JP2004283996A - ボーリングバー - Google Patents
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Abstract
【課題】特殊な材質を使うことなく製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを提供すること。
【解決手段】ボーリングバー12の本体部の断面は、切刃16の装着部を含む側の外周形状が、切刃16による加工孔18の内周面切削時に必要なクリアランスが確保できる最大径である基本径からなる円弧状であり、切刃16側外周に対向する側の外周形状は、前記基本径を有する円弧形状から所定の領域分を除去した形状であり、切刃16先端を前記除去領域の範囲内で加工孔18の内周面から離反する方向に所定の安全距離だけシフトできるように形成した。
【選択図】 図4
【解決手段】ボーリングバー12の本体部の断面は、切刃16の装着部を含む側の外周形状が、切刃16による加工孔18の内周面切削時に必要なクリアランスが確保できる最大径である基本径からなる円弧状であり、切刃16側外周に対向する側の外周形状は、前記基本径を有する円弧形状から所定の領域分を除去した形状であり、切刃16先端を前記除去領域の範囲内で加工孔18の内周面から離反する方向に所定の安全距離だけシフトできるように形成した。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削加工に用いるボーリングバー、特にエンジンのシリンダやクランクシャフト孔等の中グリ加工に使用するボーリングバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等のエンジン加工において、例えばクランクジャーナル孔やヘッド(シリンダ)のカムジャーナル孔のラインボーリング加工では、加工精度を高く維持する必要がある。また、エンジン生産性の向上のため、各部の加工は短時間で行う必要がある。加工時間を短縮して加工する場合、例えば加工速度を速くするとボーリングバーに係る負荷が大きくなる。この負荷の増加によりボーリングバーの撓みを生じ、この撓みによるボーリングバーの振動により加工精度の維持が困難になる。加工精度維持向上のため、ボーリングバーの強度を強くし、剛性を向上させる必要があり、加工時の撓みを抑えることのできるボーリングバーの提案が種々行われている。
【0003】
この具体的方法としては、部分的に超硬材をつなぎ、あるいは埋め込む方法(例えば、特許文献1〜3、参照)または炭素繊維との複合材を材料として使用する方法等がある(例えば、特許文献4〜5、参照)。
【0004】
前述した部分的に超硬材をつなぐ技術は、例えば、特許文献1に開示されている。これは、図9に示すように、ボーリングバーの棒状本体102において、鋼材からなる刃物取付部104と超硬材からなる継手部106とを交互に結合したものである。この結合部分は、刃物取付部104の端面に形成された図示しない凹部と、継手部106の端面に突設された凸部とが嵌合するように構成されている。さらに、この嵌合部分に長手方向に直交する方向からピン又はネジ等の固定用部材を貫挿させて固定している。
【0005】
また、炭素繊維との複合材を材料として使用する技術は、例えば、特許文献5に開示されている。このボーリングバーは、図10に示すように、軸状のシャンク部110の先端に切削チップ112を保持するヘッド部114を設けている。シャンク部110は、内部長さ方向に補剛部材116を有しこの補剛部材116の外周面に繊維強化複合材118を積層して構成している。また、ヘッド部114と補剛部材116とは一体形成されており、材質上、繊維強化複合材118よりも高い曲げ弾性率を有している。
【0006】
【特許文献1】
実開平5−12008号公報
【特許文献2】
実開平5−74713号公報
【特許文献3】
特開2001−25908号公報
【特許文献4】
実開平5−39806号公報
【特許文献5】
特開平9−277106号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術において、部分的に超硬材をつなぐ技術では、ボーリングバーそのものを製造するのに高い精度を必要とし製造の困難性が生じる。また、この超硬材をつなぐ方法は、例えばボルト止めや接着材による結合方法等が用いられるが、異種材間の結合を行うことになるので、剛性向上のための調整の困難性が生じる。また、炭素繊維との複合材の場合は、切削中の切粉による摩耗に弱いため耐久性に問題が生じる。また、ボーリングバーの製造にあたり、コスト高になると考えられる。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、特殊な材質を使わずに製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載のボーリングバーは、棒状の本体部と、該本体部の先端外側に装着された切刃とを有し、ワークに形成された所定長さの断面円形の加工孔の内周面を回転動作及び前記長さ方向への移動動作により切削するボーリングバーにおいて、前記本体部の長さ方向に直交する断面は、前記切刃の装着部を含む切刃側外周の形状が、前記切刃による切削時における前記本体部の外周面と前記加工孔の内周面との間に切削加工時に必要なクリアランスが確保される最大径である基本径を有する円弧状とされ、前記切刃側外周に対向する側の外周形状が、前記基本径を有する円弧形状よりも所定の領域分が除去された形状とされ、前記除去された所定の領域は、加工孔へのボーリングバー挿入時に、前記切刃先端が前記加工孔の内周面に衝突しないように前記内周面から離反する方向に安全距離だけシフトさせることのできる領域であることを特徴とする。
【0010】
この構成により、ボーリングバー断面形状は基本径を有する円弧の部分と、この円弧形状から安全距離を確保し得る所定の領域分を除去した部分とから形成されることになる。一方、通常のボーリングバー断面形状は真円になっているが、通常のボーリングバーを切削加工時に必要なクリアランスが確保され且つ加工孔への挿入時にシフトができる大きさの真円にした場合よりも、本発明に係るボーリングバーの方が断面積を大きくすることができる。このため、本発明に係るボーリングバーは、大きくなった断面積だけ撓みの少ない剛性の高いものとすることができ、撓みによるボーリングバーの振動を減少して精度の高い加工を行うことができる。なお、上記クリアランスは、ボーリングバーが加工孔を切削する時に、加工孔との間隙に切削粉が詰まったり、振動等により、ボーリングバーが加工孔に接触するのを防止するために必要となるものである。
【0011】
請求項2の発明に係るボーリングバーは、請求項1記載のボーリングバーにおいて、切刃側外周に対向する側の外周形状が、基本径と同じかそれ以上の大きさの径を有し、切刃先端と基本径中心とを結ぶ線に沿って、基本径中心から所定距離、切刃先端側に移動された中心を有する円弧であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ボーリングバー断面形状は上記2種類の円弧形状で形成されている。この円弧形状により、上記クリアランスおよびシフトの条件を満たしながらボーリングバー断面を加工孔の開口形状に近付け、ボーリングバー断面積をできるだけ大きくするものである。すなわち、ボーリングバー断面形状の最適化を図ったものである。
【0013】
請求項3の発明に係るボーリングバーは、請求項1記載のボーリングバーにおいて、切刃側外周に対向する側の外周形状を、2つの直線を主体とする山形形状としたものである。
【0014】
この構成によれば、切刃の装着部に対向する側の外周形状を直線を主体としたよりシンプルな形状とすることにより、ボーリングバーの製造の容易化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明によるボーリングバーの実施の形態を詳細に説明する。実施の形態の具体的構成を示すにあたり、ボーリングバーによる加工の一般的、初期工程を図1、図2により説明する。図1は、ボーリングバー12の先端を加工孔18に(矢印100方向に)挿入する時の状態を示している。
【0016】
ボーリングバー12は図示しないシャンクの一端に備えられており、ボーリングバー12の先端部には長さ方向に直交する方向に突出する切刃16が設けられている。そして、ボーリングバー12を所定位置まで挿入した後の矢印200方向への引き抜き動作中に切刃16の先端部の刃先16aで、ワーク加工面を切削するものである。ボーリングバー12を加工孔18に挿入する前は、ボーリングバー12は符号Bで示したオフセット状態になっている。この「オフセット状態」はボーリングバー12で加工孔18を切削加工する時の状態でもあるので、この位置のまま挿入動作を行うと、刃先16aが加工孔18に当たり、ボーリングバー12を挿入できない。従って、挿入する時は、符号Aで示したようにオフセット量W1だけシフトさせた「セット状態」にして加工孔18に挿入する。
【0017】
図2は、切刃16の刃先16aが加工孔18内面を切削する工程の例を示している。まず、ボーリングバー12を上記シフトさせた状態でワーク加工孔18に挿入する。そして、一点鎖線300で示したように切刃16が加工孔18の反対側の開口から出た状態にする。次に、ボーリングバー12を上記「オフセット状態」にし、回転動作を開始する。そして、ボーリングバー12の引き抜き動作を行うことにより、刃先16aがワーク加工孔18の内周面を切削する。すなわち、図上矢印200方向へボーリングバー12を漸次的に移動させつつ加工を行うものである。
【0018】
図3は、本発明に係るボーリングバー12の実施の形態を示しており、本発明の特徴的事項であるボーリングバー12の断面形状を示したものである。図はボーリングバー12の長さ方向と直交する面の断面図であって、加工孔18にボーリングバー12を上記「セット状態」で挿入した状態である。本実施の形態では、ボーリングバー12の断面の内、切刃16が備えられた側(以下Uサイドとする)を形成する円弧と、このUサイドと対向する側(以下Dサイドとする)で上記円弧の所定領域を除去した円弧とでボーリングバー12の断面形状が形成されている。Uサイドの円弧が基本円弧であり、Dサイドの円弧が補助円弧である。
【0019】
ここで、基本円弧は、「オフセット状態」で取り得る最大の径である基本径を有する円弧である。すなわち、本実施の形態では、「オフセット状態」において、基本円弧中心を軸にボーリングバー12を回動させ加工孔18を切削し、かつ、Uサイドでボーリングバー12外周面と加工孔18の内周面に必要なクリアランスが確保されるようにした最大の径としている。本実施の形態におけるクリアランスについては、後述する。
【0020】
図中、O2は、図示した「セット状態」での基本円弧の中心点、r1は基本円弧14の半径である。O3は「セット状態」での補助円弧15の中心点、r2は補助円弧15の半径である。O4は加工孔18の中心点、Rは加工孔18の半径である。O1は図4に示した「オフセット状態」の基本円弧14の中心点であり、W1はオフセット量である。Kは基本円弧の「セット状態」での中心点O2と「オフセット状態」での中心点O1とを結ぶ線であり、点P1及びP2は基本円弧14と補助円弧15の交点である。なお、刃先16aは線K上にある。
【0021】
図4は、図3のボーリングバー12の位置を「オフセット状態」にしたものである。すなわち、基本円弧14の中心点がW1だけオフセットされてO1にある状態である。図中一点鎖線Lは刃先16aにより切削される領域を示す。図に示したように、切削加工時の回動中心であるO1は、加工孔の中心O4と一致しているので、ボーリングバー12のUサイドの外周面と加工孔18内周面との間のクリアランスC1は、加工孔径Rと基本径r1の差の量として加工孔18の径方向に均一に確保されている。
【0022】
このボーリングバー12の断面形状の設計方法として、2つのポイントを決定する。第1のポイントはボーリングバー12の位置が「オフセット状態」(切削加工時)にある時のクリアランスC1の量を決定することである。このクリアランスC1の量は、切削時にボーリングバー12と加工孔18との間隙に切削粉が詰まったり、振動等により、ボーリングバー12が加工孔18に接触しないように適宜決定される。従って、基本径r1は、点O1を基本円弧中心点としてクリアランスC1を維持するように決定する。
【0023】
第2のポイントはボーリングバー12の加工孔18への挿入時において、「セット状態」へシフトできるようにすることである。図3に基づいて説明すると、「セット状態」でボーリングバー12を加工孔18に挿入する時に、刃先16aが加工孔18の内周面に衝突しないようにするための安全距離を確保するものであり、Dサイドでは、ボーリングバー断面と加工孔18の内周面との線K上の距離W3が確保されるようにすると共に、その状態で刃先16aと加工孔18の内周面との間には距離W2が確保されるようにしている。距離W2及びW3は、刃先16aやボーリングバー12の外周面が加工孔18の内周面に当たらないようにすることのできる距離である。
【0024】
なお、上述の条件を確保するため、補助円弧15の半径r2は、基本円弧14の半径r1と同等かそれ以上とするのが好適である。このため、補助円弧15の中心点O3は、図3の「セット状態」では線K上に加工孔18の中心点O4から所定量xだけ刃先16a側に移動させた点に位置させている。そして、補助円弧15の半径r2は中心点が点O3にあって、前述した距離W3を維持するように決定する。
【0025】
図5は、図3及び図4に示した実施の形態に係るボーリングバー12の断面形状に関してこれに内接するように真円24を描いたものである。すなわち、「セット状態」において作業上必要なクリアランスが確保されるという条件(第1のポイント)と、「オフセット状態」から「セット状態」にシフトできるという条件(第2のポイント)を充たす真円を示したものである。
【0026】
この真円24をボーリングバー12の断面形状とした場合、「セット状態」では、上記量W2及びW3を確保でき、切削加工中には本実施の形態に係るボーリングバー12の場合のクリアランスC1より大きなクリアランスが確保される。
【0027】
しかし、図中斜線部26で示したように、本実施の形態に係るボーリングバー12の断面より真円24の断面は小さい。換言するならば、本形態のボーリングバー12の断面は真円24より斜線部26の分だけ大きく、撓みや捩じれに対し強度的に優れ剛性を向上し得る。すなわち、特殊な材質を使わずに製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを得ることができる。従って、加工時間を短縮して加工する場合、例えば加工速度を速くするとボーリングバーに係る負荷が大きくなるが、負荷が増加してもボーリングバー12の断面積の増によりボーリングバー12の撓みを減少して、撓みによるボーリングバー12の振動を減少し精度の高い加工を行うことが可能となる。
【0028】
図6は、本発明に係るボーリングバー12の他の実施の形態を示し、図3と同じくボーリングバー12を加工孔18に「セット状態」で挿入した時の断面形状を示したものである。図中前述した実施の形態の構成要素と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
まず、基本円弧14の半径r1の大きさと、「オフセット状態」の基本円弧14の中心点O1の位置および「セット状態」の基本円弧中心点O2の位置は、上記実施の形態と同一条件で決定される。本実施の形態の特徴的事項は、上述した実施の形態について、補助円弧15の中心の位置と半径r2の大きさについて他の設定を行ったことである。
【0030】
具体的には、「セット状態」におけるボーリングバー12の断面形状のDサイドの外周面と加工孔18の内周面との間の線K方向における距離W3を、Dサイド全域に亘り、共通となるように設定したものである。すなわち、補助円弧15の半径r2の大きさを、加工孔18の半径Rと等しくし、「セット状態」での補助円弧15の中心点O3を、加工孔18の中心点O4から線K上に量W3だけ刃先16a側に移動させた位置に設定する。
【0031】
この補助円弧15の形状により、「セット状態」すなわち、ボーリングバー12の加工孔18への挿入時にボーリングバー12のDサイドにおけるシフト方向(線K方向)へのずれの許容量W3を共通に確保しつつ、ボーリングバー12の断面を加工孔18の開口形状に近付け、ボーリングバー12の断面積をできるだけ大きくしたものである。なお、本実施の形態においても切削加工時の必要なクリアランスと「セット状態」へシフトするための領域が確保されていることは上述の通りである。
【0032】
図7は、本発明に係るボーリングバー12の更に他の実施の形態を示したものである。図は、上述した実施の形態同様、ボーリングバー12を加工孔18に「セット状態」で挿入した時の断面形状を示したものである。図中前述した実施の形態と同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
本実施の形態においても、基本円弧14の半径r1の大きさと、「オフセット状態」の基本円弧14の中心点O1の位置および「セット状態」の基本円弧中心点O2の位置は、上記実施の形態と同一条件で決定されている。本実施の形態は、上述した実施の形態について、補助円弧15の中心の位置と半径r2の大きさについて、更に他の設定を行ったものである。
【0034】
具体的には、ボーリングバー12の断面形状のDサイドの外周面と加工孔18の内周面との間の加工孔18の径方向における距離W4を、ボーリングバー12の「セット状態」においてDサイド全域に亘り共通の量になるようにしている。すなわち、「セット状態」における補助円弧15の中心点O3を、加工孔18の中心点O4と同じ位置とし、補助円弧15の半径r2の大きさを、ボーリングバー12の断面形状のDサイドの外周面と加工孔18の内周面との間の距離W4とするように設定したものである。
【0035】
この補助円弧15の形状により、「セット状態」すなわち、ボーリングバー12の加工孔18への挿入時にボーリングバー12のDサイドにおける加工孔18の径方向へのずれの許容量を共通の距離W4として確保しつつ、ボーリングバー12の断面を加工孔18の開口形状に近付け、ボーリングバー12の断面積をできるだけ大きくしたものである。また、本実施の形態においてもボーリングバー12は、切削加工時のクリアランスおよび「セット状態」へシフトするための領域を確保する条件を充たしているのは上述の通りである。
【0036】
なお、本実施の形態では刃先16aは調整ネジ34と締め付けネジ36とでボーリングバー12に取り付けられており、刃先16aの突出量Fを調整することができるようにしている。
【0037】
図8は、本発明に係るボーリングバー12の更に他の実施の形態を示したものである。図中、図3に示した実施の形態と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図は「セット状態」でボーリングバー12を加工孔18に挿入したもので、基本円弧14は図3に示した実施の形態と同一の条件で形成されている。
【0038】
そして、特徴的な事項は補助円弧部分の設定にあり、具体的には、ボーリングバー12のDサイドの断面形状は円弧形状ではなく、多面形状、すなわち、平坦面28、30及び32とから形成されている。そして、ボーリングバー12の加工孔18への挿入時における「セット状態」において刃先16aと加工孔18の内周面との距離W2を確保すると共に、Dサイドでは線K上における平坦面30と加工孔18の内周面との距離W3を確保している。この単純な3つの平坦面28,30,32でボーリングバー12のDサイドの断面形状を形成することにより、ボーリングバー12の複雑な製造工程が不要となり精度の良い製造が可能となり、ボーリングバー12を製造の際の迅速化が図れる。
【0039】
以上説明した各実施の形態のボーリングバー12の材質としては、例えば、鋼、鋳鉄、アルミニウム、真鍮等が使用可能であり、特に超硬材や炭素繊維との複合材である必要はない。
【0040】
なお、本発明の構成は、上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るボーリングバーによれば、このボーリングバーが切削加工時に必要なクリアランスを確保するという条件及び「セット状態」にシフトできるという前提の下で、断面が真円のボーリングバーの場合よりも断面積を大きくすることができる。これにより特殊な材質を使用すること無く、剛性の高い高強度なボーリングバーが得られ、撓みによるボーリングバーの振動を減少して精度の高い加工を行うことができる。更に、ボーリングバーの製造時に特に材料を限定する必要がないので、製造上特殊な材質を使わずに製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボーリングバーを加工孔に挿入する時の態様を示した平面図である。
【図2】本発明に係るボーリングバーで加工孔を切削する態様を示した立面図である。
【図3】本発明に係るボーリングバーの実施の形態を示した図であって、「セット状態」におけるボーリングバーの断面図である。
【図4】図3のボーリングバーであって、「オフセット状態」におけるボーリングバーの断面図である。
【図5】図3のボーリングバーの断面と真円とを比較した図である。
【図6】本発明に係るボーリングバーの別の実施の形態を示した図であって、「セット状態」のボーリングバーの断面図である。
【図7】本発明に係るボーリングバーの更に別の実施の形態を示した図であって、「セット状態」のボーリングバーの断面図である。
【図8】本発明に係るボーリングバーの更に別の実施の形態を示した図であって、「セット状態」のボーリングバーの断面図である。
【図9】従来技術に関する説明図である。
【図10】従来技術に関する説明図である。
【符号の説明】
12 ボーリングバー
14 基本円弧
15 補助円弧
16 切刃
18 加工孔
24 真円
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削加工に用いるボーリングバー、特にエンジンのシリンダやクランクシャフト孔等の中グリ加工に使用するボーリングバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等のエンジン加工において、例えばクランクジャーナル孔やヘッド(シリンダ)のカムジャーナル孔のラインボーリング加工では、加工精度を高く維持する必要がある。また、エンジン生産性の向上のため、各部の加工は短時間で行う必要がある。加工時間を短縮して加工する場合、例えば加工速度を速くするとボーリングバーに係る負荷が大きくなる。この負荷の増加によりボーリングバーの撓みを生じ、この撓みによるボーリングバーの振動により加工精度の維持が困難になる。加工精度維持向上のため、ボーリングバーの強度を強くし、剛性を向上させる必要があり、加工時の撓みを抑えることのできるボーリングバーの提案が種々行われている。
【0003】
この具体的方法としては、部分的に超硬材をつなぎ、あるいは埋め込む方法(例えば、特許文献1〜3、参照)または炭素繊維との複合材を材料として使用する方法等がある(例えば、特許文献4〜5、参照)。
【0004】
前述した部分的に超硬材をつなぐ技術は、例えば、特許文献1に開示されている。これは、図9に示すように、ボーリングバーの棒状本体102において、鋼材からなる刃物取付部104と超硬材からなる継手部106とを交互に結合したものである。この結合部分は、刃物取付部104の端面に形成された図示しない凹部と、継手部106の端面に突設された凸部とが嵌合するように構成されている。さらに、この嵌合部分に長手方向に直交する方向からピン又はネジ等の固定用部材を貫挿させて固定している。
【0005】
また、炭素繊維との複合材を材料として使用する技術は、例えば、特許文献5に開示されている。このボーリングバーは、図10に示すように、軸状のシャンク部110の先端に切削チップ112を保持するヘッド部114を設けている。シャンク部110は、内部長さ方向に補剛部材116を有しこの補剛部材116の外周面に繊維強化複合材118を積層して構成している。また、ヘッド部114と補剛部材116とは一体形成されており、材質上、繊維強化複合材118よりも高い曲げ弾性率を有している。
【0006】
【特許文献1】
実開平5−12008号公報
【特許文献2】
実開平5−74713号公報
【特許文献3】
特開2001−25908号公報
【特許文献4】
実開平5−39806号公報
【特許文献5】
特開平9−277106号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術において、部分的に超硬材をつなぐ技術では、ボーリングバーそのものを製造するのに高い精度を必要とし製造の困難性が生じる。また、この超硬材をつなぐ方法は、例えばボルト止めや接着材による結合方法等が用いられるが、異種材間の結合を行うことになるので、剛性向上のための調整の困難性が生じる。また、炭素繊維との複合材の場合は、切削中の切粉による摩耗に弱いため耐久性に問題が生じる。また、ボーリングバーの製造にあたり、コスト高になると考えられる。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、特殊な材質を使わずに製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載のボーリングバーは、棒状の本体部と、該本体部の先端外側に装着された切刃とを有し、ワークに形成された所定長さの断面円形の加工孔の内周面を回転動作及び前記長さ方向への移動動作により切削するボーリングバーにおいて、前記本体部の長さ方向に直交する断面は、前記切刃の装着部を含む切刃側外周の形状が、前記切刃による切削時における前記本体部の外周面と前記加工孔の内周面との間に切削加工時に必要なクリアランスが確保される最大径である基本径を有する円弧状とされ、前記切刃側外周に対向する側の外周形状が、前記基本径を有する円弧形状よりも所定の領域分が除去された形状とされ、前記除去された所定の領域は、加工孔へのボーリングバー挿入時に、前記切刃先端が前記加工孔の内周面に衝突しないように前記内周面から離反する方向に安全距離だけシフトさせることのできる領域であることを特徴とする。
【0010】
この構成により、ボーリングバー断面形状は基本径を有する円弧の部分と、この円弧形状から安全距離を確保し得る所定の領域分を除去した部分とから形成されることになる。一方、通常のボーリングバー断面形状は真円になっているが、通常のボーリングバーを切削加工時に必要なクリアランスが確保され且つ加工孔への挿入時にシフトができる大きさの真円にした場合よりも、本発明に係るボーリングバーの方が断面積を大きくすることができる。このため、本発明に係るボーリングバーは、大きくなった断面積だけ撓みの少ない剛性の高いものとすることができ、撓みによるボーリングバーの振動を減少して精度の高い加工を行うことができる。なお、上記クリアランスは、ボーリングバーが加工孔を切削する時に、加工孔との間隙に切削粉が詰まったり、振動等により、ボーリングバーが加工孔に接触するのを防止するために必要となるものである。
【0011】
請求項2の発明に係るボーリングバーは、請求項1記載のボーリングバーにおいて、切刃側外周に対向する側の外周形状が、基本径と同じかそれ以上の大きさの径を有し、切刃先端と基本径中心とを結ぶ線に沿って、基本径中心から所定距離、切刃先端側に移動された中心を有する円弧であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ボーリングバー断面形状は上記2種類の円弧形状で形成されている。この円弧形状により、上記クリアランスおよびシフトの条件を満たしながらボーリングバー断面を加工孔の開口形状に近付け、ボーリングバー断面積をできるだけ大きくするものである。すなわち、ボーリングバー断面形状の最適化を図ったものである。
【0013】
請求項3の発明に係るボーリングバーは、請求項1記載のボーリングバーにおいて、切刃側外周に対向する側の外周形状を、2つの直線を主体とする山形形状としたものである。
【0014】
この構成によれば、切刃の装着部に対向する側の外周形状を直線を主体としたよりシンプルな形状とすることにより、ボーリングバーの製造の容易化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明によるボーリングバーの実施の形態を詳細に説明する。実施の形態の具体的構成を示すにあたり、ボーリングバーによる加工の一般的、初期工程を図1、図2により説明する。図1は、ボーリングバー12の先端を加工孔18に(矢印100方向に)挿入する時の状態を示している。
【0016】
ボーリングバー12は図示しないシャンクの一端に備えられており、ボーリングバー12の先端部には長さ方向に直交する方向に突出する切刃16が設けられている。そして、ボーリングバー12を所定位置まで挿入した後の矢印200方向への引き抜き動作中に切刃16の先端部の刃先16aで、ワーク加工面を切削するものである。ボーリングバー12を加工孔18に挿入する前は、ボーリングバー12は符号Bで示したオフセット状態になっている。この「オフセット状態」はボーリングバー12で加工孔18を切削加工する時の状態でもあるので、この位置のまま挿入動作を行うと、刃先16aが加工孔18に当たり、ボーリングバー12を挿入できない。従って、挿入する時は、符号Aで示したようにオフセット量W1だけシフトさせた「セット状態」にして加工孔18に挿入する。
【0017】
図2は、切刃16の刃先16aが加工孔18内面を切削する工程の例を示している。まず、ボーリングバー12を上記シフトさせた状態でワーク加工孔18に挿入する。そして、一点鎖線300で示したように切刃16が加工孔18の反対側の開口から出た状態にする。次に、ボーリングバー12を上記「オフセット状態」にし、回転動作を開始する。そして、ボーリングバー12の引き抜き動作を行うことにより、刃先16aがワーク加工孔18の内周面を切削する。すなわち、図上矢印200方向へボーリングバー12を漸次的に移動させつつ加工を行うものである。
【0018】
図3は、本発明に係るボーリングバー12の実施の形態を示しており、本発明の特徴的事項であるボーリングバー12の断面形状を示したものである。図はボーリングバー12の長さ方向と直交する面の断面図であって、加工孔18にボーリングバー12を上記「セット状態」で挿入した状態である。本実施の形態では、ボーリングバー12の断面の内、切刃16が備えられた側(以下Uサイドとする)を形成する円弧と、このUサイドと対向する側(以下Dサイドとする)で上記円弧の所定領域を除去した円弧とでボーリングバー12の断面形状が形成されている。Uサイドの円弧が基本円弧であり、Dサイドの円弧が補助円弧である。
【0019】
ここで、基本円弧は、「オフセット状態」で取り得る最大の径である基本径を有する円弧である。すなわち、本実施の形態では、「オフセット状態」において、基本円弧中心を軸にボーリングバー12を回動させ加工孔18を切削し、かつ、Uサイドでボーリングバー12外周面と加工孔18の内周面に必要なクリアランスが確保されるようにした最大の径としている。本実施の形態におけるクリアランスについては、後述する。
【0020】
図中、O2は、図示した「セット状態」での基本円弧の中心点、r1は基本円弧14の半径である。O3は「セット状態」での補助円弧15の中心点、r2は補助円弧15の半径である。O4は加工孔18の中心点、Rは加工孔18の半径である。O1は図4に示した「オフセット状態」の基本円弧14の中心点であり、W1はオフセット量である。Kは基本円弧の「セット状態」での中心点O2と「オフセット状態」での中心点O1とを結ぶ線であり、点P1及びP2は基本円弧14と補助円弧15の交点である。なお、刃先16aは線K上にある。
【0021】
図4は、図3のボーリングバー12の位置を「オフセット状態」にしたものである。すなわち、基本円弧14の中心点がW1だけオフセットされてO1にある状態である。図中一点鎖線Lは刃先16aにより切削される領域を示す。図に示したように、切削加工時の回動中心であるO1は、加工孔の中心O4と一致しているので、ボーリングバー12のUサイドの外周面と加工孔18内周面との間のクリアランスC1は、加工孔径Rと基本径r1の差の量として加工孔18の径方向に均一に確保されている。
【0022】
このボーリングバー12の断面形状の設計方法として、2つのポイントを決定する。第1のポイントはボーリングバー12の位置が「オフセット状態」(切削加工時)にある時のクリアランスC1の量を決定することである。このクリアランスC1の量は、切削時にボーリングバー12と加工孔18との間隙に切削粉が詰まったり、振動等により、ボーリングバー12が加工孔18に接触しないように適宜決定される。従って、基本径r1は、点O1を基本円弧中心点としてクリアランスC1を維持するように決定する。
【0023】
第2のポイントはボーリングバー12の加工孔18への挿入時において、「セット状態」へシフトできるようにすることである。図3に基づいて説明すると、「セット状態」でボーリングバー12を加工孔18に挿入する時に、刃先16aが加工孔18の内周面に衝突しないようにするための安全距離を確保するものであり、Dサイドでは、ボーリングバー断面と加工孔18の内周面との線K上の距離W3が確保されるようにすると共に、その状態で刃先16aと加工孔18の内周面との間には距離W2が確保されるようにしている。距離W2及びW3は、刃先16aやボーリングバー12の外周面が加工孔18の内周面に当たらないようにすることのできる距離である。
【0024】
なお、上述の条件を確保するため、補助円弧15の半径r2は、基本円弧14の半径r1と同等かそれ以上とするのが好適である。このため、補助円弧15の中心点O3は、図3の「セット状態」では線K上に加工孔18の中心点O4から所定量xだけ刃先16a側に移動させた点に位置させている。そして、補助円弧15の半径r2は中心点が点O3にあって、前述した距離W3を維持するように決定する。
【0025】
図5は、図3及び図4に示した実施の形態に係るボーリングバー12の断面形状に関してこれに内接するように真円24を描いたものである。すなわち、「セット状態」において作業上必要なクリアランスが確保されるという条件(第1のポイント)と、「オフセット状態」から「セット状態」にシフトできるという条件(第2のポイント)を充たす真円を示したものである。
【0026】
この真円24をボーリングバー12の断面形状とした場合、「セット状態」では、上記量W2及びW3を確保でき、切削加工中には本実施の形態に係るボーリングバー12の場合のクリアランスC1より大きなクリアランスが確保される。
【0027】
しかし、図中斜線部26で示したように、本実施の形態に係るボーリングバー12の断面より真円24の断面は小さい。換言するならば、本形態のボーリングバー12の断面は真円24より斜線部26の分だけ大きく、撓みや捩じれに対し強度的に優れ剛性を向上し得る。すなわち、特殊な材質を使わずに製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを得ることができる。従って、加工時間を短縮して加工する場合、例えば加工速度を速くするとボーリングバーに係る負荷が大きくなるが、負荷が増加してもボーリングバー12の断面積の増によりボーリングバー12の撓みを減少して、撓みによるボーリングバー12の振動を減少し精度の高い加工を行うことが可能となる。
【0028】
図6は、本発明に係るボーリングバー12の他の実施の形態を示し、図3と同じくボーリングバー12を加工孔18に「セット状態」で挿入した時の断面形状を示したものである。図中前述した実施の形態の構成要素と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
まず、基本円弧14の半径r1の大きさと、「オフセット状態」の基本円弧14の中心点O1の位置および「セット状態」の基本円弧中心点O2の位置は、上記実施の形態と同一条件で決定される。本実施の形態の特徴的事項は、上述した実施の形態について、補助円弧15の中心の位置と半径r2の大きさについて他の設定を行ったことである。
【0030】
具体的には、「セット状態」におけるボーリングバー12の断面形状のDサイドの外周面と加工孔18の内周面との間の線K方向における距離W3を、Dサイド全域に亘り、共通となるように設定したものである。すなわち、補助円弧15の半径r2の大きさを、加工孔18の半径Rと等しくし、「セット状態」での補助円弧15の中心点O3を、加工孔18の中心点O4から線K上に量W3だけ刃先16a側に移動させた位置に設定する。
【0031】
この補助円弧15の形状により、「セット状態」すなわち、ボーリングバー12の加工孔18への挿入時にボーリングバー12のDサイドにおけるシフト方向(線K方向)へのずれの許容量W3を共通に確保しつつ、ボーリングバー12の断面を加工孔18の開口形状に近付け、ボーリングバー12の断面積をできるだけ大きくしたものである。なお、本実施の形態においても切削加工時の必要なクリアランスと「セット状態」へシフトするための領域が確保されていることは上述の通りである。
【0032】
図7は、本発明に係るボーリングバー12の更に他の実施の形態を示したものである。図は、上述した実施の形態同様、ボーリングバー12を加工孔18に「セット状態」で挿入した時の断面形状を示したものである。図中前述した実施の形態と同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
本実施の形態においても、基本円弧14の半径r1の大きさと、「オフセット状態」の基本円弧14の中心点O1の位置および「セット状態」の基本円弧中心点O2の位置は、上記実施の形態と同一条件で決定されている。本実施の形態は、上述した実施の形態について、補助円弧15の中心の位置と半径r2の大きさについて、更に他の設定を行ったものである。
【0034】
具体的には、ボーリングバー12の断面形状のDサイドの外周面と加工孔18の内周面との間の加工孔18の径方向における距離W4を、ボーリングバー12の「セット状態」においてDサイド全域に亘り共通の量になるようにしている。すなわち、「セット状態」における補助円弧15の中心点O3を、加工孔18の中心点O4と同じ位置とし、補助円弧15の半径r2の大きさを、ボーリングバー12の断面形状のDサイドの外周面と加工孔18の内周面との間の距離W4とするように設定したものである。
【0035】
この補助円弧15の形状により、「セット状態」すなわち、ボーリングバー12の加工孔18への挿入時にボーリングバー12のDサイドにおける加工孔18の径方向へのずれの許容量を共通の距離W4として確保しつつ、ボーリングバー12の断面を加工孔18の開口形状に近付け、ボーリングバー12の断面積をできるだけ大きくしたものである。また、本実施の形態においてもボーリングバー12は、切削加工時のクリアランスおよび「セット状態」へシフトするための領域を確保する条件を充たしているのは上述の通りである。
【0036】
なお、本実施の形態では刃先16aは調整ネジ34と締め付けネジ36とでボーリングバー12に取り付けられており、刃先16aの突出量Fを調整することができるようにしている。
【0037】
図8は、本発明に係るボーリングバー12の更に他の実施の形態を示したものである。図中、図3に示した実施の形態と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図は「セット状態」でボーリングバー12を加工孔18に挿入したもので、基本円弧14は図3に示した実施の形態と同一の条件で形成されている。
【0038】
そして、特徴的な事項は補助円弧部分の設定にあり、具体的には、ボーリングバー12のDサイドの断面形状は円弧形状ではなく、多面形状、すなわち、平坦面28、30及び32とから形成されている。そして、ボーリングバー12の加工孔18への挿入時における「セット状態」において刃先16aと加工孔18の内周面との距離W2を確保すると共に、Dサイドでは線K上における平坦面30と加工孔18の内周面との距離W3を確保している。この単純な3つの平坦面28,30,32でボーリングバー12のDサイドの断面形状を形成することにより、ボーリングバー12の複雑な製造工程が不要となり精度の良い製造が可能となり、ボーリングバー12を製造の際の迅速化が図れる。
【0039】
以上説明した各実施の形態のボーリングバー12の材質としては、例えば、鋼、鋳鉄、アルミニウム、真鍮等が使用可能であり、特に超硬材や炭素繊維との複合材である必要はない。
【0040】
なお、本発明の構成は、上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るボーリングバーによれば、このボーリングバーが切削加工時に必要なクリアランスを確保するという条件及び「セット状態」にシフトできるという前提の下で、断面が真円のボーリングバーの場合よりも断面積を大きくすることができる。これにより特殊な材質を使用すること無く、剛性の高い高強度なボーリングバーが得られ、撓みによるボーリングバーの振動を減少して精度の高い加工を行うことができる。更に、ボーリングバーの製造時に特に材料を限定する必要がないので、製造上特殊な材質を使わずに製造コストを維持した状態で、高強度のボーリングバーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボーリングバーを加工孔に挿入する時の態様を示した平面図である。
【図2】本発明に係るボーリングバーで加工孔を切削する態様を示した立面図である。
【図3】本発明に係るボーリングバーの実施の形態を示した図であって、「セット状態」におけるボーリングバーの断面図である。
【図4】図3のボーリングバーであって、「オフセット状態」におけるボーリングバーの断面図である。
【図5】図3のボーリングバーの断面と真円とを比較した図である。
【図6】本発明に係るボーリングバーの別の実施の形態を示した図であって、「セット状態」のボーリングバーの断面図である。
【図7】本発明に係るボーリングバーの更に別の実施の形態を示した図であって、「セット状態」のボーリングバーの断面図である。
【図8】本発明に係るボーリングバーの更に別の実施の形態を示した図であって、「セット状態」のボーリングバーの断面図である。
【図9】従来技術に関する説明図である。
【図10】従来技術に関する説明図である。
【符号の説明】
12 ボーリングバー
14 基本円弧
15 補助円弧
16 切刃
18 加工孔
24 真円
Claims (3)
- 棒状の本体部と、該本体部の先端外側に装着された切刃とを有し、
ワークに形成された所定長さの断面円形の加工孔の内周面を回転動作及び前記長さ方向への移動動作により切削するボーリングバーにおいて、
前記本体部の長さ方向に直交する断面は、
前記切刃の装着部を含む切刃側外周の形状が、前記切刃による切削時における前記本体部の外周面と前記加工孔の内周面との間に切削加工時に必要なクリアランスが確保される最大径である基本径を有する円弧状とされ、
前記切刃側外周に対向する側の外周形状が、前記基本径を有する円弧形状よりも所定の領域分が除去された形状とされ、
前記除去された所定の領域は、加工孔へのボーリングバー挿入時に、前記切刃先端が前記加工孔の内周面に衝突しないように前記内周面から離反する方向に安全距離だけシフトさせることのできる領域であることを特徴とするボーリングバー。 - 前記切刃側外周に対向する側の外周形状が、
前記基本径と同じかそれ以上の大きさの径を有し、前記切刃先端と前記基本径中心とを結ぶ線に沿って、前記基本径中心から所定距離、前記切刃先端側に移動された中心を有する円弧であることを特徴とする請求項1に記載のボーリングバー。 - 前記切刃側外周に対向する側の外周形状が、2つの直線を主体とする山形形状であることを特徴とする請求項1に記載のボーリングバー。
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Cited By (3)
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CN112828761A (zh) * | 2019-11-22 | 2021-05-25 | 株式会社迪思科 | 切削刀具 |
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- 2003-03-25 JP JP2003082165A patent/JP2004283996A/ja active Pending
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