JP2004284849A - セラミックス原料及びセラミックス焼結体 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃ガラス等のアルカリ含有ガラスを大量に利用することができるシリカ代替のセラミックス原料及びセラミックス焼結体を提供する。
【解決手段】アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分を除去することによって、アルカリ含有量が3重量%以下のセラミックス原料とする。アルカリ含有ガラス粉末の平均粒子径を1〜20μmとした後に、アルカリ成分を除去することが好ましく、アルカリ含有ガラス粉末は廃ガラスの粉末であることが好ましい。また、塩化ビニル樹脂を含む廃棄物から発生する塩化水素ガスを用いてアルカリ成分を除去することが好ましい。さらに、このセラミックス原料を添加して焼成することによってセラミックス焼結体とする。
【選択図】 なし
【解決手段】アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分を除去することによって、アルカリ含有量が3重量%以下のセラミックス原料とする。アルカリ含有ガラス粉末の平均粒子径を1〜20μmとした後に、アルカリ成分を除去することが好ましく、アルカリ含有ガラス粉末は廃ガラスの粉末であることが好ましい。また、塩化ビニル樹脂を含む廃棄物から発生する塩化水素ガスを用いてアルカリ成分を除去することが好ましい。さらに、このセラミックス原料を添加して焼成することによってセラミックス焼結体とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス原料及びセラミックス焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃ガラスのリサイクルは、種々の分野において積極的に推進されている。特に、透明廃ガラスなどの一部は、粉砕を施して再度ガラス原料として利用されているが、その発生量に見合う大量利用技術はいまだ確立されていない。また、着色ガラスや医療廃棄物として発生する廃ガラスなどは、ガラスを構成する成分上の問題や安全性の問題から、ほとんどリサイクルの目処が立っていないのが現状である。
【0003】
これらのガラスは、SiO2含量が多い珪酸塩ガラスであり、高い反応性を有することから、無機工業原料としての再利用が期待されている。しかし、一般に流通するガラスの多くは、ソーダガラスと呼ばれるもので、その名が示す通り、アルカリ含有量(酸化物換算)は、Na2OとK2Oの合計で10〜15重量%と非常に高いものである。アルカリ含有量を低下させる方法としては、例えば、廃ガラスに酸性ガスを接触させた後、水洗する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−284546号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、無機工業原料への利用の中でセラミックス原料への利用に関しては、アルカリが存在すると焼結時に異常粒成長や非晶質相の増大を引き起こすため、機械的特性などに劣る焼結体となり易く、アルカリ含有ガラスの適用条件を厳格に定めなければ、アルカリ含有ガラスの大量処理と、セラミックス原料への有効活用を両立させることができないという問題がある。
そこで、本発明は、廃ガラス等のアルカリ含有ガラスを大量に利用することができるシリカ代替のセラミックス原料及びセラミックス焼結体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るセラミックス原料は、アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分を除去することによって得られるアルカリ含有量が3重量%以下のものである。
【0007】
アルカリ含有ガラスを粉末にしてセラミックス原料として用いると、アルカリ成分を含んでいるため、異常粒成長などを来し、セラミックス焼結体の強度が著しく低下してしまう。このため、アルカリ含有ガラスは、セラミックス原料として利用することができなかった。しかし、本発明のように、アルカリ含有量を3重量%以下にすることで、異常粒成長や非晶質相の増大を抑えることができ、シリカの物性を損ねることなく、シリカ代替のセラミックス原料として使用することができる。
【0008】
アルカリを除去する方法としては、ガラス粉末と塩化水素ガスとを反応させて、ガラス表面にNaCl、KClなどの塩化物を生成せしめ、この生成塩を水洗除去することが極めて有効である。ガラス中のアルカリ金属を塩化水素との反応によって除去することにより、ガラスの比表面積が約30%増大することに加え、ガラスは元来、非晶質であり反応性に富むことから、該水洗後のガラスはセラミックス原料であるシリカ代替として利用することができる。
【0009】
アルカリ含有ガラス粉末の平均粒子径を1〜20μmとした後に、アルカリ成分を除去することが好ましい。また、上記アルカリ含有ガラス粉末は、廃ガラスの粉末が好ましい。さらに、塩化ビニル樹脂を含む廃棄物から発生する塩化水素ガスを用いてアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0010】
本発明は、別の態様として、セラミックス焼結体であって、上記の本発明に係るセラミックス原料を添加して焼成することによって得られるものである。セラミックス焼結体としては、アルミナ(Al2O3)質セラミックス焼結体、ムライト(3Al2O3・2SiO2)質セラミックス焼結体、普通磁器(Al2O3・SiO2)又はステアタイト(MgO・SiO2)質セラミックス焼結体が好ましい。また、本発明のセラミックス焼結体は、優れた強度を有するため、耐熱部材、耐磨耗部材、耐化学薬品部材、絶縁部材、電子部品部材などに使用することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るセラミックス原料及びセラミックス焼結体の実施の形態を説明する。
(セラミックス原料の製造)
本発明に係るセラミックス原料の出発原料となるアルカリ含有ガラスは、特に限定されないが、廃棄物の有効利用の観点から、廃ガラスを用いることが好ましい。廃ガラスとしては、例えば、瓶ガラス、板ガラス、透明ガラスなどが利用できる。また、従来、資源として活用が見送られていた着色ガラスであっても利用することができる。また、後に述べるように、これら廃ガラスと塩化水素ガスとの反応は高温の条件下で行うことができるので、医療現場から発生するガラス廃棄物なども利用できる。用いる廃ガラスの形態は、塊状、粒状、粉末などいかなる形態であっても良い。すなわち、予めガラス微粉末として提供されるものも本発明の対象となる。アルカリ含有ガラスの典型的な化学組成(重量%)は、SiO2:65〜75%、Al2O3:1〜20%、Fe2O3:0.1〜3.0%、CaO:3〜15%、MgO:0.1〜5.0%、Na2O:5〜15%、K2O:0.1〜3.0%である。
【0012】
アルカリ含有ガラスは、先ず、所定の大きさ、すなわち、塩化水素との反応性に優れ、かつセラミックス原料として利用する上で適当な大きさに粉砕する。
なお、塊状あるいは板ガラスなどの板状のものは、予め粗砕機によって粗砕する。粗砕機としては、例えば、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。粗砕機よるガラス粗砕物は、粒径を3mm以下とすることが好ましく、目開き3mmの振動篩いなどを用い分級すると良い。また、篩い上の3mm以上のガラスは繰り返し粗砕を行い、全量3mm以下の粒径とする。粗砕したガラスの粒度が粗い場合は、後工程で最終的な粉末に粉砕しづらくなり、粉砕時間が必要以上に長くなることがあるので好ましくない。
【0013】
粗砕した粗砕物は、さらに鉄製のボールミルなどの粉砕機により、平均粒子径で1〜20μmに粉砕する。ガラス微粉末を得るための粉砕機は、ボールミルに限らず、乾式、湿式を問わず公知のいずれの手段をも用いることができる。ガラス粉末を所定の平均粒子径に調整することによって、後工程である塩化水素ガスとガラスに含まれるアルカリ金属との反応を容易にさせ、ガラスの表層のみならず、全層にわたり反応させることができる。ここで、塩化水素ガスとの反応性を考慮すると、粒子径が小さいほど好ましいが、平均粒子径が1μm未満の粉砕物を得るためには、特殊な粉砕機あるいは分級操作が必要になり、著しく粉砕コストが高騰するので好ましくない。一方、粉砕ガラスの平均粒子径が20μmを超えると、ガラス中のアルカリ金属と塩化水素ガスとの反応が不十分になりやすく、ガラス中に残留するアルカリ成分が多くなるので好ましくない。
【0014】
粉砕により得られたアルカリ含有ガラス微粉末は、塩化水素ガスと反応させて、ガラス微粉末の表面にアルカリ金属塩化物を生成させる。
アルカリ含有ガラス微粉末と塩化水素ガスとの反応条件は、アルカリ含有ガラス粉末の粒子径と塩化水素ガスの濃度に応じて調整することができる。ガラスの平均粒子径が1〜20μmの条件下では、塩化水素ガスの濃度が3〜10体積%であれば、300〜600℃で概ね70〜340分、塩化水素ガスの濃度が50〜100体積%であれば、300〜600℃で概ね5〜60分とすることが好ましい。ここで用いる塩化水素ガスは市販のガスでも良いが、塩化ビニル樹脂系の廃棄物や塩素含有廃棄物の熱分解、あるいは燃焼過程から発生する塩化水素ガスなども利用できる。
【0015】
ガラス微粉末の表面に生成したアルカリ金属塩化物は、水洗により除去する。水洗の方法は特に限定されないが、例えば、塩化水素ガスと反応させたガラス微粉末をタンク内で水とともに1時間程度攪拌し、ろ過によって水とガラス微粉末を分離回収する。水洗方法としては、バッチ式、連続式を問わず、ガラス微粉末と水とを強制的に攪拌できるものであれば、公知のいずれの手段を用いることができる。攪拌に限らず、粉砕を伴うものであっても良く、またフィルター上にガラス微粉末を広げて、散水する方法でも良い。水洗したガラス微粉末と洗浄水を分離する方法としては、フィルターによるろ過に限らず、デカンタや遠心分離などの公知のいずれの方法も用いることができる。回収したガラス微粉末は、乾燥して、凝集が強い場合は、適度な粉砕、解砕を行っても良い。
【0016】
得られた回収物は、二酸化ケイ素を主要成分とし、アルカリ成分が3重量%以下まで除去されているので、セラミックス原料として用いることができる。セラミックス原料の残留アルカリ成分が3重量%を超える場合、焼結すると、異常粒成長などの影響によってセラミックス焼結体の強度が低下し、セラミックス焼結体として使用に堪えない。セラミックス原料の典型的な化学組成(重量%)は、SiO2:70〜97%、Al2O3:1〜10%、Fe2O3:0.1〜3.0%、CaO:0.1〜5.0%、MgO:0.1〜3.0%、Na2O:0.1〜2.0%、K2O:0.1〜3.0%である。
【0017】
(セラミックス焼結体の製造方法)
セラミックス原料は上記の通りSiO2が主要成分となるので、SiO2を焼結助剤とするセラミックス焼結体や、SiO2を主要成分の1つとして含むセラミックス焼結体に使用することができる。SiO2を焼結助剤とするセラミックス焼結体としては、例えば、アルミナ質セラミックス焼結体がある。この場合、例えば、セラッミクス原料を焼結助剤として約0.5〜15重量%添加することにより優れた強度を有するセラミックス焼結体を得ることができる。
【0018】
また、SiO2を主要成分の1つとして含むセラミックス焼結体としては、例えば、ムライト質セラミックス焼結体、普通磁器又はステアタイト質セラミックス焼結体がある。ムライトの場合、SiO2の重量割合は典型的には約28.2重量%であることから、本発明のセラミックス原料を約0.5〜30重量%の範囲で添加することができる。普通磁器の場合、SiO2の重量割合は典型的には約37.1重量%であることから、本発明のセラミックス原料を約0.5〜40重量%の範囲で添加することができる。ステアタイトの場合、SiO2の重量割合は典型的には約59.9重量%であることから、本発明のセラミックス原料を約0.5〜60重量%の範囲で添加することができる。
【0019】
このように、本発明のセラッミクス原料は、セラミックス焼結体の通常60重量%以下で、好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは4.5〜40重量%の範囲で添加することができる。なお、これらセラミックス焼結体中のSiO2分をすべて本発明のセラミックス原料でまかなう必要はなく、珪石等のシリカ源と併用しても良い。
【0020】
セラミックス焼結体を得るために、セラミックス原料と混合する他の原料としては、試薬のアルミナ、シリカに限らず、純度90%以上のアルミナ、カオリナイト、モンモリロナイト、粘土、タルク、ドロマイト、珪石、長石などを用いることができる。
【0021】
これら原料と本発明のセラミックス原料は、セラミックス製あるいは磁性のチューブミルを用いて湿式にて微粉砕を行う。この際、粉砕機は、チューブミルに限定されるものではなく、アトライタ(商品名、三井鉱山株式会社製)等の強制攪拌粉砕を伴うものでも良い。粉砕の媒体としては、水道水あるいはイオン交換水を用いる。イソブチルアルコール等のアルコール類を用いても構わないが高価なため経済的でない。粉砕媒体として用いる水道水等は、後工程である造粒の作業性等を考慮し、混合原料の固形分粉末量に対し、40〜60重量%添加するのが好ましい。湿式粉砕の際、粉末の投入時に、消泡剤、分散剤、あるいはプレス成形体の型枠剥離性を向上するための離形剤を少量加えることができる。これら添加剤については、粉砕時に限らず、粉砕後のスラリーに添加しても良い。湿式粉砕機での粉砕時間は、焼結性を考慮し、概ね12〜24時間とし、平均粒子径で3μm以下とすることが好ましい。
【0022】
このようにして得られたスラリーは、振動篩い等により、ゴミや異物を除去した後、成形バインダーとして、PVAを固形分に対して1〜5重量%で添加し、攪拌機で十分に混合する。このスラリーをスプレードライヤーなどの造粒機により造粒する。造粒機はスプレードライヤーに限定されず、公知の造粒機を使用できる。造粒機によって平均粒子径で10〜150μmの真球状の造粒物を得ることができる。
【0023】
造粒物は、一軸油圧プレス機等の成形機を用いて所定寸法の金型に造粒物を充填して成形するか、又はゴム型を用いて静水圧成形して成形するのが一般的であるが、これらに限定されるものではない。成形は概ね1t/cm2以上、好ましくは1〜2t/cm2で行う。1t/cm2未満だと、密度の低い成形体となり、緻密質な焼結体を得るのが難しくなるため好ましくない。一方、2t/cm2を超えると、成形体の著しい密度の上昇は望めないため効率的でない。
【0024】
得られた成形体は、セラミックヒータ、カンタルスーパー(商品名、カンタル株式会社製)等の発熱体を備えた電気炉によって焼成するが、これらに限定されるものではなく、ホットプレス等を用いても良い。また、電気炉はバッチ式でも連続式でも構わず、雰囲気調整できるものでも良い。焼成温度は概ね1300〜1700℃とし、昇温速度は炉材等の消耗を考慮して1℃/分以下とすることが望ましい。また、最高温度で60分以上保持し、焼結させると焼結斑やバッチごとの焼結体の品質のバラつきが少なくなるので良い。さらに、成形バインダーとして添加した有機物を脱脂するため、昇温時に350℃近傍で60分以上保持すると良い。こうしてセラミックス焼結体を得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の試験例を説明する。
なお、アルカリ含有量(R2O)、すなわちNa2O、K2Oなどアルカリ金属の酸化物で換算した含有合計量の定量は、JCASI−51「珪酸原料の化学分析法」により行った。
【0026】
セラミックス原料の製造
(試験例1)
酸化物換算での化学組成がSiO2:71.3重量%、Al2O3:3.0重量%、CaO:11.5重量%、R2O:12.8重量%のガラスを平均粒子径で20μmに粉砕した。このガラス粉末を600℃に加熱した管状電気炉内で塩化水素10体積%の標準ガスと180分間反応させた。反応後のガラス粉末を水洗した後、ろ過にて固形分を回収した。この回収物105℃の乾燥機に6時間保管した後、この乾燥物の均質化を行い、乾燥物の化学組成を確認したところ、酸化物換算でSiO2:79.4重量%、Al2O3:3.6重量%、CaO:13.4重量%、R2O:2.9重量%であった。この乾燥物をセラミックス原料(試験例1)とした。
【0027】
(試験例2)
ガラスを平均粒子径で50μmに粉砕したことを除き、試験例1と同様の方法によってセラミックス原料(試験例2)を得た。試験例2の化学組成を確認したところ、酸化物換算でSiO2:71.6重量%、Al2O3:3.3重量%、CaO:11.8重量%、R2O:11.5重量%であった。
【0028】
セラミックス焼結体の製造
(試験例3)
試験例1で得られたセラミックス原料に、表1に示す混合割合となるよう、高純度アルミナ(99.99%)と酸化マグネシウム試薬を加え、残部として珪石、タルク、ドロマイトを加え混合した。この混合物を湿式のアルミナ製ボールミル(アルミナボール)に投入し、投入した混合物に対して40重量%の上水道水を加え、24時間粉砕混合し、平均粒子径で2.06μmのスラリーを得た。次いで、成形用バインダーとして50wt%のPVA水溶液を、スラリーの固形分重量に対して3重量%添加し、攪拌器にて十分に混合した。この混合スラリーを250℃の温度に加熱したスプレードライヤーにて噴霧して、平均粒子径で30μmの球形状の造粒物を得た。この造粒物を50mm×50mmの超硬合金製の金型に充填し、油圧式の一軸プレス機にて1トン/cm2の圧力にて成型し、50mm×50mm×10mmの成形体を得た。成形体をセラミックス製ヒータの電気炉にて1℃/分で300℃まで昇温し、有機バインダーの脱脂のため、1時間保持した。脱脂後、1℃/分で最高温度1600℃まで昇温し、2時間保持した後、室温まで除冷して、電気炉より取り出した。このようにして得られたセラミックス焼結体(試験例3)は、クラック等のない緻密質なものであった。
【0029】
(試験例4〜6)
混合物の混合割合及び焼結の最高温度を表1の条件としたことを除いて、試験例3と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例4〜7)を得た。
【0030】
(試験例7)
セラミックス原料として、試験例1の代わりに試験例2を用いたことを除いて、試験例3と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例7)を得た。
【0031】
(試験例8)
セラミックス原料として、試験例1の代わりに、試験例1の出発原料であるガラスを平均粒子径で3μmに粉砕したガラス粉末を未反応のまま用いたことを除いて、試験例3と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例8)を得た。
【0032】
(試験例9)
混合物の混合割合及び焼結の最高温度を表1の条件としたことを除いて、試験例8と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例9)を得た。
【0033】
(密度及び曲げ強度の測定)
試験例3〜9の各セラミックス焼結体から38mm×4mm×3mmのテストピースを平面研削盤によって5本づつ切り出し、JIS R 1634の「ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法」に準拠して焼結体の密度を測定した。また、同テストピースを用いて、JIS R 1601の「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に準拠して曲げ強度の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を4.5〜40.0重量%含む試験例3〜5の各セラミックス焼結体は、曲げ強度が200MPa/mm2以上と高い強度を有していた。一方、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を60.0重量%含む試験例6のセラミックス焼結体は、曲げ強度が70MPa/mm2と著しい強度の低下を示した。
【0036】
また、R2Oが7.0重量%、12.8重量%の各セラミックス原料を4.5重量%含む試験例7、試験例8の各セラミックス焼結体は、アルカリ含有量が増加するほど、曲げ強度が250、150MPa/mm2と低下した。一方、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を同重量%で含む試験例3のセラミックス焼結体は、曲げ強度が350MPa/mm2と非常に高い強度を有していた。
【0037】
さらに、R2Oが12.8重量%のセラミックス原料を40.0重量%含む試験例9のセラミックス焼結体は、曲げ強度が73MPa/mm2と著しく低い強度であったが、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を同重量%で含む試験例4のセラミックス焼結体は、曲げ強度が200MPa/mm2と高い強度を有していた。
【0038】
なお、アルミナ質セラミックス焼結体では、一般に、Al2O3を約60重量%以上含む場合で約150MPa/mm2以上の曲げ強度を、約80重量%以上含む場合で約300MPa/mm2以上の曲げ強度を、約92〜98重量%含む場合で約350〜400MPa/mm2の曲げ強度を得ることができる。すなわち、Al2O3の混合割合が高い程、曲げ強度が向上する。本発明では、表1に示すように、どのAl2O3の混合割合においても従来のシリカと同程度の曲げ強度を得ることができる。
【0039】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によれば、廃ガラス等のアルカリ含有ガラスを大量に利用することができるシリカ代替のセラミックス原料及びセラミックス焼結体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス原料及びセラミックス焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃ガラスのリサイクルは、種々の分野において積極的に推進されている。特に、透明廃ガラスなどの一部は、粉砕を施して再度ガラス原料として利用されているが、その発生量に見合う大量利用技術はいまだ確立されていない。また、着色ガラスや医療廃棄物として発生する廃ガラスなどは、ガラスを構成する成分上の問題や安全性の問題から、ほとんどリサイクルの目処が立っていないのが現状である。
【0003】
これらのガラスは、SiO2含量が多い珪酸塩ガラスであり、高い反応性を有することから、無機工業原料としての再利用が期待されている。しかし、一般に流通するガラスの多くは、ソーダガラスと呼ばれるもので、その名が示す通り、アルカリ含有量(酸化物換算)は、Na2OとK2Oの合計で10〜15重量%と非常に高いものである。アルカリ含有量を低下させる方法としては、例えば、廃ガラスに酸性ガスを接触させた後、水洗する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−284546号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、無機工業原料への利用の中でセラミックス原料への利用に関しては、アルカリが存在すると焼結時に異常粒成長や非晶質相の増大を引き起こすため、機械的特性などに劣る焼結体となり易く、アルカリ含有ガラスの適用条件を厳格に定めなければ、アルカリ含有ガラスの大量処理と、セラミックス原料への有効活用を両立させることができないという問題がある。
そこで、本発明は、廃ガラス等のアルカリ含有ガラスを大量に利用することができるシリカ代替のセラミックス原料及びセラミックス焼結体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るセラミックス原料は、アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分を除去することによって得られるアルカリ含有量が3重量%以下のものである。
【0007】
アルカリ含有ガラスを粉末にしてセラミックス原料として用いると、アルカリ成分を含んでいるため、異常粒成長などを来し、セラミックス焼結体の強度が著しく低下してしまう。このため、アルカリ含有ガラスは、セラミックス原料として利用することができなかった。しかし、本発明のように、アルカリ含有量を3重量%以下にすることで、異常粒成長や非晶質相の増大を抑えることができ、シリカの物性を損ねることなく、シリカ代替のセラミックス原料として使用することができる。
【0008】
アルカリを除去する方法としては、ガラス粉末と塩化水素ガスとを反応させて、ガラス表面にNaCl、KClなどの塩化物を生成せしめ、この生成塩を水洗除去することが極めて有効である。ガラス中のアルカリ金属を塩化水素との反応によって除去することにより、ガラスの比表面積が約30%増大することに加え、ガラスは元来、非晶質であり反応性に富むことから、該水洗後のガラスはセラミックス原料であるシリカ代替として利用することができる。
【0009】
アルカリ含有ガラス粉末の平均粒子径を1〜20μmとした後に、アルカリ成分を除去することが好ましい。また、上記アルカリ含有ガラス粉末は、廃ガラスの粉末が好ましい。さらに、塩化ビニル樹脂を含む廃棄物から発生する塩化水素ガスを用いてアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0010】
本発明は、別の態様として、セラミックス焼結体であって、上記の本発明に係るセラミックス原料を添加して焼成することによって得られるものである。セラミックス焼結体としては、アルミナ(Al2O3)質セラミックス焼結体、ムライト(3Al2O3・2SiO2)質セラミックス焼結体、普通磁器(Al2O3・SiO2)又はステアタイト(MgO・SiO2)質セラミックス焼結体が好ましい。また、本発明のセラミックス焼結体は、優れた強度を有するため、耐熱部材、耐磨耗部材、耐化学薬品部材、絶縁部材、電子部品部材などに使用することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るセラミックス原料及びセラミックス焼結体の実施の形態を説明する。
(セラミックス原料の製造)
本発明に係るセラミックス原料の出発原料となるアルカリ含有ガラスは、特に限定されないが、廃棄物の有効利用の観点から、廃ガラスを用いることが好ましい。廃ガラスとしては、例えば、瓶ガラス、板ガラス、透明ガラスなどが利用できる。また、従来、資源として活用が見送られていた着色ガラスであっても利用することができる。また、後に述べるように、これら廃ガラスと塩化水素ガスとの反応は高温の条件下で行うことができるので、医療現場から発生するガラス廃棄物なども利用できる。用いる廃ガラスの形態は、塊状、粒状、粉末などいかなる形態であっても良い。すなわち、予めガラス微粉末として提供されるものも本発明の対象となる。アルカリ含有ガラスの典型的な化学組成(重量%)は、SiO2:65〜75%、Al2O3:1〜20%、Fe2O3:0.1〜3.0%、CaO:3〜15%、MgO:0.1〜5.0%、Na2O:5〜15%、K2O:0.1〜3.0%である。
【0012】
アルカリ含有ガラスは、先ず、所定の大きさ、すなわち、塩化水素との反応性に優れ、かつセラミックス原料として利用する上で適当な大きさに粉砕する。
なお、塊状あるいは板ガラスなどの板状のものは、予め粗砕機によって粗砕する。粗砕機としては、例えば、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。粗砕機よるガラス粗砕物は、粒径を3mm以下とすることが好ましく、目開き3mmの振動篩いなどを用い分級すると良い。また、篩い上の3mm以上のガラスは繰り返し粗砕を行い、全量3mm以下の粒径とする。粗砕したガラスの粒度が粗い場合は、後工程で最終的な粉末に粉砕しづらくなり、粉砕時間が必要以上に長くなることがあるので好ましくない。
【0013】
粗砕した粗砕物は、さらに鉄製のボールミルなどの粉砕機により、平均粒子径で1〜20μmに粉砕する。ガラス微粉末を得るための粉砕機は、ボールミルに限らず、乾式、湿式を問わず公知のいずれの手段をも用いることができる。ガラス粉末を所定の平均粒子径に調整することによって、後工程である塩化水素ガスとガラスに含まれるアルカリ金属との反応を容易にさせ、ガラスの表層のみならず、全層にわたり反応させることができる。ここで、塩化水素ガスとの反応性を考慮すると、粒子径が小さいほど好ましいが、平均粒子径が1μm未満の粉砕物を得るためには、特殊な粉砕機あるいは分級操作が必要になり、著しく粉砕コストが高騰するので好ましくない。一方、粉砕ガラスの平均粒子径が20μmを超えると、ガラス中のアルカリ金属と塩化水素ガスとの反応が不十分になりやすく、ガラス中に残留するアルカリ成分が多くなるので好ましくない。
【0014】
粉砕により得られたアルカリ含有ガラス微粉末は、塩化水素ガスと反応させて、ガラス微粉末の表面にアルカリ金属塩化物を生成させる。
アルカリ含有ガラス微粉末と塩化水素ガスとの反応条件は、アルカリ含有ガラス粉末の粒子径と塩化水素ガスの濃度に応じて調整することができる。ガラスの平均粒子径が1〜20μmの条件下では、塩化水素ガスの濃度が3〜10体積%であれば、300〜600℃で概ね70〜340分、塩化水素ガスの濃度が50〜100体積%であれば、300〜600℃で概ね5〜60分とすることが好ましい。ここで用いる塩化水素ガスは市販のガスでも良いが、塩化ビニル樹脂系の廃棄物や塩素含有廃棄物の熱分解、あるいは燃焼過程から発生する塩化水素ガスなども利用できる。
【0015】
ガラス微粉末の表面に生成したアルカリ金属塩化物は、水洗により除去する。水洗の方法は特に限定されないが、例えば、塩化水素ガスと反応させたガラス微粉末をタンク内で水とともに1時間程度攪拌し、ろ過によって水とガラス微粉末を分離回収する。水洗方法としては、バッチ式、連続式を問わず、ガラス微粉末と水とを強制的に攪拌できるものであれば、公知のいずれの手段を用いることができる。攪拌に限らず、粉砕を伴うものであっても良く、またフィルター上にガラス微粉末を広げて、散水する方法でも良い。水洗したガラス微粉末と洗浄水を分離する方法としては、フィルターによるろ過に限らず、デカンタや遠心分離などの公知のいずれの方法も用いることができる。回収したガラス微粉末は、乾燥して、凝集が強い場合は、適度な粉砕、解砕を行っても良い。
【0016】
得られた回収物は、二酸化ケイ素を主要成分とし、アルカリ成分が3重量%以下まで除去されているので、セラミックス原料として用いることができる。セラミックス原料の残留アルカリ成分が3重量%を超える場合、焼結すると、異常粒成長などの影響によってセラミックス焼結体の強度が低下し、セラミックス焼結体として使用に堪えない。セラミックス原料の典型的な化学組成(重量%)は、SiO2:70〜97%、Al2O3:1〜10%、Fe2O3:0.1〜3.0%、CaO:0.1〜5.0%、MgO:0.1〜3.0%、Na2O:0.1〜2.0%、K2O:0.1〜3.0%である。
【0017】
(セラミックス焼結体の製造方法)
セラミックス原料は上記の通りSiO2が主要成分となるので、SiO2を焼結助剤とするセラミックス焼結体や、SiO2を主要成分の1つとして含むセラミックス焼結体に使用することができる。SiO2を焼結助剤とするセラミックス焼結体としては、例えば、アルミナ質セラミックス焼結体がある。この場合、例えば、セラッミクス原料を焼結助剤として約0.5〜15重量%添加することにより優れた強度を有するセラミックス焼結体を得ることができる。
【0018】
また、SiO2を主要成分の1つとして含むセラミックス焼結体としては、例えば、ムライト質セラミックス焼結体、普通磁器又はステアタイト質セラミックス焼結体がある。ムライトの場合、SiO2の重量割合は典型的には約28.2重量%であることから、本発明のセラミックス原料を約0.5〜30重量%の範囲で添加することができる。普通磁器の場合、SiO2の重量割合は典型的には約37.1重量%であることから、本発明のセラミックス原料を約0.5〜40重量%の範囲で添加することができる。ステアタイトの場合、SiO2の重量割合は典型的には約59.9重量%であることから、本発明のセラミックス原料を約0.5〜60重量%の範囲で添加することができる。
【0019】
このように、本発明のセラッミクス原料は、セラミックス焼結体の通常60重量%以下で、好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは4.5〜40重量%の範囲で添加することができる。なお、これらセラミックス焼結体中のSiO2分をすべて本発明のセラミックス原料でまかなう必要はなく、珪石等のシリカ源と併用しても良い。
【0020】
セラミックス焼結体を得るために、セラミックス原料と混合する他の原料としては、試薬のアルミナ、シリカに限らず、純度90%以上のアルミナ、カオリナイト、モンモリロナイト、粘土、タルク、ドロマイト、珪石、長石などを用いることができる。
【0021】
これら原料と本発明のセラミックス原料は、セラミックス製あるいは磁性のチューブミルを用いて湿式にて微粉砕を行う。この際、粉砕機は、チューブミルに限定されるものではなく、アトライタ(商品名、三井鉱山株式会社製)等の強制攪拌粉砕を伴うものでも良い。粉砕の媒体としては、水道水あるいはイオン交換水を用いる。イソブチルアルコール等のアルコール類を用いても構わないが高価なため経済的でない。粉砕媒体として用いる水道水等は、後工程である造粒の作業性等を考慮し、混合原料の固形分粉末量に対し、40〜60重量%添加するのが好ましい。湿式粉砕の際、粉末の投入時に、消泡剤、分散剤、あるいはプレス成形体の型枠剥離性を向上するための離形剤を少量加えることができる。これら添加剤については、粉砕時に限らず、粉砕後のスラリーに添加しても良い。湿式粉砕機での粉砕時間は、焼結性を考慮し、概ね12〜24時間とし、平均粒子径で3μm以下とすることが好ましい。
【0022】
このようにして得られたスラリーは、振動篩い等により、ゴミや異物を除去した後、成形バインダーとして、PVAを固形分に対して1〜5重量%で添加し、攪拌機で十分に混合する。このスラリーをスプレードライヤーなどの造粒機により造粒する。造粒機はスプレードライヤーに限定されず、公知の造粒機を使用できる。造粒機によって平均粒子径で10〜150μmの真球状の造粒物を得ることができる。
【0023】
造粒物は、一軸油圧プレス機等の成形機を用いて所定寸法の金型に造粒物を充填して成形するか、又はゴム型を用いて静水圧成形して成形するのが一般的であるが、これらに限定されるものではない。成形は概ね1t/cm2以上、好ましくは1〜2t/cm2で行う。1t/cm2未満だと、密度の低い成形体となり、緻密質な焼結体を得るのが難しくなるため好ましくない。一方、2t/cm2を超えると、成形体の著しい密度の上昇は望めないため効率的でない。
【0024】
得られた成形体は、セラミックヒータ、カンタルスーパー(商品名、カンタル株式会社製)等の発熱体を備えた電気炉によって焼成するが、これらに限定されるものではなく、ホットプレス等を用いても良い。また、電気炉はバッチ式でも連続式でも構わず、雰囲気調整できるものでも良い。焼成温度は概ね1300〜1700℃とし、昇温速度は炉材等の消耗を考慮して1℃/分以下とすることが望ましい。また、最高温度で60分以上保持し、焼結させると焼結斑やバッチごとの焼結体の品質のバラつきが少なくなるので良い。さらに、成形バインダーとして添加した有機物を脱脂するため、昇温時に350℃近傍で60分以上保持すると良い。こうしてセラミックス焼結体を得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の試験例を説明する。
なお、アルカリ含有量(R2O)、すなわちNa2O、K2Oなどアルカリ金属の酸化物で換算した含有合計量の定量は、JCASI−51「珪酸原料の化学分析法」により行った。
【0026】
セラミックス原料の製造
(試験例1)
酸化物換算での化学組成がSiO2:71.3重量%、Al2O3:3.0重量%、CaO:11.5重量%、R2O:12.8重量%のガラスを平均粒子径で20μmに粉砕した。このガラス粉末を600℃に加熱した管状電気炉内で塩化水素10体積%の標準ガスと180分間反応させた。反応後のガラス粉末を水洗した後、ろ過にて固形分を回収した。この回収物105℃の乾燥機に6時間保管した後、この乾燥物の均質化を行い、乾燥物の化学組成を確認したところ、酸化物換算でSiO2:79.4重量%、Al2O3:3.6重量%、CaO:13.4重量%、R2O:2.9重量%であった。この乾燥物をセラミックス原料(試験例1)とした。
【0027】
(試験例2)
ガラスを平均粒子径で50μmに粉砕したことを除き、試験例1と同様の方法によってセラミックス原料(試験例2)を得た。試験例2の化学組成を確認したところ、酸化物換算でSiO2:71.6重量%、Al2O3:3.3重量%、CaO:11.8重量%、R2O:11.5重量%であった。
【0028】
セラミックス焼結体の製造
(試験例3)
試験例1で得られたセラミックス原料に、表1に示す混合割合となるよう、高純度アルミナ(99.99%)と酸化マグネシウム試薬を加え、残部として珪石、タルク、ドロマイトを加え混合した。この混合物を湿式のアルミナ製ボールミル(アルミナボール)に投入し、投入した混合物に対して40重量%の上水道水を加え、24時間粉砕混合し、平均粒子径で2.06μmのスラリーを得た。次いで、成形用バインダーとして50wt%のPVA水溶液を、スラリーの固形分重量に対して3重量%添加し、攪拌器にて十分に混合した。この混合スラリーを250℃の温度に加熱したスプレードライヤーにて噴霧して、平均粒子径で30μmの球形状の造粒物を得た。この造粒物を50mm×50mmの超硬合金製の金型に充填し、油圧式の一軸プレス機にて1トン/cm2の圧力にて成型し、50mm×50mm×10mmの成形体を得た。成形体をセラミックス製ヒータの電気炉にて1℃/分で300℃まで昇温し、有機バインダーの脱脂のため、1時間保持した。脱脂後、1℃/分で最高温度1600℃まで昇温し、2時間保持した後、室温まで除冷して、電気炉より取り出した。このようにして得られたセラミックス焼結体(試験例3)は、クラック等のない緻密質なものであった。
【0029】
(試験例4〜6)
混合物の混合割合及び焼結の最高温度を表1の条件としたことを除いて、試験例3と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例4〜7)を得た。
【0030】
(試験例7)
セラミックス原料として、試験例1の代わりに試験例2を用いたことを除いて、試験例3と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例7)を得た。
【0031】
(試験例8)
セラミックス原料として、試験例1の代わりに、試験例1の出発原料であるガラスを平均粒子径で3μmに粉砕したガラス粉末を未反応のまま用いたことを除いて、試験例3と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例8)を得た。
【0032】
(試験例9)
混合物の混合割合及び焼結の最高温度を表1の条件としたことを除いて、試験例8と同様の方法にて、セラミックス焼結体(試験例9)を得た。
【0033】
(密度及び曲げ強度の測定)
試験例3〜9の各セラミックス焼結体から38mm×4mm×3mmのテストピースを平面研削盤によって5本づつ切り出し、JIS R 1634の「ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法」に準拠して焼結体の密度を測定した。また、同テストピースを用いて、JIS R 1601の「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に準拠して曲げ強度の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を4.5〜40.0重量%含む試験例3〜5の各セラミックス焼結体は、曲げ強度が200MPa/mm2以上と高い強度を有していた。一方、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を60.0重量%含む試験例6のセラミックス焼結体は、曲げ強度が70MPa/mm2と著しい強度の低下を示した。
【0036】
また、R2Oが7.0重量%、12.8重量%の各セラミックス原料を4.5重量%含む試験例7、試験例8の各セラミックス焼結体は、アルカリ含有量が増加するほど、曲げ強度が250、150MPa/mm2と低下した。一方、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を同重量%で含む試験例3のセラミックス焼結体は、曲げ強度が350MPa/mm2と非常に高い強度を有していた。
【0037】
さらに、R2Oが12.8重量%のセラミックス原料を40.0重量%含む試験例9のセラミックス焼結体は、曲げ強度が73MPa/mm2と著しく低い強度であったが、R2Oが2.9重量%のセラミックス原料を同重量%で含む試験例4のセラミックス焼結体は、曲げ強度が200MPa/mm2と高い強度を有していた。
【0038】
なお、アルミナ質セラミックス焼結体では、一般に、Al2O3を約60重量%以上含む場合で約150MPa/mm2以上の曲げ強度を、約80重量%以上含む場合で約300MPa/mm2以上の曲げ強度を、約92〜98重量%含む場合で約350〜400MPa/mm2の曲げ強度を得ることができる。すなわち、Al2O3の混合割合が高い程、曲げ強度が向上する。本発明では、表1に示すように、どのAl2O3の混合割合においても従来のシリカと同程度の曲げ強度を得ることができる。
【0039】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によれば、廃ガラス等のアルカリ含有ガラスを大量に利用することができるシリカ代替のセラミックス原料及びセラミックス焼結体を提供することができる。
Claims (5)
- アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分を除去することによって得られるアルカリ含有量が3重量%以下であるセラミックス原料。
- アルカリ含有ガラス粉末の平均粒子径を1〜20μmとした後に、アルカリ成分を除去する請求項1に記載のセラミックス原料。
- 上記アルカリ含有ガラス粉末が廃ガラスの粉末である請求項1又は2に記載のセラミックス原料。
- 塩化ビニル樹脂を含む廃棄物から発生する塩化水素ガスを用いてアルカリ成分を除去する請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス原料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス原料を添加して焼成することによって得られるセラミックス焼結体。
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JP2003077099A JP2004284849A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | セラミックス原料及びセラミックス焼結体 |
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KR101559379B1 (ko) | 2014-03-03 | 2015-10-15 | 강릉원주대학교산학협력단 | 알루미늄포스페이트계 세라믹 충전제를 이용한 ltcc용 유리-세라믹 조성물 |
-
2003
- 2003-03-20 JP JP2003077099A patent/JP2004284849A/ja active Pending
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