JP2013190407A - 放射性物質の低減方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 原子力発電所等で発生した放射性物質や、原子力発電所の事故により大量に発生した放射性廃棄物内に含まれる放射性物質の低減方法を提供する。
【解決手段】 土壌等の難溶出放射性廃棄物、放射性物質を吸着した各種物質を高温プラズマ溶融炉内で1〜3万度の温度で溶融して得られた高温溶融体の中において、電離した放射性イオンの物理化学的な状態の変化を引き起こし、高温溶融体の冷却速度を制御して非平衡相または準安定相から成る固形物を形成して特異な結合状態を発現させ、また保管に過程において半減期の短い各種からのガンマ(γ)線を連続的に照射することで、原子内電子の密度や分布に変化を引き起こすことができる。この結果、軌道電子捕獲やベータ(β)崩壊が促され、放射性核種の半減期を短縮することができ、その結果、安定核種に変換させることで放射性物質を低減することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、放射性物質の低減方法に係り、特に、原子力発電所や、その事故により発生した各種廃棄物内に含まれている放射性物質を低減させる方法に関する。
原子力発電所等において発生した放射性廃棄物を処理する一般的な方法としては、これらを高温溶融炉等で溶融、凝縮、固化し、得られた固形物を密封した状態でドラム缶等に詰め倉庫保管、または地中埋設方法が採用されている。放射性廃棄物の処理で最も重要な問題は、それが十分に放射能を失うまで間、極めて長期にわたり安全に管理保管しなければならないことである。したがって、放射性廃棄物に含まれる放射性核種の半減期を短縮することができれば、当然放射性廃棄物の保管期間は短縮でき、保管自体が容易となるだけでなく安全性が高まる。一方、何らかの手段や方法による放射性核種の安定核種への核変換や、半減期の短縮等如何によっては放射性廃棄物の減量にも結びつく。(非特許文献1参照)
放射性物質の低減方法に関しては、いわゆる分離変換技術として、中性子を利用する方法が検討されているが、その場合、高強度で高エネルギーの中性子源が必要となる。そのため高速炉での高速中性子、加速器による核粉砕反応で発生する中性子を用いた方法が研究されている。一方、電子線加速器からの電子線を利用してガンマ(γ)線を発生させ、その照射で起こる光核反応(γ、n)により、放射性セシウム(137Cs)やストロンチウム(90Sr)等の発熱性核種等を短寿命核種、若しくは非放射性核種に変換することを目的とした研究も積極的に押し進められている。
一方、核分裂等の核的な手段を使用することなく、放射性物質の半減期を短縮させる方法の研究も行なわれている。この方法は、陰電子(β)崩壊核種の半減期の短縮方法であるが、原子内K軌道電子の電離エネルギーより高いエネルギーのX線を照射し、原子核周辺の電子密度を減少させた状態に維持することで、放射性核種の半減期短縮効果が確認されている。しかし、この方法では、例えば放射性セシウム(137Cs)に関して見た場合、その半減期は約30年であるため、その放射能を十分に低減させるには、長期にわたり電離状態を維持し、X線を連続的に照射しなければならないため、実用的な観点からは無理があると思われるが、放射性核種の半減期が短縮されるという実験事実は検討に値するものである。(特許文献1参照)
特開 2000−214292号公報
放射性廃棄物の工学、オーム社 平成23年1月 発行
原子力発電所や、その事故により発生した放射性物質の低減や変換技術に関しては、各種方法が研究され一定の成果が得られているが、未だ確定的な方法としては確立されていない。したがって、各種廃棄物内に含まれている放射性物質の効果的な除去方法や低減方法を開発し、実際に適用することが最も優先すべき課題として提起される。
環境中に飛散した放射性物質の内、処分対象としては基本的に放射性セシウム(137Cs)と放射性ストロンチウム(90Sr)である。放射性セシウム(137Cs)の半減期は約30年で、β線放出核種であるが、バリウム(137mBa)と永続平衡の関係にあり、バリウム(137mBa)からの核異性体転移による0.662MeVのガンマ(γ)線を放出する。またストロンチウム(90Sr)の半減期は約29年で、やはり陰電子(β)放出核種であるが、娘核種であるイットリウム(90Y)と永続平衡関係にある。ここで、イットリウム(90Y)の半減期は64.1時間で、2.28MeVのβ線放出核種である。以下、放射性セシウム(137Cs)及び放射性ストロンチウム( Sr)は放射性セシウム(Cs)及び放射性ストロンチウム(Sr)と記載する。
放射性核種である放射性セシウム(Cs)及び放射性ストロンチウム(Sr)は、陰電子(β)崩壊を介して原子核の質量数は同じであるが、原子番号が一つ大きい原子核に変換し、安定核種であるバリウム(137Ba)及びジルコニウム(90Zr)に変換される。このとき中性子は陽子に変換し、電子及び反ニュトリノを核外に放出する。
放射性核種は不安定であり、ある確率で偶発的に崩壊し、安定な核種に変換する。崩壊の確率は、崩壊定数(λ)と呼ばれるが、放射性核種の平均寿命(τ)の逆数である。また、放射性核種の初期の個数が半分にまでの時間を半減期(T)と呼んでいる。したがって、放射性核種の半減期(T)が少なくなれれば、平均寿命(τ)も短縮されるため、放射性物質を低減するにおいては、半減期(T)を短縮する方法の開発が必要になる。
従来の低減方法は、少量の放射性物質を対象として処理する場合には、非常に有効的な方法であると評価できるが、大量の処理を行う場合、それに伴う莫大な費用やエネルギー収支を考慮した場合、妥当な解決方法とはいい難い。本発明は、上記の問題点を解決することで、発生した放射性廃棄物の処理過程において、放射性物質を分離除去するだけでなく、低減することを主な目的としている。
核反応的方法ではなく、放射性核種の半減期短縮による、安定核種への変換方法に関しては、実際に安定核種への変換が実験的に確認されている以上、現実的諸問題の解決に適用していくことは自然な流れである。
したがって、本発明は、新たな視点に立ち、上記記載の非核反応的方法による放射性物質の低減方法を見直し、放射性廃棄物処理に使用されている各種設備を利用して、量的に処理可能な低減方法を模索することで、現実的に解決すべき問題である放射性廃棄物の処理において、適用可能な放射性物質の低減方法を提供する。
本発明者らは、上記記載の課題を解決すべく熟慮を重ねた結果、放射性廃棄物の処理において、費用対効果を考慮し核施設等を使用することなく、既存の各種処理方法や技術、それに伴う既存の設備の発展的な取り扱いや改良法を提案し、本発明に基づく低減方法とを組み合わせることによって、効果的な処理を可能にする低減方法を提供するに至った。
本発明における放射性物質の低減方法は、放射性廃棄物を直接、若しくはゼオライトや他の多孔質物質、例えば活性炭やグラファイトとの混合物で吸着し閉じ込めたものを、高温溶融炉内での溶融により、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)等の放射性物質を溶融解離、または電離することで完全にイオン化し、その状態を効率的に維持することで当該核種の半減期を短縮し、また凝縮・固化処理過程で特殊な結合状態を発現することにより半減期を短縮し、さらにガンマ(γ)線源による長期的な照射電離により半減期を短縮することで、安定核種に変換することを特徴としている。
したがって、本発明における放射性物質の低減方法を実施するには、放射性廃棄物の種類自体が、原子力発電所からの放射性廃液等の廃棄物、原発事故により発生したガレキや土壌等の廃棄物、汚泥処理によって発生した廃棄物、除染作業で集められた廃棄物等、多岐に及ぶため、各種放射性廃棄物の選別から行う必要がある。
上記放射性廃棄物は、除去処理の観点から見れば、既に放射性物質に汚染されている浸出水、水や化学薬品等で容易に溶出が可能な廃棄物、また溶出が難しい廃棄物等に分類することができる。したがって、浸出水や溶出が容易な放射性廃棄物の処理水に関しては、それらを一定の大きさとし、水や化学洗浄剤等により放射性物質を分離除去した後、発生した汚染水内に含まれる放射性物質の吸着分離を行う。吸着処理後の使用済み吸着物質を高温溶融炉内で溶融し、凝縮、固化することになる。また、難溶出放射性廃棄物に関しては、上記記載の処理をすることなく、直接、高温溶融炉内で溶融し、凝縮、固化することになる。
各々の処理を実施する場合、その前後には放射能(放射線量)の測定を厳密に行う必要があるため、測定装置を設置して置かなければならない。各処理過程で分離された放射性廃棄物は、放射能の測定で安全が確認された後、一般廃棄物として処分することになる。
各種処理の実施において、施設の作業従事者の被曝を最小限に抑え、放射性物質の分離除去、低減を円滑に行う上で、放射性廃棄物や処理施設の放射能を随時測定し、そのレベルに対応した処理処分の方法を適切に選択していく必要があるため、放射能のモニタリングを厳重に行うことが要求される。モニタリングの方法としては、放射性物質の濃度に関してはゲルマニウム(Ge)半導体検出器によるガンマ(γ)線スペクトロメトリー、空間線量率に関してはヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーションサーベイメーター等により測定を行う。
以下、本発明の解決手段に関して順を追って具体的に説明する。
原子力発電所や、その事故により発生した放射性廃棄物は、各種物質が含まれ大きさも異なる。そのため、粉砕処理では前処理として、粉砕機を用いて分別された各種放射性廃棄物を一定の大きさに粉砕し揃えることが必要である。
各種放射性廃棄物の除染においては、廃棄物に付着、または沈着した放射性汚染物質を水や放射性物質の除染に適した特殊洗浄剤等を使用して分離除去する。また、化学処理による分離除去を効果的に行うため超音波振動攪拌機を使用する。化学処理後、水での脱薬洗浄を行い、廃棄物と分離した脱薬処理水は次の処理に移行させる。除染処理は、完全を期するため2回実施することが好ましい。なお、脱薬処理後の残留廃棄物は、放射能の測定後、安全確認が取れ次第、一般廃棄物として処分することができる。また、安全確認の取れない残留物は、直接、高温溶融炉内で溶融し凝縮・固化処理することができる。
放射性物質に汚染された浸出水に関しては、上記の処理を行う必要はなく、直接、吸着除去を行えばよい。一方、放射性廃棄物としての土壌等に関しては、上記除染処理を施しても放射性物質の溶出率が非常に低いという結果が得られている。したがって、溶出率の低い土壌等の放射性廃棄物は、吸着処理は行わず、直接高温溶融処理を行い、凝縮、固化して保管するのが望ましい。勿論、土壌等の放射性物質の低減化は、高温溶融、凝縮、固化及び保管等の各処理過程で実施することができる。(放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分、国立環境研究所技術資料参照)
放射性物質の吸着分離は、本低減方法の前処理として、特に重要な処理過程である。ここでの吸着分離処理おいては、脱薬処理水中の放射性物質を取り除くための吸着物質として、吸着能力や陽イオン交換機能の高いゼオライトを使用することが最も効果的である。また、除去効果を高める目的で活性炭、グラファイトや逆浸透(RO)膜も処理水の内容によって適切に選択し、それらを使用することが可能である。効果的吸着分離を実現するため、ゼオライトの単独、若しくは活性炭、グラファイトとの混合物により構成された通常の水質浄化システム(4段以上の多段濾過槽構造)やカラム浄水システム(多段式)を使用して吸着分離除去する。また、吸着分離除去が不十分な場合は、発生した排水を逆浸透(RO)膜により真水に転換する。逆浸透(RO)膜による処理で発生した転換水は、放射能の測定後、安全確認が取れ次第、環境へ放水するが、その際に発生した濃縮水はもとに戻し再度吸着処理するか、または高温溶融炉で処理できることはいうまでもない。
ゼオライトは、表面構造内の空隙に様々な物質を吸着し、その吸着能力は活性炭以上の能力を有している。ゼオライトの空隙は、ケージタイプとチャンネルタイプの2種類に大別されている。ケージタイプではケージ間に窓と呼ばれる穴があり3次元的に連結されている。またチャンネルタイプでは1次元の空隙が互いに交差するものなど多くの種類がある。
吸着分離処理で使用するゼオライトは、酸化シリコン(SiO)から成る骨格を基本としているが、含まれる成分は多種多様で、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)等を含んでおり、一部のシリコン(Si)がアルミニウム(Al)に置換し結晶格子全体が負に帯電しており、微細孔内にナトリウム(Na)等のカチオンを含み、電荷のバランスが取られている。したがって、粉末状、若しくは微粒状のゼオライトを、別のカチオンを含んだ水溶液中に入れると細孔内でイオン交換、吸着が起こる。この交換反応は、可逆的であり時間の経過とともに飽和して平衡状態となる。セシウムもカチオンなので、ゼオライトによってイオン交換、吸着が起こる。ゼオライトの陽イオン交換順位としては、セシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)等の有害物質の交換順位が高いことが知られている。
特に、人工ゼオライトは、電力産業の副産物である石炭灰から得た機能性素材として、様々な物質を強く吸着する特性を有し、また物質の均一性や、耐久性に優れている。人工ゼオライトは、ナトリウム(Na)イオン、カルシウム(Ca)イオン、鉄(Fe)イオンを担持させた3種類の物質が製造されている。人工ゼオライトは、それぞれ吸着能力として高い性能を有しているが、その中でも特にカルシウム(Ca)型が非常に強い吸着力を有している。(人工ゼオライト、国際ゼオライト技術協会発行のカタログ参照)
人工ゼオライトは、高い吸着能力を有しているので、被吸着物質が低濃度であっても十分な吸着効果を発揮する。特に、放射性物質である放射性セシウム(Cs)、放射性ストロンチウム(Sr)等は、人工ゼオライトに吸着して取り込まれる代表的な物質である。また、人工ゼオライトは、かなりの温度に耐えられる物質であるが、被吸着物質を吸着し吸蔵すると、それより低い温度で骨格が破壊される場合があるため、使用においてはなるべく低い温度で吸着させることが望ましい。
汚染水中の放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)の吸着処理においては、ゼオライトの単独使用でも可能であるが、汚染水中にはナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)等の共存イオンの存在が、吸着特性に与える影響も考慮する必要がある。既に、焼却灰からの溶出液の吸着実験からは、吸着において放射性セシウム(Cs)だけではなく、カリウム(K)や安定セシウム(Cs)等の共存イオンも同時に吸着し、放射性セシウム(Cs)の吸着特性の低下が示されている。したがって、焼却灰やガレキ等の各種放射性廃棄物からの溶出水や浸出水に対する吸着処理においては、各種共存イオンの存在を十分に考慮したゼオライトの使用が要求される。
したがって、ゼオライトの吸着性能や、陽イオン交換機能を発揮させるにおいては、溶出水を吸着能に優れた活性炭や、多孔質であるグラファイトと適度の配分をした混合状態での使用がより効果的である。また、活性炭や、多孔質であるグラファイトで先に吸着処理を行い、その後、ゼオライトによる吸着処理を行うことが最も効果的であり、ゼオライトの吸着能力や陽イオン交換機能を、十分に発揮させることができる。
本吸着処理で使用する活性炭は、化学的及び物理的な活性化処理を施した高吸着効率の多孔質炭素を主成分としたもので、酸素(O)、水素(H)、カルシウム(Ca)等を含む多孔質物質であり、またその微細な細孔に多くの物質を吸着する性質を有している。活性炭は、その表面が非極性であるため、水のような小さい極性分子は吸着しにくく、粒状の有機物を選択的に吸着しやすい特性を持つ。活性炭は、放射性物質の除去においては、特に、放射性核種であるヨウ素(131I)の吸着除去能力は非常に優れている。
一方、本吸着処理で使用するグラファイト(黒鉛)は、多孔質物質であり、炭素から成る元素鉱物として六方晶系、六角板状結晶として、その構造は亀の甲状の層状物質で、層面内は強い共有結合でつながっているが、層間は弱いファンデルワールス力で結合している。グラファイト結晶は、面内炭素原子間距離0.142nm、層面間距離0.335nmの異方性の強い層状構造を有し、そのような特長により層間を拡張しながら反応物質を挿入する、いわゆるインターカレーション効果を発揮する多孔体である。したがって、多孔質グラファイトも、活性炭と同様に、高い吸着、吸蔵能力を有しており、各種物質の吸着が期待されている物質である。
最終的な処理で使用する逆浸透(RO)膜は、ろ過膜の一種として水を通し塩類等水以外の物質は、透過しない性質を有する膜のことであるが、孔の大きさは2nm以下であるため、汚染水の放射性物質を除去する方法としては最も有効的である。逆浸透(RO)膜は、膜を通過しなかった放射性物質や、その他の不純物等を連続的に排出しなければ、加圧側の放射性物質や、その他の不純物等の濃度が限りなく上昇し、浸透圧が高まって水が通過できなくなるため、逆浸透(RO)膜からは、必ず常に放射性物質や、その他の不純物等が濃縮された濃縮水が連続的に排出されなければならない。
吸着処理の前段階においてゼオライトの単独、若しくは活性炭、グラファイトとの混合物による吸着過程において、放射性物質は大幅に除去されたと思われるので、この排出される濃縮水は、それほど放射性物質を含んでいないと推測されるが、放射能の測定後、基準値を大幅に下回った場合には、環境に放出する。しかし、それ以外の場合においては、濃縮水を再度、前段階の吸着処理に差し戻し再度除去処理を行うことになる。一方、逆浸透(RO)膜による処理後の真水は、環境に放水できることは当然である。
ゼオライト、活性炭やグラファイトは、放射性物質の吸着特性において差はあるが、放射性汚染水を数段階の吸着物質層を通過させることで、放射性物質のほとんどが除去される。したがって、最終的に得られた除去水の放射能の測定を行い、基準値を大幅に下回った場合は環境に放出し、逆浸透(RO)膜による除去工程は省くことができる。また、基準値を上回った場合においては、除去水を逆浸透(RO)膜による除去処理へ投入する。
吸着処理過程において、特に注意しなければならないことは、放射性物質を吸着した使用済みゼオライト、活性炭やグラファイトが空気中で保存されると、吸着した放射性物質が空気中の成分との反応や、また吸着物質の外に析出する可能性がある。したがって、使用済み吸着物質の取り扱いには注意を要するが、次の処理過程で速やかに処分することが好ましい。
本発明における第一の実現手段は、高温溶融炉内での溶融処理過程において、放射性物質を溶融解離、または電離状態を引き起こし完全にイオン化することで、当該核種の半減期を短縮することによる放射性物質の低減方法を提供することである。
ここでの処理は、難溶出放射性廃棄物、吸着分離処理で使用した濾過膜(濾紙)、ゼオライト、活性炭、多孔質グラファイト及び逆浸透(RO)膜を回収し、高温溶融炉内に投入して溶融を行う。溶融処理に使用される加熱方式としては、プラズマ加熱方式、高周波誘導加熱方式、マイクロ波加熱方式、ジュール加熱方式等があるが、その中でもプラズマ加熱方式である高温プラズマ溶融炉が最も優れており、その構成によっては1万度以上の高温プラズマを発生することが可能なため、どのような有害物質でも電離可能で、ばらばらに分解できるという利点を有している。(放射性雑固体廃棄物のプラズマ溶融技術、神戸製鋼技報Vol.53No.3参考)
本発明における低減方法では、既知の半減期短縮の実験結果に基づき、新たな視点で発展的に展開することを特徴としている。特に、放射性物質の原子内電子密度を変化させ、また電子分布に偏りを発生させ、その半減期を短縮させる電離化方法は,高温プラズマ溶融炉を用いることが最も適している。したがって、プラズマ発生原料としては純水(または、水蒸気)、または各種ガスを使用するが、高温プラズマ溶融炉は、出来る限り1万度以上、好ましくは2万度以上、最も好ましくは3万度以上の高温において溶融できるようにし、また溶融解離、または電離状態にしイオン化した放射性物質の滞留時間をできる限り長く保てるような構造にすることが最も好ましい。
1〜3万度の高温プラズマ内では、粒子密度が非常に高く、発生したイオンや中性粒子の温度が電子温度と等しい状態となる。また、電離度が大きくなるため、イオンが熱エネルギーを得て運動量が増大することになり、荷電粒子間の衝突現象が激しく現れる。したがって、高温プラズマもしくは高温溶融体内でのイオンは、常温での挙動とは著しく異なり、粒子衝突による励起が支配的に起こり複雑な挙動を示すことになる。特に、高温プラズマまたは高温溶融体内の電子とイオンはクーロン力で引き合うため、高温プラズマ状態を保ちながら拡散するので、それにより熱移動が促進される。
したがって、高温溶融体内で解離、または電離状態を長く保つことによって、その熱エネルギーによりイオン内部の束縛電子も大きくゆらぎ、電子密度や電子分布に複雑な変化が生じる。このようなイオン内部の変化は、軌道電子捕獲や陰電子(β)崩壊の促進を促すと推察され、またそれにより放射性核種の半減期を短縮することが可能になると推測される。ここで、軌道電子捕獲は、軌道電子が原子核に取り込まれ、陽子と反応し中性子となり、同時に電子ニュトリノを放出して原子番号が一つ低い安定核種に変換する放射性核種の崩壊過程である。
本発明における第二の実現手段は、高温溶融炉内での凝縮、固化処理過程において、各物質系の特殊な結合状態を引き起こし、当該核種の半減期を短縮させることによる放射性物質の低減方法を提供することである。
高温プラズマ溶融炉は、放射性廃棄物の減容化、均一化及び安定化を実現できるため、原子力発電所からの放射性廃棄物処理に使用され、実績が積み重ねられている。特に、均一化、安定化は、様々な物質が凝縮、固化された小領域内に一様に分布し、また凝縮、固化された物質状態は、ガラス状(アモルファス状)、または緻密構造を持った固形物になり、取り込まれた放射性物質自体も安定した状態を保てるため、放射性廃棄物の処理処分において重要視されている。また、放射性廃棄物の処理能力においても、設備規模にもよるが1日数十トン〜数百トンの凝縮、固化処理が十分に可能である。
投入された難溶出廃棄物、または放射性物質を吸着したゼオライト単独、または活性炭やグラファイトとの混合物は高温溶融され、その溶融状態から急速に冷却され、凝縮、固化した固形物であるガラス状、または緻密構造の固形物として回収される。固形物内の物質は、高温溶融体の状態から非平衡相または準安定相が形成された状態にあると解釈される。したがって、放射性原子内部の電子状態が長期にわたりそのまま維持されるので、当該核種の半減期短縮の可能性が示唆される。
本発明における第三の実現手段は、保管過程において凝縮、固化した固形物に対しガンマ(γ)線を連続照射することで、当該核種の半減期を短縮させることによる放射性物質の低減方法を提供することである。
処理された放射性物質の保管では、高温プラズマ溶融炉から採取した固形物の放射能を測定し、また測定値別に分別し、なおかつ履歴が判るよう記録し保管庫で厳重に管理しなければならないことはいうまでもない。このとき、放射能の測定値が基準値を大幅に上回る場合は、人工的に製造した低半減期のガンマ(γ)線源を使用し、連続的に固形物に対し照射することで、放射性物質を電離状態にし、その半減期を短縮させることも可能であると推測される。この場合、一様に照射するには、対象物質に対し特殊な配置構造にする必要があるが、放射性核種の半減期の短縮方法としては最も好ましい。
本発明の最大の効果は、高温溶融炉内での溶融、凝縮、固化の処理過程において、放射性物質の低減効果が期待できることである。また、ガンマ(γ)線源での照射が実施可能であるため、保管庫内での自然消滅を待つのではなく、積極的な、また継続的な消滅を促すことが可能となる。放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)の保管には数百年の年月を要するが、本発明によれば、その期間の短縮が可能である。
放射性物質の低減方法である本発明を実現するための手段に関しては、既に記載したとおりであるが、以下、本発明の実施形態に係る放射性物質の低減方法を各処理過程に沿って具体的に説明する。
放射性廃棄物において対象物質としての放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)は、イオン化エネルギーが低く、陽イオンになり易い特徴がある。特に、セシウム(Cs)は反応性が非常に高く、大気に放出されれば容易に酸化される物質である。したがって、環境中では、酸素、水、他の元素や化学物質と容易に反応し、塩化物、炭酸塩や硝酸塩等の塩類、若しくはイオンとして存在しているものと考えられ、またこれらの物質が雨風により各種ガレキや土壌等に付着、または沈着しているものと思われ、放射性セシウム(Cs)の低減は最も重要な課題である。
放射性物質の溶出が可能な放射性廃棄物の粉砕や除染処理は、既に適用されている方法の中で最適な方式を採用し、特に除染処理においては、水や除染液により廃棄物に付着、または沈着している放射性物質を除染液内に取り込むことで、液体放射性廃棄物とすることが狙いである。吸着力、または沈着力は、吸着、または沈着媒体に依存するため、それが強い場合には、水だけの洗浄だけでは、容易に放射性物質の水環境中へ溶出させることが難しいため、最良の洗浄剤を使用するのが最も好ましい。また、除染処理をより効果的に行うため、超音波攪拌機を使用し分離を促進させることが好ましい。
除染処理後の除染液、または洗浄水は、吸着物質により放射性物質を吸着分離する。液体放射性廃棄物の処理方法は、一般的には放射能レベル、溶存しているイオン量、固形分量等の廃液特性を考慮して決定するが、浸出水や溶出洗浄水に陽イオンとして溶存する放射性セシウム(Cs)は、凝縮沈殿、砂ろ過、生物処理、活性炭処理やキレート樹脂処理等の既存の処理では除去されないことが知られている。
したがって、ここでは本発明の目的を実現するため、以下に示した処理方法を使用し、放射性物質の吸着分離を行う。
吸着分離処理で使用する吸着物質としては、ゼオライト単独、若しくは活性炭及びグラファイトとの混合物質、逆浸透(RO)膜を使用する。特に、本処理で使用するゼオライトは、人工物や天然鉱物があるが、それを吸着剤として用いることは、最も有力な方法として検討されている物質である。このような吸着物質は同じ物質名であっても製造条件、産地や組成によって吸着能力や、イオン交換機能に差があるほか、放射性物質の濃度や、環境の酸性度等の条件によっても吸着性能に差異が生じることが知られている。このことは、各現場の状況によっても、その処理に有効な吸着物質が異なる場合があるため、状況に合わせた最適な吸着剤を選択する必要があるが、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)の吸着除去においてはゼオライトが適しており、その中でも人工ゼオライトの使用が最も適している。
本吸着処理は、既に記載したように二段階で実施するが、一段階で通常の水質浄化システム(4段以上の多段濾過槽構造)やカラム浄水システム(多段式)を使用し、そのシステムの濾過槽内にゼオライトの単独使用、ゼオライト、活性炭やグラファイト分割層状使用、若しくはゼオライト及び活性炭、グラファイトの混合状での使用を考えることができる。このとき、システムの投入口には不要なごみ等を除去するため、目の粗い濾紙膜を設置する。最終的には、逆浸透(RO)膜を使用し、汚染水に含まれている残留放射性物質の最終除去処理を行うことである。
まず、本発明の第一の実施形態に係る高温プラズマ溶融炉内で溶融解離、または電離状態の維持により、放射性核種の半減期が短縮されることによる放射性物質の低減方法に関し、以下に説明する。
本発明の溶融処理は、高温プラズマ溶融炉(実質プラズマ温度は1〜3度万である。)を使用して行うが、投入する放射性物質を高温で溶融解離、電離、イオン化状態にすることにより放射性核種の半減期を短縮する方法である。
放射性物質の化学結合状態や物理的状態を変化させ、つまり電離、イオン化し電子密度の変化を引き起こすことで、既に示したように軌道電子捕獲や陰電子(β)崩壊特性に変化を及ぼし、微量ではあるが当該核種の半減期が短縮すという事実が確認されている。放射性物質の溶融解離、電離またはイオン化する方法は、様々に考えられるが、高温プラズマ溶融による方法が最も優れている。当該核種の半減期短縮をより効果的に行うには、高温プラズマ溶融炉の使用で放射性物質の溶融解離、電離またはそれにより完全にイオン化した状態での滞留時間を長く保持することが最も重要である。
高温プラズマ溶融炉の温度を1〜3万度に保持し、対象物質を溶融し解離、電離または完全イオン化した状態を実現するには、最適なプラズマ発生原料による高温溶融を行う必要がある。一般的には、大気中で純水(または、その水蒸気)を発生原料と使用し、溶融炉内に挿入したプラズマトーチからプラズマアークを発生させ、アークからの熱で対象物質を溶融している。
一方、水素(H)酸素(O)ガス、いわゆるHHO可燃性ガスを使用した高温プラズマ溶融炉が注目されている。HHO可燃性ガスは、瞬間的に1万度以上の温度を達成することが可能とされ、タングステン(W)や耐火レンガ等の物質を瞬間的に溶解することができる。このようなHHO可燃性ガスは、マグネキュラ特性を有した構造であるとされ、そのような構造を有した全てのガスの典型的な特徴である磁気誘導による追加的な浸透に加え、分離されて磁気的に磁性化された水素(H)原子及び酸素(O)原子が存在する。HHO可燃性ガスは、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)水溶液を使用した通常の水電気分解から容易に得ることができる。(特開2008−274378号公報参照)
したがって、本発明では、プラズマ発生原料として純水(または、水蒸気)またはHHO可燃性ガスを使用することで、1〜3万度の温度を達成することができる高温プラズマ溶融炉を放射性物質の溶融に使用する。これにより対象物質を1〜3万度に急速に加熱でき、また高温状態で非平衡状態を達成でき、放射性物質の溶融解離、電離、イオン化状態を形成することができる。
溶解した溶融体は、耐火レンガ等で構成された槽内に投入されるが、1〜3万度の溶融状態を維持し滞留時間を保持するためには、槽を長めの長方形にし、槽内の高温溶融体自体を直接過熱できるようプラズマトーチを多段式に配置し、プラズマアークを発生させ、その熱で長時間連続的に加熱する。
高温プラズマ溶融処理過程において注意すべき点は、放射性セシウム(Cs)が高温下において揮発性が高いことである。セシウム(Cs)は、アルカリ金属に属し融点や沸点は低く、蒸気圧は相対的に高い傾向にあり、揮発しやすい物質である。したがって、本発明での溶融処理過程は、通常よりも長くする必要があるため、特に揮発性に関しては留意が必要であり、そのための対策が要求される。一方、放射性ストロンチウム(Sr)に関しても、アルカリ土類金属に属し融点や沸点は比較的に高い傾向にあるが、高温下においては揮発する可能性がある。したがって、放射性ストロンチウム(Sr)に関しても、上記と同様の対策を講じる必要がある。
したがって、大気中での高温プラズマ溶融においては、ほとんどの物質を溶融することが可能であるが、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)の揮発の可能性を考慮し、ヒュームやダストを排気する排気口にそれらを同時に吸着する機構を設けることにより、溶融炉外部に飛散することがないようにする。また、溶融槽の上に覆いを儲けるなど、飛散を防ぐ構造を設ける。
また、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)の揮発を抑える方法としては、不活性物質であるアルゴン(Ar)ガスを大気圧より少し高めの圧力で、高温プラズマ溶融炉内を満たすことが最も好ましい。アルゴン(Ar)ガスは、化学的に全く不活性であり、空気成分と溶融物質との反応を抑制できる保護ガスである。したがって、本発明では、アルゴン(Ar)ガスの雰囲気中で対象物質の高温溶融を行う。
高温プラズマにより発生した高温溶融体は、高温で溶融している非平衡状態の無機混合溶液を意味しているが、完全解離状態、または電離状態のイオン性溶融体としてみることができる。この高温溶融体内での放射性物質も非平衡状態として完全に溶融解離、または電離状態を形成しており、電子温度状態にあるイオンまたは荷電粒子間の激しい衝突による複雑な挙動が発現し、またイオン内電子に大きな揺らぎが発生し、電子密度に変化が生じる。高温溶融体内での放射性イオンの活性化された状態は、イオン内電子分布に大きな偏りを発生し、定常状態での分布から大きく変化しているものと推測される。
プラズマ溶融された放射性セシウム(Cs)は、P軌道の6s電子が電離し、+1価の陽イオンになる。また、そのイオン状態は、N軌道のf電子軌道、O軌道d及びf電子軌道は空席のままで準閉殻状態になっている。一方、放射性ストロンチウム(Sr)は、O軌道の5s電子が電離し、+2価の陽イオンになる。また、N軌道のp電子軌道まで満たされた準閉殻状態になっている。しかし、高温溶融体内においては、各軌道電子は熱エネルギー吸収による大きなゆらぎが生じ、その電子分布自体に変化が起きる可能性がある。特に、2万度以上の高温プラズマの場合、準閉殻状態にある電子も、熱エネルギーやイオンまたは荷電粒子間の激しい衝突等により電離する可能性もある。
他の物質も上記と同様に、溶融解離、電離や非平衡状態が形成され、高温溶融体内部での挙動は、定常状態での挙動から大きくかけ離れた反応が予測される。特に、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)においては、その状態変化によってイオン内部の電子密度の変化や電子分布が大きく偏る現象が発現し、その影響により当該核種の軌道電子捕獲や陰電子(β)崩壊を促す効果が発現する。
原子の最外殻電子密度の変化は、内殻電子密度にはほとんど影響を与えないとされているが、それでも軌道電子捕獲により放射性核種の半減期を0.1〜0.2%程度短縮できることが既に確認されている。したがって、高温溶融体内で当該核種の軌道電子捕獲が発現したとすれば、放射性セシウム(Cs)は、寿命が3.9mの陰電子(β)崩壊核種のキセノン(137Xe)に変換し、またキセノン(137Xe)は、安定核種であるキセノン(136Xe)に変換する。
また、完全にイオン化した放射性核種の陰電子(β)崩壊も既に観測されていることから、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)も高温溶融体内で完全イオン化した状態であるため、安定核種であるバリウム(137Ba)や半減期が2.67dである放射性核種イットリウム(90Y)の陰電子(β)崩壊をへて安定核種であるジルコニウム(90Zr)に変換する。
以上のように、本実施形態では高温プラズマ溶融炉内における溶融解離、電離状態の長時間保持が最も重要な特徴であり、その実現には多段式プラズマトーチからのプラズマ発生により、高温での溶融解離、電離状態を十分に維持することである。この方法により、放射性核種の半減期を割合としては少ないかもしれないが、ある程度の短縮を得ることが可能になると推測される。
本発明の第二の実施形態に係る高温プラズマ溶融炉内で凝縮及び固化した各種物質内に取り込まれた、放射性核種の半減期の短縮による放射性物質の低減方法に関し、以下に説明する。
本発明の凝縮及び固化処理は、高温プラズマにより急速に加熱され、1〜3万度で十分に保持された溶融物質の冷却を制御しながら行うが、この過程で放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)が他の物質内にどのような状態で取り込まれるかが決定される。この取り込まれ方によって化学的な結合方式が異なり、それによって放射性核種の半減期短縮効果も異なることが予想される。特に、外殻電子軌道が化学結合に依存するため、この処理過程を十分に制御する。
放射性物質の原子内電子密度の変化、また電子分布の偏りを維持し、非平衡相を形成するには、高温プラズマ温度に維持された溶融体を急速に冷却し、凝縮及び固化処理することが望まれる。高温プラズマにより溶融した物質の冷却速度は、通常10〜10K/秒であることが知られている。溶融物質は、急冷却により非平衡状態を維持したまま非平衡反応が進行し、非平衡相若しくは準安定相が形成されたガラス状、若しくはアモルファス状の固形物を形成する。
凝縮及び固化された固形物は、上記急速冷却により高温溶融状態の液状構造をある程度維持したガラス固形物であり、非平衡状態の固形物と推測される。このような固形物の化学的特性や物理的特性は、通常の固形物のそれとは大きく異なり、溶融解離、または電離されイオン化した状態で急冷による結合状態は、通常の場合とは大きくかけ離れたものになる。したがって、高温溶融体の場合とは異なるが、やはり電子密度の変化、またそれによる電子分布の偏りは発現しており、それによって放射性物質の当該核種の軌道電子捕獲や陰電子(β)崩壊を促す効果が発現する。
上記固形物は、非常に安定した状態ではあるが、外部からの化学的な反応、または物理的な作用が及ばない場合、長期保管において通常の場合よりも当該核種の半減期の短縮が早まると推測される。
一方、凝縮及び固化過程を冷却を若干遅くすることにより、緻密化した構造体の固形物を得ることができ、その構造内部に放射性物質を閉じ込めることで、放射性物質と他物質との結合状態に特殊性を持たせることで、放射性物質の当該原子内電子分布に偏りを持たせることも可能であり、その効果によって当該核種の半減期を短縮することが可能であると推測される。
本発明の第三の実施形態に係る高温プラズマ溶融炉内で固化した各種固形物を、保管庫内において、低エネルギーガンマ(γ)線で照射し、放射性核種の半減期短縮による放射性物質の低減方法に関し、以下に説明する。
得られた固形物は、最終処分としての保管処理にまわすことになるが、放射能測定で放射性物質が残留している場合は、本処理においても放射性物質の低減を実施する。特許文献1によれば、陰電子(β)崩壊核種の半減期を短縮する方法としては、原子内K軌道電子の電離エネルギーより、高いエネルギーのX線を照射し、原子核周辺の電子密度を減少させた状態に維持することで実施できることが確認されている。しかし、本処理過程においては、大型加速器施設を使用することなく、人工的に作られた半減期が300日以内のガンマ(γ)線源等の低エネルギーガンマ(γ)線放出核種を用い、これらの核種と固形物を混合し保管することで、放射性物質の低減化を図ることができる。
本処分で使用するガンマ(γ)線源としての低エネルギーガンマ(γ)線放出核種は、半減期が300日以内と低いため、これらの核種を放射性物質の残留固形物と混合して保管しても、10年以内に安定核種へと変換するため、中寿命核種と比べれば、特に大きな問題とはならない。しかし、この期間、安全に保管するための、厳重な管理体制を構築することが要求される。
また別の例として、前期記載のように混合するのではなく、ガラス状の細い筒に低エネルギーγ線放出核種を詰め封入し、その周りを円筒状に取り囲むように、放射性物質の残留固形物を配置することで、上記の半減期の短縮効果を得る方法である。この場合、ガンマ(γ)線放出核種と放射性物質の残留固形物とが分離されているため、定期的に放射性物質の残留固形物の放射能測定を行うことで、その値が基準値を下回った場合、一般廃棄物扱いとして処分する。
原子力発電所での使用済み核燃料中に含まれている長寿命放射性物質を分離し、原子炉等で核変換させ、短寿命核種、若しくは安定核種に変換するための開発は重要な課題であり、その基盤技術の確立は非常に重要である。本発明において記載した放射性物質の各種低減方法は、長中寿命放射性物質の低減にも適用できるものである。

Claims (3)

  1. 土壌等の難溶出放射性廃棄物、放射性物質を吸着した濾過膜、ゼオライト、活性炭、グラファイトや逆浸透(RO)膜等を単式若しくは多段式トーチを備えた高温プラズマ溶融炉内で1〜3万度の温度で溶融し、溶融解離、電離またはイオン化された放射性物質を高温溶融体内に長時間滞留させ、高温溶融体内での物理化学的な状態の変化を引き起こし、電子密度の変化、電子分布の偏りや準外殻電子の電離等の発生により、軌道電子捕獲やベータ(β)崩壊を促し、当該核種の半減期を短縮させ、安定核種に変換させることを特徴とする放射性物質の低減方法。
  2. 請求項1記載の高温溶融体の冷却速度を制御し、高温溶融物の状態を維持するか、またはその状態を若干変化させ非平衡相若しくは準安定相が形成されたガラス状若しくは緻密構造の固形物を形成し、特異な結合状態を発現させ、放射性原子内の電子密度の変化、電子分布の偏りや準外殻電子の電離等の発生により、軌道電子捕獲やベータ(β)崩壊を促し、当該核種の半減期を短縮させ、安定核種に変換させることを特徴とする放射性物質の低減方法。
  3. 請求項2記載の放射性物質を内蔵したガラス状、若しくは緻密構造の固形物を保管による過程において、半減期が300日以下のγ線源を、それらと混合状態にするか、またはその周囲に円筒状に配置固定するような特殊な配置構造にして、γ線を連続的に照射し、放射性物質を電離させ、原子内電子の密度の変化や分布状態を変化させることによりベータ(β)崩壊を促し、放射性核種の半減期を減少させ、安定核へと変換させることを特徴とする放射性物質の低減方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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