JP2004285982A - カムシャフトの軸受構造 - Google Patents

カムシャフトの軸受構造 Download PDF

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Abstract

【課題】ナイフエッジに起因するオイルの掻き落としを防止できるカムシャフトの軸受構造を提供する。
【解決手段】カムシャフト2を支持するロアジャーナル3に、その軸受面5の一部を切り欠くように座ぐり部6が形成されたカムシャフトの軸受構造であって、上記軸受面5と座ぐり部6との連接部に、カムシャフト2の表面から離間するように窪まされた逃げ部11を形成し、該逃げ部11と上記軸受面5とを繋ぐエッジの一部11aを、カムシャフト2の回転方向Aに沿って形成した。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロアジャーナルの軸受面の一部に座ぐり部が形成されたカムシャフトの軸受構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3及び図4に示すように、OHCエンジンのシリンダヘッド1に装着されるカムシャフト2は、シリンダヘッド1に設けられたロアジャーナル3と、その上部に装着される図示しないアッパージャーナルとの間に挟持され、軸支される。ロアジャーナル3は、カムシャフト2の軸方向に所定間隔を隔てて複数配置されている。
【0003】
各ロアジャーナル3には、シリンダヘッド1側からオイルが供給され、カムシャフト2との間が潤滑される。なお、一箇所のロアジャーナル3にのみオイルを供給し、他のロアジャーナル3にはカムシャフト2を介してオイルが供給されるタイプも知られている。また、上記シリンダヘッド1は、当該ヘッド1を貫通するヘッドボルト(図示せず)により、シリンダボディーに装着される。
【0004】
ところで、近年、エンジンの小型軽量化・高出力化等の要請により、各気筒のボアピッチが狭くなると共に、ヘッドボルトの数が多くなり、且つバルブ数も増大している。このため、ヘッドボルトとロアジャーナル3とが近接配置されるようになり、シリンダヘッド1に形成されるヘッドボルト用の座ぐりの形成位置が、ロアジャーナル3の軸受面と干渉するタイプが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
このタイプでは、図5に示すように、シリンダヘッド1にヘッドボルトの座面4を成形する際に、シリンダヘッド1の上方から切削工具をヘッドボルトの座面4まで移動すると、その切削工具の移動経路上にラップするロアジャーナル3の軸受面5の一部が切り欠かれ、ロアジャーナル3にエッジがシャープな座ぐり部6が成形される。
【0006】
なお、図5中、ハッチングはシリンダヘッド1の上端面を示し、4はヘッドボルトの座面(軸受面5より下方に位置する)であり、7はヘッドボルトが挿通される穴であり、8はインジェクタの装着穴であり、9はアッパジャーナルを取り付けるボルトの螺合穴であり、Xは吸排弁または排気弁のステム穴である。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−218836号公報(段落0006、0007、図21)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記座ぐり部6と軸受面5との連接部には、切削工具によってシリンダヘッド1にヘッドボルトの座面4を成形する際に、切削工具が軸受面5の一部を円弧状に切り欠くことで、図6〜図8に示すように、円弧状のシャープなナイフエッジ10が形成される。
【0009】
このナイフエッジ10は、カムシャフト2の表面に斜めに接し、シャフト2の回転に伴ってシャフト2の表面に対する相対的な接触点が、軸受面5の幅方向に次々と移動するため、シャフト2の表面に付着したオイルを削ぎ(剥ぎ)落とす(ナイフエッジ作用)。このため、カムシャフト2が潤滑不良となり得る。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、ナイフエッジに起因するオイルの掻き落としを防止できるカムシャフトの軸受構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、カムシャフトを支持するロアジャーナルに、その軸受面の一部を切り欠くように座ぐり部が形成されたカムシャフトの軸受構造であって、上記軸受面と座ぐり部との連接部に、カムシャフトの表面から離間するように窪まされた逃げ部を形成し、該逃げ部と上記軸受面とを繋ぐエッジの一部を、カムシャフトの回転方向に沿って形成したものである。
【0012】
また、上記エッジの残部を、カムシャフトの回転方向と直交方向に沿って形成することが好ましい。
【0013】
また、上記ロアジャーナルは、上記逃げ部を設けることで減少した軸受面の面積の相当分、軸受面の幅が広く設定されることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を添付図面に基いて説明する。
【0015】
本実施形態に係るカムシャフトの軸受構造は、図3〜図6にて説明したOHCエンジンのシリンダヘッド1に適用されるものであるため、既述した部品と同一の部品には同一の符号を付して説明を省略する。すなわち、シリンダヘッド1には、吸気及び排気カムシャフト2の軸方向に所定間隔を隔ててロアジャーナル3が複数形成されており、各ロアジャーナル3には、その軸受面5の一部を切り欠くように座ぐり部6が形成されている。
【0016】
詳しくは、ロアジャーナル3の軸受面5の基本形状は、図1(a)に示すように上面から見て略長方形状で、図1(b)に示すように側面から見て半円状となっている。かかる軸受面5には、図1(a)に示すように、上面から見た角部(隅部)に位置させて、座ぐり部6が形成されている。座ぐり部6は、カムシャフト2の回転方向Aが対向する軸受面5の幅方向の端部に位置させて、シャフト2の軸方向にずらされて形成されている。
【0017】
軸受面5と座ぐり部6との連接部には、図2にも示すように、カムシャフト2の表面から離間するように窪まされた逃げ部11が形成されている。逃げ部11は、軸受面5(すなわちシャフト2の表面)に対して数ミリ(1ミリ程度)程度平行に1段下げて形成されている。逃げ部11と軸受面5とを繋ぐエッジの一部には、カムシャフト2の回転方向Aに沿って第1エッジ11aが形成されている。エッジの残部には、カムシャフト2の回転方向Aと直交方向に沿って第2エッジ11bが形成されている。
【0018】
すなわち、逃げ部11は、図1(a)に示すように、上面から見て、シャフト2の回転方向Aに沿った第1エッジ11aと、これを直交する第2エッジ11bと、各エッジ11a、11bの端部を繋ぐ座ぐり部6の加工面とからなる、略直角三角形状に形成されている。また、第1及び第2エッジ11a、11bには、アール加工や面取り加工を施してもよいが、施さなくても構わない。
【0019】
以上の構成からなる本実施形態の作用を述べる。
【0020】
図1〜図2に示すように、カムシャフト2は、ロアジャーナル3とそれに被せられた図示しないアッパジャーナルとの間に挟まれて軸支され、矢印Aの方向に回転される。
【0021】
すると、カムシャフト2の表面に付着したオイルは、シャフト2の回転に伴って、先ず、逃げ部11の第1エッジ11aにさしかかる。ここで、第1エッジ11aは、シャフト2の回転方向Aに沿って形成されているため、シャフト2の表面に付着したオイルを幅方向(シャフト2の軸方向)に掻き落とすことはない。
【0022】
その後、カムシャフト2の表面に付着したオイルは、シャフト2の回転に伴って、逃げ部11の第2エッジ11bにさしかかる。ここで、第2エッジ11bは、シャフト2の回転方向Aと直交方向に沿って形成されているため、シャフト2の表面に付着したオイルを同時に掻き落とすことになるが、図7〜図8に示す従来タイプのようにオイルを軸受面5の幅方向に斜めに徐々欠き落とすのではなく、オイルを略鉛直下方に同時に掻き落とす。よって、掻き落とされたオイルは、重力の作用とも相俟って逃げ部11内に一時的に貯留される。従って、潤滑性が確保される。
【0023】
すなわち、本実施形態では、図7〜図8に示す従来タイプのような円弧状のシャープなナイフエッジ10が存在しないため、ナイフエッジ作用(シャフト2の回転に伴ってシャフト2の表面に対する相対的な接触点が軸受面5の幅方向に次々と移動することで、シャフト2の表面に付着したオイルが斜めに掻き落とされる作用)による、シャフト2の表面のオイルの掻き落としは生じない。そして、第2エッジ11bにより略鉛直下方に掻き落されたオイルは、幅方向へのスラスト力が与えられていないため、重力の作用とも相俟ってその下方の逃げ部11内に一時的に貯留され、シャフト2に対する潤滑を行う。
【0024】
また、本実施形態にてオイルを掻き落とす第2エッジ11bは、シャフト2の軸方向と直交方向に形成されているため、図7〜図8に示す従来タイプにてオイルを掻き落とすナイフエッジ10(シャフト2の軸方向に対して斜めに円弧状に形成されている)と比べて、掻き落とし部材として機能する長さが短くなる。よって、本実施形態の方が、従来タイプよりもオイルの掻き落とし量自体が少なくなる。
【0025】
ところで、本実施形態に係る軸受構造では、ロアジャーナル3に逃げ部11を凹設しているため、かかる逃げ部11のない従来タイプと比べると、逃げ部11の面積分だけシャフト2の表面に接触する軸受面積が小さくなり、面圧が高くなる。よって、軸受面5における面圧を等しくするために、逃げ部11によって減少した面積分に相当する分、軸受面5の幅を広く設定している。すなわち、軸受面が形成されるリブ12の幅は、図1に示す本実施形態の幅L1の方が図7に示す従来タイプの幅L2よりも幅広となっている。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るカムシャフトの軸受構造によれば、ナイフエッジに起因するオイルの掻き落としを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るカムシャフトの軸受構造の説明図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のI−I線断面図である。
【図2】上記軸受構造の斜視図である。
【図3】シリンダヘッドの斜視図である。
【図4】シリンダヘッド及びカムシャフトの斜視図である。
【図5】シリンダヘッドの平面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】従来例を示すカムシャフトの軸受構造の説明図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のII−II線断面図である。
【図8】上記軸受構造の斜視図である。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド
2 カムシャフト
3 ロアジャーナル
5 軸受面
6 座ぐり部
11 逃げ部
11a エッジの一部としての第1エッジ
11b エッジの残部としての第2エッジ

Claims (3)

  1. カムシャフトを支持するロアジャーナルに、その軸受面の一部を切り欠くように座ぐり部が形成されたカムシャフトの軸受構造であって、上記軸受面と座ぐり部との連接部に、カムシャフトの表面から離間するように窪まされた逃げ部を形成し、該逃げ部と上記軸受面とを繋ぐエッジの一部を、カムシャフトの回転方向に沿って形成したことを特徴とするカムシャフトの軸受構造。
  2. 上記エッジの残部を、カムシャフトの回転方向と直交方向に沿って形成した請求項1記載のカムシャフトの軸受構造。
  3. 上記ロアジャーナルは、上記逃げ部を設けることで減少した軸受面の面積の相当分、軸受面の幅が広く設定された請求項1〜2記載のカムシャフトの軸受構造。
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