JP2004281145A - 鉛蓄電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】合成樹脂の電槽蓋または電槽蓋を構成する部品と一体成型された、電池の内外を貫通する鉛または鉛合金からなるブッシングと、該ブッシングの孔を貫通する極柱と、該極柱と接続される電池端子を溶接その他の手段で接続する端子構造は、電解液の滲出や気密保持能力の不足があり、長期にわたり信頼性の高い端子構造を提供する必要があった。
【解決手段】ブッシング2と電槽蓋1または電槽蓋1を構成する部品との接触面が電池内部に現れるまで環状に切削した後、該切削部分が変質する前に該切削部分を耐酸性樹脂5で封止する。また、切削部分と該部分を覆う封止片を耐酸性樹脂で接着し、また、切削部分と封止片とが形成する空間に接着力のある耐酸性樹脂を充填する。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛蓄電池の製造方法に関するもので、さらに詳しく言えばその端子構造が改良できる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の鉛蓄電池の端子構造は、例えば、特許文献1に示された改良案の一例のように、ブッシングと電槽蓋との間隙に合成樹脂を充填したものがある。
【0003】
【特許文献1】
実開昭58−101460号公報
【0004】
すなわち、前記特許文献1に記載されたものは、合成樹脂の電槽蓋または電槽蓋を構成する部品と一体成型された、電池の内外を貫通する鉛または鉛合金からなるブッシングと、電極群を集電し該ブッシングの孔を貫通する極柱と、該極柱と接続される電池端子を溶接その他の手段で接続する端子構造であり、伝統的に鉛蓄電池に用いられていて、従来からの一般的な用途では使用に耐えるレベルのものである。
【0005】
しかし、使用環境によっては電解液の滲出や気密保持能力の不足があり、鉛または鉛合金からなるブッシングと合成樹脂材の界面やその露出面付近に封止のための合成樹脂などの接着剤を施す提案が多くなされている。これによる改善効果はみられるが、電池の長期の使用期間にわたって効果を維持することは依然として困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来の伝統的な端子構造において、その有する問題を解決し、長期にわたり信頼性の高い端子構造を提供し、もって鉛蓄電池の信頼性、寿命性能を高めることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1では、鉛蓄電池の製造方法において、合成樹脂の電槽蓋または電槽蓋を構成する部品と一体成型された、電池の内外を貫通する鉛または鉛合金からなるブッシングと、電極群を集電し該ブッシングの孔を貫通する極柱と、該極柱と接続される電池端子を溶接その他の手段で接続する端子構造を備え、前記ブッシングと電槽蓋または電槽蓋を構成する部品の、電池内部または電池外部におけるブッシングと電槽蓋または電槽蓋を構成する部品との接触面の少なくとも一方を環状に切削した後、該切削部分を耐酸性樹脂で封止することを特徴とする。なお、「環状に切削する」としたのは、ブッシングまたは極柱が円柱であることに基づくものであり、それが角柱であれば環状に限定されるものではない。
【0008】
請求項2では、請求項1の鉛蓄電池の製造方法において、切削部分を覆う合成樹脂片を耐酸性樹脂で接着することにより、切削部分を耐酸性樹脂で封止することを特徴とする。
【0009】
請求項3では、請求項2の鉛蓄電池の製造方法において、切削部分と該部分を覆う合成樹脂片との間に形成される空間に接着力のある耐酸性樹脂を充填することにより、切削部分を耐酸性樹脂で封止することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態としての実施例を図1〜図3により説明する。
【0011】
図1は、本発明による製造方法を適用した切削部分を有した鉛蓄電池の端子部分の一例を示す。1は電槽蓋、2はブッシング、3はブッシング溝、4は切削により除去される切削部分である。この切削部分4は、電槽蓋1を適当な台に固定し、その内側から、ボール盤やフライス加工などで、ブッシング2と電槽蓋1の接触面が電槽蓋1の内側に現れるまで電槽蓋1とブッシング2とを切削する。切削は潤滑剤を使用せずに行う。
【0012】
ブッシング2の表面はそれ以前の加工工程で酸化などの変化を受けており、合成樹脂の電槽蓋表面も成型時の離型剤の残存や、高温で空気に曝された為の化学変化を受けているので、清浄な工具での切削によって新鮮な表面を得ることができ、高度の接着力を得ることができる。
【0013】
図2は、上述の切削部分4に耐酸性樹脂5を適用した状態を示す。鉛合金は高湿度で温度変化のある雰囲気にあると短時間で表面が変質(酸化)するので、ドライルームに保管するのでなければ、高湿雰囲気中では加工後1時間程度、乾燥した雰囲気でも1日程度以内に耐酸性樹脂を適用するのが望ましいが、適用する耐酸性樹脂を選択し、保管条件を良くして接着強度が十分に確保できるようであれば、加工後1〜2週間以内でもよい。
【0014】
この場合、使用する耐酸性樹脂5は粘度の高いものを使用し、流下しないような温度で充分に硬化させる必要があり、要すれば塗布、硬化を繰り返して適用するのがよい。耐酸性樹脂5には硬化時に体積収縮率の少ないエポキシ系樹脂が普通に使用されるが、電槽蓋1の材質によってはウレタン樹脂、変性ポリエステル樹脂等も選択できる。
【0015】
図3においては、ブッシング2と電槽蓋1の切削部分を覆う環状の合成樹脂製の封止片6を耐酸性樹脂5’で接着することにより切削部分を耐酸性樹脂5’で封止している。封止片6の材質は電槽蓋1と同一または類似のものでもよいが、耐酸性樹脂5’との接着性を重視した材質を選定することができる。
【0016】
この場合は、耐酸性樹脂5’は硬化の際にも流下する恐れがなく、また剥離も抑えることができるので、耐酸性樹脂5’の選択の幅が広くなり、また硬化条件も樹脂に適した条件を選ぶことができる。電解液に露出する耐酸性樹脂5’の端部は7、7’の線状のみとなる。この部分に封止片6と、ブッシング2または/および電槽蓋1との表面を覆う樹脂のはみ出し71ができれば電解液の界面への侵入防止に更に役立つ。
【0017】
図4においては、ブッシング2と電槽蓋1の切削部分と該部分を覆う環状の封止片6’とが形成する空間に接着力のある耐酸性樹脂5”を充填することにより切削部分を耐酸性樹脂5”で封止している。この適用方法は、上記両者の切削部分に耐酸性樹脂5”の必要量を塗布したのち、切削部分内径より直径の一回りの小さい部分をもつ封止片6”を、塗布した樹脂の上から押し込むことにより実施できる。またこの場合の樹脂のはみ出し71も電解液の界面への更なる侵入防止に役立つ。この構造では、充分な厚さの耐酸性樹脂層が容易に得られるので端子の機械的強度の補強にも貢献できる。また、この構造のものも、電解液に露出する耐酸性樹脂5”の端部は図3のものと同様に線状のみとなる。
【0018】
ブッシング2と電槽蓋1または電槽蓋を構成する部品との接触面は切削によって電池外部すなわち電槽蓋の上側にも現れるので、この部分に上記と同様な処置を施せば、電解液の滲出防止や気密保持には役立つ。しかし本発明によれば、電槽蓋1または電槽蓋を構成する部品とブッシング2の界面への電解液の侵入が防止できるので、その部分でのブッシング2の異常腐食も防止できる。
【0019】
【発明の効果】
請求項1によれば、端子部分からの漏液防止効果が向上し、ブッシングの腐食も防止できるので、信頼性、寿命性能の高い鉛蓄電池を提供することができる。特に、切削によって新鮮な表面が切削部分に現れている間に封止すれば、より強力な接着力によってその効果が顕著である。
【0020】
請求項2によれば、さらに信頼性、寿命性能の高い鉛蓄電池を簡単な操作によって容易に提供することができる。
【0021】
請求項3によれば、機械的に丈夫で、信頼性、寿命性能の高い鉛蓄電池を簡単な操作によって容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法による切削部分を有した鉛蓄電池の、端子部分の一例を示す断面図。
【図2】図1の切削部分に耐酸性樹脂を適用した、本発明の鉛蓄電池の端子部分の断面図。
【図3】同、端子部分の他の実施例を示す断面図。
【図4】同、端子部分のさらに他の実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1 電槽蓋
2 ブッシング
4 切削部分
5、5’、5” 耐酸性樹脂
6、6’、6” 封止片
7、7’ 耐酸性樹脂の端部
71 樹脂のはみ出し

Claims (3)

  1. 合成樹脂の電槽蓋または電槽蓋を構成する部品と一体成型された、電池の内外を貫通する鉛または鉛合金からなるブッシングと、電極群を集電し該鉛合金ブッシングの孔を貫通する極柱と、該極柱と接続される電池端子を溶接その他の手段で接続する端子構造を備えた鉛蓄電池を製造する鉛蓄電池の製造方法において、ブッシングと電槽蓋または電槽蓋を構成する部品の、電池内部または電池外部におけるブッシングと電槽蓋または電槽蓋を構成する部品との接触面の少なくとも一方を環状に切削した後、該切削部分を耐酸性樹脂で封止することを特徴とする鉛蓄電池の製造方法。
  2. 切削部分を覆う合成樹脂製の封止片を耐酸性樹脂で接着することにより切削部分を耐酸性樹脂で封止する、請求項1記載の鉛蓄電池の製造方法。
  3. 切削部分と該部分を覆う封止片との間に形成される空間に接着力のある耐酸性樹脂を充填することにより切削部分を耐酸性樹脂で封止する、請求項2記載の鉛蓄電池の製造方法。
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