〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態について説明する。
図2は、本実施の形態にかかる印刷装置である小型複写機(以下、本複写機とする)の構成を示す説明図である。この図に示すように、本複写機は、略コの字型の形状を有しており、スキャナー部A,印刷部B,用紙搬送部Cと、シート排出機構Dとから構成されている。
まず、スキャナー部Aについて説明する。図2に示すように、スキャナー部Aは、原稿台9およびスキャナー光学系10を有している。
原稿台9は、透明なガラスからなる原稿載置用の台である。また、原稿台9の下方に配されたスキャナー光学系10は、原稿台9に載置された原稿を光走査することにより、原稿画像のデータを取得するものである。
図2に示すように、このスキャナー光学系10は、露光ランプ11,反射鏡12−1・12−2・12−3,結像レンズ13および光電変換素子(CCD)14を備えている。
露光ランプ11は、原稿台9上の原稿に対して光を照射するための光源である。反射鏡12−1・12−2・12−3は、原稿からの反射光を、例えば図中に一点鎖線で示すように、結像レンズ13およびCCD14まで導くものである。CCD14は、結像レンズ13によって結像された反射光を受光し、この反射光に応じた電気信号の画像データを生成するものである。CCD14の生成した画像データは、所定の画像処理が施された後、後述するレーザースキャニングユニットに伝達される。
次に、印刷部Bについて説明する。
印刷部Bは、CCD14によって生成された画像データに基づいてトナー像を生成し、これをシート(記録用紙)に転写するためのものである。図2に示すように、印刷部Bは、感光体ローラ28,帯電部29,現像部30,転写部31,クリーニング装置32およびレーザースキャニングユニット(LSU)33とを備えている。
感光体ローラ28は、円筒状のアルミニウム素管に感光層(例えばOPC(Organic Photoconductive Conductor )層)を塗布してなるドラム形状の感光体であり、矢印W方向に回転駆動されるようになっている。帯電部29は、感光体ローラ28の表面を所定の電位に均一に帯電させる、チャージャー型の帯電器である。
LSU33は、帯電された感光体ローラ28の表面をレーザー光によって露光することにより、この表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有するものである。
現像部30は、黒トナーを収納しており、LSU33によって形成された静電潜像を現像ローラ30aで現像することによって、感光体ローラ28の表面にトナー像を形成するものである。
転写部31は、感光体ローラ28上のトナー像をシートに転写するための、チャージャー型のコロナ放電器である。すなわち、転写部31は、高圧の転写電源を用いて転写電流をワイヤーに通電させ、コロナ放電を起こすように設定されている。そして、この放電によって、所定の転写領域(転写部31と感光体ローラ28との間の領域)に位置するシートに対し、トナー像と逆極性の正電荷を与える(帯電させる)ものである。
これにより、転写部31は、感光体ローラ28にシートを吸着させるとともに、感光体ローラ28上のトナー像をシートに移動させるようになっている。なお、転写部31では、シートの抵抗値が一定の場合、シートの帯電量は、ワイヤーに流れる転写電流値(あるいは転写電圧値(ワイヤーに印加する電圧値))に応じた量となる。
なお、転写部31の構成・制御については、実施の形態2において詳細に説明する。
クリーニング装置32は、トナー像の転写後、感光体ローラ28の表面に残留したトナーを掻き取って除去するものである。
次に、用紙搬送部Cについて説明する。
用紙搬送部Cは、印刷部Bにシートを供給するとともに、シートに転写されたトナー像を定着させるためのものである。また、用紙搬送部Cは、シートを本複写機の外部に排出する機能も有している。
図2に示すように、用紙搬送部Cには、固定給紙トレイ15および手差し給紙トレイ16なる2つの給紙トレイと、固定給紙搬送路N,手差し給紙搬送路M,主搬送路L,サブ排出路Rおよび副搬送路Sの5種類のシート搬送路とが設けられている。
また、これらシート搬送路および給紙トレイの近傍には、シートを給紙・搬送するための部材として、ピックアップローラ18,給紙ローラ19,レジストローラ22,定着ローラ23,ガイド部材41・42,サブ排出ローラ25および副搬送ローラ27−1・27−2・27−3が配されている。
さらに、用紙搬送部Cは、シート搬送路における所定の位置をシートが通過したことを検知するために、レジスト前検知スイッチ,定着紙検知スイッチおよび排紙検知スイッチを(全て図示せず)備えている。また、サブ排出路Rの端部および下方には、シートを排出するためのサブ排出口40およびサブ排出トレイ39が設けられている。
固定給紙トレイ15は、印刷にかかるシートPを収納するための給紙カセットである。手差し給紙トレイ16は、固定給紙トレイ15に収納できない、あるいは収納したくない種類のシートを給紙するためのものである。
ピックアップローラ18は、固定給紙トレイ15および手差し給紙トレイ16の先端に備えられ、これら給紙トレイ15・16からシートを1枚毎に出紙する半月状の呼び込みローラである。
また、給紙トレイ15・16には、ピックアップローラ18による出紙を適切に補助するための、用紙さばき部(図示せず)が設けられている。この用紙さばき部は、ローラと摩擦シート部材あるいは摩擦ローラとから構成することが可能である。
給紙ローラ19は、固定給紙搬送路Nおよび手差し給紙搬送路Mにおける給紙トレイ15・16側の先端に備えられている。そして、ピックアップローラ18によってトレイ15・16から出紙されたシートを、給紙搬送路N・Mを介して主搬送路Lに送り込む機能を有している。
また、これら給紙搬送路N・Mおよび副搬送路Sは、レジストローラ22の上流側(給紙トレイ側を上流とし、シートの排出方向側を下流とする)で合流している。そして、合流箇所の近傍には、レジスト前検知スイッチが設けられている。このレジスト前検知スイッチは、主搬送路Lに向けて搬送されているシートが所定の位置(例えば上記の合流箇所)を通過したことを検知し、所定の検知信号を出力するためのものである。
レジストローラ22は、主搬送路Lを搬送されているシートをいったん保持するものである。そして、感光体ローラ28上のトナー像をシートに良好に転写できるように、感光体ローラ28の回転にあわせて、シートを転写部31にタイミングよく搬送する機能を有している。
すなわち、レジストローラ22は、レジスト前検知スイッチの出力した検知信号に基づいて、感光体ローラ28上のトナー画像の先端をシートにおける印刷範囲の先端に押し付けるように、シートを搬送するように設定されている。
定着ローラ23は、所定の定着温度でシートを圧着することで、シートに転写されたトナー像を、シートに対して熱定着させるものである。なお、定着ローラ23の詳細な構成については後述する。
また、定着ローラ23の近傍には、定着紙検知スイッチが設けられている。そして、本複写機では、この定着紙検知スイッチによって、シートが定着ローラ23を通過したことを検知するようになっている。
定着ローラ23の下流側では、主搬送路Lと副搬送路Sとの分岐点、および、メイン排出路Kとサブ排出路Rとの分岐点(合流点)が設けられている。また、各分岐点には、シートの搬送路を設定するためのガイド部材(切換ゲート)41・42が備えられている。さらに、サブ排出路Rの終端に位置するサブ排出口40の近傍には、シートをサブ排出トレイ39に排出するためのサブ排出ローラ25が設けられている。
また、ガイド部材41の近傍には、シートがガイド部材41を通過したことを検知するための排紙検知スイッチが設けられている。そして、この排紙検知スイッチ,サブ排出ローラ25およびガイド部材41・42は、副搬送路Sとともに両面印刷機構として機能するように設定されている。
すなわち、通常の片面印刷では、ガイド部材41・42をa側に回動しておくことによって、主搬送路Lとサブ排出ローラ25との間が開放されるようになっている。これにより、定着ローラ23を抜けたシートが、サブ排出路Rに搬送され、順回転しているサブ排出ローラ25によってサブ排出トレイ39に載置されるように設定されている。
一方、両面に印刷を行う場合も、一方の面に対する印刷が終了した後、シートは、主搬送路Lからサブ排出路Rに搬送され、順回転しているサブ排出ローラ25によってサブ排出口40の方向に送られる。
その後、排紙検知スイッチによりシートの後端部がガイド部材41を通過したことが検知されると、ガイド部材41がb側に回動されて副搬送路Sとサブ排出ローラ25との間が開放されるとともに、サブ排出ローラ25が、シートを保持したまま逆方向に回転するように設定されている。
これにより、シートは、後端部から副搬送路Sに運ばれる。そして、副搬送ローラ27−1〜27−3によって再びレジストローラ22まで搬送され、印刷部Bによって裏面に印刷されるようになっている。
また、ガイド部材41をa側に、ガイド部材42をb側にそれぞれ回動することで、主搬送路Lとメイン排出路Kとの間が開放され、印刷後のシートをシート排出機構Dに送れるようになっている。
このように、本複写機では、シートを、主搬送路Lに沿って上方向に搬送し、さらに、主搬送路L上に設けられた印刷部Bによって印刷処理を行うように設定されている。これにより、装置全体のコンパクト化を図ることが可能となっている。
なお、用紙搬送部Cにおける手差し給紙搬送路Mおよび副搬送路Sの近傍には、シート種類検知センサー52および気圧センサー53が備えられている。これらは、定着ローラ23の定着温度を制御するための、定着温度設定部における部材である。この定着温度設定部の詳細な構成・機能については、後に詳細に説明する。
次に、シート排出機構Dについて説明する。
シート排出機構Dは、スキャナー部Aの下面に取り付けられており、印刷部Bから印刷済のシートを受け取って、ステープル処理等の後処理を施した後に出力する機能を有している。
図2に示すように、シート排出機構Dは、メイン排出路K,第1パス3および第2パス4のシート搬送路と、トレイラック7に設置されたスライドトレイ1およびエスケープトレイ2の排出トレイとを有している。
また、これらシート搬送路および排出トレイの近傍には、シートに対する搬送および後処理を行うための、ガイド部材43・44,第1排出ローラ群5,第2排出ローラ群6およびステープラー8が備えられている。
メイン排出路Kは、シート排出機構Dにシートを導入するための搬送路である。ガイド部材43は、メイン排出路Kを搬送されてきたシートを、第1パス3あるいは第2パス4のいずれかに導くための切換ゲートである。
第1パス3および第2パス4は、メイン排出路Kを通過してきたシートを外部に排出するための搬送路である。
第1パス3は、ステープラー8を備えており、シートに対してステープル処理を施す場合に使用されるルートである。また、第2パス4は、ステープル処理を行わずにシートを排出するためのルートである。
また、本複写機では、ステープル処理を禁止されているシート(特殊シートや小サイズのシート等)をシート排出機構Dに搬送した場合には、自動的に第2パス4が用いられるように設定されている。また、第2パス4の終端部には、第2パス4を搬送されてきたシートを第1排出ローラ群5に導くためのガイド部材44が設けられている。
第1排出ローラ群5は、第1パス3あるいは第2パス4を搬送されてきたシートを、上下方向にスライド可能なスライドトレイ1に排出するためのローラである。また、第2排出ローラ群6は、第2パス4を搬送されてきたシートを、スライドトレイ1の上方に設けられたエスケープトレイ2に排出するためのローラである。
トレイラック7は、スライドトレイ1およびエスケープトレイ2を設置し、さらに、これらトレイ1・2上でのシートの散逸を防止するためのラックであり、本複写機において、手差し給紙トレイ16と反対側の側面(図2における左側の側面)に設置されている。
スライドトレイ1は、積載されるシートの量(重量)に応じて下方にスライドする排出トレイである。従って、スライドトレイ1では、積載済みのシートによって第1排出ローラ群5の前面を塞いでしまうことを防止できるので、シートを多量に保持できる。また、積載済みのシートの位置が、排出にかかるシートによってずれてしまうことを防止できるようになっている。
一方、エスケープトレイ2は、ステープル処理を禁止されているシートを積載するための排出トレイである。また、エスケープトレイ2は、スライドトレイ1やサブ排出トレイ39を用いた連続複写を一時的に中断して他の複写処理を行う場合(割り込み複写を行う場合)にも使用される。
次に、本複写機の特徴的な構成である、定着ローラ23の定着温度を制御するための定着温度設定部について説明する。図1は、本複写機における定着ローラ23および定着温度設定部51の構成を示すブロック図である。
定着ローラ23は、接触型のローラ定着装置であり、図1に示すように、加熱ローラ101と、この加熱ローラ101を圧接する加圧ローラ102とを有している。
加熱ローラ101は、アルミ製の芯金101bの表面にテフロン(登録商標)の被覆層101aを設けた構成を有しており、その内部に、ヒーターランプ103を配設している。このヒーターランプ103は、加熱ローラ101の加熱源であり、ハロゲンランプから構成されている。また、被覆層101aの表面には、加熱ローラ101の表面温度を計測するための温度計104が取り付けられている。
このような構成を有する定着ローラ23では、図1に示すように、トナー像Tの転写されたシートPを、所定の定着速度(約60mm毎秒程度)で駆動されているローラ101・102間に誘導するように設定されている。
そして、これらローラ101・102における定着ニップ部Wn(圧接部;約4mm程度)によって加熱圧着することにより、トナー像TをシートPに定着させるようになっている。また、加熱ローラ101の表面温度は、定着温度設定部51により調整されるように設定されている。
なお、以下では、加熱ローラ101の表面温度を、定着ローラ23の定着温度、あるいは単に定着温度と称する。
また、図1に示すように、本複写機における定着温度設定部51は、シート種類検知センサー52,気圧センサー53,記憶部54,定着制御部55および定着電源56を備えている。
気圧センサー53は、図2に示すように、副搬送路S側の外壁に取り付けられている水銀気圧計であり、本複写機の設置されている環境における気圧(外気圧)を計測するものである。
シート種類検知センサー52は、図2に示すように、手差し給紙搬送路Mに、この搬送路Mを上下から挟むように設けられている。そして、手差し給紙トレイ16から手差し給紙搬送路Mに搬入されてきたシートの種類(材料および厚さに応じた種類)を判別する機能を有している。
すなわち、シート種類検知センサー52は、図1に示すように、ゲージ機能を有する1対の電極52a・52bを備えている。
これら電極52a・52bは、手差し給紙搬送路Mの上下から内部に向かって伸縮するように設定されている。シート種類検知センサー52は、手差し給紙搬送路Mに搬入されてきたシートを電極52a・52bで挟み込み、電極52a・52b間の距離を計測することによって、シートの厚さを求めるように設定されている。
また、シート種類検知センサー52は、シートを挟んだ状態の電極52a・52bの間に、定電圧を印加する。そして、電極52a・52bの間に流れる電流値を測定することで、シートの抵抗値を求めるようになっている。その後、シート種類検知センサー52は、シートの厚さ・抵抗値から、シートの体積抵抗率を求めるように設定されている。
また、図1に示すように、シート種類検知センサー52は、レーザー照射部52cと受光部52dとを有している。
これらレーザー照射部52cおよび受光部52dは、手差し給紙搬送路Mの上下における互いに対向する位置に備えられている。シート種類検知センサー52は、レーザー照射部52cおよび受光部52dを制御して、電極52a・52bに挟まれたシートに対し、レーザー光を照射するとともに、シートを透過した光を受光するようになっている。そして、シート種類検知センサー52は、レーザー光の照射量と受光量との比率に基づいて、シートの透過率を測定するように設定されている。
そして、シート種類検知センサー52は、求められたシートの体積抵抗率と透過率とに基づいてシートの材料を識別し、シートの材料と厚さとから、シートの種類を判別するようになっている。
なお、シート種類検知センサー52の判別できるシートの種類は、例えば、OHP(Over Head Projector )用シート,厚紙,普通紙,薄紙等である。
例えば、シート種類検知センサー52は、シートの厚み,体積抵抗率,透過率が、それぞれ105μm,1013Ωcm,3%である場合、シートを普通紙と判別する。
また、シート種類検知センサー52は、シートの材料が紙である場合、シートの厚みが120μm以上であれば厚紙、120μmより薄く、95μm以上であれば普通紙、95μmより薄ければ薄紙と判別するように設定されている。さらに、シート種類検知センサー52は、透過率が20%以上、かつ、体積抵抗率が1015Ωcm以上のものは、OHPシートと認識する。なお、シートにおける体積抵抗率の定義については後述する。
また、図1に示した記憶部54は、後述する温度設定テーブルを記憶するためのものである。定着電源56は、定着ローラ23のヒーターランプ103に電力を供給するためのものである。
定着制御部55は、定着温度設定部51の中枢部である。すなわち、定着制御部55は、シート種類検知センサー52および気圧センサー53から、シートの種類および外気圧の情報を取得する。そして、記憶部54に記憶されている温度設定テーブルと、定着ローラ23における温度計104の測定結果とに基づいて定着電源56を制御することで、定着ローラ23の定着温度を適切に設定する機能を有している。
ここで、温度設定テーブルとは、シートの種類・外気圧と、トナー像の転写されたシートを熱圧着するために最適な定着温度との対応表である。また、記憶部54は、定着の種類に応じた2種類の温度設定テーブル(第1温度設定テーブルおよび第2温度設定テーブル)を有している。
第1温度設定テーブル(第1テーブル;図示せず)は、シートの種類および外気圧に応じた、シート上のトナー像を完全に定着させるための定着温度(完全定着温度)が記載されている表である。この完全定着温度は、トナー像を完全に定着させるために、定着ローラ23による定着後(定着直後)のシートの温度(定着シート温度)を、その時の外気圧下で、トナーが溶融し、シート上に充分な強度を保って定着する温度(外気圧が1気圧の場合、170℃〜200℃程度)とするような、定着ローラ23の定着温度である。
また、第2定着温度テーブル(第2テーブル)は、シートの種類および外気圧に応じた、シート上のトナー像を仮定着させるための定着温度(仮定着温度)が記載されている表である。この仮定着温度は、トナー像を一時的に定着させるために、定着シート温度を、水の沸点以下であって、水の沸点から30℃以内の温度(外気圧が1気圧の場合、70℃〜100℃程度)とするような定着ローラ23の定着温度である。
図3は、定着ローラ23の定着速度を60mm毎秒に設定した場合における、第2テーブルの例を示す説明図である。この図に示す仮定着温度は、定着シート温度を水の沸点とするような、定着ローラ23の定着温度である。
このテーブルより、例えば、シートが普通紙、外気圧が760mmHgである場合、仮定着を行うときには、定着温度を125℃に設定することが好ましいといえる。
このように、本複写機では、定着制御部55が、シート上のトナー像を仮定着させる場合と、トナー像を完全に定着させる場合とで、異なる内容の温度設定テーブルを用い、定着ローラ23の定着温度を適宜変更するように設定されている。
次に、定着温度設定部51による定着温度制御における動作の流れについて説明する。
図4は、定着温度設定部51の動作を示すフローチャートである。この図に示すように、本複写機における印刷処理が開始されると、定着制御部55は、シート種類検知センサー52を制御してシートの種類を判別させた後(S1)、気圧センサー53を制御して外気圧を計測させる(S2)。
その後、定着制御部55は、印刷処理が、両面印刷であるか片面印刷であるかを判断する(S3)。そして、判断結果に応じて、後述する片面印刷処理あるいは両面印刷処理を実行し(S4・S5)、処理を終了する。
次に、片面印刷処理について説明する。図5は、片面印刷処理の流れを示すフローチャートである。この図に示すように、片面印刷処理では、定着制御部55は、まず、記憶部54を制御して、第1テーブルを参照する(S11)。
そして、定着制御部55は、この第1テーブルに基づいて、定着ローラ23の定着温度を、シートの種類および外気圧に応じた完全定着温度に設定し(S12)、処理を終了する。なお、この温度設定は、定着ローラ23の温度計104の計測結果に基づいて、定着電源56を制御(フィードバック制御)することによって行われる。
次に、両面印刷処理について説明する。図6は、両面印刷処理の流れを示すフローチャートである。この図に示すように、両面印刷処理では、定着制御部55は、定着処理が、シートの表面(おもてめん)に対する印刷(表面印刷)時における処理であるか、あるいは、裏面に対する印刷(裏面印刷)時における処理であるかを判断する(S21)。
そして、表面印刷時の定着処理である場合には、定着制御部55は、記憶部54を制御して、第2温度設定テーブル(第2テーブル)を参照する(S22)。その後、定着制御部55は、この第2テーブルに基づいて、定着ローラ23の定着温度を、シートの種類および外気圧に応じた仮定着温度に設定し(S23)、S21に戻る。
一方、定着制御部55は、裏面印刷時の定着処理である場合には、記憶部54を制御して、第1テーブルを参照する(S24)。そして、この第1テーブルに基づいて、定着ローラ23の定着温度を、シートの種類および外気圧に応じた完全定着温度に設定し(S25)、処理を終了する
このS25において設定される温度での定着により、本複写機では、シートの表面・裏面における2つのトナー像を、同時に、完全に定着できるようになっている。
以上のように、本複写機では、定着温度設定部51が、両面印刷を行う際、表面印刷時の定着シート温度を、水の沸点以下で、かつ、水の沸点から30℃以内の温度とするように、定着ローラ23の定着温度を制御するように設定されている。
また、裏面に対する印刷(裏面印刷)時には、定着温度設定部51は、定着シート温度を、表面の印刷画像と裏面の印刷画像とが、ともに充分な強度を保ってシートに定着する温度とするように、定着ローラ23の定着温度を制御するようになっている。
このような制御により、本複写機では、簡単な構成で画像転写を行えるとともに、搬送ジャムを防止することが可能となっている。
以下に、定着シート温度を上記のように設定することで、簡単な構成での画像転写および搬送ジャムの防止を実現できる理由について説明する。
図7は、1気圧下における、シートの温度と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
一般に、シートの温度が上昇すると、シート内の水分が減少するため、その体積抵抗率(電気抵抗)も上昇する。しかしながら、図7に示すように、シートの温度が沸点(1気圧下では約100℃)以下であれば、シートの水分量は、室温(約20℃;定着前)のときの値からほとんど変化しない。このため、その体積抵抗率は、1012〜1013Ωcmの範囲でほとんど変わらない。すなわち、シートの体積抵抗率は、室温での値から、高々10倍以内の値に上昇するだけである(1桁未満の変化)。
一方、シートの温度が沸点以上になると、シートにおける水分の蒸発量が激増するため、水分量の減少が顕著となる。従って、図7に示すように、シートの体積抵抗率は急激に上昇してゆく。
上記のことから、表面印刷後の定着シート温度を沸点以上とする構成では、裏面印刷を行う際、シートの体積抵抗率が大きく上昇してしまうことがわかる。このため、シートの裏面に対してトナー像を転写するために、裏面印刷時の転写電流値を表面印刷時より高く設定しなければならず、転写部31(図2参照)に、電流制御回路を設ける必要が生じる。さらに、転写電流値を高めることで、搬送ジャムの発生する可能性も高くなる。
そこで、本複写機では、定着温度設定部51が、表面印刷における定着シート温度を沸点以下とするように、定着ローラ23の定着温度を制御している。これにより、表面印刷後におけるシートの体積抵抗率の変化を抑制できる。このため、裏面印刷時に、表面と同様の転写電流値によってトナー像の転写を行っても、良好に画像を形成できる。
すなわち、本複写機では、裏面印刷の際に転写電流値を上げる必要がないため、転写部31の転写電流を変更する必要がない。これにより、電流制御回路等が不要となり、転写部31の構成を簡略化することが可能となっている。
さらに、本複写機では、転写電流を高めることによる搬送ジャムも回避できるようになっている。
また、シートにおける水分量の減少は、シートにおける皺(しわ)の発生の原因となる。従って、本複写機では、表面印刷後における定着シート温度を沸点以下として、シートの水分減少を抑えているため、裏面印刷時におけるシートの皺の発生を防止でき、搬送ジャムの発生をより効果的に抑制することが可能となっている。
また、本複写機では、表面印刷時における定着シート温度を低く設定しているので、裏面印刷時におけるシートの温度が低くなっている。従って、高温のシートを感光体ローラ28に接触させることがないので、感光体ローラ28の劣化を防止できる。
なお、定着シート温度を沸点以下とする定着では、トナー像を完全には定着できず、仮定着状態となる。そこで、本複写機では、裏面印刷時における定着シート温度が、充分な強度を保った状態でトナーが定着する温度(1気圧では170℃〜200℃)となるように、定着ローラ23の定着温度を制御している。これにより、裏面印刷時に、表面・裏面の両方を一度に完全定着できるようになっている。
また、上記したように、本複写機では、定着温度設定部51によって、両面印刷を行う際、表面印刷時の定着シート温度を、水の沸点以下で、かつ、水の沸点から30℃以内の温度とするように、定着ローラ23の定着温度を制御するように設定されている。
すなわち、本複写機では、表面印刷時の定着シート温度を、シート上のトナー像を確実に仮定着できる程度の十分に高い温度に設定するようになっている。これにより、表面印刷後におけるシート上のトナー像を十分に安定させられるので、このトナー像が、裏面印刷における搬送によって乱れてしまうことを回避することが可能となる。
このように、本複写機では、表面印刷時における定着シート温度を、水の沸点以下で、かつ、水の沸点から30℃以内の温度とするようになっている。これにより、表面印字後におけるトナー像を確実に仮定着できるとともに、シートの水分消失を回避できるようになっている。
また、本複写機では、シート種類検知センサー52が、シートの厚さ,体積抵抗率および透過率に基づいて、シートの種類を判別している。これにより、熱容量に応じてシートを分類できるので、定着シート温度を非常に正確に制御することが可能となっている。
また、本複写機では、シート種類検知センサー52によってシートの種類を判別するとともに、気圧センサー53によって外気圧を測定している。そして、シートの種類および外気圧に基づいて、定着温度設定部51が、定着シート温度を所定の温度とするように、定着ローラ23の定着温度を制御するように設定されている。従って、定着シート温度を、非常に正確に設定することが可能となっている。
また、本複写機では、定着温度設定部51が、シートの種類および外気圧に応じた、完全定着温度・仮定着温度の記載されている第1・第2テーブルを有している。そして、シートの種類および外気圧と、第1・第2テーブルとに応じて、定着ローラ23の定着温度を設定するようになっている。これにより、定着温度を求めるための演算を行う必要がないため、定着温度の設定処理における効率を高めることが可能となる。
さらに、上記したように、本複写機では、定着温度設定部51によって、表面印刷時における定着シート温度を、水の沸点を基準に設定している。すなわち、定着シート温度を単に100℃以下とする構成と異なり、気圧の低い場所(あるいは高い場所)で使用しても、表面印刷後におけるシートの水分減少・抵抗変化を招来することがないように設定されている。
すなわち、気圧の低い場所(標高の高い地域等)で使用した場合には、水の沸点は低下する。従って、この場合には、定着シート温度を100℃以下に設定しても、表面印刷においてシートの水分が激減して体積抵抗率が変化し、良好な画像形成を行えない。
これに対し、本複写機では、気圧センサー53によって気圧を測定し、表面印刷時における定着シート温度を、水の沸点以下とするように設定されている。これにより、表面印刷時におけるシートの水分減少を確実に回避できるようになっている。
なお、本実施の形態では、表面印刷後におけるシートの体積抵抗率にほとんど変化がないため、裏面印刷の際に、転写部31の転写電流を変更する必要がないとしている。しかしながら、これに限らず、転写部31に電流制御回路を設け、表面印刷時と裏面印刷時とで、転写電流を変更するようにしてもよい。
すなわち、上記したように、表面印刷時の定着シート温度を沸点程度とした場合でも、表面印刷後におけるシートの体積抵抗率は、僅かに(10倍以内)上昇する。そこで、この僅かの差を埋めるために、裏面印刷時の転写電流値を、表面印刷時より高くして、シートの帯電量を適切に制御するように設定されていることが好ましい。
なお、この場合、裏面印刷時の転写電流値を、搬送ジャム(感光体ローラ28へのシートの巻きつき)を生じさせない程度の大きさに設定することが好ましい。また、このような転写電流値の制御は、後述する実施の形態2に示すような、転写電流設定部を用いることによって可能となる。
また、定着シート温度Tpは、シートに与えられる熱量Qに比例する値であり、以下の(1)式により設定される。
Tp=K1×Q … (1)
この式において、K1は、シートの種類や、本複写機の設置環境に依存する定数である。
また、一般的に、定着時においてシートに与えられる熱量Qは、定着温度Tr 、定着ニップ部Wn(図1参照)の幅N(ローラ101・102におけるシートへの接触幅)、定着速度Vの関数として、以下の(2)式を用いて表すことができる。
Q=F(Tr ,N,V) … (2)
従って、定着シート温度を100℃以下とするために必要な熱量Qを求めるには、(2)式のパラメータであるTr ,N,Vから最適プロセス条件を決めればよいことがわかる。
例えば、本複写機を用いた実験では、定着温度を130℃、定着ニップ部Wnの幅を4mm、定着速度を61mm毎秒(mm/sec)と設定することにより、定着シート温度を100℃に設定できることが確認されている。
また、ここで、上記した体積抵抗率について説明する。周知のように、あるサンプルの体積抵抗率は、サンプルの電圧勾配を、その電流密度で除して得られる値である。
本複写機では、シート種類検知センサー52における電極52a・52bによって、シートの厚さ方向に電圧を印加して、抵抗値r(Ω)を測定するようになっている。そして、電極52a・52bのシートに触れている面積s(cm2 )と、シートの厚さtp(cm)とから、
ρ=r・s/tp … (3)
によって表現される(3)式を用いて、体積抵抗率ρを求めるように設定されている。
また、本実施の形態では、両面印刷時における表面印刷の際、定着温度設定部51が、定着シート温度を、水の沸点以下であって、水の沸点から30℃以内の温度(外気圧が1気圧の場合、70℃〜100℃程度)とするように、定着ローラ23の定着温度を制御するとしている。
しかしながら、これに限らず、定着温度設定部51は、表面印刷時における定着後のシートの体積抵抗率を、定着前の10倍以内の値とするように、定着ローラ23の定着温度を設定するようにしてもよい。
このような構成であっても、外気圧によらず、表面印刷後における水分の蒸発を抑制できるとともに、仮定着を十分に行える。これにより、定着シート温度を沸点以下30℃以内に設定する構成と同様に、良好な画像定着を実現することが可能となる。
また、同様に、両面印刷時における表面印刷の際、定着温度設定部51が、定着シート温度を、水の沸点以下であって、トナーのガラス融点以上の温度とするように、定着ローラ23の定着温度を制御するようにしてもよい。このようにしても、外気圧によらず、表面印刷後における水分の蒸発を抑制できるとともに、仮定着を十分に行える。
また、本実施の形態では、シート種類検知センサー52を、手差し給紙搬送路Mに設けている。しかしながら、これに限らず、シート種類検知センサー52を固定給紙搬送路Nに設け、この搬送路Nから供給されるシートの種類を検知するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、気圧センサー53が水銀気圧計であるとしている。しかしながら、気圧センサー53としては、アネロイド気圧計等、どのような原理の気圧計を使用してもよい。
また、定着ローラ23における加熱ローラ101の近傍に、安全装置を設けるようにしてもよい。この安全装置は、サーモスタットや温度ヒューズ等からなるものである。さらに、この安全装置は、温度計104や定着制御部55の故障等により、加熱ローラ101の表面温度を制御できなくなった場合に、ヒーターランプ103への通電を遮断する機能を有していることが好ましい。
また、本実施の形態では、本複写機が、定着装置として、2つのローラ101・102からなる、定着ローラタイプの定着ローラ23を備えているとしている。しかしながら、本複写機の定着装置としては、どのよう方式のものを用いてもよい。例えば、本複写機の定着装置として、ベルト定着装置や非接触定着装置(赤外線ランプ方式、キセノンフラッシュ方式、面状ヒーター方式等)を用いてもよい。
また、本複写機における第1・第2テーブルの値(定着温度)は、本複写機における定着方式や、定着ニップ部Wnの幅、定着速度に応じて変化するものである。従って、図3に示した第2テーブルの例は、図1に示した定着ローラ23を用いて、定着速度および定着ニップ部Wnの幅を、それぞれ60mm毎秒,4mmに設定した場合の値である。
また、図3に示した第2テーブルでは、3種類の気圧値に応じて定着温度を設定するようになっている。しかしながら、この図は、実際に使用する第2テーブルの一部である。すなわち、実際に使用する第2テーブルでは、非常に細かく分割された気圧範囲のそれぞれに応じて、定着温度を詳細に設定するようになっている。
また、本実施の形態では、定着温度設定部51が、シート種類検知センサー52,気圧センサー53および記憶部54を備えているとしている。そして、表面印刷および裏面印刷の双方の場合において、シートの種類,外気圧,第1・第2テーブルを用いて、定着ローラ23における最適な定着温度を設定するようになっている。
しかしながら、これに限らず、定着温度設定部51は、裏面印刷時においては、シートの種類や外気圧によらず、定着ローラ23の定着温度を、常に一定の温度(例えば、170〜200℃程度)に設定するようにしてもよい。この場合には、第1テーブルを不要とできるので、記憶部54の容量を節約することが可能となる。
また、定着温度設定部51は、記憶部54を備えず、最適な定着温度を、シートの種類や外気圧に応じて、所定のプログラムを用いた計算によって求めるようにしてもよい。
また、定着温度設定部51は、シートの種類および外気圧の双方ではなく、シートの種類のみ、あるいは、外気圧のみに基づいて、定着温度を設定するようにしてもよい。このようにすれば、定着温度設定部51の構成を簡略化できるので、本複写機の製造コストを削減できる。また、第1・第2テーブルを簡略化できるので、記憶部54の容量を節約できる。
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施の形態では、実施の形態1に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その説明を省略している。
本実施の形態にかかる印刷装置である小型複写機(以下、本複写機とする)は、実施の形態1に示した小型複写機の構成において、転写部31の転写電流値を制御するための転写電流設定部を備えている構成である。
図8は、この転写電流設定部61と、転写部31との構成を示す説明図である。上記したように、転写部31は、所定の転写領域に位置するシートを帯電させることにより、シートにトナー像を転写するものであり、図8に示すように、転写ワイヤー31aを有している。
そして、転写電流を転写ワイヤー31aに通電させてコロナ放電を発生させることで、シートを帯電させ、トナー像の転写を行うように設定されている。また、シートの帯電量は、転写ワイヤー31aに流れる電流値(転写電流値)の増加に応じて増大するようになっている。
転写電流設定部61は、転写部31の転写電流値を制御するためのものであり、転写電源62および転写制御部63を備えている。転写電源62は、転写部31に電力を供給するための電源であり、電流制御回路を有している。
また、転写制御部63は、転写電源62によって転写部31に供給される電力を制御することにより、転写電流値を設定するものである。
そして、特に、本複写機では、転写制御部63が、転写電流値を、ライン画像(細線画像;略直線のドット列からなる画像)の転写において最もよい転写効率を得られる値(ライン画像に最適な転写電流値)に設定するようになっている。これにより、本複写機では、高解像度画像(1200dpi以上の画像)であっても、良好に転写を行うことが可能となっている。
以下に、転写電流を上記のように設定することで、高解像度画像を良好に転写できる理由について説明する。
本願発明者らは、最適な転写電流値を求めるために、転写部31に通電する転写電流値を様々に変化させながら印刷を行うことによって、転写電流値と転写効率との関係を求めた。
なお、転写効率E(%)とは、感光体ローラ28上に形成されたトナー像の重量a(g)と、シートに転写されたトナー像の重量b(g)との比、すなわち、E(%)=(b/a)×100 … (4)
のことであり、転写特性を示す指針の1つである。転写効率Eの値が高いほど、感光体ローラ28上に形成されたトナー像を、確実にシートに転写できていると看做せる。また、転写効率Eが100%になると、感光体ローラ28上のトナー像を全てシートに転写できたことになる。つまり、転写効率Eが100%に近いほど、良好な転写であるといえる。
図9および図10は、画像の解像度をそれぞれ600dpi,1200dpiに設定した場合の、ライン画像およびベタ画像における転写電流値と転写効率との関係を示すグラフである。
図9に示すように、解像度を600dpiに設定した場合(600dpiモード)の転写効率は、ライン画像およびベタ画像とも、同じ転写電流に対してほぼ同じ値を示している。また、両画像とも、転写電流の増加に伴って、転写効率も増加していることがわかる。
また、図10に示すように、解像度を1200dpiに設定した場合(1200dpiモード)、ベタ画像の転写効率は、600dpiモードと同様に、転写電流の増加に従って増えていく。しかしながら、ライン画像の転写効率は、ある転写電流(約100μA)でピークとなり、その後、転写電流を上げていくに連れて低下していく。
このように、1200dpiモードで印刷を行う場合、ライン画像とベタ画像とで、転写効率における転写電流への依存性に相違点があり、最適な転写電流値(最大の転写効率の得られる値)が異なることがわかる。
すなわち、従来のように、ベタ画像の転写効率を最大とする値(ベタ画像の転写効率を90%以上とする値)に転写電流値を設定すると、1200dpiモードでは、ライン画像の転写効率が著しく低下してしまい、トータルの画質を劣化させてしまうことがわかる。
そこで、本願発明者らは、ライン画像に最適な転写電流値(約100μA)を用いた場合の、ベタ画像の転写状態を調べる実験を行った。
すなわち、図10に示した結果より、転写電流値をライン画像に最適な約100μAとした場合、ベタ画像の転写効率は約84%となる。そこで、転写効率が84%の場合のベタ画像の状態を調べるために、ベタ画像における転写効率と画像濃度との関係を測定した。
図11は、この測定の結果を示すグラフである。このグラフに示すように、ベタ画像の画像濃度は、転写効率の増加に応じて高くなる傾向にある。また、一般に、画像濃度が1.3以上であれば、ベタ画像の画質は良好であると看做される。そして、図11に示すように、転写効率が84%のとき、ベタ画像の画像濃度は1.33となる。すなわち、ライン画像に最適な転写電流値を用いる場合でも、ベタ画像を良好に転写できることを確認できた。
また、解像度を1200dpi以上に設定して同様の実験(図9〜図11のグラフを求める実験)を行った結果、および、シートの種類(紙種)を様々に変えて同様の実験を行った結果より、1200dpi以上の解像度であっても、また、どのような種類のシートであっても、ライン画像に最適な転写電流値によってベタ画像を良好に転写できることがわかった。
以上の実験結果より、ライン画像に最適な転写電流値を用いて転写を行うことで、高解像度(1200dpi以上)の画像であっても、良好に転写を行えることが確認された。
なお、本実施の形態では、転写部31の転写を、転写電流を転写ワイヤー31aに通電させて発生させるコロナ放電によって行うとしている。しかしながら、転写部31の転写を、所定の転写電圧を転写ワイヤー31aに印加して発生させるコロナ放電によって行う、と表現することもできる。
また、転写電流値は転写電圧値に比例するため、図9〜図11に示したグラフの横軸を転写電圧値(転写電流を流すためにワイヤーに印加する電圧値)としても、測定結果の傾向(グラフの内容)は同様となる。
また、本実施の形態、および実施の形態1では、本複写機における転写部31を、転写ワイヤー31aを備えた、チャージャー型のコロナ放電器としている。しかしながら、これに限らず、転写部31として、接触ローラ型(バイアスローラ型)の放電器を使用することもできる。この放電器を用いて高解像画像を転写する場合にも、転写電流値(接触ローラの帯電量に応じた値)を、ライン画像の転写に最適な値に設定することが好ましい。
すなわち、コロナ放電器や接触ローラ型の放電器等、静電転写方式の転写装置を用いる場合には、転写電流値を、ライン画像の転写に最適な値に設定することが好ましいといえる。
また、本実施の形態では、転写部31の転写電流値を、ライン画像の転写に最適な転写電流値に設定するとしている。しかしながら、これに限らず、画像転写におけるシートの帯電量を、ライン画像の転写に最適な値に設定すれば、高解像度画像を良好に転写できる。
また、どのようなタイプの転写装置を用いる場合であっても、画像転写の際、シートにおけるトナー付着力を、ライン画像を適切に転写できるように設定すれば、高解像度画像を良好に転写することが可能である。
また、本実施の形態では、転写部31の転写電流値を、ライン画像の転写において最もよい転写効率(最大の転写効率)を得られる値(ライン画像の転写に最適な転写電流値)に設定するとしている。
しかしながら、これに限らず、ライン画像の転写効率が極大値をとる値に、転写部31の転写電流値を設定するようにしてもよい。さらに、ライン画像の転写効率が、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、非常に好ましくは95%以上となるように、転写部31の転写電流値を設定するようにしてもよい。
また、実施の形態1・2では、本発明の印刷装置を、小型複写機として示している。しかしながら、これに限らず、本発明の印刷装置は、トナー像を転写するための転写装置と、転写されたトナー像を定着するための定着装置とを備えた装置であれば、複写機に限らず、ファクシミリ装置やプリンターにも容易に応用することが可能である。
また、本発明の印刷装置を、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷装置であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷するように設定されている印刷装置においてシートを熱圧着することで、シートに転写されたトナー像を定着させる定着部と、表面印刷の際、定着後におけるシートの温度が水の沸点以下となるように、上記の定着部における定着温度を制御する定着温度設定部とを有している構成であると表現することもできる。
また、上記の定着部としては、加熱源(ヒーターランプ)を備えた加熱ローラと加圧ローラとからなる定着ローラ型の定着装置、ベルト定着装置、非接触型の定着装置(赤外線ランプ方式、キセノンフラッシュ方式、面状ヒーター方式)を採用できる。
また、上記の定着制御部は、シートの種類を判別するためのシート種類判別部と、外気圧を測定するための気圧測定部とを有しており、シートの種類および外気圧に応じて、定着部の定着温度を設定することが好ましい。気圧測定部としては、例えば、水銀気圧計やアネロイド気圧計を採用できる。
また、上記のシート種類検知センサーは、シートの厚さを測定するためのゲージと、シートの厚み方向の電気抵抗を測定する電極対とを備え、これらによってシートの体積抵抗率を求めるように設定されていることが好ましい。
さらに、シート種類検知センサーは、シートにレーザー光を照射するレーザー照射部と、シートを透過するレーザー光の量を測定する受光部とを備え、これらによってシートの透過率を測定するように設定されていることが好ましい。このようにすれば、シートの体積抵抗率と透過率とから、シートの材料を容易に求められる。
また、上記の定着制御部は、シートの種類および外気圧に応じた、定着後におけるシートの温度を水の沸点以下とするための定着温度の記載されているテーブル(第2テーブル)を有していることが好ましい。そして、シートの種類および外気圧と、上記のテーブルとに応じて、定着部の定着温度を設定することが好ましい。また、このテーブルは、定着部の定着方式や、定着ニップ部の幅、定着速度に応じて設定されていることが好ましい。
また、本発明の印刷装置を、トナー像を転写することでシートに画像を印刷する印刷装置において、シートにトナー付着力を与えることで、トナー像をシートに転写させる転写部と、上記の転写部を制御する転写制御部とを備えており、ライン画像の転写効率に極大値のある場合、あるいは、ライン画像とベタ画像とで、転写効率における転写電流への依存性に相違点のある場合には、上記の転写制御部は、シートのトナー付着力を、ライン画像を適切に転写できる大きさ(ライン画像の転写効率が極大となる大きさ)に設定するようになっている構成である、と表現することもできる。
また、本複写機における両面印刷において、表面に対する印刷時には、シート(転写紙)の物理特性のみが作用するといえる。このため、シートに画像を転写する転写条件としては、紙種や環境(温度、湿度)等のみを考えれば、良好な転写が行える。
また、転写部31は、チャージャー方式や接触型の転写部材であり、静電潜像担持体(感光体ローラ28)上のトナーがシートに転写されるといえる。また、この静電潜像担持体によれば、帯電・書き込み・現像・転写・クリーニングを繰り返すことによって、画像を形成するようになっている。
また、本複写機において、シート(転写材)上に形成されたトナー像は、定着ローラ23を通過することによって、シート上に固定されるといえる。また、片面印字の場合は前記のように転写・定着が行われて、ガイド部材41・42がそれぞれa・b側に移動して排紙される。一方、両面印字の場合、ガイド部材41・42はともにa側に移動して、シートをいったんサブ排出ローラ25にストックする。その後、ガイド部材(通紙経路変更手段)41がb側に変更され、シートは副搬送路Sを通って再度、転写部31へと送り込まれ、裏面側の画像形成が行われ、排紙される。
また、本複写機における両面印刷では、転写部31の裏面転写時における転写電圧もしくは電流は、表面転写時より、高くするか同等とし、感光体にシートが巻きつかないように設定することが好ましい。
また、本複写機では、シートが通紙されてきた際に、シート種類検知センサー52を通過させるようにしてもよい。このとき、紙厚、紙種を検知し(シートの厚みや、紙かOHPシートか等)、本体内部に持っている紙種VS定着ローラの温度テーブルと比較し、それに応じた定着ローラの表面温度を制御してもよい。この場合、シートの厚みはゲージ機能をセンサー52に持たせ、センサーがくっついている時を0mmとしてシートを挟み込んだ時の厚みを計る。また、その時に流れる電流量を求め、シートの体積抵抗値を算出する。センサーの面積は固定であるため、厚みと抵抗値が分かれば、体積抵抗値は算出可能。これにより、シートかOHPシートか紙かが判断でき、厚みも分かるので、内部テーブルから、定着ローラの温度制御が可能となる。
また、本複写機における、紙種・気圧検知センサーによる定着温度の決定を、以下のように行ってもよい。まず、通紙されたシートをシート種類検知センサー52で厚み、体積抵抗率、透過率を測定して紙種を決定する。それと同時に本体内部に取り付けられた気圧センサー53の出力値を参照し、テーブル(温度設定テーブル)から最適な定着温度を決定する。
また、本複写機では、定着ローラの温度制御をシートの温度に依存させているともいえる。また、本複写機における定着ローラ23の定着手段は接触型ローラ定着であり、定着ローラ23の加熱方式は、上ローラ型内部ヒーターであると表現できる。
また、定着装置(定着部)は、ローラの内部にヒーターを持った、定着ローラタイプが最も一般的である。また、内部テーブル(温度設定テーブル)は定着方式や定着ニップ幅、定着速度によって異なるので、1つの機種(印刷装置の機種)のコンセプトが決定されれば、内部テーブルは必然的に決定される。
また、シート種類検知センサー52は、紙厚がいくらであっても、透過率が20%以上、かつ、体積抵抗率が1015Ωcm以上のものはOHPシートとしてもよい。さらに、その他の透過率、体積抵抗率は紙として、厚みで区別してもよい。気圧に関しては表(図3)に上げたものは一例で、実際は細かく範囲規定を行い、それに伴って定着温度も微妙に制御することが好ましい。
また、シートの抵抗値は、厚み方向に熱が伝導してはじめて上昇するといえる。つまり、定着ローラの温度を90〜100℃に設定したからといって、そこを通過したシートがその温度にはならない。それは、紙のもつ熱容量に依存するためである。従って、表層の温度が50〜70℃と低い状態では、表面印字のトナーが仮定着されず、裏面に反転される間に乱れる可能性がある。
また、表面印刷における定着シート温度は、シートの抵抗値を上げずに、かつ、裏面に反転される間に表面のトナーが乱れない程度に固定される必要があるといえる。この場合、表面のトナーが程度固定されて、シートの抵抗が上がらない条件として、紙の温度が沸点以下が好ましい。つまり、ローラの温度が90〜100℃では、紙への熱伝達が少なすぎて、トナーの仮定着が不可能となる(シート表層の温度上昇が50〜70℃程度では不十分である)。つまり、シートの温度を定着ローラ通過後に沸点以下とするのがよい。
また、図9および図10より、1200dpiモードで印字を行う場合、画像の種類(ライン画像あるいはベタ画像)に応じて、最適な転写電流が異なることがわかる。しかし、転写電流を画像ごとに変更することは不可能であるため、転写電流をある値で決定する必要があるといえる。また、図9および図10は横軸を転写電流で表したが、転写電圧で表記しても同じことであることはいうまでもない。前述のように、転写電流を流すために必要な転写部材への印加電圧を横軸にとっても同じことである。
また、図10および図11は、濃度と高精細画像との関係を調べた結果であるともいえる。また、ベタの画像濃度が1.3以上あれば、良好なベタ画像が再現されていると考えられるため、図11より、1200dpiの画像において、転写効率が80%以上得られれば、良好な画像が再現されているといえる。
また、本複写機では、裏面印刷時における定着シート(定着後のシート)が、充分な強度を保った状態でトナーが定着する温度(1気圧では170℃〜200℃)となるように、定着ローラ23の定着温度を制御するようにしてもよい。
また、本発明は、以下に示す第1〜第4の画像形成装置として表現することもできる。すなわち、第1の画像形成装置は、帯電された静電潜像担持体表面に光書き込み手段にて光を照射することで静電潜像を形成し、静電潜像担持体と現像手段との間に印加する現像バイアスにて上記静電潜像にトナーを給して可視化し、転写手段を用いて前記可視化されたトナー画像をシートに転写し、画像を形成する電子写真方式の画像形成装置において、両面印字モードが選択された際に、表面転写後に定着手段を通過した直後のシートの温度は沸点以下であることを特徴とするものである。
すなわち、表面転写後に定着手段を通過したシートの温度を沸点以下にすることによって、過剰なシートの水分蒸発を防ぐことができ、シートのしわやカールの発生も最低限に抑えられる。これにより、シートの抵抗値上昇やシートの変形も防げるため、裏面転写を安定して行える。
また、第2の画像形成装置は、印字解像度が1200dpi以上であり、細線(1200dpi,1ライン)における最もよい転写効率の得られる転写電圧もしくは転写電流を、表裏面転写時の転写電圧もしくは転写電流としてそれぞれ設定することを特徴とするものである。
1200dpi未満の画質の場合、最もよい転写効率を得る転写電圧(あるいは転写電流)は、ライン画像とベタ画像とでほぼ同じ値であることがわかっている。つまり、画質評価の指針として、ベタの転写効率をこれまで求めてきたが、ラインの再現性もこれに準じていたので問題はなかった。
ところが、1200dpi画像の場合、最もよい転写効率を得る転写電圧(あるいは転写電流)は、ライン画像とベタ画像とで異なっている。つまり、これまでのように、ベタで得られた最もよい転写電圧で転写を行っても、ラインの再現性が悪いことが考えられる。ベタ画像としては、濃度が1.3以上あれば画質的には良好であることが一般的であるため、ベタの転写効率は80%以上確保できればよい。
図10より、1200dpiのラインの転写効率が最大のとき、ベタの転写効率は最大ではないが、転写効率80%以上を確保できているため、ラインの転写効率が最大となるポイントで、転写電圧もしくは転写電流を設定すれば、ベタもライン画像も良好に再現可能となる。つまり、1200dpi以上の画質の場合は、ライン画像の再現性を優先的に行うことによって、ベタ画像の再現性も確保できる。
また、第3の画像形成装置は、表面定着後のシートの体積抵抗率が、表面定着前の体積抵抗率に対して1桁未満の上昇になるよう、表面定着時の熱量を決定することを特徴とするものである。
これは、表面印字後のシートの体積抵抗率の上昇が、表面印字前の体積抵抗率に対して、1桁以上になるということは、定着時の温度が100℃以上となり、シートにしわが発生してしまうからである。
また、第4の画像形成装置は、第1の画像形成装置において、表面転写電圧Vs(電流Is)が、裏面転写電圧Vb(電流Ib)に対して、Vs≦Vb(もしくはIs≦Ib)であることを特徴とする。
表面の定着温度を低くしても、ある程度はシートの温度が上昇してしまうため、裏面の転写時にはシートの抵抗が若干上昇する。よって、裏面転写時の転写電圧もしくは転写電流は、表面印字時より上げるか、同等が最適である。
また、以上のように、第2の印刷装置(第2印刷装置)は、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷装置であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷するように設定されている印刷装置において、シートを熱圧着することで、シートに転写されたトナー像を定着させる定着部と、表面印刷の際、定着時におけるシートの温度を水の沸点以下とするように、定着部における定着温度を制御する定着制御部とを有していることを特徴としている。
この第2印刷装置は、複写機やプリンター,ファクシミリ装置等、トナー像をシートに転写・定着するためのものである。そして、第2印刷装置は、シートの表面を印刷した後、シートの裏面に対しても画像を印刷できる、両面印刷の可能な構成である。
また、第2印刷装置では、シートに転写されたトナー像を、定着部による熱圧着によって定着させるように設定されている。また、この定着部による定着の温度(定着温度)を、定着制御部によって制御するようになっている。
そして、特に、第2印刷装置では、表面印刷の際、定着制御部が、定着後におけるシートの温度(定着シート温度)を水の沸点以下とするように、定着部における定着温度を制御するように設定されている。
通常、シートは、水の沸点より高い温度となると、内部の水分が激減する。このため、その体積抵抗率が非常に上昇してしまう。従って、表面印刷後の定着シート温度を沸点より高く設定すると、通常の転写条件では、裏面印刷時におけるトナー像の転写を良好に行えなくなる。また、転写条件を変更するためには、転写電流の制御回路等を設ける必要があり、コストがかかる。
さらに、このような温度設定では、水分量の減少によってシートに皺(しわ)が発生し、裏面印刷時における搬送ジャムを生じやすくさせてしまう。
このため、第2印刷装置では、表面印刷時における定着シート温度を水の沸点以下とするように、定着部の定着温度を設定している。これにより、裏面印刷時における画像の転写およびシートの搬送を、容易に、かつ、良好に行えるようになっている。
さらに、第2印刷装置では、水の沸点を基準として定着シート温度を定めている。これにより、第2印刷装置では、定着温度や定着シート温度を単に100℃以下とする構成と異なり、気圧の低い場所(あるいは高い場所)で使用しても、表面印刷後におけるシートの水分減少・抵抗変化を招来することがない。
すなわち、気圧の低い場所(標高の高い地域等)で使用した場合には、水の沸点は低下する。従って、この場合には、定着シート温度を100℃以下に設定しても、表面印刷においてシートの水分が激減して体積抵抗率が変化し、良好な画像形成を行えない。
これに対し、第2印刷装置では、表面印刷時における定着シート温度を、水の沸点以下とするように設定されている。これにより、表面印刷時におけるシートの水分減少を確実に回避できるようになっている。
また、定着制御部は、表面印刷の際、定着シート温度を、水の沸点以下であって、かつ、水の沸点から30℃以内の温度とするように、定着部における定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。
これは、特開平5−173384号公報のプリンターのように、表面印刷時における定着ローラの温度を、1気圧下で90〜100℃に設定する構成では、シートの温度を十分に上げられず、十分な仮定着を行えないという問題があるからである。
すなわち、定着後のシートの温度は、定着温度だけでなく、シートの熱容量,シートの厚み等にも依存する。そして、定着温度を90〜100℃に設定するとともに、シートとして一般的なOA用コピー用紙を用いる場合、定着直後のシートの温度は、表層で50〜70℃程度、内部ではほぼ常温となっていることが確かめられている。
このように、シートの表層を1気圧下で50〜70℃程度に上昇させるだけでは、表層に転写されたトナー像を十分に仮定着できない。
従って、上記公報の構成には、表面印刷後におけるシート上のトナー像が不安定となり、裏面印刷における搬送によってトナー像が乱れてしまい、良好な画像形成を行えないという問題がある。
一方、表面印刷の際、定着シート温度を、水の沸点以下であって、かつ、水の沸点から30℃以内の温度とするように設定すれば、外気圧によらず、表面印刷後におけるトナー像を、シートに対して確実に仮定着することが可能となる。これにより、裏面印刷時における搬送によって、表面の画像が乱れることを防止できる。
また、上記の定着制御部は、外気圧を測定するための気圧測定部を備え、外気圧に応じて、定着部の定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。このように構成すれば、水の沸点を正確に求めることが可能となる。なお、外気圧とは、第2印刷装置の設置環境における気圧のことである。
また、第2印刷装置の定着制御部は、シートの種類を判別するためのシート種類判別部を有しており、シートの種類に応じて、定着部の定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。
定着シート温度は、定着部の定着温度だけでなく、シートの種類にも依存する値である。従って、上記のように構成することで、定着シート温度をより正確に制御できる。
また、上記のシート種類判別部は、シートの厚さ,体積抵抗率および透過率を測定することで、シートの種類を判別するように設定されていることが好ましい。この構成によれば、シートの厚さと、体積抵抗率・透過率から求められるシートの材料とによって、シートの種類を精密に分類できる。これにより、シートの熱容量を正確に推測できるので、定着シート温度を精度よく制御することが可能となる。
また、第2印刷装置の定着制御部は、上記した気圧測定部とシート種類判別部との双方を備え、外気圧とシートの種類とに応じて定着部の定着温度を制御するように設定されていることがさらに好ましい。このようにすれば、定着シート温度を非常に正確に制御できる。
また、この構成では、定着制御部に、シートの種類および外気圧に応じた、定着シート温度を水の沸点以下とするための定着温度の記載されているテーブルを備えることが好ましい。
そして、定着制御部が、シートの種類・外気圧と、上記のテーブルとに基づいて、定着部の定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。このようにすれば、定着温度を求めるための演算を行う必要がないため、定着温度の設定処理における効率を高めることが可能となる。
また、第2印刷装置の転写装置として、静電転写方式の転写部を備えるようにしてもよい。また、この場合には、裏面印刷の際、転写電流値を表面印刷時より増加させるように転写部を制御する、転写制御部を備えることが好ましい。
表面印刷時の定着シート温度を沸点以下とした場合でも、表面印刷後におけるシートの体積抵抗率は、僅かに上昇する。そこで、この僅かの差を埋めるために、裏面印刷時の転写電流値を表面印刷時より高くして、シートの帯電量を適切に制御することが好ましい。なお、この場合、裏面印刷時の転写電流値を、搬送ジャムを生じさせない程度の大きさに設定することが好ましい。
また、この第2印刷装置は、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷装置であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷するように設定されている印刷装置において、シートを熱圧着することで、シートに転写されたトナー像を定着させる定着部と、表面印刷の際、定着後におけるシートの体積抵抗率を、定着前の10倍以内の値とするように、定着部における定着温度を制御する定着制御部とを有しているものであってもよい。
このような構成であっても、外気圧によらず、表面印刷後における水分の蒸発を抑制できる。従って、定着シート温度を沸点以下に設定する構成と同様に、良好な画像定着を実現できる。
また、第2の印刷方法(第2印刷方法)は、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷方法であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷する印刷方法において、表面印刷の際、定着後におけるシートの温度を水の沸点以下とするような定着温度で、シートを定着することを特徴とする方法である。
第2印刷方法は、第2印刷装置において用いられている印刷方法である。すなわち、第2印刷方法では、表面印刷時における定着シート温度を水の沸点以下とするように、定着温度を設定している。これにより、裏面印刷時における画像の転写およびシートの搬送を、容易に、かつ、良好に行うことが可能となっている。
上記説明したとおり、第2の印刷装置(第2印刷装置)は、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷装置であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷するように設定されている印刷装置において、シートを熱圧着することで、シートに転写されたトナー像を定着させる定着部と、表面印刷の際、定着後におけるシートの温度を水の沸点以下とするように、定着部における定着温度を制御する定着制御部とを有している構成である。
この第2印刷装置では、表面印刷の際、定着制御部が、定着後におけるシートの温度(定着シート温度)を水の沸点以下とするように、定着部における定着温度を制御するように設定されている。
通常、シートは、水の沸点より高い温度となると、内部の水分が激減する。このため、その体積抵抗率が非常に上昇してしまう。従って、表面印刷後にシートの温度を沸点より高く設定すると、通常の転写条件では、裏面印刷時におけるトナー像の転写を良好に行えなくなる。また、転写条件を変更するためには、転写電流の制御回路等を設ける必要があり、コストがかかる。
さらに、このような温度設定では、水分量の減少によってシートに皺(しわ)が発生し、裏面印刷時における搬送ジャムを生じやすくさせてしまう。
このため、第2印刷装置では、表面印刷時における定着シート温度を、水の沸点以下とするように、定着温度を設定している。これにより、裏面印刷時における画像の転写およびシートの搬送を、容易に、かつ、良好に行えるようになっている。
さらに、第2印刷装置では、水の沸点を基準として定着シート温度を定めている。これにより、第2印刷装置では、定着シート温度を単に100℃以下とする構成と異なり、気圧の低い場所(あるいは高い場所)で使用しても、表面印刷後におけるシートの水分減少・抵抗変化を招来することがない。これにより、表面印刷時におけるシートの水分減少を確実に回避できるようになっている。
また、定着制御部は、表面印刷の際、定着シート温度を、水の沸点以下であって、かつ、水の沸点から30℃以内の温度とするように、定着部における定着温度を制御することが好ましい。このようにすれば、外気圧によらず、表面印刷後におけるトナー像を、シートに対して確実に仮定着することが可能となる。これにより、裏面印刷時における搬送によって、表面の画像が乱れることを防止できる。
また、上記の定着制御部は、外気圧を測定するための気圧測定部を備え、外気圧に応じて、定着部の定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。このように構成すれば、水の沸点を正確に求めることが可能となる。
また、第2印刷装置の定着制御部は、シートの種類を判別するためのシート種類判別部を有しており、シートの種類に応じて、定着部の定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。定着シート温度は、定着部の定着温度だけでなく、シートの種類にも依存する値である。従って、上記のように構成することで、定着シート温度を正確に制御できる。
また、上記のシート種類判別部は、シートの厚さ,体積抵抗率および透過率を測定することで、シートの種類を判別するように設定されていることが好ましい。この構成によれば、シートの厚さと、体積抵抗率および透過率から求められるシートの材料とによって、シートの種類を分類できる。これにより、シートの熱容量を正確に推測できるので、定着シート温度を正確に制御することが可能となる。
また、第2印刷装置の定着制御部は、上記した気圧測定部とシート種類判別部との双方を備え、外気圧とシートの種類とに応じて定着部の定着温度を制御するように設定されていることがさらに好ましい。このようにすれば、定着シート温度を非常に正確に制御できる。
また、この構成では、定着制御部に、シートの種類および外気圧に応じた、定着シート温度を水の沸点以下とするための定着温度の記載されているテーブルを備えることが好ましい。そして、定着制御部が、シートの種類および外気圧と、上記のテーブルとに基づいて、定着部の定着温度を制御するように設定されていることが好ましい。このようにすれば、定着温度を求めるための演算を行う必要がないため、定着温度の設定処理における効率を高められる。
また、第2印刷装置の転写装置として、静電転写方式の転写部を備えるようにしてもよい。また、この場合には、裏面印刷の際、転写電流値を表面印刷時より増加させるように、上記の転写部を制御する転写制御部を備えることが好ましい。
すなわち、第2の印刷装置においても、表面印刷後におけるシートの体積抵抗率は僅かに上昇する。そこで、この僅かの差を埋めるために、裏面印刷時の転写電流値を、表面印刷時より高くして、シートの帯電量を適切に制御することが好ましい。なお、この場合、裏面印刷時の転写電流値を、搬送ジャムを生じさせない程度の大きさに設定することが好ましい。
また、この第2の印刷装置は、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷装置であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷するように設定されている印刷装置において、シートを熱圧着することで、シートに転写されたトナー像を定着させる定着部と、表面印刷の際、定着後におけるシートの体積抵抗率を、定着前の10倍以内の値とするように、定着部における定着温度を制御する定着制御部とを有しているものであってもよい。
このような構成であっても、外気圧によらず、表面印刷後における水分の蒸発を抑制できるので、定着シート温度を沸点以下に設定する構成と同様に、良好な画像定着を実現できる。
また、本発明の第2の印刷方法(第2印刷方法)は、トナー像を転写および定着させることでシートに画像を印刷する印刷方法であって、シートの表面に対する画像の印刷を行った後、シートの裏面に対しても画像を印刷する印刷方法において、表面印刷の際、定着後におけるシートの温度を水の沸点以下とするような定着温度で、シートを定着する方法である。
第2印刷方法は、第2印刷装置において用いられている印刷方法である。すなわち、第2印刷方法では、表面印刷時における定着シート温度を、水の沸点以下とするように、定着温度を設定している。これにより、裏面印刷時における画像の転写およびシートの搬送を、容易に、かつ、良好に行うことが可能となっている。