JP2004225170A - 高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性高分子の分子鎖の熱伝達を効率的に発生するよう結晶化度を上げ、伸びきり結晶比率を上げることによって熱エネルギ−伝達装置や超電導コイル用巻枠、スペ−サー、パソコン用放熱材料、等に有用な繊維方向のみに高い熱伝導率を示す繊維を提供すること。
【解決手段】200Kにおける繊維方向の熱伝導率が少なくとも0.5W/cm・K以上で、繊維に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、且つ熱分解温度または融点が250℃以上である高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
【解決手段】200Kにおける繊維方向の熱伝導率が少なくとも0.5W/cm・K以上で、繊維に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、且つ熱分解温度または融点が250℃以上である高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,たとえば熱エネルギー伝達装置や超電導コイル用巻枠,スぺーサー,またパソコン用放熱材料用の伝熱部材用繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,熱の伝達には金属が用いられた.しかし金属は導電性があり,たとえば超電導コイル用ボビン材料等コイル周辺材料としては不都合がある.この様な場合,熱的には不導体であっても電気絶縁材料を使用するしか方法はない。または窒化アルミ等の高熱電導セラミックスを使用されてきた。
【0003】
また金属は伝熱性が当方的であるので一定方向に熱を伝達する必要がある場合に熱が漏れてしまう可能性がある。また風雨にさらされる場所で使用した場合,錆による破壊,変性が問題となる。
【0004】
パソコン用放熱材料など電子機器の放熱にはカーボン繊維が用いられている.しかしカーボン繊維には電気電導性があり,これが問題となる部品もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように熱伝達が必要とされるところには金属,窒化アルミ等の特殊なセラミックス,又はカーボン繊維等が用いられてきた。しかし上述のように金属は電気絶縁性が要求される用途には使えない。またセラミックスは取扱性が悪く,わずかな衝撃で破損してしまう.カーボン繊維は電導性をもっており,わずかでも導電性が問題となるところでは使用できない.また金属やセラミックスは等方的熱伝導性を有し,熱移動にある方向性をもたせなければならない場合に放熱性も合せ持つため,熱の伝達ロスが生じる。
【0006】
本発明は上記従来技術を考慮してなされたもので,電気絶縁性を有し,取り扱い性に優れ,さらにある特定方向のみに高い熱伝導性を有する有機高分子繊維を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は下記の構成からなる。
1.200Kにおける繊維方向の熱伝導率が少なくとも0.5W/cm・K以上で、繊維に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、且つ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
2.200Kにおける繊維方向の熱拡散率が少なくとも10mm2/sec以上で、繊維に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上であることを特徴とする上記第1記載の高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
【0008】
上記課題を解決する具体的手段としては高分子の分子鎖方向の格子振動による熱の伝搬による寄与率の向上が考えられる。例えばポリエチレンの結晶は分子鎖軸方向に高い熱伝導性をもつことが知られている。詳しくはC. L. ChoyらによるJ. Polym. Sci., Polym Phys. Ed., 23, 1495 (1985) 等に記述されている。これらの記述によると高分子結晶の熱伝導率は比熱と音速と熱拡散率により熱拡散率は格子振動の平均自由行程に比例することが知られている。格子振動の平均自由行程は結晶が大きいほど長く,また格子欠陥の存在すると短くなる。即ち完全伸びきり鎖構造の結晶が高く配向すると熱伝導率は高くなることを示唆する。また,結晶/非晶の混合状態において結晶配向角が0に近く,またそのモルフォロジーを直列/並列複合体モデルで近似した場合に連続体結晶相の比率が高い程,熱伝導率が高くなることが予測される。実際,ポリエチレン分子鎖が伸びきり構造を成す高強度ポリエチレン繊維ダイニーマSK−60は繊維方向に高い熱伝導性を示すことが知られている。また高強度PBO繊維も同等の熱伝導率を示すことが知られている。これらは藤代らによるJpn, J. Appl. Phys. に詳細に記述されている。これら有機高分子繊維は高い熱伝導率を示し,上記課題を解決するものの,先に述べた金属,特殊セラミックス程の熱伝導率は有しない。また有機繊維は一般に熱に弱い。たとえば高強度ポリエチレン繊維は熱伝導性、比強度、比弾性率、軽量性などに優れた特性を示すが、融点が145℃付近であり、耐熱用途には使えない。一方、伝熱用途は極低温あるいは高温領域での使用が考えられ、後者については耐熱性が要求される。そこで我々はさらに耐熱性高分子の分子量を上げることにより分子鎖長を上げ,結晶化度を上げ,結晶欠陥の比率を引き下げ,伸びきり鎖結晶部分を増大させることによって本発明の請求項に示す高熱伝導性有機高分子繊維を得た。
【0009】
本発明は有機高分子の分子鎖の配列状態を特定の状態となるように繊維を作製することによって高い熱伝導性を発現するものである.本発明に用いられる極限粘度[η]が5以上のポリベンゾビスオキサゾール(PBO)、アラミド等が挙げられるが、PBOがもっとも望ましい。
【0010】
本発明の高熱伝導有機高分子繊維は結晶化度90%以上、伸びきり結晶部分が従来の高配向繊維より増大する必要があり、鋭意検討の結果、以下の製法により得られたものである。
【0011】
本発明に係る繊維を製造する方法は、慎重でかつ新規な製造法を採用する必要があり以下に開示する方法を推奨するがもちろんそれに限定されるものではない。即ち、当該繊維の製造に当たっては、その原料となる高分子量のポリエチレンの極限粘度[η]は5以上であることが肝要であり、好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。極限粘度が5未満であると、ポリエチレンを溶液状態としたときに高分子の絡み合い状態が少なく、繊維状とした後に高い延伸倍率まで延伸することが出来ずに本来所望とする繊維の配高度の糸が得られない。一方、上記の如く極限粘度に上限は無いが、あまりに極限粘度が高くなると、絡み合い点間の分子量が小さくなることから、これもまた高い延伸倍率まで延伸することが出来ずに本来所望とする高配向度の糸を得ることが出来ない。このような観点から原料となるポリマーの極限粘度は30以下が好ましい。
【0012】
従来繊維の製造プロセスのおいては、紡糸速度を早くすることにより一般的に高配向の繊維を得ることが知られている。本発明者らはこの常識に反して、紡糸の段階でむしろ積極的に繊維を配高させないような紡糸条件、つまり低紡糸速度で糸を巻き取った繊維から最終的には高配高となる繊維の製造プロセスを確立し、高配高且つ高熱伝導性有機高分子繊維を得る方法を見出し本発明に到達した。
【0013】
即ち前述のように、繊維を低配高の状態で巻き取った後、該繊維を極めて高倍率で延伸することにより極めて高い分子鎖の配列状態を繊維の構造内に作りせしめ高い熱伝導性を発現せしめるものである。
【0014】
本発明にかかる繊維を製造する際に推奨される手法は、紡糸での延伸倍率(吐出線速度と紡糸速度の比)を低くすることである。すなわち、吐出が不安定で無い限り、可能な限り直径の小さな口金を利用し出てきた吐出溶液を紡糸が不安定で無い限りできるだけ低速で巻き取ることが重要である。この時、紡糸の不安定性を改善する為に出てきた吐出溶液を強制的に冷却しても良い。冷却媒体は、不活性ガスや溶媒と非相溶の液体が推奨される。不活性ガスは特に何を用いても構わないが、経済的な観点から窒素が推奨される。また、同様の理由から非相溶の溶媒は、水が推奨される。非常に低延伸倍率で紡糸されることにより、詳細はさでかではないものの、紡糸後の延伸プロセスで効率良く高配向するような構造が繊維内に形成されるものであると推測している。
【0015】
この様にして得られた繊維は、再度加熱されて残留溶剤を蒸発せしめながら数倍に延伸を行い、場合によって多段階延伸を行っても良い。高配向の糸を得るという観点から少なくとも2段延伸することが好ましい。さらに好ましくは、3段延伸することが好ましい。紡糸で繊維内に形成された構造は、延伸過程で効率良く繊維の軸方向に配向する。このようにして、前述の極めて優れた特性を有する新規な繊維を得る事ができる。
【0016】
本発明による有機高分子繊維はその伸びきり鎖構造により繊維方向には0.5W/cm・K以上の高熱伝導性を有し、一方、その垂直方向には、その配向性により繊維方向の1/20以下の低熱伝導性を示す。また電子供与体を有しないため伝導電子は固体内に存在せず電気絶縁性を有する。
【0017】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本発明の技術範囲に包含される。
【0018】
本発明で用いた実験方法を以下に示す。
【0019】
(実験方法)
熱伝導率の測定はヒーターに2点間の温度差ΔTが1Kとなるように一定の電流を流し,k=QL/(ΔTS)を用いて定常熱流法により測定した。ここでQは流す熱量、Lは温度計間の距離、Sは試料の断面積である。本実験方法を用いて測定した実施例を以下に示す。
【0020】
(実施例1)
PBO溶液より以下の繊維を紡糸して得た。トータルの繊維の繊度は530dTex(収束性を付与する為の油剤を含む)であった。得られた繊維の結晶化度は97%、配向角はc軸が3degであった。
【0021】
(実施例2)
アラミドより実施例1と同様に繊維を作成した。得られた繊維の結晶化度は97%、配向角はc軸が2.8degであった。
【0022】
(比較例)
高強度ポリエチレン繊維SK−60(東洋紡製)(比較例1)、高強度PBO繊維Zylon HM(東洋紡製) (比較例2)、及び高強度アラミド繊維Kevlar49(東レデュポン製) (比較例3)についても実施例と同様に評価した。
【0023】
(評価結果)
実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0024】
(熱伝導率)
実施例に示したPBOおよびアラミド繊維は繊維方向に0.5W/cmK以上の高い熱伝導率と繊維軸に垂直方向に対し20倍以上の高い異方性を示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
耐熱性高分子の分子鎖の熱伝達を効率的に発生するよう結晶化度を上げ、伸びきり結晶比率を上げることによって繊維方向のみに高い熱伝導率を示す繊維を提供することが可能となった。
【発明の属する技術分野】
本発明は,たとえば熱エネルギー伝達装置や超電導コイル用巻枠,スぺーサー,またパソコン用放熱材料用の伝熱部材用繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,熱の伝達には金属が用いられた.しかし金属は導電性があり,たとえば超電導コイル用ボビン材料等コイル周辺材料としては不都合がある.この様な場合,熱的には不導体であっても電気絶縁材料を使用するしか方法はない。または窒化アルミ等の高熱電導セラミックスを使用されてきた。
【0003】
また金属は伝熱性が当方的であるので一定方向に熱を伝達する必要がある場合に熱が漏れてしまう可能性がある。また風雨にさらされる場所で使用した場合,錆による破壊,変性が問題となる。
【0004】
パソコン用放熱材料など電子機器の放熱にはカーボン繊維が用いられている.しかしカーボン繊維には電気電導性があり,これが問題となる部品もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように熱伝達が必要とされるところには金属,窒化アルミ等の特殊なセラミックス,又はカーボン繊維等が用いられてきた。しかし上述のように金属は電気絶縁性が要求される用途には使えない。またセラミックスは取扱性が悪く,わずかな衝撃で破損してしまう.カーボン繊維は電導性をもっており,わずかでも導電性が問題となるところでは使用できない.また金属やセラミックスは等方的熱伝導性を有し,熱移動にある方向性をもたせなければならない場合に放熱性も合せ持つため,熱の伝達ロスが生じる。
【0006】
本発明は上記従来技術を考慮してなされたもので,電気絶縁性を有し,取り扱い性に優れ,さらにある特定方向のみに高い熱伝導性を有する有機高分子繊維を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は下記の構成からなる。
1.200Kにおける繊維方向の熱伝導率が少なくとも0.5W/cm・K以上で、繊維に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、且つ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
2.200Kにおける繊維方向の熱拡散率が少なくとも10mm2/sec以上で、繊維に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上であることを特徴とする上記第1記載の高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
【0008】
上記課題を解決する具体的手段としては高分子の分子鎖方向の格子振動による熱の伝搬による寄与率の向上が考えられる。例えばポリエチレンの結晶は分子鎖軸方向に高い熱伝導性をもつことが知られている。詳しくはC. L. ChoyらによるJ. Polym. Sci., Polym Phys. Ed., 23, 1495 (1985) 等に記述されている。これらの記述によると高分子結晶の熱伝導率は比熱と音速と熱拡散率により熱拡散率は格子振動の平均自由行程に比例することが知られている。格子振動の平均自由行程は結晶が大きいほど長く,また格子欠陥の存在すると短くなる。即ち完全伸びきり鎖構造の結晶が高く配向すると熱伝導率は高くなることを示唆する。また,結晶/非晶の混合状態において結晶配向角が0に近く,またそのモルフォロジーを直列/並列複合体モデルで近似した場合に連続体結晶相の比率が高い程,熱伝導率が高くなることが予測される。実際,ポリエチレン分子鎖が伸びきり構造を成す高強度ポリエチレン繊維ダイニーマSK−60は繊維方向に高い熱伝導性を示すことが知られている。また高強度PBO繊維も同等の熱伝導率を示すことが知られている。これらは藤代らによるJpn, J. Appl. Phys. に詳細に記述されている。これら有機高分子繊維は高い熱伝導率を示し,上記課題を解決するものの,先に述べた金属,特殊セラミックス程の熱伝導率は有しない。また有機繊維は一般に熱に弱い。たとえば高強度ポリエチレン繊維は熱伝導性、比強度、比弾性率、軽量性などに優れた特性を示すが、融点が145℃付近であり、耐熱用途には使えない。一方、伝熱用途は極低温あるいは高温領域での使用が考えられ、後者については耐熱性が要求される。そこで我々はさらに耐熱性高分子の分子量を上げることにより分子鎖長を上げ,結晶化度を上げ,結晶欠陥の比率を引き下げ,伸びきり鎖結晶部分を増大させることによって本発明の請求項に示す高熱伝導性有機高分子繊維を得た。
【0009】
本発明は有機高分子の分子鎖の配列状態を特定の状態となるように繊維を作製することによって高い熱伝導性を発現するものである.本発明に用いられる極限粘度[η]が5以上のポリベンゾビスオキサゾール(PBO)、アラミド等が挙げられるが、PBOがもっとも望ましい。
【0010】
本発明の高熱伝導有機高分子繊維は結晶化度90%以上、伸びきり結晶部分が従来の高配向繊維より増大する必要があり、鋭意検討の結果、以下の製法により得られたものである。
【0011】
本発明に係る繊維を製造する方法は、慎重でかつ新規な製造法を採用する必要があり以下に開示する方法を推奨するがもちろんそれに限定されるものではない。即ち、当該繊維の製造に当たっては、その原料となる高分子量のポリエチレンの極限粘度[η]は5以上であることが肝要であり、好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。極限粘度が5未満であると、ポリエチレンを溶液状態としたときに高分子の絡み合い状態が少なく、繊維状とした後に高い延伸倍率まで延伸することが出来ずに本来所望とする繊維の配高度の糸が得られない。一方、上記の如く極限粘度に上限は無いが、あまりに極限粘度が高くなると、絡み合い点間の分子量が小さくなることから、これもまた高い延伸倍率まで延伸することが出来ずに本来所望とする高配向度の糸を得ることが出来ない。このような観点から原料となるポリマーの極限粘度は30以下が好ましい。
【0012】
従来繊維の製造プロセスのおいては、紡糸速度を早くすることにより一般的に高配向の繊維を得ることが知られている。本発明者らはこの常識に反して、紡糸の段階でむしろ積極的に繊維を配高させないような紡糸条件、つまり低紡糸速度で糸を巻き取った繊維から最終的には高配高となる繊維の製造プロセスを確立し、高配高且つ高熱伝導性有機高分子繊維を得る方法を見出し本発明に到達した。
【0013】
即ち前述のように、繊維を低配高の状態で巻き取った後、該繊維を極めて高倍率で延伸することにより極めて高い分子鎖の配列状態を繊維の構造内に作りせしめ高い熱伝導性を発現せしめるものである。
【0014】
本発明にかかる繊維を製造する際に推奨される手法は、紡糸での延伸倍率(吐出線速度と紡糸速度の比)を低くすることである。すなわち、吐出が不安定で無い限り、可能な限り直径の小さな口金を利用し出てきた吐出溶液を紡糸が不安定で無い限りできるだけ低速で巻き取ることが重要である。この時、紡糸の不安定性を改善する為に出てきた吐出溶液を強制的に冷却しても良い。冷却媒体は、不活性ガスや溶媒と非相溶の液体が推奨される。不活性ガスは特に何を用いても構わないが、経済的な観点から窒素が推奨される。また、同様の理由から非相溶の溶媒は、水が推奨される。非常に低延伸倍率で紡糸されることにより、詳細はさでかではないものの、紡糸後の延伸プロセスで効率良く高配向するような構造が繊維内に形成されるものであると推測している。
【0015】
この様にして得られた繊維は、再度加熱されて残留溶剤を蒸発せしめながら数倍に延伸を行い、場合によって多段階延伸を行っても良い。高配向の糸を得るという観点から少なくとも2段延伸することが好ましい。さらに好ましくは、3段延伸することが好ましい。紡糸で繊維内に形成された構造は、延伸過程で効率良く繊維の軸方向に配向する。このようにして、前述の極めて優れた特性を有する新規な繊維を得る事ができる。
【0016】
本発明による有機高分子繊維はその伸びきり鎖構造により繊維方向には0.5W/cm・K以上の高熱伝導性を有し、一方、その垂直方向には、その配向性により繊維方向の1/20以下の低熱伝導性を示す。また電子供与体を有しないため伝導電子は固体内に存在せず電気絶縁性を有する。
【0017】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本発明の技術範囲に包含される。
【0018】
本発明で用いた実験方法を以下に示す。
【0019】
(実験方法)
熱伝導率の測定はヒーターに2点間の温度差ΔTが1Kとなるように一定の電流を流し,k=QL/(ΔTS)を用いて定常熱流法により測定した。ここでQは流す熱量、Lは温度計間の距離、Sは試料の断面積である。本実験方法を用いて測定した実施例を以下に示す。
【0020】
(実施例1)
PBO溶液より以下の繊維を紡糸して得た。トータルの繊維の繊度は530dTex(収束性を付与する為の油剤を含む)であった。得られた繊維の結晶化度は97%、配向角はc軸が3degであった。
【0021】
(実施例2)
アラミドより実施例1と同様に繊維を作成した。得られた繊維の結晶化度は97%、配向角はc軸が2.8degであった。
【0022】
(比較例)
高強度ポリエチレン繊維SK−60(東洋紡製)(比較例1)、高強度PBO繊維Zylon HM(東洋紡製) (比較例2)、及び高強度アラミド繊維Kevlar49(東レデュポン製) (比較例3)についても実施例と同様に評価した。
【0023】
(評価結果)
実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0024】
(熱伝導率)
実施例に示したPBOおよびアラミド繊維は繊維方向に0.5W/cmK以上の高い熱伝導率と繊維軸に垂直方向に対し20倍以上の高い異方性を示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
耐熱性高分子の分子鎖の熱伝達を効率的に発生するよう結晶化度を上げ、伸びきり結晶比率を上げることによって繊維方向のみに高い熱伝導率を示す繊維を提供することが可能となった。
Claims (2)
- 200Kにおける繊維方向の熱伝導率が少なくとも0.5W/cm・K以上で、繊維に垂直方向の熱伝導率の少なくとも20倍以上であり、且つ熱分解温度または融点が250℃以上であることを特徴とする高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
- 200Kにおける繊維方向の熱拡散率が少なくとも10mm2/sec以上で、繊維に垂直方向の熱拡散率の少なくとも20倍以上であることを特徴とする請求項1記載の高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003010880A JP2004225170A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003010880A JP2004225170A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004225170A true JP2004225170A (ja) | 2004-08-12 |
Family
ID=32899958
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003010880A Withdrawn JP2004225170A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 高機能性高耐熱熱伝導性有機繊維 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004225170A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019168037A1 (ja) * | 2018-03-01 | 2019-09-06 | 日立化成株式会社 | 異方熱伝導性樹脂ファイバ、異方熱伝導性樹脂部材及びそれらの製造方法 |
WO2019168038A1 (ja) * | 2018-03-01 | 2019-09-06 | 日立化成株式会社 | 異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法 |
WO2020158826A1 (ja) * | 2019-01-30 | 2020-08-06 | 日立化成株式会社 | 異方熱伝導性樹脂部材及び熱伝送基板 |
-
2003
- 2003-01-20 JP JP2003010880A patent/JP2004225170A/ja not_active Withdrawn
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019168037A1 (ja) * | 2018-03-01 | 2019-09-06 | 日立化成株式会社 | 異方熱伝導性樹脂ファイバ、異方熱伝導性樹脂部材及びそれらの製造方法 |
WO2019168038A1 (ja) * | 2018-03-01 | 2019-09-06 | 日立化成株式会社 | 異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法 |
JPWO2019168037A1 (ja) * | 2018-03-01 | 2021-02-12 | 昭和電工マテリアルズ株式会社 | 異方熱伝導性樹脂ファイバ、異方熱伝導性樹脂部材及びそれらの製造方法 |
JPWO2019168038A1 (ja) * | 2018-03-01 | 2021-02-12 | 昭和電工マテリアルズ株式会社 | 異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法 |
JP7377497B2 (ja) | 2018-03-01 | 2023-11-10 | 株式会社レゾナック | 異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法 |
US11814568B2 (en) | 2018-03-01 | 2023-11-14 | Resonac Corporation | Anisotropic thermal conductive resin member and manufacturing method thereof |
JP7388348B2 (ja) | 2018-03-01 | 2023-11-29 | 株式会社レゾナック | 異方熱伝導性樹脂ファイバ、異方熱伝導性樹脂部材及びそれらの製造方法 |
WO2020158826A1 (ja) * | 2019-01-30 | 2020-08-06 | 日立化成株式会社 | 異方熱伝導性樹脂部材及び熱伝送基板 |
JP7495062B2 (ja) | 2019-01-30 | 2024-06-04 | 株式会社レゾナック | 異方熱伝導性樹脂部材及び熱伝送基板 |
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