JP2004285522A - 高熱伝導性耐熱有機繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い熱伝導性を有しながら、高い電気絶縁性を有し、特定方向のみに高い熱伝導性を有する伝熱部材用に好適な有機高分子繊維を提供する。
【解決手段】200Kにおける繊維軸方向の熱伝導率が、少なくとも0.5W/cmK以上で、繊維軸に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上で、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である有機繊維であり、かつ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高熱伝導性耐熱有機繊維。
【選択図】 なし
【解決手段】200Kにおける繊維軸方向の熱伝導率が、少なくとも0.5W/cmK以上で、繊維軸に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上で、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である有機繊維であり、かつ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高熱伝導性耐熱有機繊維。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高熱伝導性でかつ耐熱性の有機繊維に関する。さらに詳しくは、熱エネルギー伝達装置や超電導コイル用巻枠、スぺーサー、またパソコン用放熱材料用など、熱伝達や放熱が必要な部分に使用される、電気絶縁性でありながら熱伝導性に優れた伝熱部材用に好適な耐熱性の有機繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱の伝達や放熱には金属が用いられている。しかし金属は導電性があるため、たとえば超電導コイル用ボビン材料やコイル周辺材料としては不都合がある。この様な用途では、熱的には不導体であっても電気絶縁材料を使用するしか方法はなく、窒化アルミ等の高熱伝導セラミックスが使用されてきた。
【0003】
また金属は、伝熱性が等方的であるので一定方向に熱を伝達する必要がある場合に熱が漏れてしまう可能性があるとともに、風雨にさらされる場所で使用した場合、錆による破壊、変性が問題となる。
【0004】
パソコンなどの電子機器の放熱材料にはカーボン繊維が用いられている。しかしカーボン繊維には電気電導性があり、これが問題となる部品もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来技術においては、金属は電気絶縁性が要求される用途には使えない、セラミックスは取扱性が悪くわずかな衝撃で破損してしまう、カーボン繊維は電導性を有するのでわずかでも導電性が問題となるところでは使用できない、また金属やセラミックスは等方的熱伝導性を有し、熱移動に方向性をもたせなければならない場合に熱の伝達ロスが生じるなど、解決すべき課題がある。
一方、有機高分子性高熱伝導繊維としては高強度ポリエチレン繊維などが挙げられるが、耐熱性が不足するものが多い。耐熱性高熱伝導繊維としてはたとえば高強度ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)ザイロンHMなどが挙げられる。しかしザイロンの場合、200Kでの熱伝導率は0.46W/cmKであり、目標とする熱伝導率に対しては不足している。
【0006】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、高い熱伝導性を有しながら、高い電気絶縁性を有し、取り扱い性に優れ、さらに特定方向のみに高い熱伝導性を有する伝熱部材用に好適な有機高分子繊維を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)200Kにおける繊維軸方向の熱伝導率が、少なくとも0.5W/cmK以上で、繊維軸に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上で、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である有機繊維であり、かつ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高熱伝導性耐熱有機繊維である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における高熱伝導性耐熱有機繊維は、耐熱性高分子の分子量を上げることにより分子鎖長を上げ、さらに結晶化度を上げ、さらには結晶欠陥の比率を引き下げ、伸びきり鎖結晶部分を増大させることによって得られる有機高分子繊維である。
【0009】
本発明における有機高分子繊維は、分子鎖の配列状態を特定の状態となるように繊維化することによって高い熱伝導性を発現するものである。本発明に用いられる極限粘度[η]が5以上の耐熱性の有機高分子としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリベンズアミド、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)などのポリベンズアゾール等が挙げられるが、PBOがもっとも望ましい。
【0010】
本発明の高熱伝導性有機高分子繊維は、結晶化度90%以上で、伸びきり結晶部分が従来の高配向繊維より増大させたものである。結晶化度は、95%以上が好ましい。また、結晶の配向角は、1.30度以下であり、0.98度以下が好ましい。
【0011】
本発明の繊維を製造する方法は、慎重でかつ新規な製造法を採用すること好ましく、以下に開示する方法を推奨するがもちろんそれに限定されるものではない。即ち、当該繊維の製造に当たっては、その原料となる高分子の極限粘度[η]が、5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。極限粘度が5未満であると、溶液状態としたときに高分子の絡み合い状態が少なく、繊維状とした後に高い延伸倍率まで延伸することが出来ず所望とする繊維の配向度の糸が得られないことがある。一方、上記の如く極限粘度に上限は無いが、あまりに極限粘度が高くなると、絡み合い点間の分子量が小さくなることから、これもまた高い延伸倍率まで延伸することが出来ず所望とする高配向度の糸を得ることが出来ないことがある。このような観点から原料となるポリマーの極限粘度は30以下が好ましい。
【0012】
従来繊維の製造プロセスのおいては、紡糸速度を早くすることにより一般的に高配向の繊維を得ることが知られている。本発明者らはこの常識に反して、紡糸の段階でむしろ積極的に繊維を配向させないような紡糸条件、つまり低紡糸速度で糸を巻き取った繊維から最終的には高配向となる繊維の製造プロセスを確立し、高配向でかつ高熱伝導性有機高分子繊維を得る方法を見出したのである。
即ち、前述のように、本発明は、繊維を低配向の状態で巻き取った後、該繊維を極めて高倍率で延伸することにより極めて高い分子鎖の配列状態を繊維の構造内に作りせしめ高い熱伝導性を発現せしめるものである。
【0013】
本発明の繊維を製造する際に推奨される手法は、紡糸での延伸倍率(吐出線速度と紡糸速度の比)を低くすることである。すなわち、吐出が不安定で無い限り、可能な限り直径の小さな口金を利用し出てきた吐出溶液を紡糸が不安定で無い限りできるだけ低速で巻き取ることが重要である。この時、紡糸の不安定性を改善する為に出てきた吐出溶液を強制的に冷却しても良い。冷却媒体は、不活性ガスや溶媒と非相溶の液体が推奨される。不活性ガスは特に何を用いても構わないが、経済的な観点から窒素が推奨される。また、同様の理由から非相溶性の溶媒は、水が推奨される。非常に低延伸倍率で紡糸されることにより、詳細は定かではないものの、紡糸後の延伸プロセスで効率良く高配向するような構造が繊維内に形成されると推測している。
【0014】
この様にして得られた繊維は、再度加熱されて残留溶剤を蒸発せしめながら数倍に延伸を行い、場合によって多段階延伸を行っても良い。高配向の糸を得るという観点から少なくとも2段延伸することが好ましく、3段延伸することがより好ましい。紡糸で繊維内に形成された構造は、延伸過程で効率良く繊維の軸方向に配向する。このようにして、前述の極めて優れた特性を有する新規な繊維を得る事ができる。
【0015】
本発明による有機高分子繊維は、その伸びきり鎖構造により、繊維軸方向には0.5W/cmK以上の高熱伝導性を有し、一方、その垂直方向には、その配向性により繊維方向の1/20以下の低熱伝導性を示す。また電子供与体を有しないため伝導電子は固体内に存在せず電気絶縁性を有する。
繊維軸方向の熱伝導性は、好ましくは0.6W/cmK以上、より好ましくは0.7W/cmK以上、さらに好ましくは0.8W/cmK以上である。また、繊維軸方向の垂直方向は、繊維軸方向の1/30以下の低熱伝導性が好ましい。
【0016】
さらに、本発明による有機高分子繊維は、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上であり、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である。200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率は、好ましくは11mm2/sec以上、さらに好ましくは12mm2/sec以上である。
【0017】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。本発明で用いた実験方法を以下に示す。
【0018】
(実験方法)
・熱伝導率及び熱拡散率の測定:
藤代他,低温工学,28巻,533頁(1993)に記載されている方法に準じて、熱伝導率は定常熱流法により、熱拡散率は非定常熱流法により測定した。
・結晶化度:
角戸正夫、笠井暢民著、高分子X線回折(丸善), 265頁(1968)等に記述されている方法に準じて、X線回折像における非晶によるハロー強度と結晶によるピーク強度から求めた。
・結晶配向角:
角戸正夫、笠井暢民著、高分子X線回折(丸善), 189頁(1968)に記載の方法に準じて、X線回折像におけるデバイ環の円周に沿った強度分布より求めた。
【0019】
(実施例1)
ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)溶液より、トータル繊維の繊度が530dtex、繊維の結晶化度が97%、結晶配向角はc軸が0.98degのPBO繊維(A)を得た。この繊維の評価結果を表1に示した。
【0020】
(実施例2)
アラミド溶液より実施例1と同様にアラミド繊維(B)を得た。得られた繊維の結晶化度は97%、結晶配向角はc軸が1.0degであった。この繊維の評価結果を表1に示した。
【0021】
(比較例1)
高強度ポリエチレン繊維として、市販のダイニーマSK−60(東洋紡績社製)を評価した。評価結果を表1に示した。
【0022】
(比較例2)
高強度PBO繊維として、市販のザイロン HM(東洋紡績社製)を評価した。評価結果を表1に示した。
【0023】
(比較例3)
高強度アラミド繊維として、市販のケブラー49(東レデュポン社製)を評価した。評価結果を表1に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例に示したPBO繊維(A)およびアラミド繊維(B)は、繊維軸方向に0.5W/cmK以上の高い熱伝導率と熱拡散率を示し、かつ繊維軸方向は、垂直方向に対し20倍以上の高い異方性を示した。
【0026】
【発明の効果】
本発明の繊維は、耐熱性高分子の分子量を上げることにより分子鎖長を上げ、かつ結晶化度を上げ、さらには結晶欠陥の比率を引き下げ、伸びきり鎖結晶部分が増大した耐熱性有機高分子繊維であるため、分子鎖の熱伝達が効率的に進行するので、繊維軸方向に高い熱伝導率を示す繊維である。かかる繊維は、電気絶縁性でありながら熱伝導性に優れるため、熱エネルギー伝達装置や超電導コイル用巻枠、スぺーサー、またパソコン用放熱材料用など、熱伝達や放熱が必要な部分に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高熱伝導性でかつ耐熱性の有機繊維に関する。さらに詳しくは、熱エネルギー伝達装置や超電導コイル用巻枠、スぺーサー、またパソコン用放熱材料用など、熱伝達や放熱が必要な部分に使用される、電気絶縁性でありながら熱伝導性に優れた伝熱部材用に好適な耐熱性の有機繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱の伝達や放熱には金属が用いられている。しかし金属は導電性があるため、たとえば超電導コイル用ボビン材料やコイル周辺材料としては不都合がある。この様な用途では、熱的には不導体であっても電気絶縁材料を使用するしか方法はなく、窒化アルミ等の高熱伝導セラミックスが使用されてきた。
【0003】
また金属は、伝熱性が等方的であるので一定方向に熱を伝達する必要がある場合に熱が漏れてしまう可能性があるとともに、風雨にさらされる場所で使用した場合、錆による破壊、変性が問題となる。
【0004】
パソコンなどの電子機器の放熱材料にはカーボン繊維が用いられている。しかしカーボン繊維には電気電導性があり、これが問題となる部品もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来技術においては、金属は電気絶縁性が要求される用途には使えない、セラミックスは取扱性が悪くわずかな衝撃で破損してしまう、カーボン繊維は電導性を有するのでわずかでも導電性が問題となるところでは使用できない、また金属やセラミックスは等方的熱伝導性を有し、熱移動に方向性をもたせなければならない場合に熱の伝達ロスが生じるなど、解決すべき課題がある。
一方、有機高分子性高熱伝導繊維としては高強度ポリエチレン繊維などが挙げられるが、耐熱性が不足するものが多い。耐熱性高熱伝導繊維としてはたとえば高強度ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)ザイロンHMなどが挙げられる。しかしザイロンの場合、200Kでの熱伝導率は0.46W/cmKであり、目標とする熱伝導率に対しては不足している。
【0006】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、高い熱伝導性を有しながら、高い電気絶縁性を有し、取り扱い性に優れ、さらに特定方向のみに高い熱伝導性を有する伝熱部材用に好適な有機高分子繊維を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)200Kにおける繊維軸方向の熱伝導率が、少なくとも0.5W/cmK以上で、繊維軸に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上で、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である有機繊維であり、かつ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高熱伝導性耐熱有機繊維である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における高熱伝導性耐熱有機繊維は、耐熱性高分子の分子量を上げることにより分子鎖長を上げ、さらに結晶化度を上げ、さらには結晶欠陥の比率を引き下げ、伸びきり鎖結晶部分を増大させることによって得られる有機高分子繊維である。
【0009】
本発明における有機高分子繊維は、分子鎖の配列状態を特定の状態となるように繊維化することによって高い熱伝導性を発現するものである。本発明に用いられる極限粘度[η]が5以上の耐熱性の有機高分子としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリベンズアミド、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)などのポリベンズアゾール等が挙げられるが、PBOがもっとも望ましい。
【0010】
本発明の高熱伝導性有機高分子繊維は、結晶化度90%以上で、伸びきり結晶部分が従来の高配向繊維より増大させたものである。結晶化度は、95%以上が好ましい。また、結晶の配向角は、1.30度以下であり、0.98度以下が好ましい。
【0011】
本発明の繊維を製造する方法は、慎重でかつ新規な製造法を採用すること好ましく、以下に開示する方法を推奨するがもちろんそれに限定されるものではない。即ち、当該繊維の製造に当たっては、その原料となる高分子の極限粘度[η]が、5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。極限粘度が5未満であると、溶液状態としたときに高分子の絡み合い状態が少なく、繊維状とした後に高い延伸倍率まで延伸することが出来ず所望とする繊維の配向度の糸が得られないことがある。一方、上記の如く極限粘度に上限は無いが、あまりに極限粘度が高くなると、絡み合い点間の分子量が小さくなることから、これもまた高い延伸倍率まで延伸することが出来ず所望とする高配向度の糸を得ることが出来ないことがある。このような観点から原料となるポリマーの極限粘度は30以下が好ましい。
【0012】
従来繊維の製造プロセスのおいては、紡糸速度を早くすることにより一般的に高配向の繊維を得ることが知られている。本発明者らはこの常識に反して、紡糸の段階でむしろ積極的に繊維を配向させないような紡糸条件、つまり低紡糸速度で糸を巻き取った繊維から最終的には高配向となる繊維の製造プロセスを確立し、高配向でかつ高熱伝導性有機高分子繊維を得る方法を見出したのである。
即ち、前述のように、本発明は、繊維を低配向の状態で巻き取った後、該繊維を極めて高倍率で延伸することにより極めて高い分子鎖の配列状態を繊維の構造内に作りせしめ高い熱伝導性を発現せしめるものである。
【0013】
本発明の繊維を製造する際に推奨される手法は、紡糸での延伸倍率(吐出線速度と紡糸速度の比)を低くすることである。すなわち、吐出が不安定で無い限り、可能な限り直径の小さな口金を利用し出てきた吐出溶液を紡糸が不安定で無い限りできるだけ低速で巻き取ることが重要である。この時、紡糸の不安定性を改善する為に出てきた吐出溶液を強制的に冷却しても良い。冷却媒体は、不活性ガスや溶媒と非相溶の液体が推奨される。不活性ガスは特に何を用いても構わないが、経済的な観点から窒素が推奨される。また、同様の理由から非相溶性の溶媒は、水が推奨される。非常に低延伸倍率で紡糸されることにより、詳細は定かではないものの、紡糸後の延伸プロセスで効率良く高配向するような構造が繊維内に形成されると推測している。
【0014】
この様にして得られた繊維は、再度加熱されて残留溶剤を蒸発せしめながら数倍に延伸を行い、場合によって多段階延伸を行っても良い。高配向の糸を得るという観点から少なくとも2段延伸することが好ましく、3段延伸することがより好ましい。紡糸で繊維内に形成された構造は、延伸過程で効率良く繊維の軸方向に配向する。このようにして、前述の極めて優れた特性を有する新規な繊維を得る事ができる。
【0015】
本発明による有機高分子繊維は、その伸びきり鎖構造により、繊維軸方向には0.5W/cmK以上の高熱伝導性を有し、一方、その垂直方向には、その配向性により繊維方向の1/20以下の低熱伝導性を示す。また電子供与体を有しないため伝導電子は固体内に存在せず電気絶縁性を有する。
繊維軸方向の熱伝導性は、好ましくは0.6W/cmK以上、より好ましくは0.7W/cmK以上、さらに好ましくは0.8W/cmK以上である。また、繊維軸方向の垂直方向は、繊維軸方向の1/30以下の低熱伝導性が好ましい。
【0016】
さらに、本発明による有機高分子繊維は、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上であり、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である。200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率は、好ましくは11mm2/sec以上、さらに好ましくは12mm2/sec以上である。
【0017】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。本発明で用いた実験方法を以下に示す。
【0018】
(実験方法)
・熱伝導率及び熱拡散率の測定:
藤代他,低温工学,28巻,533頁(1993)に記載されている方法に準じて、熱伝導率は定常熱流法により、熱拡散率は非定常熱流法により測定した。
・結晶化度:
角戸正夫、笠井暢民著、高分子X線回折(丸善), 265頁(1968)等に記述されている方法に準じて、X線回折像における非晶によるハロー強度と結晶によるピーク強度から求めた。
・結晶配向角:
角戸正夫、笠井暢民著、高分子X線回折(丸善), 189頁(1968)に記載の方法に準じて、X線回折像におけるデバイ環の円周に沿った強度分布より求めた。
【0019】
(実施例1)
ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)溶液より、トータル繊維の繊度が530dtex、繊維の結晶化度が97%、結晶配向角はc軸が0.98degのPBO繊維(A)を得た。この繊維の評価結果を表1に示した。
【0020】
(実施例2)
アラミド溶液より実施例1と同様にアラミド繊維(B)を得た。得られた繊維の結晶化度は97%、結晶配向角はc軸が1.0degであった。この繊維の評価結果を表1に示した。
【0021】
(比較例1)
高強度ポリエチレン繊維として、市販のダイニーマSK−60(東洋紡績社製)を評価した。評価結果を表1に示した。
【0022】
(比較例2)
高強度PBO繊維として、市販のザイロン HM(東洋紡績社製)を評価した。評価結果を表1に示した。
【0023】
(比較例3)
高強度アラミド繊維として、市販のケブラー49(東レデュポン社製)を評価した。評価結果を表1に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例に示したPBO繊維(A)およびアラミド繊維(B)は、繊維軸方向に0.5W/cmK以上の高い熱伝導率と熱拡散率を示し、かつ繊維軸方向は、垂直方向に対し20倍以上の高い異方性を示した。
【0026】
【発明の効果】
本発明の繊維は、耐熱性高分子の分子量を上げることにより分子鎖長を上げ、かつ結晶化度を上げ、さらには結晶欠陥の比率を引き下げ、伸びきり鎖結晶部分が増大した耐熱性有機高分子繊維であるため、分子鎖の熱伝達が効率的に進行するので、繊維軸方向に高い熱伝導率を示す繊維である。かかる繊維は、電気絶縁性でありながら熱伝導性に優れるため、熱エネルギー伝達装置や超電導コイル用巻枠、スぺーサー、またパソコン用放熱材料用など、熱伝達や放熱が必要な部分に使用することができる。
Claims (1)
- 200Kにおける繊維軸方向の熱伝導率が、少なくとも0.5W/cmK以上で、繊維軸に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、200Kにおける繊維軸方向の熱拡散率が、少なくとも10mm2/sec以上で、繊維軸に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上である有機繊維であり、かつ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高熱伝導性耐熱有機繊維。
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---|---|---|---|
JP2003080242A JP2004285522A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 高熱伝導性耐熱有機繊維 |
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JP2003080242A JP2004285522A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 高熱伝導性耐熱有機繊維 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004285522A true JP2004285522A (ja) | 2004-10-14 |
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ID=33294153
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JP2003080242A Withdrawn JP2004285522A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 高熱伝導性耐熱有機繊維 |
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---|---|
JP (1) | JP2004285522A (ja) |
Cited By (4)
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---|---|---|---|---|
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-
2003
- 2003-03-24 JP JP2003080242A patent/JP2004285522A/ja not_active Withdrawn
Cited By (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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