JP2004276218A - 研削用工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】研削能力、切粉の排出能力を向上して目詰まりの発生を防止し、研削時の放熱性を高めて研削焼けの発生を抑制することが可能な研削用工具を提供する。
【解決手段】研削用工具1において、円筒状台金2の正面外周部2a、側面円周部2b、背面部2cにはそれぞれ砥粒層3が形成されている。この砥粒層3は、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設けて形成されている。砥粒層3においては、砥粒集合体を形成する砥粒は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に保持されている。砥粒集合体は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜角をなして直線状に配列されている。また、砥粒集合体が規則的に重なり合うように配列されている。
【選択図】 図1
【解決手段】研削用工具1において、円筒状台金2の正面外周部2a、側面円周部2b、背面部2cにはそれぞれ砥粒層3が形成されている。この砥粒層3は、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設けて形成されている。砥粒層3においては、砥粒集合体を形成する砥粒は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に保持されている。砥粒集合体は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜角をなして直線状に配列されている。また、砥粒集合体が規則的に重なり合うように配列されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント系建材、窯業系建材等の建材、複合板、樹脂、ゴム、プラスティック、ガラスをはじめ、コンクリート、コンクリート二次製品などの穿孔、研削加工に用いられる研削用工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート、コンクリート二次製品などの穿孔、研削加工に用いられる研削用工具についての技術が、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−193269号公報(段落番号0004〜0014)
【特許文献2】
特許第3020434号公報(段落番号0004〜0010)
【特許文献3】
特開2002−103237号公報(段落番号0014〜0056)
【特許文献4】
特許第3086670号公報(段落番号0012〜0034)
【特許文献5】
特開平9−272022号公報(段落番号0004〜0046)
【特許文献6】
特開2000−61930号公報(段落番号0010〜0036)
【0004】
このうち、特許文献1に記載されたメタルボンド穴あけ工具は、開口した先端部を有する円筒状本体と、円筒状本体と一体的に形成され、回転工具に装着するための装着用ねじ穴を有するシャンク部分と、円筒状本体の先端縁、開口した先端部の内周面及び外周面に、Cu系合金を主成分とするボンド材によって接着された砥粒を含むものである。
【0005】
特許文献2に記載された電着ホイールは、超砥粒が研削面に島状に分散して固着され、ひとつの島に超砥粒が2〜10個集合して固着され、島部分の全面積が超砥粒を固着した研削面の全面積の0.02〜0.5倍であることを特徴としている。
【0006】
特許文献3に記載された電着工具は、超砥粒が作用面に島状に固着されて島状の超砥粒層を形成し、一条の島の幅が1〜5mmであり、島状の超砥粒層の全面積が作用面の全面積の2〜50%であることを特徴としている。
特許文献4に記載されたコアビットは、円筒状台金の正面外周部の端面および内外面にそれぞれロウ付け法により砥粒を固着し、 前記端面の砥粒配置間隔を砥粒径の1〜2倍にするとともに前記内外面の砥粒配置間隔よりも狭くしたことを特徴とする。
【0007】
特許文献5に記載された超砥粒砥石は、円盤状台金の外周面に、超砥粒を、ロウ材又は硬質粒子を含むロウ材により一層だけ固着させた超砥粒砥石であって、上記超砥粒の平均粒径Lが100μm〜1000μmであり、かつ、各超砥粒は等間隔に配列した列を、砥石の回転方向に対し傾けるとともに、隣接する一方の列の超砥粒が他方の列の隣接する超砥粒の中間にあって、その3個の超砥粒がほぼ正三角形をなすようになっており、上記ロウ材層の最大厚さ1は、上記超砥粒の平均粒径の25〜50%であり、かつチップポケットの体積が超砥粒の体積の2〜20倍であることを特徴とする。
【0008】
特許文献6に記載された耐摩耗性工具は、化学的または物理的に表面処理された鋼基材の刃部分以外の面に有機糊剤を塗布した後、自溶合金粉末を散布し、所定温度に加熱して乾燥するか、基材表面に有機糊剤と自溶合金との混合物を塗布し、所定温度に加熱乾燥し、これを非酸化性雰囲気下において900〜1150℃の温度に加熱処理するか、これら有機糊剤と自溶合金にさらに超硬合金やダイヤモンド粒子のような砥粒を混合した付着層を形成し、加熱乾燥し、徐冷して表面に耐摩耗層を形成する構成のものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載されたメタルボンド穴あけ工具では、砥粒の配列がランダムであるため、研削能力にばらつきを生じる。すなわち、砥粒が少ない部分では砥粒の破砕、脱落が起こり、砥粒が多い部分では、切味が低下し、切粉の排出が悪く目詰まりを生じる。
また、Cu系合金を主成分とするボンド材を用いていることから、砥粒保持力が弱く、砥粒の脱落が早いため、寿命が短い。
【0010】
また、平均砥粒間隔を、砥粒の平均粒径の200%以上としているが、単砥粒のランダム配置では、砥粒間隔にばらつきがあり、研削時に砥粒が受けるダメージが個々の砥粒によって異なる。そのため、砥粒の破砕、脱落が起こりやすく、研削能力にばらつきが生じる。
さらに、円筒状本体の先端部、外周面及び内周面の少なくとも一つには、互いに離間した複数の凹部が形成されているが、チップが分割されていないため、刃先の放熱が悪く、切粉の排出能力に欠ける。
【0011】
特許文献2、特許文献3に記載された電着ホイールでは、砥粒が島状に分散して固定されているが、電着法によって形成しているため、砥粒突出し量を十分に確保することができず、目詰まりを生じやすい。このため、砥粒を集合させても、10個以下のように、少ない数の砥粒しか集合させることができない。
また、砥粒は機械的に保持されているため、砥粒保持力が弱く、砥粒の脱落を生じやすい。そのため、高負荷切断には耐えられず、寿命が低下する。
また、砥粒集合体を配列する際の配列角度や、砥粒集合体同士の重なり量について定めていないため、研削能力が十分ではない。
【0012】
特許文献4に記載されたコアビットでは、単一砥粒を配列しているため、研削時における砥粒1個あたりの負荷が大きく、砥粒の破砕や脱落を生じやすい。
また、側面全体に砥粒が配列されていないため、側面全体が切れ刃として作用しない。
【0013】
特許文献5に記載された超砥粒砥石では、砥粒が単一配列されているため、研削時に作用する砥粒数が少なく、砥粒の破砕、脱落が早く、寿命が低下する。
特許文献6に記載された耐摩耗性工具では、砥粒の配列や砥粒間隔については定めておらず、砥粒の配列がランダムであるため、研削能力にばらつきを生じる。すなわち、砥粒が少ない部分では砥粒の破砕、脱落が起こり、砥粒が多い部分では、切味が低下し、切粉の排出が悪く目詰まりを生じる。
【0014】
このように、上述したいずれの研削用工具においても、砥粒配列が規則的でないことによって、研削能力、切粉の排出能力が低下して目詰まりが発生し、研削時の放熱性が低く、研削焼けが発生する。また、単体の砥粒を配列していることによって、砥粒の摩耗、脱落が早まる。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、研削能力、切粉の排出能力を向上して目詰まりの発生を防止し、研削時の放熱性を高めて研削焼けの発生を抑制することが可能な研削用工具を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明の研削用工具は、円筒状台金の正面外周部および側面円周上に、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設け、研削時の回転方向に対して前記砥粒集合体が規則的に配列され、前記砥粒集合体の配列位置が重なり合うように配列したことを特徴とする。
複数の砥粒を集合させて砥粒集合体を形成し、この砥粒集合体が規則的に重なり合うように配列したことにより、カッティングポイントが増加して切味が向上する。また砥粒1個にかかる負荷が低下することにより、砥粒の破砕や摩滅が低減され、寿命が向上する。
【0016】
本発明の研削用工具においては、前記砥粒集合体を形成する砥粒は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に化学結合によって保持され、前記砥粒集合体は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列され、前記砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることを特徴とする。以下においては、直線状に配列された砥粒集合体が、研削時の回転方向に対してなす角度を、砥粒集合体の配列角度という。
【0017】
砥粒が、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に保持されることによって、砥粒突出し量を高めて切味を向上することができる。
また、砥粒集合体は研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列されることによって、砥粒集合体の隙間が一定となり、研削時に作用する砥粒数を安定化することができ、切味が向上する。
上記の角度が30°未満であると、砥粒集合体の配列ピッチが長くなり、特に、台金側面においては、作用砥粒数の減少が顕著となって寿命の低下を引き起こす。一方、上記の角度が70°を超えると、砥粒集合体の配列ピッチが短くなり、切粉の目詰まりを生じやすくなる。
【0018】
また、砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることによって、研削残りが生じるのを防止することができ、研削面の精度が向上し、チッピングが減少する。
砥粒集合体の重なり量が砥粒の平均粒径の1倍未満であると、研削残りが生じやすく、研削面が粗くなる。一方、砥粒集合体の重なり量が砥粒の平均粒径の3倍を超えると、目詰まりが発生しやすく切味が低下する。
【0019】
本発明の研削用工具においては、前記砥粒集合体は、直径が10mm以下の略円形状をなし、中実状または中空状の集合体であることを特徴とする。
砥粒集合体の形状を略円形状とすることにより、切粉の流れを良好に保つことができ、目詰まりを防止して切味を向上することができる。
また、砥粒集合体の直径を10mm以下とすることによって、切粉の流れを良好に保つことができるため、目詰まりを防止して研削能率を向上することができる。
【0020】
本発明の研削用工具においては、円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成し、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層が2分割され、前記砥粒層の占有面積が前記領域に対して70%以上95%以下であることを特徴とする。
円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成することによって、研削時における熱の発生を抑制するとともに、切粉の排出を向上させて研削能率を向上することができる。
【0021】
また、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層を2分割することによって、砥粒層の長さを短くすることができ、切粉がボンド面に溜まって目詰まりを起こすことを防止することができる。さらに、砥粒層を分割することで、切粉が排出されやすくなり、切味が向上する。
砥粒層の占有面積が領域に対して70%未満であっても、切味は維持するものの、寿命が極端に低下する。一方、砥粒層の占有面積が領域に対して95%を超えると、刃先に目詰まりを生じ、切味が低下する。
【0022】
本発明の研削用工具においては、円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下としたことを特徴とする。
溝の深さが円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍未満であると、溝から切粉が排出されにくい。一方、溝の深さが円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して5倍を超えると、刃先が振動を起こしやすくなって、切味が低下する。
【0023】
本発明の研削用工具においては、台金の背面に、台金外周側から半径方向に、台金外径の20%以下の範囲で砥粒を固着したことを特徴とする。
台金の背面にも砥粒を固着することにより、研削時に被削材と接触することによる台金の摩耗を低減することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る研削用工具を示し、(a)は同正面図、(b)は同側面図、(c)は同背面図である。
図1に示す研削用工具1において、円筒状円筒状台金2の正面外周部2a、側面円周部2b、背面部2cにはそれぞれ砥粒層3が形成されている。この砥粒層3は、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設けて形成されている。
【0025】
円筒状台金2の円筒状台金の正面外周部2aには、複数の溝4が設けられ、この溝4で挟まれた領域において砥粒層3が形成されている。また、円筒状台金2の中心部には、台金を回転させる回転装置を取付けるための取付け穴5が設けられている。円筒状台金2には、円筒状台金2の軽量化のために穴6を複数個設けることもできる。
円筒状台金2の側面円周部2bには、砥粒層3がスパイラル状に形成されている。このスパイラル状の砥粒層が円筒状台金2の先端面となす角であるスパイラル角度は、30°から70°の範囲内となるように形成されている。
また、円筒状台金2の背面部2cには、円筒状台金2の外周側から半径方向に、円筒状台金2の外径の20%以下の範囲で砥粒層3が設けられている。
【0026】
図2(a)、(b)に、砥粒層3の詳細を示す。砥粒層3においては、図2(a)に示すように、砥粒集合体11を形成する砥粒12は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材13によって台金上に保持されている。砥粒集合体11は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜角θをなして直線状に配列されている。また、砥粒集合体11が規則的に重なり合うように配列されている。
図2(a)と、その部分拡大図である図2(b)に示す砥粒集合体の重なり量Dは、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下とするのが好ましい。
【0027】
図3に、砥粒集合体11の形状を示す。砥粒集合体11は、直径が10mm以下の略円形状をなし、(a)のような中実状または(b)のような中空状の集合体となるように形成されている。
図4は、円筒状台金の正面外周部に形成された溝で囲まれた領域における砥粒層を示している。砥粒層3は、隣合う溝4で囲まれた領域において2分割されて形成され、砥粒層3の占有面積が、溝4で囲まれた領域の面積に対して70%以上95%以下となるように形成されていることが好ましい。また、溝4の深さは、砥粒層3の厚さに対して1.5倍以上5倍以下となるように形成されている。
【0028】
【実施例】
以下に、具体的な作製例を示す。
テスト用の研削用工具を作製して、研削性能の試験を行った。
研削用工具の仕様を以下に示す。
試験に用いたテスト品の詳細を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すテストのうち、テスト1は、円筒状台金の正面外周部に占める砥粒層の占有面積率を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。また、テスト2は、砥粒集合体の直径を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。また、テスト3は、砥粒集合体の配列角度を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。また、テスト4は、円筒状台金の正面外周部に設けられた砥材層の厚さに対する溝深さの比を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。
【0031】
試験条件を表2に示す。
【表2】
【0032】
上記の研削性能試験の実施の様子を図5に示す。
図5において、図1は研削用工具であり、この研削用工具1にエアーグラインダー20を取付けて、研削用工具1を回転させつつ被削材21に押し当てて、被削材21の穴あけを行った。
【0033】
上記の試験を行った結果を、図6、図7、表3、表4に示す。
図6は、円筒状台金の正面外周部における砥粒層の占有面積率を変えたことによる、研削性能の変化を示すものである。
図6からわかるように、砥粒層の占有面積率が70%から95%の範囲内であるときには、切味、寿命ともに良好な結果となった。これに対し、砥粒層の占有面積率が60%のものでは、切味は良好であるものの、寿命が著しく低下している。その一方、砥粒層の占有面積率が100%のものでは、切刃に目詰まりを生じ、切味が低下する。
【0034】
図7は、砥粒集合体の直径を変えたときの切味指数の変化を示したものである。図7からわかるように、砥粒集合体の直径が10mmまでの範囲では切味は良好であるが、15mmになると、砥粒集合体に切粉が詰まって切味が低下する。このことから、砥粒集合体の直径は10mm以下とすることが好ましい。
【0035】
図8に、砥粒集合体の配列角度を変えたときの研削性能の変化を示す。
図8からわかるように、砥粒集合体の配列角度が20°のときは、切味は良好であるが、砥粒の脱落が多くなり、寿命が低下する。一方、砥粒集合体の配列角度が80°のときは、砥粒集合体に切粉が詰まりやすくなって切味が低下する。従って、砥粒集合体の配列角度を、30°から70°の範囲内とすることによって、切味と寿命のいずれをも向上させることができる。
【0036】
表3に、円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さと、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さとの関係を示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3からわかるように、円筒状台金の正面外周部砥材層の厚さと溝深さとが同一の場合、切粉の排出が少ない。円筒状台金の正面外周部砥材層の厚さより溝の深さが大きくなると、切粉の排出が良好となるが、円筒状台金の正面外周部砥材層の厚さに対する溝深さの比が6倍になると、刃先が振動して切味が悪くなる。従って、円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下とすることが好ましい。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、以下の効果を奏することができる。
(1)円筒状台金の正面外周部および側面円周上に、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設け、研削時の回転方向に対して前記砥粒集合体が規則的に配列され、前記砥粒集合体の配列位置が重なり合うように配列したことにより、砥粒1個にかかる負荷が低下し、砥粒の破砕や摩滅が低減され、寿命が向上する。
【0040】
(2)ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に化学結合により保持され、前記砥粒集合体は研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列され、前記砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることにより、砥粒集合体の隙間が一定となり、研削時に作用する砥粒数を安定化することができ、切味が向上する。
また、研削残りが生じるのを防止することができ、研削面の精度が向上し、チッピングが減少する。
【0041】
(3)砥粒集合体は、直径が10mm以下の略円形状をなし、中実状または中空状の集合体であることにより、切粉の流れを良好に保つことができ、目詰まりを防止して切味を向上することができる。
【0042】
(4)円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成し、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層が2分割され、前記砥粒層の占有面積が前記領域に対して70%以上95%以下であることにより、研削時における熱の発生を抑制するとともに、切粉の排出を向上させて研削能率を向上することができる。
また、切粉がボンド面に溜まって目詰まりを起こすことを防止することができるとともに、砥粒層を分割することで、切粉が排出されやすくなり、切味が向上する。
【0043】
(5)円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下としたことにより、溝からの切粉の排出を促進しつつ、刃先が振動を起こして切味が低下することを防止できる。
【0044】
(6)台金の背面に、台金外周側から半径方向に、台金外径の20%以下の範囲で砥粒を固着したことにより、研削時に研削用工具の側面が被削材と接触することによる台金の摩耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る研削用工具を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図2】砥粒層の詳細を示す図であり、(a)は砥粒集合体の配列を示し、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図3】砥粒集合体の形状を示す図である。
【図4】円筒状台金の正面外周部に形成された溝で囲まれた領域における砥粒層を示す図である。
【図5】研削性能テストの実施状況を示す図である。
【図6】円筒状台金の正面外周部における砥粒層の占有面積率に対する研削性能の変化の様子を示す図である。
【図7】砥粒集合体の直径に対する切味指数の変化を示す図である。
【図8】砥粒集合体の配列角度を変えたときの研削性能の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 研削用工具
2 円筒状台金
2a 正面外周部
2b 側面円周部
2c 背面部
3 砥粒層
4 溝
5 取付け穴
6 穴
11 砥粒集合体
12 砥粒
13 ボンド材
20 エアーグラインダー
21 被削材
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント系建材、窯業系建材等の建材、複合板、樹脂、ゴム、プラスティック、ガラスをはじめ、コンクリート、コンクリート二次製品などの穿孔、研削加工に用いられる研削用工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート、コンクリート二次製品などの穿孔、研削加工に用いられる研削用工具についての技術が、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−193269号公報(段落番号0004〜0014)
【特許文献2】
特許第3020434号公報(段落番号0004〜0010)
【特許文献3】
特開2002−103237号公報(段落番号0014〜0056)
【特許文献4】
特許第3086670号公報(段落番号0012〜0034)
【特許文献5】
特開平9−272022号公報(段落番号0004〜0046)
【特許文献6】
特開2000−61930号公報(段落番号0010〜0036)
【0004】
このうち、特許文献1に記載されたメタルボンド穴あけ工具は、開口した先端部を有する円筒状本体と、円筒状本体と一体的に形成され、回転工具に装着するための装着用ねじ穴を有するシャンク部分と、円筒状本体の先端縁、開口した先端部の内周面及び外周面に、Cu系合金を主成分とするボンド材によって接着された砥粒を含むものである。
【0005】
特許文献2に記載された電着ホイールは、超砥粒が研削面に島状に分散して固着され、ひとつの島に超砥粒が2〜10個集合して固着され、島部分の全面積が超砥粒を固着した研削面の全面積の0.02〜0.5倍であることを特徴としている。
【0006】
特許文献3に記載された電着工具は、超砥粒が作用面に島状に固着されて島状の超砥粒層を形成し、一条の島の幅が1〜5mmであり、島状の超砥粒層の全面積が作用面の全面積の2〜50%であることを特徴としている。
特許文献4に記載されたコアビットは、円筒状台金の正面外周部の端面および内外面にそれぞれロウ付け法により砥粒を固着し、 前記端面の砥粒配置間隔を砥粒径の1〜2倍にするとともに前記内外面の砥粒配置間隔よりも狭くしたことを特徴とする。
【0007】
特許文献5に記載された超砥粒砥石は、円盤状台金の外周面に、超砥粒を、ロウ材又は硬質粒子を含むロウ材により一層だけ固着させた超砥粒砥石であって、上記超砥粒の平均粒径Lが100μm〜1000μmであり、かつ、各超砥粒は等間隔に配列した列を、砥石の回転方向に対し傾けるとともに、隣接する一方の列の超砥粒が他方の列の隣接する超砥粒の中間にあって、その3個の超砥粒がほぼ正三角形をなすようになっており、上記ロウ材層の最大厚さ1は、上記超砥粒の平均粒径の25〜50%であり、かつチップポケットの体積が超砥粒の体積の2〜20倍であることを特徴とする。
【0008】
特許文献6に記載された耐摩耗性工具は、化学的または物理的に表面処理された鋼基材の刃部分以外の面に有機糊剤を塗布した後、自溶合金粉末を散布し、所定温度に加熱して乾燥するか、基材表面に有機糊剤と自溶合金との混合物を塗布し、所定温度に加熱乾燥し、これを非酸化性雰囲気下において900〜1150℃の温度に加熱処理するか、これら有機糊剤と自溶合金にさらに超硬合金やダイヤモンド粒子のような砥粒を混合した付着層を形成し、加熱乾燥し、徐冷して表面に耐摩耗層を形成する構成のものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載されたメタルボンド穴あけ工具では、砥粒の配列がランダムであるため、研削能力にばらつきを生じる。すなわち、砥粒が少ない部分では砥粒の破砕、脱落が起こり、砥粒が多い部分では、切味が低下し、切粉の排出が悪く目詰まりを生じる。
また、Cu系合金を主成分とするボンド材を用いていることから、砥粒保持力が弱く、砥粒の脱落が早いため、寿命が短い。
【0010】
また、平均砥粒間隔を、砥粒の平均粒径の200%以上としているが、単砥粒のランダム配置では、砥粒間隔にばらつきがあり、研削時に砥粒が受けるダメージが個々の砥粒によって異なる。そのため、砥粒の破砕、脱落が起こりやすく、研削能力にばらつきが生じる。
さらに、円筒状本体の先端部、外周面及び内周面の少なくとも一つには、互いに離間した複数の凹部が形成されているが、チップが分割されていないため、刃先の放熱が悪く、切粉の排出能力に欠ける。
【0011】
特許文献2、特許文献3に記載された電着ホイールでは、砥粒が島状に分散して固定されているが、電着法によって形成しているため、砥粒突出し量を十分に確保することができず、目詰まりを生じやすい。このため、砥粒を集合させても、10個以下のように、少ない数の砥粒しか集合させることができない。
また、砥粒は機械的に保持されているため、砥粒保持力が弱く、砥粒の脱落を生じやすい。そのため、高負荷切断には耐えられず、寿命が低下する。
また、砥粒集合体を配列する際の配列角度や、砥粒集合体同士の重なり量について定めていないため、研削能力が十分ではない。
【0012】
特許文献4に記載されたコアビットでは、単一砥粒を配列しているため、研削時における砥粒1個あたりの負荷が大きく、砥粒の破砕や脱落を生じやすい。
また、側面全体に砥粒が配列されていないため、側面全体が切れ刃として作用しない。
【0013】
特許文献5に記載された超砥粒砥石では、砥粒が単一配列されているため、研削時に作用する砥粒数が少なく、砥粒の破砕、脱落が早く、寿命が低下する。
特許文献6に記載された耐摩耗性工具では、砥粒の配列や砥粒間隔については定めておらず、砥粒の配列がランダムであるため、研削能力にばらつきを生じる。すなわち、砥粒が少ない部分では砥粒の破砕、脱落が起こり、砥粒が多い部分では、切味が低下し、切粉の排出が悪く目詰まりを生じる。
【0014】
このように、上述したいずれの研削用工具においても、砥粒配列が規則的でないことによって、研削能力、切粉の排出能力が低下して目詰まりが発生し、研削時の放熱性が低く、研削焼けが発生する。また、単体の砥粒を配列していることによって、砥粒の摩耗、脱落が早まる。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、研削能力、切粉の排出能力を向上して目詰まりの発生を防止し、研削時の放熱性を高めて研削焼けの発生を抑制することが可能な研削用工具を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明の研削用工具は、円筒状台金の正面外周部および側面円周上に、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設け、研削時の回転方向に対して前記砥粒集合体が規則的に配列され、前記砥粒集合体の配列位置が重なり合うように配列したことを特徴とする。
複数の砥粒を集合させて砥粒集合体を形成し、この砥粒集合体が規則的に重なり合うように配列したことにより、カッティングポイントが増加して切味が向上する。また砥粒1個にかかる負荷が低下することにより、砥粒の破砕や摩滅が低減され、寿命が向上する。
【0016】
本発明の研削用工具においては、前記砥粒集合体を形成する砥粒は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に化学結合によって保持され、前記砥粒集合体は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列され、前記砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることを特徴とする。以下においては、直線状に配列された砥粒集合体が、研削時の回転方向に対してなす角度を、砥粒集合体の配列角度という。
【0017】
砥粒が、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に保持されることによって、砥粒突出し量を高めて切味を向上することができる。
また、砥粒集合体は研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列されることによって、砥粒集合体の隙間が一定となり、研削時に作用する砥粒数を安定化することができ、切味が向上する。
上記の角度が30°未満であると、砥粒集合体の配列ピッチが長くなり、特に、台金側面においては、作用砥粒数の減少が顕著となって寿命の低下を引き起こす。一方、上記の角度が70°を超えると、砥粒集合体の配列ピッチが短くなり、切粉の目詰まりを生じやすくなる。
【0018】
また、砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることによって、研削残りが生じるのを防止することができ、研削面の精度が向上し、チッピングが減少する。
砥粒集合体の重なり量が砥粒の平均粒径の1倍未満であると、研削残りが生じやすく、研削面が粗くなる。一方、砥粒集合体の重なり量が砥粒の平均粒径の3倍を超えると、目詰まりが発生しやすく切味が低下する。
【0019】
本発明の研削用工具においては、前記砥粒集合体は、直径が10mm以下の略円形状をなし、中実状または中空状の集合体であることを特徴とする。
砥粒集合体の形状を略円形状とすることにより、切粉の流れを良好に保つことができ、目詰まりを防止して切味を向上することができる。
また、砥粒集合体の直径を10mm以下とすることによって、切粉の流れを良好に保つことができるため、目詰まりを防止して研削能率を向上することができる。
【0020】
本発明の研削用工具においては、円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成し、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層が2分割され、前記砥粒層の占有面積が前記領域に対して70%以上95%以下であることを特徴とする。
円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成することによって、研削時における熱の発生を抑制するとともに、切粉の排出を向上させて研削能率を向上することができる。
【0021】
また、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層を2分割することによって、砥粒層の長さを短くすることができ、切粉がボンド面に溜まって目詰まりを起こすことを防止することができる。さらに、砥粒層を分割することで、切粉が排出されやすくなり、切味が向上する。
砥粒層の占有面積が領域に対して70%未満であっても、切味は維持するものの、寿命が極端に低下する。一方、砥粒層の占有面積が領域に対して95%を超えると、刃先に目詰まりを生じ、切味が低下する。
【0022】
本発明の研削用工具においては、円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下としたことを特徴とする。
溝の深さが円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍未満であると、溝から切粉が排出されにくい。一方、溝の深さが円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して5倍を超えると、刃先が振動を起こしやすくなって、切味が低下する。
【0023】
本発明の研削用工具においては、台金の背面に、台金外周側から半径方向に、台金外径の20%以下の範囲で砥粒を固着したことを特徴とする。
台金の背面にも砥粒を固着することにより、研削時に被削材と接触することによる台金の摩耗を低減することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る研削用工具を示し、(a)は同正面図、(b)は同側面図、(c)は同背面図である。
図1に示す研削用工具1において、円筒状円筒状台金2の正面外周部2a、側面円周部2b、背面部2cにはそれぞれ砥粒層3が形成されている。この砥粒層3は、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設けて形成されている。
【0025】
円筒状台金2の円筒状台金の正面外周部2aには、複数の溝4が設けられ、この溝4で挟まれた領域において砥粒層3が形成されている。また、円筒状台金2の中心部には、台金を回転させる回転装置を取付けるための取付け穴5が設けられている。円筒状台金2には、円筒状台金2の軽量化のために穴6を複数個設けることもできる。
円筒状台金2の側面円周部2bには、砥粒層3がスパイラル状に形成されている。このスパイラル状の砥粒層が円筒状台金2の先端面となす角であるスパイラル角度は、30°から70°の範囲内となるように形成されている。
また、円筒状台金2の背面部2cには、円筒状台金2の外周側から半径方向に、円筒状台金2の外径の20%以下の範囲で砥粒層3が設けられている。
【0026】
図2(a)、(b)に、砥粒層3の詳細を示す。砥粒層3においては、図2(a)に示すように、砥粒集合体11を形成する砥粒12は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材13によって台金上に保持されている。砥粒集合体11は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜角θをなして直線状に配列されている。また、砥粒集合体11が規則的に重なり合うように配列されている。
図2(a)と、その部分拡大図である図2(b)に示す砥粒集合体の重なり量Dは、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下とするのが好ましい。
【0027】
図3に、砥粒集合体11の形状を示す。砥粒集合体11は、直径が10mm以下の略円形状をなし、(a)のような中実状または(b)のような中空状の集合体となるように形成されている。
図4は、円筒状台金の正面外周部に形成された溝で囲まれた領域における砥粒層を示している。砥粒層3は、隣合う溝4で囲まれた領域において2分割されて形成され、砥粒層3の占有面積が、溝4で囲まれた領域の面積に対して70%以上95%以下となるように形成されていることが好ましい。また、溝4の深さは、砥粒層3の厚さに対して1.5倍以上5倍以下となるように形成されている。
【0028】
【実施例】
以下に、具体的な作製例を示す。
テスト用の研削用工具を作製して、研削性能の試験を行った。
研削用工具の仕様を以下に示す。
試験に用いたテスト品の詳細を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すテストのうち、テスト1は、円筒状台金の正面外周部に占める砥粒層の占有面積率を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。また、テスト2は、砥粒集合体の直径を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。また、テスト3は、砥粒集合体の配列角度を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。また、テスト4は、円筒状台金の正面外周部に設けられた砥材層の厚さに対する溝深さの比を変えたときの研削性能の変化をテストしたものである。
【0031】
試験条件を表2に示す。
【表2】
【0032】
上記の研削性能試験の実施の様子を図5に示す。
図5において、図1は研削用工具であり、この研削用工具1にエアーグラインダー20を取付けて、研削用工具1を回転させつつ被削材21に押し当てて、被削材21の穴あけを行った。
【0033】
上記の試験を行った結果を、図6、図7、表3、表4に示す。
図6は、円筒状台金の正面外周部における砥粒層の占有面積率を変えたことによる、研削性能の変化を示すものである。
図6からわかるように、砥粒層の占有面積率が70%から95%の範囲内であるときには、切味、寿命ともに良好な結果となった。これに対し、砥粒層の占有面積率が60%のものでは、切味は良好であるものの、寿命が著しく低下している。その一方、砥粒層の占有面積率が100%のものでは、切刃に目詰まりを生じ、切味が低下する。
【0034】
図7は、砥粒集合体の直径を変えたときの切味指数の変化を示したものである。図7からわかるように、砥粒集合体の直径が10mmまでの範囲では切味は良好であるが、15mmになると、砥粒集合体に切粉が詰まって切味が低下する。このことから、砥粒集合体の直径は10mm以下とすることが好ましい。
【0035】
図8に、砥粒集合体の配列角度を変えたときの研削性能の変化を示す。
図8からわかるように、砥粒集合体の配列角度が20°のときは、切味は良好であるが、砥粒の脱落が多くなり、寿命が低下する。一方、砥粒集合体の配列角度が80°のときは、砥粒集合体に切粉が詰まりやすくなって切味が低下する。従って、砥粒集合体の配列角度を、30°から70°の範囲内とすることによって、切味と寿命のいずれをも向上させることができる。
【0036】
表3に、円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さと、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さとの関係を示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3からわかるように、円筒状台金の正面外周部砥材層の厚さと溝深さとが同一の場合、切粉の排出が少ない。円筒状台金の正面外周部砥材層の厚さより溝の深さが大きくなると、切粉の排出が良好となるが、円筒状台金の正面外周部砥材層の厚さに対する溝深さの比が6倍になると、刃先が振動して切味が悪くなる。従って、円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下とすることが好ましい。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、以下の効果を奏することができる。
(1)円筒状台金の正面外周部および側面円周上に、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設け、研削時の回転方向に対して前記砥粒集合体が規則的に配列され、前記砥粒集合体の配列位置が重なり合うように配列したことにより、砥粒1個にかかる負荷が低下し、砥粒の破砕や摩滅が低減され、寿命が向上する。
【0040】
(2)ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に化学結合により保持され、前記砥粒集合体は研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列され、前記砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることにより、砥粒集合体の隙間が一定となり、研削時に作用する砥粒数を安定化することができ、切味が向上する。
また、研削残りが生じるのを防止することができ、研削面の精度が向上し、チッピングが減少する。
【0041】
(3)砥粒集合体は、直径が10mm以下の略円形状をなし、中実状または中空状の集合体であることにより、切粉の流れを良好に保つことができ、目詰まりを防止して切味を向上することができる。
【0042】
(4)円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成し、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層が2分割され、前記砥粒層の占有面積が前記領域に対して70%以上95%以下であることにより、研削時における熱の発生を抑制するとともに、切粉の排出を向上させて研削能率を向上することができる。
また、切粉がボンド面に溜まって目詰まりを起こすことを防止することができるとともに、砥粒層を分割することで、切粉が排出されやすくなり、切味が向上する。
【0043】
(5)円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部の砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下としたことにより、溝からの切粉の排出を促進しつつ、刃先が振動を起こして切味が低下することを防止できる。
【0044】
(6)台金の背面に、台金外周側から半径方向に、台金外径の20%以下の範囲で砥粒を固着したことにより、研削時に研削用工具の側面が被削材と接触することによる台金の摩耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る研削用工具を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図2】砥粒層の詳細を示す図であり、(a)は砥粒集合体の配列を示し、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図3】砥粒集合体の形状を示す図である。
【図4】円筒状台金の正面外周部に形成された溝で囲まれた領域における砥粒層を示す図である。
【図5】研削性能テストの実施状況を示す図である。
【図6】円筒状台金の正面外周部における砥粒層の占有面積率に対する研削性能の変化の様子を示す図である。
【図7】砥粒集合体の直径に対する切味指数の変化を示す図である。
【図8】砥粒集合体の配列角度を変えたときの研削性能の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 研削用工具
2 円筒状台金
2a 正面外周部
2b 側面円周部
2c 背面部
3 砥粒層
4 溝
5 取付け穴
6 穴
11 砥粒集合体
12 砥粒
13 ボンド材
20 エアーグラインダー
21 被削材
Claims (6)
- 円筒状台金の正面外周部および側面円周上に、複数の砥粒を集合させてなる砥粒集合体を設け、研削時の回転方向に対して前記砥粒集合体が規則的に配列され、前記砥粒集合体の配列位置が重なり合うように配列したことを特徴とする研削用工具。
- 前記砥粒集合体を形成する砥粒は、ニッケル系合金を主成分とするボンド材によって台金上に保持され、前記砥粒集合体は、研削時の回転方向に対して30°から70°の範囲内の角度で傾斜をなして直線状に配列され、前記砥粒集合体の重なり量が、砥粒の平均粒径の1倍以上3倍以下であることを特徴とする請求項1記載の研削用工具。
- 前記砥粒集合体は、直径が10mm以下の略円形状をなし、中実状または中空状の集合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の研削用工具。
- 円筒状台金の正面外周部に複数の溝を形成し、隣合う溝で囲まれた領域に形成された砥粒層が2分割され、前記砥粒層の占有面積が前記領域に対して70%以上95%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の研削用工具。
- 円筒状台金の正面外周部に形成された溝の深さを、円筒状台金の正面外周部に設けられた砥粒層の厚さに対して1.5倍以上5倍以下としたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の研削用工具。
- 台金の背面に、台金外周側から半径方向に、台金外径の20%以下の範囲で砥粒を固着したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の研削用工具。
Priority Applications (1)
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JP2003074452A JP2004276218A (ja) | 2003-03-18 | 2003-03-18 | 研削用工具 |
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Cited By (1)
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JP2009136927A (ja) * | 2007-12-03 | 2009-06-25 | Noritake Super Abrasive:Kk | 研削砥石 |
-
2003
- 2003-03-18 JP JP2003074452A patent/JP2004276218A/ja active Pending
Cited By (1)
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