金属層を形成せずに熱処理を行った場合と同等のキャリア濃度(約5×1015cm−3)であった。
【0036】
図2の結果より、適切な厚みを有する金属層7を形成することにより、従来より低い熱処理温度(約360℃)であっても、熱処理時間を約100時間行うことによって、p型不純物元素を含む窒化物系半導体層5をp型化することができることがわかった。
【0037】
また、図2の結果より、金属層7の膜厚は、20nm以下であるのが好ましいことがわかった。これは、金属層7の膜厚が小さいほど、窒化物系半導体層5から金属層7に向かって拡散してきた水素が金属層7からさらに外側に放出されやすいため、窒化物系半導体層5から水素を十分除去することができ、その結果、窒化物系半導体層5をp型化するとともに、その活性化率をより高めることができるためであると考えられる。
【0038】
図3は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体の形成方法によって形成した窒化物系半導体層のキャリア濃度と熱処理時間との関係を示す特性図である。ここでは、金属層7の膜厚は約5nmと一定にして、熱処理の時間を変化させた。
【0039】
図3を参照して、窒化物系半導体層5のキャリア濃度は、熱処理時間の増加に伴って増加することがわかった。これにより、約10時間の熱処理により、LEDとして使用可能なレベルのキャリア濃度(約3.2×1016cm−3)が得られることが判明した。また、約50時間の熱処理により、半導体レーザ素子として使用可能なレベルのキャリア濃度(約1.1×1017cm−3)が得られることがわかった。
【0040】
また、第1実施形態において、熱処理時の雰囲気ガスとして、窒素ガス100%に代えて、窒素ガスに20%の水素を含むガスを用いて同様の実験を行ったが、この場合もp型不純物元素を含む窒化物系半導体層をp型化することができることがわかった。
【0041】
また、図3には、比較例1として、金属層を形成せずに、約800℃で熱処理することにより形成した窒化物系半導体層のキャリア濃度も合わせて示す。上記比較例1においては、約10分の熱処理で約4×1017cm−3のキャリア濃度が得られているが、熱処理時間の増加とともにキャリア濃度は漸次減少し、約100時間の熱処理で約3.4×1017cm−3となった。これは、熱処理温度が高いため窒化物系半導体層から窒素が解離したため、窒化物系半導体層の結晶性が劣化したことが原因と考えられる。その結果、熱処理時間が約100時間以上の場合は、第1実施形態による窒化物系半導体層の方が、比較例1よりもキャリア濃度が大きくなり、より活性化率の高いp型窒化物系半導体層を得ることができることがわかった。
【0042】
図4は、比較例2による窒化物系半導体の形成方法によって形成した窒化物系半導体層のキャリア濃度と熱処理時間との関係を示す特性図である。この比較例2では、熱処理時の雰囲気ガスとして、窒素ガス100%に代えて酸素を約20%含む窒素ガスを用いる以外は上記第1実施形態と同様にして、p型窒化物系半導体を形成した。
【0043】
図4を参照して、上記比較例2による窒化物系半導体層のキャリア濃度は、約30分の熱処理では約1×1016cm−3と第1実施形態とほぼ同程度であり、熱処理時間の増加とともにキャリア濃度が増加する傾向があることがわかる。しかしながら、約100時間の長時間の熱処理を行った場合でも約7×1016cm−3の小さなキャリア濃度しか得られなかった。また、上記比較例2において、金属層を形成しないで熱処理を行った場合には、約100時間の熱処理を行っても約5×1016cm−3のキャリア濃度しか得られなかった。さらに、上記比較例2においては、窒化物系半導体層の表面には赤色の変質層が形成された。このような表面に電極を形成した場合、オーミック接触が得られない。これにより、酸素を含む雰囲気中における熱処理は、キャリア濃度が小さく、かつ、表面の変質が生じるので、窒化物系半導体層の熱処理としては適さないといえる。
【0044】
また、上記第1実施形態において、金属層7としてLaNi5を用いたが、これをMgNi系材料に代えた場合においても同様の傾向を示した。具体的には、約5nmの膜厚では、約1.2×1017cm−3のキャリア濃度が得られた。また、約20nmの膜厚では、約3×1015cm−3のキャリア濃度が得られた。このように、膜厚の増加とともにキャリア濃度が減少した。
【0045】
さらに、上記第1実施形態において、金属層7としてPdを用いた場合においても同様の傾向を示した。具体的には、約5nmの膜厚では、約4×1017cm−3のキャリア濃度が得られた。また、約20nmの膜厚では、約5×1015cm−3のキャリア濃度が得られた。このように、膜厚の増加とともにキャリア濃度が減少した。また、20nm以上の膜厚ではほとんどp型化されなかった。
【0046】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を説明するための断面図である。この第2実施形態では、本発明を、p型クラッド層およびp型コンタクト層へ適用した例について説明する。
【0047】
まず、図5を参照して、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。この第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図5に示すように、約100μmの厚さを有する酸素がドープされたn型の(0001)方位を有するGaN基板11上に、約1μmの膜厚を有するGaNからなるアンドープのn型層12、約1μmの膜厚を有するAl0.07Ga0.93Nからなるアンドープのn型クラッド層13、約0.2μmの膜厚を有する発光層14、および、約0.5μmの膜厚を有するMgがドープされたp型Al0.3Ga0.7Nからなるp型クラッド層15が順次形成されている。
【0048】
図6は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層を説明するための断面図である。図6を参照して、発光層14は、In0.15Ga0.85Nからなるアンドープの量子井戸層41aとIn0.05Ga0.95Nからなるアンドープの量子障壁層41bとが交互に3組積層された多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層41と、約0.1μmの膜厚を有するIn0.01Ga0.99Nからなるp側光ガイド層42と約20nmの膜厚を有するMgがドープされたAl0.25Ga0.75Nからなるp型キャリアブロック層43とから構成されている。
【0049】
p型クラッド層15には、約0.3μmの高さと約1.5μmの底部の幅を有するメサ形状(台形状)の凸部15aが形成されている。その凸部15aの上面上には、約70nmの膜厚を有するMgがドープされたAl0.01Ga0.99Nからなるp型コンタクト層16が形成されている。このp型クラッド層15の凸部15aとp型コンタクト層16とによって、電流通路部となるリッジ部が構成されている。また、p型コンタクト層16の上面以外の領域を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2からなる電流ブロック層18が形成されている。
【0050】
そして、p型コンタクト層16の上面と電流ブロック層18の上面の一部とを覆うように、p型コンタクト層16に近い側から、約1nmの膜厚を有するPt層、約100nmの膜厚を有するPd層、および、約3μmの膜厚を有するAu層の積層膜からなるp側オーミック電極19が形成されている。
【0051】
また、n型GaN基板11の裏面上には、この裏面に近い側から約6nmの膜厚を有するAl層、約10nmの膜厚を有するPt層、および、約300nmの膜厚を有するAu層の積層膜からなるn側オーミック電極20が形成されている。これにより、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成されている。ここで、p型クラッド層15、および、p型コンタクト層16は、本発明の「第1窒化物系半導体層」の一例であり、Mgは、本発明の「p型不純物元素」の一例である。
【0052】
図7〜図9は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスを説明するための断面図である。以下に、図7〜図9を参照して、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスについて説明する。まず、図7に示すように、n型GaN基板11上に、MOCVD法を用いて、約1μmの膜厚を有するGaNからなるアンドープのn型層12、約1μmの膜厚を有するAl0.07Ga0.93Nからなるアンドープのn型クラッド層13、約0.2μmの膜厚を有する発光層14、約0.35μmの膜厚を有するMgがドープされたp型Al0.3Ga0.7Nからなるp型クラッド層15、および、約70nmの膜厚を有するMgがドープされたAl0.01Ga0.99Nからなるp型コンタクト層16を順次形成する。
【0053】
なお、発光層14は、図6に示したように、In0.15Ga0.85Nからなるアンドープの量子井戸層41aとIn0.05Ga0.95Nからなるアンドープの量子障壁層41bとが交互に3組積層された多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層41、約0.1μmの膜厚を有するIn0.01Ga0.99Nからなるp側光ガイド層42、および、約20nmの膜厚を有するMgがドープされたAl0.25Ga0.75Nからなるp型キャリアブロック層43を順次積層することによって形成する。
【0054】
次に、有機溶剤および強酸で上記各層12〜16が堆積されたGaN基板11を洗浄後、電子ビーム(EB)蒸着法により、p型コンタクト層16のほぼ全面上に約7nmの膜厚を有するLaNi5からなる金属層17を形成する。なお、LaNi5からなる金属層17は、本発明の「第1金属層」の一例であり、LaおよびNiは、本発明の「第1金属層に含まれる元素」の一例である。
【0055】
次に、上記GaN基板11に対して、窒素雰囲気中で約360℃、約100時間の加熱処理を行うことにより、p型クラッド層15、および、p型コンタクト層16の活性化を行った後、金属層17を除去する。
【0056】
次に、プラズマCVD法を用いて、p型コンタクト層16の上にSiO2膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、その上のSiO2膜をパターニングすることによって、p型コンタクト層16の上面上の所定領域に、図8に示されるような、SiO2からなるストライプ状のマスク50を形成する。次に、Cl2などによるRIE(Reactive Ion Etching)法により、マスク50が形成されていない領域のp型コンタクト層16とp型クラッド層15とをp型クラッド層15の一部を残すようにエッチングする。これにより、約0.3μmの高さと約1.5μmの底部の幅を有するメサ形状(台形状)の凸部15aおよびp型コンタクト層16からなるリッジ部を形成する。その後、マスク50をHF系エッチャントを用いてエッチング除去する。
【0057】
次に、図9に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜を堆積した後、フォトリソグラフィ技術とCF4などによるRIE法とを用いて、p型コンタクト層16の上面上のSiO2膜を除去することにより、SiO2からなる電流ブロック層18を形成する。
【0058】
さらに、図5に示したように、EB蒸着法を用いて、p型コンタクト層16の上面上と電流ブロック層18の上面上および側面上に、p型コンタクト層16に近い側から約1nmの膜厚を有するPt層、約100nmの膜厚を有するPd層および約3μmの膜厚を有するAu層が順次積層されたp側オーミック電極19を形成する。
【0059】
また、n型GaN基板11の裏面を膜厚が約100μm程度になるまで研磨した後、n型GaN基板11の裏面をCl2などによるRIE法により約1μmエッチングする。その後、EB蒸着法を用いて、n型GaN基板11の裏面上に、n型GaN基板11の裏面に近い側から、約6nmの膜厚を有するAl層、約10nmの膜厚を有するPt層、および、約300nmの膜厚を有するAu層の積層膜からなるn側オーミック電極20を形成する。このようにして、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
【0060】
第2実施形態では、上記のように、LaNi5からなる金属層17をp型コンタクト層16の上面上に形成後、窒素中で約360℃の低温で、約100時間の長時間熱処理することによって、Mgがドープされたp型クラッド層15、および、p型コンタクト層16をp型化することができるので、p型窒化物系半導体であるp型クラッド層15、および、p型コンタクト層16から窒素が解離することを抑制することができる。これにより、結晶性の劣化を防止することができるので、p型クラッド層15、および、p型コンタクト層16の結晶性を良好に維持することができる。その結果、p型クラッド層15、および、p型コンタクト層16のキャリア濃度を高くすることができるので、素子特性が良好な窒化物系半導体レーザ素子を形成することができる。
【0061】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を説明するための断面図である。この第3実施形態では、熱処理時に用いた金属層を熱処理後除去せずにp側オーミック電極として使用するとともに、アンドープのInGaN層をp側コンタクト層として使用した例について説明する。
【0062】
まず、図10を参照して、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。この第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図10に示すように、約100μmの厚さを有する酸素がドープされたn型の(0001)方位を有するGaN基板11上に、約1μmの膜厚を有するGaNからなるアンドープのn型層12、約1μmの膜厚を有するAl0.07Ga0.93Nからなるアンドープのn型クラッド層13、約0.2μmの膜厚を有する発光層14、および、約0.05μmの膜厚を有するMgがドープされたp型Al0.3Ga0.7Nからなるp型クラッド層15が順次形成されている。なお、Mgは、本発明の「p型不純物元素」の一例であり、p型クラッド層15は、本発明の「第1窒化物系半導体層」の一例である。
【0063】
なお、この発光層14は、図6に示した第2実施形態の発光層14と同様の構成を有する。
【0064】
p型クラッド層15には、約0.3μmの高さと約1.5μmの底部の幅を有するメサ形状(台形状)の凸部15aが形成されており、凸部15aの上面上には、約3nmの膜厚を有するアンドープのIn0.01Ga0.99Nからなるp側コンタクト層26が形成されている。このp型クラッド層15の凸部15aとp側コンタクト層26とによって、リッジ部が構成されている。p側コンタクト層26上には、p側オーミック電極27が形成されている。ここで、p側オーミック電極27は、p側コンタクト層26に近い側から、約1nmの膜厚を有するPt層27a、約5nmの膜厚を有する第1Pd層27b、約90nmの膜厚を有する第2Pd層27c、および、約150nmの膜厚を有するAu層27dが順次積層されることにより形成されている。なお、p側コンタクト層26は、本発明の「第2窒化物系半導体層」の一例であり、Pdは、本発明の「水素脱離を促進する第1金属層に含まれる元素」の一例である。また、第1Pd層27bは、本発明の「第1金属層」の一例であり、Pt層27aは、本発明の「第2金属層」の一例である。また、p側オーミック電極27の上面以外の領域を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiNからなる電流ブロック層28が形成されている。
【0065】
そして、p側オーミック電極27の上面上と電流ブロック層28の上面上の一部とを覆うように、p側オーミック電極27に近い側から、約30nmの膜厚を有するTi層、約100nmの膜厚を有するPd層、約3μmの膜厚を有するAu層の積層膜からなるp側パッド電極29が形成されている。
【0066】
また、n型GaN基板11の裏面上には、n型GaN基板11の裏面に近い側から、約6nmの膜厚を有するAl層、約10nmの膜厚を有するPt層、および、約300nmの膜厚を有するAu層の積層膜からなるn側オーミック電極20が形成されている。これにより、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成されている。
【0067】
図11〜図15は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスを説明するための断面図である。以下に、図11〜図15を参照して、第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスについて説明する。まず、図11に示すように、n型GaN基板11上に、MOCVD法を用いて、約1μmの膜厚を有するGaNからなるアンドープのn型層12、約1μmの膜厚を有するAl0.07Ga0.93Nからなるアンドープのn型クラッド層13、約0.2μmの膜厚を有する発光層14、約0.35μmの膜厚を有するMgがドープされたp型Al0.3Ga0.7Nからなるp型クラッド層15、および、約3nmの膜厚を有するアンドープのIn0.01Ga0.99Nからなるp側コンタクト層26を順次形成する。
【0068】
次に、有機溶剤および強酸で上記各層12〜15、および、26が堆積されたGaN基板11を洗浄した後、EB蒸着法により、p側コンタクト層26のほぼ全面に、約1nmの膜厚を有するPt層27a、および、約5nmの膜厚を有する第1Pd層27bを形成する。
【0069】
次に、上記GaN基板11を窒素雰囲気中で約360℃、約100時間の加熱処理を行うことによって、p型クラッド層15の活性化を行う。
【0070】
次に、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1Pd層27bの上面上の所定領域に、約1.5μmの幅を有するストライプ状の開口部を有するレジスト51を形成する。次に、全面を覆うように、約90nmの膜厚を有する第2Pd層27c、約150nmの膜厚を有するAu層27d、および、約240nmの膜厚を有するNi層52を形成する。
【0071】
次に、レジスト51上の各層27c、27d、および、52を、リフトオフすることにより、上記所定領域上にストライプ状の第2Pd層27c、Au層27d、および、Ni層52を形成する。その後、Ni層52をマスクとして、CF4などによるRIE法により、Ni層52が形成されていない領域の第1Pd層27bおよびPt層27aをエッチングする。これにより、図13に示されたような、Pt層27a、第1Pd層27b、第2Pd層27c、および、Au層27dからなるp側オーミック電極27を形成する。
【0072】
さらに、Cl2などによるRIE法により、Ni層52が形成されていない領域のp側コンタクト層26とp型クラッド層15とをp型クラッド層15の一部を残すようにエッチングすることにより、図14に示すように、約0.3μmの高さと約1.5μmの底部の幅を有するメサ形状(台形状)の凸部15aおよびp側コンタクト層26からなるリッジ部を形成する。その後、Ni層52をエッチング除去する。
【0073】
次に、図15に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面に、約0.2μmの膜厚を有するSiN膜を堆積した後、フォトリソグラフィ技術とCF4などによるRIE法とを用いて、p側オーミック電極27の上面上のSiN膜を除去することにより、電流ブロック層28を形成する。
【0074】
最後に、図10に示したように、p側オーミック電極27の上面上と電流ブロック層28とを覆うように、EB蒸着法により、p側オーミック電極27に近い側から、約30nmの膜厚を有するTi層、約100nmの膜厚を有するPd層、約3μmの膜厚を有するAu層が順次積層されたp側パッド電極29を形成する。また、n型GaN基板11の裏面を膜厚が約100μm程度になるまで研磨した後、上記裏面をCl2などによるRIE法により約1μmエッチングする。その後、n型GaN基板11の裏面上に、EB蒸着法により、n型GaN基板11の裏面に近い側から、約6nmの膜厚を有するAl層、約10nmの膜厚を有するPt層、および、約300nmの膜厚を有するAu層の積層膜からなるn側オーミック電極20を形成する。このようにして、第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
【0075】
第3実施形態では、上記のように、第1Pd層27bとp側コンタクト層26との間に、第1Pd層27bとp側コンタクト層26に対して密着性がよく、高融点材料であるPt層27aを形成することによって、第1Pd層27bが熱処理時にp側コンタクト層26の表面を移動し偏在することを防止することができる。これにより、熱処理時においても第1Pd層27bをp側コンタクト層26の表面に均一に分布した状態を維持することができるので、p側コンタクト層26の下面上に位置するp型クラッド層15のp型化を均一に行うことができる。
【0076】
また、第3実施形態では、上記のように、p型クラッド層15のp型化処理に用いたPt層27aおよび第1Pd層27bを除去せず、そのままp側オーミック電極27の一部として用いているので、製造プロセスを簡略化することができるとともに、半導体表面が汚染される機会が低減することにより、製造歩留まりを向上させることができる。
【0077】
また、第3実施形態では、上記のように、p側コンタクト層26を、p型ドーパントを含まないアンドープのInGaN層により形成することによって、p側コンタクト層26は、InGaN層よりも格子定数の小さいp型AlGaN層からなるp型クラッド層15により圧縮応力を受けるので、p側コンタクト層26にはピエゾ電界が発生する。これにより、p側コンタクト層26の価電子帯は上昇するので、ホールが多く形成される。さらに、p側コンタクト層26の膜厚は小さいので、p側コンタクト層26上のp側オーミック電極27から流れてくる電荷は、p側コンタクト層26を容易にトンネリングすることができる。その結果、p型クラッド層15とp側オーミック電極27との間にアンドープのInGaN層からなるp側コンタクト層26が介在することにより、p型クラッド層15とp側オーミック電極27との接触抵抗を低減させることができる。
【0078】
また、第3実施形態では、p側コンタクト層26はp型不純物元素を含んでいないので、p側コンタクト層26は良好な結晶性を有しているとともに、上記説明した熱処理温度の低温化により、その結晶性が劣化することもない。このように、p側コンタクト層26は、良好な結晶性を維持しているので、p側コンタクト層26に発生するピエゾ電界もより大きくなる。その結果、p型クラッド層15とp側オーミック電極27との接触抵抗をさらに低減させることができる。
【0079】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
たとえば、上記各実施形態は、第1金属層にLa、Ni、Pdを用いたが、本発明はこれに限らず、Mg、Al、Mn、V、Cr、Ti、Fe、および、Cuなどの水素の脱離を促進する他の元素であってもよい。また、上記第1および第2実施形態では、第1金属層として、LaとNiの2種類の金属を含むLaNi5からなる金属層を用いたが、本発明はこれに限らず、MgとNi、TiとCr、TiとMn、または、TiとVのいずれかの組の2種類の元素を含む金属層を用いてもよい。このように構成すれば、これらの組の2種類の元素を含む金属は、水素を吸蔵および放出する能力を有するとともに、その反応速度が速いいわゆる水素吸蔵合金となるので、1種類の元素からなる第1金属層に比べて、窒化物系半導体層から第1金属層に拡散してくる水素をより容易に脱離させることができる。
【0081】
また、上記第3実施形態は、約3nmの膜厚を有するp側コンタクト層26を用いたが、本発明はこれに限らず、p側コンタクト層26は、上記説明したトンネリングが容易に起こる約20nm以下の膜厚であればよい。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、結晶性を良好に保ったまま、p型化することが可能な窒化物系半導体層の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による窒化物系半導体の形成方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による窒化物系半導体層のキャリア濃度と金属層の膜厚との関係を示す特性図である。
【図3】本発明の第1実施形態による窒化物系半導体の形成方法によって形成した窒化物系半導体層のキャリア濃度と熱処理時間との関係を示す特性図である。
【図4】比較例2による窒化物系半導体の形成方法によって形成した窒化物系半導体層のキャリア濃度と熱処理時間との関係を示す特性図である。
【図5】本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を説明するための断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第1工程を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第2工程を説明するための断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第3工程を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を説明するための断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第1工程を説明するための断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第2工程を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第3工程を説明するための断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第4工程を説明するための断面図である。
【図15】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の形成プロセスの第5工程を説明するための断面図である。
【図16】従来の第1の例による窒化物系半導体の形成方法を説明するための断面図である。
【図17】従来の第2の例による窒化物系半導体レーザ素子を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 基板
5 窒化物系半導体層(第1窒化物系半導体層)
7 金属層(第1金属層)
11 基板
13 n型クラッド層
14 発光層
15 p型クラッド層(第1窒化物系半導体層)
16 p型コンタクト層(第1窒化物系半導体層)
17 金属層(第1金属層)
18 電流ブロック層
19 p側オーミック電極
20 n側オーミック電極
26 p側コンタクト層(第2窒化物系半導体層)
27 p側オーミック電極
27a Pt層(第2金属層)
27b 第1Pd層(第1金属層)
28 電流ブロック層
Claims (11)
- p型不純物元素を含む第1窒化物系半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物系半導体層上に、前記第1窒化物系半導体層からの水素脱離を促進する第1金属層を形成する工程と、
不活性ガスを主たる成分とする雰囲気中において前記第1窒化物系半導体層および前記第1金属層を10時間以上熱処理を行うことによって、前記第1窒化物系半導体層をp型化する工程とを備えた、窒化物系半導体の形成方法。 - 前記第1金属層は、Ni、La、Mg、Al、Mn、Cu、V、Cr、Ti、FeおよびPdからなるグループより選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 前記第1金属層は、LaとNi、MgとNi、TiとCr、TiとMn、および、TiとVからなるグループより選択されるいずれかの組の2種類の元素を含む、請求項1または2に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 前記第1金属層の膜厚は、20nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 前記第1窒化物系半導体層をp型化する工程を400℃以下の温度で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 前記第1窒化物系半導体層をp型化する工程を100時間以上行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 前記第1窒化物系半導体層をp型化する工程に先立って、前記第1金属層と前記第1窒化物系半導体層との間に、前記第1金属層の構成元素の移動を抑制するための第2金属層を形成する工程をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 前記第1金属層はPdを含み、前記第2金属層は、Ptを含む、請求項7に記載の窒化物系半導体の形成方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の窒化物系半導体の形成方法により形成された窒化物系半導体を用いて製造された窒化物系半導体素子。
- 前記第1金属層を含む電極層をさらに備える、請求項9に記載の窒化物系半導体素子。
- 前記第1窒化物系半導体層と前記第1金属層の間に、前記p型不純物元素を含まないとともに、格子定数が前記第1窒化物系半導体層よりも大きい第2窒化物系半導体層をさらに備える、請求項9または10に記載の窒化物系半導体素子。
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