JP2004277301A - リパーゼ阻害物質 - Google Patents
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Abstract
【課 題】コメ胚芽に存在し、コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物を提供することを目的とする。
【解決手段】コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物
【選択図】 なし
【解決手段】コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品に有用なリパーゼ阻害物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、我が国では糖尿病、高脂血症などの成人病患者が増加の一途を辿っている。成人病は、交通機関の発達による慢性的な運動不足や現代の食生活などに起因すると考えられている。すなわち、高エネルギーの食品を多量に摂取する一方で、運動量が少ないことが肥満を招き、中性脂肪やコレステロールが生体内に多く蓄積して、成人病を発症することになる(非特許文献1)。
成人病を予防・治癒する一手段として、消化酵素の活性を阻害する物質を摂取して食品の分解を抑制することが考えられ、これまで数多くの研究者によって研究がなされている。例えば、植物由来の α−アミラーゼ活性阻害物質はデンプン質の消化器官での分解を阻害し、糖質の代謝を抑制することによって、肥満の防止に有効であると報告されている。α−アミラーゼの活性阻害物質としては、モリブデン、水銀などの重金属、またはマルトース、ノジリマイシンなどの基質類似物が従来から知られていたが、近年植物起源のタンパク性活性阻害物質、微生物起源のタンパク性活性阻害物質および含窒素オリゴ糖類似物質等が相次いで見出された。タンパク性活性阻害物質は、主に動物起源の α−アミラーゼ を阻害するが、この際にα−アミラーゼ活性阻害物質複合体が形成されることがゲル濾過などの手法によって確認されている。活性阻害物質であるタンパク質がα−アミラーゼの活性中心を覆ってしまうと考えられ、阻害型式は非拮抗的である。含窒素オリゴ糖類似物質である活性阻害物質は、基質類似物として非拮抗的に作用するが、特に微生物起源の α−アミラーゼを強く阻害する(非特許文献2)。
これらの活性阻害物質を用いて糖の代謝を阻害することで、生体内でのエネルギーの蓄積を抑制して糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が予防可能であるとされている。しかし、これら α−アミラーゼ活性阻害物質は食物中の脂質の消化吸収については無力であり、脂質についても消化吸収活性阻害物質の出現が求められている。
ヒト生体内では、脂質はまずリパーゼによって、トリグリセリドがグリセリンと脂肪酸に加水分解される。生成するグリセリンはグリセロリン酸を経て炭水化物に変換されるか、またはグリセロリン酸を経てエネルギーへと変換される。一方、脂肪酸は一連の段階的な反応によって分解される。それらの反応は酸化的で、脂肪酸を炭素2個(C2)からなる化合物に切り離し、アセチル−CoAを生ずる。このようなヒト生体内の脂質の代謝を考慮すると、リパーゼの活性を阻害することによりトリグリセリドから脂肪酸とグリセリンの生成を阻害し、以って脂質の消化吸収を抑制し、肥満、これと密接に関連する糖尿病、高脂血症等を予防することが可能であると考えられる。こうした生化学的な考察から、膵臓リパーゼを阻害する物質についても積極的に研究がなされている。すなわち、膵臓リパーゼを阻害するタンパク質については森らが1973年に大豆中に見い出し単離した。
さらに、ガルゴウリ(Gargouri)(非特許文献3、4)、里内ら(非特許文献5,6,7)がその作用について報告している。1974 年、里内らは大豆種子中にタンパク性のリパーゼ阻害物質(SPI)の存在を明らかにし、SPI がブタ膵臓のリパーゼのみでなく、微生物(アスペルギルスニガー「Aspergillus niger」、リドプスデレマー「Rhizopus delemar」 のリパーゼの作用も阻害することを確認した(非特許文献5,6,7)。リパーゼの活性阻害物質としては、血清アルブミン、β−ラクトグロブリン、ある種の大豆蛋白、小麦胚芽由来の塩基性蛋白質(特許文献1)がリパーゼの働きを阻害して、乳化された脂質が分解されるのを抑制または阻害するのに有効であることが提案されている。また、脱脂コメ胚芽からリパーゼ反応を阻害するタンパク質を抽出し、これが抗肥満食品として有効であることが提案されている(特許文献2)。コメ胚芽中のリパーゼ阻害物質がヒトの肥満の防止と高脂血症の予防・治療に有効であることが報告されているが、リパーゼ阻害物質がタンパク質であると、摂取してから腸管に達するまでに、リパーゼ阻害物質がタンパク質分解酵素によって分解される可能性がある。したがって、膵臓リパーゼを効率よく阻害するには、非タンパク性の活性阻害物質が有効であると考えられるが、非タンパク性のリパーゼ阻害物質は未だに見出されていない。コメ糠(胚芽を含む)は、約20%の脂質を含んでいるが、その脂質は発芽時には分解されてエネルギーへと変換される(非特許文献8)。コメ糠には脂質を分解するためのリパーゼが存在し、発芽まで脂質を貯蔵しておくには、リパーゼの作用を阻害する必要があり、したがってコメ糠にはリパーゼの作用を阻害する物質が存在すると考えられる。
【0003】
【非特許文献1】井上 修二外:肥満症テキスト(正しい知識とダイエットクリニック)、109〜122頁(1994)
【非特許文献2】大西 正建外:アミラーゼ(生物工学へのアプローチ)、145頁(1986)
【非特許文献3】ガルゴウリ外:J.Lipid Res.,24, 1336〜1342頁(1983)
【非特許文献4】ガルゴウリ外:J.Lipid Res.,25、1214〜1221頁(1985)
【非特許文献5】岩井 美枝子:リパーゼ(その基礎と応用)、182〜185頁(1991)
【非特許文献6】里内外:Agri.Biol.Chem.,38, 97〜101頁(1974)
【非特許文献7】里内外:Agri.Biol.Chem.,40, 889〜897頁(1976)
【非特許文献8】倉澤 文夫:米とその加工、34頁(1981)
【特許文献1】特開平4−300839号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平7−25779号公報(請求項3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コメ胚芽に存在し、コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これまでに存する上記した問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、非タンパク性のリパーゼ阻害物質をコメ胚芽から抽出物として取得し、該リパーゼ阻害物質の製造方法を確立し、ついには単離することに成功すると共に、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品を提供する。本発明者らはさらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)コメ胚芽に存在し、非タンパク性のリパーゼ阻害物質、
(2)コメ胚芽から抽出することを特徴とする(1)記載のリパーゼ阻害物質の製造方法、
(3)(1)記載のリパーゼ阻害物質を含有することを特徴とする化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品、
(4)(1)記載のリパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の非タンパク性のリパーゼ阻害物質は、コメ胚芽を抽出することにより得られる。コメ胚芽を水または有機溶媒で抽出し、抽出液を冷却して得られる固形油分を水で抽出することにより粗精製物を得る。この粗精製物をさらに精製することにより精製品が得られる。
さらに詳しくは、以下本発明の好ましい実施の形態を説明する。
コメ糠を目の粗さ約2mm2の網を箱に貼り付けた篩を用いてコメ胚芽を採取する。採取したコメ胚芽を脱脂してもよいし、脱脂しなくてもよい。コメ糠には通常約2〜3質量%の胚芽が含有されている。採取したコメ胚芽をコメ胚芽の重量の約4〜10倍量、好ましくは約4〜7倍量に相当する溶媒でホモジナイザーによって約一夜、約5〜10℃、好ましくは約5〜6℃にて撹拌抽出した後、この胚芽を含む抽出液を遠心分離(例えば回転数約10,000rpm,約20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)することによって上清成分(F1と称す)と沈殿成分(F2と称す)とに分離する。
コメ胚芽を抽出する溶媒として、例えば水、水溶性アルコール類(メタノール、エタノールおよびブタノール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン等)、炭化水素(ノルマルヘキサン等)およびこれらの混合物等を挙げることができる。コメ胚芽を抽出する溶媒として、メタノールが好ましい。分離した後、上清成分(F1)のみを採取しエバポレーターで減圧濃縮を行う。減圧濃縮を行った濃縮液を約一夜、約5〜10℃、好ましくは約5〜6℃にて冷蔵保存した後、遠心分離(例えば回転数約10,000rpm,約20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)を行って液状油分(F3と称す)および固形油分(F4と称す)とに分離する。液状油分(F3)を洗浄した蒸留水(pH約9.2)にはリパーゼ阻害活性が確認されないが、固形油分(F4)を洗浄した蒸留水(pH約9.2)にはリパーゼ阻害活性が確認される。固形油分(F4)を蒸留水(pH約9.2)で洗浄し、この洗液を分液ロートを用いて、例えばヘキサンで洗浄し、ヘキサン層を除去する。これによって蒸留水洗液中の油分が除かれる。この油分を除去した蒸留水洗液を粗抽出リパーゼ阻害物質(LIS−1と称す)として、以下このLIS−1の精製を行う。
【0008】
粗抽出リパーゼ阻害物質(LIS−1)を遠心分離(例えば回転数約3,000rpm,約20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)して上清成分(F5と称す)と沈殿成分(F6と称す)とに分離する。エバポレーターで濃縮した上清成分(F5)を、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィー(2回実施)によって分画し、リパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2と称す)を得る。この場合、溶出液には例えば蒸留水(pH約 9.2)を使用し流速は、例えば約0.5 ml/ min.で、フラクションチューブにはそれぞれ溶出液約2 mlずつを分画する(カラム:例えばファーマシア(Pharmacia)製密閉型カラム(半径1cm × 長さ70cm)を使用)。上清成分(F5)を、例えば Sephacryl S−100 カラムクロマトグラフィーによって分画して得たリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)の精製をさらに進めるためにリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)を、例えばSuperdex peptideカラムクロマトグラフィー(カラム:例えばファーマシア(Pharmacia)製プレパックカラム(半径0.5cm ×長さ30cm)を使用)に供する(2回)。この場合、溶出液には、例えば蒸留水(pH約9.2)を用い流速は、例えば約0.5ml/min.で、フラクションチューブにはそれぞれ溶出液約0.5mlづつを分画する。このリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)を、例えばSuperdex peptide カラムクロマトグラフィーに供した結果、リパーゼ阻害物質の精製物質(LISと称す)を得る。このリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)は通常、例えば淡黄色の針状結晶である。コメ糠の胚芽からリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)を抽出する手順を図1に示した。なお、本発明のリパーゼ阻害物質は精製品であってもよいし、粗精製品であってもよい。本発明のリパーゼ阻害物質は、LISの含有量が、たとえば約10質量%程度であっても、本発明の目的を達成することができる。したがって、本発明のリパーゼ阻害物質におけるLISの含有量は通常約10質量%以上、好ましくは、約30質量%以上、より好ましくは約50質量%以上、もっとも好ましくは約70質量%以上である。
【0009】
図1の手順にしたがって得た本発明によるリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)を始め種々の精製途上のリパーゼ阻害物質を用いて、リパーゼ阻害物質のリパーゼに対する活性阻害性およびその他特性を検討した。
【0010】
(リパーゼに対する活性阻害性の測定法)
ブタ膵臓の活性阻害を指標にして、リパーゼ阻害物質のリパーゼに対する活性阻害性を以下の方法によって測定する。
リパーゼに対する活性阻害性の測定には、例えばリパーゼカラー(ロッシュ・ダイアグノスティック株式会社製、タイプ:リキテック)キットを使用する。ここで、緩衝液をR1、基質液をR2と称する。
リパーゼ溶液はブタ膵臓リパーゼ(シグマ社製)10mgを、0.5質量%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)(BSAと称す)を含むトリス−塩酸緩衝液(Tris−HCl buffer)(シグマ社製)(pH約8.0)に溶解させた標品を用いる。試験の反応液の組成は、R1が50ml、リパーゼ溶液が2mlおよびリパーゼ阻害物質(本発明の精製リパーゼ阻害物質をトリス−塩酸緩衝液に溶解したもの)が1ml(リパーゼ阻害活性が1ユニットに相当)とから成り(但し、対照の反応液の組成はリパーゼ阻害物質を蒸留水で置き換えたものを用いる)、試験および対照の反応液を37℃で5分間反応させた後、これらにR2を各20mlづつ加えてさらに37℃で30分間反応させる。反応後、波長570nmでのこれらの反応液の吸光度を測定する。
【0011】
(リパーゼに対する活性阻害率の計算法)
リパーゼ阻害率を下式にて算出する。
リパーゼ阻害率=(1−b/a)×100(%)
但し、対照の吸光度をa、試験サンプルの吸光度をbとする。また、25%の活性阻害率を示すリパーゼ阻害物質の活性を1U(1ユニット)とする。
【0012】
上記したように採取したコメ胚芽を、例えばメタノールで抽出し、メタノール抽出後に行った遠心分離によって得た図1に示す上清成分(F1)のリパーゼに対する活性阻害性を上記の方法にしたがって測定し、算出したリパーゼ阻害率が約25%の数値を示した(図2)。また図1に示す上清成分(F1)を、例えば約35℃で減圧濃縮した後も、この濃縮したものを蒸留水(pH約9.2)にて洗浄抽出し、次いでヘキサンにて洗浄して油分を除去した後も、リパーゼ阻害性が失われることはなく、リパーゼ阻害率の変化も見られなかった。
これらの結果より、コメ胚芽からのリパーゼ阻害物質はその濃度に関係なく約25%程度のリパーゼ阻害率を示すことが確認された(図3)。
【0013】
上清成分(F5)を濃縮後、これを、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィーに供した結果(1回目)を図4に示した。図4から上清成分(F5)が多量のタンパク性の物質を含むことが分かった。また、リパーゼ阻害性を有するフラクションの数が数個存在し、このリパーゼ阻害性を有するフラクションの溶出位置が波長約325nmの吸光度の高い位置と対応しており、リパーゼ阻害性を有するフラクションの溶出位置からこのリパーゼ阻害物質が低分子物質であることが推定される。一度、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィーを行った上清成分(F5)に対して、再度、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィーを行うことによって余分なタンパク性物質をさらに除去することが可能である。上清成分(F5)からタンパク性物質を大幅に除去したものをリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)とする。
【0014】
リパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)をより純粋に精製するために、リパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)に対して Superdex peptide カラムクロマトグラフィーを行った。Superdex peptideカラムクロマトグラフィーを行うことによってリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)中に存在する余分なタンパク性の物質をさらに除去することが可能である(図5)。さらに、Superdex peptide カラムクロマトグラフィーのすべてのフラクションの内、リパーゼ阻害性の認められたフラクションを回収し、回収したフラクションを再度Superdex peptide カラムクロマトグラフィーに供することにより、タンパク性の物質の存在がほとんど認められなくなり、リパーゼ阻害性の認められたフラクションが単一のピークを示す(図6)。また ボイド容積(Void volume)およびマーカー(グリシル−L−チロシン、分子量:約238)による確認結果からリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の分子量が約450Daであることが推定される(図6)。
【0015】
すなわち、以上の内容を要約すると次のようになる。
(1)コメ胚芽からリパーゼ阻害性を有する物質を見出すことができた。
(2)コメ胚芽からリパーゼ阻害性を有する物質を単離、精製する方法を確立した。
(3)コメ胚芽中のリパーゼ阻害物質の分子量が約450Daであることが分かった。
【0016】
リパーゼ阻害物質の構造を推定するために本発明によるリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)を用いて物理および化学的特性を検討した。
(1)薄層クロマトグラフィ(TLC)上での挙動と試薬への反応
リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の純度と物理および化学的特性を確認する目的で、3種の展開溶媒を用いて、例えばシリカゲルTLC を行った(メルック(Merck)社製シリカゲルシート60F254)を使用する)。それぞれの展開溶媒の組成を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
その結果、
LISのTLC上での挙動(Rf値)および試薬との反応は表2および表3に示す。ここでRf値とは原点からの各物質のスポットの中心までの距離を原点からの溶剤の浸透先端までの距離で除した値をいう。
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
上記の表3からLISが硝酸銀およびアニスアルデヒド−硫酸に対して陽性反応であるために、LISが糖を含有する物質であると考えられる。
(2)LISのNMRスペクトル
LISの13CNMRスペクトルおよび1H NMRスペクトルの測定「JEOL社製、タイプ:EX−270(H:270MHz,C:68.5MHz)、13C NMRおよび1H NMRはCDCl3溶液を使用)」の結果を各々図7および図8に示した。図7および図8からLISが23個の炭素原子から構成され、26〜27の水素分子を有する化合物であると考えられる。
(3)LISのマススペクトル(島津製作所製ガスクロマトグラフィー質量分析計、タイプ:GCMS−QP2010を使用)
LIS のマススペクトルの測定結果を図9に示した。図9からLISの分子量が約450Daであると推定される。
(4)LIS の紫外線吸収曲線
LIS の紫外線吸収曲線の測定結果を図10に示した。図10の結果から LISは波長約320〜290nm付近の紫外線を強く吸収する。LISの紫外線吸収曲線をp−クマリン酸の紫外線吸収曲線と比較したところ非常に類似していることから、LISはp−クマリン酸のような複素環を有する化合物であると考えられる。
【0022】
すなわち、以上の内容を要約すると次のようになる。
(1)LISがTLC上で硝酸銀およびアニサアルデヒド−硫酸に対して陽性反応を示すため、LISが糖を含む物質であると考えられる。
(2)LISの13C NMRスペクトルおよび1H NMRスペクトルの測定結果からLISが23個の炭素原子から構成され、26〜27の水素分子を有する化合物であると考えられる。
(3)LISのマススペクトルの測定結果からLISの分子量が約450Daであることが推定される。
(4)LISの紫外線吸収曲線がp−クマリン酸の紫外線吸収曲線と類似していることから、LISが複素環を有する化合物であると考えられる。
【0023】
リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の生化学的特性を検討するために、LISを用いてリパーゼ阻害物質の阻害型式について確認した。
LISの阻害型式:
LISの阻害型式を確認するために、基質量を約0.11mM、約0.15 mMおよび約1.78mMと変化させて、各々の場合のリパーゼ阻害性を測定した。リパーゼ阻害性の測定後、LISの阻害型式を示すラインウイーバーバーク(Lineweaver−Burk)のプロットを作成し、これを図11に示した。図11に基づいて、リパーゼ阻害物質を含有する場合と含有しない場合とを比較すると、Km値、Vmax値共に変化したのでLISが不拮抗的にリパーゼ活性を阻害することが分かった。このことから脂質が多量に存在するところにおいてもLISが効率よくリパーゼを阻害すると考えられる。また、酵素量を減少することによって阻害率が上昇した。これはピンポンBi、Bi機構の過程途上をLISが阻害するためであると考えられる。
【0024】
すなわち、以上の内容を要約すると次のようになる。
LISの阻害型式は不拮抗的であり、リパーゼ阻害率は脂質の濃度に関係なく、酵素量の変化によって阻害率も変化した。
【0025】
本発明によるリパーゼ阻害物質はリパーゼ阻害性と紫外線防護活性を有するので、例えば皮膚の美白効果とニキビの予防効果を合せ持つ化粧品等の用途に応用され得る。人体における細菌性リパーゼには、皮膚表層に常在する微生物(プロピオニバクテリウム アクネス:Propionibacterium acnes、ピティロスポラムオバール:Pityrosporum ovale、マイクロコッカス属:Micrococcus sp.等)の産生するリパーゼが知られており、これらのリパーゼが、人体の皮脂中に含まれるトリグリセライドを分解し遊離脂肪酸を産生する。この遊離脂肪酸は、人体の皮膚に対して刺激性の炎症反応を引き起こし、ニキビ、皮膚炎およびフケ等の要因となると考えられている。ヒトの皮膚、特に顔面の皮膚は分泌された脂質によって様々な傷害を受けるとされている。ニキビは典型的な例で、皮膚に発生した吹き出物がニキビ原因菌プロピオニバクテリウム アクネスによって炎症を起こしたものである。プロピオニバクテリウム アクネスの菌数と産生する遊離脂肪酸には相関関係があり、遊離脂肪酸が人体の皮膚の毛包壁に対して、刺激性の炎症反応とそれに伴う過角化、コメドの形成を引き起こすと考えられている。アクネ菌はリパーゼを生産し、その作用で皮膚から分泌される脂質を分解して自らのエネルギー源として増殖する。そこで、脂質を分解する初発の反応であるリパーゼの作用を阻害することによってニキビの発生を阻止できると考えられる。ニキビの阻止あるいは予防を目的にリパーゼ阻害物質を含む、例えば洗顔剤(石鹸)および洗顔パック等を製造することができる。また、ハーブエキス等と混合したパック等を製造することもできる。古来から糠袋と称されているコメ糠を原料にした美肌剤等があるが、このことは古人が早くからリパーゼ阻害物質の存在とヒトの皮膚への効果を実感として認識していたことを立証しているのかも知れない。地球上に住む生物は、太陽からのエネルギー(太陽光線)を固定することによって生命を維持している。太陽からは様々な波長の光線が照射されているが、照射される紫外線のうち約 290nm 以下の波長は大気中のオゾン層で殆ど吸収され、地上には波長 約290〜400nm の紫外線が到達する。その紫外線エネルギーは、人体に対して大きな障害になる。すなわち、UVB(波長約290〜320nm) は皮膚に急性の炎症(紅斑)と火傷(サンバーン)を起こし、最終的には皮膚を黒化する。UVBは人体の免疫系にまで影響を及ぼして、人体が比較的少ない紫外線に暴露されても人体に局所的免疫抑制が生じ、大量の紫外線に暴露された場合には、人体に感染症や皮膚癌が誘発されると言われている。一方、UVA(波長約320〜400nm)は人体の基底細胞層のメラノサイトを刺激してメラニンを形成し一時的な黒化現象を生じさせる。また、人体の皮膚によるUVA浸透性の方がUVB浸透性に比べて高いので、UVAが人体の皮膚の真皮にまで到達して皮膚障害を起こさせ、このことが皮膚の老化を早めるとされている。したがって、紫外線を遮断することによって人体の肌を保護することができる。現在、紫外線を遮断するために有機紫外線吸収剤と無機粉体が使用されている。有機紫外線吸収剤は吸収した光エネルギーを他のエネルギーに効率的に転換する物質で、麹酸やアルブチン等が多用されている。一方、無機粉体は、主として紫外線の散乱・遮断等物理的機構によって人体の皮膚を保護する。これら有機紫外線吸収剤および無機粉体に比してリパーゼ阻害物質は波長が約290〜400nmの広範囲の紫外線を吸収するので紫外線遮断剤として、化粧品等の原料として有効に使用され得る。本発明によるリパーゼ阻害物質を原料とした化粧品としては、上記したものに特に限定されるものではなく、例えばハンドクリーム、ヘアクリームといった各種クリーム類、乳液、シャンプー、リンス、ヘアトリートメントといったヘアケアー類、ボディーシャンプー、洗顔石鹸等が挙げられる。本発明でリパーゼ阻害物質を化粧品に配合する場合のリパーゼ阻害物質の添加量はLIS換算で約0.001〜10質量%、特にLIS換算で約0.1〜5質量%配合することが好ましい。本発明の化粧品は常法に従って製造することができる。
【0026】
化粧品以外の用途として、本発明によるリパーゼ阻害物質を配合した肥満防止食品を挙げることができる。リパーゼの活性を阻害することはエネルギー代謝を抑制することに繋がるので、本発明のリパーゼ阻害物質を肥満防止を目的とした食品、健康食品に配合することができ、食品添加物の成分とすることもできる。
リパーゼ阻害物質を食品中に配合する場合は、食品に対してLIS換算で約0.001〜20質量%、特にLIS換算で約0.01〜10質量%配合することが好ましいが、食品の種類によって、上記の範囲よりも少なく、または多く配合することができる。例えば、錠菓やビスケット等の補助食用の食品にリパーゼ阻害物質を配合するときは、LIS換算で約15質量%以上配合させることができる。食品に応じて、その製造過程で本発明のリパーゼ阻害物質を適宜配合することができる。本発明のリパーゼ阻害物質を配合させる食品の種類は特に限定されるものではなく、例えばパン、麺、ビスケット、ホットケーキ、錠菓等の穀粉や澱粉を含有する食品の他、ドレッシング、ドリンク等を挙げることができる。
【0027】
上記した肥満防止食品はヒトを対象としたものであるが、本発明のリパーゼ阻害物質をペット用食品に添加して、ペットの肥満防止食品としても用いることができる。本発明においてペットの肥満防止食品とは、犬、猫、ハムスター、リス等の哺乳類の愛玩動物用の食べ物のことを言う。本発明によるリパーゼ阻害物質をペットの肥満防止食品に配合する割合については、ペットの種類、ペットの肥満防止食品の性質等、種々の因子によりその割合を変化させることができる。ペットの主食用肥満防止食品にリパーゼ阻害物質を配合する場合は、LIS換算で約0.01〜20質量%配合することが好ましく、特にLIS換算で約0.5〜10質量%が好ましい。配合率がLIS換算で約0.01質量%以下である場合、効果があまり期待できず、LIS換算で約20質量%を越えると原材料費が高く、コストの面で望ましくない。また、本発明によるリパーゼ阻害物質をビスケットや合成ジャーキー等のスナック状のペットの肥満防止食品に配合する場合はLIS換算で約15〜40質量%程度、さらにタブレットや顆粒状の補助食用ペットの肥満防止食品に配合する場合にはLIS換算で約40質量%以上配合させることができる。スナック状のペットの肥満防止食品や補助食用のペットの肥満防止食品に配合する場合には、併せてペットの嗜好性物質を添加またはコーティングするのが好ましい。スナック状ペットの肥満防止食品または補助食用のペットの肥満防止食品の給餌量はペットの体重、肥満度に合わせて決定し通常のペット用食品と併用して給餌すればよい。本発明のペットの肥満防止食品はその形態に応じて常法に従って製造することができる
【0028】
さらに上記以外に、本発明のリパーゼ阻害物質を医薬品に配合して、肥満の予防・治療のための医薬品としても用いることができる。肥満の予防・治療に加えて、本発明のリパーゼ阻害物質を配合した医薬品は、糖尿病、高血圧、高脂血症およびインシュリン抵抗性症候群のような、太り過ぎと関連して頻繁に起こる病気の予防・治療のためにも用いることができる。 例えば本発明のリパーゼ阻害物質を適当な助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口または非経口投与が可能な医薬品にすることができる。さらに、本発明のリパーゼ阻害物質は、他の有効成分を含んでいてもよい。本発明の医薬品は、経口及び非経口投与のいずれも使用可能であり、経口投与する場合は、軟・硬カプセル剤等または錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等として投与される。非経口投与する場合として注射剤、点滴剤および固体状または懸濁粘稠液剤等の投与、持続的な粘膜吸収が維持できるように坐薬のような剤型等の投与、局所組織内投与、例えば皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射等による投与および局所への塗布および噴霧等の外用的投与等が挙げられる。投与量は、投与方法と病気の悪性度、患者の年齢、病状や一般状態、病気の進行度等によって変化し得るが、大人では通常、1日当たりリパーゼ阻害物質として通常LIS換算で約0.5〜5,000mg、小人では通常LIS換算で約0.5〜3,000mgが適当である。本発明の医薬品のリパーゼ阻害物質の割合は、剤型によって変更され得るが、通常経口投与される場合、LIS換算で約0.3 〜15.0質量%が適当であり、非経口投与される場合は、LIS換算で約0.01〜10質量%が適当である。また、本発明の医薬品の製剤化に当たっては、常法にしたがいリパーゼ阻害物質の水溶液、油性製剤等を皮下あるいは静脈注射用製剤等として用いることができる他、リパーゼ阻害物質をカプセル剤、錠剤および細粒剤等の剤型に製剤化して経口用に供することができる。
【0029】
また、有効成分に長時間の保存に耐えるさらなる安定性及び耐酸性を付与して薬効を完全に持続させるために、更に医薬的に許容し得る被膜を施して製剤化すれば、すぐれた安定性を有する医薬品とすることができる。本発明の医薬品の製剤化に用いられる界面活性剤、賦形剤、滑沢剤、佐剤及び医薬的に許容し得る被膜形成物質等を挙げれば、次の通りである。本発明の医薬品の崩壊、溶出を良好ならしめるために、界面活性剤、例えばアルコール類、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類等の1種又は2種以上を添加することができる。また、賦形剤として、例えば、庶糖、乳糖、デンプン、結晶セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0030】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油等を1種または2種以上添加することができ、また矯味剤及び矯臭剤として、食塩、サッカリン、糖、マンニット、オレンジ油、カンゾウエキス、クエン酸、ブドウ糖、メントール、ユーカリ油、リンゴ酸等の甘味剤、香料、着色剤、保存料等を含有させてもよい。懸濁剤および湿潤剤等のごとき佐剤としては、例えばココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、乳酸カルシウム、ベニバナ油、大豆リン脂質等を含有させることができる。また、被膜形成物質としてはセルロース、糖類等の炭水化物誘導体として酢酸フタル酸セルロース(CAP)、またアクリル酸系共重合体、二塩基酸モノエステル類等のポリビニル誘導体としてアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。また、上記被膜形成物質をコーティングするに際し、通常使用されるコーティング剤、例えば可塑剤の他、コーティング操作時の薬剤相互の付着防止のための各種添加剤を添加することによって被膜形成剤の性質を改良したり、コーティング操作をより容易ならしめることができる。
【0031】
本発明は、本発明によるリパーゼ阻害物質をLIS換算で約0.01質量%以上含有することを特徴とするコメ胚芽抽出物等に関するものであり、例えば本発明によるリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)のみを上記した種々の用途に配合しなければならないということはなく、単離・精製途上の粗抽出リパーゼ阻害物質(LIS−1)およびリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)等をはじめ、他の中間粗生成物、例えば図1に示した固形油分(F4)等を使用することができる。例えば、図1に示した固形油分(F4)はリパーゼ阻害物質および脂質を含むので、これをそのまま原料にして洗顔剤(石鹸)、洗顔パック等を製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【実施例1】
コメ糠を目の粗さ約2mm2の網を箱に貼り付けた篩を用いてコメ胚芽を採取した。採取したコメ胚芽から500gを上皿天秤で秤量して採取し、これに2リットルの80容量%メタノール水溶液を添加してホモジナイザーによってコメ胚芽を懸濁させて、一夜、5℃にて撹拌抽出した。抽出後、懸濁液を遠心分離(10,000×rpm,20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)に供して、上清成分と沈殿成分に分離した。この上清成分のみを採取して元の上清成分の1/10容量になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、一夜、5℃にて冷蔵保存して上清成分中の油分を凝固させた。油分を凝固させた上清成分を遠心分離(3,000×rpm、20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)して液状油分と固形油分に分離した。固形油分を固形油分と同容量の蒸留水(pH9.2)で洗浄してリパーゼ阻害物質を抽出した。抽出されたリパーゼ阻害物質を含有する蒸留水を粗抽出リパーゼ阻害物質として順次以下のごとく精製を進めた。上記の粗抽出リパーゼ阻害物質と同容量の100%ヘキサンにより分液ロートを用いて粗抽出リパーゼ阻害物質中に存在する油分を除去した。油分を除去した粗抽出リパーゼ阻害物質を1/10容積になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮した後、Sephacryl S−100カラム(ファーマシア(Pharmacia)社製密閉型カラム(半径1cm×長さ70cm))を使用したクロマトグラフィーに供することによって分画した。溶出液には蒸留水(pH9.2)を使用(減圧濃縮後の粗抽出リパーゼ阻害物質と同容量の溶出用蒸留水を使用)し、流速は0.5ml/分でフラクションチューブにはそれぞれ2mlづつ分画した。Sephacryl S−100カラムを使用したクロマトグラフィーによって得られた活性画分を元の容量の1/10容積になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、減圧濃縮した活性画分をさらに再度上記と同様の要領にてSephacryl S−100カラムを使用したクロマトグラフィーに供した。次いで得られた活性画分を元の容積の1/10容量になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、減圧濃縮した活性画分をSuperdex peptideカラム(ファーマシア(Pharmacia)社製プレパックカラム(半径0.5cm×長さ30cm))を使用したクロマトグラフィーに供した。溶出液には蒸留水(pH9.2)を使用(減圧濃縮後の活性画分と同容量の溶出用蒸留水を使用)し、流速は0.5ml/分でフラクションチューブにはそれぞれ0.5mlづつ分画した。同様操作を繰り返して、活性画分を再度Superdex peptideカラムを使用したクロマトグラフィーに供した。得られた活性画分を1/10容量になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、この減圧濃縮した活性画分を凍結乾燥することによって100mgの淡黄色、針状晶の精製リパーゼ阻害物質を得た。
【0034】
【発明の効果】
コメ胚芽に存在し、コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コメ胚芽中のリパーゼ阻害物質の抽出手順。
【図2】コメ胚芽抽出物中のリパーゼ阻害物質による活性阻害。
【図3】コメ胚芽抽出物中のリパーゼ阻害物質の濃度と活性阻害率との関係。
【図4】Sephacryl S−100カラムクロマトグラフィーの結果(1回目)
【図5】Superdex peptide カラムクロマトグラフィーの結果(1回目)
【図6】Superdex peptide カラムクロマトグラフィーの結果(2回目)
【図7】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の13C NMRスぺクトル
【図8】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の1H NMRスぺクトル
【図9】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)のマススぺクトル
【図10】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)とp−クマリン酸との紫外線吸収曲線の比較
【図11】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)のリパーゼ阻害型式
を示すLineweaver−Burkプロット
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品に有用なリパーゼ阻害物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、我が国では糖尿病、高脂血症などの成人病患者が増加の一途を辿っている。成人病は、交通機関の発達による慢性的な運動不足や現代の食生活などに起因すると考えられている。すなわち、高エネルギーの食品を多量に摂取する一方で、運動量が少ないことが肥満を招き、中性脂肪やコレステロールが生体内に多く蓄積して、成人病を発症することになる(非特許文献1)。
成人病を予防・治癒する一手段として、消化酵素の活性を阻害する物質を摂取して食品の分解を抑制することが考えられ、これまで数多くの研究者によって研究がなされている。例えば、植物由来の α−アミラーゼ活性阻害物質はデンプン質の消化器官での分解を阻害し、糖質の代謝を抑制することによって、肥満の防止に有効であると報告されている。α−アミラーゼの活性阻害物質としては、モリブデン、水銀などの重金属、またはマルトース、ノジリマイシンなどの基質類似物が従来から知られていたが、近年植物起源のタンパク性活性阻害物質、微生物起源のタンパク性活性阻害物質および含窒素オリゴ糖類似物質等が相次いで見出された。タンパク性活性阻害物質は、主に動物起源の α−アミラーゼ を阻害するが、この際にα−アミラーゼ活性阻害物質複合体が形成されることがゲル濾過などの手法によって確認されている。活性阻害物質であるタンパク質がα−アミラーゼの活性中心を覆ってしまうと考えられ、阻害型式は非拮抗的である。含窒素オリゴ糖類似物質である活性阻害物質は、基質類似物として非拮抗的に作用するが、特に微生物起源の α−アミラーゼを強く阻害する(非特許文献2)。
これらの活性阻害物質を用いて糖の代謝を阻害することで、生体内でのエネルギーの蓄積を抑制して糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が予防可能であるとされている。しかし、これら α−アミラーゼ活性阻害物質は食物中の脂質の消化吸収については無力であり、脂質についても消化吸収活性阻害物質の出現が求められている。
ヒト生体内では、脂質はまずリパーゼによって、トリグリセリドがグリセリンと脂肪酸に加水分解される。生成するグリセリンはグリセロリン酸を経て炭水化物に変換されるか、またはグリセロリン酸を経てエネルギーへと変換される。一方、脂肪酸は一連の段階的な反応によって分解される。それらの反応は酸化的で、脂肪酸を炭素2個(C2)からなる化合物に切り離し、アセチル−CoAを生ずる。このようなヒト生体内の脂質の代謝を考慮すると、リパーゼの活性を阻害することによりトリグリセリドから脂肪酸とグリセリンの生成を阻害し、以って脂質の消化吸収を抑制し、肥満、これと密接に関連する糖尿病、高脂血症等を予防することが可能であると考えられる。こうした生化学的な考察から、膵臓リパーゼを阻害する物質についても積極的に研究がなされている。すなわち、膵臓リパーゼを阻害するタンパク質については森らが1973年に大豆中に見い出し単離した。
さらに、ガルゴウリ(Gargouri)(非特許文献3、4)、里内ら(非特許文献5,6,7)がその作用について報告している。1974 年、里内らは大豆種子中にタンパク性のリパーゼ阻害物質(SPI)の存在を明らかにし、SPI がブタ膵臓のリパーゼのみでなく、微生物(アスペルギルスニガー「Aspergillus niger」、リドプスデレマー「Rhizopus delemar」 のリパーゼの作用も阻害することを確認した(非特許文献5,6,7)。リパーゼの活性阻害物質としては、血清アルブミン、β−ラクトグロブリン、ある種の大豆蛋白、小麦胚芽由来の塩基性蛋白質(特許文献1)がリパーゼの働きを阻害して、乳化された脂質が分解されるのを抑制または阻害するのに有効であることが提案されている。また、脱脂コメ胚芽からリパーゼ反応を阻害するタンパク質を抽出し、これが抗肥満食品として有効であることが提案されている(特許文献2)。コメ胚芽中のリパーゼ阻害物質がヒトの肥満の防止と高脂血症の予防・治療に有効であることが報告されているが、リパーゼ阻害物質がタンパク質であると、摂取してから腸管に達するまでに、リパーゼ阻害物質がタンパク質分解酵素によって分解される可能性がある。したがって、膵臓リパーゼを効率よく阻害するには、非タンパク性の活性阻害物質が有効であると考えられるが、非タンパク性のリパーゼ阻害物質は未だに見出されていない。コメ糠(胚芽を含む)は、約20%の脂質を含んでいるが、その脂質は発芽時には分解されてエネルギーへと変換される(非特許文献8)。コメ糠には脂質を分解するためのリパーゼが存在し、発芽まで脂質を貯蔵しておくには、リパーゼの作用を阻害する必要があり、したがってコメ糠にはリパーゼの作用を阻害する物質が存在すると考えられる。
【0003】
【非特許文献1】井上 修二外:肥満症テキスト(正しい知識とダイエットクリニック)、109〜122頁(1994)
【非特許文献2】大西 正建外:アミラーゼ(生物工学へのアプローチ)、145頁(1986)
【非特許文献3】ガルゴウリ外:J.Lipid Res.,24, 1336〜1342頁(1983)
【非特許文献4】ガルゴウリ外:J.Lipid Res.,25、1214〜1221頁(1985)
【非特許文献5】岩井 美枝子:リパーゼ(その基礎と応用)、182〜185頁(1991)
【非特許文献6】里内外:Agri.Biol.Chem.,38, 97〜101頁(1974)
【非特許文献7】里内外:Agri.Biol.Chem.,40, 889〜897頁(1976)
【非特許文献8】倉澤 文夫:米とその加工、34頁(1981)
【特許文献1】特開平4−300839号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平7−25779号公報(請求項3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コメ胚芽に存在し、コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これまでに存する上記した問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、非タンパク性のリパーゼ阻害物質をコメ胚芽から抽出物として取得し、該リパーゼ阻害物質の製造方法を確立し、ついには単離することに成功すると共に、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品を提供する。本発明者らはさらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)コメ胚芽に存在し、非タンパク性のリパーゼ阻害物質、
(2)コメ胚芽から抽出することを特徴とする(1)記載のリパーゼ阻害物質の製造方法、
(3)(1)記載のリパーゼ阻害物質を含有することを特徴とする化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品、
(4)(1)記載のリパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の非タンパク性のリパーゼ阻害物質は、コメ胚芽を抽出することにより得られる。コメ胚芽を水または有機溶媒で抽出し、抽出液を冷却して得られる固形油分を水で抽出することにより粗精製物を得る。この粗精製物をさらに精製することにより精製品が得られる。
さらに詳しくは、以下本発明の好ましい実施の形態を説明する。
コメ糠を目の粗さ約2mm2の網を箱に貼り付けた篩を用いてコメ胚芽を採取する。採取したコメ胚芽を脱脂してもよいし、脱脂しなくてもよい。コメ糠には通常約2〜3質量%の胚芽が含有されている。採取したコメ胚芽をコメ胚芽の重量の約4〜10倍量、好ましくは約4〜7倍量に相当する溶媒でホモジナイザーによって約一夜、約5〜10℃、好ましくは約5〜6℃にて撹拌抽出した後、この胚芽を含む抽出液を遠心分離(例えば回転数約10,000rpm,約20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)することによって上清成分(F1と称す)と沈殿成分(F2と称す)とに分離する。
コメ胚芽を抽出する溶媒として、例えば水、水溶性アルコール類(メタノール、エタノールおよびブタノール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン等)、炭化水素(ノルマルヘキサン等)およびこれらの混合物等を挙げることができる。コメ胚芽を抽出する溶媒として、メタノールが好ましい。分離した後、上清成分(F1)のみを採取しエバポレーターで減圧濃縮を行う。減圧濃縮を行った濃縮液を約一夜、約5〜10℃、好ましくは約5〜6℃にて冷蔵保存した後、遠心分離(例えば回転数約10,000rpm,約20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)を行って液状油分(F3と称す)および固形油分(F4と称す)とに分離する。液状油分(F3)を洗浄した蒸留水(pH約9.2)にはリパーゼ阻害活性が確認されないが、固形油分(F4)を洗浄した蒸留水(pH約9.2)にはリパーゼ阻害活性が確認される。固形油分(F4)を蒸留水(pH約9.2)で洗浄し、この洗液を分液ロートを用いて、例えばヘキサンで洗浄し、ヘキサン層を除去する。これによって蒸留水洗液中の油分が除かれる。この油分を除去した蒸留水洗液を粗抽出リパーゼ阻害物質(LIS−1と称す)として、以下このLIS−1の精製を行う。
【0008】
粗抽出リパーゼ阻害物質(LIS−1)を遠心分離(例えば回転数約3,000rpm,約20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)して上清成分(F5と称す)と沈殿成分(F6と称す)とに分離する。エバポレーターで濃縮した上清成分(F5)を、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィー(2回実施)によって分画し、リパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2と称す)を得る。この場合、溶出液には例えば蒸留水(pH約 9.2)を使用し流速は、例えば約0.5 ml/ min.で、フラクションチューブにはそれぞれ溶出液約2 mlずつを分画する(カラム:例えばファーマシア(Pharmacia)製密閉型カラム(半径1cm × 長さ70cm)を使用)。上清成分(F5)を、例えば Sephacryl S−100 カラムクロマトグラフィーによって分画して得たリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)の精製をさらに進めるためにリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)を、例えばSuperdex peptideカラムクロマトグラフィー(カラム:例えばファーマシア(Pharmacia)製プレパックカラム(半径0.5cm ×長さ30cm)を使用)に供する(2回)。この場合、溶出液には、例えば蒸留水(pH約9.2)を用い流速は、例えば約0.5ml/min.で、フラクションチューブにはそれぞれ溶出液約0.5mlづつを分画する。このリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)を、例えばSuperdex peptide カラムクロマトグラフィーに供した結果、リパーゼ阻害物質の精製物質(LISと称す)を得る。このリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)は通常、例えば淡黄色の針状結晶である。コメ糠の胚芽からリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)を抽出する手順を図1に示した。なお、本発明のリパーゼ阻害物質は精製品であってもよいし、粗精製品であってもよい。本発明のリパーゼ阻害物質は、LISの含有量が、たとえば約10質量%程度であっても、本発明の目的を達成することができる。したがって、本発明のリパーゼ阻害物質におけるLISの含有量は通常約10質量%以上、好ましくは、約30質量%以上、より好ましくは約50質量%以上、もっとも好ましくは約70質量%以上である。
【0009】
図1の手順にしたがって得た本発明によるリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)を始め種々の精製途上のリパーゼ阻害物質を用いて、リパーゼ阻害物質のリパーゼに対する活性阻害性およびその他特性を検討した。
【0010】
(リパーゼに対する活性阻害性の測定法)
ブタ膵臓の活性阻害を指標にして、リパーゼ阻害物質のリパーゼに対する活性阻害性を以下の方法によって測定する。
リパーゼに対する活性阻害性の測定には、例えばリパーゼカラー(ロッシュ・ダイアグノスティック株式会社製、タイプ:リキテック)キットを使用する。ここで、緩衝液をR1、基質液をR2と称する。
リパーゼ溶液はブタ膵臓リパーゼ(シグマ社製)10mgを、0.5質量%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)(BSAと称す)を含むトリス−塩酸緩衝液(Tris−HCl buffer)(シグマ社製)(pH約8.0)に溶解させた標品を用いる。試験の反応液の組成は、R1が50ml、リパーゼ溶液が2mlおよびリパーゼ阻害物質(本発明の精製リパーゼ阻害物質をトリス−塩酸緩衝液に溶解したもの)が1ml(リパーゼ阻害活性が1ユニットに相当)とから成り(但し、対照の反応液の組成はリパーゼ阻害物質を蒸留水で置き換えたものを用いる)、試験および対照の反応液を37℃で5分間反応させた後、これらにR2を各20mlづつ加えてさらに37℃で30分間反応させる。反応後、波長570nmでのこれらの反応液の吸光度を測定する。
【0011】
(リパーゼに対する活性阻害率の計算法)
リパーゼ阻害率を下式にて算出する。
リパーゼ阻害率=(1−b/a)×100(%)
但し、対照の吸光度をa、試験サンプルの吸光度をbとする。また、25%の活性阻害率を示すリパーゼ阻害物質の活性を1U(1ユニット)とする。
【0012】
上記したように採取したコメ胚芽を、例えばメタノールで抽出し、メタノール抽出後に行った遠心分離によって得た図1に示す上清成分(F1)のリパーゼに対する活性阻害性を上記の方法にしたがって測定し、算出したリパーゼ阻害率が約25%の数値を示した(図2)。また図1に示す上清成分(F1)を、例えば約35℃で減圧濃縮した後も、この濃縮したものを蒸留水(pH約9.2)にて洗浄抽出し、次いでヘキサンにて洗浄して油分を除去した後も、リパーゼ阻害性が失われることはなく、リパーゼ阻害率の変化も見られなかった。
これらの結果より、コメ胚芽からのリパーゼ阻害物質はその濃度に関係なく約25%程度のリパーゼ阻害率を示すことが確認された(図3)。
【0013】
上清成分(F5)を濃縮後、これを、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィーに供した結果(1回目)を図4に示した。図4から上清成分(F5)が多量のタンパク性の物質を含むことが分かった。また、リパーゼ阻害性を有するフラクションの数が数個存在し、このリパーゼ阻害性を有するフラクションの溶出位置が波長約325nmの吸光度の高い位置と対応しており、リパーゼ阻害性を有するフラクションの溶出位置からこのリパーゼ阻害物質が低分子物質であることが推定される。一度、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィーを行った上清成分(F5)に対して、再度、例えばSephacryl S−100カラムクロマトグラフィーを行うことによって余分なタンパク性物質をさらに除去することが可能である。上清成分(F5)からタンパク性物質を大幅に除去したものをリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)とする。
【0014】
リパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)をより純粋に精製するために、リパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)に対して Superdex peptide カラムクロマトグラフィーを行った。Superdex peptideカラムクロマトグラフィーを行うことによってリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)中に存在する余分なタンパク性の物質をさらに除去することが可能である(図5)。さらに、Superdex peptide カラムクロマトグラフィーのすべてのフラクションの内、リパーゼ阻害性の認められたフラクションを回収し、回収したフラクションを再度Superdex peptide カラムクロマトグラフィーに供することにより、タンパク性の物質の存在がほとんど認められなくなり、リパーゼ阻害性の認められたフラクションが単一のピークを示す(図6)。また ボイド容積(Void volume)およびマーカー(グリシル−L−チロシン、分子量:約238)による確認結果からリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の分子量が約450Daであることが推定される(図6)。
【0015】
すなわち、以上の内容を要約すると次のようになる。
(1)コメ胚芽からリパーゼ阻害性を有する物質を見出すことができた。
(2)コメ胚芽からリパーゼ阻害性を有する物質を単離、精製する方法を確立した。
(3)コメ胚芽中のリパーゼ阻害物質の分子量が約450Daであることが分かった。
【0016】
リパーゼ阻害物質の構造を推定するために本発明によるリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)を用いて物理および化学的特性を検討した。
(1)薄層クロマトグラフィ(TLC)上での挙動と試薬への反応
リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の純度と物理および化学的特性を確認する目的で、3種の展開溶媒を用いて、例えばシリカゲルTLC を行った(メルック(Merck)社製シリカゲルシート60F254)を使用する)。それぞれの展開溶媒の組成を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
その結果、
LISのTLC上での挙動(Rf値)および試薬との反応は表2および表3に示す。ここでRf値とは原点からの各物質のスポットの中心までの距離を原点からの溶剤の浸透先端までの距離で除した値をいう。
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
上記の表3からLISが硝酸銀およびアニスアルデヒド−硫酸に対して陽性反応であるために、LISが糖を含有する物質であると考えられる。
(2)LISのNMRスペクトル
LISの13CNMRスペクトルおよび1H NMRスペクトルの測定「JEOL社製、タイプ:EX−270(H:270MHz,C:68.5MHz)、13C NMRおよび1H NMRはCDCl3溶液を使用)」の結果を各々図7および図8に示した。図7および図8からLISが23個の炭素原子から構成され、26〜27の水素分子を有する化合物であると考えられる。
(3)LISのマススペクトル(島津製作所製ガスクロマトグラフィー質量分析計、タイプ:GCMS−QP2010を使用)
LIS のマススペクトルの測定結果を図9に示した。図9からLISの分子量が約450Daであると推定される。
(4)LIS の紫外線吸収曲線
LIS の紫外線吸収曲線の測定結果を図10に示した。図10の結果から LISは波長約320〜290nm付近の紫外線を強く吸収する。LISの紫外線吸収曲線をp−クマリン酸の紫外線吸収曲線と比較したところ非常に類似していることから、LISはp−クマリン酸のような複素環を有する化合物であると考えられる。
【0022】
すなわち、以上の内容を要約すると次のようになる。
(1)LISがTLC上で硝酸銀およびアニサアルデヒド−硫酸に対して陽性反応を示すため、LISが糖を含む物質であると考えられる。
(2)LISの13C NMRスペクトルおよび1H NMRスペクトルの測定結果からLISが23個の炭素原子から構成され、26〜27の水素分子を有する化合物であると考えられる。
(3)LISのマススペクトルの測定結果からLISの分子量が約450Daであることが推定される。
(4)LISの紫外線吸収曲線がp−クマリン酸の紫外線吸収曲線と類似していることから、LISが複素環を有する化合物であると考えられる。
【0023】
リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の生化学的特性を検討するために、LISを用いてリパーゼ阻害物質の阻害型式について確認した。
LISの阻害型式:
LISの阻害型式を確認するために、基質量を約0.11mM、約0.15 mMおよび約1.78mMと変化させて、各々の場合のリパーゼ阻害性を測定した。リパーゼ阻害性の測定後、LISの阻害型式を示すラインウイーバーバーク(Lineweaver−Burk)のプロットを作成し、これを図11に示した。図11に基づいて、リパーゼ阻害物質を含有する場合と含有しない場合とを比較すると、Km値、Vmax値共に変化したのでLISが不拮抗的にリパーゼ活性を阻害することが分かった。このことから脂質が多量に存在するところにおいてもLISが効率よくリパーゼを阻害すると考えられる。また、酵素量を減少することによって阻害率が上昇した。これはピンポンBi、Bi機構の過程途上をLISが阻害するためであると考えられる。
【0024】
すなわち、以上の内容を要約すると次のようになる。
LISの阻害型式は不拮抗的であり、リパーゼ阻害率は脂質の濃度に関係なく、酵素量の変化によって阻害率も変化した。
【0025】
本発明によるリパーゼ阻害物質はリパーゼ阻害性と紫外線防護活性を有するので、例えば皮膚の美白効果とニキビの予防効果を合せ持つ化粧品等の用途に応用され得る。人体における細菌性リパーゼには、皮膚表層に常在する微生物(プロピオニバクテリウム アクネス:Propionibacterium acnes、ピティロスポラムオバール:Pityrosporum ovale、マイクロコッカス属:Micrococcus sp.等)の産生するリパーゼが知られており、これらのリパーゼが、人体の皮脂中に含まれるトリグリセライドを分解し遊離脂肪酸を産生する。この遊離脂肪酸は、人体の皮膚に対して刺激性の炎症反応を引き起こし、ニキビ、皮膚炎およびフケ等の要因となると考えられている。ヒトの皮膚、特に顔面の皮膚は分泌された脂質によって様々な傷害を受けるとされている。ニキビは典型的な例で、皮膚に発生した吹き出物がニキビ原因菌プロピオニバクテリウム アクネスによって炎症を起こしたものである。プロピオニバクテリウム アクネスの菌数と産生する遊離脂肪酸には相関関係があり、遊離脂肪酸が人体の皮膚の毛包壁に対して、刺激性の炎症反応とそれに伴う過角化、コメドの形成を引き起こすと考えられている。アクネ菌はリパーゼを生産し、その作用で皮膚から分泌される脂質を分解して自らのエネルギー源として増殖する。そこで、脂質を分解する初発の反応であるリパーゼの作用を阻害することによってニキビの発生を阻止できると考えられる。ニキビの阻止あるいは予防を目的にリパーゼ阻害物質を含む、例えば洗顔剤(石鹸)および洗顔パック等を製造することができる。また、ハーブエキス等と混合したパック等を製造することもできる。古来から糠袋と称されているコメ糠を原料にした美肌剤等があるが、このことは古人が早くからリパーゼ阻害物質の存在とヒトの皮膚への効果を実感として認識していたことを立証しているのかも知れない。地球上に住む生物は、太陽からのエネルギー(太陽光線)を固定することによって生命を維持している。太陽からは様々な波長の光線が照射されているが、照射される紫外線のうち約 290nm 以下の波長は大気中のオゾン層で殆ど吸収され、地上には波長 約290〜400nm の紫外線が到達する。その紫外線エネルギーは、人体に対して大きな障害になる。すなわち、UVB(波長約290〜320nm) は皮膚に急性の炎症(紅斑)と火傷(サンバーン)を起こし、最終的には皮膚を黒化する。UVBは人体の免疫系にまで影響を及ぼして、人体が比較的少ない紫外線に暴露されても人体に局所的免疫抑制が生じ、大量の紫外線に暴露された場合には、人体に感染症や皮膚癌が誘発されると言われている。一方、UVA(波長約320〜400nm)は人体の基底細胞層のメラノサイトを刺激してメラニンを形成し一時的な黒化現象を生じさせる。また、人体の皮膚によるUVA浸透性の方がUVB浸透性に比べて高いので、UVAが人体の皮膚の真皮にまで到達して皮膚障害を起こさせ、このことが皮膚の老化を早めるとされている。したがって、紫外線を遮断することによって人体の肌を保護することができる。現在、紫外線を遮断するために有機紫外線吸収剤と無機粉体が使用されている。有機紫外線吸収剤は吸収した光エネルギーを他のエネルギーに効率的に転換する物質で、麹酸やアルブチン等が多用されている。一方、無機粉体は、主として紫外線の散乱・遮断等物理的機構によって人体の皮膚を保護する。これら有機紫外線吸収剤および無機粉体に比してリパーゼ阻害物質は波長が約290〜400nmの広範囲の紫外線を吸収するので紫外線遮断剤として、化粧品等の原料として有効に使用され得る。本発明によるリパーゼ阻害物質を原料とした化粧品としては、上記したものに特に限定されるものではなく、例えばハンドクリーム、ヘアクリームといった各種クリーム類、乳液、シャンプー、リンス、ヘアトリートメントといったヘアケアー類、ボディーシャンプー、洗顔石鹸等が挙げられる。本発明でリパーゼ阻害物質を化粧品に配合する場合のリパーゼ阻害物質の添加量はLIS換算で約0.001〜10質量%、特にLIS換算で約0.1〜5質量%配合することが好ましい。本発明の化粧品は常法に従って製造することができる。
【0026】
化粧品以外の用途として、本発明によるリパーゼ阻害物質を配合した肥満防止食品を挙げることができる。リパーゼの活性を阻害することはエネルギー代謝を抑制することに繋がるので、本発明のリパーゼ阻害物質を肥満防止を目的とした食品、健康食品に配合することができ、食品添加物の成分とすることもできる。
リパーゼ阻害物質を食品中に配合する場合は、食品に対してLIS換算で約0.001〜20質量%、特にLIS換算で約0.01〜10質量%配合することが好ましいが、食品の種類によって、上記の範囲よりも少なく、または多く配合することができる。例えば、錠菓やビスケット等の補助食用の食品にリパーゼ阻害物質を配合するときは、LIS換算で約15質量%以上配合させることができる。食品に応じて、その製造過程で本発明のリパーゼ阻害物質を適宜配合することができる。本発明のリパーゼ阻害物質を配合させる食品の種類は特に限定されるものではなく、例えばパン、麺、ビスケット、ホットケーキ、錠菓等の穀粉や澱粉を含有する食品の他、ドレッシング、ドリンク等を挙げることができる。
【0027】
上記した肥満防止食品はヒトを対象としたものであるが、本発明のリパーゼ阻害物質をペット用食品に添加して、ペットの肥満防止食品としても用いることができる。本発明においてペットの肥満防止食品とは、犬、猫、ハムスター、リス等の哺乳類の愛玩動物用の食べ物のことを言う。本発明によるリパーゼ阻害物質をペットの肥満防止食品に配合する割合については、ペットの種類、ペットの肥満防止食品の性質等、種々の因子によりその割合を変化させることができる。ペットの主食用肥満防止食品にリパーゼ阻害物質を配合する場合は、LIS換算で約0.01〜20質量%配合することが好ましく、特にLIS換算で約0.5〜10質量%が好ましい。配合率がLIS換算で約0.01質量%以下である場合、効果があまり期待できず、LIS換算で約20質量%を越えると原材料費が高く、コストの面で望ましくない。また、本発明によるリパーゼ阻害物質をビスケットや合成ジャーキー等のスナック状のペットの肥満防止食品に配合する場合はLIS換算で約15〜40質量%程度、さらにタブレットや顆粒状の補助食用ペットの肥満防止食品に配合する場合にはLIS換算で約40質量%以上配合させることができる。スナック状のペットの肥満防止食品や補助食用のペットの肥満防止食品に配合する場合には、併せてペットの嗜好性物質を添加またはコーティングするのが好ましい。スナック状ペットの肥満防止食品または補助食用のペットの肥満防止食品の給餌量はペットの体重、肥満度に合わせて決定し通常のペット用食品と併用して給餌すればよい。本発明のペットの肥満防止食品はその形態に応じて常法に従って製造することができる
【0028】
さらに上記以外に、本発明のリパーゼ阻害物質を医薬品に配合して、肥満の予防・治療のための医薬品としても用いることができる。肥満の予防・治療に加えて、本発明のリパーゼ阻害物質を配合した医薬品は、糖尿病、高血圧、高脂血症およびインシュリン抵抗性症候群のような、太り過ぎと関連して頻繁に起こる病気の予防・治療のためにも用いることができる。 例えば本発明のリパーゼ阻害物質を適当な助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口または非経口投与が可能な医薬品にすることができる。さらに、本発明のリパーゼ阻害物質は、他の有効成分を含んでいてもよい。本発明の医薬品は、経口及び非経口投与のいずれも使用可能であり、経口投与する場合は、軟・硬カプセル剤等または錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等として投与される。非経口投与する場合として注射剤、点滴剤および固体状または懸濁粘稠液剤等の投与、持続的な粘膜吸収が維持できるように坐薬のような剤型等の投与、局所組織内投与、例えば皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射等による投与および局所への塗布および噴霧等の外用的投与等が挙げられる。投与量は、投与方法と病気の悪性度、患者の年齢、病状や一般状態、病気の進行度等によって変化し得るが、大人では通常、1日当たりリパーゼ阻害物質として通常LIS換算で約0.5〜5,000mg、小人では通常LIS換算で約0.5〜3,000mgが適当である。本発明の医薬品のリパーゼ阻害物質の割合は、剤型によって変更され得るが、通常経口投与される場合、LIS換算で約0.3 〜15.0質量%が適当であり、非経口投与される場合は、LIS換算で約0.01〜10質量%が適当である。また、本発明の医薬品の製剤化に当たっては、常法にしたがいリパーゼ阻害物質の水溶液、油性製剤等を皮下あるいは静脈注射用製剤等として用いることができる他、リパーゼ阻害物質をカプセル剤、錠剤および細粒剤等の剤型に製剤化して経口用に供することができる。
【0029】
また、有効成分に長時間の保存に耐えるさらなる安定性及び耐酸性を付与して薬効を完全に持続させるために、更に医薬的に許容し得る被膜を施して製剤化すれば、すぐれた安定性を有する医薬品とすることができる。本発明の医薬品の製剤化に用いられる界面活性剤、賦形剤、滑沢剤、佐剤及び医薬的に許容し得る被膜形成物質等を挙げれば、次の通りである。本発明の医薬品の崩壊、溶出を良好ならしめるために、界面活性剤、例えばアルコール類、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類等の1種又は2種以上を添加することができる。また、賦形剤として、例えば、庶糖、乳糖、デンプン、結晶セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0030】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油等を1種または2種以上添加することができ、また矯味剤及び矯臭剤として、食塩、サッカリン、糖、マンニット、オレンジ油、カンゾウエキス、クエン酸、ブドウ糖、メントール、ユーカリ油、リンゴ酸等の甘味剤、香料、着色剤、保存料等を含有させてもよい。懸濁剤および湿潤剤等のごとき佐剤としては、例えばココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、乳酸カルシウム、ベニバナ油、大豆リン脂質等を含有させることができる。また、被膜形成物質としてはセルロース、糖類等の炭水化物誘導体として酢酸フタル酸セルロース(CAP)、またアクリル酸系共重合体、二塩基酸モノエステル類等のポリビニル誘導体としてアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。また、上記被膜形成物質をコーティングするに際し、通常使用されるコーティング剤、例えば可塑剤の他、コーティング操作時の薬剤相互の付着防止のための各種添加剤を添加することによって被膜形成剤の性質を改良したり、コーティング操作をより容易ならしめることができる。
【0031】
本発明は、本発明によるリパーゼ阻害物質をLIS換算で約0.01質量%以上含有することを特徴とするコメ胚芽抽出物等に関するものであり、例えば本発明によるリパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)のみを上記した種々の用途に配合しなければならないということはなく、単離・精製途上の粗抽出リパーゼ阻害物質(LIS−1)およびリパーゼ阻害物質の粗精製物質(LIS−2)等をはじめ、他の中間粗生成物、例えば図1に示した固形油分(F4)等を使用することができる。例えば、図1に示した固形油分(F4)はリパーゼ阻害物質および脂質を含むので、これをそのまま原料にして洗顔剤(石鹸)、洗顔パック等を製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【実施例1】
コメ糠を目の粗さ約2mm2の網を箱に貼り付けた篩を用いてコメ胚芽を採取した。採取したコメ胚芽から500gを上皿天秤で秤量して採取し、これに2リットルの80容量%メタノール水溶液を添加してホモジナイザーによってコメ胚芽を懸濁させて、一夜、5℃にて撹拌抽出した。抽出後、懸濁液を遠心分離(10,000×rpm,20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)に供して、上清成分と沈殿成分に分離した。この上清成分のみを採取して元の上清成分の1/10容量になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、一夜、5℃にて冷蔵保存して上清成分中の油分を凝固させた。油分を凝固させた上清成分を遠心分離(3,000×rpm、20分間)(遠心分離機:日製産業株式会社製、タイプ:HITACHI−05PR−22)して液状油分と固形油分に分離した。固形油分を固形油分と同容量の蒸留水(pH9.2)で洗浄してリパーゼ阻害物質を抽出した。抽出されたリパーゼ阻害物質を含有する蒸留水を粗抽出リパーゼ阻害物質として順次以下のごとく精製を進めた。上記の粗抽出リパーゼ阻害物質と同容量の100%ヘキサンにより分液ロートを用いて粗抽出リパーゼ阻害物質中に存在する油分を除去した。油分を除去した粗抽出リパーゼ阻害物質を1/10容積になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮した後、Sephacryl S−100カラム(ファーマシア(Pharmacia)社製密閉型カラム(半径1cm×長さ70cm))を使用したクロマトグラフィーに供することによって分画した。溶出液には蒸留水(pH9.2)を使用(減圧濃縮後の粗抽出リパーゼ阻害物質と同容量の溶出用蒸留水を使用)し、流速は0.5ml/分でフラクションチューブにはそれぞれ2mlづつ分画した。Sephacryl S−100カラムを使用したクロマトグラフィーによって得られた活性画分を元の容量の1/10容積になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、減圧濃縮した活性画分をさらに再度上記と同様の要領にてSephacryl S−100カラムを使用したクロマトグラフィーに供した。次いで得られた活性画分を元の容積の1/10容量になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、減圧濃縮した活性画分をSuperdex peptideカラム(ファーマシア(Pharmacia)社製プレパックカラム(半径0.5cm×長さ30cm))を使用したクロマトグラフィーに供した。溶出液には蒸留水(pH9.2)を使用(減圧濃縮後の活性画分と同容量の溶出用蒸留水を使用)し、流速は0.5ml/分でフラクションチューブにはそれぞれ0.5mlづつ分画した。同様操作を繰り返して、活性画分を再度Superdex peptideカラムを使用したクロマトグラフィーに供した。得られた活性画分を1/10容量になるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、この減圧濃縮した活性画分を凍結乾燥することによって100mgの淡黄色、針状晶の精製リパーゼ阻害物質を得た。
【0034】
【発明の効果】
コメ胚芽に存在し、コメ胚芽から抽出した非タンパク性のリパーゼ阻害物質、該リパーゼ阻害物質の製造方法、該リパーゼ阻害物質を含有する化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品および該リパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コメ胚芽中のリパーゼ阻害物質の抽出手順。
【図2】コメ胚芽抽出物中のリパーゼ阻害物質による活性阻害。
【図3】コメ胚芽抽出物中のリパーゼ阻害物質の濃度と活性阻害率との関係。
【図4】Sephacryl S−100カラムクロマトグラフィーの結果(1回目)
【図5】Superdex peptide カラムクロマトグラフィーの結果(1回目)
【図6】Superdex peptide カラムクロマトグラフィーの結果(2回目)
【図7】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の13C NMRスぺクトル
【図8】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)の1H NMRスぺクトル
【図9】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)のマススぺクトル
【図10】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)とp−クマリン酸との紫外線吸収曲線の比較
【図11】リパーゼ阻害物質の精製物質(LIS)のリパーゼ阻害型式
を示すLineweaver−Burkプロット
Claims (4)
- コメ胚芽に存在し、非タンパク性のリパーゼ阻害物質。
- コメ胚芽から抽出することを特徴とする請求項1記載のリパーゼ阻害物質の製造方法。
- 請求項1記載のリパーゼ阻害物質を含有することを特徴とする化粧品または肥満防止食品もしくは医薬品。
- 請求項1記載のリパーゼ阻害物質を0.01質量%以上含むことを特徴とするコメ胚芽抽出物。
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