JP2004287078A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱源を備えた加熱ロールと、一以上の支持ロールと、これら加熱ロール及び支持ロールとに張架され回転される無端状の定着ベルトと、当該定着ベルトを挟み当該加熱ロールに対して圧接する加圧ロールと、当該加熱ロールよりも定着ベルトの回転方向下流側に当該定着ベルトを冷却する冷却手段とを備え、
当該冷却手段は、当該定着ベルトの内側に接触する冷却構造体を有し、当該冷却構造体の当該定着ベルトに対する接触面には耐磨耗処理が施されている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の電子写真方式等を用いた画像形成装置の定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開2002−099168号公報
【0003】
電子写真方式を使用した複写機やプリンター等の画像形成装置の定着装置としては、加熱ロールと加圧ロールを対向して配置し、その挟持部分を所定の温度、所定の荷重で定着させる構成のロール定着装置が広く採用されている。上記ロール定着装置による定着後のカラー画像表面には、トナー層の高低によって、例えば10〜100μm程度の凹凸が形成され、光沢のムラが発生しがちである。その結果、普通紙や一般の印刷用紙等のコート紙上に形成されたカラー画像は、入射する照明光を乱反射し、肉眼で観察すると、光沢性に劣る画像に見える場合がある。
【0004】
そこで、光沢性に優れたカラー画像が得られるカラー画像形成方法・装置として、高光沢な表面を有するベルトにトナー画像を重ねて加熱加圧してトナーを溶融させ、その後、ベルトに当接する冷却構造体(ヒートシンクなど)により冷却し、トナーが固化した後にベルトから剥離することで、平滑なベルト表面の形状をレプリカすることにより高光沢な画像を得る冷却剥離方式のベルト定着装置が、本出願人により既に提案されている(特許文献1)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、このようなベルト定着装置では以下のような課題が明らかとなった。
【0006】
つまり、定着ベルト内周面と冷却構造体を接触させて摺動させると、定着ベルト内周面、および冷却構造体の接触面とが磨耗し、接触面上に磨耗紛が付着、堆積する。さらに、プリント枚数が増加するに従い、冷却構造体の接触面上の磨耗紛は塊状または線状に成長し、直径数mm程度、または幅が数mm程度になる。これにより、接触面上の磨耗紛が付着した個所では、冷却構造体の接触面と定着ベルトとの密着性が低下し、定着ベルト、および記録紙に対して均一、かつ安定した冷却ができなくなる。よって、記録紙上には冷却構造体の接触面上の塊状磨耗紛が付着した個所に相当する筋状の冷却ムラが発生するため、定着ベルトから剥離した記録紙上には冷却ムラによる光沢ムラが生じる。
【0007】
本発明は、このような技術的な課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、定着ベルトと冷却構造体の接触面の摺動による磨耗紛を低減することにより、定着ベルトと冷却構造体の接触面の密着性を維持し、記録紙を均一かつ安定に冷却することで高光沢で高画質の画像が得られる定着装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、熱源を備えた加熱ロールと、一以上の支持ロールと、これら加熱ロール及び支持ロールとに張架され回転される無端状の定着ベルトと、当該定着ベルトを挟み当該加熱ロールに対して圧接する加圧ロールと、当該加熱ロールよりも定着ベルトの回転方向下流側に当該定着ベルトを冷却する冷却手段とを備え、当該冷却手段は、当該定着ベルトの内側に接触する冷却構造体を有し、当該冷却構造体の当該定着ベルトに対する接触面には耐磨耗処理が施されている定着装置である。
【0009】
このように定着装置を構成することにより、定着ベルトと冷却構造体の接触面の摺動によって、接触面上に付着する磨耗粉を減らし、定着対象の記録シートを均一かつ安定に冷却することができる。なお、この定着装置による定着動作は、まず、定着ベルトと加圧ロールとの圧接部に、トナー像を担持する記録シートをそのトナー像担持面が定着ベルト側に位置する姿勢で導入し、通過させる。その後、当該記録シートは冷却手段により冷却され、定着ベルトから剥離させる。
【0010】
ここで、耐磨耗処理の具体例としては、第一に冷却構造体の定着ベルト接触面の硬質化、第二に、冷却構造体の定着ベルト接触面と定着ベルトの摩擦を低減(高摺動樹脂で被覆、またはオイル予め塗布、あるいは供給手段で適宜供給)、第三に、冷却構造体の定着ベルト接触面の中心線平均粗さを小さくする、ことが挙げられる。
【0011】
すなわち、前記耐磨耗処理では、耐磨耗層として前記接触面に冷却構造体の他面よりも硬い硬質化層を形成する、耐磨耗層として前記接触面に冷却構造体の他面よりも摺動性の高い高摺動性層を形成する、前記接触面に潤滑剤が供給される、前記接触面を冷却構造体の他面よりも平滑化する、ことができる。また、これらを任意に組み合わせ、より耐磨耗性を向上させることもできる。
【0012】
なお、前記耐磨耗層の厚みは、50μm以下であるとすることができる。また、前記平滑化処理により前記接触面の中心線平均粗さRaは、Ra≦10μmとすることができる。また、前記潤滑剤を前記定着ベルトの内側面から供給する供給手段を備えることができる。さらに、前記接触面の定着ベルトの回転方向長さをL〔mm〕、定着ベルトの移動速度をV〔mm/sec〕とすると、これらの間にはL≧1.5Vの関係が成り立つよう構成することもできる。
【0013】
【発明の実施による形態】
基本構成 図1は本発明の実施形態に係る定着装置を備えるタンデム型カラー画像形成装置100の概略構成図である。
【0014】
この画像形成装置100には図示しないパーソナルコンピュータ等から送信されるカラー画像情報や、画像データー入力装置、画像読み取り装置102より読み取られたカラー原稿のカラー画像情報等が入力され、入力されたこれらの画像情報に対して画像処理が行われる。
【0015】
符号1Y,1M,1C,1Kはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナー画像を形成する電子写真画像形成ユニットであり、複数の張架ロール10により張架された無端状の中間転写体9の進行方向に対して1Y,1M,1C,1Kの順で直列に配設されている。また中間転写体9は各電子写真画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの静電潜像担持体2Y,2M,2C,2Kとそれぞれに対向して配設される転写手段6Y,6M,6C,6Kとの間を挿通している。
【0016】
中間転写体9への画像形成の動作を、電子写真画像形成ユニット1Yを例に説明する。まず静電潜像担持体2Yは、一様帯電器3Yによりその表面を一様に帯電される。次に露光器4Yによりイエロー画像に対応する像露光がなされ、静電潜像担持体2Yの表面にはイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。このイエロー画像に対応する静電潜像は現像装置5Yによってイエロートナー像となり、一次転写手段の一部を構成する一次転写ロール6Yの圧接力及び静電吸引によって中間転写体9上に転写される。転写後の静電潜像担持体2Y上に残留したイエロートナーは、静電潜像担持体クリーニング装置7Yよって掻き取られる。静電潜担持体2Yの表面は除電装置8Yによって除電された後、次の画像形成サイクルのために一様帯電器3Yにより再び帯電される。
【0017】
多色のカラー画像形成を行なう本画像形成装置100では、各電子写真画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が電子写真画像形成ユニット1M,1C,1Kにおいても行われ、中間転写体9上にフルカラートナー像が形成される。
【0018】
中間転写体9上に形成されたフルカラートナー像は、所定のタイミングで二次転写位置へと搬送される記録紙上18に、中間転写体9を支持するバックアップロール13と、バックアップロール13に圧接する二次転写手段の一部を構成する二次転写ロール12の圧接力及び静電吸引によって転写される。
【0019】
記録紙18は、図1に示すように、画像形成装置100内の下部に配置された記録紙収容部としての給紙カセット17から、所定のサイズのものが給紙ロール17aによって給紙される。給紙された記録紙18は、複数の搬送ロール19及びレジストロール20によって、所定のタイミングで中間転写体9の二次転写位置まで搬送される。そして、記録紙18には、上述したように、二次転写手段としてのバックアップロール13と二次転写ロール12とによって、中間転写体9上からフルカラートナー像が一括して転写されるようになっている。
【0020】
また、中間転写体9上からフルカラートナー像が転写された記録紙18は、中間転写体9から分離された後、二次転写手段の下流側に配設された定着装置101へと搬送される。また、二次転写手段により記録紙18上に転写できなかった中間転写体9上の残トナーは、そのまま中間転写体9上に付着した状態で中間転写体クリーニング装置14まで搬送され、クリーニング手段14により、中間転写体9上から除去され次の画像形成に備える。
【0021】
図2は、定着装置101の断面概略図である。定着装置101は、熱源を有する加熱ロール40、剥離ロール44、ステアリングロール45 、加熱ロール40および剥離ロール44とステアリング45に巻き回された定着ベルト47、定着ベルト47を介して加熱ロール40に押圧してニップを形成する加圧ロール42、定着ベルト47の回転方向のニップ下流側にて定着ベルト47を冷却する冷却構造体46を有する。
【0022】
ここで、記録紙18としては、図3に示すように基材18b紙の片面(または表面)に、熱可塑性樹脂を主成分とする透明な受像層(透明樹脂層)18aを積層した樹脂コート紙を用いた。そのため、用紙全面で均一な光沢感が得られる。この基材18bとしては、画像形成用の普通紙、コート紙や、印画紙等が挙げられる。また、受像層(透明樹脂層)18aを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。なお、受像層(透明樹脂層)18aの厚さは定着時の加熱加圧により溶融し、トナー像が埋め込まれる程度の厚さが好ましく、具体的には5〜20μmの範囲で、例えば10μmの厚さに被覆した樹脂コート紙を用いた。また、トナー画像部分以外の光沢が低下するものの、受像層(透明樹脂層)18aが被覆されていない、普通紙やコート紙でもプリント可能である。
【0023】
トナーTを担持したこのような記録紙18は、トナー画像が定着ベルト47と接するようにニップ部に搬送され、図4に示すように記録紙18上のトナーTが加熱加圧定着されることで、記録紙18表面の受像層(透明樹脂層)18a内部に埋め込まれ、冷却構造体46で所定の温度に冷却された後に、剥離ロール44部で定着ベルト47から記録紙18が剥離する。
【0024】
加熱ロール40は、熱伝導性の高い金属製のコア40aの表面に、PFAチューブ等のフッ素樹脂層からなる離型層40bを形成し、コア40a中に、ハロゲンランプなどの加熱源41が備えられ、加熱ロール40の表面温度が所定の温度になるように加熱し、定着ベルト47とトナー像が形成された記録紙18を加熱する。
【0025】
加圧ロール42は、熱伝導性の高い金属製のコア42aの周囲に、ゴム硬度(JIS−A)が40°程度のシリコーンゴム等からなる弾性体層42bを被覆し、さらにその表面PFAチューブ等のフッ素樹脂層からなる離型層42cを形成し、コア42a中に、ハロゲンランプなどの加熱源43が備えられ、加圧ロール42の表面温度が所定の温度になるように加熱し、定着時の記録紙18に圧力を印加させると同時に、記録紙を裏面から加熱する。
【0026】
加熱ロール40と加圧ロール42の構成は上述した構成に限定される物ではなく、記録紙18上に形成されたトナー画像を、定着ベルト47を介して記録紙18上に定着できる構成であれば良い。
【0027】
剥離ロール44は、定着ベルト47から記録紙18を記録紙18自身の剛性により剥離させる原理であり、その外径形状(寸法)は定着ベルト47と記録紙18の付着力、及び定着ベルト47の剥離ロール44への巻き付け角度によって決定される。
【0028】
ステアリングロール45は、定着ベルト47を回転させることにより発生する片寄りによるベルト端部の破損を防止するためのものであり、一方の軸が固定され、他方の軸を図示しない駆動装置により加熱ロール40に対して傾かせることで、定着ベルト47が片寄った場合逆方向にベルトの進行方向を変える役割を果たす。
【0029】
定着ベルト47は熱硬化型ポリイミド製の無端状フィルム上に、表面が平滑な厚さ35μmのシリコーンゴム層等を被覆したものが用いられる。消費電力の面からはベルトは薄いものが望ましいが、強度的な観点からポリイミド基材は75μm以上、記録紙上のトナー画像に密着して定着させる観点からシリコーンゴム層は30μm以上が必要である。さらに、定着ベルト47は加熱ロール40と剥離ロール44、ステアリングロール45の間に掛け渡され、加熱ロール40に従動する。
【0030】
冷却構造体46は、定着ベルト47と密着している記録紙18を冷却するためのものであり、定着ベルト47の内周面で、かつ加熱ロール40の下流側、剥離ロール44の上流側に配設され、定着ベルト47の内周面に接触して定着ベルト47の熱を吸収する。
【0031】
ここで、冷却構造体46は定着ベルト47を接触しながら冷却する(実際には記録紙18を定着ベルト47を介して冷却する)ヒートシンク46aとヒートシンク46aを覆うダクト46bとを備えている。ヒートシンク(放熱部材)46aの接触面46Aは、平面状に形成され定着ベルト47に接触している。また、定着ベルト47の回転とともに搬送される記録紙18と定着ベルト47との密着性を高めるために、ヒートシンク46aの接触面46Aと対峙する位置に接触補助ロール49a、bを設けることもできる(図2参照)。
【0032】
なお、このダクト46b内には図示しない送風ファンによりエアフローが生じる。このように、記録紙18(定着ベルト47)の冷却方式としては、本実施形態のような空冷式をはじめ、冷却媒体を利用した方式(水、冷媒などを循環させる方式)などが適用可能である。
【0033】
次にヒートシンク46aに用いられる材質について説明する。ヒートシンク46aとしては熱伝導率も大きいものが好ましく、通常他の物質に比べて熱伝導率が大きい金属が用いられる。熱伝導率の大きいものとしては、銀、銅、金、アルミニウム、およびそれらの合金等が挙げられる。ここで、本実施形態では軽量で加工性に優れ、コスト的にも有利なアルミニウム合金が使用された。より詳細には、押出性に優れ、かつ複雑な断面形状が得られ、耐食性、表面処理性も良好なAl−Mg−Si系のA6063(JIS合金呼称)を用いた。
【0034】
次に定着ベルト47とヒートシンク46aの接触面46Aに施す表面処理について説明する。本発明では、定着ベルト47とヒートシンク46aの接触面46Aの摺動によって接触面上に付着する磨耗粉に対し、以下の4つの手段を用いて接触面上の磨耗粉を低減し、記録紙18を均一かつ安定に冷却する。以下、各手段を実施形態1〜4として説明する。
【0035】
[実施形態1]
本実施形態では、耐磨耗処理としてヒートシンク46aの接触面46Aの耐磨耗性を高くする。本発明者が表面処理層のないアルミニウム合金のヒートシンク46aと定着ベルト47とを摺動させ、ヒートシンク46aの接触面46Aに付着した磨耗粉を分析したところ、定着ベルト47の基材であるポリイミドフィルムの磨耗粉の他にアルミニウム合金の磨耗粉が含まれていることを確認した。よって、ヒートシンク46aの接触面46Aを耐磨耗性を向上させることで磨耗粉を低減することが可能になる。
【0036】
簡単かつ低コストでアルミニウム表面の耐磨耗性を向上させる方法として、表面に酸化アルミニウム皮膜を形成する陽極参加処理(アルマイト処理)が存在する。アルマイト処理の手順としては、まず酸化アルミニウム皮膜を形成する表面を脱脂、電解研磨などで清浄にし、硫酸やシュウ酸などの電解液中で、アルミニウムを陽極として電圧を加え、電流を流す。その後、アルミニウム表面には数〜数百μm、硬度Hv400程度の酸化アルミニウム皮膜が形成される。
【0037】
図5は、接触面46Aにアルマイト処理したヒートシンク46a(硬度Hv350)と、アルマイト未処理のヒートシンク46a(硬度Hv60)を用いて摺動テストを行なった結果を説明するものである。図5中、縦軸は磨耗紛付着面積を、横軸はプリント枚数をそれぞれ示している。ここで、磨耗紛付着面積は、所定枚数プリント後、ヒートシンク46aの接触面46Aを透明なテープで写し取り、磨耗粉の付着状態を画像解析した。
【0038】
これより、定着ベルト接触面46Aをアルマイト硬質化していないヒートシンク46aはプリント枚数が(2000枚、4000枚、6000枚、8000枚、10000枚と)増加するにつれ磨耗粉の付着量が増えていくのに対し、アルマイト処理したヒートシンク46aは磨耗粉の付着量の増え方が緩やかであった。よって、定着ベルト接触面46Aを硬質化することにより、経時後においても記録紙を均一かつ安定に冷却することが可能であることが分かる。
【0039】
なお、耐磨耗性を向上させる他の方法としては、窒素ガス雰囲気でのグロー放電を利用し、アルミニウム表面に窒化アルミニウム皮膜を形成するイオン窒化法がある。イオン窒化法では、硬度Hv1000以上の表面層を形成する方法などがある。
【0040】
[実施形態2]
本実施形態は、定着ベルト47とヒートシンク46aの接触面46Aとの摺動性を高くするものである。高摺動性が得られる材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂のような樹脂を接触面46Aへコーティングすることにより、容易に高摺動性を得ることができる。特にフッ素樹脂は、摺動性、耐磨耗、耐熱性等に優れているのに加え、コーティングの他にも成型品やフィルムでコーティングすることが可能である。また、フッ素樹脂系のコーティング膜は非粘着性があるため、定着ベルト47の磨耗粉が付着、堆積しにくいという利点もある。フッ素樹脂のコーティング材としては、PTFE、PFA、FEP、ETFE等があり、熱に対する硬度やテーバー磨耗値、摩擦係数などから選択して使用する。
【0041】
図6は、接触面46AにPTFEを厚さ20μでコーティングしたヒートシンク46aと、コーティングしていないヒートシンク46aとを用いて摺動テストを行なった結果を示す。図6中、縦軸は磨耗紛付着面積を、横軸はプリント枚数をそれぞれ示している。磨耗紛付着面積は、実施形態1と同様の方法で計測した。これより、定着ベルト接触面46AをPTFEでコーティングしていないヒートシンク46aはプリント枚数が増加するにつれ磨耗粉の付着量が増えていくのに対し、PTFEコーティングしたヒートシンク46aは磨耗粉の付着量の増え方が緩やかであった。よって、定着ベルト接触面46Aの摺動性を向上することにより、経時後においても記録紙18を均一かつ安定に冷却することが可能となることが分かる。
【0042】
[実施形態3]
本実施形態では、定着ベルト47とヒートシンク46aの接触面46Aとの摺動性を向上させるために、定着ベルト47とヒートシンク46aの接触面46Aとの間に潤滑剤を介在させる。潤滑剤の形態は液体、固体、流動体のいずれでもよく、高摺動性が確保できるものであればよい。
【0043】
液体潤滑剤としては、シリコーンオイル等を利用することができる。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル/アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性・アルコール変性シリコーンオイル等が挙げられる。これら、液体潤滑剤を使用する場合、発泡弾性体または不織布等に液体を含浸させた潤滑剤塗布手段により、定着ベルト内周面に適宜潤滑剤を塗布する。
【0044】
また、固体(粉体)潤滑剤としては、フッ素系樹脂、窒化物、ファインセラミック、グラファイト、ステアリン酸亜鉛等の粉末が使用できる。これら粉体潤滑剤を使用する場合においても、ブラシやウェブロール等の潤滑剤塗布手段により、定着ベルト内周面に適宜潤滑剤を塗布する。
【0045】
[実施形態4]
本実施形態は、ヒートシンク46aの接触面46Aの中心線平均粗さRaを小さくする。具体的には中心線平均粗さRaは10μm以下がよく、バフ研磨や電解研磨等で仕上げることができる。なお、中心線平均粗さが大きいと、凹部に磨耗粉が付着、堆積しやすくなり、均一かつ安定に冷却することが困難となる。
【0046】
図7は、接触面47Aの中心線平均粗さRaを変化させた複数のヒートシンク46aを用いて摺動テストを行なった結果を示す。図7中、横軸はヒートシンク46aの接触面46Aの中心線平均粗さRaを、縦軸は所定枚数プリント後の磨耗粉の付着量(磨耗粉付着面積)を示している。ここでは、ヒートシンク46aの接触面46Aの中心線平均粗さRaを5μm、10μm、20μm、30μmに設定し、所定枚数プリント後の磨耗粉の付着量(磨耗粉付着面積)を測定した。なお、磨耗粉付着面積は実施形態1と同様の方法で計測した。その結果、中心線平均粗さRaが10μmより大きくなると、プリント枚数増加により磨耗粉付着面積が増えていくのに対し、定着ベルト接触面の中心線平均粗さRaが10μm以下ではプリント枚数が増加しても、磨耗粉付着面積は殆ど変化しなかった。
【0047】
よって、定着ベルト接触面47Aの中心線平均粗さRaを10μm以下にすることで、経時後においても記録紙を均一かつ安定に冷却することが可能である。
【0048】
ところで、実施形態1、実施形態2の手段では、ヒートシンク46aの表面処理層(アルマイト処理層等、コーティング層)の厚みを、定着装置の寿命(10万枚プリント相当)までの磨耗に対して保証する観点、及び定着ベルト47の冷却性能を確保する観点とを両立するため、50μm以下とした。すなわち、ヒートシンク46aの表面処理層の厚さは、表面処理層が1万枚プリント相当で2μm程度磨耗すること、及び表面処理層が厚くなるにつれ、冷却性能が低下することから規定される。
【0049】
図8は、表面処理層の厚さがそれぞれ異なる(30、50、70、90μm)複数の(ここでは4つの)ヒートシンク46aを用いて、ヒートシンク46aと定着ベルト47との接触時間(横軸)[秒]と、定着ベルト47から剥離した記録紙18の温度(縦軸)[℃]との関係を示すものである。
【0050】
この図8のグラフから分かるように、表面処理層の厚みが厚くなると、定着ベルト47とヒートシンク46aとを同一時間接触させても記録紙18の剥離温度がより高くなり、冷却性能が低下する。よって、記録紙18の剥離温度を(受像層18 aが十分に冷えるように)一定温度以下とする場合、表面処理層の厚みがより厚いヒートシンク46aで同等の冷却性能を得ようとすると、定着ベルト47との接触時間を長くしなければならず、ヒートシンク46aを大型化する、又は記録紙18の搬送速度を低下させる必要がある。また、ヒートシンク46aの定着ベルト進行方向の長さは、定着ベルト47の単位時間(1秒)あたりに進む距離に対して、1.5倍以上であることが好ましい。これは、ヒートシンク46aの長さが定着ベルト47の単位時間あたりに進む距離の1.5倍未満であると、定着ベルト47とヒートシンク46aとの接触時間が短く、十分に冷却できないためである。
【0051】
以上のことから、ヒートシンク46aは表面処理層の厚みを50μm以下とし、かつ、定着ベルト進行方向に対するヒートシンク46aの長さLと定着ベルトの単位時間(1秒)あたりに進む距離VとがL≧1.5Vとすることで、定着ベルト47(記録紙18)を十分冷却できる。
【0052】
ヒートシンク(冷却構造体)46aの定着ベルト接触面46Aに発生する磨耗粉を低減するための各実施形態は、各々単独でも組み合わせても磨耗粉低減に有効である。具体的には、実施形態1、2、3においてもヒートシンク46aの定着ベルト接触面46Aの中心線平均粗さを10μm以下に処理(実施形態4)と組み合わせると、さらに耐磨耗性、または摺動性が向上し、冷却構造体の定着ベルト接触面46Aに付着する磨耗粉を低減し、密着性を上げることにより記録紙18を均一かつ安定に冷却することができる。
【0053】
このような耐磨耗処理(表面処理、または中心線平均粗さRaを規定)を施したヒートシンク46aの定着ベルト接触面46A、およびヒートシンク46aの大きさによって、加熱ロール40と加圧ロール42により溶融させられた記録紙18の表面の透明樹脂層18aとトナー像を均一かつ安定に冷却し、画像表面全体を定着ベルト47表面にならった平滑な状態で固化させることで高光沢で品質の高いプリントを得ることが可能になる。
【0054】
以下、さらに詳細な実施態様を実施例として説明する。
【0055】
[実施例1] 本実施例に係る定着装置101の構成をより詳細に説明する。この定着装置101の加熱ロール40と加圧ロール42とは、いずれもその表面温度が140℃となるように制御されている。加熱ロール40と加圧ロール42は、いずれも、ロール基材としてアルミニウム製円筒ロール(外径40mm、肉厚3mm)を採用し、そのロール表面に弾性層としてシリコーンゴム(JIS−A硬度50度)層を設け、その弾性層に表面離型層として厚さ2mmのPFAチューブを被覆したものである。
【0056】
また、定着ベルト47は、そのベルト基材は厚さ80μmの熱可塑性ポリイミドフィルムからなる無端状ベルトであり、その基材上に弾性離型層として40μmのシリコーンゴム層を設けている。なお、この定着ベルト47の搬送速度は50mm/sに設定した。
【0057】
さらに、冷却構造体46は、ヒートシンク46aとヒートシンク46aを覆うダクト46bにより構成され、ヒートシンク46aは、アルミニウム合金(A6063)により構成され、その大きさは奥行き(ベルト幅方向)350mm、プロセス方向(ベルト進行方向)100mmものを採用した。また、ヒートシンク46aの定着ベルト47との接触面46Aは中心線平均粗さRaを6.3に処理後、アルマイト処理(アルマイト処理層の厚み30μm)が施されている。また、ダクト46b内は軸流ファンにより、風量0.4m3/minで送風される。その結果、記録紙剥離温度が70℃になるように設定されている。
【0058】
この実施例で使用される記録紙18は、基材18bとして坪量200gsmのコート紙を採用し、透明樹脂層18aはポリエステル樹脂層を採用している。また、トナーとしては、ワックス入りのスチレンアクリル製の球形トナー(平均粒径5μm)を採用している。
【0059】
[実験] 本実施例に係る定着装置101の効果を確認するために、2種類のヒートシンク(一方は比較例として表面処理層の存在しないヒートシンク、他方は実施例として中心線平均粗さRaを6.3に処理後アルマイト処理されたヒートシンク46a)を用意し、各ヒートシンクと定着ベルト47との摺動テストを実施した。
【0060】
テスト条件はA4サイズの記録紙18を1,000枚、および10,000枚プリント相当後の摺動状態と同程度になるよう、加速テストを行ない、テスト終了後にヒートシンクの定着ベルト接触面に付着している磨耗粉を透明なテープで写し取り、磨耗粉の付着状態を画像解析した。また、テスト終了時にハーフトーン画像(Y、M、C、K色のトナー像(各濃度30%))をプリントし、ベルト幅方向の光沢度(20°グロス)を測定した。
【0061】
図9は、画像の光沢度と記録紙の剥離温度との関係を説明するグラフである。このグラフの縦軸は20°グロス値を表し、横軸は記録紙18の定着ベルト47からの剥離温度[℃]を表している。すなわち、剥離温度が比較的低温の場合には、グロス値は高い値を保ち、剥離温度が70℃を超えるとグロス値は急速に低下する。本実験では、光沢度の目標値を20°グロス値で80以上とし、図9に示す光沢度と剥離温度との関係から、記録紙18の剥離温度を70℃以下になるように冷却することとした。
【0062】
表1、図10は、それぞれこの実験結果を説明するものである。
【0063】
【表1】
表1は、1,000枚および10,000枚プリント相当後にヒートシンクの定着ベルト接触面46Aに付着した磨耗粉の評価結果をまとめたものである。
【0064】
磨耗粉は定着ベルト接触面46Aの剥離ロール側端部に堆積しやすく、表1に示した磨耗粉の付着状態については、○:定着ベルト接触面46Aに付着した磨耗粉が部分的に線状に成長し、定着ベルト接触面46Aの端部に付着した磨耗粉の最大幅が1mm未満のもの(図11(a)参照)、△:定着ベルト接触面46Aに付着した磨耗粉が線状に成長し、磨耗粉の最大幅が1mm以上3mm未満のもの(図11(b)参照)、×:定着ベルト接触面46Aに付着した磨耗粉が線状に成長し磨耗粉の最大幅が3mm以上、かつ塊状に磨耗粉が成長しているもの(図11(c)参照)とした。
【0065】
その結果、表面処理層がないヒートシンクではプリント枚数が1,000枚から10,000枚へ増加するに従い、磨耗粉の付着状態が定着ベルト接触面46Aの剥離ロール側端部に最大幅5mm程度であった。表面処理層のあるヒートシンク46aではプリント枚数が1,000枚から10,000枚へ増加しても、磨耗粉の付着状態にほとんど変化が観察されなかった。
【0066】
また、10,000枚プリント後の光沢度について、目視で光沢ムラの有無が判別できるものを×、できないものを○として評価した。その結果、表面処理層のないヒートシンクではプロセス方向に筋状の光沢ムラを確認できたが、表面処理層のあるヒートシンク46Aでは光沢ムラは確認できず、均一かつ高光沢なプリントであった。
【0067】
図10は、A4サイズの記録紙18にハーフトーン画像をプリントし、ベルト幅方向の光沢度を測定した結果を示すものである。10,000枚プリント後の表面処理層がないヒートシンクは、グロスが10%程度低下する箇所が存在する。また、グロス低下に相当する箇所とヒートシンクの定着ベルト接触面とを詳細に観察したところ、グロス低下部分にはヒートシンクの定着ベルト接触面上に塊状の磨耗粉が付着しているのを確認することができた。これより、プリント面のグロス低下はヒートシンクと定着ベルト接触面に磨耗粉が堆積することで密着性が阻害され、均一かつ安定に冷却できなかったことが原因であることがわかった。
【0068】
それに対し、表面処理層のあるヒートシンク46Aは、グロス低下した箇所はなく、均一かつ安定に冷却することが可能であった。さらに、中心線平均粗さRaを規定し、アルマイト処理をして耐磨耗性を向上させた定着ベルト接触面は、定着ベルトの磨耗粉が付着してはいるものの、ヒートシンクと定着ベルトの密着性を阻害するような塊状には至っておらず、高光沢で高品質のプリントを得ることができる。
【0069】
[実施例2] 本実施例に係る定着装置101の構成をより詳細に説明する。このヒートシンク46aの定着ベルト47との接触面46Aは中心線平均粗さRa1.6に処理後、フッ素樹脂(PTFE)を厚み30μmでコーティングして、構成されている。なお、他の実施例1に係る定着装置101と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
[実験] 本実施例に係る定着装置101の効果を確認するために、2種類のヒートシンク(一方は比較例として表面処理層の存在しないヒートシンク、他方は実施例として中心線平均粗さRa1.6に処理後フッ素樹脂(PTFE)を厚み30μmでコーティング処理されたヒートシンク46a)を用意し、各ヒートシンクと定着ベルト47との摺動テストを実施した。
【0071】
テスト条件はA4サイズの記録紙を1,000枚、および10,000枚プリント相当後の摺動状態と同程度になるような加速テストを行ない、テスト終了後にヒートシンクの定着ベルト接触面に付着している磨耗粉を透明なテープで写し取り、磨耗粉の付着状態を画像解析した。また、テスト終了時にハーフトーン画像(Y、M、C、K色のトナー像(各濃度30%))をプリントし、ベルト幅方向の光沢度(20°グロス)を測定した。なお、光沢度の目標値は20°グロス値で80以上とし、図9に示す光沢度と剥離温度との関係が記録紙剥離温度を70℃以下になるように冷却した。
【0072】
表2、図12は、それぞれこの実験結果を説明するものである。
【0073】
【表2】
表2は、1,000枚および10,000枚プリント相当後にヒートシンクの定着ベルト接触面46Aに付着した磨耗粉の評価結果をまとめたものである。なお、定着ベルト接触面の磨耗粉付着状態、および光沢度は実施例1と同様の評価基準で評価した。
【0074】
その結果、表面処理層がないヒートシンクではプリント枚数が1,000枚から10,000枚へ増加するに従い、磨耗粉の付着状態がヒートシンクの剥離ロール側端部に最大幅5mm程度に成長した。表面処理層のあるヒートシンクではプリント枚数が1,000枚から10,000枚へ増加しても、磨耗粉の付着状態にほとんど変化がなかった。また、10,000枚プリント後の光沢度について、目視で光沢ムラの有無が判別できるものを×、できないものを○として評価した。その結果、表面処理層のないヒートシンクではプロセス方向に筋状の光沢ムラを確認できたが、表面処理層のあるヒートシンクでは光沢ムラは確認できず、均一かつ高光沢なプリントであった。
【0075】
図12は、A4サイズの記録紙にハーフトーン画像をプリントし、ベルト幅方向の光沢度を測定した結果を示すものである。10,000枚プリント後の表面処理層がないヒートシンクは、10%程度グロスが低下する箇所があった。グロス低下に相当する箇所とヒートシンクの定着ベルト接触面とを詳細に観察したところ、グロス低下部分にはヒートシンクの定着ベルト接触面上に塊状の磨耗粉が付着しているのを確認できた。これより、プリント面のグロス低下はヒートシンクと定着ベルト接触面に磨耗粉が堆積することで密着性が阻害され、均一かつ安定に冷却できなかったことが原因であることがわかった。
【0076】
それに対し、表面処理層のあるヒートシンクは、グロス低下した箇所はなく、均一かつ安定に冷却することが可能であった。さらに、中心線平均粗さRaを規定し、フッ素樹脂をコーティングし摺動性を向上させた定着ベルト接触面は、定着ベルトの磨耗粉が付着してはいるものの、ヒートシンクと定着ベルトの密着性を阻害するような塊状には至っておらず、高光沢で高品質のプリントを得ることをできた。
【0077】
[実施例3] 本実施例に係る定着装置101の構成をより詳細に説明する。ヒートシンク接触面46Aと定着ベルト47との摺動性向上のために、加熱ロール40とヒートシンク46aの間に潤滑剤塗布手段(潤滑剤を含み、定着ベルト47に対して接離自在な潤滑ロール400)を設置し、潤滑剤としてジメチルシリコーンオイルを含浸させたスポンジロールを1,000枚プリント毎に定着ベルト内周面へ接触させる。なお、他の実施例1に係る定着装置101と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
[実験] 本実施例に係る定着装置101の効果を確認するために、2種類の定着装置(一方は比較例として潤滑ロール400を有しない定着装置、他方は本実施例に係る潤滑ロール400を有する定着装置)を用意し、各定着装置のヒートシンクと定着ベルト47との摺動テストを実施した。
【0079】
テスト条件はA4サイズの記録紙を1,000枚、および10,000枚プリント相当後の摺動状態と同程度になるような加速テストを行ない、テスト終了後にハーフトーン画像(Y、M、C、K色のトナー像(各濃度30%))をプリントし、ベルト幅方向の光沢度(20°グロス)を測定した。なお、光沢度の目標値は20°グロス値で80以上とし、図9に示す光沢度と剥離温度との関係から記録紙剥離温度を70℃以下になるように冷却した。
【0080】
図14は、記録紙を1,000枚プリント相当後、および10,000枚プリント相当後に、A4サイズの記録紙にハーフトーン画像をプリントし、ベルト幅方向の光沢度を測定した結果を説明するものである。潤滑ロール(潤滑剤塗布手段)400がないベルト定着装置のヒートシンクは、1,000枚プリント相当後に、グロスが低下しはじめる箇所が現れ、10,000枚プリント相当後には、グロスの最大値と最小値の差は15程度となり、目視でも記録紙搬送方向に筋状の光沢ムラが識別できた。また、グロス低下に相当する箇所とヒートシンクの定着ベルト接触面とを詳細に観察したところ、グロス低下部分にはヒートシンクの定着ベルト接触面上に塊状の磨耗粉が付着しているのを確認できた。これより、プリント面のグロス低下はヒートシンクと定着ベルト接触面は磨耗粉が堆積することで密着性が阻害され、均一かつ安定に冷却できなかったことが原因であることがわかった。
【0081】
それに対し、潤滑ロール(潤滑剤塗布手段)400を設置し、1,000枚毎に潤滑剤を塗布することによって摺動性の高い状態を維持したヒートシンクで冷却後剥離したプリントは、グロス低下した箇所はなく、均一かつ安定に冷却することが可能であった。また、潤滑剤塗布手段を設置し摺動性を向上させた定着ベルト接触面は、介在する潤滑剤中に定着ベルトの磨耗粉が混在していたものの、ヒートシンク接触面にほとんど付着、堆積していなかったため、定着ベルトとヒートシンクとの密着性が低下するまでに至らず、高光沢で高品質のプリントを得ることができた。
【0082】
なお、実施例1〜3に係る定着装置は、感光体ドラム上に順次形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)等の各色のトナー像を、一旦中間転写体上に多重に一次転写した後、当該中間転写体上に多重に転写された各色のトナー像を、記録紙上に一括して二次転写し、これらのトナー像を加熱して記録紙上に定着することにより、カラー画像を形成するように構成した画像形成装置や、感光体ドラムを1つのみ備え、当該感光体ドラム上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)等の各色のトナー像を順次形成し、上記感光体ドラム上に順次形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)等の各色のトナー像を、記録紙上に多重に転写した後、これらのトナー像を加熱して記録紙上に定着することにより、カラー画像を形成するように構成した画像形成装置などにも適用することができる。
【0083】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、定着ベルトと冷却構造体の接触面の摺動による磨耗紛を低減することにより、定着ベルトと冷却構造体の接触面の密着性を維持し、記録紙を均一かつ安定に冷却することで高光沢で高画質の画像が得られる定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施形態に係る定着装置を備える画像形成装置の断面概略図である。
【図2】図2は、実施形態に係る定着装置の断面概略図である。
【図3】図3は、実施形態に係る定着装置で使用される記録紙の断面概略図である。
【図4】図4は、実施形態に係る定着装置の動作を説明する断面概略図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る定着装置の効果を説明するグラフである。
【図6】図6は、実施形態2に係る定着装置の効果を説明するグラフである。
【図7】図7は、実施形態4に係る定着装置の効果を説明するグラフである
【図8】図8は、表面処理層の厚さ、剥離温度、接触時間の関係を説明するグラフである。
【図9】図9は、画像の光沢度と記録紙の剥離温度との関係を説明するグラフである。
【図10】図10は、実施例1に係る定着装置の効果を説明するグラフである。
【図11】図11は、定着ベルト接触面に付着した磨耗粉の様子を説明するものである。
【図12】図12は、実施例2に係る定着装置の効果を説明するグラフである。
【図13】図13は、実施例3に係る定着装置の断面概略図である。
【図14】図14は、実施例3に係る定着装置の効果を説明するグラフである。
【符号の説明】
1Y,1M,1C,1K…電子写真形成ユニット、2Y,2M,2C,2K…静電線像担持体、3Y,3M,3C,3K…一様帯電器、4Y,4M,4C,4K…露光器、5Y,5M,5C,5K…現像装置、6Y,6M,6C,6K…一次転写ロール、7Y,7M,7C,7K…静電線像担持体クリーニング装置、8Y,8M,8C,8K…除電装置、9…中間転写体、10…張架ロール、11…記録紙搬送路、12…二次転写ロール、13…バックアップロール、14…中間転写体クリーニング装置、15…定着装置、16…搬送方向切替ゲート、17…給紙カセット、17a…給紙ロール、18…記録紙、18a…受像層、18b…基材、19…搬送ロール、20…レジストロール、40…加熱定着ロール、40a…加熱定着コア、40b…加熱定着離型層、41…加熱定着加熱源、42…加圧ロール、42a…加圧ロールコア、42b…加圧ロール弾性体層、42c…加圧ロール離型層、43…加圧ロール加熱源、44…剥離ロール、45…ステアリングロール、46…冷却手段、47…定着ベルト、48…排出ロール、49a,49b…接触補助ロール、100…画像形成装置、101…ベルト定着装置、102…画像読み取り装置
Claims (9)
- 熱源を備えた加熱ロールと、一以上の支持ロールと、これら加熱ロール及び支持ロールとに張架され回転される無端状の定着ベルトと、当該定着ベルトを挟み当該加熱ロールに対して圧接する加圧ロールと、当該加熱ロールよりも定着ベルトの回転方向下流側に当該定着ベルトを冷却する冷却手段とを備え、
当該冷却手段は、当該定着ベルトの内側に接触する冷却構造体を有し、当該冷却構造体の当該定着ベルトに対する接触面には耐磨耗処理が施されていることを特徴とする定着装置。 - 前記耐磨耗処理では、耐磨耗層として前記接触面に冷却構造体の他面よりも硬い硬質化層を形成する請求項1に記載の定着装置。
- 前記耐磨耗性処理では、耐磨耗層として前記接触面に冷却構造体の他面よりも摺動性の高い高摺動性層を形成する請求項1に記載の定着装置。
- 前記耐磨耗層の厚みは、50μm以下である請求項2又は3に記載の定着装置。
- 前記耐磨耗処理では、前記接触面を冷却構造体の他面よりも平滑化する請求項1に記載の定着装置。
- 前記平滑化処理により前記接触面の中心線平均粗さRaは、Ra≦10μmとなる請求項5に記載の定着装置。
- 前記耐磨耗処理では、前記接触面に潤滑剤が供給される請求項1に記載の定着装置。
- 前記潤滑剤を前記定着ベルトの内側面から供給する供給手段を備える請求項7に記載の定着装置。
- 前記接触面の定着ベルトの回転方向長さをL〔mm〕、定着ベルトの移動速度をV〔mm/sec〕とすると、これらの間にはL≧1.5Vの関係が成り立つ請求項1〜8のいずれかに記載の定着装置。
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