JP2004286627A - 放射化黒鉛の処理方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射化黒鉛に含まれる放射性核種を低減処理し埋設後の放射性核種の浸出を低く抑えることのできる放射化黒鉛の処理方法および装置を提供する。
【解決手段】放射性核種を含む放射化黒鉛11を高分子化合物と混合して加熱する加熱炉1と、前記加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系3,4と、前記加熱炉1に接続され塩素ガスおよび塩素化合物を捕集する塩素トラップ6と、前記塩素トラップ6に接続され炭酸ガスを捕集するアルカリトラップ8とを備えていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】放射性核種を含む放射化黒鉛11を高分子化合物と混合して加熱する加熱炉1と、前記加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系3,4と、前記加熱炉1に接続され塩素ガスおよび塩素化合物を捕集する塩素トラップ6と、前記塩素トラップ6に接続され炭酸ガスを捕集するアルカリトラップ8とを備えていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス冷却炉の減速材等として用いられ放射能を帯びた放射化黒鉛の処理方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス炉の廃止措置に伴って、放射化された黒鉛が大量に発生する。これらの放射化黒鉛を安全に処分するためには、処分後に放射化黒鉛から放射性核種がほとんど浸出しないようにする必要性がある。廃棄物処分後の被ばく評価上、C−14とCl−36が重要な核種とされている。ガス炉に使用されている黒鉛は結晶性が高く、熱力学的に安定であるために、黒鉛のバルク中に存在する放射性核種、特にC−14は系外に放出されないことが知られている。しかしながら、黒鉛表面に存在する放射性核種や接液などで容易に溶解してしまう物質に含まれる放射性核種は、黒鉛を処分した際に、瞬時に放出される可能性がある。
【0003】
従来、放射化黒鉛の処理方法には、大別して焼却処理と埋設処理がある。焼却処理は廃棄物として発生する放射化黒鉛を触媒存在下において気相中で焼却する。放射化黒鉛を焼却して発生したCO2は捕集し、C−14のみを分離回収し、再度固定化した後に埋設処理する方法が考案されている。この方法では、発生するC−14を含むCO2を100%回収できず、約1%ほどは自然界に放出される可能性がある。埋設処理後の放射化黒鉛から放出されるC−14の放出率目標値1×10−4/yearに対して100倍量のC−14が放出されることになる。また、現在の黒鉛炉に使用されている黒鉛中には不純物として金属が数十ppm含有されているため、焼却により大量の焼却灰が発生し、新たに焼却灰の処理処分法を追加する必要がある。
【0004】
放射化黒鉛中にはC−14のほかに長半減期(3×105年)のCl−36が100〜300 Bq g−1含まれており処分評価上重要な放射性核種に数えられている。このC−14に関する処分法はいくつか考案されているが、焼却に伴うCl−36の放出を効果的にトラップする技術は未だ開発されていない。
【0005】
一方、埋設処理では埋設後に放射化黒鉛が地下水等に接液すると直ちにCl−36の放出が始まり、1ヵ月ほどで総インベントリーの1割程度放出されることがわかっている。C−14は接液時に接液した表面に付着したもののみが放出され、放出率が10−4/yearを維持できているが、放出されるC−14の化学形態はほとんど有機化合物を取っており、固型化材に吸着させることが困難である(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−14890号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、放射化黒鉛に含まれる放射性核種を低減処理し埋設後の放射性核種の浸出を低く抑えることのできる放射化黒鉛の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、放射性核種を含む放射化黒鉛を高分子化合物と混合して不活性ガス中において加熱し、前記放射性核種を前記放射化黒鉛から分離すると共に、前記放射化黒鉛の表面に炭素の皮膜を形成する構成とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記高分子化合物はポリ塩化ビニルである構成とする。
請求項3記載の発明は、前記分離される放射性核種はC−14,Cl−36およびH−3である構成とする。
請求項4記載の発明は、前記分離されたC−14を無機化し、バリア材に閉じ込める構成とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、放射性核種を含む放射化黒鉛を高分子化合物と混合して加熱する加熱炉と、前記加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、前記加熱炉に接続され塩素ガスおよび塩素化合物を捕集する塩素トラップと、前記塩素トラップに接続され炭酸ガスを捕集するアルカリトラップとを備えている構成とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
放射化黒鉛から放出されるC−14は、原子炉(ガス冷却炉)に装荷される前の未照射黒鉛表面に吸着した空気中の窒素分子が中性子照射されて生成したものであり、弱い相互作用によって表面に吸着分布しているため、加熱することにより容易に脱着できる。表面のC−14を取り除くことにより、黒鉛に含まれるC−14は単結晶中に取り込まれたもののみとなり、処分時に環境に放出されるC−14の浸出率を著しく低減させることができる。
【0012】
また、放射化黒鉛に含まれる塩素は金属塩化物の化学形態を取っており、その大部分がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物であるため、数百oC以上に加熱することにより昇華除去することができる。単なる加熱処理、または炭素コーティング処理時に行う加熱によりアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物として存在するCl−36を除去することができる。
【0013】
本発明では、放射化黒鉛を高分子化合物と混合して加熱して短時間に放出される放射性核種を分離するとともに、放射化黒鉛の表面を炭素でコーティングして瞬時に放出されない放射性核種を閉じ込めて、その後に埋設処分することにより、埋設後の放射化黒鉛からの核種浸出率を低減する。
【0014】
放射化黒鉛の表面をコーティングする際に、不活性ガス中において加熱処理を行うが、この加熱処理によってクリティカル核種であるC−14とCl−36をある程度除去することができ、放射化黒鉛を高βγ廃棄物に属さない、インベントリーの少ない低レベル放射性廃棄物に転換することができる。
【0015】
さらに、放射化黒鉛を表面処理する際に除去したC−14は二酸化炭素(C02)にまで分解し、バリア材による固型化を可能にする。Cl−36については、処理の際に昇華させて捕集し、バリア材により固型化する。
【0016】
以下、本発明に係る放射化黒鉛処理方法および装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態は、埋設処分後に放射化黒鉛が接液する表面部分から瞬時に放出される放射性核種を低減する方法である。黒鉛廃棄物埋設後の被ばく評価では、C−14とCl−36が重要な核種とされている。放射化黒鉛中に含まれるC−14は、不純物として含まれる窒素が中性子と核反応して生成する。生成したC−14は放射化黒鉛中のバルクに存在するため、埋設後の接液により溶液系に浸出せず、放射化黒鉛の表面に局在するC−14のみが溶液系に浸出する。
【0017】
一方、Cl−36は黒鉛中の不純物であるCl−35が中性子と核反応して生成する。黒鉛からの塩化物イオンの浸出は極めて速く、浸出率で約10−1/yearの数値であることが知られている。温度などの浸出を加速させる因子には無関係に、接液すれば瞬時に放出する。黒鉛中に含まれるCl−36の形態が塩化物イオンであるために、接液すると同時に溶液中に放出される。
【0018】
したがって、放射化黒鉛の埋設後に瞬時に放出する放射性核種を減少させるため、埋設前に加熱またはコーティングなどの処理を施し埋設前に放射性核種を低減させることにより、放射能レベルに応じた処分方法を設定することができる。
【0019】
本実施の形態の放射化黒鉛の処理装置は図1に示すように、ふた2を備えた加熱炉1と、加熱炉1の一端にポンプ3を介して接続された不活性ガスボンベ4と、加熱炉1の他端に酸素計5を介して接続された塩素トラップ6と、この塩素トラップ6の先に接続された電気炉7およびアルカリトラップ8とから成る。
【0020】
このような装置を用いて、放射化黒鉛の処理は以下のような手順に従って行う。すなわち、まず、解体されたガス冷却炉10から搬出されてくる放射化黒鉛11を処分容器に納まるように切断する。そのときに共に発生する黒鉛の粉体もコーティング処理の対象とする。適当な大きさに切り分けられた黒鉛ブロック12および黒鉛粉体13をポリ塩化ビニルの粉体と共に加熱炉1の中にふた2から装填していく。このとき、添加するポリ塩化ビニルは放射化黒鉛と質量で同量以上になるようにする。
【0021】
充填後、加熱炉1を回転させ、放射化黒鉛とポリ塩ビニルの粉体を十分に混合させる。加熱炉1の回転を止めて、不活性ガスボンベ4よりアルゴンまたは窒素などの不活性ガスを導入し、酸素計5で監視して酸素濃度が1000 ppb以下になるようにコントロールする。そして加熱炉1中の温度を徐々に上昇させていく。まず、250 oC一定で30分程度加熱する。その後、500 oCまで加熱し、1時間程度温度一定に保ち、加熱処理を行う。この加熱処理の過程において、放射化黒鉛の表面に炭素膜が形成される。加熱処理後、徐々に室温まで冷却する。
【0022】
加熱処理および表面処理を行った放射化黒鉛は、図2に示すように、加熱炉1から取り出し、処分容器に充填し、固型化材のセメント15を流し込み、廃棄体14aを作製する。
【0023】
加熱処理工程において、放射化黒鉛から放出されたCl−36は加熱炉1の下流側の塩素トラップ6に捕集される。また、同様に加熱処理工程において放射化黒鉛から放出されたC−14は加熱炉1の下流に設置した酸化金属を装填した電気炉7を通過させて、完全燃焼させ二酸化炭素にし、さらに下流の水酸化ナトリウム水溶液を入れたアルカリトラップ8に導入し、捕集する。
【0024】
各トラップ6,8に捕集したCl−36およびC−14は、表面に炭素膜を形成させた黒鉛廃棄物と同様に処分容器に充填し、固型化材のセメント15等を流し込み、廃棄体14b,14cとする。
【0025】
本実施の形態の処理方法の有効性を確認するために、黒鉛の加熱処理時に発生するガスの模擬物質として、塩素ガスを1%含む窒素ベースのガスを150℃に加熱した管(加熱部分500mm)を通過させた後、シリカゲルに硝酸銀を添着させた銀吸着材の充填カラム(径25mm長さ150mm)を通過させた。出口ガスを10規定の水酸化ナトリウム溶液が250ml入っている洗気ビン(2連)を通過させた。洗気ビン中の溶液中の塩素濃度をイオンクロマト法で測定したところ、いずれも検出限界以下であり、この系で塩素ガスがほとんど回収できていることが確認された。
【0026】
また、黒鉛を加熱した際の模擬オフガスに0.1%水素/窒素ガスベース(0.1L/min)を導入した。このガスを250℃に加熱し、白金触媒が充填された燃焼管を通過させた後に冷却トラップ(氷水冷却(0℃冷却))を通過させたところ、発生したと考えられる99.9%以上の水素ガス(トリチウムの模擬ガス)を水として冷却トラップ中に回収できた。
【0027】
さらに、有機炭素化合物の一例としてアセチレンを用い、これを0.1%含む空気を0.4ml/minの速度で650℃に加熱した顆粒状の酸化銅カラム(長さ120mm、二連)を通過させ、その後、10規定の水酸化ナトリウム水溶液を250ml入れた洗気ビンを通過(小型アルカリスクラバー)させた。30分間後、溶液中の炭酸濃度を測定したところ、通記したアセチレン中の炭素に換算して1段目の洗気ビンに95%、2段目の洗気ビンに3%の二酸化炭素が回収できていることが確認された。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、放射化黒鉛を加熱処理することにより埋設前に付着している放射性核種を低減して、また、放射化黒鉛を表面処理することにより黒鉛表面に炭素膜を形成させて、埋設後に放射化黒鉛から被ばく評価上重要な放射性核種の浸出率を低く抑えて、安全評価上問題のない領域にあるようにすることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、放射化黒鉛に含まれる放射性核種を低減処理し埋設後の放射性核種の浸出を低く抑えることのできる放射化黒鉛の処理方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の放射化黒鉛の処理装置および処理方法の工程の前半を示す図。
【図2】本発明の実施の形態の放射化黒鉛の処理装置および処理方法の工程の後半を示す図。
【符号の説明】
1…加熱炉、2…ふた、3…ポンプ、4…不活性ガスボンベ、5…酸素計、6…塩素トラップ、7…電気炉、8…アルカリトラップ、10…ガス炉、11…放射化黒鉛、12…黒鉛ブロック、13…黒鉛粉体、14a,14b,14c…廃棄体、15…セメント。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス冷却炉の減速材等として用いられ放射能を帯びた放射化黒鉛の処理方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス炉の廃止措置に伴って、放射化された黒鉛が大量に発生する。これらの放射化黒鉛を安全に処分するためには、処分後に放射化黒鉛から放射性核種がほとんど浸出しないようにする必要性がある。廃棄物処分後の被ばく評価上、C−14とCl−36が重要な核種とされている。ガス炉に使用されている黒鉛は結晶性が高く、熱力学的に安定であるために、黒鉛のバルク中に存在する放射性核種、特にC−14は系外に放出されないことが知られている。しかしながら、黒鉛表面に存在する放射性核種や接液などで容易に溶解してしまう物質に含まれる放射性核種は、黒鉛を処分した際に、瞬時に放出される可能性がある。
【0003】
従来、放射化黒鉛の処理方法には、大別して焼却処理と埋設処理がある。焼却処理は廃棄物として発生する放射化黒鉛を触媒存在下において気相中で焼却する。放射化黒鉛を焼却して発生したCO2は捕集し、C−14のみを分離回収し、再度固定化した後に埋設処理する方法が考案されている。この方法では、発生するC−14を含むCO2を100%回収できず、約1%ほどは自然界に放出される可能性がある。埋設処理後の放射化黒鉛から放出されるC−14の放出率目標値1×10−4/yearに対して100倍量のC−14が放出されることになる。また、現在の黒鉛炉に使用されている黒鉛中には不純物として金属が数十ppm含有されているため、焼却により大量の焼却灰が発生し、新たに焼却灰の処理処分法を追加する必要がある。
【0004】
放射化黒鉛中にはC−14のほかに長半減期(3×105年)のCl−36が100〜300 Bq g−1含まれており処分評価上重要な放射性核種に数えられている。このC−14に関する処分法はいくつか考案されているが、焼却に伴うCl−36の放出を効果的にトラップする技術は未だ開発されていない。
【0005】
一方、埋設処理では埋設後に放射化黒鉛が地下水等に接液すると直ちにCl−36の放出が始まり、1ヵ月ほどで総インベントリーの1割程度放出されることがわかっている。C−14は接液時に接液した表面に付着したもののみが放出され、放出率が10−4/yearを維持できているが、放出されるC−14の化学形態はほとんど有機化合物を取っており、固型化材に吸着させることが困難である(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−14890号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、放射化黒鉛に含まれる放射性核種を低減処理し埋設後の放射性核種の浸出を低く抑えることのできる放射化黒鉛の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、放射性核種を含む放射化黒鉛を高分子化合物と混合して不活性ガス中において加熱し、前記放射性核種を前記放射化黒鉛から分離すると共に、前記放射化黒鉛の表面に炭素の皮膜を形成する構成とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記高分子化合物はポリ塩化ビニルである構成とする。
請求項3記載の発明は、前記分離される放射性核種はC−14,Cl−36およびH−3である構成とする。
請求項4記載の発明は、前記分離されたC−14を無機化し、バリア材に閉じ込める構成とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、放射性核種を含む放射化黒鉛を高分子化合物と混合して加熱する加熱炉と、前記加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、前記加熱炉に接続され塩素ガスおよび塩素化合物を捕集する塩素トラップと、前記塩素トラップに接続され炭酸ガスを捕集するアルカリトラップとを備えている構成とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
放射化黒鉛から放出されるC−14は、原子炉(ガス冷却炉)に装荷される前の未照射黒鉛表面に吸着した空気中の窒素分子が中性子照射されて生成したものであり、弱い相互作用によって表面に吸着分布しているため、加熱することにより容易に脱着できる。表面のC−14を取り除くことにより、黒鉛に含まれるC−14は単結晶中に取り込まれたもののみとなり、処分時に環境に放出されるC−14の浸出率を著しく低減させることができる。
【0012】
また、放射化黒鉛に含まれる塩素は金属塩化物の化学形態を取っており、その大部分がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物であるため、数百oC以上に加熱することにより昇華除去することができる。単なる加熱処理、または炭素コーティング処理時に行う加熱によりアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物として存在するCl−36を除去することができる。
【0013】
本発明では、放射化黒鉛を高分子化合物と混合して加熱して短時間に放出される放射性核種を分離するとともに、放射化黒鉛の表面を炭素でコーティングして瞬時に放出されない放射性核種を閉じ込めて、その後に埋設処分することにより、埋設後の放射化黒鉛からの核種浸出率を低減する。
【0014】
放射化黒鉛の表面をコーティングする際に、不活性ガス中において加熱処理を行うが、この加熱処理によってクリティカル核種であるC−14とCl−36をある程度除去することができ、放射化黒鉛を高βγ廃棄物に属さない、インベントリーの少ない低レベル放射性廃棄物に転換することができる。
【0015】
さらに、放射化黒鉛を表面処理する際に除去したC−14は二酸化炭素(C02)にまで分解し、バリア材による固型化を可能にする。Cl−36については、処理の際に昇華させて捕集し、バリア材により固型化する。
【0016】
以下、本発明に係る放射化黒鉛処理方法および装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態は、埋設処分後に放射化黒鉛が接液する表面部分から瞬時に放出される放射性核種を低減する方法である。黒鉛廃棄物埋設後の被ばく評価では、C−14とCl−36が重要な核種とされている。放射化黒鉛中に含まれるC−14は、不純物として含まれる窒素が中性子と核反応して生成する。生成したC−14は放射化黒鉛中のバルクに存在するため、埋設後の接液により溶液系に浸出せず、放射化黒鉛の表面に局在するC−14のみが溶液系に浸出する。
【0017】
一方、Cl−36は黒鉛中の不純物であるCl−35が中性子と核反応して生成する。黒鉛からの塩化物イオンの浸出は極めて速く、浸出率で約10−1/yearの数値であることが知られている。温度などの浸出を加速させる因子には無関係に、接液すれば瞬時に放出する。黒鉛中に含まれるCl−36の形態が塩化物イオンであるために、接液すると同時に溶液中に放出される。
【0018】
したがって、放射化黒鉛の埋設後に瞬時に放出する放射性核種を減少させるため、埋設前に加熱またはコーティングなどの処理を施し埋設前に放射性核種を低減させることにより、放射能レベルに応じた処分方法を設定することができる。
【0019】
本実施の形態の放射化黒鉛の処理装置は図1に示すように、ふた2を備えた加熱炉1と、加熱炉1の一端にポンプ3を介して接続された不活性ガスボンベ4と、加熱炉1の他端に酸素計5を介して接続された塩素トラップ6と、この塩素トラップ6の先に接続された電気炉7およびアルカリトラップ8とから成る。
【0020】
このような装置を用いて、放射化黒鉛の処理は以下のような手順に従って行う。すなわち、まず、解体されたガス冷却炉10から搬出されてくる放射化黒鉛11を処分容器に納まるように切断する。そのときに共に発生する黒鉛の粉体もコーティング処理の対象とする。適当な大きさに切り分けられた黒鉛ブロック12および黒鉛粉体13をポリ塩化ビニルの粉体と共に加熱炉1の中にふた2から装填していく。このとき、添加するポリ塩化ビニルは放射化黒鉛と質量で同量以上になるようにする。
【0021】
充填後、加熱炉1を回転させ、放射化黒鉛とポリ塩ビニルの粉体を十分に混合させる。加熱炉1の回転を止めて、不活性ガスボンベ4よりアルゴンまたは窒素などの不活性ガスを導入し、酸素計5で監視して酸素濃度が1000 ppb以下になるようにコントロールする。そして加熱炉1中の温度を徐々に上昇させていく。まず、250 oC一定で30分程度加熱する。その後、500 oCまで加熱し、1時間程度温度一定に保ち、加熱処理を行う。この加熱処理の過程において、放射化黒鉛の表面に炭素膜が形成される。加熱処理後、徐々に室温まで冷却する。
【0022】
加熱処理および表面処理を行った放射化黒鉛は、図2に示すように、加熱炉1から取り出し、処分容器に充填し、固型化材のセメント15を流し込み、廃棄体14aを作製する。
【0023】
加熱処理工程において、放射化黒鉛から放出されたCl−36は加熱炉1の下流側の塩素トラップ6に捕集される。また、同様に加熱処理工程において放射化黒鉛から放出されたC−14は加熱炉1の下流に設置した酸化金属を装填した電気炉7を通過させて、完全燃焼させ二酸化炭素にし、さらに下流の水酸化ナトリウム水溶液を入れたアルカリトラップ8に導入し、捕集する。
【0024】
各トラップ6,8に捕集したCl−36およびC−14は、表面に炭素膜を形成させた黒鉛廃棄物と同様に処分容器に充填し、固型化材のセメント15等を流し込み、廃棄体14b,14cとする。
【0025】
本実施の形態の処理方法の有効性を確認するために、黒鉛の加熱処理時に発生するガスの模擬物質として、塩素ガスを1%含む窒素ベースのガスを150℃に加熱した管(加熱部分500mm)を通過させた後、シリカゲルに硝酸銀を添着させた銀吸着材の充填カラム(径25mm長さ150mm)を通過させた。出口ガスを10規定の水酸化ナトリウム溶液が250ml入っている洗気ビン(2連)を通過させた。洗気ビン中の溶液中の塩素濃度をイオンクロマト法で測定したところ、いずれも検出限界以下であり、この系で塩素ガスがほとんど回収できていることが確認された。
【0026】
また、黒鉛を加熱した際の模擬オフガスに0.1%水素/窒素ガスベース(0.1L/min)を導入した。このガスを250℃に加熱し、白金触媒が充填された燃焼管を通過させた後に冷却トラップ(氷水冷却(0℃冷却))を通過させたところ、発生したと考えられる99.9%以上の水素ガス(トリチウムの模擬ガス)を水として冷却トラップ中に回収できた。
【0027】
さらに、有機炭素化合物の一例としてアセチレンを用い、これを0.1%含む空気を0.4ml/minの速度で650℃に加熱した顆粒状の酸化銅カラム(長さ120mm、二連)を通過させ、その後、10規定の水酸化ナトリウム水溶液を250ml入れた洗気ビンを通過(小型アルカリスクラバー)させた。30分間後、溶液中の炭酸濃度を測定したところ、通記したアセチレン中の炭素に換算して1段目の洗気ビンに95%、2段目の洗気ビンに3%の二酸化炭素が回収できていることが確認された。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、放射化黒鉛を加熱処理することにより埋設前に付着している放射性核種を低減して、また、放射化黒鉛を表面処理することにより黒鉛表面に炭素膜を形成させて、埋設後に放射化黒鉛から被ばく評価上重要な放射性核種の浸出率を低く抑えて、安全評価上問題のない領域にあるようにすることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、放射化黒鉛に含まれる放射性核種を低減処理し埋設後の放射性核種の浸出を低く抑えることのできる放射化黒鉛の処理方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の放射化黒鉛の処理装置および処理方法の工程の前半を示す図。
【図2】本発明の実施の形態の放射化黒鉛の処理装置および処理方法の工程の後半を示す図。
【符号の説明】
1…加熱炉、2…ふた、3…ポンプ、4…不活性ガスボンベ、5…酸素計、6…塩素トラップ、7…電気炉、8…アルカリトラップ、10…ガス炉、11…放射化黒鉛、12…黒鉛ブロック、13…黒鉛粉体、14a,14b,14c…廃棄体、15…セメント。
Claims (5)
- 放射性核種を含む放射化黒鉛を高分子化合物と混合して不活性ガス中において加熱し、前記放射性核種を前記放射化黒鉛から分離すると共に、前記放射化黒鉛の表面に炭素の皮膜を形成することを特徴とする放射化黒鉛の処理方法。
- 前記高分子化合物はポリ塩化ビニルであることを特徴とする請求項1記載の放射化黒鉛の処理方法。
- 前記分離される放射性核種はC−14,C1−36およびH−3であることを特徴とする請求項1記載の放射化黒鉛の処理方法。
- 前記分離されたC−14を無機化し、バリア材に閉じ込めることを特徴とする請求項3記載の放射化黒鉛の処理方法。
- 放射性核種を含む放射化黒鉛を高分子化合物と混合して加熱する加熱炉と、前記加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、前記加熱炉に接続され塩素ガスおよび塩素化合物を捕集する塩素トラップと、前記塩素トラップに接続され炭酸ガスを捕集するアルカリトラップとを備えていることを特徴とする放射化黒鉛の処理装置。
Priority Applications (1)
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JP2003079822A JP2004286627A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 放射化黒鉛の処理方法および装置 |
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KR100747762B1 (ko) | 2006-09-28 | 2007-08-08 | 한국수력원자력 주식회사 | 폐수지로부터 휘발된 고습도 방사성 탄소기체의 내부순환에의한 흡착제거 방법 및 장치 |
JP2008281510A (ja) * | 2007-05-14 | 2008-11-20 | Toshiba Corp | 黒鉛粉末廃棄物の処理方法および処理装置 |
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2003
- 2003-03-24 JP JP2003079822A patent/JP2004286627A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP1712269A1 (fr) * | 2005-04-14 | 2006-10-18 | Areva NP | Procédé de lavage d'un flux de gaz contenant du chlore, dispositif de mise en oeuvre de ce procédé, et utilisation du procédé |
FR2884440A1 (fr) * | 2005-04-14 | 2006-10-20 | Framatome Anp Sas | Procede de lavage d'un flux de gaz contenant du chlore, dispositif de mise en oeuvre de ce procede, et utilisation du procede. |
KR100747762B1 (ko) | 2006-09-28 | 2007-08-08 | 한국수력원자력 주식회사 | 폐수지로부터 휘발된 고습도 방사성 탄소기체의 내부순환에의한 흡착제거 방법 및 장치 |
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