JP2004284965A - 安定同位体を含有する化合物、重合体および分析方法 - Google Patents

安定同位体を含有する化合物、重合体および分析方法 Download PDF

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良英 林崎
Naoki Hirayama
直樹 平山
Hideo Yoshihara
秀夫 吉原
Norio Kawabe
紀雄 川邉
Ryoji Hayashi
亮司 林
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Abstract

【課題】3種類以上の標識源を同時に導入でき、且つ検出感度が高く、更に標識源を効率的に核酸類に導入することが可能なポリヌクレオチドの標識化法を提供する。
【解決手段】式(1)〜式(4)のいずれかで示される安定同位体を含有する化合物。
【化1】
Figure 2004284965

(式中、Mは鉄、もしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す)。上記標識化合物を用いた場合には、多種類の標識源を、効率的にポリヌクレオチドに導入することができる。更に、DNAチップに応用した場合には、微量発現遺伝子の検出ないしは多標識化の新しい機能を付与することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体関連高分子(例えば、核酸等のポリヌクレオチド)の検出を目的とする標識化合物ないし該高分子の分析方法に関する。より詳しくは、本発明は、標識源として安定同位体元素を用いることを特徴とし、安定同位体元素を分子内に有するヌクレオチド誘導体からなる標識化合物に関する。本発明は、このような該標識化合物に加えて、その重合体およびその中間体をも提供する。
【0002】
【従来の技術】
核酸等の生体関連高分子の検出法に関しては、既に多くの研究がなされてきた。これらの検出方法の一つとして、目的対象物質を認識するために、何らかの信号を発する標識源を目的対象物質に導入するという手法が頻繁に用いられるため、それらの標識源または標識方法に関しては、従来より種々の検討がなされている。
【0003】
cDNA等のポリヌクレオチド類を対象とした標識法を、標識源の種類と標識源の導入方法の2つの側面から分類する。
【0004】
(表1)
【0005】
標識源の種類から分類すると主に以下の3つの項目が挙げられる。
【0006】
1)放射性同位体元素を標識源とし、放射線を検出する方法。
【0007】
2)蛍光物質を標識源とし、蛍光を検出する方法。蛍光源としてはシアニン系有機色素化合物を使用する技術(米国特許第5268486(特許文献1)、特許第2898264号(特許文献2)、特許第2757965号(特許文献3))、ビオチン等の有機色素化合物を使用する技術(WO8602929(特許文献4))等がある。その他には蛍光源として蛍光半導体を用いる技術等が研究されている(Nucleic Acids Research,vol.22,N0.16,pp.3418(1994))(非特許文献1)。
【0008】
3)安定同位体元素を標識源として用いる方法。例として米国特許第578023(特許文献5)、およびGenomics,vol.9,pp.51−59(1991)(非特許文献2)がある。
【0009】
次に、標識源の導入方法から分類すると以下のA)とB)の2種類に分類される。
A)ポリヌクレオチド(核酸)に標識化する方法
B)ヌクレオチドに標識源を結合させた標識化ヌクレオチドを重合して標識化されたポリヌクレオチドを合成する方法。
【0010】
具体的に例示すると、A)ではcDNA等のポリヌクレオチドの5’位末端にアミノ基を有するリンカーを介在させて、そのリンカーのアミノ官能基に標識化反応剤を導入する技術がある。B)では標識化ヌクレオチドを天然ヌクレオチドとともに酵素等の共存下に重合させて標識化ヌクレオチドを構成成分として含有するポリヌクレオチド類を合成する技術がある。
【0011】
【表1】
Figure 2004284965
【0012】
【特許文献1】
米国特許第5268486号
【特許文献2】
特許第2898264号
【特許文献3】
特許第2757965号
【特許文献4】
WO8602929号
【特許文献5】
米国特許第578023号
【0013】
【非特許文献1】
Nucleic Acids Research,vol.22,N0.16,pp.341
8(1994)
【非特許文献2】
Genomics,vol.9,pp.51−59(1991)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した既存技術には以下の課題がある。
【0015】
すなわち、放射性同位体元素を標識源に用いる技術は、人体への影響が避けられず、その取り扱いには制約がある。また、標識源は単一種の放射線を検出するシステムであり、1回の分析からは1情報しか得られない欠点がある。
【0016】
蛍光物質を標識源として用いる技術では、一般に、2種類蛍光技術が用いられる。2種類蛍光標識技術とは、2種類の蛍光標識化合物が互いに異なる波長の蛍光を発することにより検出できる仕組みであり、各蛍光化合物が発する蛍光波長の違いを検出機が読みとることにより、検出部分にどのような標識がなされているかを判別する方法である。
【0017】
従って、多種類の情報を並列に得るシステムを構築するためには、多種類の蛍光標識化合物のそれぞれが、互いに異なる蛍光波長で蛍光を放出し、且つ各波長帯の蛍光強度が同一程度である必要がある。
【0018】
しかし、現在のところ、上記要件を満足させうる蛍光化合物は多くは存在しないため、2種類の蛍光標識が一般的であり、3種類以上は実用面からするとほぼ不可能に近い。
【0019】
また、蛍光物質を標識源として用いる技術には感度不足の問題がある。DNAチップで行われるcDNAの検出例をもって説明する。
【0020】
多くの遺伝子の中から疾病等に関連する変異遺伝子を検出する場合、変異遺伝子は発現量がわずかであるために、その検出には高い感度が要求される。しかしながら、現在実用化されている蛍光強度が強いとされるCy3,Cy5と称される蛍光標識化合物を用いても感度が不足し、変異遺伝子を十分に検出することはできない。
【0021】
安定同位体元素を標識源に用いる技術には、cDNAの5’末端部位の1カ所のみを標識する技術が存在する。しかしながら、このような安定同位体元素標識の技術には、1)標識源の導入量が低い、2)DNAの標識化は、煩雑な操作と標識化までに時間かかるというの2つの問題点がある。
【0022】
上記問題1)の導入量の点では、一般的なcDNAが、500塩基から2000塩基のヌクレオチド重合体であるのに対して、上記した安定同位体元素標識の技術ではcDNAの5’末端部位の1カ所しか安定同位体標識源を導入できないため、cDNA全体に対する標識源の割合は高々0.5%であり、かなり感度の高い検出装置を用いない場合には、微量に存在するcDNAを検出することはできない。
【0023】
他方、上記した2)の煩雑な操作等の点では、cDNAに安定同位体標識源を連結するためには、cDNAの5’末端部位の水酸基に、一旦リンカーとなる物質を作用させ、その後、そのリンカー化合物が有するアミノ基等の結合部分に安定同位体標識源を有する反応剤を作用させ、安定同位体源をcDNAに(リンカーを介して)連結させる煩雑な工程が通常は必要とされている。
【0024】
上述したように、3種類以上の標識源を同時に導入でき、且つ検出感度が高く、更に標識源を効率的に核酸類に導入することが可能なポリヌクレオチドの標識化法は、これまで存在しなかった。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために発明者らは、鋭意検討した結果、式(1)〜式(4)
【0026】
【化13】
Figure 2004284965
【0027】
(式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)のいずれかで表される安定同位体元素を含有するヌクレオチド誘導体(標識化合物)およびそれを用いた分析方法を見出した。
【0028】
当該化合物を用いた分析方法は、安定同位体元素を標識源とするために、従来の蛍光標識、放射性同位体標識にはない、多種類の標識源を保有できる利点がある。
【0029】
多種類の標識源を利用する場合の考え方を、安定同位体元素として鉄元素を用いた例をもって説明する。この場合には、鉄の同位体種として54Fe,56Fe,57Fe,57Feの4種を各々別々にヌクレオチド誘導体に結合させる。各化合物は同一の鉄元素を標識源に用いているが、鉄の原子量が異なるため、(分子量を指標とした場合には)4種類の標識化合物となる。更に別元素を標識源としたヌクレオチド誘導体(標識化合物)と組み合わせて用いた場合には、更に標識源の種類を増やすことができる。
【0030】
これらの安定同位体標識の考え方では、標識源の質量の違いを認識の指標とする。質量の分布幅は、1から数十万と幅広い領域があるため、検出範囲として使用できる領域が広く、したがって蛍光標識等の従来技術より有利であり、標識種の増加は容易である。
【0031】
また、本発明は、安定同位体元素を標識源とする従来技術に対しても以下の優位性を有する。
【0032】
本発明の標識化ヌクレオチドは、安定同位体標識源をヌクレオチドに連結させた化合物である。該化合物存在下に核酸類の合成反応を酵素等の存在下に行えば、標識源を構成成分として組み込んだポリヌクレオチド類を調製でき、しかも該ポリヌクレオチド類は、通常は安定同位体標識源を複数個導入したポリヌクレオチドになる。
【0033】
従来技術のように単位ポリヌクレオチドに対して一つの標識源しか導入できない場合とは異なり、本発明の上記した態様においては単位ポリヌクレオチド当たりの標識源は増加しており、その増加は検出感度向上に有効である。検出感度の向上は、微量高分子を検出する当該分野では非常に重要である。
【0034】
また、本発明は標識化ヌクレオチドを合成する操作面においても以下の利点がある。
【0035】
従来技術では安定同位体標識源の導入前に、ヌクレオチドにリンカーを介在させる工程を必要とした。
【0036】
これに対して、本発明の標識化ヌクレオチド誘導体を用いあ場合には、リンカー介在化工程が不要であり、効率的に標識化ポリヌクレオチド類を調製できる利点がある。
【0037】
上述したように、本発明の安定同位体を標識源とするヌクレオチドの提供により、下記の利点を得ることができる。
1)多種類の標識源を利用できる。
2)複数の標識源をポリヌクレオチドに容易に導入できる。
3)従来安定同位体標識法と比べて、標識化ヌクレオチドを効率的に調製できる。
【0038】
これらの利点は、本発明が臨床現場での疾患判断等に適用される場合に、その有用性がより明確化される(すなわち、より有用性が高い)。上記利点は迅速な疾患原因遺伝子の判定に結びつくため、臨床上の意義は高い。
【0039】
すなわち、本発明は、
「式(1)〜式(4)のいずれか
【0040】
【化14】
Figure 2004284965
【0041】
(式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物、もしくは式(1)〜式(4)のいずれかで示される化合物が溶解した水溶組成物。
【0042】
前記安定同位体を含有する化合物、もしくはその水溶組成物を、ヌクレオチドの共存下に、重合させて得られる安定同位体を含有する重合体、もしくはその重合体の水溶組成物。
【0043】
式(5)
【化15】
Figure 2004284965
【0044】
(式中、Aは水素原子もしくは水酸基を表し、Bはピリミジン塩基もしくはプリン塩基を表し、Rは典型金属元素、遷移金属元素、硫黄原子、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、およびフッ素原子から選ばれるいずれかを含有する分子団、もしくは水素原子を表し、qは1から5000の整数を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物もしくはその化合物を含有する組成物に対してエネルギーを照射して、該化合物を構成成分に分解・イオン化し、イオン化した構成成分をマススペクトルにより検出することを特徴とする分析方法。
【0045】
式(5)
【化16】
Figure 2004284965
【0046】
(式中、Aは水素原子もしくは水酸基を表し、Bはピリミジン塩基もしくはプリン塩基を表し、Rは典型金属元素、遷移金属元素、硫黄原子、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、およびフッ素原子から選ばれるいずれかを含有する分子団もしくは水素原子を表し、qは1から5000の整数を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物、その構成成分、もしくはそれらの水溶組成物を質量差の違いから分離するクロマトグラフィーシステムにより、質量別に分離することを特徴とする分析方法。
【0047】
式(6)〜式(9)のいずれかで示される化合物、もしくは式(6)〜式(9)のいずれかで示される化合物が溶解した水溶組成物。
【0048】
【化17】
Figure 2004284965
【0049】
(式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表し、Aは水酸基、モノリン酸エステルもしくは、ジリン酸エステルを表す。)
【0050】
式(10)で示される化合物。
【化18】
Figure 2004284965
【0051】
(式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは3から5の整数を表し、nは1から3の整数を表し、D−Dは炭素炭素二重結合もしくは炭素炭素三重結合を表し、R’は水素原子、もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0052】
式(11)または式(12)で示される化合物。
【化19】
Figure 2004284965
【0053】
(式中、mは3から5の整数を表す。)」である。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量(重量)基準とする。
【0055】
(安定同位体元素)
本発明において、標識源として使用可能な安定同位体元素は、非放射性の同位体を有する元素である限り、特に制限されない。安定同位体の入手しやすい点からは、金属ではアンチモン、バリウム、カドミウム、カルシウム、セリウム、クロム、銅、ユウロピウム、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、マグネシウム、水銀、モリブデン、ニッケル、オスミウム、パラジウム、白金、カリウム、ルテニウム、セレン、スズ、チタン、亜鉛等を用いることが好ましく、金属以外の元素では、硫黄、ケイ素、ハロゲン系元素等を用いることが好ましい。
【0056】
(分子集合体)
本発明において使用可能な、安定同位体元素を含有する分子集合体は、上記安定同位体元素を連結した分子団である。安定同位体元素は、共有結合または配位結合により分子集合体と連結されていることが好ましい。
【0057】
具体例としては、安定同位体元素が金属の場合には、金属と炭素鎖等が直接共有結合した有機金属化合物、または錯体のように金属を分子集合体の配位に関わる部分と配位結合により連結させた化合物等を例示することができる。連結がしやすいという点からは、メタロセン等の有機金属化合物を特に好適に使用することができる。
【0058】
安定同位体元素が非金属元素の場合には、例えば、分子集合体である化合物に安定同位体元素を共有結合により連結した化合物が、安定同位体元素を含有する分子集合体となったもの(例えば、有機ハロゲン化物、アルキル硫黄)等が例示される。
【0059】
(鉄元素を用いる態様)
安定同位体元素を含有する分子集合体の製造方法は特に限定されないが、ここでは、1つの好適な態様として、安定同位体元素として鉄を用いる場合を例に説明する。このように安定同位体元素として、鉄元素を用いた場合には、フェロセンなる、特に安定な有機金属を利用できるという利点がある。
【0060】
鉄元素を含有する分子集合体たるフェロセンは、金属鉄から製造する方法、または塩化鉄(II)から製造する方法等複数の方法が知られている。安定同位体別の鉄を用いれば、分子量の異なるフェロセンを製造することができる。また、コバルト、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等の遷移金属を安定同位体元素として用いる場合には、ホスフィン類等と配位させることにより安定な錯体として得られる場合が多く、安定同位体別にこれらの金属を用いて錯体を製造することにより、分子量の異なる錯体を製造することができる。
【0061】
このように化学的に安定なフェロセンや錯体は、安定同位体元素を含有する分子集合体として使用するためには好ましい分子集合体である。
【0062】
(ヌクレオチド)
前記式(1)〜式(4)のいずれかで示される化合物等の、安定同位体を含有するヌクレオチドとは、上記の安定同位体元素を含有する分子集合体をヌクレオチドに共有結合により連結した化合物、または安定同位体元素をヌクレオチドに直接共有結合により連結した化合物である。
【0063】
安定同位体を含有する化合物としては、重合体に含有させやすい点からは、式(1)〜式(4)、
【0064】
【化20】
Figure 2004284965
【0065】
(式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される安定同位体をのいずれかを含有する化合物が好ましい。
【0066】
更には、化合物の安定性の点からは、式(1)または式(2)
【0067】
【化21】
Figure 2004284965
【0068】
(式中、Mは鉄であり、mは3から5の整数であり、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物や、
式(3)または式(4)
【0069】
【化22】
Figure 2004284965
【0070】
(式中、Mは鉄であり、mは3から5の整数であり、Xは水酸基を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物が特に好ましい。
【0071】
(連結位置)
安定同位体元素を含有する分子集合体は、ヌクレオチドの任意の位置で連結することができる。合成上または重合体の製造の容易さの点からは、ヌクレオチドを構成する塩基がピリミジン塩基の場合には5位で連結され、塩基がプリン塩基の場合には8位で連結されていることが好ましい。ヌクレオチドへの連結技術は古くから検討され、ピリミジン塩基の場合には5位、およびプリン塩基の場合には8位に連結する技術は、当業者に周知である(このような連結技術の詳細に関しては、例えば「蛋白質 核酸 酵素」vol.11,pp.750(1966)を参照することができる)。
【0072】
本発明のヌクレオチドとは、プリン塩基もしくはピリミジン塩基が糖にβ−N−グリコシド結合した骨格を有するヌクレオシドと称される物質の、5’位がリン酸エステル誘導化された化合物である。
【0073】
かかるヌクレオチドは天然に存在する化合物に限定されるものではなく,ヌクレオシド骨格のいずれかの水素原子が、メチル基、エチル基、アリール基、フッ素原子、塩素原子、もしくはヨウ素原子等により置換された化合物も包含する。更には、前記式(1)〜式(4)のいずれかで示される化合物に加えて、式(6)〜式(9)のいずれかに示される化合物も、Aが水酸基以外の場合にはリン酸誘導体として包含される。ここに「リン酸誘導体」とは、式(13)〜式(15)
【0074】
【化23】
Figure 2004284965
【0075】
で示されるモノリン酸、ジリン酸、トリリン酸もしくは、それらの塩である。
【0076】
(標識源)
式(1)〜式(4)もしくは式(6)〜式(9)のいずれかで示される化合物において、標識源となる安定同位体元素は特に限定されないが、多種類の標識源を保有できる点からは、Mで示される化合物が安定同位体であることが好ましい。
【0077】
例えばMが鉄である態様においては、54Fe,56Fe,57Fe、57Feの4種を各々別々にMとした式(1)を製造すれば、4種類の分子量の異なる(1)を製造することができる。
【0078】
本発明の式(1)〜式(4)のいずれかで示される化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、式(6)〜式(9)のいずれかで示される化合物を3リン酸化することにより製造することができる(Chem. Papers, vol. 50,pp.151(1996))。また、別の製造方法として、式(1)〜式(4)のいずれかで示される化合物は、例えばシチジン5’−3リン酸のように3リン酸結合を有するヌクレオチドを出発原料にして、該3リン酸原料に安定同位体元素を含有する分子集合体を化学反応により導入する方法でも製造することができる。
【0079】
式(1)〜式(4)もしくは式(6)〜式(9)のいずれかで示される化合物は、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC分取法、アルコール沈殿法等、それ自体公知の方法により精製、単離することができる。
【0080】
(安定同位体を含有する重合体)
本発明において、安定同位体を含有する重合体の製造方法は特に限定されない。広く一般に用いられる点からはPCR反応を利用して、安定同位体を含有する重合体を製造することが好ましい。
【0081】
このような具体的な方法の一例を以下に説明する。
【0082】
通常、PCR反応によるcDNAの製造では、cDNAの原料である2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸、および2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸の4種類のヌクレオチドの混合物に、適切な添加物(例えば、塩化マグネシウム)の共存下、酵素により重合反応を進行させて製造する。ここで、上記4種類のヌクレオチドに例えば式(1)で示される化合物を共存させて重合させることにより、2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸として反応する一部が、式(1)で示される化合物に置き換わって反応することにより安定同位体を含有する重合体を製造することができる。
【0083】
上記例に示すように酵素反応により重合体を製造する場合には、用いるべき酵素が反応を進行させるために適した条件下で重合反応を行うことが好ましい。ただし、用いる酵素やヌクレオチドによりその重合反応条件は種々異なるため、反応温度、反応時間、添加剤等に特に厳密な規定はない。PCR反応、ニックトランスレーション法、ランダムプライミング法等の生体関連高分子の製造方法においては、例えばNucleic Acids Res., pp.3226(1994)、または新実験化学講座 20巻、pp.847、「DNA合成」記載の反応条件が例示される。
【0084】
また、本発明の重合体は、上記例のPCR反応等によるcDNAの製造に制限されることはなく、それ自体公知の化学的な製造方法を用いても製造することができる(このような「化学的な製造方法」の詳細については、例えば新実験化学講座 20巻、pp.737、「合成ポリヌクレオチドの調製」を参照することができる)。
【0085】
本発明において使用すべき重合原料としては、通常、ヌクレオチドを用いることができる。加えて、PNA等のヌクレオチドとは構造が異なるが、ヌクレオチドと類似の作用を示す化合物、または重合体に本発明の化合物が取り込まれるものならば任意の重合体に対しても、本発明の化合物は適用できる。
【0086】
本発明の安定同位体を含有する重合体の分子量は特に規定はないが、ヌクレオチド単位で10塩基〜5000塩基の重合体であることが好ましい。
【0087】
本発明の趣旨に反しない限り、本発明の安定同位体を含有する重合体は種々の形態で存在することができる。本発明の安定同位体を含有する重合体は、例えば単独の重合体として存在してもよく、また、他の化合物もしくは重合体と水素結合等により会合した形状で存在してもよい。本発明は、これら全ての安定同位体を含有する重合体の形態を包含する。
【0088】
(質量情報の検出方法)
標識源の安定同位体の質量情報を検出する方法はいくつかの種類が存在するが、本発明の化合物に適用すべき検出方法は特に制限されない。
【0089】
具体的な発明の化合物に適用可能な検出方法の例として、例えば、マススペクトルにより質量を検出する方法が挙げられる。このようなマススペクトルにより質量を検出する装置においては、例えば、本発明の化合物にレーザー等のエネルギーを照射してイオン化すればよい。またはレーザー等のエネルギー照射により本発明の化合物を構成成分に分解・イオン化する。ここで分解とイオン化は同時におこっても良いし、分解した後、その構成成分がイオン化しても良い。これらの方法で生成されたイオンの質量を検出して、安定同位体の質量情報を読み取ることができる。
【0090】
本発明の化合物をレーザー照射等により分解した構成成分の構造は、特に限定されない。構成成分を原子状態まで分解した原子も分解成分に含まれる。
【0091】
また、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)、または質量差分離クロマトグラフィー等の場合には、本発明の重合体やその構成成分を、各種の混合物の中から分離して検出する方法により、安定同位体の質量情報を得ることができる。上記方法においては、質量情報の検出に重合体の分子量を指標にしても、または重合体をレーザー照射、化学反応等の何らかの方法で構成成分に分解し、その構成成分をクロマトグラフィーにより分離して、分離した構成成分の質量を検出してもよい。
【0092】
(中間体)
上記したように、本発明の式(10)〜式(12)で示される化合物は、式(1)〜式(4)および式(6)〜式(9)で示される化合物を製造するために必要不可欠な重要中間体である。
【0093】
(化合物の適用法)
本発明の式(1)〜式(4)で示される化合物の適用先は特に制限されないが、DNAチップ、DNAマイクロアレイ等の標識化合物であることが好ましい。その適用方法は、例えば既存の蛍光標識ヌクレオチド(アマシャム社:DNAチップ、DNAマイクロアレイ用製品;Cy3−d−UTP等)等の化合物の適用方法と同一である(このような既存の蛍光標識ヌクレオチド適用方の詳細については、例えば、「DNAマイクロアレイと最新PCR法」(秀潤社)2000発行を参照することができる)。
【0094】
しかしながら、本発明の化合物は該既存標識ヌクレオチドにはない利点(すなわち、標識数が多い等の利点)を有するため、その適用範囲は既存標識ヌクレオチドの適用できる範囲に制限されることはなく、更にはDNAチップ、DNAマイクロアレイに制限されるものではない。本発明の化合物は、例えば、RNAチップ等にも適用することができる。
【0095】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0096】
【実施例】
(使用した試薬等)
以下の実施例および比較例においては、溶媒は特に断らない限り、市販品をそのまま用いた。ただし、乾燥DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)は、市販の脱水規格のDMFにモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業(株)社製、市販のDMF500mlに対して、30g程度)を添加して、一晩以上静置する乾燥操作を行った。シクロペンタジエンは反応使用前にジシクロペンタジエンを公知の方法(例えば、Organic Synthesis collective volumes,,238(1963)を参照)熱分解して単量化したものを用いた。
【0097】
d−ATP,d−TTP,d−GTP,d−CTPの略号は、各々2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸、2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸を表する。
【0098】
実施例1:フェロセン(56Fe成分)
56FeCl(250mmol)(日本酸素(株)製品)を100mlのテトラヒドロフラン(THF)(東京化成製)に添加した。THFを減圧下にて留去して乾固し、内容物を乾燥した。反応容器を氷冷し、40mlのシクロペンタジエンと100mlのジエチルアミン(東京化成製)を添加し、室温で終夜激しく攪拌した。過剰のアミンを減圧下に留去し、残査を沸騰石油エーテルにより抽出した。有機層をろ過した後、溶媒を留去することにより、目的物を含有する粗体を得た。
【0099】
得られた粗体をn−ペンタン(東京化成製)から再結晶して、34gの表題化合物を得た。融点は173℃であり、文献値と一致した。
【0100】
H−NMR(CDCl):δ4.15(10H,S)
同様にして他質量の同位体の塩化鉄(日本酸素(株)製)を使用することにより、54Fe,57Feからなるフェロセンを各々調製した。
【0101】
実施例2 化合物(16)(56Fe成分)
【0102】
【化24】
Figure 2004284965
【0103】
1.5gの塩化アルミニウム(和光純薬製)を200mlのジクロロメタン(東京化成製)にけん濁した。他方、実施例1で得られたフェロセン23gと、7.07gのグルタル酸無水物(東京化成製)の100mlのジクロロメタン溶液を、上記のけん濁に室温で30分かけて滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌した後に、氷水に反応液を添加した。ジクロロメタンにより抽出し、次いで炭酸ナトリウム水溶液(5%水溶液)で水層に逆抽出した。その後、ジクロロメタンを添加し、塩酸を滴下することで、再度有機層に抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥(室温、約1時間)後、ろ過し、溶媒を留去して15.9gの表題化合物(16)を得た。
【0104】
H−NMR(CDCl):δ4.8(2H,m),4.5(2H,m),4.2(5H,s),2.8(2H,t,J= ),2.4(2H,t,J= ),2.0(2H,m)
【0105】
実施例3 化合物(17)(56Fe成分)
【0106】
【化25】
Figure 2004284965
【0107】
1.02gの実施例2で得られた化合物(16)を、氷酢酸(東京化成製)50mlに溶解し、1.01gの酸化白金(エヌイーケムキャット製)を添加した。系内を水素で置換して、常圧、室温で17時間攪拌した。触媒をろ過して除去し、ろ液を濃縮することにより、表題化合物(17)を960mg得た。
【0108】
IR(KBr,cm−1):2934,1711,1431,1409,1314,1258,1215,1103
【0109】
実施例4 化合物(18)(56Fe成分)
【0110】
【化26】
Figure 2004284965
【0111】
実施例3で得られた化合物(17)800mgを、8mlのアセトニトリル(東京化成製)、0.25mlのピリジン(東京化成製)、12mlのジオキサン(東京化成製)の混合液に添加し、800mgのジスクシンイミドジカーボネート(東京化成製)を添加した。室温で3.5時間攪拌後、800mgのジスクシンイミドジカーボネートを再度添加し、室温で2時間攪拌した。減圧下に溶媒を留去して、残さにジエチルエーテルと0.1N塩酸を添加して抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥(室温、1時間)し、ろ過し、濃縮し、表題化合物(18)を748mg得た。冷凍庫中で静置すると結晶化した。
【0112】
H−NMR(CDCl3):δ4.4−4.1(9H,m),2.9(4H,brs),2.6(2H,t,J=7.6)
【0113】
実施例5 化合物(19)(56Fe成分)
【0114】
【化27】
Figure 2004284965
【0115】
実施例4で得られた化合物(18)の316mgを80mlのDMFに溶解し、室温で攪拌しながら、120mlのプロパルギルアミンを滴下した。滴下後は室温下に45分攪拌し、その後水と酢酸エチルにより抽出した。有機層を減圧下に濃縮し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(展開液:酢酸エチル・シクロヘキサン)、表題化合物(19)を198mg黄色固体として得た。
【0116】
H−NMR(d−DMSO):δ8.3(1H,brs),4.2−4.0(9H,m),3.8(2H,m),3.1(1H,brs),2.3−2.0(4H,m),1.6−1.4(4H,m)
【0117】
13C−NMR(d−DMSO):δ172,88,80,73,68,67,66,35,30,28,27,25
【0118】
実施例6 化合物(20)(56Fe成分)
【0119】
【化28】
Figure 2004284965
【0120】
プロパルギルアミンの替わりにアリルアミンを用いた以外は実施例5と同様にして、表題化合物(20)を黄色固体として得た。
【0121】
H−NMR(CDCl3):δ5.8(1H,m),5.4(1H,brs),5.3(2H,m),4.2−4.0(9H,m),3.8(2H,m),2.4(2H,t,J=7.5),1.8−1.4(2H,t,J=7.5)
【0122】
実施例7 化合物(21)(56Feを成分とする場合)
【0123】
【化29】
Figure 2004284965
【0124】
100mgの5−ヨード −2’−デオキシシチジン(アルドリッチ製)、10.8mgのヨウ化銅を乾燥した容器内に添加し、1.4mlの乾燥DMFを添加し、系内をアルゴン雰囲気に置換した。
【0125】
別の乾燥した容器に、実施例5で得られた化合物(19)の187mg、57mgのトリエチルアミンを1.0mlの乾燥DMFに溶解した溶液をアルゴン下に調製した。このようにして得られた溶液を、上記で得られた5−ヨード −2’−デオキシシチジンの溶液に添加し、約50mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(関東化学製)を添加し、室温で1時間攪拌した。反応液に1.5mlのジクロロメタンと1.5mlのメタノールおよび、1.5mlの希薄(濃度5%)重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、減圧下に濃縮した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して110mgの表題化合物(21)を黄色固体として得た。
【0126】
H−NMR(d−DMSO):δ8.3(1H,brs),8.2(1H,S),7.7(1H,brs),6.8(1H,brs),2.2(1H,t,J=8.5),5.2(1H,brs),5.0(1H,brs),4.2−4.11(9H,m),4.10−3.9(2H,m),3.7(1H,m),3.6−3.5(2H,m),2.3−1.9(4H,m),1.6−1.4(4H,m)
【0127】
13C−NMR(d−DMSO):δ173,164,154,143,92,89,87,85,74,70,68,67,66,61,41,35,30,29,28,25
【0128】
MS(ESI法):548(M+H)+(マイクロマス社製のLCT質量分析計を使用)
2次元解析:日本電子社製のNMR装置JUM−AL400を用いて、H−C,H−H相関2次元スペクトルを測定し、構造確認を行った。
【0129】
実施例8 化合物(2)(56Feを成分とする場合)
文献(Chem. Papers, vol 50,pp.151(1996))記載の方法に従い、実施例7で得られた化合物(21)の5’位を3リン酸誘導体化した。オキシ塩化リンは反応直前にアルゴン雰囲気下に蒸留したものを用いた。ビス(トリブチルアンモニウム)ピロホスフェートは上記文献記載の方法に従い、ピロリン酸ナトリウム(シグマ製)から調製し、DMF溶液化してアルゴン下に冷蔵庫内で保管したものを用いた。
【0130】
乾燥容器に実施例7で得られた化合物(21)91mgを添加し、次いで2.0mlのトリメトキシリン酸(東京化成製)を加えて溶液とし、系内をアルゴン置換した。上記の化合物(21)溶液を−10℃に冷却し、20μLのオキシ塩化リン(アルドリッチ製)を添加した。−10℃で0.5時間攪拌するが、HPLC分析により化合物(21)の残存が確認されたため、更に−10℃で、20μLのオキシ塩化リンを添加した。添加後は−10℃で0.5時間、次いで0℃で0.5時間攪拌した。HPLC分析によりほぼ全量の化合物(21)の消費が確認された。反応液は緑色を呈した。
【0131】
別の乾燥容器にアルゴン雰囲気下、−10℃に冷却した、2mlのビス(トリブチルアンモニウム)ピロホスフェートのDMF溶液(1M)に、上記で得たモノリン酸化反応液をゆっくり(約5分かけて)滴下し、滴下後は−10℃で0.5時間、次いで0℃で1時間攪拌した。HPLC分析によりモノリン酸化合物に相当するピークの消失と新規ピークの出現を確認した。反応液は緑色から黄色に変色した。
【0132】
このようにして得られた反応液を、あらかじめ0℃に冷却しておいた、水(4ml)とトリエチルアミン(260μL)(東京化成製)の混合液に添加して、0℃で15分攪拌し、20℃以下で減圧下に1/5程度の容量まで濃縮した。0.1Mの重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液により前処理したDEAE Sephadex A−25(アマシャム製、前処理前ゲル)を用いてイオン交換精製した。得られた濃縮液をこのDEAE Sephadex A−25に充填した後、展開する重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液を0.1Mから1Mまで徐々に高めて溶出させた。
【0133】
目的とする化合物(2)を含有するフラクションは0.8M付近で溶出したフラクションに溶出された。該フラクション部分は、UV検出によるHPLC分析スペクトル上は特に他の不純物を含有することなく、ほぼ単一ピークとして得られた。該フラクション部分を濃縮することにより、表題化合物(2)を104mg得た。
【0134】
表題化合物をICP発光分析法(セイコーインスツルミンツ社製、SPS4000装置)により分析すると鉄の存在が確認された。
【0135】
31P−NMR(DO):−12.1(d,J=21Hz) ,−25.8(brs) , −11.9(d,J=21Hz)
【0136】
上記31P−NMR分析(日本電子社、NMR装置JUM−AL400)により、3リン酸に特有のケミカルシフトが検出された。
【0137】
【表2】
Figure 2004284965
【0138】
実施例9 化合物(1)(56Feを成分とする場合)
文献(Proc, Natl, Acad, Sci, USA,vol78,pp.6633(1981))記載の方法に従い、70mgの5−(1−アリルアミノ)2’−デオキシシチジン3リン酸を2’−デオキシシチジン3リン酸(シグマ製)を出発原料として合成した。
【0139】
68mgの5−(1−アリルアミノ)2’−デオキシシチジン3リン酸を1.2mlの0.1M 四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH 8.5)に溶解させ、黄色溶液とした。
【0140】
別容器に調製した2.6mgの化合物(18)を1.2mlのDMFに溶解した溶液を、先の黄色溶液(5−(1−アリルアミノ)2’−デオキシシチジン3リン酸溶液)に室温下に約10分かけて滴下した。反応液ははじめけん濁した状態であったが、攪拌によりほぼ均一化した。室温で1.5時間静置した後に、20℃以下で濃縮して溶媒を留去して反応液の容量を約1/5まで濃縮した。0.1Mの重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液(ナカライテスク製)により前処理したDEAE Sephadex A−25(アマシャム製)を用いてイオン交換精製した。先の濃縮液をDEAE Sephadex A−25に充填した後、展開する重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液を0.1Mから1Mまで徐々に高めて展開した。目的とする化合物(1)を含有するフラクションは0.7M付近で溶出したフラクションに溶出された。フラクションを濃縮することにより、化合物(1)を1.5mg得た。
【0141】
H−NMR(CD3OD):δ8.2(1H,brs),6.3(1H,t,J=7.6),6.0(1H,d,J=7.4) ,5.4(1H,brs),4.5(1H,brs), 4.2−4.0(9H,m),3.8−3.5(2H,m),2.7−2.0(6H,m),1.8−1.4(4H,m)
表題化合物をICP発光分析法により分析すると鉄の存在が確認された。
【0142】
実施例10 PCR反応による、化合物(2)共存下のcDNAの合成
各成分の濃度が10mMのd−ATP,d−TTP,d−GTP,d−CTP(アマシャム、宝酒造製)の混合水溶液を調製した。一方、d−ATP,d−TTP,d−GTPの各濃度が10mMであり、且つd−CTPに対してモル比で24%,30%,36%,100%の割合で化合物(2)を含有し、d−CTPと化合物(2)を合わせた濃度が10mMとなる溶液を調製した。すなわち、d−CTPに対して化合物(2)を0%〜100%の割合で置換したもの(d−CTPと化合物(2)を合わせて10mM)、および10mMのd−ATP,d−TTP,d−GTPの3種が混合した溶液を調製した(5種類)。
【0143】
上記溶液に対して、以下の条件でPCR反応を行い、化合物(2)がcDNAに取り込まれることを電気泳動によるcDNAバンドの移動度から確認した。
【0144】
反応条件
鋳型DNA: h IFNα
プライマー:h IFNα5’−BamHI, h IFNα3’−SacI
添加剤 :MgCl、PCR buffer(宝酒造製)
酵素 :LA−Taq
【0145】
電気泳動図を図1に示す。
【0146】
図1に示す電気泳動結果からわかるように、d−CTPに対して化合物(2)の含有量の増加に比例して、バンド移動度の違いを確認できた。この結果は生成したcDNAの分子量が増加したためであり、d−CTPよりも分子量が大きい化合物(2)がcDNAに取り込まれた結果である。しかも、化合物(2)の取り込まれた量は、化合物(2)の添加量の増加に比例して増加していることがバンド移動度の違いから示された。
【0147】
d−CTPの全量を化合物(2)に置き換えた場合には、cDNAの生成が確認されなかったが、この現象は本発明の化合物に特有な現象ではなく、従来技術である蛍光標識化合物の場合にも確認されている(Nucleic Acids Res.,pp.3226(1994))。
【0148】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、安定同位体を標識源とする式(1)〜式(4)のいずれかで示される化合物が提供される。このような化合物を用いることより、従来の標識化合物では実現できなかった下記の利点が得られる。
1)多種類の標識源が利用できる;
2)複数の標識源をポリヌクレオチドに導入できる;
3)従来の安定同位体標識法よりも標識化ポリヌクレオチドを効率的に調製できる。
本発明を診断薬等として利用して臨床現場における疾患判断等に適用する場合には、これらの利点に基づき疾患原因遺伝子の迅速な判定が可能となるため、その有用性は特に顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の安定同位体を含有する重合体の生成を示す電気泳動図である。

Claims (15)

  1. 式(1)〜式(4)のいずれか
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物、またはその塩。
  2. 式(1)または式(2)
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄であり、mは3から5の整数であり、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される請求項1記載の安定同位体を含有する化合物またはその塩。
  3. 式(3)または式(4)
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄であり、mは3から5の整数であり、Xは水酸基を表す。)で示される請求項1記載の安定同位体を含有する化合物。
  4. 請求項1から請求項3記載のいずれかで示される化合物を含有する水溶液。
  5. 式(1)〜(4)のいずれかで示される化合物で、リン酸基の対カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウムの少なくとも一つから選ばれる請求項1から請求項4いずれか記載の安定同位体を含有する化合物の塩。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載された安定同位体を含有する化合物、その塩、もしくはそれを含有する水溶組成物を、ヌクレオチドの共存下に重合させて得られる、安定同位体を含有する重合体もしくはその重合体の水溶組成物。
  7. 式(1)または式(2)
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物、その塩、もしくはそれを含有する水溶液組成物を、2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸、および2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸の4種類のヌクレオチドの共存下に重合させて得られる安定同位体を含有する重合体もしくはその重合体の水溶組成物。
  8. 式(1)〜式(4)のいずれか
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物、その塩、もしくはその水溶組成物を、アデノシン−5’−三リン酸、シチジン−5’−三リン酸、グアノシン−5’−三リン酸、およびウリジン−5’−三リン酸の4種類のヌクレオチドの共存下に重合させて得られる安定同位体を含有する重合体もしくはその重合体の水溶組成物。
  9. 式(5)
    Figure 2004284965
    (式中、Aは水素原子もしくは水酸基を表し、Bはピリミジン塩基もしくはプリン塩基を表し、Rは典型金属元素、遷移金属元素、硫黄原子、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、およびフッ素原子から選ばれるいずれかを含有する分子団もしくは水素原子を表し、qは1から5000の整数を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物もしくはそれを含有する組成物に対してエネルギーを照射して、該化合物を構成成分に分解・イオン化し、イオン化された構成成分をマススペクトルにより検出することを特徴とする分析方法。
  10. 式(5)
    Figure 2004284965
    (式中、Aは水素原子もしくは水酸基を表し、Bはピリミジン塩基もしくはプリン塩基を表し、Rは典型金属元素、遷移金属元素、硫黄原子、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、およびフッ素原子から選ばれるいずれかを含有する分子団もしくは水素原子を表し、qは1から5000の整数を表す。)で示される安定同位体を含有する化合物もしくはその構成成分およびそれらを含有する水溶組成物を、質量差の違いから分離するクロマトグラフィーシステムにより、質量別に分離することを特徴とする分析方法。
  11. 式(6)〜式(9)のいずれかで示される化合物
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは2から6の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表し、Aは水酸基、モノリン酸エステルもしくは、ジリン酸エステルを表す。)、もしくは、それらを含有する水溶組成物。
  12. 式(6)または式(7)
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄を表し、mは3から5の整数を表し、Xは水素原子もしくは水酸基を表し、Aは水酸基、モノリン酸エステルもしくは、ジリン酸エステルを表す。)で示される請求項10記載の化合物、もしくは、それらを含有する水溶組成物。
  13. 式(8)または式(9)
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄を表し、mは3から5の整数を表し、Xは水酸基を表し、Aは水酸基、モノリン酸エステルもしくは、ジリン酸エステルを表す。)で示される請求項10記載の化合物、もしくは、それらを含有する水溶組成物。
  14. 式(10)で示される化合物。
    Figure 2004284965
    (式中、Mは鉄、ルテニウム、コバルトもしくはニッケルを表し、mは3から5の整数を表し、nは1から3の整数を表し、D−Dは炭素炭素二重結合もしくは炭素炭素三重結合を表し、R’は水素原子、もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
  15. 式(11)または式(12)で示される化合物。
    Figure 2004284965
    (式中、mは3から5の整数を表す。)
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