JP2004285166A - 抗酸化剤、安定化された金コロイド溶液及びその調製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金コロイドを有効成分として含有する抗酸化剤、及び保存安定性に優れ、かつ種々の用途に適用可能な金コロイド溶液を提供する。
【解決手段】金コロイドを有効成分として含むことを特徴とする抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)、及びキトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質を含むことを特徴とする金コロイド溶液とその調製方法を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】金コロイドを有効成分として含むことを特徴とする抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)、及びキトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質を含むことを特徴とする金コロイド溶液とその調製方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗酸化剤、安定化された金コロイド溶液及びその調製方法に関し、特に、金コロイドを有効成分として含有する抗酸化剤、所定の安定化物質により安定化された種々の用途に適用可能な金コロイド溶液及びその調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体内で生じた活性酸素(O2 −、H2O2、OHラジカル、化学ルミネセンス)が種々の疾患、疾病の原因になっていると報告されている。例えば、動脈硬化、炎症、老化、発ガンなどとの関連性が示唆されている。
特に皮膚は直接、外界と接する組織であるため、紫外線などの外的環境因子の影響を受けやすく、これにより発生する活性酸素により、様々な疾患、例えば、活性酸素を原因とする過酸化脂質生成による、動脈硬化、発ガン、皮膚炎症などが発症し得る。また、老化にも関与し、皮膚の弾性喪失、皺や弛みといった外見的な変化を生じさせ、老化現象を助長することが知られている。
【0003】
従って、活性酸素を除去・消去することにより、過酸化脂質生成を抑制することは、種々の疾患及び皮膚(肌)の老化抑制に有効であると考えられ、これまでにも種々の抑制剤(抗酸化剤)の研究開発がなされている。
【0004】
一方、液体中に分散した金の微粒子(金コロイド)は赤紫色を呈することが知られており、従来よりガラスや陶磁器等の着色剤としての利用がなされてきた。また、最近では、その安全性の高さゆえに化粧品の着色剤としての利用にも供されてきている。
【0005】
しかし、金コロイド溶液は保存安定性が悪く、また電解質添加等により凝集・沈殿しまう傾向があるため、安定溶液の調製は難しく、これまでにも、いくつかの安定化方法が提案されてきている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特許第2834400号公報
【特許文献2】
特開平9−70527号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来において、化粧品等に添加する抗酸化剤として、各種の合成品や天然物由来のものが使用されてきているが、例えば、近年よく使われているビタミンCやビタミンEは、活性酸素消去能や安定性が十分でないといった問題点が残る。この点、従来、化粧品に添加される着色剤などとして利用されている金コロイド溶液が抗酸化剤として機能すること、特に活性酸素を消去することにより、過酸化脂質生成を抑制する効果を有することは知られていなかった。また、一方で、金コロイド溶液は保存安定性が悪く、さらに電解質の添加等により凝集・沈殿して利用不能となる等の問題があり、着色剤等の種々の用途に供するためには、その安定性を高める必要性があったが十分といえるものはなかった。
【0008】
そこで、本発明は、活性酸素消去能の高い新たな抗酸化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、抗酸化剤等の種々の用途に用いることができる安定性に優れた金コロイド溶液を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究した結果、金コロイド粒子が抗酸化剤(特に、活性酸素消去剤)としての性質を有することを見出し、さらに、金コロイド溶液の安定化に所定の安定化物質が極めて有効であることを発見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、金コロイドを有効成分として含むことを特徴とする抗酸化剤、特に活性酸素消去剤を提供する。
また、他の局面によれば、本発明は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質を含むことを特徴とする金コロイド溶液を提供する。
さらに、他の局面によれば、本発明は、金塩の溶液と所定の金コロイド安定化物質の溶液を混合後、所定の還元剤溶液を添加することを特徴とする金コロイド溶液の調製方法を提供する。
【0011】
上記の本発明によれば、効果に優れ、また安全性の高い抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)が達成できるため、これを含む抗酸化効果に優れた化粧品、医薬品、医薬部外品、食品などを提供することが可能となる。また、本発明によれば、保存安定性に優れた金コロイド溶液が達成できるため、これを利便性のよい材料として化粧品、医薬品、医薬部外品、食品などに利用することが可能となる。
さらに、本発明の抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)又は安定化された金コロイド溶液は抗酸化効果を有するのみならず、着色剤等としても機能するため、それぞれを添加する場合に比べ、添加物の数や作業工程数を減らすことができ、コスト面でも有利となる。
また、本発明においては、安定化物質の濃度依存的に金コロイドの粒径を自在に制御することができ、これに伴い、活性酸素消去能の高低も制御できる抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)又は安定化された金コロイド溶液が提供できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(抗酸化剤、活性酸素消去剤)
本発明において抗酸化剤とは、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品、飼料、塗料などに使用する品質保持のための抗酸化剤、及び生体内で活性酸素(特に、OHラジカル)の消去剤としての機能を有する抗酸化剤の双方を含む。
【0013】
本発明は、金コロイドを有効成分として含む抗酸化剤であり、特に、活性酸素消去剤として有用である。本発明において、金コロイドとは、溶液中にコロイド状態で存在する金の微粒子をいい、溶液は好ましくは水溶液であり、金微粒子は、溶液中で均一に分散していることが好ましい。抗酸化剤として有効に機能するための溶液中の金の濃度は、溶液の総量に対して、10〜0.0001質量%が好ましく、5〜0.001質量%がより好ましく、1〜0.01質量%であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の金コロイドからなる抗酸化剤は、好ましくは、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質により安定化される。安定化物質は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上であることがより好ましく、保存安定性だけでなく抗酸化能の観点からもキトサンであることが最も好ましい。安定化物質は、溶液の総量に対して、0.001〜10質量%添加することが好ましく、0.01〜5質量%添加することがより好ましく、0.05〜1質量%がさらに好ましい。
【0015】
溶液中の金微粒子の粒径は、限定されるものではないが、金コロイド安定化物質の濃度によって変化するものであり、抗酸化能や保存安定性の観点から、5〜100nmであることが好ましく、7.5〜40nmであることがより好ましく、10〜20nmであることがさらに好ましい。また、発色性の観点からは、100nm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の抗酸化剤の製造方法については、特に限定されるものではないが、還元剤を用いる還元法によることが好ましく、以下に説明する。
【0017】
まず、金塩、金コロイド安定化物質、還元剤の水溶液をそれぞれ調製する。ここで、金塩は、例えば、塩化金酸(金を王水に溶解させたものを粉状にしたもの)が好ましく用いられる。市販の金コロイド溶液を使用することもできる。金コロイド安定化物質は、上述のキトサン等の物質が用いられる。また、還元剤も特に制限されないが、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸などが用いられ、中でも水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸が好ましく、水素化ホウ素ナトリウムが最も好ましい。
【0018】
次に、金塩の水溶液及び安定化物質の水溶液を所定濃度になるように水(好ましくは、超純水)に添加し、所定時間、例えば30分間、撹拌混合する。金塩の濃度は、金の最終濃度が、10〜0.0001質量%となるように添加することが好ましく、5〜0.001質量%がより好ましく、1〜0.01質量%がさらに好ましい。また、安定化物質の濃度は、種類によっても異なるが、最終濃度が、0.001〜10質量%となるように添加することが好ましく、0.01〜5質量%添加することがより好ましく、0.05〜1質量%添加することがさらに好ましい。適宜、濃度を調節することにより、所望の粒径の金微粒子が得られる。
【0019】
撹拌混合後、ここへ還元剤の水溶液を所定濃度になるように添加し、さらに所定時間、例えば30分間、撹拌混合して、本発明の抗酸化剤を得る。
還元剤の濃度は、種類によっても異なるが、物質量比で還元剤が金の3〜7倍量、好ましくは、4〜6倍量、さらに好ましくは、4.5〜5.5倍量となるようにする。
【0020】
塩化金酸の水溶液は、強い酸性溶液であり、これに安定化物質を加えることによって保護コロイドを形成させ、さらに還元剤の作用で金イオンが安定化される。安定化された後に中和することで(還元剤が酸性の場合はアルカリで中和し、還元剤がアルカリ性の場合は酸で中和)、安全性の高い金コロイド溶液が得られる。
【0021】
本発明の抗酸化剤は、化粧料(化粧品)、医薬品、医薬部外品、食品、飼料、塗料などのあらゆる分野に適用できるが、着色剤としての機能も併有していることに鑑み、特に、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品、とりわけ、化粧品、医薬部外品に好ましく適用される。また、特に、活性酸素消去剤としての作用に優れており、中でもOHラジカル消去能に優れる。従って、例えば、本発明の抗酸化剤を含有する化粧料は、皺、シミ、ソバカス、乾燥肌、湿疹、肌荒れなどの予防・改善という美肌効果及び老化防止効果を有する。
【0022】
適用範囲は特に限定されないが、化粧料では、例えばUVケア製品、美白剤、ローション、乳液、クリーム、ファンデーション、化粧水、オイル、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、パウダー、パック剤、洗顔料、皮膚洗浄料、ハップ剤、ペースト剤、エッセンス、ゲル剤、除毛剤、脱毛剤、アフターシェーブローション、シェービングクリーム、シャンプー、リンス、養毛剤、浴用剤、石鹸、香水類などに配合して使用することができる。特に、化粧水、ローション、乳液、クリームに用いることが好ましい。また、その実施態様は、溶液、エマルジョン、軟膏、オイル、ワックス、ゾル、ゲル、パウダー、スプレーなどの各種態様で適用できる。また、医薬品においては、単独又は他の薬剤とともに種々の剤型に適用でき、例えば経口投与剤、坐剤、塗布剤、軟膏、貼付剤、点眼剤、注射液に使用することができる。医薬部外品においてもまた、薬用外用剤などにおいて種々の剤型に適用できる。さらに、食品においては、飲料類、乳製品、穀類加工品、加工食品、加工油脂、調味料、菓子類などに添加することが可能である。
【0023】
本発明の抗酸化剤の添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
また、他の抗酸化剤、例えばトコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)などの市販抗酸化剤と複数併用して使用することもできる。
【0024】
本発明の抗酸化剤の各種化粧料等に対する配合量は、化粧料等の種類、目的、使用態様などに応じて変動させることができ、特に限定されない。原則的には、有効量が存在すれば良いことになるが、例えば、化粧料組成物中10〜0.0001質量%であり、好ましくは1〜0.001質量%、0.1〜0.01質量%がより好ましい。
【0025】
(安定化された金コロイド溶液)
本発明の金コロイド溶液は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロ リドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質によ り安定化される。安定化物質は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピ ロリドンから選ばれる1種以上であることが好ましく、キトサンであることが最も好ましい。金コロイド、安定化物質の定義については、前述の通りである。本発明において安定化とは、金コロイドが2ヶ月以上、凝集、または沈殿しないことを意味する。
【0026】
かかる金コロイド溶液は、前述の抗酸化剤としてのみならず、着色剤、標識剤、増感用写真感光剤などに適用でき、様々な分野にて使用可能である。特に、化粧品等において安定な着色剤かつ抗酸化剤として使用できる点で優れる。
【0027】
本発明における金コロイド溶液は、前述の抗酸化剤の製造方法と同様の方法により調製できるが、その使用用途によって、濃度、混合比率、調製条件などを適宜、調整できる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
(金コロイド溶液の調製)
塩化金酸(和光純薬工業社製)は2.0mM、キトサン(和光純薬工業社製)は2.0質量%、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)は10mMの濃度になるようにそれぞれの水溶液を調製した。
次に、上記の塩化金酸水溶液及びキトサン水溶液を超純水に添加し、最終濃度が塩化金酸は0.2mM、キトサンはそれぞれ所定の濃度(0.0005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0質量%)となるように混合水溶液20mlを調製した。これらの混合水溶液を30分間撹拌した。
これらを、順にサンプル1〜7とした。
次に、水素化ホウ素ナトリウム濃度が1mM(金の5倍量)となるように上記の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を上記の混合水溶液に添加し、さらに30分間撹拌して金イオンを還元した。
上記の調製は、通常室温(約25℃)にて行った。
【0029】
実施例2
(金微粒子の粒径の測定)
調製した金コロイド水溶液を1日置いた後、コロジオン膜貼り付けメッシュにとりデシケーターで乾燥し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。
TEMで撮った写真で約200個の粒子の直径を測定し、その平均粒径を測定した。測定結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
(金コロイド溶液のOHラジカル消去活性の測定)
調製後1日経った金コロイド水溶液サンプル1〜7それぞれを2倍、4倍、8倍、16倍、32倍等、希釈の倍率を変えて、各種濃度に希釈した(希釈倍率はサンプルによって異なる)。
DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)(関東化学株式会社製)は5.5mM、過酸化水素水は0.2mM、DMPO(5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド)(シグマ−アルドリッチ社製)は88mMの濃度になるようにそれぞれ水溶液を調製し、過酸化水素水とDMPOは0℃に冷やしておいた。
次に、上記のDTPA水溶液(5.5mM)を溶媒に用いて、硫酸第一鉄(純正化学株式会社製)が10mMとなるように溶液を調製し、0℃に冷やしておき、測定直前に硫酸第一鉄溶液を0.1mMに希釈した。
希釈した金コロイド溶液のサンプルの1つと上述のDMPO水溶液(88mM)と希釈した硫酸第一鉄溶液(0.1mM)を100μlずつスクリュー管にとり、撹拌した。これに過酸化水素水を100μl加えて撹拌し、そこから50μl取り、先を閉じたパスツールピペットの先に入れた。
混合溶液を入れたパスツールピペットの先をESR管に入れて、溶液中のラジカルを電子スピン共鳴測定装置(ESR)(日本電子社製、商品名FA−200)で測定した。測定は過酸化水素水を加えてから60秒後に行った。
得られたESRスペクトルのピーク強度をマンガンマーカーに対する相対強度にして、計算よりOHラジカル消去活性を求めた。すなわち、スピントラッピング試薬による活性酸素の消去反応(この反応速度定数をklとする)とみなし、反応内に他の活性酸素消去剤(S)(ここでは金微粒子)が存在し、その反応速度定数をksとする。系内の活性酸素消去反応はスピントラッピング試薬とSとの競争的な反応として理解され、その反応率R(ks/kl)は次式のように表される。
R(= ks/kl)= F[DMPO]/(1−F)[S]
F/(1−F)= R・[S]/[DMPO]
ここでRは反応率、FはスピンアダクトESR信号強度減少率、「DMPO]及び「S]はスピントラッピング試薬及び活性酸素消去剤(ここでは金微粒子)の初濃度。F/(1−F)を縦軸に「S]/[DMPO]を横軸にとり、その傾きからRが評価される。既知のスピントラッピング試薬の反応速度klと実験的に求めたR値から消去剤の反応速度定数ksが算出される。
結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
調製後1日経った金微粒子の粒径はキトサンの濃度により変化し、5.6〜14.8nmの値をとった。
また、金コロイド水溶液のOHラジカル消去反応の反応速度定数はおよそ1013の値をとり、表1に示されるように粒子の粒径が大きいほど活性が高い傾向が見られた。また、塩化金酸の濃度0.2mMの場合には、キトサン濃度は0.01〜1.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましいことが分かる。さらには、キトサン濃度がおよそ5.0質量%程度までは1013以上の値をとるものと容易に推定できる。これらの値は、抗酸化効果を有するアスコルビン酸(1.0×1012)と比較すると10〜100倍程度高い値であった。
【0033】
実施例4
(金コロイドの安定性の確認)
サンプル1〜7のいずれも室温(約25℃)で半年以上その色調変化が無く、また沈殿なども生じなかったことから、安定であるといえる。
また、低温(5℃以下)及び高温(40℃以上)での安定性についても、キトサンの溶解度は温度でそれほど変化しないことから、安定性への影響は少なく、安定であるといえる。
【0034】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、金コロイドの抗酸化能を発見したことにより、安全性の高い抗酸化効果に優れた化粧品、医薬品、食品などを提供することが可能となる。これにより、本発明の金コロイドによる活性酸素消去作用の特性に基づき、活性酸素を原因とする種々の老化・疾病(例えば、動脈硬化、発癌、膜の破壊、蛋白変性、皮膚炎症、浮腫、日光性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、レントゲン皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、火傷、外傷、グリコサミノグリカンの増加、コラーゲン繊維の架橋と減少、弾性繊維の変性、シワ、シミ、弛みなど)を有効に防止できる。
【0035】
また、本発明においては、金コロイドの粒径が制御可能な保存安定性に優れた金コロイド溶液の達成により、コスト的に有利で、利便性の高い種々の用途に用いられる材料の提供が可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗酸化剤、安定化された金コロイド溶液及びその調製方法に関し、特に、金コロイドを有効成分として含有する抗酸化剤、所定の安定化物質により安定化された種々の用途に適用可能な金コロイド溶液及びその調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体内で生じた活性酸素(O2 −、H2O2、OHラジカル、化学ルミネセンス)が種々の疾患、疾病の原因になっていると報告されている。例えば、動脈硬化、炎症、老化、発ガンなどとの関連性が示唆されている。
特に皮膚は直接、外界と接する組織であるため、紫外線などの外的環境因子の影響を受けやすく、これにより発生する活性酸素により、様々な疾患、例えば、活性酸素を原因とする過酸化脂質生成による、動脈硬化、発ガン、皮膚炎症などが発症し得る。また、老化にも関与し、皮膚の弾性喪失、皺や弛みといった外見的な変化を生じさせ、老化現象を助長することが知られている。
【0003】
従って、活性酸素を除去・消去することにより、過酸化脂質生成を抑制することは、種々の疾患及び皮膚(肌)の老化抑制に有効であると考えられ、これまでにも種々の抑制剤(抗酸化剤)の研究開発がなされている。
【0004】
一方、液体中に分散した金の微粒子(金コロイド)は赤紫色を呈することが知られており、従来よりガラスや陶磁器等の着色剤としての利用がなされてきた。また、最近では、その安全性の高さゆえに化粧品の着色剤としての利用にも供されてきている。
【0005】
しかし、金コロイド溶液は保存安定性が悪く、また電解質添加等により凝集・沈殿しまう傾向があるため、安定溶液の調製は難しく、これまでにも、いくつかの安定化方法が提案されてきている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特許第2834400号公報
【特許文献2】
特開平9−70527号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来において、化粧品等に添加する抗酸化剤として、各種の合成品や天然物由来のものが使用されてきているが、例えば、近年よく使われているビタミンCやビタミンEは、活性酸素消去能や安定性が十分でないといった問題点が残る。この点、従来、化粧品に添加される着色剤などとして利用されている金コロイド溶液が抗酸化剤として機能すること、特に活性酸素を消去することにより、過酸化脂質生成を抑制する効果を有することは知られていなかった。また、一方で、金コロイド溶液は保存安定性が悪く、さらに電解質の添加等により凝集・沈殿して利用不能となる等の問題があり、着色剤等の種々の用途に供するためには、その安定性を高める必要性があったが十分といえるものはなかった。
【0008】
そこで、本発明は、活性酸素消去能の高い新たな抗酸化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、抗酸化剤等の種々の用途に用いることができる安定性に優れた金コロイド溶液を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究した結果、金コロイド粒子が抗酸化剤(特に、活性酸素消去剤)としての性質を有することを見出し、さらに、金コロイド溶液の安定化に所定の安定化物質が極めて有効であることを発見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、金コロイドを有効成分として含むことを特徴とする抗酸化剤、特に活性酸素消去剤を提供する。
また、他の局面によれば、本発明は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質を含むことを特徴とする金コロイド溶液を提供する。
さらに、他の局面によれば、本発明は、金塩の溶液と所定の金コロイド安定化物質の溶液を混合後、所定の還元剤溶液を添加することを特徴とする金コロイド溶液の調製方法を提供する。
【0011】
上記の本発明によれば、効果に優れ、また安全性の高い抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)が達成できるため、これを含む抗酸化効果に優れた化粧品、医薬品、医薬部外品、食品などを提供することが可能となる。また、本発明によれば、保存安定性に優れた金コロイド溶液が達成できるため、これを利便性のよい材料として化粧品、医薬品、医薬部外品、食品などに利用することが可能となる。
さらに、本発明の抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)又は安定化された金コロイド溶液は抗酸化効果を有するのみならず、着色剤等としても機能するため、それぞれを添加する場合に比べ、添加物の数や作業工程数を減らすことができ、コスト面でも有利となる。
また、本発明においては、安定化物質の濃度依存的に金コロイドの粒径を自在に制御することができ、これに伴い、活性酸素消去能の高低も制御できる抗酸化剤(特に活性酸素消去剤)又は安定化された金コロイド溶液が提供できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(抗酸化剤、活性酸素消去剤)
本発明において抗酸化剤とは、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品、飼料、塗料などに使用する品質保持のための抗酸化剤、及び生体内で活性酸素(特に、OHラジカル)の消去剤としての機能を有する抗酸化剤の双方を含む。
【0013】
本発明は、金コロイドを有効成分として含む抗酸化剤であり、特に、活性酸素消去剤として有用である。本発明において、金コロイドとは、溶液中にコロイド状態で存在する金の微粒子をいい、溶液は好ましくは水溶液であり、金微粒子は、溶液中で均一に分散していることが好ましい。抗酸化剤として有効に機能するための溶液中の金の濃度は、溶液の総量に対して、10〜0.0001質量%が好ましく、5〜0.001質量%がより好ましく、1〜0.01質量%であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の金コロイドからなる抗酸化剤は、好ましくは、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質により安定化される。安定化物質は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上であることがより好ましく、保存安定性だけでなく抗酸化能の観点からもキトサンであることが最も好ましい。安定化物質は、溶液の総量に対して、0.001〜10質量%添加することが好ましく、0.01〜5質量%添加することがより好ましく、0.05〜1質量%がさらに好ましい。
【0015】
溶液中の金微粒子の粒径は、限定されるものではないが、金コロイド安定化物質の濃度によって変化するものであり、抗酸化能や保存安定性の観点から、5〜100nmであることが好ましく、7.5〜40nmであることがより好ましく、10〜20nmであることがさらに好ましい。また、発色性の観点からは、100nm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の抗酸化剤の製造方法については、特に限定されるものではないが、還元剤を用いる還元法によることが好ましく、以下に説明する。
【0017】
まず、金塩、金コロイド安定化物質、還元剤の水溶液をそれぞれ調製する。ここで、金塩は、例えば、塩化金酸(金を王水に溶解させたものを粉状にしたもの)が好ましく用いられる。市販の金コロイド溶液を使用することもできる。金コロイド安定化物質は、上述のキトサン等の物質が用いられる。また、還元剤も特に制限されないが、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸などが用いられ、中でも水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸が好ましく、水素化ホウ素ナトリウムが最も好ましい。
【0018】
次に、金塩の水溶液及び安定化物質の水溶液を所定濃度になるように水(好ましくは、超純水)に添加し、所定時間、例えば30分間、撹拌混合する。金塩の濃度は、金の最終濃度が、10〜0.0001質量%となるように添加することが好ましく、5〜0.001質量%がより好ましく、1〜0.01質量%がさらに好ましい。また、安定化物質の濃度は、種類によっても異なるが、最終濃度が、0.001〜10質量%となるように添加することが好ましく、0.01〜5質量%添加することがより好ましく、0.05〜1質量%添加することがさらに好ましい。適宜、濃度を調節することにより、所望の粒径の金微粒子が得られる。
【0019】
撹拌混合後、ここへ還元剤の水溶液を所定濃度になるように添加し、さらに所定時間、例えば30分間、撹拌混合して、本発明の抗酸化剤を得る。
還元剤の濃度は、種類によっても異なるが、物質量比で還元剤が金の3〜7倍量、好ましくは、4〜6倍量、さらに好ましくは、4.5〜5.5倍量となるようにする。
【0020】
塩化金酸の水溶液は、強い酸性溶液であり、これに安定化物質を加えることによって保護コロイドを形成させ、さらに還元剤の作用で金イオンが安定化される。安定化された後に中和することで(還元剤が酸性の場合はアルカリで中和し、還元剤がアルカリ性の場合は酸で中和)、安全性の高い金コロイド溶液が得られる。
【0021】
本発明の抗酸化剤は、化粧料(化粧品)、医薬品、医薬部外品、食品、飼料、塗料などのあらゆる分野に適用できるが、着色剤としての機能も併有していることに鑑み、特に、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品、とりわけ、化粧品、医薬部外品に好ましく適用される。また、特に、活性酸素消去剤としての作用に優れており、中でもOHラジカル消去能に優れる。従って、例えば、本発明の抗酸化剤を含有する化粧料は、皺、シミ、ソバカス、乾燥肌、湿疹、肌荒れなどの予防・改善という美肌効果及び老化防止効果を有する。
【0022】
適用範囲は特に限定されないが、化粧料では、例えばUVケア製品、美白剤、ローション、乳液、クリーム、ファンデーション、化粧水、オイル、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、パウダー、パック剤、洗顔料、皮膚洗浄料、ハップ剤、ペースト剤、エッセンス、ゲル剤、除毛剤、脱毛剤、アフターシェーブローション、シェービングクリーム、シャンプー、リンス、養毛剤、浴用剤、石鹸、香水類などに配合して使用することができる。特に、化粧水、ローション、乳液、クリームに用いることが好ましい。また、その実施態様は、溶液、エマルジョン、軟膏、オイル、ワックス、ゾル、ゲル、パウダー、スプレーなどの各種態様で適用できる。また、医薬品においては、単独又は他の薬剤とともに種々の剤型に適用でき、例えば経口投与剤、坐剤、塗布剤、軟膏、貼付剤、点眼剤、注射液に使用することができる。医薬部外品においてもまた、薬用外用剤などにおいて種々の剤型に適用できる。さらに、食品においては、飲料類、乳製品、穀類加工品、加工食品、加工油脂、調味料、菓子類などに添加することが可能である。
【0023】
本発明の抗酸化剤の添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
また、他の抗酸化剤、例えばトコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)などの市販抗酸化剤と複数併用して使用することもできる。
【0024】
本発明の抗酸化剤の各種化粧料等に対する配合量は、化粧料等の種類、目的、使用態様などに応じて変動させることができ、特に限定されない。原則的には、有効量が存在すれば良いことになるが、例えば、化粧料組成物中10〜0.0001質量%であり、好ましくは1〜0.001質量%、0.1〜0.01質量%がより好ましい。
【0025】
(安定化された金コロイド溶液)
本発明の金コロイド溶液は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロ リドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質によ り安定化される。安定化物質は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピ ロリドンから選ばれる1種以上であることが好ましく、キトサンであることが最も好ましい。金コロイド、安定化物質の定義については、前述の通りである。本発明において安定化とは、金コロイドが2ヶ月以上、凝集、または沈殿しないことを意味する。
【0026】
かかる金コロイド溶液は、前述の抗酸化剤としてのみならず、着色剤、標識剤、増感用写真感光剤などに適用でき、様々な分野にて使用可能である。特に、化粧品等において安定な着色剤かつ抗酸化剤として使用できる点で優れる。
【0027】
本発明における金コロイド溶液は、前述の抗酸化剤の製造方法と同様の方法により調製できるが、その使用用途によって、濃度、混合比率、調製条件などを適宜、調整できる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
(金コロイド溶液の調製)
塩化金酸(和光純薬工業社製)は2.0mM、キトサン(和光純薬工業社製)は2.0質量%、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)は10mMの濃度になるようにそれぞれの水溶液を調製した。
次に、上記の塩化金酸水溶液及びキトサン水溶液を超純水に添加し、最終濃度が塩化金酸は0.2mM、キトサンはそれぞれ所定の濃度(0.0005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0質量%)となるように混合水溶液20mlを調製した。これらの混合水溶液を30分間撹拌した。
これらを、順にサンプル1〜7とした。
次に、水素化ホウ素ナトリウム濃度が1mM(金の5倍量)となるように上記の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を上記の混合水溶液に添加し、さらに30分間撹拌して金イオンを還元した。
上記の調製は、通常室温(約25℃)にて行った。
【0029】
実施例2
(金微粒子の粒径の測定)
調製した金コロイド水溶液を1日置いた後、コロジオン膜貼り付けメッシュにとりデシケーターで乾燥し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。
TEMで撮った写真で約200個の粒子の直径を測定し、その平均粒径を測定した。測定結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
(金コロイド溶液のOHラジカル消去活性の測定)
調製後1日経った金コロイド水溶液サンプル1〜7それぞれを2倍、4倍、8倍、16倍、32倍等、希釈の倍率を変えて、各種濃度に希釈した(希釈倍率はサンプルによって異なる)。
DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)(関東化学株式会社製)は5.5mM、過酸化水素水は0.2mM、DMPO(5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド)(シグマ−アルドリッチ社製)は88mMの濃度になるようにそれぞれ水溶液を調製し、過酸化水素水とDMPOは0℃に冷やしておいた。
次に、上記のDTPA水溶液(5.5mM)を溶媒に用いて、硫酸第一鉄(純正化学株式会社製)が10mMとなるように溶液を調製し、0℃に冷やしておき、測定直前に硫酸第一鉄溶液を0.1mMに希釈した。
希釈した金コロイド溶液のサンプルの1つと上述のDMPO水溶液(88mM)と希釈した硫酸第一鉄溶液(0.1mM)を100μlずつスクリュー管にとり、撹拌した。これに過酸化水素水を100μl加えて撹拌し、そこから50μl取り、先を閉じたパスツールピペットの先に入れた。
混合溶液を入れたパスツールピペットの先をESR管に入れて、溶液中のラジカルを電子スピン共鳴測定装置(ESR)(日本電子社製、商品名FA−200)で測定した。測定は過酸化水素水を加えてから60秒後に行った。
得られたESRスペクトルのピーク強度をマンガンマーカーに対する相対強度にして、計算よりOHラジカル消去活性を求めた。すなわち、スピントラッピング試薬による活性酸素の消去反応(この反応速度定数をklとする)とみなし、反応内に他の活性酸素消去剤(S)(ここでは金微粒子)が存在し、その反応速度定数をksとする。系内の活性酸素消去反応はスピントラッピング試薬とSとの競争的な反応として理解され、その反応率R(ks/kl)は次式のように表される。
R(= ks/kl)= F[DMPO]/(1−F)[S]
F/(1−F)= R・[S]/[DMPO]
ここでRは反応率、FはスピンアダクトESR信号強度減少率、「DMPO]及び「S]はスピントラッピング試薬及び活性酸素消去剤(ここでは金微粒子)の初濃度。F/(1−F)を縦軸に「S]/[DMPO]を横軸にとり、その傾きからRが評価される。既知のスピントラッピング試薬の反応速度klと実験的に求めたR値から消去剤の反応速度定数ksが算出される。
結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
調製後1日経った金微粒子の粒径はキトサンの濃度により変化し、5.6〜14.8nmの値をとった。
また、金コロイド水溶液のOHラジカル消去反応の反応速度定数はおよそ1013の値をとり、表1に示されるように粒子の粒径が大きいほど活性が高い傾向が見られた。また、塩化金酸の濃度0.2mMの場合には、キトサン濃度は0.01〜1.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましいことが分かる。さらには、キトサン濃度がおよそ5.0質量%程度までは1013以上の値をとるものと容易に推定できる。これらの値は、抗酸化効果を有するアスコルビン酸(1.0×1012)と比較すると10〜100倍程度高い値であった。
【0033】
実施例4
(金コロイドの安定性の確認)
サンプル1〜7のいずれも室温(約25℃)で半年以上その色調変化が無く、また沈殿なども生じなかったことから、安定であるといえる。
また、低温(5℃以下)及び高温(40℃以上)での安定性についても、キトサンの溶解度は温度でそれほど変化しないことから、安定性への影響は少なく、安定であるといえる。
【0034】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、金コロイドの抗酸化能を発見したことにより、安全性の高い抗酸化効果に優れた化粧品、医薬品、食品などを提供することが可能となる。これにより、本発明の金コロイドによる活性酸素消去作用の特性に基づき、活性酸素を原因とする種々の老化・疾病(例えば、動脈硬化、発癌、膜の破壊、蛋白変性、皮膚炎症、浮腫、日光性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、レントゲン皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、火傷、外傷、グリコサミノグリカンの増加、コラーゲン繊維の架橋と減少、弾性繊維の変性、シワ、シミ、弛みなど)を有効に防止できる。
【0035】
また、本発明においては、金コロイドの粒径が制御可能な保存安定性に優れた金コロイド溶液の達成により、コスト的に有利で、利便性の高い種々の用途に用いられる材料の提供が可能となる。
Claims (12)
- 金コロイドを有効成分として含むことを特徴とする抗酸化剤。
- 前記金コロイドは、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質により安定化されていることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
- 前記金コロイド安定化物質は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上の安定化物質であることを特徴とする請求項2に記載の抗酸化剤。
- 前記抗酸化剤は、活性酸素消去剤として機能することを特徴とする請求項1〜3に記載の抗酸化剤。
- キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシルビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムから選ばれる1種以上の金コロイド安定化物質を含むことを特徴とする金コロイド溶液。
- 前記金コロイド安定化物質は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上の安定化物質であることを特徴とする請求項5に記載の金コロイド溶液。
- 金塩の溶液と所定の金コロイド安定化物質の溶液を混合後、所定の還元剤溶液を添加することを特徴とする金コロイド溶液の調製方法。
- 前記金塩の溶液は、塩化金酸水溶液であることを特徴とする請求項7に記載の金コロイド溶液の調製方法。
- 前記所定の金コロイド安定化物質の溶液は、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上の安定化物質の水溶液であることを特徴とする請求項7〜8に記載の金コロイド溶液の調製方法。
- 前記所定の還元剤溶液は、水素化ホウ素ナトリウム溶液であり、前記水素化ホウ素ナトリウム溶液は、物質量比で前記金塩中の金の3〜7倍量の濃度であることを特徴とする請求項7〜9に記載の金コロイド溶液の調製方法。
- 請求項1〜6に記載の抗酸化剤又は金コロイド溶液を含有することを特徴とする化粧料。
- 請求項1〜6に記載の抗酸化剤又は金コロイド溶液を含有することを特徴とする医薬品又は医薬部外品。
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