JP2004277619A - ポリイミド樹脂及び半導体接着テープ - Google Patents
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Abstract
【課題】貼付温度の低下により組立時の熱によるチップの熱損傷を抑えた高信頼性耐熱接着剤を提供する。
【解決手段】主たる酸成分が3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジフタル酸二無水物であり、主たるアミン成分が2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物からなる有機溶剤に可溶なガラス転移温度が100〜150℃の範囲にあることを特徴とするポリイミド樹脂であり、半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームを接着する為に用いられる接着部材に使用される。
【解決手段】主たる酸成分が3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジフタル酸二無水物であり、主たるアミン成分が2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物からなる有機溶剤に可溶なガラス転移温度が100〜150℃の範囲にあることを特徴とするポリイミド樹脂であり、半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームを接着する為に用いられる接着部材に使用される。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性と低温加工性を併せ持ち、エレクトロニクス用途、特に半導体実装材料として適したシリコン基板や金属に対する接着力に優れたフィルム状接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体チップが高機能大容量化によって大型化する一方,パッケージの大きさはプリント回路設計上の制約、電子機器小型化の要求などから従来と変わらない、あるいはむしろ小さな外形を要求されている。この傾向に対応して、半導体チップの高密度化と高密度実装に対応した実装方式としてメモリー素子などに採用されているダイパッドのないリードフレームの上にチップを載せるCOL(チップ・オン・リード)構造と、その発展形であるチップの上にリードを載せるLOC(リード・オン・チップ)構造などが幾つか提案され、採用・生産に至っている。
【0003】
この実装形態では、半導体チップとリードフレーム、リードフレームとプレート、リードフレーム同士など同種異種材質の接着界面が存在し、その接着信頼性が素子の信頼性に非常に大きな影響を与える。素子組立時の工程温度に耐える信頼性は勿論のこと、吸湿時、湿熱時などの接着信頼性、さらに接着作業性も重要な項目である。
【0004】
こうした半導体チップの更なる高機能大容量化はチップサイズの増大およびチップ上に形成される回路配線の微細化を必要とし、このようなチップを用いて半導体装置を作製する場合、組立工程にも組立温度の低下等の要求が加わる。
【0005】
また、こうした半導体チップの更なる高機能大容量化を目指して、リードフレームの材質をこれまでの主流であった42合金から銅に換えることが提案・実用化されている。これは、銅材をリードフレームに用いることにより電気信号の高速化への対応が可能となり、大容量半導体チップを用いた半導体装置の実用化を図ることができるためである。
【0006】
従来の半導体接着テープには専らポリイミド系接着剤が多く使用されているが、半導体接着テープをリードフレームに貼り付けて更に半導体チップをマウントする工程においてこれら半導体接着テープの多くは貼付温度が300℃〜400℃以上と高く、リードフレームおよび半導体チップなどの被着材への熱損傷が懸念されている。この熱が原因で銅リードフレームの酸化、半導体チップ上の配線劣化により生産工程における歩留まりの低下を引き起こすという問題がある。
【0007】
銅リードフレームに使用できる半導体接着テープに求められる特性としては銅の加熱圧着時の酸化が生じない温度域で貼付可能であることが必要である。貼付時間や圧力にも関係するが、一般的に300℃以下での貼付がこの要求を満たす。また、アロイ42合金と銅材両方に使用することのできる半導体接着テープは使用する側にとってもリードフレームの材質によってテープの種類を変えるという手間が省ける為、工程の短縮化が期待されるものである。
【0008】
【特許文献1】
特表平8−507821号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の大容量チップを用いた半導体装置組立工程の問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果なされたもので、特定の構造および物性を有するポリイミド樹脂により構成される半導体接着テープに関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は
[1] 主たる酸成分が3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジフタル酸二無水物であり、主たるアミン成分が2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物からなる有機溶剤に可溶なガラス転移温度が100〜150℃の範囲にあることを特徴とするポリイミド樹脂、
【化2】
(式中、R1、R2は炭素数1〜4の二価の脂肪族基又は芳香族基、R3、R4、R5及びR6は一価の脂肪族基又は芳香族基を表し、kは1〜100の整数である。)
[2] 3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物aモルと4,4’−オキシジフタル酸二無水物bモルとを酸成分とし、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンcモルおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物dモルとをアミン成分とし、a,b,c,dのモル比が0<a/(a+b)<0.20、0.8<b/(a+b)<1.0かつ0.3<d/(c+d)<0.5の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめてなることを特徴とする[1]項記載のポリイミド樹脂、
[3] ポリイミド樹脂の重量平均分子量がポリスチレン換算で1.0×105から2.0×105の範囲にある[1]又は[2]項記載のポリイミド樹脂、
[4] [1][2]又は[3]項記載のポリイミド樹脂をガラス転移温度150℃以上の耐熱性基材の両面に塗布して得られる半導体接着テープ
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリイミド樹脂を構成する主な酸成分としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジフタル酸二無水物が挙げられる。これは、ポリイミド樹脂生成反応に使用する非プロトン性極性溶媒への溶解性や芳香族環を含むことから発現される耐熱性の観点からも望ましい。
【0012】
本発明のポリイミド樹脂を構成する主なアミン成分として2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。これは、ポリイミド樹脂生成反応に使用する非プロトン性極性溶媒への溶解性や芳香族環を含むことから発現される耐熱性の観点からも望ましい。
【0013】
また、アミン成分として式(1)で示されるジアミノポリシロキサンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサンやα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらはポリイミド樹脂生成反応に使用する非プロトン性極性溶媒に対して溶解性に優れるものが望ましい。
【0014】
本発明のポリイミド樹脂は半導体接着テープの接着成分としての役割を果たし、銅リードフレームおよびシリコンチップに対して250℃から300℃の範囲で気泡なく均一に接着できるものでなくてはならない。その為にそのガラス転移温度は100℃〜150℃の範囲であることが望ましい。100℃を下回ると接着はできるが同時にフィルム自体の熱変形が大きくて気泡が無く均一に接着することが困難になる。また150℃を上回ると250℃から300℃での圧着時に被着体への濡れ性が不足し接着することが困難になる。
【0015】
上記ポリイミド樹脂を得るために用いられる酸無水物と芳香族・ジアミノポリシロキサンとの反応組成比は、両成分を反応させてイミド閉環せしめたポリイミド樹脂のガラス転移点が100℃〜150℃の範囲にあることが望ましい。
【0016】
上記のポリイミド樹脂を得るため、酸無水物として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物aモルと4,4’−オキシジフタル酸二無水物bモルと、アミン成分として、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンcモル、および一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物dモルとを、a,b,c,dのモル比が0<a/(a+b)<0.20、0.8<b/(a+b)<1.0かつ0.3<d/(c+d)<0.5の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめることによって所望のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0017】
上記組成比の理由として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物は酸無水物成分中のモル比は0.20以下であることが望ましいが、0.2を越えると分子鎖中に含まれるケトン基が架橋反応を引き起こしゲル化して接着テープへの加工性が困難となる。
【0018】
一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物はポリイミド樹脂のガラス転移温度を下げて接着性を向上させる為に用いるが、ポリイミド樹脂を接着層した接着テープの接着性の観点から、その構成比がアミン成分中のモル比で0.3から0.5の範囲にあることが望ましい。0.3を下回るとガラス転移温度が上昇し、250〜300℃での被着体への濡れ性が不足し接着することが困難になる。また0.5を上回ると接着はできるが同時にフィルム自体の熱変形が大きくて気泡が無く均一に接着することが困難になる。
【0019】
本発明に用いるポリイミド樹脂は上記の酸無水物をアミン成分・ジアミノシロキサン成分とを特定の組成比範囲で反応させイミド閉環せしめて得られる。得られたポリイミド樹脂は溶液状態であり、その溶液を基材の両面に塗布し乾燥させて半導体用接着テープを得る。
このとき用いる基材としてはガラス転移温度150℃以上の耐熱性基材であることが好ましい。150℃を下回れば半導体接着テープとして使用した際に熱変形や発泡などの不具合を生じる。
【0020】
また、本発明のポリイミド樹脂の溶液を上記基材両面に塗布し乾燥させた状態でのポリイミド樹脂の重量平均分子量は1.0×105から2.0×105の範囲にあることが望ましい。1.0×105を下回れば加熱接着時に吸湿した水分の揮発を抑えられなくなり、発泡を生じて信頼性低下の原因となる。2.0×105を上回ると加熱接着時の被着体えの濡れ性が低下する為に接着性の発現が困難となる。
【0021】
本発明のポリイミド樹脂組成物の重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリイミド樹脂の分子量を決定する重要な因子であるが、得られるのポリイミド樹脂の溶液を基材両面に塗布し乾燥させた状態でのポリイミド樹脂の重量平均分子量が1.0×105から2.0×105の範囲にある限りは特に限定されない。しかし好ましくは
酸成分とアミン成分の当量比rが
0.900 ≦ r ≦ 1.06
さらには、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが、機械的強度および耐熱性の両面から好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くてフィルムとした場合脆くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸して、ガス発生や発泡の原因となり好ましくないことがある。ポリイミド樹脂の分子量制御のために、ジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比rの範囲内であれば、特にこれを妨げない。
【0022】
本発明のポリイミド樹脂は酸無水物とアミン成分とを非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で反応させて得ることができる。非プロトン性極性溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチル−2−ピロリドン,テトラハイドロフラン,ジグライム,シクロヘキサノン,1,4−ジオキサンなどである。非プロトン性極性溶媒は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0023】
この時、共沸用溶媒として上記の非プロトン性極性溶媒のある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が好ましい。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、50重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が50重量%を越える場合は、溶媒の溶解力が低下し、原料である酸無水物、アミン成分、ジアミノポリシロキサン又はポリイミド樹脂が析出する恐れがあるためである。
【0024】
本発明に用いるポリイミド樹脂は、酸無水物成分とアミン成分を前述の非プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒と非極性溶媒の混合液中に溶解させてポリアミック酸の反応を進める。続いてこのポリアミック酸溶液を加熱し、脱水環化反応によってイミド化させてポリイミドとする。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を阻害する為に水と相溶しない有機溶剤を系中に加えて共沸させてディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。水と相溶しない有機溶剤として好ましくは前述の芳香族炭化水素を使用する。
【0025】
本発明のポリイミド樹脂において、イミド閉環は程度が高いほど良く、イミド化率が低いと使用時の熱でイミド化が起こり水が発生して好ましくないため、95%以上、より好ましくは98%以上のイミド化率が達成されていることが望ましい。
【0026】
本発明においてポリイミド樹脂は、接着剤として用いられ、これを用いて、接着テープとするには、上記で得られたポリイミド樹脂溶液を、例えば、ポリイミドシート又はポリエステルシートなどの両面に、フローコーター、ロールコーターなどにより、流延あるいは塗布して、樹脂層からなるフィルムを形成させ、加熱乾燥させて接着テープとすることができる。この際の加熱処理は、通常50〜260℃、より好ましくは80〜230℃で行われる。熱処理時間については、通常0.1〜1時間程度で良く、低温短時間で完全に溶剤を除去することが可能であり、フィルム状接着剤を熱圧着した際、残存溶剤による発泡を抑制することができる。残存溶媒の量としては500ppm以下であることが好ましい。
【0027】
また本発明のフィルム接着剤を半導体装置の組立に用いたとき、大容量チップの熱損傷を引き起こすこと無い温度での組立性に優れていることから高歩留まり・高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
なお、実施例における略号は以下の通りである。
PI:ポリイミド
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
APB: 1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
APPS−1:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量249)(式(1)においてk=1)
APPS−9:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量837)(式(1)においてk=9)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0029】
(PI−1の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP643.4gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB65.78g(0.225モル)とAPPS−9 62.78g(0.075モル)、APPS−1 18.64g(0.075モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 93.06g(0.30モル)、BTDA24.16g(0.075モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 71.49gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−1を得た。
【0030】
(PI−2の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP707.04gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるBAPP92.36g(0.225モル)とAPPS−9 62.78g(0.075モル)、APPS−1 18.64g(0.075モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 104.7g(0.338モル)、BTDA12.08g(0.038モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 78.56gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−2を得た。
【0031】
(PI−3の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP6654.8gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB66.65g(0.228モル)とAPPS−9 95.42g(0.114モル)、APPS−1 9.44g(0.038モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 106.1g(0.342モル)、BTDA12.24g(0.038モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 78.34gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−3を得た。
【0032】
(PI−4の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP619.2gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB54.81g(0.188モル)とAPPS−9 94.16g(0.113モル)、APPS−1 18.64g(0.075モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 93.07g(0.300モル)、BTDA24.17g(0.075モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 77.1gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−4を得た。
【0033】
(PI−5の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP657.2gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB77.8g(0.266モル)とAPPS−9 63.61g(0.076モル)、APPS−1 9.44g(0.038モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 82.52g(0.266モル)、BTDA36.73g(0.114モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 73.0gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−5を得た。
【0034】
(PI−6の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP624.6gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるBAPP100.58g(0.245モル)とAPPS−9 29.3g(0.035モル)、APPS−1 17.4g(0.07モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 86.86g(0.28モル)、BTDA22.56g(0.07モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 69.4gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−6を得た。
【0035】
上記で得たポリイミドPI−1〜6の配合表を表1に示す。表中の配合数値はモル比を表わす。PI−5については合成終了時にゲル化して評価に用いることができなかった。
(実施例1)
PI−1のポリイミド溶液を市販ポリイミドフィルム(ユーピレックス50SGA、宇部興産)の両面に塗布して80〜230℃の温度で合計10分間乾燥し、フィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤のガラス転移温度、重量平均分子量、接着強度そしてピール試験片作成後のテープからの発泡の有無(目視観察)を測定した結果を表1に示す。
(実施例2)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−2に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例3)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−3に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例1)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−4に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例2)PI−5を用いて評価を行おうとしたが、前述のようにPI−5については合成終了時にゲル化して評価に用いることができなかった。
(比較例3)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−6に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
ガラス転移温度測定方法:
入力補償示差走査熱量測定装置(株式会社パーキンエルマー社製,Pyris Diamond DSC)を用いて接着層のガラス転移温度の測定を行なった。試料を直径6mmの円形に打ち抜きアルミ製のパンに封入した。得られた測定サンプルを装置の加熱検出炉にいれて1分おきに2℃上げていくステップ昇温によりDSCカーブを得た。解析ソフトで比熱換算し、変曲点をガラス転移温度とした。
【0038】
重量平均分子量測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製GPC)測定装置を用いて、ポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。
接着強度測定方法:
接着フィルムサンプルを銅のプレートに250℃にて熱圧着し試験片を作成した後圧力を開放後、250℃で30秒間アニ−ルした。接着面にかかる圧力はゲージ圧力と接着面積から計算の結果4kgf/cm2であった。この試験片について180度ピール強度の測定を行なった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の構造および特性の物性の範囲にある耐熱性接着剤を用いることにより、組立時の熱によるチップの熱損傷を抑えた高信頼性耐熱接着剤を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性と低温加工性を併せ持ち、エレクトロニクス用途、特に半導体実装材料として適したシリコン基板や金属に対する接着力に優れたフィルム状接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体チップが高機能大容量化によって大型化する一方,パッケージの大きさはプリント回路設計上の制約、電子機器小型化の要求などから従来と変わらない、あるいはむしろ小さな外形を要求されている。この傾向に対応して、半導体チップの高密度化と高密度実装に対応した実装方式としてメモリー素子などに採用されているダイパッドのないリードフレームの上にチップを載せるCOL(チップ・オン・リード)構造と、その発展形であるチップの上にリードを載せるLOC(リード・オン・チップ)構造などが幾つか提案され、採用・生産に至っている。
【0003】
この実装形態では、半導体チップとリードフレーム、リードフレームとプレート、リードフレーム同士など同種異種材質の接着界面が存在し、その接着信頼性が素子の信頼性に非常に大きな影響を与える。素子組立時の工程温度に耐える信頼性は勿論のこと、吸湿時、湿熱時などの接着信頼性、さらに接着作業性も重要な項目である。
【0004】
こうした半導体チップの更なる高機能大容量化はチップサイズの増大およびチップ上に形成される回路配線の微細化を必要とし、このようなチップを用いて半導体装置を作製する場合、組立工程にも組立温度の低下等の要求が加わる。
【0005】
また、こうした半導体チップの更なる高機能大容量化を目指して、リードフレームの材質をこれまでの主流であった42合金から銅に換えることが提案・実用化されている。これは、銅材をリードフレームに用いることにより電気信号の高速化への対応が可能となり、大容量半導体チップを用いた半導体装置の実用化を図ることができるためである。
【0006】
従来の半導体接着テープには専らポリイミド系接着剤が多く使用されているが、半導体接着テープをリードフレームに貼り付けて更に半導体チップをマウントする工程においてこれら半導体接着テープの多くは貼付温度が300℃〜400℃以上と高く、リードフレームおよび半導体チップなどの被着材への熱損傷が懸念されている。この熱が原因で銅リードフレームの酸化、半導体チップ上の配線劣化により生産工程における歩留まりの低下を引き起こすという問題がある。
【0007】
銅リードフレームに使用できる半導体接着テープに求められる特性としては銅の加熱圧着時の酸化が生じない温度域で貼付可能であることが必要である。貼付時間や圧力にも関係するが、一般的に300℃以下での貼付がこの要求を満たす。また、アロイ42合金と銅材両方に使用することのできる半導体接着テープは使用する側にとってもリードフレームの材質によってテープの種類を変えるという手間が省ける為、工程の短縮化が期待されるものである。
【0008】
【特許文献1】
特表平8−507821号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の大容量チップを用いた半導体装置組立工程の問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果なされたもので、特定の構造および物性を有するポリイミド樹脂により構成される半導体接着テープに関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は
[1] 主たる酸成分が3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジフタル酸二無水物であり、主たるアミン成分が2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物からなる有機溶剤に可溶なガラス転移温度が100〜150℃の範囲にあることを特徴とするポリイミド樹脂、
【化2】
(式中、R1、R2は炭素数1〜4の二価の脂肪族基又は芳香族基、R3、R4、R5及びR6は一価の脂肪族基又は芳香族基を表し、kは1〜100の整数である。)
[2] 3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物aモルと4,4’−オキシジフタル酸二無水物bモルとを酸成分とし、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンcモルおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物dモルとをアミン成分とし、a,b,c,dのモル比が0<a/(a+b)<0.20、0.8<b/(a+b)<1.0かつ0.3<d/(c+d)<0.5の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめてなることを特徴とする[1]項記載のポリイミド樹脂、
[3] ポリイミド樹脂の重量平均分子量がポリスチレン換算で1.0×105から2.0×105の範囲にある[1]又は[2]項記載のポリイミド樹脂、
[4] [1][2]又は[3]項記載のポリイミド樹脂をガラス転移温度150℃以上の耐熱性基材の両面に塗布して得られる半導体接着テープ
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリイミド樹脂を構成する主な酸成分としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジフタル酸二無水物が挙げられる。これは、ポリイミド樹脂生成反応に使用する非プロトン性極性溶媒への溶解性や芳香族環を含むことから発現される耐熱性の観点からも望ましい。
【0012】
本発明のポリイミド樹脂を構成する主なアミン成分として2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。これは、ポリイミド樹脂生成反応に使用する非プロトン性極性溶媒への溶解性や芳香族環を含むことから発現される耐熱性の観点からも望ましい。
【0013】
また、アミン成分として式(1)で示されるジアミノポリシロキサンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサンやα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらはポリイミド樹脂生成反応に使用する非プロトン性極性溶媒に対して溶解性に優れるものが望ましい。
【0014】
本発明のポリイミド樹脂は半導体接着テープの接着成分としての役割を果たし、銅リードフレームおよびシリコンチップに対して250℃から300℃の範囲で気泡なく均一に接着できるものでなくてはならない。その為にそのガラス転移温度は100℃〜150℃の範囲であることが望ましい。100℃を下回ると接着はできるが同時にフィルム自体の熱変形が大きくて気泡が無く均一に接着することが困難になる。また150℃を上回ると250℃から300℃での圧着時に被着体への濡れ性が不足し接着することが困難になる。
【0015】
上記ポリイミド樹脂を得るために用いられる酸無水物と芳香族・ジアミノポリシロキサンとの反応組成比は、両成分を反応させてイミド閉環せしめたポリイミド樹脂のガラス転移点が100℃〜150℃の範囲にあることが望ましい。
【0016】
上記のポリイミド樹脂を得るため、酸無水物として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物aモルと4,4’−オキシジフタル酸二無水物bモルと、アミン成分として、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンcモル、および一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物dモルとを、a,b,c,dのモル比が0<a/(a+b)<0.20、0.8<b/(a+b)<1.0かつ0.3<d/(c+d)<0.5の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめることによって所望のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0017】
上記組成比の理由として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物は酸無水物成分中のモル比は0.20以下であることが望ましいが、0.2を越えると分子鎖中に含まれるケトン基が架橋反応を引き起こしゲル化して接着テープへの加工性が困難となる。
【0018】
一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物はポリイミド樹脂のガラス転移温度を下げて接着性を向上させる為に用いるが、ポリイミド樹脂を接着層した接着テープの接着性の観点から、その構成比がアミン成分中のモル比で0.3から0.5の範囲にあることが望ましい。0.3を下回るとガラス転移温度が上昇し、250〜300℃での被着体への濡れ性が不足し接着することが困難になる。また0.5を上回ると接着はできるが同時にフィルム自体の熱変形が大きくて気泡が無く均一に接着することが困難になる。
【0019】
本発明に用いるポリイミド樹脂は上記の酸無水物をアミン成分・ジアミノシロキサン成分とを特定の組成比範囲で反応させイミド閉環せしめて得られる。得られたポリイミド樹脂は溶液状態であり、その溶液を基材の両面に塗布し乾燥させて半導体用接着テープを得る。
このとき用いる基材としてはガラス転移温度150℃以上の耐熱性基材であることが好ましい。150℃を下回れば半導体接着テープとして使用した際に熱変形や発泡などの不具合を生じる。
【0020】
また、本発明のポリイミド樹脂の溶液を上記基材両面に塗布し乾燥させた状態でのポリイミド樹脂の重量平均分子量は1.0×105から2.0×105の範囲にあることが望ましい。1.0×105を下回れば加熱接着時に吸湿した水分の揮発を抑えられなくなり、発泡を生じて信頼性低下の原因となる。2.0×105を上回ると加熱接着時の被着体えの濡れ性が低下する為に接着性の発現が困難となる。
【0021】
本発明のポリイミド樹脂組成物の重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリイミド樹脂の分子量を決定する重要な因子であるが、得られるのポリイミド樹脂の溶液を基材両面に塗布し乾燥させた状態でのポリイミド樹脂の重量平均分子量が1.0×105から2.0×105の範囲にある限りは特に限定されない。しかし好ましくは
酸成分とアミン成分の当量比rが
0.900 ≦ r ≦ 1.06
さらには、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが、機械的強度および耐熱性の両面から好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くてフィルムとした場合脆くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸して、ガス発生や発泡の原因となり好ましくないことがある。ポリイミド樹脂の分子量制御のために、ジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比rの範囲内であれば、特にこれを妨げない。
【0022】
本発明のポリイミド樹脂は酸無水物とアミン成分とを非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で反応させて得ることができる。非プロトン性極性溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチル−2−ピロリドン,テトラハイドロフラン,ジグライム,シクロヘキサノン,1,4−ジオキサンなどである。非プロトン性極性溶媒は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0023】
この時、共沸用溶媒として上記の非プロトン性極性溶媒のある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が好ましい。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、50重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が50重量%を越える場合は、溶媒の溶解力が低下し、原料である酸無水物、アミン成分、ジアミノポリシロキサン又はポリイミド樹脂が析出する恐れがあるためである。
【0024】
本発明に用いるポリイミド樹脂は、酸無水物成分とアミン成分を前述の非プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒と非極性溶媒の混合液中に溶解させてポリアミック酸の反応を進める。続いてこのポリアミック酸溶液を加熱し、脱水環化反応によってイミド化させてポリイミドとする。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を阻害する為に水と相溶しない有機溶剤を系中に加えて共沸させてディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。水と相溶しない有機溶剤として好ましくは前述の芳香族炭化水素を使用する。
【0025】
本発明のポリイミド樹脂において、イミド閉環は程度が高いほど良く、イミド化率が低いと使用時の熱でイミド化が起こり水が発生して好ましくないため、95%以上、より好ましくは98%以上のイミド化率が達成されていることが望ましい。
【0026】
本発明においてポリイミド樹脂は、接着剤として用いられ、これを用いて、接着テープとするには、上記で得られたポリイミド樹脂溶液を、例えば、ポリイミドシート又はポリエステルシートなどの両面に、フローコーター、ロールコーターなどにより、流延あるいは塗布して、樹脂層からなるフィルムを形成させ、加熱乾燥させて接着テープとすることができる。この際の加熱処理は、通常50〜260℃、より好ましくは80〜230℃で行われる。熱処理時間については、通常0.1〜1時間程度で良く、低温短時間で完全に溶剤を除去することが可能であり、フィルム状接着剤を熱圧着した際、残存溶剤による発泡を抑制することができる。残存溶媒の量としては500ppm以下であることが好ましい。
【0027】
また本発明のフィルム接着剤を半導体装置の組立に用いたとき、大容量チップの熱損傷を引き起こすこと無い温度での組立性に優れていることから高歩留まり・高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
なお、実施例における略号は以下の通りである。
PI:ポリイミド
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
APB: 1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
APPS−1:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量249)(式(1)においてk=1)
APPS−9:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量837)(式(1)においてk=9)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0029】
(PI−1の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP643.4gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB65.78g(0.225モル)とAPPS−9 62.78g(0.075モル)、APPS−1 18.64g(0.075モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 93.06g(0.30モル)、BTDA24.16g(0.075モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 71.49gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−1を得た。
【0030】
(PI−2の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP707.04gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるBAPP92.36g(0.225モル)とAPPS−9 62.78g(0.075モル)、APPS−1 18.64g(0.075モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 104.7g(0.338モル)、BTDA12.08g(0.038モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 78.56gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−2を得た。
【0031】
(PI−3の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP6654.8gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB66.65g(0.228モル)とAPPS−9 95.42g(0.114モル)、APPS−1 9.44g(0.038モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 106.1g(0.342モル)、BTDA12.24g(0.038モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 78.34gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−3を得た。
【0032】
(PI−4の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP619.2gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB54.81g(0.188モル)とAPPS−9 94.16g(0.113モル)、APPS−1 18.64g(0.075モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 93.07g(0.300モル)、BTDA24.17g(0.075モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 77.1gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−4を得た。
【0033】
(PI−5の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP657.2gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB77.8g(0.266モル)とAPPS−9 63.61g(0.076モル)、APPS−1 9.44g(0.038モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 82.52g(0.266モル)、BTDA36.73g(0.114モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 73.0gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−5を得た。
【0034】
(PI−6の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP624.6gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるBAPP100.58g(0.245モル)とAPPS−9 29.3g(0.035モル)、APPS−1 17.4g(0.07モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 86.86g(0.28モル)、BTDA22.56g(0.07モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 69.4gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却し、ポリイミド溶液PI−6を得た。
【0035】
上記で得たポリイミドPI−1〜6の配合表を表1に示す。表中の配合数値はモル比を表わす。PI−5については合成終了時にゲル化して評価に用いることができなかった。
(実施例1)
PI−1のポリイミド溶液を市販ポリイミドフィルム(ユーピレックス50SGA、宇部興産)の両面に塗布して80〜230℃の温度で合計10分間乾燥し、フィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤のガラス転移温度、重量平均分子量、接着強度そしてピール試験片作成後のテープからの発泡の有無(目視観察)を測定した結果を表1に示す。
(実施例2)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−2に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例3)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−3に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例1)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−4に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例2)PI−5を用いて評価を行おうとしたが、前述のようにPI−5については合成終了時にゲル化して評価に用いることができなかった。
(比較例3)実施例1におけるポリイミド溶液PI−1をPI−6に変えた以外は全て実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の特性を評価した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
ガラス転移温度測定方法:
入力補償示差走査熱量測定装置(株式会社パーキンエルマー社製,Pyris Diamond DSC)を用いて接着層のガラス転移温度の測定を行なった。試料を直径6mmの円形に打ち抜きアルミ製のパンに封入した。得られた測定サンプルを装置の加熱検出炉にいれて1分おきに2℃上げていくステップ昇温によりDSCカーブを得た。解析ソフトで比熱換算し、変曲点をガラス転移温度とした。
【0038】
重量平均分子量測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製GPC)測定装置を用いて、ポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。
接着強度測定方法:
接着フィルムサンプルを銅のプレートに250℃にて熱圧着し試験片を作成した後圧力を開放後、250℃で30秒間アニ−ルした。接着面にかかる圧力はゲージ圧力と接着面積から計算の結果4kgf/cm2であった。この試験片について180度ピール強度の測定を行なった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の構造および特性の物性の範囲にある耐熱性接着剤を用いることにより、組立時の熱によるチップの熱損傷を抑えた高信頼性耐熱接着剤を提供することができる。
Claims (4)
- 3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物aモルと4,4’−オキシジフタル酸二無水物bモルとを酸成分とし、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンのどちらかから選ばれる1種類のジアミンcモルおよび一般式(1)に示すジアミノシロキサン化合物dモルとをアミン成分とし、a,b,c,dのモル比が0<a/(a+b)<0.20、0.8<b/(a+b)<1.0かつ0.3<d/(c+d)<0.5の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめてなることを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂。
- ポリイミド樹脂の重量平均分子量がポリスチレン換算で1.0×105から2.0×105の範囲にある請求項1又は2記載のポリイミド樹脂。
- 請求項1、2又は3記載のポリイミド樹脂をガラス転移温度150℃以上の耐熱性基材の両面に塗布して得られる半導体接着テープ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2013039029A1 (ja) | 2011-09-12 | 2013-03-21 | 東レ株式会社 | ポリイミド樹脂、これを用いた樹脂組成物および積層フィルム |
WO2014050878A1 (ja) | 2012-09-25 | 2014-04-03 | 東レ株式会社 | 樹脂組成物、硬化膜、積層フィルム、および半導体装置の製造方法 |
KR20160127032A (ko) | 2014-02-26 | 2016-11-02 | 도레이 카부시키가이샤 | 폴리이미드 수지, 이것을 이용한 수지 조성물 및 적층 필름 |
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2003
- 2003-03-18 JP JP2003072987A patent/JP2004277619A/ja active Pending
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