JP2004285028A - 1−イソプロピルシクロペンタジエン及びヒノキチオールの製造方法 - Google Patents

1−イソプロピルシクロペンタジエン及びヒノキチオールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シクロペンタジエンから高選択的に1−イソプロピルシクロペンタジエンを合成し、これにジハロゲノケテンを付加後、加溶媒分解することによりヒノキチオールを製造する。
【解決手段】下記の(a)、(b)及び(c)に示される工程による1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法。(a)シクロペンタジエンと、アルカリ金属単体又は水素化アルカリ金属とから、シクロペンタジエニルアルカリ金属を調製する工程。(b)引き続きハロゲン化アルカリ土類金属化合物を反応させてシクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物を調製する工程。(c)該シクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物とイソプロピル化剤とを反応させて、イソプロピルシクロペンタジエンを得、該イソプロピルシクロペンタジエン中の5−イソプロピルシクロペンタジエンを1−イソプロピルシクロペンタジエンに異性化し、1−イソプロピルシクロペンタジエンを得る工程。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高選択的な1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法に関するものであり、更には該1−イソプロピルシクロペンタジエンを用いたヒノキチオールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒノキチオール(β−ツヤプリシン、β−Thujaplicin、または4−イソプロピル−2−ヒドロキシシクロヘプタ−2,4,6−トリエン−1−オン)は、台湾ヒノキや青森ヒバの成分として知られ、優れた細胞賦活作用、抗菌、抗カビ効果、収斂効果、チロシナーゼ阻害効果、などを有し、医薬品、皮膚化粧料、発毛育毛剤、歯磨き剤、鮮度保持フィルム、塗料などに配合される天然成分である。
ヒノキチオールの製造法としては従来から種々の方法が知られているが、工程数の多さや原料入手の困難性など実用的な方法とは言い難いものが多い。
【0003】
一方、入手が容易なシクロペンタジエンを原料に、イソプロピルシクロペンタジエンを得、これにジクロロケテンを付加させ、この付加体を加溶媒分解することによって得る方法が知られている。本法は原料が入手容易なこと、工程数も少ないこと等の理由により工業的に実施する上で実用的な方法である。
【0004】
この方法では、ヒノキチオールはイソプロピルシクロペンタジエンの異性体3種のうち、1−イソプロピルシクロペンタジエンからのみ生成することが知られている。つまり他の異性体である2−イソプロピルシクロペンタジエンや5−イソプロピルシクロペンタジエンからは、ヒノキチオールの異性体であるγ−ツヤプリシンが生成するため煩雑な精製が必須となり、結果としてヒノキチオールの収率に著しく好ましくない影響を及ぼす。従って、1−イソプロピルシクロペンタジエンを選択的に合成することによって、目的のヒノキチオールの収率を向上させることが可能となる。
【0005】
このような方法として例えば以下のような方法が知られている。
(i)シクロペンタジエンにグリニャール試薬(エチルマグネシウムブロマイド)とイソプロピルトシレートを反応させて、1−イソプロピルシクロペンタジエンを高選択的に得、これにジクロロケテンを付加させた後、加溶媒分解反応によりヒノキチオールを製造する方法(特許文献1)。
(ii)シクロペンタジエンとアルカリ金属またはアルカリ金属水素化物とからシクロペンタジエニル金属を調製し、該シクロペンタジエニル金属とイソプロピル化剤とを、生成物のイソプロピルシクロペンタジエンと二液相を形成する非プロトン性極性溶媒の存在下反応させ、更に該イソプロピルシクロペンタジエン中の5−イソプロピルシクロペンタジエンを、熱により1−イソプロピルシクロペンタジエンを得、これにジクロロケテンを付加させた後、加溶媒分解反応によりヒノキチオールを製造する方法(特許文献2)。
【0006】
これらの方法は、上述した様に安価なシクロペンタジエンを原料に、少ない工程数でヒノキチオールを得ている点で優れているが、(i)は高価なグリニャール試薬を使用しており経済的とは言えず、また、収率面からも問題がある。(ii)はイソプロピルシクロペンタジエンと二液相を形成する非プロトン性極性溶媒として大量のジメチルスルホキサイドを使用している。これは強塩基性にて2−イソプロピルシクロペンタジエンに容易に異性化し易い1−イソプロピルシクロペンタジエンと強塩基を接触させないことを実現する為に必須の反応溶媒である。水と任意に相溶するジメチルスルホキサイドの使用は反応後、系内に生じるアルカリ金属塩を水洗除去することが困難であり、水洗処理等は排水への流出が避けられず環境面で問題があり、また高温で分解しやすい為、蒸留回収も困難、臭気も強いなど、工業的に実施する上では問題がある。
【0007】
以上述べたように、安価で高選択的、且つ、特殊な溶媒も使用しない環境負荷にも配慮したヒノキチオールの工業的製造法、つまりは1−イソプロピルシクロペンタジエンの高選択的製造法の開発が求められていた。
【0008】
【特許文献1】特公昭51−33901明細書
【特許文献2】特開2001−97916明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安価で入手容易なシクロペンタジエンから高選択的に1−イソプロピルシクロペンタジエンを合成し、これにジハロゲノケテンを付加後、加溶媒分解することによりヒノキチオールを製造する方法であって、安価で、高選択的、且つ、特殊な溶媒も使用しない環境負荷にも配慮したヒノキチオールの工業的製造方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、既知の製造方法により調製可能なシクロペンタジエニル金属を、いったんアルカリ土類金属塩を反応させることによりシクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物を調製し、該シクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物にイソプロピル化剤を反応させることにより1−イソプロピルシクロペンタジエンが選択的に調製可能であり、従来の問題点が一挙に解決されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の内容を包含する。
(1)下記の(a)、(b)及び(c)に示される工程による 1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法。
(a)シクロペンタジエンと、アルカリ金属類とから、シクロペンタジエニル金属を調製する工程(シクロペンタジエニルアルカリ金属調製工程)。
(b)該シクロペンタジエニルアルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属化合物を反応させてシクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物を調製する工程(メタル交換工程)。
(c)該シクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物とイソプロピル化剤とを反応させて、イソプロピルシクロペンタジエンを得、該イソプロピルシクロペンタジエン中の5−イソプロピルシクロペンタジエンを1−イソプロピルシクロペンタジエンに異性化し、1−イソプロピルシクロペンタジエンを得る工程(1−イソプロピルシクロペンタジエン製造工程)。
【0012】
また、本発明は以下の内容を包含する。
(2)イソプロピル化剤がイソプロピル硫黄酸エステルであることを特徴とする上記(1)記載の製造方法。
(3)アルカリ金属単体がナトリウムであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)水素化アルカリ金属が水素化ナトリウムであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)ハロゲン化アルカリ土類金属が塩化マグネシウムであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)イソプロピル硫黄酸エステルがイソプロピルメシレート、イソプロピルトシレートまたはジイソプロピル硫酸であることを特徴とする上記(2)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法で得られた、1−イソプロピルシクロペンタジエンとジハロゲノケテンとを反応させケテン付加体を得、該ケテン付加体を分解することを特徴とするヒノキチオールの製造方法。
【0013】
本発明のヒノキチオールの製造法は、下記式1で示される。
(式1)
【化1】
Figure 2004285028
更に、前記第一工程は、下記式2のように示される。
(式2)
【化2】
Figure 2004285028
上記式2中におけるRは、アルキル基、アルコキシ基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。アルキル基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。アリール基としては例えばフェニル基が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基(例えばメチル基、ドデシル基)、ニトロ基あるいはハロゲン(例えばフッ素、臭素、塩素)等で置換されていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基としては、好ましくは4−トリル基、4−ドデシルフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−ブロモフェニル基等が挙げられる。
【0014】
以下に、前記第一工程に対応する、本発明の1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法について説明する。
本発明の1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法は、(a)シクロペンタジエンにアルカリ金属単体又はアルカリ金属水素化物を作用させ、シクロペンタジエニルアルカリ金属化合物を調整し、(b)これにハロゲン化アルカリ土類金属化合物を作用させ、シクロペンタジエニルアルカリ金属化合物のアルカリ金属をアルカリ土類金属に交換し、(c)続いて、例えばイソプロピル硫黄酸エステル等のイソプロピル化剤を反応させ、1−イソプロピルシクロペンタジエンと場合によっては5−イソプロピルシクロペンタジエンとの混合物を得、5−イソプロピルシクロペンタジエンが生成している場合は、異性化させることにより1−イソプロピルシクロペンタジエンとするものである。
【0015】
以下、本発明の1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法について工程毎に更に詳述する。なお、工程(a)、(b)及び(c)は窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
工程(a):
この工程は、シクロペンタジエンと、アルカリ金属単体またはアルカリ金属水素化物の少なくとも1種とから、シクロペンタジエニル金属を調製する工程である。
原料のシクロペンタジエンはジシクロペンタジエンの熱分解により得ることができ、この工程では熱分解後の経時が少ないシクロペンタジエンを用いることが好ましい。
この工程において用いられるアルカリ金属単体としては、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられ、好ましくは、ナトリウムまたはカリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。また、本発明で用いられる金属水素化物としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化リチウム等が挙げられ、好ましくは水素化ナトリウムである。この工程で用いられる溶媒としては、シクロペンタジエニル金属を溶解可能な溶媒であれば特に限定はなく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル及びメチルターシャリーブチルエーテルのような環状又は非環状のエーテル類、ヘキサン又はヘプタンのような脂肪族炭化水素、トルエン又はキシレンのような芳香族炭化水素などが挙げられ、特にテトラヒドロフラン、ジオキサン及びメチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル類が好適に使用される。
【0016】
シクロペンタジエンとアルカリ金属またはアルカリ金属水素化物との量比は、特に限定されるものではないが、通常、アルカリ金属またはアルカリ金属水素化物/シクロペンタジエンのモル比は、通常、約0.2から2の範囲であり、好ましくは約0.5から1.5の範囲である。シクロペンタジエニルアルカリ金属調製時の反応温度は、通常、約−10℃から溶媒の沸点温度まで採用できるが、低すぎると反応が進みにくく、高すぎるとシクロペンタジエンの二量化が進みジシクロペンタジエンを生成しやすいので、好ましくは約−5℃から30℃である。
【0017】
工程(b):
この工程は、シクロペンタジエニルアルカリ金属とアルカリ土類金属化合物とを反応させて、シクロペンタジエニルアルカリ金属のアルカリ金属とアルカリ土類金属を交換する工程である。この工程において使用されるアルカリ土類金属化合物としてはハロゲン化カルシウム又はハロゲン化マグネシウムが好適に使用され、具体的には塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムなどが挙げられ、これらは無水物として使用するのが好ましく、特に塩化マグネシウムが選択性、反応性、価格面で優れ、好適に使用される。アルカリ土類金属化合物の使用量はシクロペンタジエニルアルカリ金属に対してモル比で、通常、約0.2から3の範囲であり、好ましくは約0.5から1.5の範囲である。
【0018】
反応溶媒は(a)と同様、特に限定されないが、シクロペンタジエニル金属を調製する(工程a)ときに使用した溶媒をそのまま使用することが操作性、経済性等から好ましい。メタル交換反応の反応温度は通常、約−10℃から溶媒の沸点温度まで採用できるが、好ましくは約10℃から溶媒の沸点温度である。また、シクロペンタジエニルアルカリ金属に対して約0.5倍モルのハロゲン化アルカリ土類金属化合物を反応させることにより得られると推定されるジシクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物は、本発明の主要を成す重要中間体である。
【0019】
工程(c):
この工程は、シクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物、好ましくはジシクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物とイソプロピル化剤とを反応させて、1−イソプロピルシクロペンタジエン、又は場合により異性体である5−イソプロピルシクロペンタジエンとの混合物を取得する工程である。この工程において用いられるイソプロピル化剤としては、イソプロピル硫黄酸エステルが用いられ、具体的にはイソプロピルメシレート、イソプロピルトシレート、ジイソプロピル硫酸などが挙げられ、好ましくはイソプロピルメシレート、イソプロピルトシレートである。
【0020】
反応溶媒は(a)及び(b)と同様、特に限定されないが、シクロペンタジエニル金属を調製時(工程a)に使用した溶媒をそのまま使用することが操作性、経済性等から好ましい。
イソプロピル化終了後の後処理は、希塩酸や希硫酸等の中和成分で中和した後に水洗等を行うことにより実施されるが、好ましくは次工程のジハロゲノジケテン付加反応で使用される溶媒と中和成分との混液中へ投入される。こうすることにより、後述する異性化を行った後に、蒸留又は溶媒濃縮等の操作を行うことなく、ジハロゲノケテン付加反応へと付すことができる。
【0021】
この工程で異性体として生成した5−イソプロピルシクロペンタジエンは容易に1−イソプロピルシクロペンタジエンに異性化できる。5−体から1−体への異性化は可逆反応だが、1−体へ平衡が偏っているので5−体は非常に少量しか存在しない。また、1−体から2−体への異性化も起こり得るが、5−体から1−体への異性化に比べて非常に遅いので、5−体と1−体の混合物を一定温度で必要な時間に保持することにより1−体への異性化だけを進行させることができる。異性化方法は1−体と5−体の混合物を静置してもよく、又は撹拌してもよい。異性化の温度は通常、約0℃から40℃の範囲であり、この範囲外では異性化の進行が遅くなったり、不要な2−体への異性化が起こり好ましくない。異性化に必要な時間は温度やイソプロピル化後の1−体と5−体の比率によっても変わるため一概には言えないが、通常、約10℃〜20℃の温度範囲で約5時間〜20時間程度である。
【0022】
このようにして得られた1−イソプロピルシクロペンタジエンは特に精製することなくジハロゲノケテンとの付加反応(式1における第二工程)後、塩基を含む混合溶媒中で分解すること(式1における第三工程)によりヒノキチオールを得ることができる。
これら、ジハロゲノケテン付加反応及び塩基を含む混合溶媒中で分解してヒノキチオールを得る方法は公知であり、例えば特開2001−97916号公報の段落〔0046〕〜〔0059〕に記載の方法が適用できる。
この工程は1−イソプロピルシクロペンタジエンにジハロゲノケテンを付加し、ケテン付加体を発生させる工程である。ジハロゲノケテンとしては一般式XYC=C=Oで表されるものが挙げられ、X、Yはそれぞれ独立してハロゲン(例えば弗素、塩素、臭素、ヨウ素)を表し、具体的にはジクロロケテン、ジブロモケテン及びクロロブロモケテンであるが、ジクロロケテンが好ましい。
【0023】
ジハロゲノケテンは不安定であるため、ケテン発生とケテン付加をワンポットで行うのが好ましい。ケテン発生法は既知である下記2法のいずれかを採用することができる。
(イ)一般式XYCHCOZ(X、Yは前記のとおり、Zは塩素又は臭素を表す)で表されるジハロゲノ酢酸ハライドにトリエチルアミンを作用させて脱ハロゲン化水素する方法。
(ロ)一般式XYZCCOZ(X、Y及びZは前記と同様、Zは塩素又は臭素を表す)で表されるトリハロゲノ酢酸ハライドに、金属亜鉛粉末を作用させて脱ハロゲン化する方法。
【0024】
前記(イ)の方法でケテン付加体を合成する方法を説明すると、1−イソプロピルシクロペンタジエンにジハロゲノ酢酸ハライドを加え、所定の反応温度を維持しながら、トリエチルアミンを滴下する。または、1−イソプロピルシクロペンタジエンにジハロゲノ酢酸ハライドとトリエチルアミンを同時に滴下する。
ジハロゲノケテン発生原料として使用可能なジハロゲノ酢酸ハライドとしては、例えばジフルオロ酢酸クロライド、ジクロロ酢酸クロライド、ジブロモ酢酸クロライド、ジフルオロ酢酸ブロマイド、ジクロロ酢酸ブロマイド及びジブロモ酢酸ブロマイド等が挙げられるが、ジクロロ酢酸クロライドが好ましい。1−イソプロピルシクロペンタジエンに対するジハロゲノ酢酸ハライドの量は、モル比で通常、約0.5〜5、好ましくは約0.5〜3である。ジハロゲノ酢酸ハライドに対するトリエチルアミンのモル比は通常、約0.5〜2、好ましくは約0.9〜1.1である。
また、ジハロゲノケテンをジハロゲノ酢酸ハライドの脱ハロゲン化水素で発生させる場合、トリエチルアミンの塩が発生し撹拌が困難になることがあるので、溶媒で希釈して反応を行うことが好ましい。溶媒は反応に不活性なものであれば特に限定されないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及び石油エーテル等の脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0025】
次に第三工程によるヒノキチオールの合成法について説明する。
第三工程は第二工程で得られたケテン付加体を、塩基を含む混合溶媒中で分解してヒノキチオールを製造する工程である。混合溶媒としては、酢酸/酢酸カリウム/水、酢酸/酢酸ナトリウム/水といったものが知られている。各成分の比率は特に限定されるものではないが、原料のケテン付加体に対してモル比で、水は通常、約0.1〜30、好ましくは約0.8〜10である。酢酸アルカリ塩等の塩基はケテン付加体に対してモル比で通常、約0.1〜10好ましくは約0.8〜5である。酢酸等の有機酸は、塩基に対しモル比で通常、約0〜0.9、好ましくは約0〜0.5である。
反応温度は、通常、約50〜140℃の範囲であり、反応系の還流温度で実施することが好適に行われる。このようにして得られた粗ヒノキチオールを含む反応液は、抽出、洗浄等の操作を適宜行った後、蒸留、再結晶等の操作を単独又は組み合わせて精製することができる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
本実施例中におけるガスクロマトグラフィー(GC)による分析条件を以下に示す。
1.イソプロピルメシレート及び1−イソプロピルシクロペンタジエンの分析
カラム:Neutrabond−1(25m×0.25mm)
温度条件:注入口60℃、検出器250℃、
カラム40℃(5分保持)→180℃(10℃/分)
2.ケテン付加体の分析
カラム:Neutrabond−1(25m×0.25mm)
温度条件:注入口80℃、検出器250℃、
カラム40℃(5分保持)→230℃(10℃/分)
3.ヒノキチオールの分析
カラム:Neutrabond−1(25m×0.25mm)
温度条件:注入口250℃、検出器250℃、
カラム40℃(5分保持)→250℃(10℃/分)
【0027】
実施例1. 1−イソプロピルシクロペンタジエンの合成
(1)イソプロピルメシレートの合成
窒素気流下、イソプロパノール(133.2g,2.2mol)、トリエチルアミン(212.5g,2.1mol)及びトルエン(400mL)溶液を氷冷下撹拌し、5℃以下で塩化メタンスルホニル(229.1g,2.0mol)を滴下した。3℃で1時間撹拌した後、水(400mL)を加え有機層を分液し、有機層を1%炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)で3回洗浄した。トルエンを減圧下で留去し、イソプロピルメシレート215.6gを得た。収率78.6%。GC純度95.8%。
【0028】
(2)1−イソプロピルシクロペンタジエンの合成
窒素気流下、60%水素化ナトリウム(40.0g,0.50mol)のテトラヒドロフラン(THF)懸濁液にジシクロペンタジエンの熱分解により得られたシクロペンタジエン(69.4g,1.05mol)のTHF(86mL)溶液を5〜12℃で滴下した。滴下後、10〜15℃で1時間撹拌後、無水塩化マグネシウム(52.4g,0.55mol)を投入し1.5時間還流した。得られた懸濁液を5℃まで冷却後、実施例1(1)で得られたイソプロピルメシレート(134.15g,0.93mol)を5〜12℃で滴下した。10℃で30分撹拌後、あらかじめ氷冷した0.5mol/L塩酸(200mL)、ヘプタン(694mL)混液に反応溶液を加え、反応を停止した。続いて水洗(200mL)2回、1%食塩水(200mL)にて洗浄した。得られた有機層に無水硫酸マグネシウム(6.9g)を加え、20℃にて7時間放置することによって、乾燥と異性化(5−イソプロピルシクロペンタジエンから1−イソプロピルシクロペンタジエンへの)を行った。目的とする1−イソプロピルシクロペンタジエンの選択性は96.4%(GC)であった。
【0029】
実施例2. ヒノキチオールの合成
(1)ケテン付加体の合成
前記実施例1で得られた1−イソプロピルシクロペンタジエンを含有する有機層を−10℃に冷却し、塩化ジクロロアセチル(145.96g,0.977mol)を加え、続いてトリエチルアミン(126g,1.25mol)のヘプタン(126mL)溶液を2時間かけて−8〜−2℃で滴下した。滴下後、−2℃で14時間撹拌した後、水(600mL)を加えて反応を停止し、0.5%硫酸水(300mL)で3回、0.5%炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、1%食塩水(200mL)で洗浄を行った。得られた有機層を濃縮、蒸留しケテン付加体127.86gを得た。収率62.7%。GC純度95.7%。
【0030】
(2)ヒノキチオールの合成
実施例2(1)で得られたケテン付加体(127.86g)に酢酸ナトリウム(191.55g,2.33mol)、酢酸(77.8g,1.30mol)、水(84.6g,4.7mol)及び塩化ベンジルトリブチルアンモニウム(1.28g)を加え、13時間還流した。95℃まで冷却後、トルエン(221mL)、水(430mL)を加え反応を停止した。分液後1%食塩水(400mL)で2回洗浄を行い、溶媒濃縮、蒸留を行いヒノキチオール71.41gを得た。収率74.5%。GC純度98.6%。
【0031】
比較例 1−イソプロピルシクロペンタジエンの合成
塩化マグネシウムを使用せず、反応温度−5℃として実施例1と同様の操作を行い、イソプロピル化工程を行った。反応生成物のGC分析結果は、転化率95%で、そのうち1−イソプロピルシクロペンタジエンが43%、2−イソプロピルシクロペンタジエンが57%であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明により、シクロペンタジエンとイソプロピル化剤とから高選択的に1−イソプロピルシクロペンタジエンを得ることができ、該1−イソプロピルシクロペンタジエンから2工程で高純度のヒノキチオールを安価にしかも高収率で得ることができる。

Claims (7)

  1. 下記の(a)、(b)及び(c)に示される工程による1−イソプロピルシクロペンタジエンの製造方法。
    (a)シクロペンタジエンと、アルカリ金属単体又は水素化アルカリ金属とから、シクロペンタジエニルアルカリ金属を調製する工程(シクロペンタジエニルアルカリ金属調製工程)。
    (b)該シクロペンタジエニルアルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属化合物とを反応させてシクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物を調製する工程(メタル交換工程)。
    (c)該シクロペンタジエニルアルカリ土類金属化合物とイソプロピル化剤とを反応させて、イソプロピルシクロペンタジエンを得、該イソプロピルシクロペンタジエン中の5−イソプロピルシクロペンタジエンを1−イソプロピルシクロペンタジエンに異性化し、1−イソプロピルシクロペンタジエンを得る工程(1−イソプロピルシクロペンタジエン製造工程)。
  2. イソプロピル化剤がイソプロピル硫黄酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. アルカリ金属単体がナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 水素化アルカリ金属が水素化ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. ハロゲン化アルカリ土類金属が塩化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. イソプロピル硫黄酸エステルがイソプロピルメシレート、イソプロピルトシレートまたはジイソプロピル硫酸であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られた、1−イソプロピルシクロペンタジエンとジハロゲノケテンとを反応させケテン付加体を得、該ケテン付加体を分解することを特徴とするヒノキチオールの製造方法。
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