JP2004283847A - 鋼管を拡管する装置およびそれを用いた鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】拡管ヘッド2をブーム3の先端に備え、拡管ヘッド近傍に例えば、API規格X60グレード相当以上の鋼管で、管径管厚比が60以上200以下の被拡管をその内面側から直径方向に拘束する少なくとも一対のローラ1a,1bを備えた拡管装置で拡管する際、ローラは幅70mm以上、胴部曲率を被拡管の公称内径の85%以上、105%以下の中太型形状とし、ローラ取付け高さは被拡管公称内径の49%以上51%以下とした拡管装置を用い、拡管率を0.6%以上、1.2%以下とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】本発明は鋼管を拡管して真円度の矯正を行う装置およびそれを用いた鋼管の製造方法に関し、特に拡管率が低くても優れた真円度が得られるものに関する。
【0002】
【従来の技術】真円度が必要とされる管製品の一つに石油・天然ガスの輸送に用いられるUOE鋼管がある。UOE鋼管は素板となる鋼板の両端部をC(クリンピング)プレスにより曲げ加工した後、Uプレスにより左右の両辺が略垂直なU管とし、更にOプレスで丸めた後、内外面を溶接し,拡管作業で真円度や曲がりが矯正されて製造されている。図5にUOE工程を模式的に示す。
【0003】
真円度調整が行われる拡管工程では、鋼管103の一方の端部から管内に挿入されるブーム101の先端に拡管ヘッド102を備えた拡管装置100と鋼管103の他方を支持するクリッパー104を用いることが多い。図6に拡管工程における装置の配置を模式的に示す。
【0004】
このような装置を用いて拡管作業を行う場合、鋼管の一端から逐次拡管を始め、管長中央部に達すると、鋼管を反転もしくは他の拡管装置により他端から管長中央部まで拡管するが、鋼管の種類などによっては拡管ヘッドが管端から管長中央部に向けて移動するに従い、先に拡管された個所が再び変形する。
【0005】
そのような変形を防止するために用いられる拡管装置として特許文献1記載のものがある。特許文献1は拡管による真円度・曲がり矯正方法およびそれに用いる装置に関し、ブーム先端の拡管ヘッドの近傍にシュウを半径方向に放射状に複数個取り付けた装置を用いて、真円度0.25%の管に拡管することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−284426号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年真円度の要求はますます厳しく、0.12%以下の高い真円度が要求される場合もあり、特許文献1記載の方法では十分な真円度が得られない。
【0008】
また、昨今のパイプラインの長距離化や輸送圧力の増大及び建設コストの低減化に伴い、X60グレードを超える高強度鋼管の需要が増大している。高強度鋼管では拡管時に溶接部で割れを生じ易いため、拡管率を低くする必要があり、優れた真円度が得られにくい。特に、管径管厚比(外径/管厚)が大きい場合は顕著である。
【0009】
そこで、本発明は拡管率が1.2%以下と低くても真円度の高い鋼管が得られる拡管装置およびそれを用いた鋼管の製造方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の手段により、目的を達成する。
1.ブーム先端に拡管ヘッドを備え、前記拡管ヘッド近傍に鋼管をその内面側から直径方向に拘束する少なくとも一対のローラを備え、前記ローラの幅が70mm以上、胴部曲率が前記鋼管の公称内径の85%以上、105%以下の中太型形状であり、ローラ取付け高さが前記鋼管の公称内径の49%以上51%以下であることを特徴とする鋼管の拡管装置。
2.鋼管を拡管する工程において、拡管ヘッドをブーム先端に備え、前記拡管ヘッド近傍に鋼管をその内面側から直径方向に拘束する少なくとも一対のローラを備えた拡管装置を用い、前記ローラを幅70mm以上、胴部曲率を鋼管の公称内径の85%以上、105%以下の中太型形状とし、ローラ取付け高さを前記鋼管公称内径の49%以上51%以下とし、拡管率を0.6%以上、1.2%以下とすることを特徴とする鋼管の製造方法。
3.前記鋼管がAPI規格X60グレード相当以上の鋼管で、管径管厚比が60以上200以下であることを特徴とする2記載の鋼管の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る拡管装置の概略構造図で(a)は側面図、(b)はb−b´断面図を示し、図2はローラ取り付け部の細部を示す。図において1,1a,1bはローラ、2は拡管ヘッド、3はブーム、4は鋼管、5は取り付けシム、6a,6bはボルト,hはローラ取り付け高さを示す。図3にローラのローラ幅、胴部曲率および回転軸方向の定義を示す。
【0013】
本発明の一実施形態に係る拡管装置は拡管ヘッド2の近傍において直径方向に少なくとも一対のローラ1a,1bを有する。ローラ1a,1bは先行する拡管ヘッド2の拡管により既に拡管された部分が再び変形しないように鋼管4の内面から拘束するものであり、拡管ヘッド2に近いほど拘束する効果が大きいため、近傍に配置する。
【0014】
また、ローラ1a,1bの回転軸をブーム3の長軸方向と垂直をなす面内に固定する。拡管のため、拡管ヘッドもしくは被拡管を移動させる際のローラの回転がスムーズとなり、連続的に拘束が付与され、内面疵の発生も防止される。
【0015】
さらに、ローラ1a,1bはブームの長軸方向と垂直をなす面内において鋼管の直径方向で対をなすように配置され、既に真円度調整が終了した部分が先行する拡管ヘッドの拡管により変形することを防止する。
【0016】
そのため、ローラは少なくとも一対を備えることが必要で、複数対を取り付けると拘束する範囲が拡りより優れた真円度がえられやすくなる。
【0017】
ローラ取り付け高さhは所定の値となるように取り付けシム5により調整する。ローラは鋼管に応じて最適な形状なものに交換できるようにボルト6a,6bでブーム3に取り付ける。
【0018】
〔ローラ幅〕
ローラ1a,1bの幅は70mm以上とする。70mm未満の場合、鋼管に対する拘束力が局所的になり、応力集中を生じ真円度が損なわれる。
【0019】
一方、幅が大きくなるとローラが重くなり、ブームの負荷が増大し、またローラの製作費用も高額となるため、200mm以下とするのが好ましい。
【0020】
〔胴部曲率〕
ローラの胴部曲率は鋼管の公称内径の85%以上、105%以下の中太型形状とする。
胴部曲率が85%未満の場合、ローラ両端部が拡管時に鋼管と接触せず、鋼管に対する拘束力が局所的となり、応力集中が生じ真円度が損なわれる。
【0021】
一方、105%を超えるとローラのサイドが鋼管の内部に接触するようになり、内面疵を生じるようになるため85%以上、105%以下とする。
【0022】
また、内面シーム溶接の余盛部が大きい場合は、ローラに当たるようになり真円度の調整が困難となるため、余盛部の形状に合わせて溝を設けたローラを用いることが好ましい。図4に一例を示す。
【0023】
〔ローラ取り付け高さ〕
ローラ取り付け高さは鋼管公称内径の49%以上51%以下とする。49%未満の場合、十分な拘束が得られず真円度が向上せず、一方、51%を超えると鋼管が過度に拡管され真円度が損なわれるため、49%以上、51%未満とする。
【0024】
本発明に係る拡管装置を用いて鋼管を拡管する場合、拡管率を0.6%以上、1.2%以下とする。
【0025】
拡管率が0.6%未満の場合、優れた真円度が得られず、一方、1.2%を超えると鋼管に加工硬化を生じ降伏強度が過度に上昇するため、0.6%以上、1.2%以下とする。
【0026】
なお、本発明はクラッド鋼管、樹脂巻き鋼管等にも適用可能で、更には鋼以外の材質の管であっても良い。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の有効性を示すため、実施例を挙げて具体的に説明する。実施例ではUOE鋼管を対象とし、鋼管の強度、管径管厚比を変えたものについて拡管率1.1%で拡管する際のローラ形状、ローラ取り付け位置、ローラの個数を種々変えて真円度を求めた。また、拡管率の影響についても調査した。
【0028】
表1に本発明例、表2に比較例を示す。拡管率は(拡管後外径―拡管前外径)/拡管前外径×100(%)、真円度は(最大外径―最小外径)/鋼管公称外径×100(%)とする。
【0029】
ローラ取り付け方法におけるローラ位置は拡管ヘッドからブームを見て12時の位置を0°とし時計回りに角度で示した。真円度が0.12%以内のものを良好、0.08%以下のものをきわめて良好とした。
【0030】
表1の発明例においてNo.1〜5は拡管装置を本発明範囲内で一定とし、鋼管の強度を変えた場合で、X42〜X100の強度範囲において真円度0.08%〜0.09%が得られている。
【0031】
No.6,7は同一強度(X42)の鋼管における管径管厚比と、ローラの形状を変えて拡管した場合で真円度0.10%〜0.11%が得られている。
【0032】
No.8,9は同一強度(X60)の鋼管における管径管厚比と、ローラの形状を変えて拡管した場合で真円度0.10%〜0.11%が得られている。
【0033】
No.10,11は拡管装置におけるローラ形状などの規定は共通とし、鋼管の強度をX52(No.10)とX80(No.11)と変えた場合で、真円度0.08%〜0.09%が得られている。
【0034】
No.12,13はNo.10,11におけるローラの幅とローラ位置を変えた場合で、No.10,11と同様の真円度が得られている。
【0035】
No.14,15はNo.12,13におけるローラ位置(被拡管の径方向断面におけるローラの取り付け角度)を変えた場合で、No.12,13と同様の真円度が得られている。
【0036】
No.16,17は鋼管の強度をX46とし、ローラ高さを変えた場合で、真円度0.10%が得られている。
【0037】
No.18,19はNo.16,17における鋼管の強度をX100とした場合で、真円度0.08%が得られている。
【0038】
No.20,21は鋼管の強度をX52、拡管装置のローラ形状などの規定を共通とし拡管率を0.6%(No.21)と1.2%(No.20)とした場合で、真円度0.09%〜0.10%が得られている。
【0039】
No.22,23は鋼管の強度をX70、拡管装置のローラ形状などの規定を共通とし拡管率を0.6%(No.23)と1.2%(No.22)とした場合で、真円度0.06%〜0.09%が得られている。
【0040】
表2の比較例においてNo.1、2はローラ幅が本発明範囲外で真円度が0.13%〜0.14%、No.3,4は胴部曲率が本発明範囲内となる被拡管の公称内径の85%以上から105%以下の範囲外であり、No.3は真円度が0.07%と良好であるがパイプ内面疵を生じ、No.4は真円度が0.13%と本発明例に対し劣り、パイプ内面疵も生じている。No.5.6も同様に胴部曲率が本発明範囲外で真円度が0.13%〜0.14%と本発明例に対し劣っている。
【0041】
No.7〜10はローラの数が少なく、対をなすように取り付けられていないため、先行する拡管ヘッドによる管の変形を防止することができず真円度が0.25%〜0.30%と劣っている。
【0042】
No.11,12はローラが対をなすように取り付けられていないため真円度が0.13%と劣っている。
【0043】
No.13〜16はローラ高さが本発明範囲内の被拡管鋼管公称内径の49%以上51%以下の範囲外で真円度が0.14%〜0.15%と劣っている。
【0044】
No.17,18はローラが被拡管の直径方向をなすように取り付けられていないため、ローラが円滑に回転せず、被拡管内面にローラ疵が発生した。
【0045】
No.19〜22は拡管率が本発明範囲内の0.6%〜1.2%の範囲外で拡管した場合で、No.19はX52の鋼管を拡管率1.3%で拡管し、溶接熱影響部で割れが生じた場合、No.20はX52の鋼管を拡管率0.5%で拡管し、真円度が0.30%の場合を示す。
【0046】
No.21はX70の鋼管を拡管率1.3%で拡管し、溶接熱影響部で割れが生じた場合、No.22はX70の鋼管を拡管率0.5%で拡管し、真円度が0.30%の場合を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、API規格X60グレード相当以上の高強度鋼管で、管径管厚比(外径/管厚)が60以上200以下であっても、0.6%以上1.2%以下の低い拡管率で優れた真円度が得られ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る拡管装置の概略外観図で(a)は側面図、(b)はb−b´断面図を示す。
【図2】ローラ取り付け部の細部を模式的に示す図。
【図3】ローラ形状におけるローラ幅、胴部曲率、回転軸方向を示す図。
【図4】溝付きローラの一例を示す図。
【図5】UOE鋼管の製造工程を模式的に示す図。
【図6】拡管工程における被拡管と装置の配置を示す図。
【符号の説明】
1、1a,1b ローラ
2 拡管ヘッド
3 ブーム
4 鋼管
5 取り付けシム
6a,6b 取り付けボルト
h ローラ取り付け高さ
100 拡管装置
101 ブーム
102 拡管ヘッド
103 鋼管
104 クリッパー
Claims (3)
- ブーム先端に拡管ヘッドを備え、前記拡管ヘッド近傍に鋼管をその内面側から直径方向に拘束する少なくとも一対のローラを備え、前記ローラの幅が70mm以上、胴部曲率が前記鋼管の公称内径の85%以上、105%以下の中太型形状であり、ローラ取付け高さが前記鋼管の公称内径の49%以上51%以下であることを特徴とする鋼管の拡管装置。
- 鋼管を拡管する工程において、拡管ヘッドをブーム先端に備え、前記拡管ヘッド近傍に鋼管をその内面側から直径方向に拘束する少なくとも一対のローラを備えた拡管装置を用い、前記ローラを幅70mm以上、胴部曲率を鋼管の公称内径の85%以上、105%以下の中太型形状とし、ローラ取付け高さを前記鋼管公称内径の49%以上51%以下とし、拡管率を0.6%以上、1.2%以下とすることを特徴とする鋼管の製造方法。
- 前記鋼管がAPI規格X60グレード相当以上の鋼管で、管径管厚比が60以上200以下であることを特徴とする請求項2記載の鋼管の製造方法。
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