JP2004287233A - 平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】インキ乗り性、耐刷力、及び画質に優れたアルミニウム平版印刷版を提供する。
【解決手段】粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核層を有し更にその上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版において、前記物理現像核層を少なくとも2層有し、支持体より遠い物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比が、支持体に近い物理現像核層のそれより小さいことを特徴とする平版印刷版。
【選択図】 なし
【解決手段】粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核層を有し更にその上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版において、前記物理現像核層を少なくとも2層有し、支持体より遠い物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比が、支持体に近い物理現像核層のそれより小さいことを特徴とする平版印刷版。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディフュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの2方式が知られている。ツーシートタイプの平版印刷版については、特開昭57−158844号公報に詳しく記載されている。又、モノシートタイプについては、特公昭48−30562号公報、同51−15765号公報、特開昭51−111103号公報、同52−150105号公報などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
紙を支持体とした平版印刷版は、印刷中の版伸びや水分のしみ込みなどのため耐刷性を含め高品質の印刷は困難である。これらの問題点を改良し印刷性能を向上する目的でフィルム支持体が用いられる。例えば、酢酸セルロースフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、或はポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムなどをポリエチレンフィルムで被覆した複合フィルム等が支持体として利用できる。
【0005】
しかしながら、フィルムを支持体とした平版印刷版は紙ベースの印刷版と比べ、版伸び性や水分のしみ込みなどの点で改良されたものの、耐刷性、保水性、更には印刷機への版掛け性等の点で問題を残している。
【0006】
そこで、上に述べた紙やフィルムを支持体とした平版印刷版の種々の問題点を解決するために、金属特にアルミニウム板を支持体とした銀塩方式の平版印刷版が知られており、特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号などの各公報に詳しく記載されている。これらのアルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像各層を有し、さらにその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた構成になっている。この平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュ・オフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)が施される。また版面の保護のために仕上げ処理が通常施されている。
【0007】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0008】
一方、上記アルミニウム平版印刷版において、物理現像核層に各種バインダーを含有することが提案されている。例えば、特開平11−305448号、特開2000−181052号、特開2000−275850号公報がある(特許文献1、2、3)。
【0009】
本発明が対象とするアルミニウム平版印刷版において、銀画像部が十分な耐刷力を持つためには画像銀とアルミ支持体が強固に接着している必要がある。しかし、前述したように物理現像核層に通常バインダーが含まれており、そのため析出した銀とアルミニウム支持体との接触が妨げられ、銀とアルミが接着する機会が奪われ、その結果充分な耐刷力が得られないという問題が生じる。これを防ぐためにバインダー量は少なくすると、その場合物理現像核とハロゲン化銀が直接に接触する機会が増え、未感光のハロゲン化銀粒子が感光したハロゲン化銀粒子と同じ挙動(カブリを生じる)を示し、その結果析出銀量が減少して耐刷力が低下するという二律背反の問題を抱えていた。
【0010】
特開平3−116151号、特開平4−282295号公報には、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間に中間層を設けることが開示されている。この場合、物理現像核層のバインダー量を減らしてもカブリ問題は発生しない。しかしながら中間層が存在する場合ハロゲン化銀と物理現像核とのDTR距離が長くなり、転写してくる銀が画像以外のところにも拡散するため画質が悪くなるという問題を抱えている。
【0011】
また、2つ以上の物理現像核層を有する平版印刷版が特開昭59−22051号公報に開示されている(特許文献4)。同公報では画像部としてバインダー中に埋まった銀を使用しており、この銀の好ましい”埋め方”を提示しているものであり、本発明にのようなハロゲン化銀乳剤層等を現像処理後に水洗除去してアルミニウム支持体と接着した銀を画像として使用するアルミニウム平版印刷版とは全く異なったものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−305448号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開2000−181052号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2000−275850号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開昭59−22051号公報(第1頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、耐刷力及びインキ乗りに優れ、かつ高画質の平版印刷版を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核層を有し更にその上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版において、前記物理現像核層を少なくとも2層有し、支持体より遠い物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比が、支持体に近い物理現像核層のそれより小さいことを特徴とする平版印刷版によって達成された。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、物理現像核層は少なくとも2層有する。そのうち1層はアルミニウム支持体に隣接し、他の全ての物理現像核層はお互いが隣接するよう配置され、物理現像核層の間に中間層などが存在することは好ましく無い。本発明において、物理現像核層は3層以上が積層された態様を含むが、物理現像核層は2層構成であるのが好ましい。以降、2層構成の態様を前提に説明する。
【0016】
本発明において、それぞれの物理現像核層に含有する物理現像核及びバインダーは同じ種類であっても異なっていてもよい。物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。これらの詳細及び製法については、例えば、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディフュージョン・プロセシズ」を参照し得る。本発明に用いられる物理現像核としては、金属あるいは金属硫化物が好ましい。
【0017】
バインダーとしては、親水性高分子、例えば澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸ソーダ、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、蛋白質、ポリビニルホスホン酸等の親水性高分子又はそのオリゴマー体、特開平8−211614記載の親水性高分子などが使用できる。
【0018】
アルミニウム支持体に近い物理現像核層、即ちアルミニウム支持体に隣接する物理現像核層は、バインダーが実質的に存在しないか、存在しても極微量であるのが好ましい。バインダー量としては、5mg/m2以下が好ましく、更に好ましくは1mg/m2以下である。物理現像核の含有量は、0.05〜50mg/m2の範囲が好ましく、特に0.1〜5mg/m2の範囲が好ましい。この物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比は、0.05以上が好ましく、特に1以上が好ましい。前記質量比は大きいほど好ましい。
【0019】
アルミニウム支持体から遠い物理現像核層は、本発明においては中間層等は有しない方が好ましいので、ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層となる。該物理現像核層の物理現像核/バインダー比は、前記した支持体に隣接した物理現像核層の物理現像核/バインダー比より小さくなければならない。
【0020】
アルミニウム支持体から遠い物理現像核層に含有するバインダー量は、1〜300mg/m2の範囲が好ましく、特に1〜150mg/m2の範囲が好ましい。物理現像核の含有量は、0.001〜10mg/m2の範囲が好ましく、特に0.01〜5mg/m2の範囲が好ましい。この物理現像核層の物理現像核/バインダー比は、0.00001〜0.1の範囲が好ましく、0.0001〜0.01の範囲がより好ましい。
【0021】
上記したアルミニウム支持体から遠い物理現像核層(ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層)にはバインダーとして、蛋白質、例えばゼラチン、アルブミン、カゼイン等を含有するのが好ましく、これによって耐刷力を更に向上させることができる。これらの蛋白質は、該物理現像核層のバインダーの全部として用いても良く、またバインダーの一部として用いても良いが、少なくとも該物理現像核層の全バインダーの30質量%以上用いるのが好ましく、特に30〜80質量%の範囲で用いるのが好ましい。蛋白質と併用するバインダーとしては、相溶性の良い高分子、例えばポリビニルピロリドンやカルボキシメチルセルロースなどが好ましい。
【0022】
また、アルミニウム支持体から遠い物理現像核層(ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層)に、バインダーとしてポリビニルホスホン酸を含有するのが好ましく、これによってインキ乗りを向上させることができる。またポリビニルホスホン酸と他の水溶性高分子と混合して使用することも可能であるが、ポリビニルホスホン酸は、該物理現像核層の全バインダーに対して少なくとも50質量%以上用いるのが好ましく、特に70質量%以上用いるのが好ましい。
【0023】
本発明において、各物理現像核層には更に界面活性剤、公知の現像安定剤、硝酸塩もしくは亜硝酸塩などの各種塩類を含有させることができる。
【0024】
本発明で用いるアルミニウム支持体にはアルミニウム純度が93質量%以上、好ましくは99質量%以下の純度のアルミニウム支持体を使用する。アルミニウム不純物としては鉄、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、チタン、ビスマス、鉛、ジルコニウム、ニッケルなど通常アルミニウム合金として用いられている元素が使用できる。また、特に好ましいアルミ合金としては1050、1100、3003などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いられるアルミニウム支持体は公知の方法で圧延される。すなわち、アルミニウムのインゴットを溶解保持してスラブを鋳造し、スラブ表面の不純物組織部分を面削機にかけて3〜10mmづつ切削する面切削工程を経た後、均熱炉において480〜540℃、6〜12時間保持する均熱化処理工程を行い、しかる後に熱間圧延で5〜40mmの厚みに圧延した後、室温で所定の厚みに冷間圧延を行う。またその後組織の均一化のために焼鈍を行い圧延組織等を均質化した後、規定の厚みに冷間圧延を行い、平坦度の良い板にするため矯正する。支持体の厚さは通常約0.13〜0.50mmの範囲である。
【0026】
本発明に用いられる支持体には、この技術分野において通常使用されている脱脂処理、粗面化処理及び陽極酸化処理等が施されるが、少なくとも粗面化処理及び陽極酸化処理がこの順で行なわれた支持体を用いる。
【0027】
本発明で用いるアルミニウム板は表面から脂肪性物質を除去するために脱脂処理を行う。脱脂処理としてはトリクレン、シンナー等の溶剤脱脂、界面活性剤、ケロシン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウムを混ぜたエマルジョン脱脂、酸脱脂、アルカリ脱脂などがある。
【0028】
本発明で用いるアルミニウム板は感光層との密着性を良好にし、かつ保水性を改善するために粗面化処理をされる。粗面化処理の方法としては機械的処理、化学的処理、電気化学的処理があり、これらを単独もしくは組み合わせて処理を行うが、特にコスト的に機械研磨を組み合わせることが好ましい。表面の形状は一般に粗さ計により表されるが、その大きさは中心線平均粗さ;Raの値で0.3〜1.0μmが適当である。
【0029】
機械的粗面化処理としてボールグレイン法、ナイロンブラシ法、バフ研磨法、ブラスト研磨法等を用いることができる。また化学的粗面化には塩化物、フッ化物等で化学的にアルミニウムを溶解する方法がある。
【0030】
電気化学的粗面化処理方法は他の方法に比較して電解液組成及び電解条件によって、砂目の形状及び表面粗さを微妙にコントロールすることが可能なのでこの方法を用いることが好ましい。電気化学的粗面化処理は直流、交流または両者の組み合わせで行うことができる。交流波としては単相又は3相の商業用交流あるいはこれらを含めた10〜300Hzの範囲の正弦波、矩形波、台形波等がある。
【0031】
アルミニウム板に供給される電力は電解液の組成、温度、電極間距離等により変わるが、印刷版として適切な砂目を得るためには、一般に電圧では1〜60A/dm2、電気量では50〜4000Cの範囲で使われる。また電極とアルミニウム板との距離は1〜10cmの範囲が好ましい。
【0032】
電解液としては硝酸あるいはその塩、塩酸あるいはその塩、あるいはそれらの1種または2種以上の混合物の水溶液が使用できる。更に必要に応じて硫酸、リン酸、クロム酸、硼酸、有機酸、あるいはそれらの塩、アンモニウム塩、アミン類、界面活性剤、その他の腐食防止剤、腐食促進剤、安定化剤を加えて使用することもできる。
【0033】
電解液の濃度としては上記の酸類の濃度が0.1〜10%であり、電解液中のアルミニウムイオンの濃度を0〜10g/Lの範囲に維持したものが好ましい。電解液の温度は0〜60℃が好ましい。
【0034】
本発明においてデスマットとは粗面化と陽極酸化の間に行う化学エッチング工程のことを指す。デスマットには酸あるいはアルカリを用いて行うことができるが酸処理が好ましい。。酸には、硝酸、リン酸、クロム酸、硫酸、塩酸、フッ酸などを単独、あるいは数種混合して用いることができる。アルカリデスマットには水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、第三リン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどを単独、もしくは数種混合して用いることができる。またそのデスマット液の濃度、処理時間はスマットを完全に除去できるだけの濃度が必要である。スマットの発生量はその前段階の粗面化の処理方法に依存しているので、必要なデスマットの程度は粗面化の方法に依存する。しかしスマットの除去の程度は走査型顕微鏡で容易に観察できるので、これで処理したアルミの表面を観測することでスマットが完全に除去されるデスマットの程度を容易に決定することができる。実際には廃液の処理の関係もあり、酸あるいはアルカリの合計で5〜40%程度で、その処理時間は30秒〜2分が好ましい。処理温度は40〜60℃が好ましい。
【0035】
本発明においてデスマット工程は2回以上に分けることも可能である。この場合酸デスマットとアルカリデスマットとを組み合わせることも可能であるが、アルカリデスマットを先にするほうが好ましい。
【0036】
このような粗面化処理、デスマット処理を行った後、陽極酸化処理が施される。陽極酸化の電解液には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸または有機酸(例えばスルファミン酸、ベンゼンスルホン酸など)またはそれらの混合物が好ましく、また特に生成酸化膜の溶解性の低い酸が好ましい。
【0037】
陽極酸化膜は陽極にのみ生成するので電流は通常直流電流が使用される。陽極酸化の条件としては液濃度1〜40%、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜100Vの範囲で使用される。陽極酸化膜の厚みは電流密度と時間により変えられ、印刷版の耐刷グレードによって適宜調整されるが、3g/m2以下、好ましくは2.8g/m2〜1g/m2、更に好ましくは好ましくは2.3g/m2〜1g/m2必要となる。温度は陽極酸化膜の硬度に影響を与え、低温では硬度は高くなるが、可撓性に劣るため通常は常温付近の温度で処理される。これら作成した陽極酸化膜の量はJIS H86807「皮膜質量法」に基づいて測定できる。
【0038】
また、陽極酸化処理を行なった後、必要に応じて後処理を行うことも出来る。後処理としては当該業者に知られた方法、例えば珪酸塩処理、弗化ジルコン酸処理などの無機塩類での後処理、アラビアガム、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸等の有機高分子処理、水和封孔処理などがある。
【0039】
本発明の印刷版の感光性ハロゲン化銀乳剤層には保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることができる。即ち、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、グラフト化ゼラチン等各種ゼラチンを用いることが出来る他、ポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有させることが出来る。用いられる親水性コロイドとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、好ましくは、物理現像後の親水性コロイド層の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まない親水性コロイド層を用いることが望ましい。
【0040】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の種類としては、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択される。また乳剤のタイプとしてはネガ型、ポジ型のいずれでもよい。これらのハロゲン化銀乳剤は必要に応じて化学増感あるいはスペクトル増感することが出来る。
【0041】
本発明においてハロゲン化銀乳剤層にはベンゾトリアゾールもしくはその誘導体、メルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物を含有させることもできる。その量は1〜100mg/m2、好ましくは5〜30mg/m2である。
【0042】
ベンゾトリアゾール誘導体としては5−メチルベンゾトリアゾール、5−クロルベンゾトリアゾール等が挙げられる。またメルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物の複素環としてはイミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、ピラゾリドン、トリゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等があり、中でもイミダゾール、トリアゾール、テトラゾールが好ましい。
【0043】
メルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物の具体例を以下に挙げる。2−メルカプト−4−フェンルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2メルカプト−ベンズイミダゾール、1,3ジエチル−ベンズイミダゾリン−2−チオン、1,3ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2−ジメルカプト−1,1’−デカメチレン−ジイミダゾリン−2−チオン、2メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシルーベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリドン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−5−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−5−ペンタデシル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−フェニル1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニルピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラッジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル1,3,5トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−S−トリアゾリノ[1,2−a]−S−トリアゾリン等が挙げられる。
【0044】
本発明で用いられる現像液には、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセスロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、1−ェニル−5−メルカプトテトラゾール、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物等の添加剤等を含ませることが出来る。
【0045】
現像液のpHとして通常約10〜14、好ましくは約12〜14であるが、使用する平版印刷版のアルミニウム支持体の前処理(例えば陽極酸化)条件、写真要素、所望の像、現像液中の各種化合物の種類及び量、現像条件等によって異なる。
【0046】
本発明において、現像処理に続いて水洗処理が施され、ハロゲン化銀乳剤層が除去され、銀画像と非画像部であるアルミニウム支持体を露出させる。水洗液にはpHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物を含有することができる。また、防腐剤を含有させてもよい。水洗液中には更にタンパク質分解酵素(例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ)や、前記した親油化剤を含有させることができる。
【0047】
現像処理と水洗処理の間に、現像の進行を停止させる中和安定化処理を施してもよく、中和液に前記親油化剤を含有させてもよい。
【0048】
上記水洗液はアルミニウム支持体上のハロゲン化銀乳剤層を完全に除去するために用いるもので、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に用いられている。
【0049】
水洗処理によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。本発明において、仕上げ液には、非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤガム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。また、画像部の親油性を更に向上させるために、上記親油化剤を含有することが好ましい。更に上記酵素を含有することができる。
【0050】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。尚、%は断りのないかぎり質量%を示す。
【0051】
実施例1
材質1050のアルミニウム板を4%水酸化ナトリウム水溶液で50℃1分脱脂処理を行い、水洗した後、400メッシュのパミストン懸濁液を用い、回転ナイロンブラシで研磨し、2.5%の塩酸水溶液中20℃で交流密度50A/dm2で60秒電解粗面化処理を行い、20%リン酸で50℃1分間デスマット処理した。その後25%硫酸溶液中で温度20℃電気密度3A/dm2、処理時間45秒で陽極酸化処理した。
【0052】
チオ硫酸ナトリウム水溶液と塩化パラジウム水溶液を40℃にて5分混合し、硫化パラジウムコロイド溶液を作成し、これに表1に示すようにバインダーを加えて6種類の物理現像核層の塗液(核液No.1〜6)を作成した。これら核液を1層目と2層目に配置してアルミニウム支持体上に塗布した。詳細を表2に示す。尚、1層目はアルミニウム支持体に近い物理現像核層であり、2層目は支持体から遠い物理現像核層である。1層目の硫化パラジウムの量は0.3mg/m2、2層目は0.2mg/m2となるように調整した。
【0053】
また比較として、1層のみの物理現像核層(硫化パラジウム量が0.5mg/m2)を有するもの(プレートNo.1、2)、また更に比較として1層目に核液1を硫化パラジウム量が0.5mg/m2、2層目に硫化パラジウム無しでポリビニルピロリドン(PVP K90)が40mg/m2となるように塗布したもの(プレートNo12)、及び1層目に硫化パラジウム無しでポリビニルピロリドン(PVP K90)が0.3mg/m2、2層目に核液3を硫化パラジウム量が0.5mg/m2となるよう塗布したもの(プレートNo13)を作成した。
【0054】
【表1】
表中、核/バインダー比は、物理現像核/バインダー質量比である。
【0055】
【表2】
【0056】
ハロゲン化銀乳剤の調整は、保護コロイドとしてアルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.3μmの銀1モル当たり0.006ミリモルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムをドープさせた塩化銀84.8モル%、臭化銀15モル%、ヨウ化銀0.2モル%の塩臭化銀乳剤を調整した。その後この乳剤をフロキュレーションさせ、洗浄した。さらにこの乳剤に金硫黄増感を施した後、安定剤を添加し赤色感光性の増感色素を銀1g当たり3mg用いて分光増感した。
【0057】
得られたハロゲン化銀乳剤を物理現像核層塗布済みアルミニウム支持体にこの乳剤を塗布量が硝酸銀で3.0g/m2となるよう同じスロットコーターにて塗布乾燥し感光性平版印刷版を作成した。このようにして得られた平版印刷版に光源が赤色半導体レーザーであるイメージセッターSDP−α2400(三菱製紙社製)で2400dpi、175lpiで画像露光を行い、次に製版用プロセッサー(三菱製紙社製P−α880)で処理時間を変えて処理して平版印刷版を作製した。製版用プロセッサーは、現像処理工程(22℃)、水洗処理工程(35℃の水洗水をシャワー噴射しながらスクラブローラーで乳剤層をウォッシュオフする)、仕上げ処理工程(21℃、シャワー)及び乾燥工程から構成されている。水洗処理工程は貯蔵タンクに貯留された20Lの水洗水をポンプで循環させて、平版印刷版にシャワー噴射した後、濾過フィルターで濾過して貯留タンクに回収し再使用するクローズドタイプとなっている。
【0058】
用いた現像液、水洗液、仕上げ液の構成は次の通りである。
<現像液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3ピラゾリジノン 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
チオ硫酸ナトリウム 5g
N−メチルエタノールアミン 6g
エチレンジアミン4酢酸ナトリウム塩 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.4
【0059】
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチルオキサンジオール 0.5g
トリエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
リン酸2水素カリウム 40g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは6.0に調整した。
タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0060】
<仕上げ液>
アラビアゴム 10g
リン酸 0.5g
硝酸ナトリウム 20g
ポリエチレングリコール#400 100g
2−メルカプト−5−nヘプチルオキサンジオール 0.5g
脱イオン水にて1000mlとする。
水酸化ナトリウムにてpHは6.5に調整した。
【0061】
この様にして作成した平版印刷版を、印刷機スプリント226(コモリコーポレーション)で印刷した。なお、インキはDICのGEOS GシアンHタイプを、湿し水としては日研アストロマーク3の2%水溶液を用いた。
【0062】
表3に印刷結果を示す。インキ乗り枚数は印刷開始後印刷濃度が安定になるまで必要とされた印刷枚数を表す。耐刷力は印刷していって画像にかすれ、脱落など変化のあった枚数を、画質はネガ、ポジともに再現できる細線の太さで表す。
【0063】
【表3】
【0064】
表2より、本発明の平版印刷版は、インキ乗り性、耐刷力、及び画質に優れていることが判る。
【0065】
実施例2
表4に示される核液を実施例1と同様に作成し、実施例1と同様にして表5に示されるプレートを作成した。実施例1と同様に評価した結果を表6に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
上記結果から、2層目の核液として蛋白質バインダーを含むと耐刷力がさらに向上し、2層目のバインダーとしてポリビニルホスホン酸を用いるとインキ乗りがさらに向上することがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、インキ乗り性、耐刷力、及び画質に優れた平版印刷版が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディフュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの2方式が知られている。ツーシートタイプの平版印刷版については、特開昭57−158844号公報に詳しく記載されている。又、モノシートタイプについては、特公昭48−30562号公報、同51−15765号公報、特開昭51−111103号公報、同52−150105号公報などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
紙を支持体とした平版印刷版は、印刷中の版伸びや水分のしみ込みなどのため耐刷性を含め高品質の印刷は困難である。これらの問題点を改良し印刷性能を向上する目的でフィルム支持体が用いられる。例えば、酢酸セルロースフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、或はポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムなどをポリエチレンフィルムで被覆した複合フィルム等が支持体として利用できる。
【0005】
しかしながら、フィルムを支持体とした平版印刷版は紙ベースの印刷版と比べ、版伸び性や水分のしみ込みなどの点で改良されたものの、耐刷性、保水性、更には印刷機への版掛け性等の点で問題を残している。
【0006】
そこで、上に述べた紙やフィルムを支持体とした平版印刷版の種々の問題点を解決するために、金属特にアルミニウム板を支持体とした銀塩方式の平版印刷版が知られており、特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号などの各公報に詳しく記載されている。これらのアルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像各層を有し、さらにその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた構成になっている。この平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュ・オフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)が施される。また版面の保護のために仕上げ処理が通常施されている。
【0007】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0008】
一方、上記アルミニウム平版印刷版において、物理現像核層に各種バインダーを含有することが提案されている。例えば、特開平11−305448号、特開2000−181052号、特開2000−275850号公報がある(特許文献1、2、3)。
【0009】
本発明が対象とするアルミニウム平版印刷版において、銀画像部が十分な耐刷力を持つためには画像銀とアルミ支持体が強固に接着している必要がある。しかし、前述したように物理現像核層に通常バインダーが含まれており、そのため析出した銀とアルミニウム支持体との接触が妨げられ、銀とアルミが接着する機会が奪われ、その結果充分な耐刷力が得られないという問題が生じる。これを防ぐためにバインダー量は少なくすると、その場合物理現像核とハロゲン化銀が直接に接触する機会が増え、未感光のハロゲン化銀粒子が感光したハロゲン化銀粒子と同じ挙動(カブリを生じる)を示し、その結果析出銀量が減少して耐刷力が低下するという二律背反の問題を抱えていた。
【0010】
特開平3−116151号、特開平4−282295号公報には、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間に中間層を設けることが開示されている。この場合、物理現像核層のバインダー量を減らしてもカブリ問題は発生しない。しかしながら中間層が存在する場合ハロゲン化銀と物理現像核とのDTR距離が長くなり、転写してくる銀が画像以外のところにも拡散するため画質が悪くなるという問題を抱えている。
【0011】
また、2つ以上の物理現像核層を有する平版印刷版が特開昭59−22051号公報に開示されている(特許文献4)。同公報では画像部としてバインダー中に埋まった銀を使用しており、この銀の好ましい”埋め方”を提示しているものであり、本発明にのようなハロゲン化銀乳剤層等を現像処理後に水洗除去してアルミニウム支持体と接着した銀を画像として使用するアルミニウム平版印刷版とは全く異なったものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−305448号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開2000−181052号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2000−275850号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開昭59−22051号公報(第1頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、耐刷力及びインキ乗りに優れ、かつ高画質の平版印刷版を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核層を有し更にその上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版において、前記物理現像核層を少なくとも2層有し、支持体より遠い物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比が、支持体に近い物理現像核層のそれより小さいことを特徴とする平版印刷版によって達成された。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、物理現像核層は少なくとも2層有する。そのうち1層はアルミニウム支持体に隣接し、他の全ての物理現像核層はお互いが隣接するよう配置され、物理現像核層の間に中間層などが存在することは好ましく無い。本発明において、物理現像核層は3層以上が積層された態様を含むが、物理現像核層は2層構成であるのが好ましい。以降、2層構成の態様を前提に説明する。
【0016】
本発明において、それぞれの物理現像核層に含有する物理現像核及びバインダーは同じ種類であっても異なっていてもよい。物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。これらの詳細及び製法については、例えば、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディフュージョン・プロセシズ」を参照し得る。本発明に用いられる物理現像核としては、金属あるいは金属硫化物が好ましい。
【0017】
バインダーとしては、親水性高分子、例えば澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸ソーダ、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、蛋白質、ポリビニルホスホン酸等の親水性高分子又はそのオリゴマー体、特開平8−211614記載の親水性高分子などが使用できる。
【0018】
アルミニウム支持体に近い物理現像核層、即ちアルミニウム支持体に隣接する物理現像核層は、バインダーが実質的に存在しないか、存在しても極微量であるのが好ましい。バインダー量としては、5mg/m2以下が好ましく、更に好ましくは1mg/m2以下である。物理現像核の含有量は、0.05〜50mg/m2の範囲が好ましく、特に0.1〜5mg/m2の範囲が好ましい。この物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比は、0.05以上が好ましく、特に1以上が好ましい。前記質量比は大きいほど好ましい。
【0019】
アルミニウム支持体から遠い物理現像核層は、本発明においては中間層等は有しない方が好ましいので、ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層となる。該物理現像核層の物理現像核/バインダー比は、前記した支持体に隣接した物理現像核層の物理現像核/バインダー比より小さくなければならない。
【0020】
アルミニウム支持体から遠い物理現像核層に含有するバインダー量は、1〜300mg/m2の範囲が好ましく、特に1〜150mg/m2の範囲が好ましい。物理現像核の含有量は、0.001〜10mg/m2の範囲が好ましく、特に0.01〜5mg/m2の範囲が好ましい。この物理現像核層の物理現像核/バインダー比は、0.00001〜0.1の範囲が好ましく、0.0001〜0.01の範囲がより好ましい。
【0021】
上記したアルミニウム支持体から遠い物理現像核層(ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層)にはバインダーとして、蛋白質、例えばゼラチン、アルブミン、カゼイン等を含有するのが好ましく、これによって耐刷力を更に向上させることができる。これらの蛋白質は、該物理現像核層のバインダーの全部として用いても良く、またバインダーの一部として用いても良いが、少なくとも該物理現像核層の全バインダーの30質量%以上用いるのが好ましく、特に30〜80質量%の範囲で用いるのが好ましい。蛋白質と併用するバインダーとしては、相溶性の良い高分子、例えばポリビニルピロリドンやカルボキシメチルセルロースなどが好ましい。
【0022】
また、アルミニウム支持体から遠い物理現像核層(ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層)に、バインダーとしてポリビニルホスホン酸を含有するのが好ましく、これによってインキ乗りを向上させることができる。またポリビニルホスホン酸と他の水溶性高分子と混合して使用することも可能であるが、ポリビニルホスホン酸は、該物理現像核層の全バインダーに対して少なくとも50質量%以上用いるのが好ましく、特に70質量%以上用いるのが好ましい。
【0023】
本発明において、各物理現像核層には更に界面活性剤、公知の現像安定剤、硝酸塩もしくは亜硝酸塩などの各種塩類を含有させることができる。
【0024】
本発明で用いるアルミニウム支持体にはアルミニウム純度が93質量%以上、好ましくは99質量%以下の純度のアルミニウム支持体を使用する。アルミニウム不純物としては鉄、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、チタン、ビスマス、鉛、ジルコニウム、ニッケルなど通常アルミニウム合金として用いられている元素が使用できる。また、特に好ましいアルミ合金としては1050、1100、3003などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いられるアルミニウム支持体は公知の方法で圧延される。すなわち、アルミニウムのインゴットを溶解保持してスラブを鋳造し、スラブ表面の不純物組織部分を面削機にかけて3〜10mmづつ切削する面切削工程を経た後、均熱炉において480〜540℃、6〜12時間保持する均熱化処理工程を行い、しかる後に熱間圧延で5〜40mmの厚みに圧延した後、室温で所定の厚みに冷間圧延を行う。またその後組織の均一化のために焼鈍を行い圧延組織等を均質化した後、規定の厚みに冷間圧延を行い、平坦度の良い板にするため矯正する。支持体の厚さは通常約0.13〜0.50mmの範囲である。
【0026】
本発明に用いられる支持体には、この技術分野において通常使用されている脱脂処理、粗面化処理及び陽極酸化処理等が施されるが、少なくとも粗面化処理及び陽極酸化処理がこの順で行なわれた支持体を用いる。
【0027】
本発明で用いるアルミニウム板は表面から脂肪性物質を除去するために脱脂処理を行う。脱脂処理としてはトリクレン、シンナー等の溶剤脱脂、界面活性剤、ケロシン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウムを混ぜたエマルジョン脱脂、酸脱脂、アルカリ脱脂などがある。
【0028】
本発明で用いるアルミニウム板は感光層との密着性を良好にし、かつ保水性を改善するために粗面化処理をされる。粗面化処理の方法としては機械的処理、化学的処理、電気化学的処理があり、これらを単独もしくは組み合わせて処理を行うが、特にコスト的に機械研磨を組み合わせることが好ましい。表面の形状は一般に粗さ計により表されるが、その大きさは中心線平均粗さ;Raの値で0.3〜1.0μmが適当である。
【0029】
機械的粗面化処理としてボールグレイン法、ナイロンブラシ法、バフ研磨法、ブラスト研磨法等を用いることができる。また化学的粗面化には塩化物、フッ化物等で化学的にアルミニウムを溶解する方法がある。
【0030】
電気化学的粗面化処理方法は他の方法に比較して電解液組成及び電解条件によって、砂目の形状及び表面粗さを微妙にコントロールすることが可能なのでこの方法を用いることが好ましい。電気化学的粗面化処理は直流、交流または両者の組み合わせで行うことができる。交流波としては単相又は3相の商業用交流あるいはこれらを含めた10〜300Hzの範囲の正弦波、矩形波、台形波等がある。
【0031】
アルミニウム板に供給される電力は電解液の組成、温度、電極間距離等により変わるが、印刷版として適切な砂目を得るためには、一般に電圧では1〜60A/dm2、電気量では50〜4000Cの範囲で使われる。また電極とアルミニウム板との距離は1〜10cmの範囲が好ましい。
【0032】
電解液としては硝酸あるいはその塩、塩酸あるいはその塩、あるいはそれらの1種または2種以上の混合物の水溶液が使用できる。更に必要に応じて硫酸、リン酸、クロム酸、硼酸、有機酸、あるいはそれらの塩、アンモニウム塩、アミン類、界面活性剤、その他の腐食防止剤、腐食促進剤、安定化剤を加えて使用することもできる。
【0033】
電解液の濃度としては上記の酸類の濃度が0.1〜10%であり、電解液中のアルミニウムイオンの濃度を0〜10g/Lの範囲に維持したものが好ましい。電解液の温度は0〜60℃が好ましい。
【0034】
本発明においてデスマットとは粗面化と陽極酸化の間に行う化学エッチング工程のことを指す。デスマットには酸あるいはアルカリを用いて行うことができるが酸処理が好ましい。。酸には、硝酸、リン酸、クロム酸、硫酸、塩酸、フッ酸などを単独、あるいは数種混合して用いることができる。アルカリデスマットには水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、第三リン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどを単独、もしくは数種混合して用いることができる。またそのデスマット液の濃度、処理時間はスマットを完全に除去できるだけの濃度が必要である。スマットの発生量はその前段階の粗面化の処理方法に依存しているので、必要なデスマットの程度は粗面化の方法に依存する。しかしスマットの除去の程度は走査型顕微鏡で容易に観察できるので、これで処理したアルミの表面を観測することでスマットが完全に除去されるデスマットの程度を容易に決定することができる。実際には廃液の処理の関係もあり、酸あるいはアルカリの合計で5〜40%程度で、その処理時間は30秒〜2分が好ましい。処理温度は40〜60℃が好ましい。
【0035】
本発明においてデスマット工程は2回以上に分けることも可能である。この場合酸デスマットとアルカリデスマットとを組み合わせることも可能であるが、アルカリデスマットを先にするほうが好ましい。
【0036】
このような粗面化処理、デスマット処理を行った後、陽極酸化処理が施される。陽極酸化の電解液には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸または有機酸(例えばスルファミン酸、ベンゼンスルホン酸など)またはそれらの混合物が好ましく、また特に生成酸化膜の溶解性の低い酸が好ましい。
【0037】
陽極酸化膜は陽極にのみ生成するので電流は通常直流電流が使用される。陽極酸化の条件としては液濃度1〜40%、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜100Vの範囲で使用される。陽極酸化膜の厚みは電流密度と時間により変えられ、印刷版の耐刷グレードによって適宜調整されるが、3g/m2以下、好ましくは2.8g/m2〜1g/m2、更に好ましくは好ましくは2.3g/m2〜1g/m2必要となる。温度は陽極酸化膜の硬度に影響を与え、低温では硬度は高くなるが、可撓性に劣るため通常は常温付近の温度で処理される。これら作成した陽極酸化膜の量はJIS H86807「皮膜質量法」に基づいて測定できる。
【0038】
また、陽極酸化処理を行なった後、必要に応じて後処理を行うことも出来る。後処理としては当該業者に知られた方法、例えば珪酸塩処理、弗化ジルコン酸処理などの無機塩類での後処理、アラビアガム、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸等の有機高分子処理、水和封孔処理などがある。
【0039】
本発明の印刷版の感光性ハロゲン化銀乳剤層には保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることができる。即ち、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、グラフト化ゼラチン等各種ゼラチンを用いることが出来る他、ポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有させることが出来る。用いられる親水性コロイドとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、好ましくは、物理現像後の親水性コロイド層の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まない親水性コロイド層を用いることが望ましい。
【0040】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の種類としては、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択される。また乳剤のタイプとしてはネガ型、ポジ型のいずれでもよい。これらのハロゲン化銀乳剤は必要に応じて化学増感あるいはスペクトル増感することが出来る。
【0041】
本発明においてハロゲン化銀乳剤層にはベンゾトリアゾールもしくはその誘導体、メルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物を含有させることもできる。その量は1〜100mg/m2、好ましくは5〜30mg/m2である。
【0042】
ベンゾトリアゾール誘導体としては5−メチルベンゾトリアゾール、5−クロルベンゾトリアゾール等が挙げられる。またメルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物の複素環としてはイミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、ピラゾリドン、トリゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等があり、中でもイミダゾール、トリアゾール、テトラゾールが好ましい。
【0043】
メルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物の具体例を以下に挙げる。2−メルカプト−4−フェンルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2メルカプト−ベンズイミダゾール、1,3ジエチル−ベンズイミダゾリン−2−チオン、1,3ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2−ジメルカプト−1,1’−デカメチレン−ジイミダゾリン−2−チオン、2メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシルーベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリドン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−5−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−5−ペンタデシル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−フェニル1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニルピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラッジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル1,3,5トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−S−トリアゾリノ[1,2−a]−S−トリアゾリン等が挙げられる。
【0044】
本発明で用いられる現像液には、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセスロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、1−ェニル−5−メルカプトテトラゾール、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物等の添加剤等を含ませることが出来る。
【0045】
現像液のpHとして通常約10〜14、好ましくは約12〜14であるが、使用する平版印刷版のアルミニウム支持体の前処理(例えば陽極酸化)条件、写真要素、所望の像、現像液中の各種化合物の種類及び量、現像条件等によって異なる。
【0046】
本発明において、現像処理に続いて水洗処理が施され、ハロゲン化銀乳剤層が除去され、銀画像と非画像部であるアルミニウム支持体を露出させる。水洗液にはpHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物を含有することができる。また、防腐剤を含有させてもよい。水洗液中には更にタンパク質分解酵素(例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ)や、前記した親油化剤を含有させることができる。
【0047】
現像処理と水洗処理の間に、現像の進行を停止させる中和安定化処理を施してもよく、中和液に前記親油化剤を含有させてもよい。
【0048】
上記水洗液はアルミニウム支持体上のハロゲン化銀乳剤層を完全に除去するために用いるもので、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に用いられている。
【0049】
水洗処理によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。本発明において、仕上げ液には、非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤガム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。また、画像部の親油性を更に向上させるために、上記親油化剤を含有することが好ましい。更に上記酵素を含有することができる。
【0050】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。尚、%は断りのないかぎり質量%を示す。
【0051】
実施例1
材質1050のアルミニウム板を4%水酸化ナトリウム水溶液で50℃1分脱脂処理を行い、水洗した後、400メッシュのパミストン懸濁液を用い、回転ナイロンブラシで研磨し、2.5%の塩酸水溶液中20℃で交流密度50A/dm2で60秒電解粗面化処理を行い、20%リン酸で50℃1分間デスマット処理した。その後25%硫酸溶液中で温度20℃電気密度3A/dm2、処理時間45秒で陽極酸化処理した。
【0052】
チオ硫酸ナトリウム水溶液と塩化パラジウム水溶液を40℃にて5分混合し、硫化パラジウムコロイド溶液を作成し、これに表1に示すようにバインダーを加えて6種類の物理現像核層の塗液(核液No.1〜6)を作成した。これら核液を1層目と2層目に配置してアルミニウム支持体上に塗布した。詳細を表2に示す。尚、1層目はアルミニウム支持体に近い物理現像核層であり、2層目は支持体から遠い物理現像核層である。1層目の硫化パラジウムの量は0.3mg/m2、2層目は0.2mg/m2となるように調整した。
【0053】
また比較として、1層のみの物理現像核層(硫化パラジウム量が0.5mg/m2)を有するもの(プレートNo.1、2)、また更に比較として1層目に核液1を硫化パラジウム量が0.5mg/m2、2層目に硫化パラジウム無しでポリビニルピロリドン(PVP K90)が40mg/m2となるように塗布したもの(プレートNo12)、及び1層目に硫化パラジウム無しでポリビニルピロリドン(PVP K90)が0.3mg/m2、2層目に核液3を硫化パラジウム量が0.5mg/m2となるよう塗布したもの(プレートNo13)を作成した。
【0054】
【表1】
表中、核/バインダー比は、物理現像核/バインダー質量比である。
【0055】
【表2】
【0056】
ハロゲン化銀乳剤の調整は、保護コロイドとしてアルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.3μmの銀1モル当たり0.006ミリモルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムをドープさせた塩化銀84.8モル%、臭化銀15モル%、ヨウ化銀0.2モル%の塩臭化銀乳剤を調整した。その後この乳剤をフロキュレーションさせ、洗浄した。さらにこの乳剤に金硫黄増感を施した後、安定剤を添加し赤色感光性の増感色素を銀1g当たり3mg用いて分光増感した。
【0057】
得られたハロゲン化銀乳剤を物理現像核層塗布済みアルミニウム支持体にこの乳剤を塗布量が硝酸銀で3.0g/m2となるよう同じスロットコーターにて塗布乾燥し感光性平版印刷版を作成した。このようにして得られた平版印刷版に光源が赤色半導体レーザーであるイメージセッターSDP−α2400(三菱製紙社製)で2400dpi、175lpiで画像露光を行い、次に製版用プロセッサー(三菱製紙社製P−α880)で処理時間を変えて処理して平版印刷版を作製した。製版用プロセッサーは、現像処理工程(22℃)、水洗処理工程(35℃の水洗水をシャワー噴射しながらスクラブローラーで乳剤層をウォッシュオフする)、仕上げ処理工程(21℃、シャワー)及び乾燥工程から構成されている。水洗処理工程は貯蔵タンクに貯留された20Lの水洗水をポンプで循環させて、平版印刷版にシャワー噴射した後、濾過フィルターで濾過して貯留タンクに回収し再使用するクローズドタイプとなっている。
【0058】
用いた現像液、水洗液、仕上げ液の構成は次の通りである。
<現像液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3ピラゾリジノン 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
チオ硫酸ナトリウム 5g
N−メチルエタノールアミン 6g
エチレンジアミン4酢酸ナトリウム塩 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.4
【0059】
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチルオキサンジオール 0.5g
トリエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
リン酸2水素カリウム 40g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは6.0に調整した。
タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0060】
<仕上げ液>
アラビアゴム 10g
リン酸 0.5g
硝酸ナトリウム 20g
ポリエチレングリコール#400 100g
2−メルカプト−5−nヘプチルオキサンジオール 0.5g
脱イオン水にて1000mlとする。
水酸化ナトリウムにてpHは6.5に調整した。
【0061】
この様にして作成した平版印刷版を、印刷機スプリント226(コモリコーポレーション)で印刷した。なお、インキはDICのGEOS GシアンHタイプを、湿し水としては日研アストロマーク3の2%水溶液を用いた。
【0062】
表3に印刷結果を示す。インキ乗り枚数は印刷開始後印刷濃度が安定になるまで必要とされた印刷枚数を表す。耐刷力は印刷していって画像にかすれ、脱落など変化のあった枚数を、画質はネガ、ポジともに再現できる細線の太さで表す。
【0063】
【表3】
【0064】
表2より、本発明の平版印刷版は、インキ乗り性、耐刷力、及び画質に優れていることが判る。
【0065】
実施例2
表4に示される核液を実施例1と同様に作成し、実施例1と同様にして表5に示されるプレートを作成した。実施例1と同様に評価した結果を表6に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
上記結果から、2層目の核液として蛋白質バインダーを含むと耐刷力がさらに向上し、2層目のバインダーとしてポリビニルホスホン酸を用いるとインキ乗りがさらに向上することがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、インキ乗り性、耐刷力、及び画質に優れた平版印刷版が得られる。
Claims (3)
- 粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核層を有し更にその上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版において、前記物理現像核層を少なくとも2層有し、支持体より遠い物理現像核層の物理現像核/バインダーの質量比が、支持体に近い物理現像核層のそれより小さいことを特徴とする平版印刷版。
- ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層がバインダーとして蛋白質を含有する請求項1に記載の平版印刷版。
- ハロゲン化銀乳剤層に隣接する物理現像核層がバインダーとしてポリビニルホスホン酸を含有する請求項1に記載の平版印刷版。
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