JP2004067741A - 耐熱性接着剤及び半導体接着テープ - Google Patents
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Abstract
【課題】LOCパッケージ等のパッケージ組立時の熱による接着剤の発泡や、吸湿後のハンダリフロー時のパッケージクラックが発生しない耐熱性接着剤を提供すること。
【解決手段】半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームを接着する為に用いられる耐熱性熱可塑性樹脂を主成分とする耐熱性接着剤であって、接着成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下であることを特徴とする耐熱性接着剤。
【解決手段】半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームを接着する為に用いられる耐熱性熱可塑性樹脂を主成分とする耐熱性接着剤であって、接着成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下であることを特徴とする耐熱性接着剤。
Description
【0001】
【発明の所属する分野】
本発明は、耐熱性と低温加工性を併せ持ち、エレクトロニクス用途、特に半導体実装材料として適したシリコン基板や金属に対する接着力に優れたフィルム状接着剤と、その製造方法、これを用いたリードフレーム及び半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体チップが高機能大容量化によって大型化する一方,パッケージの大きさはプリント回路設計上の制約、電子機器小型化の要求などから従来と変わらない、あるいはむしろ小さな外形を要求されている。この傾向に対応して、半導体チップの高密度化と高密度実装に対応した実装方式としてメモリー素子などに採用されているダイパッドのないリードフレームの上にチップを載せるCOL(チップ・オン・リード)構造と、その発展形であるチップの上にリードを載せるLOC(リード・オン・チップ)構造などが幾つか提案され、採用・生産に至っている。
【0003】
この実装形態では、半導体チップとリードフレーム、リードフレームとプレート、リードフレーム同士など同種異種材質の接着界面が存在し、その接着信頼性が素子の信頼性に非常に大きな影響を与える。素子組立時の工程温度に耐える信頼性は勿論のこと、吸湿時、湿熱時などの接着信頼性、さらに接着作業性も重要な項目である。
【0004】
こうした半導体チップの更なる高機能大容量化を目指して、リードフレームの材質をこれまでの主流であった42合金から銅に換えることが提案・実用化されている。これは、銅材をリードフレームに用いることにより電気信号の高速化への対応が可能となり、大容量半導体チップを用いた半導体装置の実用化を図ることができるためである。
【0005】
従来の半導体接着テープには専らポリイミド系接着剤が多く使用されているが、半導体接着テープをリードフレームに貼り付けて更に半導体チップをマウントする工程においてこれら半導体接着テープの多くは貼付温度が250℃〜400℃以上と高く、リードフレームおよび半導体チップなどの被着材への熱損傷が懸念されている。この熱が原因で銅リードフレームの酸化、半導体チップ上の配線劣化により生産工程における歩留まりの低下を引き起こすという問題がある。
【0006】
これらの問題を解決する為に、接着テープの接着剤成分のガラス転移温度を下げて更なる低温加工性を付与することが考えられる。しかし、単にガラス転移点を下げるだけでは接着剤成分の耐熱性や高温・高湿時の接着性が低下し、チップ貼り付け時の熱によって樹脂自体の発泡を引き起こしたり、ワイヤーボンディングなどの高温度雰囲気下が要求される状況下での組立作業が困難になることや、半導体装置としての信頼性を損なう恐れがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の大容量チップおよび銅配線リードフレームを用いた半導体装置組立工程の問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果なされたもので、耐熱性、接着性に優れ、組立時の熱による発泡を抑えた高信頼性耐熱接着剤を提供するものである。
また、本発明はこの耐熱性接着剤のN−メチル−2−ピロリドン又はフェニルエーテルを溶媒とした溶液を、支持体の片面に流延成形、硬化成分の架橋が起こりにくい低温度での乾燥後、支持体から剥離して得る半導体用接着フィルム、および支持フィルムの両面に流延成形、硬化成分の架橋が起こりにくい低温度で乾燥させて得られる3層構造の半導体接着フィルムおよびその製造方法を提供するものである。
また本発明はこれら半導体接着テープを打ち抜きによってリードフレームに貼り付けた接着フィルム付きリードフレームを提供するものである。
また、本発明はこの半導体接着フィルムを介してリードフレームと半導体素子とを接着させてなる半導体装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、LOCパッケージ等のパッケージ組立時の熱による接着剤の発泡や、吸湿後のハンダリフロー時のパッケージクラックと接着剤物性との相間性について鋭意検討した結果、ハンダリフロー温度付近の線熱膨張係数が大きいことが発泡やパッケージクラックの主要な原因であり、高温下である特定域の線熱膨張係数を有する接着剤を用いることによって改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
この高温下である特定域の線熱膨張係数を有する接着剤は、ポリイミド樹脂に1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を添加することで得られる。詳細な反応機構は未だ解明されていないが、ポリイミドの未反応末端カルボン酸基がアミンの窒素原子を介して架橋し、高次ネットワークを形成した結果耐熱性が向上するものと考えられる。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームとを接着する為に用いられる耐熱性熱可塑性樹脂を主成分とする耐熱性接着剤であって、接着剤成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下である耐熱性接着剤、
(2) 耐熱性熱可塑性樹脂が1分子中に少なくとも2個以上のイミド環を含み、かつ90℃〜200℃のガラス転移点を有するポリイミド樹脂を含有し、1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を該ポリイミド樹脂に対し重量比0.1〜10%含む第(1)項記載の耐熱性接着剤、
(3)ポリイミド樹脂が、アミン成分として、一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、式(2)又は(3)で表されるノルボルネン環を含む脂環式ジアミン、及び式(4)で表されるスピロアセタール環を含む脂環式ジアミンの中から選ばれる少なくとも1つのジアミン化合物と、酸成分として、芳香族テトラカルボン酸無水物とを反応させてイミド閉環してなり、かつ有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を主たる構成成分とする第(2)項記載の耐熱性接着剤、
【化5】
【化6】
【化7】
(式中、R1,R2,R7,R8,R9,R10,R11,及びR12は炭素数1〜4で二価の脂肪族基または芳香族基、R3,R4,R5,およびR6は一価の脂肪族基または芳香族基を表し、kは1〜100の整数である。)
(4) 第(1)〜(3)項いずれか記載の耐熱性接着剤のN−メチル−2−ピロリドン又は一般式(5)で表されるフェニルエーテルを溶媒とする溶液を支持体の片面または両面に流延塗布し、加熱乾燥させて得られる半導体接着テープ、
【化8】
(式中、R13は水素原子または炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、R14は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基を表す。)
(5)第(4)項記載の半導体接着テープが貼り付いてなることを特徴とするリードフレーム、
(6)第(5)項記載のリードフレームを用いてなる半導体装置、
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱性接着剤は、接着成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下であることが必要である。これは3000ppmよりも高いと、ガラス転移点以上の温度で貼り付ける場合に支持基材や貼付基板からの吸湿もしくは接着剤自体からの発生ガスによって発泡が生じる恐れがある。3000ppm以下ならば吸湿水分や発生ガスが生じても樹脂自体が堅いので発泡を伴わずに樹脂内部を拡散していく。
【0012】
本発明使用するポリイミド樹脂は、アミン成分として、一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、式(2)又は(3)で表されるノルボルネン環を含む脂環式ジアミン、及び式(4)で表されるスピロアセタール環を含む脂環式ジアミンの中から選ばれる少なくとも1つのジアミン化合物と、酸成分として、芳香族テトラカルボン酸無水物とを反応させてイミド閉環してなるものが好ましい。
【0013】
本発明に用いる一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサンやα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらは一般式(4)で表されるフェニルエーテルに溶解するものが好ましい。
【0014】
本発明に用いる芳香族もしくは脂肪族ジアミンとしては、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノメシチレン、4,4’−メチレンジ−o−トルイジン、4,4’−メチレンジアミン−2,6−キシリジン、4,4’−メチレン−2,6−ジエチルアニリン、2,4−トルエンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、ベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンジジン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エ−テル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォンなどを挙げることができる。中でも、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、または2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ−5,2,1,0(2.6)デカン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなど分子中にノルボルネン環やスピロアセタール環などの脂環構造を含むジアミンが、フェニルエーテルへの溶解性に関して好ましい。上記のジアミンは、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
上記ジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンとの反応比率は、ポリイミド樹脂のガラス転移点が90℃〜200℃の範囲にある限りは特に規定しないが、ジアミノポリシロキサンの反応比率が、ジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンの総モル数に対し、好ましくは5〜95モル%である。5モル%未満であると、得られるポリイミド樹脂のフェニルエーテルへの溶解性が低下し、作業上問題が生じる可能性がある。95モル%を超えるとフィルムのガラス転移温度が著しく低下し、フィルムとしての強度が保てない可能性がある。
【0016】
本発明に用いる芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物、4,4‘−(4,4’−イソプロピデンジフェノキシ)フタル酸二無水物などが挙げられる。中でも、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4‘−(4,4’−イソプロピデンジフェノキシ)フタル酸二無水物が、得られるポリイミド樹脂のフェニルエーテルへの溶解性に関して好ましい。上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
上記ジアミノシロキサン、ジアミン化合物、芳香族テトラカルボン酸無水物を反応させてなるポリイミド樹脂はガラス転移温度が90℃から200℃の範囲にあることが必要である。90℃未満ではポリイミド樹脂自体の耐熱性が低下し、ワイヤーボンディングが行なわれる温度域(180〜230℃)における弾性率が低く、ワイヤーボンディング時にテープと被着体との間で剥離が生じる恐れがある。逆に200℃を越える場合ポリイミド樹脂のフェニルエーテルへの溶解性が低くなり、フェニルエーテル溶液の状態でポリイミド樹脂が析出する恐れがある。
【0018】
本発明の耐熱性接着剤に用いられるポリイミド樹脂組成物の重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリイミド樹脂の分子量を決定する重要な因子である。また、ポリマーの分子量と物性、特に数平均分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られている。数平均分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度を得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。
【0019】
本発明に用いるポリイミド樹脂の製造では、酸成分とアミン成分の当量比rが0.900 ≦ r ≦ 1.06
さらには、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが、機械的強度および耐熱性の両面から好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くてフィルムとした場合脆くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸して、ガス発生や発泡の原因となり好ましくないことがある。ポリイミド樹脂の分子量制御のために、ジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比rの範囲内であれば、特にこれを妨げない。
【0020】
本発明に用いる反応溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン又は式(5)で表されるフェニルエーテルである事が好ましい。
【0021】
ここで、式(5)で表されるフェニルエーテルの代表的なものとして、アニソール、フェネトール、メトキシトルエン等が挙げられるが、より低温の熱処理でポリイミド樹脂フィルムが得られることから、アニソールが最も好ましい。
【0022】
この時、共沸用溶媒として上記のフェニルエーテルと相溶性のある非極性溶媒を混合して使用しても良い。前記非極性溶媒としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が好ましい。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、50重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が50重量%を越える場合は、溶媒の溶解力が低下し、原料であるジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン又はポリイミド樹脂が析出する恐れがあるためである。
【0023】
上述した成分、配合比によりポリイミド樹脂を合成する場合、上記成分のジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンとを、フェニルエーテルを主とする反応溶媒中に仕込み、70〜80℃程度に加熱し、ジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンを溶解させる(A液)。さらに、別の反応器に上記成分のテトラカルボン酸二無水物を、フェニルエーテルを主とする溶媒中に仕込み、還流が起きるまで加熱昇温を行う(B液)。引き続き、前記A液を、還流中のB液内に添加して、ポリアミド化と脱水閉環反応を短時間で進行させ、一般式(6)で表される繰り返し単位と一般式(7)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド樹脂の溶液が得られる。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を妨害するため、ディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。
【0024】
【化9】
【化10】
(式中、R1,R2,R17は炭素数1〜4で二価の脂肪族基または芳香族基、R3,R4,R5,およびR6は一価の脂肪族基または芳香族基、R15,R16は四価の脂肪族基または芳香族基を表し、kは1〜100の整数である。m、nの割合は各成分合計100モル%中、mが5〜95モル%、nが5〜95モル%である。)
【0025】
本発明に用いる、1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物はポリイミド樹脂を合成する際に使用する溶媒への溶解性が良好なものが好ましい。例として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系シランカップリング剤、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明の耐熱性接着剤における1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物の含有量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部部である。0.1未満であると、十分な耐熱性向上効果が得られない。10重量部を越えると、ポリイミド樹脂同士の架橋が過剰となり、ポリイミド樹脂組成物溶液を調製した際、溶液がゲル化しやすく、またフィルム状接着剤にした際、熱圧着した時、被着体に対する濡れ性が低下し、接着力が低下する。
【0027】
本発明の耐熱性接着剤は、ポリイミド樹脂に1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を添加することにより得られるが、更なる耐熱性の向上のためにエポキシ化合物、シアネート化合物、硬化剤及びシランカップリング剤を添加しても良い。本発明の耐熱性接着剤には、上記成分の他に、表面平滑性を出すための平滑剤、レベリング剤、脱泡剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することができる。また、ポリイミド樹脂溶液中の溶剤の蒸発速度を調節するために、均一に溶解する範囲で芳香族炭化水素系溶剤を使用することができる。
【0028】
本発明においてポリイミド樹脂組成物は、接着剤として用いられ、これを用いて、フィルム状接着剤とするには、上記で得られたポリイミド樹脂溶液を、例えば、ロールや金属シート、又は、ポリエステルシートなどの離型シートの上に、フローコーター、ロールコーターなどにより、流延あるいは塗布して、樹脂層からなるフィルムを形成させ、加熱乾燥後、剥離してポリイミド樹脂フィルムとすることができる。この際の加熱処理は、通常50〜150℃、より好ましくは50〜120℃で行われ、エポキシ樹脂等、硬化成分が架橋することなくフィルム状接着剤を製造することが可能である。熱処理時間については、通常0.1〜1時間程度で良く、低温短時間で完全に溶剤を除去することが可能であり、フィルム状接着剤を熱圧着した際、残存溶剤による発泡を抑制することができる。残存溶媒の量としては500ppm以下であることが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
なお、実施例における略号は以下の通りである。
PI:ポリイミド
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BPADA:ビスフェノールA酸無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
APB: 1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
TCDD:3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ−5,2,1,0(2.6)デカン
NBDA:2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン
APPS−1:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量249)(式(1)においてk=1)
APPS−9:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量837)(式(1)においてk=9)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
KBM573:アミノシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名KBM−573)
【0030】
(PI−1の合成)
三角フラスコに、アニソール67.7gを入れ、さらにNBDA13.88g(0.0.9モル)、APPS−9 9.416g(0.011モル)と、APPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、70℃に加熱し、溶解するまで撹拌を行った(A液)。
【0031】
次に、乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた三口フラスコに、アニソール78.67g、トルエン36.6gを入れ、窒素ガスを流した。次に、酸成分であるODPA34.9g(0.113モル)を投入し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、油浴にて系を還流が発生するまで加熱した。次に、前記A液を滴下ロートに投入し、フラスコ内に1時間かけて滴下した。その間に発生する水は、ディーン・スターク管を用いて系外に除いた。3時間加熱した後、冷却し、目的とするポリイミド樹脂の溶液を得た。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=25000であった。このポリイミド溶液にKBM573を3.05g添加し混合し、ポリイミド溶液PI−1を得た。
【0032】
(PI−2の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP176.54gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB26.31g(0.09モル)とAPPS−9 9.42g(0.011モル)とAPPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 31.41g(0.101モル)、BTDA3.63g(0.011モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 44.13gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却した。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=34000であった。このポリイミド溶液にKBM573を3.68g添加し混合し、ポリイミド溶液PI−2を得た
【0033】
(PI−3の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP258.38gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるBAPP39.95g(0.09モル)とAPPS−9 9.42g(0.011モル)とAPPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるBPADA58.5g(0.113モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン64.6gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却した。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=42000であった。このポリイミド溶液にKBM573を5.38g添加し混合し、ポリイミド溶液PI−3を得た
【0034】
(PI−4の合成)
三角フラスコに、アニソール51.62gを入れ、さらにTCDD17.49g(0.09モル)、APPS−1 2.796g(0.011モル)、APPS−9 9.416(0.011モル)を投入し、70℃に加熱し、溶解するまで撹拌を行った(B液)。
【0035】
次に、乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた三口フラスコにアニソール99.09g、トルエン37.68gを入れ、窒素ガスを流した。次に、酸成分であるBPDA33.10g(0.113モル)を投入し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、油浴にて系を還流が発生するまで加熱した。次に、前記B液を滴下ロートに投入し、フラスコ内に1時間かけて滴下した。その間に発生する水は、ディーン・スターク管を用いて系外に除いた。3時間加熱した後、冷却し、目的とするポリイミド樹脂の溶液(PI−4)を得た。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=38500であった。
【0036】
(PI−5の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP176.54gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB 26.31g(0.09モル)とAPPS−9 9.42g(0.011モル)とAPPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA31.41g(0.101モル))、BTDA3.63g(0.011モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 44.13gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却して目的とするポリイミド溶液PI−5を得た。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=34000であった。
【0037】
実施例1〜3及び比較例1〜2
上記で得たポリイミドPI−1〜5の配合表を表1に示す。表中の酸成分及びアミン成分の配合数値はモル比を表わし、添加剤の配合数値はポリイミド樹脂に対する重量比を表わす。これらポリイミド溶液をシリコン離型処理二軸延伸ポリエステルフィルムにロールコーターで、厚みが25μmになるように塗布し、80℃で2分、130℃で2分、180℃で2分乾燥を行い、ポリイミド樹脂フィルムを得た。このフィルムのガラス転移点および線熱膨張係数を熱機械分析装置(TMA,セイコーインスツルメンツ社製,SS−6000)を用いて測定した結果を併せて表1に示す。
【0038】
ガラス転移点測定方法:
サンプルを厚み25μm,幅3mmの矩形に切り出し,熱機械分析装置(TMA,セイコーインスツルメンツ社製,SS−6000)を用いて昇温速度5mm/分,荷重25mNの条件で測定を行なった。TMA曲線の外層点をガラス転移点とした。
【0039】
線熱膨張係数測定方法:
サンプルを厚み25μm,幅3mmの矩形に切り出し,熱機械分析装置(TMA,セイコーインスツルメンツ社製,SS−6000)を用いて昇温速度5mm/分,荷重25mNの条件で測定を行なった。ガラス転移温度以降のTMA曲線の傾きより線熱膨張係数を算出した。
【0040】
発泡の有無の確認:
サンプルを直径2.5mmの円形に打ち抜き、42アロイ合金に250〜300の温度範囲で貼り付けた後、厚さ500μmのウェハー4cm×4cmを350℃でマウントした後断面観察を行ない発泡の有無を確認した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、高温下である特定域の線熱膨張係数を有する接着剤を用いることによってLOCパッケージ等のパッケージ組立時の熱による接着剤の発泡や、吸湿後のハンダリフロー時のパッケージクラックを改善した耐熱性接着剤を提供することができる。また貼付後の耐熱性、信頼性について高信頼性と耐熱性を要求するエレクトロニクス用材料等に最適なフィルム状接着剤を提供することができる。
【発明の所属する分野】
本発明は、耐熱性と低温加工性を併せ持ち、エレクトロニクス用途、特に半導体実装材料として適したシリコン基板や金属に対する接着力に優れたフィルム状接着剤と、その製造方法、これを用いたリードフレーム及び半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体チップが高機能大容量化によって大型化する一方,パッケージの大きさはプリント回路設計上の制約、電子機器小型化の要求などから従来と変わらない、あるいはむしろ小さな外形を要求されている。この傾向に対応して、半導体チップの高密度化と高密度実装に対応した実装方式としてメモリー素子などに採用されているダイパッドのないリードフレームの上にチップを載せるCOL(チップ・オン・リード)構造と、その発展形であるチップの上にリードを載せるLOC(リード・オン・チップ)構造などが幾つか提案され、採用・生産に至っている。
【0003】
この実装形態では、半導体チップとリードフレーム、リードフレームとプレート、リードフレーム同士など同種異種材質の接着界面が存在し、その接着信頼性が素子の信頼性に非常に大きな影響を与える。素子組立時の工程温度に耐える信頼性は勿論のこと、吸湿時、湿熱時などの接着信頼性、さらに接着作業性も重要な項目である。
【0004】
こうした半導体チップの更なる高機能大容量化を目指して、リードフレームの材質をこれまでの主流であった42合金から銅に換えることが提案・実用化されている。これは、銅材をリードフレームに用いることにより電気信号の高速化への対応が可能となり、大容量半導体チップを用いた半導体装置の実用化を図ることができるためである。
【0005】
従来の半導体接着テープには専らポリイミド系接着剤が多く使用されているが、半導体接着テープをリードフレームに貼り付けて更に半導体チップをマウントする工程においてこれら半導体接着テープの多くは貼付温度が250℃〜400℃以上と高く、リードフレームおよび半導体チップなどの被着材への熱損傷が懸念されている。この熱が原因で銅リードフレームの酸化、半導体チップ上の配線劣化により生産工程における歩留まりの低下を引き起こすという問題がある。
【0006】
これらの問題を解決する為に、接着テープの接着剤成分のガラス転移温度を下げて更なる低温加工性を付与することが考えられる。しかし、単にガラス転移点を下げるだけでは接着剤成分の耐熱性や高温・高湿時の接着性が低下し、チップ貼り付け時の熱によって樹脂自体の発泡を引き起こしたり、ワイヤーボンディングなどの高温度雰囲気下が要求される状況下での組立作業が困難になることや、半導体装置としての信頼性を損なう恐れがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の大容量チップおよび銅配線リードフレームを用いた半導体装置組立工程の問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果なされたもので、耐熱性、接着性に優れ、組立時の熱による発泡を抑えた高信頼性耐熱接着剤を提供するものである。
また、本発明はこの耐熱性接着剤のN−メチル−2−ピロリドン又はフェニルエーテルを溶媒とした溶液を、支持体の片面に流延成形、硬化成分の架橋が起こりにくい低温度での乾燥後、支持体から剥離して得る半導体用接着フィルム、および支持フィルムの両面に流延成形、硬化成分の架橋が起こりにくい低温度で乾燥させて得られる3層構造の半導体接着フィルムおよびその製造方法を提供するものである。
また本発明はこれら半導体接着テープを打ち抜きによってリードフレームに貼り付けた接着フィルム付きリードフレームを提供するものである。
また、本発明はこの半導体接着フィルムを介してリードフレームと半導体素子とを接着させてなる半導体装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、LOCパッケージ等のパッケージ組立時の熱による接着剤の発泡や、吸湿後のハンダリフロー時のパッケージクラックと接着剤物性との相間性について鋭意検討した結果、ハンダリフロー温度付近の線熱膨張係数が大きいことが発泡やパッケージクラックの主要な原因であり、高温下である特定域の線熱膨張係数を有する接着剤を用いることによって改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
この高温下である特定域の線熱膨張係数を有する接着剤は、ポリイミド樹脂に1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を添加することで得られる。詳細な反応機構は未だ解明されていないが、ポリイミドの未反応末端カルボン酸基がアミンの窒素原子を介して架橋し、高次ネットワークを形成した結果耐熱性が向上するものと考えられる。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームとを接着する為に用いられる耐熱性熱可塑性樹脂を主成分とする耐熱性接着剤であって、接着剤成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下である耐熱性接着剤、
(2) 耐熱性熱可塑性樹脂が1分子中に少なくとも2個以上のイミド環を含み、かつ90℃〜200℃のガラス転移点を有するポリイミド樹脂を含有し、1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を該ポリイミド樹脂に対し重量比0.1〜10%含む第(1)項記載の耐熱性接着剤、
(3)ポリイミド樹脂が、アミン成分として、一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、式(2)又は(3)で表されるノルボルネン環を含む脂環式ジアミン、及び式(4)で表されるスピロアセタール環を含む脂環式ジアミンの中から選ばれる少なくとも1つのジアミン化合物と、酸成分として、芳香族テトラカルボン酸無水物とを反応させてイミド閉環してなり、かつ有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を主たる構成成分とする第(2)項記載の耐熱性接着剤、
【化5】
【化6】
【化7】
(式中、R1,R2,R7,R8,R9,R10,R11,及びR12は炭素数1〜4で二価の脂肪族基または芳香族基、R3,R4,R5,およびR6は一価の脂肪族基または芳香族基を表し、kは1〜100の整数である。)
(4) 第(1)〜(3)項いずれか記載の耐熱性接着剤のN−メチル−2−ピロリドン又は一般式(5)で表されるフェニルエーテルを溶媒とする溶液を支持体の片面または両面に流延塗布し、加熱乾燥させて得られる半導体接着テープ、
【化8】
(式中、R13は水素原子または炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、R14は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基を表す。)
(5)第(4)項記載の半導体接着テープが貼り付いてなることを特徴とするリードフレーム、
(6)第(5)項記載のリードフレームを用いてなる半導体装置、
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱性接着剤は、接着成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下であることが必要である。これは3000ppmよりも高いと、ガラス転移点以上の温度で貼り付ける場合に支持基材や貼付基板からの吸湿もしくは接着剤自体からの発生ガスによって発泡が生じる恐れがある。3000ppm以下ならば吸湿水分や発生ガスが生じても樹脂自体が堅いので発泡を伴わずに樹脂内部を拡散していく。
【0012】
本発明使用するポリイミド樹脂は、アミン成分として、一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、式(2)又は(3)で表されるノルボルネン環を含む脂環式ジアミン、及び式(4)で表されるスピロアセタール環を含む脂環式ジアミンの中から選ばれる少なくとも1つのジアミン化合物と、酸成分として、芳香族テトラカルボン酸無水物とを反応させてイミド閉環してなるものが好ましい。
【0013】
本発明に用いる一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサンやα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらは一般式(4)で表されるフェニルエーテルに溶解するものが好ましい。
【0014】
本発明に用いる芳香族もしくは脂肪族ジアミンとしては、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノメシチレン、4,4’−メチレンジ−o−トルイジン、4,4’−メチレンジアミン−2,6−キシリジン、4,4’−メチレン−2,6−ジエチルアニリン、2,4−トルエンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、ベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンジジン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エ−テル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォンなどを挙げることができる。中でも、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、または2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ−5,2,1,0(2.6)デカン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなど分子中にノルボルネン環やスピロアセタール環などの脂環構造を含むジアミンが、フェニルエーテルへの溶解性に関して好ましい。上記のジアミンは、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
上記ジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンとの反応比率は、ポリイミド樹脂のガラス転移点が90℃〜200℃の範囲にある限りは特に規定しないが、ジアミノポリシロキサンの反応比率が、ジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンの総モル数に対し、好ましくは5〜95モル%である。5モル%未満であると、得られるポリイミド樹脂のフェニルエーテルへの溶解性が低下し、作業上問題が生じる可能性がある。95モル%を超えるとフィルムのガラス転移温度が著しく低下し、フィルムとしての強度が保てない可能性がある。
【0016】
本発明に用いる芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物、4,4‘−(4,4’−イソプロピデンジフェノキシ)フタル酸二無水物などが挙げられる。中でも、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4‘−(4,4’−イソプロピデンジフェノキシ)フタル酸二無水物が、得られるポリイミド樹脂のフェニルエーテルへの溶解性に関して好ましい。上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
上記ジアミノシロキサン、ジアミン化合物、芳香族テトラカルボン酸無水物を反応させてなるポリイミド樹脂はガラス転移温度が90℃から200℃の範囲にあることが必要である。90℃未満ではポリイミド樹脂自体の耐熱性が低下し、ワイヤーボンディングが行なわれる温度域(180〜230℃)における弾性率が低く、ワイヤーボンディング時にテープと被着体との間で剥離が生じる恐れがある。逆に200℃を越える場合ポリイミド樹脂のフェニルエーテルへの溶解性が低くなり、フェニルエーテル溶液の状態でポリイミド樹脂が析出する恐れがある。
【0018】
本発明の耐熱性接着剤に用いられるポリイミド樹脂組成物の重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリイミド樹脂の分子量を決定する重要な因子である。また、ポリマーの分子量と物性、特に数平均分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られている。数平均分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度を得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。
【0019】
本発明に用いるポリイミド樹脂の製造では、酸成分とアミン成分の当量比rが0.900 ≦ r ≦ 1.06
さらには、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが、機械的強度および耐熱性の両面から好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くてフィルムとした場合脆くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸して、ガス発生や発泡の原因となり好ましくないことがある。ポリイミド樹脂の分子量制御のために、ジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比rの範囲内であれば、特にこれを妨げない。
【0020】
本発明に用いる反応溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン又は式(5)で表されるフェニルエーテルである事が好ましい。
【0021】
ここで、式(5)で表されるフェニルエーテルの代表的なものとして、アニソール、フェネトール、メトキシトルエン等が挙げられるが、より低温の熱処理でポリイミド樹脂フィルムが得られることから、アニソールが最も好ましい。
【0022】
この時、共沸用溶媒として上記のフェニルエーテルと相溶性のある非極性溶媒を混合して使用しても良い。前記非極性溶媒としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が好ましい。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、50重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が50重量%を越える場合は、溶媒の溶解力が低下し、原料であるジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン又はポリイミド樹脂が析出する恐れがあるためである。
【0023】
上述した成分、配合比によりポリイミド樹脂を合成する場合、上記成分のジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンとを、フェニルエーテルを主とする反応溶媒中に仕込み、70〜80℃程度に加熱し、ジアミノポリシロキサンと芳香族もしくは脂肪族ジアミンを溶解させる(A液)。さらに、別の反応器に上記成分のテトラカルボン酸二無水物を、フェニルエーテルを主とする溶媒中に仕込み、還流が起きるまで加熱昇温を行う(B液)。引き続き、前記A液を、還流中のB液内に添加して、ポリアミド化と脱水閉環反応を短時間で進行させ、一般式(6)で表される繰り返し単位と一般式(7)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド樹脂の溶液が得られる。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を妨害するため、ディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。
【0024】
【化9】
【化10】
(式中、R1,R2,R17は炭素数1〜4で二価の脂肪族基または芳香族基、R3,R4,R5,およびR6は一価の脂肪族基または芳香族基、R15,R16は四価の脂肪族基または芳香族基を表し、kは1〜100の整数である。m、nの割合は各成分合計100モル%中、mが5〜95モル%、nが5〜95モル%である。)
【0025】
本発明に用いる、1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物はポリイミド樹脂を合成する際に使用する溶媒への溶解性が良好なものが好ましい。例として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系シランカップリング剤、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明の耐熱性接着剤における1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物の含有量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部部である。0.1未満であると、十分な耐熱性向上効果が得られない。10重量部を越えると、ポリイミド樹脂同士の架橋が過剰となり、ポリイミド樹脂組成物溶液を調製した際、溶液がゲル化しやすく、またフィルム状接着剤にした際、熱圧着した時、被着体に対する濡れ性が低下し、接着力が低下する。
【0027】
本発明の耐熱性接着剤は、ポリイミド樹脂に1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を添加することにより得られるが、更なる耐熱性の向上のためにエポキシ化合物、シアネート化合物、硬化剤及びシランカップリング剤を添加しても良い。本発明の耐熱性接着剤には、上記成分の他に、表面平滑性を出すための平滑剤、レベリング剤、脱泡剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することができる。また、ポリイミド樹脂溶液中の溶剤の蒸発速度を調節するために、均一に溶解する範囲で芳香族炭化水素系溶剤を使用することができる。
【0028】
本発明においてポリイミド樹脂組成物は、接着剤として用いられ、これを用いて、フィルム状接着剤とするには、上記で得られたポリイミド樹脂溶液を、例えば、ロールや金属シート、又は、ポリエステルシートなどの離型シートの上に、フローコーター、ロールコーターなどにより、流延あるいは塗布して、樹脂層からなるフィルムを形成させ、加熱乾燥後、剥離してポリイミド樹脂フィルムとすることができる。この際の加熱処理は、通常50〜150℃、より好ましくは50〜120℃で行われ、エポキシ樹脂等、硬化成分が架橋することなくフィルム状接着剤を製造することが可能である。熱処理時間については、通常0.1〜1時間程度で良く、低温短時間で完全に溶剤を除去することが可能であり、フィルム状接着剤を熱圧着した際、残存溶剤による発泡を抑制することができる。残存溶媒の量としては500ppm以下であることが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
なお、実施例における略号は以下の通りである。
PI:ポリイミド
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BPADA:ビスフェノールA酸無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
APB: 1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
TCDD:3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ−5,2,1,0(2.6)デカン
NBDA:2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン
APPS−1:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量249)(式(1)においてk=1)
APPS−9:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量837)(式(1)においてk=9)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
KBM573:アミノシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名KBM−573)
【0030】
(PI−1の合成)
三角フラスコに、アニソール67.7gを入れ、さらにNBDA13.88g(0.0.9モル)、APPS−9 9.416g(0.011モル)と、APPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、70℃に加熱し、溶解するまで撹拌を行った(A液)。
【0031】
次に、乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた三口フラスコに、アニソール78.67g、トルエン36.6gを入れ、窒素ガスを流した。次に、酸成分であるODPA34.9g(0.113モル)を投入し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、油浴にて系を還流が発生するまで加熱した。次に、前記A液を滴下ロートに投入し、フラスコ内に1時間かけて滴下した。その間に発生する水は、ディーン・スターク管を用いて系外に除いた。3時間加熱した後、冷却し、目的とするポリイミド樹脂の溶液を得た。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=25000であった。このポリイミド溶液にKBM573を3.05g添加し混合し、ポリイミド溶液PI−1を得た。
【0032】
(PI−2の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP176.54gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB26.31g(0.09モル)とAPPS−9 9.42g(0.011モル)とAPPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA 31.41g(0.101モル)、BTDA3.63g(0.011モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 44.13gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却した。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=34000であった。このポリイミド溶液にKBM573を3.68g添加し混合し、ポリイミド溶液PI−2を得た
【0033】
(PI−3の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP258.38gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるBAPP39.95g(0.09モル)とAPPS−9 9.42g(0.011モル)とAPPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるBPADA58.5g(0.113モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン64.6gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却した。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=42000であった。このポリイミド溶液にKBM573を5.38g添加し混合し、ポリイミド溶液PI−3を得た
【0034】
(PI−4の合成)
三角フラスコに、アニソール51.62gを入れ、さらにTCDD17.49g(0.09モル)、APPS−1 2.796g(0.011モル)、APPS−9 9.416(0.011モル)を投入し、70℃に加熱し、溶解するまで撹拌を行った(B液)。
【0035】
次に、乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた三口フラスコにアニソール99.09g、トルエン37.68gを入れ、窒素ガスを流した。次に、酸成分であるBPDA33.10g(0.113モル)を投入し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、油浴にて系を還流が発生するまで加熱した。次に、前記B液を滴下ロートに投入し、フラスコ内に1時間かけて滴下した。その間に発生する水は、ディーン・スターク管を用いて系外に除いた。3時間加熱した後、冷却し、目的とするポリイミド樹脂の溶液(PI−4)を得た。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=38500であった。
【0036】
(PI−5の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、攪拌機を備えた三口フラスコにNMP176.54gを入れ、窒素ガスを流した。次にアミン成分であるAPB 26.31g(0.09モル)とAPPS−9 9.42g(0.011モル)とAPPS−1 2.796g(0.011モル)を投入し、均一になるまで撹拌した。均一に溶解後、系を氷水浴で20℃に保ちながら、酸成分であるODPA31.41g(0.101モル))、BTDA3.63g(0.011モル)を粉末状のまま10分間かけて添加し、その後2時間撹拌を続けポリアミド酸溶液を得た。この間フラスコは20℃を保った。
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、トルエンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にトルエン 44.13gを添加した。氷水浴から油浴に替えて系を加熱し発生する水を系外に除いた。3時間加熱した後冷却して目的とするポリイミド溶液PI−5を得た。得られたポリイミド樹脂は、東ソー株式会社製GPC測定装置を用いて、ポリスチレン換算で測定のところ、Mw=34000であった。
【0037】
実施例1〜3及び比較例1〜2
上記で得たポリイミドPI−1〜5の配合表を表1に示す。表中の酸成分及びアミン成分の配合数値はモル比を表わし、添加剤の配合数値はポリイミド樹脂に対する重量比を表わす。これらポリイミド溶液をシリコン離型処理二軸延伸ポリエステルフィルムにロールコーターで、厚みが25μmになるように塗布し、80℃で2分、130℃で2分、180℃で2分乾燥を行い、ポリイミド樹脂フィルムを得た。このフィルムのガラス転移点および線熱膨張係数を熱機械分析装置(TMA,セイコーインスツルメンツ社製,SS−6000)を用いて測定した結果を併せて表1に示す。
【0038】
ガラス転移点測定方法:
サンプルを厚み25μm,幅3mmの矩形に切り出し,熱機械分析装置(TMA,セイコーインスツルメンツ社製,SS−6000)を用いて昇温速度5mm/分,荷重25mNの条件で測定を行なった。TMA曲線の外層点をガラス転移点とした。
【0039】
線熱膨張係数測定方法:
サンプルを厚み25μm,幅3mmの矩形に切り出し,熱機械分析装置(TMA,セイコーインスツルメンツ社製,SS−6000)を用いて昇温速度5mm/分,荷重25mNの条件で測定を行なった。ガラス転移温度以降のTMA曲線の傾きより線熱膨張係数を算出した。
【0040】
発泡の有無の確認:
サンプルを直径2.5mmの円形に打ち抜き、42アロイ合金に250〜300の温度範囲で貼り付けた後、厚さ500μmのウェハー4cm×4cmを350℃でマウントした後断面観察を行ない発泡の有無を確認した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、高温下である特定域の線熱膨張係数を有する接着剤を用いることによってLOCパッケージ等のパッケージ組立時の熱による接着剤の発泡や、吸湿後のハンダリフロー時のパッケージクラックを改善した耐熱性接着剤を提供することができる。また貼付後の耐熱性、信頼性について高信頼性と耐熱性を要求するエレクトロニクス用材料等に最適なフィルム状接着剤を提供することができる。
Claims (6)
- 半導体パッケージの組立工程において半導体チップとリードフレームとを接着する為に用いられる耐熱性熱可塑性樹脂を主成分とする耐熱性接着剤であって、接着剤成分の線熱膨張係数がガラス転移点以上の温度で3000ppm(1/℃)以下であることを特徴とする耐熱性接着剤。
- 耐熱性熱可塑性樹脂が1分子中に少なくとも2個以上のイミド環を含み、かつ90℃〜200℃のガラス転移点を有するポリイミド樹脂を含有し、1分子中に少なくとも1個以上の第1級〜第3級アミン構造を有する化合物を該ポリイミド樹脂に対し重量比0.1〜10%含む請求項1記載の耐熱性接着剤。
- ポリイミド樹脂が、アミン成分として、一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、式(2)又は(3)で表されるノルボルネン環を含む脂環式ジアミン、及び式(4)で表されるスピロアセタール環を含む脂環式ジアミンの中から選ばれる少なくとも1つのジアミン化合物と、酸成分として、芳香族テトラカルボン酸無水物とを反応させてイミド閉環してなり、かつ有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を主たる構成成分とする請求項2記載の耐熱性接着剤。
- 請求項4記載の半導体接着テープが貼り付いてなることを特徴とするリードフレーム。
- 請求項5記載のリードフレームを用いてなる半導体装置。
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---|---|---|---|
JP2002225581A JP2004067741A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 耐熱性接着剤及び半導体接着テープ |
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JP2009068004A (ja) * | 2007-08-20 | 2009-04-02 | Hitachi Chem Co Ltd | 接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着剤シート及びそれを用いた半導体装置 |
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JP2009084563A (ja) * | 2007-09-13 | 2009-04-23 | Hitachi Chem Co Ltd | 接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート及び半導体装置 |
US8012548B2 (en) * | 2004-11-16 | 2011-09-06 | Lg Display Co., Ltd. | Flat panel display and method of fabricating the same |
-
2002
- 2002-08-02 JP JP2002225581A patent/JP2004067741A/ja active Pending
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