JP2004283694A - 水素貯蔵材粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素貯蔵量が大であり,また水素放出・貯蔵速度が速い水素貯蔵材粉末を提供する。
【解決手段】水素貯蔵材粉末は,マトリックス3およびそのマトリックス3に分散する複数の超微粒子4を有する複合粒子2の集合体である。マトリックス3はアラネートよりなり,超微粒子4は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である。超微粒子4の粒径dは10nm≦d≦800nmである。
【選択図】 図2
【解決手段】水素貯蔵材粉末は,マトリックス3およびそのマトリックス3に分散する複数の超微粒子4を有する複合粒子2の集合体である。マトリックス3はアラネートよりなり,超微粒子4は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である。超微粒子4の粒径dは10nm≦d≦800nmである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素貯蔵材粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,水素貯蔵材粉末としては,アルカリ金属アラネートが知られている(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特表平11−510133号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の水素貯蔵材粉末は,水素貯蔵量が少ない,水素放出・貯蔵速度が遅い等の問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は,水素貯蔵量が大であり,また水素放出・貯蔵速度が速い前記水素貯蔵材粉末を提供することを目的とする。
【0006】
前記目的を達成するため本発明によれば,マトリックスおよびそのマトリックスに分散する複数の超微粒子を有する複合粒子の集合体であって,前記マトリックスはアラネートよりなり,前記超微粒子は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種であり,前記超微粒子の粒径dは10nm≦d≦800nmである水素貯蔵材粉末が提供される。
【0007】
前記のように構成すると,超微粒子がアラネートの分解反応を促進するので水素放出速度が速められ,一方,超微粒子がアラネートの合成反応を促進するので水素貯蔵速度が速められると共に水素貯蔵量も大となる。ただし,超微粒子の粒径dがd<10nmでは超微粒子の活性が高すぎて,その粒子の取扱いが難しくなり,一方,d>800nmでは水素貯蔵材粉末の水素貯蔵量が小となり,また水素放出・貯蔵速度が遅くなる。
【0008】
本発明は,前記水素貯蔵材粉末を容易に得ることができる前記製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
前記目的を達成するため本発明によれば,マトリックスおよびそのマトリックスに分散する複数の超微粒子を有する複合粒子の集合体であって,前記マトリックスはアラネートよりなり,前記超微粒子は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である水素貯蔵材粉末を製造するに当り,金属水素化物粒子の集合体と,Al粒子の集合体と,前記超微粒子の集合体とよりなる混合粉末を調製し,次いでその混合粉末を用いて水素雰囲気中にてボールミリングを行う,水素貯蔵材粉末の製造方法が提供される。
【0010】
前記方法によれば所期の目的を達成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1,2において,水素貯蔵材粉末1は複合粒子2の集合体であり,その複合粒子2は,マトリックス3およびそのマトリックス3の内部および外面に分散する,複数の超微粒子4を有する。マトリックス3はアラネートよりなり,超微粒子4は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である。超微粒子4の粒径dは10nm≦d≦800nm,好ましくは,20nm≦d≦500nmである。この場合,超微粒子4の粒径dは,顕微鏡写真におけるそれらの最長部分の長さとする。これは以下同じである。
【0012】
アラネートには,NaAlH4 ,Na3 AlH6 ,Na2 LiAlH6 ,NaLi2 AlH6 ,LiAlH4 ,Li3 AlH6 ,KAlH4 およびK3 AlH6 から選択される少なくとも一種が該当する。
【0013】
金属超微粒子には,REMNi5 (REM:希土類金属)超微粒子,CaNi5 超微粒子,TiFe超微粒子,TiCo超微粒子,TiMn1.5 超微粒子,Ti1.2 CrV超微粒子,ZrCo超微粒子,ZrMn2 超微粒子,ZrFe2 超微粒子,Mg2 Ni超微粒子,Mg2 Cu超微粒子,Ti超微粒子,V超微粒子,Ge超微粒子,Zr超微粒子,Nb超微粒子,Mg超微粒子,Pd超微粒子,Ca超微粒子,La超微粒子,Pr超微粒子,Nd超微粒子およびLi超微粒子から選択される少なくとも一種が該当する。
【0014】
金属水素化物超微粒子には,REMNi5 (REM:希土類金属)水素化物(REMNi5 H6 )超微粒子,CaNi5 水素化物(CaNi5 H6 )超微粒子,TiFe水素化物(TiFeH1.9 )超微粒子,TiCo水素化物(TiCoH1.4 )超微粒子,TiMn1.5 水素化物(TiMn1.5 H2.5 )超微粒子,Ti1.2 CrV水素化物(Ti1.2 CrVH5.4 )超微粒子,ZrCo水素化物(ZrCoH2.6 )超微粒子,ZrMn2 水素化物(ZrMn2 H3.5 )超微粒子,ZrFe2 水素化物(ZrFe2 −H)超微粒子,Mg2 Ni水素化物(Mg2 NiH4 )超微粒子,Mg2 Cu水素化物(Mg2 Cu−H)超微粒子,Ti水素化物(TiH2 )超微粒子,V水素化物(VH2 )超微粒子,Zr水素化物(ZrH2 )超微粒子,Nb水素化物(NbH)超微粒子,Mg水素化物(MgH2 )超微粒子,Pd水素化物(PdH0.6 )超微粒子,Ca水素化物(CaH2 )超微粒子,La水素化物(LaH3 )超微粒子,Pr水素化物(PrH3 )超微粒子,Nd水素化物(NdH3 )超微粒子およびLi水素化物(LiH)超微粒子から選択される少なくとも一種が該当する。
【0015】
また金属超微粒子には,Ni超微粒子,Cu超微粒子,Co超微粒子,Fe超微粒子およびMn超微粒子から選択される少なくとも一種も該当する。
【0016】
金属塩化物超微粒子には,LiCl超微粒子,AlCl3 超微粒子,YCl3 超微粒子,NdCl3 超微粒子,PrCl3 超微粒子,LaCl3 超微粒子,CaCl2 超微粒子,ZrCl2 超微粒子,CoCl2 超微粒子,FeCl3 超微粒子,CuCl2 超微粒子,CuCl超微粒子,NiCl2 超微粒子,MgCl2 超微粒子,MnCl2 超微粒子,VCl2 超微粒子およびTiCl2 超微粒子から選択される少なくとも一種が該当する。
【0017】
前記のような超微粒子の少なくとも一種,例えばTiH2 超微粒子をアラネートマトリックス,例えばLiAlH4 マトリックスに分散させると,その金属組織は非常に高い活性を有するので初期活性化処理は不要である。そして,水素放出時には,3LiAlH4 [TiH2 ]→Li3 AlH6 [TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 ;2Li3 AlH6 [TiH2 ]+4Al[TiH2 ]+6H2 →6LiH[TiH2 ]+6Al[TiH2 ]+9H2 といった分解反応をTiH2 超微粒子が促進するので,水素放出速度が速められる。一方,水素貯蔵時には,6LiH[TiH2 ]+6Al[TiH2 ]+9H2 →2Li3 AlH6 [TiH6 ]+4Al[TiH2 ]+6H2 ;Li3 AlH6 [TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 →3LiAlH4 [TiH2 ]といった合成反応をTiH2 超微粒子が促進するので,水素貯蔵速度が速められると共に水素貯蔵量も大となる。
【0018】
前記のような触媒作用を確保すべく,超微粒子の含有量GP は0.1M%≦GP ≦8.0M%に設定される。この含有量GP がGP <0.1M%では超微粒子を用いる意義が失われ,一方,GP >8.0M%では水素貯蔵量が減少傾向となる。超微粒子の含有量GP は,好ましくは0.3M%≦GP ≦5.0M%であり,これにより水素貯蔵量を大に維持することができる。
【0019】
水素貯蔵材粉末の製造に当っては,LiH粒子の集合体であるLiH粉末(および/またはNaH粒子の集合体であるNaH粉末,またはKH粒子の集合体であるKH粉末)と,Al粒子の集合体であるAl粉末と,超微粒子の集合体である超微粒子粉末とを用いて,水素加圧下にてボールミリングを行う,といった方法が採用される。
【0020】
例えば,ボールミリングによるLiAlH4 の生成は,LiHとAlが水素を取込みつつ行われることが必要である。そのためには,LiHとAlが水素と速やかに反応しなければならないが,通常Alは水素に対して不活性であって,全く反応しない。またLiHもそれ自体安定であるため,Alほどではないが水素に対して不活性である。よってLiHとAlを水素中でボールミリングしても,通常はほとんど反応しない。そこで,ボールミリングに当り超微粒子を混入させたもので,この超微粒子の触媒作用によってLiAlH4 の生成が著しく促進される。そのメカニズムは,超微粒子のLiHおよびAlへの吸着,超微粒子の作用による水素分子の水素原子への解離,水素原子とLiHおよびAlとの反応ならびにその進行と考えられる。このボールミリングにおいて,LiH粒子(NaH粒子)およびAl粒子の粒径D0 は3μm≦D0 ≦800μmが適当である。粒径D0 がD0 <3μmではLiH粒子等の活性が高いため取扱い性が悪くなり,一方,D0 >800μmでは水素貯蔵材粉末の水素貯蔵量が小となり,また水素貯蔵・放出速度が遅くなる。
【0021】
以下,具体例について説明する。
【0022】
〔例−1〕
(1)LiAlH4 とTiH2 超微粒子とよりなる水素貯蔵材粉末の製造
純度が90%以上であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dが50nm≦d≦300nm(平均粒径150nm)であるTiH2 超微粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,48M%のLiH粒子の集合体と,48M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0023】
混合粉末を横型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 300rpm ,ポット回転数 100rpm ,ミリング時間 3時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の1.5倍の加速度1.5Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を実施例(1)とする。この実施例(1)におけるTiH2 超微粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0024】
比較のため,純度が90%以上であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dがd≦80μm(平均粒径40μm)であるTiH2 粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,48M%のLiH粒子の集合体と,48M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0025】
混合粉末を遊星型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 350rpm ,ポット回転数 800rpm ,ミリング時間 30時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の20倍の加速度20Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を比較例(1)とする。この比較例(1)におけるTiH2 粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0026】
実施例(1)および比較例(1)の前記製造方法において,実施例(1)の場合は,TiH2 超微粒子の触媒作用が得られることから,投入エネルギは比較例(1)の100分の1以下(粉砕エネルギ:13分の1;粉砕時間:10分の1)でよいことが判明した。
【0027】
(2)水素放出速度試験および水素貯蔵速度試験
実施例(1)および比較例(1)について,180℃における水素放出速度試験および150℃における水素貯蔵速度試験を行った。これらの試験は,容積法による圧力−組成等温線(PCT線)測定法(JIS H7201)に規定された真空原点法に則って行われた。
【0028】
(2)−a:水素放出速度試験
図3は,測定温度180℃における水素放出速度試験結果を示す。この場合,実施例(1)および比較例(1)の180℃におけるプラトー圧および装置の仕様上の制約から,初期設定水素圧力は0.005MPaであった。図3から明らかなように,実施例(1)の場合,900秒間にて約5.8wt%の水素を放出させることができるもので,180℃といった低い温度にて優れた水素放出速度を有することが判る。一方,比較例(1)は,実施例(1)と同一組成であるにもかかわらず,超微粒子を触媒として使用していないことから活性が低く,水素放出速度が非常に遅い。なお,実施例(1)における水素放出量が約5.8wt%で一定となっているのは,水素の放出に伴い試料容器内の水素圧力が増加し,約5.8wt%放出したところで平衡解離圧に達したためである。
【0029】
(2)−b:水素貯蔵速度試験
図4は,測定温度150℃における水素貯蔵速度試験結果を示す。この試験においては,真空状態から7.2MPaの高圧水素加圧を行った。実施例(1)と比較例(1)は同一組成であるにもかかわらず,水素貯蔵速度には大きな差が生じており,実施例(1)の場合は,水素導入後,900秒間で約4.5wt%以上の水素を貯蔵する,という優れた水素貯蔵特性を有する。一方,比較例(1)の場合は,150℃においては水素をほとんど貯蔵しない。超微粒子を触媒として使用していない比較例(1)においてはLiAlH4 の合成反応が促進されず,非常に遅いことが判る。
【0030】
〔例−2〕
(1)Li3 AlH6 とTiH2 超微粒子とよりなる水素貯蔵材粉末の製造
純度が90%以上であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dが50nm≦d≦300nm(平均粒径150nm)であるTiH2 超微粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,72M%のLiH粒子の集合体と,24M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0031】
混合粉末を横型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 300rpm ,ポット回転数 100rpm ,ミリング時間 3時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の1.5倍の加速度1.5Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を実施例(2)とする。この実施例(2)におけるTiH2 超微粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0032】
比較のため,純度が90%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dがd≦80μm(平均粒径40μm)であるTiH2 粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,72M%のLiH粒子の集合体と,24M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0033】
混合粉末を遊星型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 350rpm ,ポット回転数 800rpm ,ミリング時間 30時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の20倍の加速度20Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を比較例(2)とする。この比較例(2)におけるTiH2 粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0034】
実施例(2)および比較例(2)の前記製造方法において,実施例(2)の場合は前記同様に,TiH2 超微粒子の触媒作用が得られることから,投入エネルギは比較例(2)の100分の1以下(粉砕エネルギ:13分の1;粉砕時間:10分の1)でよいことが判明した。
【0035】
(2)水素放出速度試験および水素貯蔵速度試験
実施例(2)および比較例(2)について,180℃における水素放出速度試験および150℃における水素貯蔵速度試験を行った。これらの試験は,容積法による圧力−組成等温線(PCT線)測定法(JIS H7201)に規定された真空原点法に則って行われた。この場合,水素の放出は,2Li3 AlH6 [TiH]→6LiH[TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 といった分解反応により,一方,水素の貯蔵は,6LiH[TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 →2Li3 AlH6 [TiH2 ]といった合成反応による。
【0036】
(2)−a:水素放出速度試験
図5は,測定温度180℃における水素放出速度試験結果を示す。この場合,実施例(2)および比較例(2)の180℃におけるプラトー圧および装置の仕様上の制約から,初期設定水素圧力は0.005MPaであった。図5から明らかなように,実施例(2)の場合,900秒間にて約4.0wt%の水素を放出することができるもので,180℃といった低い温度にて優れた水素放出速度を有することが判る。一方,比較例(2)は,実施例(2)と同一組成であるにも拘らず,超微粒子を触媒として使用していないことから活性が低く,水素放出速度が非常に遅い。なお,実施例(2)における水素放出量が約4.0wt%で一定となっているのは,水素の放出に伴い試料容器内の水素圧力が増加し,約4.0wt%放出したところで平衡解離圧に達したためである。
【0037】
(2)−b:水素貯蔵速度試験
図6は,測定温度150℃における水素貯蔵速度試験結果を示す。この試験においては,真空状態から7.2MPaの高圧水素加圧を行った。実施例(2)と比較例(2)は同一組成であるにもかかわらず,水素貯蔵速度には大きな差が生じており,実施例(2)の場合は,水素導入後,900秒間で約4.8wt%以上の水素を貯蔵する,という優れた水素貯蔵特性を有する。一方,比較例(2)の場合は,3600秒間で約1.0wt%の水素を貯蔵するにすぎず,超微粒子を触媒として使用していないことからLi3 AlH6 の合成反応が促進されず,非常に遅いことが判る。
【0038】
【発明の効果】
請求項1〜7記載の発明によれば,前記のように構成することによって,水素貯蔵量が大であり,且つ水素放出・貯蔵速度が速い水素貯蔵材粉末を提供することができる。
【0039】
請求項8記載の発明によれば,前記水素貯蔵材粉末を容易に得ることが可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素貯蔵材粉末の説明図である。
【図2】複合粒子の金属組織の説明図である。
【図3】水素貯蔵材粉末の実施例(1)および比較例(1)に関する水素放出試験結果を示すグラフである。
【図4】水素貯蔵材粉末の実施例(1)および比較例(1)に関する水素貯蔵試験結果を示すグラフである。
【図5】水素貯蔵材粉末の実施例(2)および比較例(2)に関する水素放出速度試験結果を示すグラフである。
【図6】水素貯蔵材粉末の実施例(2)および比較例(2)に関する水素貯蔵速度試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1………水素貯蔵材粉末
2………複合粒子
3………マトリックス
4………超微粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は水素貯蔵材粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,水素貯蔵材粉末としては,アルカリ金属アラネートが知られている(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特表平11−510133号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の水素貯蔵材粉末は,水素貯蔵量が少ない,水素放出・貯蔵速度が遅い等の問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は,水素貯蔵量が大であり,また水素放出・貯蔵速度が速い前記水素貯蔵材粉末を提供することを目的とする。
【0006】
前記目的を達成するため本発明によれば,マトリックスおよびそのマトリックスに分散する複数の超微粒子を有する複合粒子の集合体であって,前記マトリックスはアラネートよりなり,前記超微粒子は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種であり,前記超微粒子の粒径dは10nm≦d≦800nmである水素貯蔵材粉末が提供される。
【0007】
前記のように構成すると,超微粒子がアラネートの分解反応を促進するので水素放出速度が速められ,一方,超微粒子がアラネートの合成反応を促進するので水素貯蔵速度が速められると共に水素貯蔵量も大となる。ただし,超微粒子の粒径dがd<10nmでは超微粒子の活性が高すぎて,その粒子の取扱いが難しくなり,一方,d>800nmでは水素貯蔵材粉末の水素貯蔵量が小となり,また水素放出・貯蔵速度が遅くなる。
【0008】
本発明は,前記水素貯蔵材粉末を容易に得ることができる前記製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
前記目的を達成するため本発明によれば,マトリックスおよびそのマトリックスに分散する複数の超微粒子を有する複合粒子の集合体であって,前記マトリックスはアラネートよりなり,前記超微粒子は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である水素貯蔵材粉末を製造するに当り,金属水素化物粒子の集合体と,Al粒子の集合体と,前記超微粒子の集合体とよりなる混合粉末を調製し,次いでその混合粉末を用いて水素雰囲気中にてボールミリングを行う,水素貯蔵材粉末の製造方法が提供される。
【0010】
前記方法によれば所期の目的を達成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1,2において,水素貯蔵材粉末1は複合粒子2の集合体であり,その複合粒子2は,マトリックス3およびそのマトリックス3の内部および外面に分散する,複数の超微粒子4を有する。マトリックス3はアラネートよりなり,超微粒子4は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である。超微粒子4の粒径dは10nm≦d≦800nm,好ましくは,20nm≦d≦500nmである。この場合,超微粒子4の粒径dは,顕微鏡写真におけるそれらの最長部分の長さとする。これは以下同じである。
【0012】
アラネートには,NaAlH4 ,Na3 AlH6 ,Na2 LiAlH6 ,NaLi2 AlH6 ,LiAlH4 ,Li3 AlH6 ,KAlH4 およびK3 AlH6 から選択される少なくとも一種が該当する。
【0013】
金属超微粒子には,REMNi5 (REM:希土類金属)超微粒子,CaNi5 超微粒子,TiFe超微粒子,TiCo超微粒子,TiMn1.5 超微粒子,Ti1.2 CrV超微粒子,ZrCo超微粒子,ZrMn2 超微粒子,ZrFe2 超微粒子,Mg2 Ni超微粒子,Mg2 Cu超微粒子,Ti超微粒子,V超微粒子,Ge超微粒子,Zr超微粒子,Nb超微粒子,Mg超微粒子,Pd超微粒子,Ca超微粒子,La超微粒子,Pr超微粒子,Nd超微粒子およびLi超微粒子から選択される少なくとも一種が該当する。
【0014】
金属水素化物超微粒子には,REMNi5 (REM:希土類金属)水素化物(REMNi5 H6 )超微粒子,CaNi5 水素化物(CaNi5 H6 )超微粒子,TiFe水素化物(TiFeH1.9 )超微粒子,TiCo水素化物(TiCoH1.4 )超微粒子,TiMn1.5 水素化物(TiMn1.5 H2.5 )超微粒子,Ti1.2 CrV水素化物(Ti1.2 CrVH5.4 )超微粒子,ZrCo水素化物(ZrCoH2.6 )超微粒子,ZrMn2 水素化物(ZrMn2 H3.5 )超微粒子,ZrFe2 水素化物(ZrFe2 −H)超微粒子,Mg2 Ni水素化物(Mg2 NiH4 )超微粒子,Mg2 Cu水素化物(Mg2 Cu−H)超微粒子,Ti水素化物(TiH2 )超微粒子,V水素化物(VH2 )超微粒子,Zr水素化物(ZrH2 )超微粒子,Nb水素化物(NbH)超微粒子,Mg水素化物(MgH2 )超微粒子,Pd水素化物(PdH0.6 )超微粒子,Ca水素化物(CaH2 )超微粒子,La水素化物(LaH3 )超微粒子,Pr水素化物(PrH3 )超微粒子,Nd水素化物(NdH3 )超微粒子およびLi水素化物(LiH)超微粒子から選択される少なくとも一種が該当する。
【0015】
また金属超微粒子には,Ni超微粒子,Cu超微粒子,Co超微粒子,Fe超微粒子およびMn超微粒子から選択される少なくとも一種も該当する。
【0016】
金属塩化物超微粒子には,LiCl超微粒子,AlCl3 超微粒子,YCl3 超微粒子,NdCl3 超微粒子,PrCl3 超微粒子,LaCl3 超微粒子,CaCl2 超微粒子,ZrCl2 超微粒子,CoCl2 超微粒子,FeCl3 超微粒子,CuCl2 超微粒子,CuCl超微粒子,NiCl2 超微粒子,MgCl2 超微粒子,MnCl2 超微粒子,VCl2 超微粒子およびTiCl2 超微粒子から選択される少なくとも一種が該当する。
【0017】
前記のような超微粒子の少なくとも一種,例えばTiH2 超微粒子をアラネートマトリックス,例えばLiAlH4 マトリックスに分散させると,その金属組織は非常に高い活性を有するので初期活性化処理は不要である。そして,水素放出時には,3LiAlH4 [TiH2 ]→Li3 AlH6 [TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 ;2Li3 AlH6 [TiH2 ]+4Al[TiH2 ]+6H2 →6LiH[TiH2 ]+6Al[TiH2 ]+9H2 といった分解反応をTiH2 超微粒子が促進するので,水素放出速度が速められる。一方,水素貯蔵時には,6LiH[TiH2 ]+6Al[TiH2 ]+9H2 →2Li3 AlH6 [TiH6 ]+4Al[TiH2 ]+6H2 ;Li3 AlH6 [TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 →3LiAlH4 [TiH2 ]といった合成反応をTiH2 超微粒子が促進するので,水素貯蔵速度が速められると共に水素貯蔵量も大となる。
【0018】
前記のような触媒作用を確保すべく,超微粒子の含有量GP は0.1M%≦GP ≦8.0M%に設定される。この含有量GP がGP <0.1M%では超微粒子を用いる意義が失われ,一方,GP >8.0M%では水素貯蔵量が減少傾向となる。超微粒子の含有量GP は,好ましくは0.3M%≦GP ≦5.0M%であり,これにより水素貯蔵量を大に維持することができる。
【0019】
水素貯蔵材粉末の製造に当っては,LiH粒子の集合体であるLiH粉末(および/またはNaH粒子の集合体であるNaH粉末,またはKH粒子の集合体であるKH粉末)と,Al粒子の集合体であるAl粉末と,超微粒子の集合体である超微粒子粉末とを用いて,水素加圧下にてボールミリングを行う,といった方法が採用される。
【0020】
例えば,ボールミリングによるLiAlH4 の生成は,LiHとAlが水素を取込みつつ行われることが必要である。そのためには,LiHとAlが水素と速やかに反応しなければならないが,通常Alは水素に対して不活性であって,全く反応しない。またLiHもそれ自体安定であるため,Alほどではないが水素に対して不活性である。よってLiHとAlを水素中でボールミリングしても,通常はほとんど反応しない。そこで,ボールミリングに当り超微粒子を混入させたもので,この超微粒子の触媒作用によってLiAlH4 の生成が著しく促進される。そのメカニズムは,超微粒子のLiHおよびAlへの吸着,超微粒子の作用による水素分子の水素原子への解離,水素原子とLiHおよびAlとの反応ならびにその進行と考えられる。このボールミリングにおいて,LiH粒子(NaH粒子)およびAl粒子の粒径D0 は3μm≦D0 ≦800μmが適当である。粒径D0 がD0 <3μmではLiH粒子等の活性が高いため取扱い性が悪くなり,一方,D0 >800μmでは水素貯蔵材粉末の水素貯蔵量が小となり,また水素貯蔵・放出速度が遅くなる。
【0021】
以下,具体例について説明する。
【0022】
〔例−1〕
(1)LiAlH4 とTiH2 超微粒子とよりなる水素貯蔵材粉末の製造
純度が90%以上であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dが50nm≦d≦300nm(平均粒径150nm)であるTiH2 超微粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,48M%のLiH粒子の集合体と,48M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0023】
混合粉末を横型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 300rpm ,ポット回転数 100rpm ,ミリング時間 3時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の1.5倍の加速度1.5Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を実施例(1)とする。この実施例(1)におけるTiH2 超微粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0024】
比較のため,純度が90%以上であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dがd≦80μm(平均粒径40μm)であるTiH2 粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,48M%のLiH粒子の集合体と,48M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0025】
混合粉末を遊星型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 350rpm ,ポット回転数 800rpm ,ミリング時間 30時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の20倍の加速度20Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を比較例(1)とする。この比較例(1)におけるTiH2 粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0026】
実施例(1)および比較例(1)の前記製造方法において,実施例(1)の場合は,TiH2 超微粒子の触媒作用が得られることから,投入エネルギは比較例(1)の100分の1以下(粉砕エネルギ:13分の1;粉砕時間:10分の1)でよいことが判明した。
【0027】
(2)水素放出速度試験および水素貯蔵速度試験
実施例(1)および比較例(1)について,180℃における水素放出速度試験および150℃における水素貯蔵速度試験を行った。これらの試験は,容積法による圧力−組成等温線(PCT線)測定法(JIS H7201)に規定された真空原点法に則って行われた。
【0028】
(2)−a:水素放出速度試験
図3は,測定温度180℃における水素放出速度試験結果を示す。この場合,実施例(1)および比較例(1)の180℃におけるプラトー圧および装置の仕様上の制約から,初期設定水素圧力は0.005MPaであった。図3から明らかなように,実施例(1)の場合,900秒間にて約5.8wt%の水素を放出させることができるもので,180℃といった低い温度にて優れた水素放出速度を有することが判る。一方,比較例(1)は,実施例(1)と同一組成であるにもかかわらず,超微粒子を触媒として使用していないことから活性が低く,水素放出速度が非常に遅い。なお,実施例(1)における水素放出量が約5.8wt%で一定となっているのは,水素の放出に伴い試料容器内の水素圧力が増加し,約5.8wt%放出したところで平衡解離圧に達したためである。
【0029】
(2)−b:水素貯蔵速度試験
図4は,測定温度150℃における水素貯蔵速度試験結果を示す。この試験においては,真空状態から7.2MPaの高圧水素加圧を行った。実施例(1)と比較例(1)は同一組成であるにもかかわらず,水素貯蔵速度には大きな差が生じており,実施例(1)の場合は,水素導入後,900秒間で約4.5wt%以上の水素を貯蔵する,という優れた水素貯蔵特性を有する。一方,比較例(1)の場合は,150℃においては水素をほとんど貯蔵しない。超微粒子を触媒として使用していない比較例(1)においてはLiAlH4 の合成反応が促進されず,非常に遅いことが判る。
【0030】
〔例−2〕
(1)Li3 AlH6 とTiH2 超微粒子とよりなる水素貯蔵材粉末の製造
純度が90%以上であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dが50nm≦d≦300nm(平均粒径150nm)であるTiH2 超微粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,72M%のLiH粒子の集合体と,24M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0031】
混合粉末を横型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 300rpm ,ポット回転数 100rpm ,ミリング時間 3時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の1.5倍の加速度1.5Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を実施例(2)とする。この実施例(2)におけるTiH2 超微粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0032】
比較のため,純度が90%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるLiH粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径D0 がD0 ≦80μmであるAl粒子の集合体と,純度が99%であり,また粒径dがd≦80μm(平均粒径40μm)であるTiH2 粒子の集合体を用意した。次いで,それらの集合体を用いて,72M%のLiH粒子の集合体と,24M%のAl粒子の集合体と4M%のTiH2 超微粒子の集合体とよりなる,10gの混合粉末を調製した。
【0033】
混合粉末を遊星型ボールミルの容量500mlのポット(JIS SUS316製)に直径10mmのボール(JIS SUS316製)100個と共に入れ,ポット内を2.0MPaの水素雰囲気に保持して,ディスク回転数 350rpm ,ポット回転数 800rpm ,ミリング時間 30時間の条件でボールミリングを行った。この場合,ポット内には重力加速度の20倍の加速度20Gが発生していた。ボールミリング後,アルゴン雰囲気に保持されているグローブボックス中にて水素貯蔵材粉末を採取した。この水素貯蔵材粉末を比較例(2)とする。この比較例(2)におけるTiH2 粒子の含有量GP はGP =4M%であった。
【0034】
実施例(2)および比較例(2)の前記製造方法において,実施例(2)の場合は前記同様に,TiH2 超微粒子の触媒作用が得られることから,投入エネルギは比較例(2)の100分の1以下(粉砕エネルギ:13分の1;粉砕時間:10分の1)でよいことが判明した。
【0035】
(2)水素放出速度試験および水素貯蔵速度試験
実施例(2)および比較例(2)について,180℃における水素放出速度試験および150℃における水素貯蔵速度試験を行った。これらの試験は,容積法による圧力−組成等温線(PCT線)測定法(JIS H7201)に規定された真空原点法に則って行われた。この場合,水素の放出は,2Li3 AlH6 [TiH]→6LiH[TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 といった分解反応により,一方,水素の貯蔵は,6LiH[TiH2 ]+2Al[TiH2 ]+3H2 →2Li3 AlH6 [TiH2 ]といった合成反応による。
【0036】
(2)−a:水素放出速度試験
図5は,測定温度180℃における水素放出速度試験結果を示す。この場合,実施例(2)および比較例(2)の180℃におけるプラトー圧および装置の仕様上の制約から,初期設定水素圧力は0.005MPaであった。図5から明らかなように,実施例(2)の場合,900秒間にて約4.0wt%の水素を放出することができるもので,180℃といった低い温度にて優れた水素放出速度を有することが判る。一方,比較例(2)は,実施例(2)と同一組成であるにも拘らず,超微粒子を触媒として使用していないことから活性が低く,水素放出速度が非常に遅い。なお,実施例(2)における水素放出量が約4.0wt%で一定となっているのは,水素の放出に伴い試料容器内の水素圧力が増加し,約4.0wt%放出したところで平衡解離圧に達したためである。
【0037】
(2)−b:水素貯蔵速度試験
図6は,測定温度150℃における水素貯蔵速度試験結果を示す。この試験においては,真空状態から7.2MPaの高圧水素加圧を行った。実施例(2)と比較例(2)は同一組成であるにもかかわらず,水素貯蔵速度には大きな差が生じており,実施例(2)の場合は,水素導入後,900秒間で約4.8wt%以上の水素を貯蔵する,という優れた水素貯蔵特性を有する。一方,比較例(2)の場合は,3600秒間で約1.0wt%の水素を貯蔵するにすぎず,超微粒子を触媒として使用していないことからLi3 AlH6 の合成反応が促進されず,非常に遅いことが判る。
【0038】
【発明の効果】
請求項1〜7記載の発明によれば,前記のように構成することによって,水素貯蔵量が大であり,且つ水素放出・貯蔵速度が速い水素貯蔵材粉末を提供することができる。
【0039】
請求項8記載の発明によれば,前記水素貯蔵材粉末を容易に得ることが可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素貯蔵材粉末の説明図である。
【図2】複合粒子の金属組織の説明図である。
【図3】水素貯蔵材粉末の実施例(1)および比較例(1)に関する水素放出試験結果を示すグラフである。
【図4】水素貯蔵材粉末の実施例(1)および比較例(1)に関する水素貯蔵試験結果を示すグラフである。
【図5】水素貯蔵材粉末の実施例(2)および比較例(2)に関する水素放出速度試験結果を示すグラフである。
【図6】水素貯蔵材粉末の実施例(2)および比較例(2)に関する水素貯蔵速度試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1………水素貯蔵材粉末
2………複合粒子
3………マトリックス
4………超微粒子
Claims (8)
- マトリックス(3)およびそのマトリックス(3)に分散する複数の超微粒子(4)を有する複合粒子(2)の集合体であって,前記マトリックス(3)はアラネートよりなり,前記超微粒子(4)は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種であり,前記超微粒子(4)の粒径dは10nm≦d≦800nmであることを特徴とする水素貯蔵材粉末。
- 前記超微粒子(4)の含有量GP が0.1M%≦GP ≦8.0M%である,請求項1記載の水素貯蔵材粉末。
- 前記アラネートは,NaAlH4 ,Na3 AlH6 ,Na2 LiAlH6 ,NaLi2 AlH6 ,LiAlH4 ,Li3 AlH6 ,KAlH4 およびK3 AlH6 から選択される少なくとも一種である,請求項1または2記載の水素貯蔵材粉末。
- 前記金属超微粒子は,REMNi5 (REM:希土類金属)超微粒子,CaNi5 超微粒子,TiFe超微粒子,TiCo超微粒子,TiMn1.5 超微粒子,Ti1.2 CrV超微粒子,ZrCo超微粒子,ZrMn2 超微粒子,ZrFe2 超微粒子,Mg2 Ni超微粒子,Mg2 Cu超微粒子,Ti超微粒子,V超微粒子,Zr超微粒子,Nb超微粒子,Mg超微粒子,Pd超微粒子,Ca超微粒子,La超微粒子,Pr超微粒子,Nd超微粒子およびLi超微粒子から選択される少なくとも一種である,請求項1,2または3記載の水素貯蔵材粉末。
- 前記金属水素化物超微粒子は,REMNi5 (REM:希土類金属)水素化物超微粒子,CaNi5 水素化物超微粒子,TiFe水素化物超微粒子,TiCo水素化物超微粒子,TiMn1.5 水素化物超微粒子,Ti1.2 CrV水素化物超微粒子,ZrCo水素化物超微粒子,ZrMn2 水素化物超微粒子,ZrFe2 水素化物超微粒子,Mg2 Ni水素化物超微粒子,Mg2 Cu水素化物超微粒子,Ti水素化物超微粒子,V水素化物超微粒子,Zr水素化物超微粒子,Nb水素化物超微粒子,Mg水素化物超微粒子,Pd水素化物超微粒子,Ca水素化物超微粒子,La水素化物超微粒子,Pr水素化物超微粒子,Nd水素化物超微粒子およびLi水素化物超微粒子から選択される少なくとも一種である,請求項1,2または3記載の水素貯蔵材粉末。
- 前記金属超微粒子は,Ni超微粒子,Cu超微粒子,Co超微粒子,Fe超微粒子およびMn超微粒子から選択される少なくとも一種である,請求項1,2または3記載の水素貯蔵材粉末。
- 前記金属塩化物超微粒子は,LiCl超微粒子,AlCl3 超微粒子,YCl3 超微粒子,NdCl3 超微粒子,PrCl3 超微粒子,LaCl3 超微粒子,CaCl2 超微粒子,ZrCl2 超微粒子,CoCl2 超微粒子,FeCl3 超微粒子,CuCl2 超微粒子,CuCl超微粒子,NiCl2 超微粒子,MgCl2 超微粒子,MnCl2 超微粒子,VCl2 超微粒子およびTiCl2 超微粒子から選択される少なくとも一種である,請求項1,2または3記載の水素貯蔵材粉末。
- マトリックス(3)およびそのマトリックス(3)に分散する複数の超微粒子(4)を有する複合粒子(2)の集合体であって,前記マトリックス(3)はアラネートよりなり,前記超微粒子(4)は金属超微粒子,金属水素化物超微粒子および金属塩化物超微粒子から選択される少なくとも一種である水素貯蔵材粉末を製造するに当り,金属水素化物粒子の集合体と,Al粒子の集合体と,前記超微粒子の集合体とよりなる混合粉末を調製し,次いでその混合粉末を用いて水素雰囲気中にてボールミリングを行うことを特徴とする水素貯蔵材粉末の製造方法。
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