JP2004275972A - 複層塗膜形成方法、複層塗膜及び物品 - Google Patents

複層塗膜形成方法、複層塗膜及び物品 Download PDF

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Abstract

【課題】干渉色による意匠性を極力阻害することなく、シェード部での補色を抑制することができる複層塗膜形成方法及び複層塗膜を有する物品を提供する。
【解決手段】下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材上に、着色顔料を含有するカラーベース塗料、干渉マイカ顔料を含有するマイカベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装する複層塗膜形成方法であって、上記マイカベース塗料は、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された平均粒子径0.01〜0.1μmである微粒子酸化チタンを含有するものである複層塗膜形成方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複層塗膜形成方法、複層塗膜及び物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
上塗り塗色の多色化とニーズに対応するために、鱗片状のマイカ顔料を含有する塗料により形成されるパール塗膜が年々増えてきている。例えば、着色ベースコート、酸化チタンで被覆された鱗片状雲母粉末を配合してなるホワイトパール調又はシルバーパール調のベースコート及びクリヤーコートをウエットオンウエットで塗装し、塗膜を同時に架橋硬化せしめることを特徴とする複層塗膜形成法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
更に、有機アマイドを含有するカラーベース塗料、光輝材を含有した光輝材含有ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、積層塗膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
しかしながら、このような従来から行われている複層塗膜形成方法により塗膜を形成すると、ハイライト位置から見た場合には、外部から入射する光に対し、干渉マイカ顔料は真珠調光沢が発現するが、シェード位置からの見え方では、強烈な補色が発生し、意匠性が低下するという問題点を有している。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−164358号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平11−114489号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、干渉色による意匠性を極力阻害することなく、シェード部での補色を抑制することができる複層塗膜形成方法及び複層塗膜を有する物品を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材上に、着色顔料を含有するカラーベース塗料、干渉マイカ顔料を含有するマイカベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装する複層塗膜形成方法であって、上記マイカベース塗料は、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された平均粒子径0.01〜0.1μmである微粒子酸化チタンを含有するものであることを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0008】
上記微粒子酸化チタンは、上記マイカベース塗料中の干渉マイカ顔料100質量部に対して、0.1〜10.0質量部含有されていることが好ましい。
【0009】
本発明は、上記複層塗膜形成方法により形成されることを特徴とする複層塗膜である。
本発明はまた、上記複層塗膜を有することを特徴とする物品でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の複層塗膜形成方法は、下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材上に、着色顔料を含有するカラーベース塗料、干渉マイカ顔料を含有するマイカベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装する方法である。
【0011】
本発明の複層塗膜形成方法において、上記マイカベース塗料は、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された平均粒子径0.01〜0.1μmである微粒子酸化チタンを含有するものである。アルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された特定の平均粒子径の微粒子酸化チタンを含有することにより、シェード部での補色を抑制することができる。
【0012】
着色顔料を含有するカラーベース塗料、干渉マイカ顔料を含有するマイカベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装して形成される複層塗膜は、干渉マイカ顔料による光の干渉が起こるため、二色性を有するものとなる。従って、ハイライト位置から見た場合には、二酸化チタン膜の膜厚によって、シルバー、イエロー、レッド、ブルー、グリーン等の干渉色が見られるが、シェード位置からの見た場合には、これらの干渉色の補色が見られることになる。本発明におけるマイカベース塗料は、上記微粒子酸化チタンを含有するものであるため、シェード部での補色を抑制することができる。補色が抑制されという効果が発現するメカニズムは明らかではないが、形成されるマイカベース塗膜中に含まれる微粒子酸化チタンによって、補色に対応する波長の光が散乱、吸収されるためではないかと推察される。
【0013】
上記微粒子酸化チタンは、平均粒子径が下限0.01μm、上限0.1μmである。0.01μm未満であると、隠蔽性が劣る場合が生じる。0.1μmを超えると、シェード部での補色を充分に抑制することができないおそれがあり、また、干渉マイカ顔料による干渉色が阻害されるおそれもある。上記下限は、0.02μmであることがより好ましく、0.03μmであることが更に好ましい。上記上限は、0.07μmであることがより好ましく、0.05μmであることが更に好ましい。
【0014】
上記微粒子酸化チタンは、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成されたものである。表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜を形成する方法としては特に限定されず、従来公知の酸化チタンの表面処理により行うことができる。酸化チタンの表面処理を行うことにより、酸化チタンのラジカル発生が抑制され、耐光劣化性が向上する効果がある。
【0015】
上記微粒子酸化チタンの市販品としては、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された平均粒子径0.01〜0.1μmであるものであれば、特に限定されず、例えば、マイクロチタンMT−500HD(テイカ社製)、タイペークTTO−55D(石原産業社製)等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記マイカベース塗料において、上記微粒子酸化チタンは、上記マイカベース塗料中の干渉マイカ顔料100質量部に対して、下限0.1質量部、上限10.0質量部含有されていることが好ましい。0.1質量部未満であると、シェード部での補色を充分に抑制することができないおそれがあり、10.0質量部を超えると、白度が増加するおそれがある。上記下限は、0.5質量部であることがより好ましく、1.0質量部であることが更に好ましい。上記上限は、9.0質量部であることがより好ましく、7.0質量部であることが更に好ましい。
【0017】
上記マイカベース塗料において、上記微粒子酸化チタンは、顔料濃度(PWC)で、下限0.01質量%、上限1.0質量%含有されていることが好ましい。0.01質量%未満であると、シェード部での補色を充分に抑制することができないおそれがあり、1.0質量%を超えると、白度が増加するおそれがある。上記下限は、0.02質量%であることがより好ましく、0.03質量%であることが更に好ましい。上記上限は、0.9質量%であることがより好ましく、0.8質量%であることが更に好ましい。
【0018】
本発明の複層塗膜形成方法は、先ず、第一工程として、下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材上に、着色顔料を含有するカラーベース塗料を塗装し、カラーベース塗膜を形成するものである。
【0019】
上記カラーベース塗料は、着色顔料、塗膜形成性樹脂及び硬化剤、必要に応じて有機アマイド及び架橋樹脂粒子等が含まれるものである。
上記カラーベース塗料に含有される着色顔料としては、有機系、無機系の各種着色顔料及び体質顔料等を挙げることができる。
【0020】
上記着色顔料としては、例えば、有機系のアゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等、無機系の黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等、また体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等が用いられる。
【0021】
上記カラーベース塗料の着色顔料として白色系顔料、例えば、二酸化チタン等が主として用いられる。上記白色系顔料の含有量は、下限30質量%、上限75質量%の顔料濃度(PWC)で含有することが好ましい。30質量%未満であると、下地隠蔽性が低下し、75質量%を超えると、外観が低下する。上記下限は、45質量%であることがより好ましく、上記上限は、65質量%であることがより好ましい。白系顔料を上記範囲で含有することで、マンセル値でN7〜N9.5の、いわゆるホワイトカラーベース塗膜を形成することができる。
【0022】
上記カラーベース塗料の塗膜形成樹脂及び硬化剤としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素系樹脂等の塗膜形成樹脂と、アミノ樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物等の硬化剤が用いられる。塗料中におけるこれらの好ましい固形分含有量は、製造時30〜70質量%、塗布時10〜50質量%の範囲である。
【0023】
上記カラーベース塗料に含有される有機アマイドは、チクソトロピー性を付与するための粘性制御剤として一般に知られているものを挙げることができる。具体的には、脂肪酸アマイドが挙げられ、市販品として入手可能なものとしては、粉末状態のものやペースト状態のものが知られている。このペースト状態のものは、一般にキシレンやアルコール等の溶剤によって希釈されている。
【0024】
上記脂肪酸アマイドの一例としてジアマイドやポリアマイドを挙げることができる。ジアマイドは、ジアミンに水酸基含有脂肪酸を反応させることにより得られる化合物である。また、ポリアマイドは、多塩基カルボン酸とジアミンと水酸基含有脂肪酸を反応させて得られる化合物である。数平均分子量(Mn)は1000〜2000のものが一般的である。
【0025】
上記カラーベース塗料中の有機アマイドの含有量は、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.1質量部、上限10質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、艶感や色感等の塗膜外観が低下する場合がある。10質量部を超えると、塗膜に肌荒れが生じ、塗膜性能が低下する場合がある。上記下限は、0.3質量部であることがより好ましく、0.5質量部であることが更に好ましい。上記上限は、5質量部であることがより好ましく、3質量部であることが更に好ましい。
【0026】
一方、本発明においてカラーベース塗料に用いる架橋樹脂粒子としては、粘性制御剤として一般に知られているものが使用できるが、例えば、NAD(NonAqueous Dispersion)と言われる樹脂粒子を使用することができる。この例として、色材、48巻(1975)第28頁〜第34頁中に記載されているNAD塗料に用いられる樹脂粒子を挙げることができる。また、特開昭53−133236号公報に開示されている重合性樹脂粒子を、本発明における架橋樹脂粒子として用いることができる。
【0027】
上記架橋樹脂粒子のなかでも、塗膜化した場合に光沢、発色性に影響を及ぼさないものが好ましく、極性基の相互作用を利用する非架橋又は架橋型の樹脂又は粒子が更に好ましい。最も好ましいのは、両性イオン基を有するポリエステル樹脂の存在下にモノマーを重合させて得られるものである。
【0028】
このような架橋樹脂粒子としては、有機溶剤に不溶で、平均粒子径が0.02〜0.5μmのものを挙げることができる。0.5μmを超えると、安定性が低下する。また、上記架橋樹脂粒子は、両イオン性基を分子内に有する単量体を多価アルコール成分のひとつとして合成したアルキド樹脂又はポリエステル樹脂等の乳化能を有する樹脂と、重合開始剤との存在下に、水性媒体中でエチレン性不飽和モノマーを乳化重合させることにより得られるものが好ましい。
【0029】
上記乳化重合の方法により得られる上記架橋樹脂粒子は、一般にエマルション樹脂に含有され、塗膜化したときに性能を低下させるような低分子乳化剤又は保護コロイドを含まず、しかも分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを共重合することにより架橋されているので、塗膜の耐水性、耐溶剤性及び光沢等が優れている。
【0030】
上記カラーベース塗料中における架橋樹脂粒子の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、下限2質量部、20質量部であることが好ましい。架橋樹脂粒子の含有量が少なすぎると、艶感や色感等の塗膜外観が低下する場合がある。また架橋樹脂粒子の含有量が多すぎると、塗膜に肌荒れが生じ、塗膜性能が低下する場合がある。上記下限は、4質量部であることがより好ましく、6質量部であることが更に好ましい。上記上限は、17質量部であることがより好ましく、15質量部であることが更に好ましい。
【0031】
本発明において、カラーベース塗料に架橋樹脂粒子を含有させる場合、有機アマイドと架橋樹脂粒子との配合割合は、有機アマイド/架橋樹脂粒子の固形分の比率で、1/50〜1.5/1であることが好ましく、より好ましくは1/20〜1/1である。配合割合における有機アマイドの量が少ないと、塗膜外観における艶感や色感等が低下する場合がある。また、配合割合における有機アマイドの量が多すぎると、塗膜性能が低下する場合がある。
【0032】
また、有機アマイドと架橋樹脂粒子の合計の含有量は、カラーベース塗料中の樹脂固形分100質量部に対し、下限2質量部、上限30質量部であることが好ましい。2質量部未満であると、塗膜外観における艶感や色感が低下する場合があり、30質量部を超えると、塗膜に肌荒れを生じ、塗膜性能が低下する場合がある。上記下限は、4質量部であることがより好ましく、6質量部であることが更に好ましい。上記上限は、20質量部であることがより好ましく、16質量部であることが更に好ましい。
【0033】
また、本発明において、カラーベース塗料には、所望により、その他の添加剤を含有させることができる。上記添加剤としては、例えば、シリコーン及び有機高分子のような表面調整剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等を挙げることができる。
【0034】
上記カラーベース塗料中の全顔料濃度(PWC)は、下限3質量%、上限70質量%であることが好ましい。70質量%を超えると、塗膜外観が低下する。上記下限は、4質量%であることがより好ましく、5質量%であることが更に好ましい。上記上限は、65質量%であることがより好ましく、60質量%であることが更に好ましい。
【0035】
本発明に用いられるカラーベース塗料は、一般には溶液型のものが好ましく用いられ、溶液型であれば有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルション)、非水分散型のいずれでもよい。
【0036】
本発明に用いられる塗料組成物の製造方法は、後述するものを含めて、特に限定されず、顔料等の配合物をニーダー又はロール等を用いて混練、分散する等の当業者に周知の方法を用いることができる。
【0037】
上記カラーベース塗料を、上記下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材上に塗装する場合には、意匠性を高めるためにエアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装するか、又は、エアー静電スプレー塗装と、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」、「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法により塗膜を形成することができる。
【0038】
本発明におけるカラーベース塗料による塗装時の塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合30〜60μmが有用である。30μm未満であると、下地が隠蔽できず膜切れが発生するおそれがあり、60μmを超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こることがある。また、カラーベース塗膜の乾燥膜厚は、通常、20〜40μmである。20μm未満であると、平滑性、隠蔽性の不具合が発生するおそれがあり、40μmを超えると、ムラ、流れ等の不具合が起こることがある。
【0039】
上述のようにカラーベース塗料が塗装された後、未硬化の状態でマイカベース塗料を塗装することもできるが、上記カラーベース塗膜を硬化させる場合には、硬化温度は、下限100℃、上限180℃であることが好ましい。100℃未満であると、硬化が充分でない場合があり、180℃を超えると、塗膜が固く脆くなる場合がある。上記下限は、120℃であることがより好ましく、上記上限は、160℃であることがより好ましい。このような範囲に設定することで高い架橋度の硬化塗膜を得られる。硬化時間は、硬化温度により変化するが、120〜160℃で10〜30分が適当である。
【0040】
本発明の複層塗膜形成方法は、第二の工程として、上述のように形成されたカラーベース塗膜上に、干渉マイカ顔料を含有するマイカベース塗料を塗装し、マイカベース塗膜を形成するものである。
【0041】
本発明の複層塗膜形成方法において、マイカベース塗膜の形成にはマイカベース塗料が用いられる。
上記マイカベース塗料は、上述の微粒子酸化チタン以外に、干渉マイカ顔料、塗膜形成性樹脂及び硬化剤、必要に応じて架橋樹脂粒子等を含有するものである。
【0042】
上記干渉マイカ顔料は、マイカ顔料の表面に、金属酸化物をコーティングしたもので、コーティング層の厚みによって、様々な干渉色を有するものである。
上記干渉マイカ顔料としては、通常メタリック塗料に用いられるものを挙げることができる。形状は特に限定されないが、例えば、鱗片状のものが好ましく、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、かつ、厚さが0.1〜3μmであるものが適している。
【0043】
上記干渉マイカ顔料は、マイカ顔料の表面に、TiO、SnO、ZrO、Fe、ZnO、Cr、V等及びそれらの含水物等の金属酸化物をコーティングしたマイカ顔料で、真珠箔状、金属様かつ玉虫色効果を有する上に、金属酸化物種とそのコーティング層の厚みが奏する色感をもたらすものである。なかでも、二酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物を均一に被覆したものが、好適に用いられる。
【0044】
例えば、グリーンの干渉色を有する干渉マイカ顔料として、メルクジャパン社製「イリオジン ウルトラ 7235 W2」(商品名)、ブルーの干渉色を有する干渉マイカとして、メルクジャパン社製「イリオジン ウルトラ 7225 W2」(商品名)、エローの干渉色を有する干渉マイカとして、メルクジャパン社製「イリオジン ウルトラ 7205 W2」(商品名)等を挙げることができる。また、上記干渉マイカ顔料として、干渉光を有するアルミナフレークを用いることもできる。
【0045】
上記マイカベース塗料において、上記干渉マイカ顔料の顔料濃度(PWC)は、一般的に18.0質量%以下である。18.0質量%を超えると、塗膜外観を低下させる場合がある。上記干渉マイカ顔料の顔料濃度の下限は、0.01質量%であることが好ましい。また、上限は、17.0質量%であることがより好ましく、16.0質量%であることが更に好ましい。
【0046】
上記マイカベース塗料は、上記干渉マイカ顔料以外のマイカ顔料を含有してもよい。上記干渉マイカ顔料以外のマイカ顔料としては、例えば、ホワイトマイカ顔料として、メルクジャパン社製「イリオジン 103 W2」(商品名)、日本光研社製「パールグレイスSME 90−9」(商品名)等を挙げることができる。
【0047】
上記マイカベース塗料に含有される塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、上述のカラーベース塗料の記載で挙げたものを使用できる。なお、上記マイカベース塗料を水性型塗料で用いる場合には、米国特許第5151125号、同5183504号等に具体的に説明されている塗膜形成性樹脂を用いることができる
【0048】
また、上記マイカベース塗料は、塗装作業性を確保するために、架橋樹脂粒子が添加されていることが好ましい。上記マイカベース塗料に使用される架橋樹脂粒子としては、例えば、上述のカラーベース塗料の記載で挙げたものを使用することができる。
【0049】
上記マイカベース塗料中の架橋樹脂粒子の添加量は、塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.01質量部、上限10質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、粘性制御効果が得られず、層間でなじみや反転をおこす原因となる。10質量部を超えると、外観が低下するおそれがある。上記下限は、0.02質量部であることがより好ましく、0.03質量部であることが更に好ましい。上記上限は、8質量部であることがより好ましく、6質量部であることが更に好ましい。
【0050】
上記マイカベース塗料の全固形分量は、下限10質量%、上限60質量%であることが好ましい。上記下限は、15質量%であることがより好ましく、上記上限は、55質量%であることがより好ましい。
【0051】
本発明で用いるマイカベース塗料の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルション)、非水分散型のいずれでもよく、また必要により、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面調製剤等を用いることができる。
【0052】
上記マイカベース塗膜は、上述のように形成された硬化したカラーベース塗膜上に、上記マイカベース塗料を塗装するか、又は、未硬化のカラーベース塗膜上に、ウエットオンウエット塗装で、マイカベース塗料を塗装することによって形成することができる。
【0053】
上記マイカベース塗料は、上記カラーベース塗料と同様に、μμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗装することができ、形成されるマイカベース塗膜の乾燥膜厚は、10〜30μmであることが好ましい。
【0054】
本発明の複層塗膜形成方法は、第三の工程として、上述のようにして形成されるマイカベース塗膜上に、クリヤー塗料を塗装することによりクリヤー塗膜を形成するものである。
上記クリヤー塗料は、塗膜形成性樹脂及び硬化剤等を含有するものである。
【0055】
上記クリヤー塗料の塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の塗膜形成性樹脂を利用することができ、これらはアミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。透明性又は耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、又は、カルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0056】
上記クリヤー塗料中の固形分含有量は、下限20質量%、上限60質量%であることが好ましく、上記下限は35質量%であることがより好ましく、上記上限は55質量%であることがより好ましい。また、塗装時の固形分含有量は、下限10質量%、上限50質量%であることが好ましく、上記下限は20質量%であることがより好ましく、上記上限は50質量%であることがより好ましい。
【0057】
上記クリヤー塗料は、通常、マイカベース塗料を塗装後、未硬化の状態で塗装する、いわゆるウエットオンウエットで塗膜が形成されるため、ここで生じる層間のなじみや反転、又は、タレ等の防止のため、上述した架橋樹脂粒子を含有することが好ましい。
【0058】
上記クリヤー塗料の架橋樹脂粒子の含有量は、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.01質量部、上限10質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、粘性制御効果が得られず、タレ等の不具合をおこす原因となる。10質量部を超えると、外観が低下するおそれがある。上記下限は、0.02質量部であることがより好ましく、0.03質量部であることが更に好ましい。上記上限は、8質量部であることがより好ましく、6質量部であることが更に好ましい。
【0059】
本発明で用いるクリヤー塗料の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルション)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、また必要により、硬化触媒、表面調製剤等を用いることができる。
【0060】
上記クリヤー塗膜は、通常、上述のように形成された未硬化のマイカベース塗膜上に、ウエットオンウエット塗装で、クリヤー塗料を塗装することによって形成される。なお、硬化したマイカベース塗膜上に塗装してもよい。
【0061】
上記クリヤー塗膜は、上記マイカベース塗膜に含まれる光輝性顔料に起因する凹凸、チカチカ等を平滑にし、保護するために形成される。塗装方法として具体的には、先に述べたμμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜形成することが好ましい。
【0062】
上記クリヤー塗料により形成されるクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、一般に、下限10μm、上限70μmが好ましい。10μm未満であると、下地の凹凸が隠蔽できないおそれがあり、70μmを超えると、塗装時にワキ、タレ等の不具合が起こることもある。上記下限は、20μmであることがより好ましく、上記上限は、50μmであることがより好ましい。
【0063】
上記クリヤー塗膜の塗装後、塗膜を硬化させる硬化温度は、下限100℃、上限180℃であることが好ましい。100℃未満であると、硬化が充分でないおそれがあり、180℃を超えると、塗膜が固く脆くなるおそれがある。上記下限は、120℃であることがより好ましく、160℃であることが更に好ましい。硬化時間は、硬化温度により変化するが、120℃〜160℃で10〜30分が適当である。
【0064】
なお、積層された塗膜を3コート1ベークで、硬化させてもよい。この場合、上記カラーベース塗料、上記マイカベース塗料を水性型塗料で用いる場合には、良好な仕上がり塗膜を得るために、それぞれ形成した後に塗膜を60〜100℃で2〜10分間加熱しておくことが望ましい。
【0065】
本発明で形成される複層塗膜の膜厚は、通常、下限30μm、上限300μmである。30μm未満であると、膜自体の強度が低下するおそれがあり、300μmを超えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下するおそれがある。上記下限は、50μmであることがより好ましく、上記上限は、250μmであることがより好ましい。
【0066】
本発明の複層塗膜形成方法において、被塗物は、下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材である。
上記基材としては特に限定されず、例えば、木、金属、ガラス、布、プラスチック、発泡体等、特に金属表面、鋳造物に有利に用いることができるが、カチオン電着塗装可能な金属製品に対し、特に好適に使用できる。
【0067】
上記金属製品としては特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等、これらの金属を含む合金を挙げることができる。具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体及び部品を挙げることができる。これらの金属は予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理されたものが特に好ましい。
【0068】
本発明の複層塗膜形成方法において、上記下塗り塗膜を形成する電着塗料としては、カチオン型及びアニオン型を使用できるが、カチオン型電着塗料組成物が防食性において優れた複層塗膜を与える。
【0069】
本発明の複層塗膜形成方法において、上記中塗り塗膜は、下地欠陥を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性を確保(外観向上)し、塗膜物性(耐衝撃性、耐チッピング性等)を付与するためのものである。この中塗り塗膜を形成するには中塗り塗料が用いられ、この中塗り塗料は、有機系、無機系の各種着色顔料、体質顔料等、塗膜形成性樹脂及び硬化剤等を含む。
【0070】
上記中塗り塗料に用いられる着色顔料としては、例えば、上述のカラーベース塗料で記載したものが用いられる。更に、アルミニウム粉、グラファイト粉等の扁平顔料を添加してもよい。
【0071】
上記中塗り塗料は、標準的には、カーボンブラックと二酸化チタンを主要顔料としたグレー系中塗り塗料が用いられる。更に、セットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料を用いることもできる。
【0072】
上記中塗り塗料に用いられる塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、上述のカラーベース塗料で記載したものが用いられる。顔料分散性、作業性の点から、アルキド樹脂及び/又はポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせが好ましい。
【0073】
上記下塗り塗膜が形成された基材上へ中塗り塗料が塗装された後、未硬化の状態でも用いることができるが、上記中塗り塗膜を硬化させる場合には、硬化温度は、下限100℃、上限180℃であることが好ましい。100℃未満であると、硬化が充分でないおそれがあり、180℃を超えると、塗膜が固く脆くなるおそれがある。上記下限は、120℃であることがより好ましく、上記上限は、160℃であることがより好ましい。これにより、高い架橋度の硬化塗膜を得られる。硬化時間は硬化温度により変化するが、120〜160℃で10〜30分が適当である。
【0074】
上記複層塗膜形成方法により形成される複層塗膜は、干渉色による意匠性を極力阻害することなく、シェード部の補色を抑制することができるものである。このような複層塗膜も本発明の1つである。また、上記複層塗膜を有する物品も本発明の1つである。
【0075】
本発明の複層塗膜形成方法は、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された平均粒子径0.01〜0.1μmである微粒子酸化チタンを含有するマイカベース塗料を用いるものであるため、干渉色による意匠性を極力阻害することなく、シェード部の補色を抑制することができる複層塗膜を形成することができる。従って、上記複層塗膜形成方法は、優れた外観等を有する複層塗膜を形成することができる方法であり、自動車車体及び部品等に好適に適用することができるものである。
【0076】
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0077】
製造例1 カラーベース塗料の製造
下記に示す配合で、ホワイトカラーベース塗料を製造した。
チタンR−61 21.00部
(堺化学工業社製二酸化チタン)
TAROX合成酸化鉄LL−XLO 0.10部
(東洋インキ社製酸化鉄)
B−34 6.00部
(堺化学工業社製硫酸バリウム)
熱硬化性アクリル樹脂 30.30部
(日本ペイント社製、水酸基価45、酸価15、数平均分子量21000、固形分50%)
ユーバン20N60 10.80部
(三井化学社製ブチル化メラミン樹脂、固形分60%)
アクリル系表面調整剤 0.20部
架橋樹脂粒子 16.00部
(日本ペイント社製構造粘性付与剤、固形分20%)
n−ブタノール 2.70部
キシロール 4.00部
合計 91.10部
【0078】
製造例2 マイカベース塗料1の製造
下記に示す配合(PWC8%、干渉マイカ顔料100部に対し、微粒子酸化チタンを1.25部含有する)で、マイカベース1塗料を製造した。
シラリックT60−10WNTクリスタルシルバー 1.34部
(メルクジャパン社製 干渉マイカ顔料、平均粒径18μm)
シラリックT60−23WNTギャラクシーブルー 1.34部
(メルクジャパン社製 干渉マイカ顔料、平均粒径18μm)
マイクロチタンMT−500HD 0.03部
(テイカ社製微粒子酸化チタン、平均粒径0.03μm)
熱硬化性アクリル樹脂 43.00部
(日本ペイント社製、水酸基価45、酸価15、数平均分子量21000、固形分50%)
ユーバン20N60 15.40部
(三井化学社製ブチル化メラミン樹脂、固形分60%)
SIPERNAT 22LS 1.54部
(デグサ社製のコロイダルシリカ、固形分20%)
アクリル系表面調整剤 0.20部
架橋樹脂粒子 14.00部
(日本ペイント社製構造粘性付与剤、固形分20%)
n−ブタノール 4.20部
キシロール 4.13部
トルエン 12.82部
合計 98.00部
【0079】
製造例3 マイカベース塗料2の製造
マイクロチタンMT−500HDの配合量を0.09部にした以外は、製造例2と同様にしてマイカベース塗料2を調製した。
【0080】
製造例4 マイカベース塗料3の製造
マイクロチタンMT−500HDの配合量を0.15部にした以外は、製造例2と同様にしてマイカベース塗料3を調製した。
【0081】
製造例5 マイカベース塗料4の製造
マイクロチタンMT−500HDを配合しなかった以外は、製造例2と同様にしてマイカベース塗料4を調製した。
【0082】
実施例1 複層塗膜形成方法
リン酸亜鉛処理した厚さ0.8cm、20cm×30cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料「パワートップU−50」(日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた。次に、得られた電着塗膜上に、グレー色の中塗り塗料「オルガP−2グレー」(日本ペイント社製、ポリエステル・メラミン樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間焼き付け中塗り塗膜を作成した。
【0083】
得られた中塗り塗膜上に、上記製造例1のカラーベース塗料を、乾燥膜厚が30μmとなるように、静電塗装し、140℃で20分間焼き付けカラーベース塗膜を作成した。
【0084】
更に、上記製造例2のマイカベース塗料1を、乾燥膜厚が15μmとなるように、同様に静電塗装した。次に、7分間のセッテイングの後、更にウエットオンウエットで、クリヤー塗料「スーパーラック O−1810クリヤー」(日本ペイント社製、酸・エポキシ硬化型アクリル樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるように、回転霧化型静電塗装した。140℃で20分間焼き付け、評価用塗膜を作成した。
【0085】
実施例2
マイカベース塗料1の代わりに、マイカベース塗料2を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用塗膜を作成した。
【0086】
実施例3
マイカベース塗料1の代わりに、マイカベース塗料3を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用塗膜を作成した。
【0087】
比較例1
マイカベース塗料1の代わりに、マイカベース塗料4を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用塗膜を作成した。
【0088】
〔評価〕
(b値)
それぞれの評価用塗膜のハイライト部、シェード部のb値を、エックスライトMA68II(エックスライト社製マルチアングル分光測色計)によって測定した。観察条件D65光源10°視野で、測定角15°、25°、45°、75°、110°で測定した。結果を表1に示した。
【0089】
(目視)
それぞれの評価用塗膜のシェード部の補色を以下の基準により、目視で評価した。
○:ハイライトの干渉色に対するシェード部での補色を感じない。
△:ハイライトの干渉色に対するシェード部での補色を若干感じる。
×:ハイライトの干渉色に対するシェード部での補色を非常に強く感じる。
【0090】
【表1】
Figure 2004275972
【0091】
表1から、マイクロチタンMT−500HD(微粒子酸化チタン)の配合量の増加とともに、シェード部での補色(黄味)が低減する傾向があることが明らかとなった。また、マイクロチタンMT−500HDを配合しても、ハイライト部での干渉色は、ほとんど阻害されることがなかった。目視による評価でも実施例により得られたものは、シェード部での補色(黄味)が抑制されていることが明らかとなった。
【0092】
【発明の効果】
本発明の複層塗膜形成方法は、上述の構成よりなるので、干渉色による意匠性を極力阻害することなく、シェード部の補色を抑制することができるものである。従って、自動車及び部品等に好適に適用することによって、シェード部での補色を抑制することができ、新規な塗色を設計できることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複層塗膜の構造を示す断面図の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 クリヤー塗膜
2 マイカベース塗膜
3 カラーベース塗膜
4 中塗り塗膜
5 下塗り塗膜
6 基材(鋼板)

Claims (4)

  1. 下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成した基材上に、着色顔料を含有するカラーベース塗料、干渉マイカ顔料を含有するマイカベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装する複層塗膜形成方法であって、
    前記マイカベース塗料は、表面にアルミナ及び/又はジルコニアからなる被膜が形成された平均粒子径0.01〜0.1μmである微粒子酸化チタンを含有するものであることを特徴とする複層塗膜形成方法。
  2. 微粒子酸化チタンは、マイカベース塗料中の干渉マイカ顔料100質量部に対して、0.1〜10.0質量部含有されている請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  3. 請求項1又は2記載の複層塗膜形成方法により形成されることを特徴とする複層塗膜。
  4. 請求項3記載の複層塗膜を有することを特徴とする物品。
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