JP2004272153A - 光学機能性シート - Google Patents
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Abstract
【課題】表面形状による集光機能を利用しなくても、内部の形態によって集光機能を発揮することができる光学機能性シートであって、液晶ディスプレイのバックライト用途などに用いた場合に正面の輝度を十分に大きくすることができる光学機能性シートを提供する。
【解決手段】膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなる光学機能性シートであって、壁相の膜面方向の相厚さが5〜100μmであり、かつ膜面方向における平均気固界面数が0.4〜5層/μmである。
【選択図】 なし
【解決手段】膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなる光学機能性シートであって、壁相の膜面方向の相厚さが5〜100μmであり、かつ膜面方向における平均気固界面数が0.4〜5層/μmである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種照明装置に付設される光学機能性シート、中でも液晶ディスプレイにおけるバックライト用途において好適に用いられる光学機能性シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯機器を初め、パソコン、モニター、テレビなど、あらゆる用途で各種ディスプレイが用いられている。中でも液晶ディスプレイは、携帯機器用の小型製品から、最近ではモニターやテレビなどの大型製品の分野に至るまで幅広く用いられている。液晶ディスプレイは、それ自体は発光体ではないため、バックライトにより裏側から光を入射することにより表示が可能となっている。
【0003】
また、バックライトには、単に光を照射するだけではなく、画面全体を均一に、しかも明るく点灯させることが要求される。そこで、バックライトを均一に点灯させるために、通常、拡散フィルムやプリズムシートのような光学機能性シートが付設されている。即ち、バックライトにおいて、導光板上に、光線の出射分布を均等化させる拡散フィルムを置き、さらに、正面の輝度を向上させるために、光を正面方向に集めるプリズムシートを重ねて使用することが通常行われている。
【0004】
プリズムシートは、断面が略三角形のプリズムを多数配列した構造をもつシートであり、このシートを使用することにより、バックライトからの光を効率よく正面方向へ集めることができるため、正面の輝度が向上する。
【0005】
ところが、プリズムシートの表面のプリズム列は非常に微細で頂角の尖った構造であるため、その製造時や取り扱い時に、表面を傷つけやすいという問題点がある。そのため最近では、シート内部に、光拡散性の多孔質相と実質的に空隙を含まない透明相を交互に配列させて集光機能を発現させた光学機能性シートが開発されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−214411号公報(全頁)
【特許文献2】特開2002−277613号公報(全頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の光拡散性の多孔質相と実質的に空隙を含まない透明相を交互に配列させた光学機能性シートにおいて、上記特許文献1及び2等に記載された従来の条件をとる場合では、未だ十分な輝度向上効果は得られ難かった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、表面形状による集光機能を利用しなくても、内部の形態によって集光機能を発揮することができる光学機能性シートであって、液晶ディスプレイのバックライト用途などに用いた場合に正面の輝度を十分に大きくすることができる光学機能性シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる目的を達成するために、次の手段を採用するものである。すなわち、本発明の光学機能性フィルムは、膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなる光学機能性シートであって、壁相の膜面方向の相厚さが5〜100μmであり、かつ膜面方向における平均気固界面数が0.4〜5層/μmであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光学機能性フィルムにおいて、以下のような要件をさらに具備することが好ましい。
(a) 多孔質の壁相の断面における空隙の平均孔密度が10〜1000個/100μm2である。
(b) 多孔質の壁相に含まれる空隙の数平均孔径が0.1〜10μmである。
(c) 多孔質の壁相内の空隙率が10〜70%である。
(d) 液晶ディスプレイのバックライト用の光学機能性シートである。
【0011】
このように、本発明は、光拡散性の多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が、膜面方向に交互に配列してなるシート構造をとることによって集光機能を発揮することができる光学機能性シートの場合、その集光機能は、壁相の膜面方向における気固界面数に依存するものであって、その気固界面数を0.4〜5層/μmという特定範囲内にすることが十分な輝度向上効果を発揮するために有効であるという新規な知見に基づくものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
(多孔質パターン)
本発明の光学機能性シートは、膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなるシート構造をとるものであり、該シート構造の一例を、図1(a)〜(g)に模式的に示す。即ち、図1中の各図は、本発明のシートの横断面における多孔質壁相1の形状を例示するための模式的横断面図である。断面にて観察される多孔質壁相1の形状としては、矩形(図1(a),(f),(g)参照)、台形(図1(b)参照)、三角形(図1(c)参照)、これらが変形したもの(図1(d),(e)参照)、およびこれらの組み合わせ形状が好ましく挙げられるが、これら以外の形状も用いることができる。つまり、横断面形状が矩形の多孔質壁相1がほぼシート面に対して垂直な方向に配された図1(a)の他に、図1(b)〜(e)のような形態も含まれる。また、図1(f)や(g)に示すように、光学機能性シートの上面近傍部分及び/又は下面近傍部分には多孔質壁相1が存在せず、光学機能性シートの上面及び/又は下面は透明相2で覆われていてもよい。
【0013】
ここで本発明の光学機能性シートにおいて、多孔質壁相1の膜面方向の相厚さtは5〜100μmである。多孔質壁相1の膜面方向の相厚さが5μm未満であると、入射した光線が十分に散乱されず、壁相での光拡散機能が不十分となる。また、多孔質壁相1の膜面方向の相厚さが100μmを超えると目視で隔壁が確認されるうえ、壁相内に入射した光線が迷光となり失活してしまう割合が多くなる。従って、多孔質壁相1内で光線が失活することなく高い光拡散性を得るためには、その多孔質壁相1の膜面方向の相厚さtを5〜100μmの範囲とすることが必要である。
【0014】
多孔質壁相1と透明相2は、空隙を含有するか否かにより区別されるものであり、空隙の有無の点を除けば、同じ素材で構成されてもよい。透明相2には空隙が含まれないため、光が実質的にまっすぐに透過することができる。一方、多孔質壁相1には、多くの空隙が含まれ、その空隙中の空気の屈折率は1.0と非常に小さいので、どのような透明な樹脂素材を用いても、その樹脂素材と空隙とは大きな屈折率差を有するものとなる。その結果、多孔質壁相1内での気固界面における反射及び屈折散乱の効率が大きくなり、薄い多孔質壁相でも高い光拡散機能を発揮することができる。
【0015】
(空隙(孔)の形状)
多孔質壁相1中に存在する空隙の断面形状は、図2(a)〜(d)に模式的に示すように種々の形状をとることができる。図2(a)〜(d)は、本発明のシートにおける多孔質壁相1内の空隙の断面形状を模式的に示すためのシート横断面の一部拡大断面図である。この空隙の断面形状としては、図2(a)に示される真円状、図2(b)に示される、膜面に垂直な方向に長軸をもつ楕円状、または、図2(c)のような水平方向に長軸をもつ楕円状、等が挙げられるが、これらの変形したもの、または楕円方向が異なるもの、混合されたもの等も好ましく用いられる。また、気泡の立体形状としては、真球状、回転楕円体状、扁平体形状等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。なお、多孔質壁相1内に存在する個々の空隙は、独立した気泡により形成されていてもよいし、図2(d)に示すように、二次元的あるいは三次元的に変形した連続孔であってもよい。
【0016】
本発明の光学機能性シートにおいて、多孔質壁相1内での膜面方向における平均気固界面数は0.4〜5層/μmである。図3は、図1(a)のシート構造における多孔質壁相1の部分を拡大して示す横断面図である。膜面方向における気固界面数とは、図3に模式的に示すような任意の多孔質壁相1の断面拡大観察像において、多孔質壁相1と透明相2との界面上の一点からもう一方の界面上の一点に向かって膜面と平行に、多孔質壁相1を通過する直線をひいたとき、この直線上に存在する気相部(空隙)と固相部との界面(気固界面)の数(層/μm)のことであり、その平均値を平均気固界面数という。本発明ではかかる手法で求められた多孔質壁相1内における平均気固界面数が、0.4〜5層/μmであり、より好ましくは0.7〜4層/μmがよい。多孔質壁相1内の平均気固界面数が0.4層/μmに満たないと、入射した光線が十分に散乱されず、壁相内における光拡散性が不十分となる。また、5層/μmを越えると、壁相内に入射した光線が迷光となり失活してしまう割合が多くなる。従って、多孔質壁相1内で光線が失活することなく高い光拡散性を得るためには、その多孔質壁相1内での平均気固界面数を0.4〜5層/μmとすることが必要である。なお、多孔質壁相1内における空隙は、その相厚さ方向のみならず、シート厚さ方向にも何層にも重なり合って存在しているものである。
【0017】
また、多孔質壁相1の断面に観察される空隙の存在密度、即ち平均孔密度は10〜1000個/100μm2であることが好ましい。空隙の平均孔密度が10個/100μm2より低い場合には、光線が多孔質壁相1を通過する際に気固界面に衝突する確率が低くなり、光拡散機能が不十分となる。またその平均孔密度が1000個/100μm2より高いと、空隙の径が非常に小さくなり、光拡散性、光反射性が波長によって変動するため好ましくない。上記範囲内の空隙の平均孔密度にすることにより光拡散特性をさらに高めることができる。
【0018】
また本発明の光学機能性シートは、多孔質壁相1内に含まれる空隙の数平均孔径が0.1〜10μmであることが好ましい。ここでいう空隙の数平均孔径とは、多孔質壁相1の断面観察像において観察される空隙の径のことであり、その形状が真円でない場合には同面積の真円に変換した値とする。この空隙の数平均孔径は、後述するように、空隙の平均孔密度と空隙率とから算出することができる値である。空隙の数平均孔径が0.1μmより小さい場合には、散乱、反射現象が波長に依存することがあり、その結果シートを透過する光が着色するため好ましくなく、また10μmより大きくなると光拡散効率が悪くなる上、必要な気固界面数を確保するために壁相の厚みをかなり厚くしなければならなくなるため好ましくない。上記範囲内の空隙の数平均孔径にすることにより、散乱効率をさらに高めることができる。
【0019】
また多孔質壁相1内での空隙率は10〜70%であることが好ましく、より好ましくは15〜50%である。空隙率が10%より小さい場合には、光線が気固界面に衝突する確率が低くなり、光拡散機能が不十分となるため好ましくなく、また空隙率が70%より大きい場合には、機械的強度が不足して多孔質膜としての形態保持性に劣る傾向があるため好ましくない。上記範囲内の空隙率にすることにより、十分な光拡散特性と機械的強度を兼ね備えることができる。
【0020】
本発明の光学機能性シートの膜面方向断面における多孔質壁相1の配列構造(シート面上方から観察した場合の、シート面上および内部に見られる多孔質パターンのこと)においては、多孔質壁相1は、線状、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有することが好ましい。図4(a)〜(h)は、それぞれ、光学機能性シートをその膜面と平行に切断した場合の断面における、多孔質壁相1と透明相2との配置を模式的に示す断面図である。図4(a)〜(c)は透明相2がストライプ状である場合、図4(d)は透明相2の断面が円形状である場合、図4(e)は三角形状である場合、図4(f)〜(g)は四角形状である場合、図4(h)は六角形状である場合を、それぞれ例示するものである。これらの変形したもの等も好ましく用いることができ、これらに制限されるものではない。この透明相2は、図示した場合のように整列していてもよいし、ランダムに配列していてもよい。
【0021】
また、本発明のシートにおいて、シート膜厚方向における透明相2の厚さLと、シート断面における膜面方向の透明相2の短巾長さpとの比率(L/p、アスペクト比)が1〜10であることが好ましい。この比率を1〜10とすることが、光線の利用効率を低下させずに多孔質壁相1による十分な輝度向上効果を得るために好ましい。
【0022】
ここで、透明相2の短巾長さpは、図1(a)に示したように、シート断面において、多孔質壁相1と透明相2とが交互に繰返し配列する方向での透明相2の1つの相あたりの長さである。なお、図4(a)のようにストライプ状パターンの場合は壁相1間の最短距離が、透明相2が図4(d)のように円形の場合はその直径が、楕円の場合はその短径が、また、図4(e)〜(h)のように三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径が、透明相2の短巾長さpに相当する。また、シート厚み方向における透明相の厚さLは図1(a)に示すように、透明相2の厚みを指す。なお、図1(f)〜(g)のように多孔質壁相1の上下に透明相がある場合は、シート厚み方向における多孔質壁相1の厚さをLとする。
【0023】
また、本発明の光学機能性シートは、透明相2の短巾長さpが5〜250μmであることが好ましい。この範囲とすることで、液晶ディスプレイ用途へ使用した場合に、目視でシート上の繰り返しパターンが確認されず、画素パターンとの干渉が生じないため好ましい。また、繰り返しパターンのピッチは一定であってもよいし、規則的に変化しても、またランダムであってもよい。なお、透明相の長さ単位pは、図1(b)等のようにその長さ単位が膜厚方向で異なる場合はその平均値でもって表す。
【0024】
また、図4に示すようなシート面方向断面において、透明相2の面積と多孔質壁相1との面積比率(=透明相2の面積/多孔質壁相1の面積)は、50/1〜1/3であることが好ましく、さらには40/1〜1/2であることが好ましい。上記の面積比率とすることにより、光線の利用効率を低下させずに多孔質壁相1による十分な輝度向上効果を発揮させることができるため好ましい。
【0025】
また、本発明の光学機能性シートのシート厚さは、十分な集光効果を得るためのパターンの形成しやすさ(プロセス面)、および薄型化への対応等を考慮した場合、10〜500μmが好ましい。
【0026】
本発明の光学機能性シートの製造方法の例を以下に示す。その製造方法はここに挙げた方法に制限されない。
一つの方法として、少なくとも、バインダー樹脂、感光性化合物、光重合開始剤からなる組成物を、基材シート上に塗設し、その上を所望のパターンのフォトマスクで覆った状態で電磁波照射を行った後、バインダー樹脂に対する貧溶媒に浸漬し、その後、内部に浸透した貧溶媒を揮発させることにより、照射または未照射のいずれかの部分を多孔質化する方法などがある。
【0027】
例えば、エチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、メチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを始めとする(メタ)アクリレート類など、光照射により架橋し、高分子量化する感光性化合物と、光重合開始剤とを、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に均一分散させた組成物を、基材シート上に所定の厚さで塗布する。次いで、透明相となる部分が露光されるようなパターンのフォトマスクで覆い、このフォトマスクを通して露光する。このパターン露光により、露光部では感光性化合物が架橋して高分子量化する。続いて、熱可塑性樹脂の貧溶媒に浸積して、未露光部分の感光性化合物を抽出除去すると同時に貧溶媒と熱可塑性樹脂を相分離させ、その後、該貧溶媒を蒸発させることで、貧溶媒が存在していた部分が多孔質化する。この結果、露光されなかった部分には多数の気泡が分散含有される多孔質壁相1が形成され、また、露光部分には気泡を実質的に含有しない透明相2が形成される。
【0028】
また別の方法として、電磁波照射により分解して気体を発生させ得る感光性化合物を含有させた熱可塑性樹脂組成物を、基材シート上に塗布した後、所望のパターンに応じた電磁波照射を行い、加熱処理を施して熱可塑性樹脂を軟化させ、同時に、塗膜中の気体を熱膨張させる方法などもある。
【0029】
例えば、p−ジエチルアミノベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛塩又はホウフッ化塩、p−ジメチルアミノベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛塩又はホウフッ化塩、4−モルホリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛塩又はホウフッ化塩等のジアゾニウム塩類及びそれらの樹脂化合物といった、光照射により分解して気体を発生させ得る感光性化合物を、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に均一分散させた組成物を、基材シート上に所定の厚さで塗布する。次いで、透明相となる部分が遮光されるようなパターンのフォトマスクで覆い、このフォトマスクを通して露光する。このパターン露光により、露光部では、塗膜中で感光性化合物が分解し、塗膜中に微小な気体が生成する。続いて、加熱処理を施して熱可塑性樹脂を軟化させ、同時に、塗膜中の気体を熱膨張させる。この結果、露光部分には多数の気泡が分散含有される多孔質壁相1が形成され、露光されなかった部分は、気泡を実質的に含有しない透明相2となる。
【0030】
本発明の光学機能性シートは、単層シートであってもよいが、シート自体の機械的強度、耐熱性、取り扱いやすさ等を補う点から基材シート上に光学機能性膜層が形成された積層シート構造であることが好ましい。積層シート構造の場合、基材シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等に代表されるようなポリエステル系樹脂等からなるシートが好ましく用いられる。また、この基材シートは透明であってもよいが、拡散シートを用いるのがより好ましい。この場合の拡散シートは、透明マトリックス成分中に、マトリックス成分とは屈折率の異なる微粒子が分散されて存在することにより、シート内部で光拡散機能が発揮されるシートである。基材シートとして拡散シートを用いることにより、従来から用いられてきた拡散シートとプリズムシートの機能を一枚で達成することができるようになる。
【0031】
基材シートの厚みは、機械的強度等の面から20〜500μm、より好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜200μmである。
【0032】
本発明の光学機能性シートは、膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列しているものであるが、このような構造をとることによって、例えば、液晶ディスプレイのバックライト用途に好適に使用でき、この場合、導光板の上に重ねたり、または拡散シートの上に重ねることにより、液晶ディスプレイのバックライト用シートとして後方からの光線を効率よく正面に集光することができる。
【0033】
本発明の光学機能性シートを液晶ディスプレイのバックライト用のフィルムとして使用した場合に輝度向上効果が発揮されるメカニズムについて説明する。
【0034】
図5は、液晶ディスプレイに光を入射させるためのバックライトにおける各構成部材の相対的な位置関係を示す概略横断面図であり、バックライトとして用いる時にはそれら各構成部材同士は接している。
【0035】
図5において、導光板5の上面側に拡散シート4が配置され、さらにその上に本発明の光学機能性シート3が配置され、また、導光板5の下面側には反射シート7が配置されている。さらに、導光板5の側面には蛍光管6が配置されている。蛍光管6から照射される光は、導光板5の側面から導光板5内に入り、導光板5の上面から拡散シート4、本発明の光学機能性シート3を経て上方に出射する。
【0036】
このようなバックライトにおいて、本発明の光学機能性シートによる正面集光のメカニズムを図6に沿って説明する。図6は、図1(a)に示す本発明の光学機能性シートの横断面を、さらに拡大して概念的に示すシート横断面図である。本発明の光学機能性シート3に、その表面方向から(図5、図6では下方から)入射した光線λ0のうち、正面方向(図5、図6の上方方向)以外に逃げていってしまう側面方向(図5、図6の水平方向)への光線が多孔質壁相1へ当たり、拡散透過(λ2)または拡散反射(λ3)する。これにより、側面方向(図5、図6の水平方向)への出射が抑制され、正面方向(図5、図6の上方方向)への散乱確率が増え、正面における輝度が向上するものである。
【0037】
また、本発明の光学機能性シートの場合、図4(a)に示すストライプ状の一次元パターンとするよりも、図4(d)〜(h)の様に、透明相2の周囲を多孔質壁相1で覆った二次元パターンとする方が、全方向の入射光線を効率よく正面方向に集光させるために好ましい。また、該二次元パターンの方が所望の集光特性とするために好ましい。
【0038】
従来から使用されているプリズムシートの場合では、1枚では縦横のどちらか一方向分の光しか集光できず、縦横二次元の集光効果を発揮させるためには、プリズムシート2枚を使いそれぞれのプリズムの配列が直交するように重ね合わせる必要がある。これに対し、本発明の光学機能性シートでは、前記したような二次元パターンとすることによって一枚でもって縦横二次元の集光効果を発揮することができるので、高い集光効果を発揮させることができる。
【0039】
また、本発明の光学機能性シートでは、その集光機能が、シート内部に存在する相構造により発揮されるため、表面が平滑であるという特徴を併せ持つ。このため、その表面に帯電防止層、反射防止層、ハードコート層を形成するなどができる。また、他の機能を有する基材等との貼り合わせが可能となり、多機能を有する機能統合高性能シートの製造も可能になる。例えば、表面の平滑な拡散シートと一体化することにより、薄型でも高拡散機能と高輝度機能とを併せ持つシートが得られる。
【0040】
[特性の評価方法]
A.透明相のアスペクト比、多孔質壁相の膜面方向の相厚さ
シート横断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い400倍で写真を撮影し、断面観察を行ない、その透明相の幅p、透明相の厚さLを測定した。それらの比(透明相の幅p/厚さL)を求め、透明相のアスペクト比とした。
また、その電子顕微鏡写真から壁相の膜面方向の相厚さtを測定した。
【0041】
B.多孔質壁相内での平均気固界面数
シート横断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い、500〜2000倍の倍率のうち、多孔質壁相の断面全体が画面に入るような倍率で拡大観察する。得られた画像を用いて、多孔質壁相と透明相との界面上の一点からもう一方の界面上の一点に向かって膜面方向と平行に、多孔質壁相を通過する直線を引き、かかる直線が交差する気相部(空隙)と固相部の界面、即ち気固界面の数を数えた。同様の作業を任意の場所について10回行い、それらの平均値を算出して平均気固界面数(層/μm)とした。
【0042】
C.多孔質壁相内の空隙率、空隙の平均孔密度、数平均孔径
シート横断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い、2000〜10000倍の倍率のうち、1つの壁相の内部構造が十分観察できる倍率で拡大観察する。その画像を用いて、単位断面積当たりの空隙の面積を求め、空隙の面積占有率を算出した。これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を多孔質壁相内の空隙率(A%)とした。また、単位断面積内に存在する空隙の数を求めた。これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を面積100μm2あたりの数に換算して空隙の平均孔密度(B個/100μm2)とした。得られた空隙率(A%)と平均孔密度(B/100μm2)を用いて以下の式により空隙の数平均孔径(μm)を求めた。
(π:円周率)
【0043】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
ポリエステル樹脂(“エリーテル”UE3600:ユニチカ(株)製)100重量部、感光性モノマー(“ネオマー”BA−641:三洋化成(株)製)80重量部、別の感光性モノマー(“KAYARAD”DPCA−30:日本化薬(株)製)10重量部、さらに別の感光性モノマー(“RHMA”RHMA−M:日本触媒(株)製)50重量部、光重合開始剤(“イルガキュア”651:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)1.7重量部、及び、別の光重合開始剤(“イルガキュア”819:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.8重量部をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン混合溶媒(1/1,重量比)100重量部に溶解させた。この溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(“ルミラー”100 T60:東レ(株)製)上にブレードコーターを用いて塗布し、80℃で30分乾燥させた後、冷却して、その上に、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(“ルミラー”100U42:東レ(株)製)をカバーフィルムとして貼り合わせて、フィルム間に塗膜厚150μmの層が形成された樹脂シートを作製した。
【0045】
室温で透明状態のこの樹脂シートに、ピッチ95μm幅20μmのストライプパターンのフォトマスクを重ね、超高圧水銀灯を用いて30mJ/cm2の光を照射した後、85℃で2分間加熱して室温まで放冷した。カバーフィルムを剥離して、40℃のエタノールに3時間浸漬した後、室温まで放冷し、その後、エタノール中から取り出し、そのまま超高圧水銀灯を用いて、塗膜表面側、及び基板フィルム側の両表面に、それぞれ1000mJ/cm2の光を照射した後、真空乾燥によりエタノールを除去した。
【0046】
得られた塗膜の横断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が60μmの透明相となり、パターン未露光部は相厚さ(t)が35μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.0である光学パターンが形成できていた。
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は1.9層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は352個/100μm2、数平均孔径は0.29μm、空隙率は29.3%であった。
【0047】
得られた光機能性シートを、図5に示すような相対的位置関係となるようにパソコンモニター用直管4灯型バックライト上に配置し、色彩輝度計BM−7(トプコン(株)製)を用いて正面輝度を測定した。光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べ、正面輝度が13%向上していた。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同様にして塗膜厚が150μmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0049】
エタノール浸漬条件を、50℃のエタノールに5時間浸漬と変更した以外は、実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が45μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.0である光学パターンが形成できていた。
【0050】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は0.77層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は17個/100μm2個、数平均孔径は0.25μm、空隙率は33.9%であった。得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べ、正面輝度が10%向上していた。
【0051】
(実施例3)
フィルム間の塗膜厚を200μmと変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0052】
パターン露光量を40mJ/cm2と変更し、エタノール浸漬条件を、室温のエタノールに5時間浸漬と変更した以外は、実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が45μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.6である光学パターンをが形成できていた。
【0053】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は3.7層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は309個/100μm2、数平均孔径は0.16μm、空隙率は8.0%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べ、正面輝度が13%向上していた。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様にして塗膜厚が150μmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0055】
浸漬する溶媒をオクタノールに変更した以外は実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が50μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が2.0である光学パターンが形成できていた。
【0056】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は0.16層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は4個/100μm2、数平均孔径は1.2μm、空隙率は50.9%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べての輝度向上は認められなかった。
【0057】
(比較例2)
実施例1と同様にして塗膜厚が150μmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
パターン露光量を50mJ/cm2と変更した以外は実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成た。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が50μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.0である光学パターンが形成できていた。
【0058】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は0.13層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は17個/100μm2、数平均孔径は0.13μm、空隙率は50.9%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べての輝度向上は認められなかった。
【0059】
(比較例3)
塗膜厚を250μmと変更した以外は実施例1と同様に樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0060】
パターン露光量を90mJ/cm2と変更して、フォトマスクをピッチ200μm幅100μmとした以外は実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が180μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が120μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.1である光学パターンが形成できていた。
【0061】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は2.3層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は125個/100μm2、数平均孔径は0.32μm、空隙率は40.2%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べての輝度向上は認められなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、内部の形態によって、十分に大きな集光機能を発揮することができる光学機能性シートが得られる。また、表面加工することや他機能シートと張合せることが可能な平らな表面形状をもつ光学機能性シートとすることもできる。さらにまた、一枚のシートで画面の上下方向に広がる光も左右方向に広がる光も同時に集光することができる内部集光機能を有する光学機能性シートとすることもできる。
【0063】
従って、本発明の光学機能性シートは液晶ディスプレイ部材におけるバックライト等の用途に有用である。
【0064】
さらに、本発明の光学機能性シートは、表面が平滑な他機能シート(例えば拡散シート)と一体化することによって、集光機能と上記他機能とを併せ持つ高輝度薄型一体化シートにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(g)はそれぞれ、本発明の光学機能性シートの横断面を模式的に示す横断面図であり、横断面における多孔質壁相1の形状を模式的に例示する。
【図2】(a)〜(d)はそれぞれ、本発明の光学機能性シートの横断面の一部分を拡大して模式的に示す横断面図であり、多孔質壁相1内の空隙(気泡)形状を模式的に例示する。
【図3】図1(a)に示す本発明の光学機能性シートの横断面の一部分を拡大して模式的に示す横断面図であり、多孔質壁相1内を模式的に例示する。
【図4】(a)〜(h)はそれぞれ、本発明の光学機能性シートのシート面と平行な断面における相パターンを模式的に示す断面図であり、透明相2の形状を模式的に例示する。
【図5】光学機能性シートの集光性能を評価するために用いたバックライトでの各部材の相対的位置関係を示す装置構造の概略断面図である。
【図6】本発明の光学機能性シートによる集光作用のメカニズムを模式的に示すためのシート横断面図である。
【符号の簡単な説明】
1 多孔質壁相
2 透明相
3 本発明の光学機能性シート
4 拡散シート
5 導光板
6 蛍光管
7 反射シート
L 透明相の長さ
p 透明相の短軸長さ
t 多孔質壁相の相厚さ
λ0 入射光線
λ1 直進透過光線
λ2 壁相を拡散透過した光線
λ3 壁相で拡散反射した光線
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種照明装置に付設される光学機能性シート、中でも液晶ディスプレイにおけるバックライト用途において好適に用いられる光学機能性シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯機器を初め、パソコン、モニター、テレビなど、あらゆる用途で各種ディスプレイが用いられている。中でも液晶ディスプレイは、携帯機器用の小型製品から、最近ではモニターやテレビなどの大型製品の分野に至るまで幅広く用いられている。液晶ディスプレイは、それ自体は発光体ではないため、バックライトにより裏側から光を入射することにより表示が可能となっている。
【0003】
また、バックライトには、単に光を照射するだけではなく、画面全体を均一に、しかも明るく点灯させることが要求される。そこで、バックライトを均一に点灯させるために、通常、拡散フィルムやプリズムシートのような光学機能性シートが付設されている。即ち、バックライトにおいて、導光板上に、光線の出射分布を均等化させる拡散フィルムを置き、さらに、正面の輝度を向上させるために、光を正面方向に集めるプリズムシートを重ねて使用することが通常行われている。
【0004】
プリズムシートは、断面が略三角形のプリズムを多数配列した構造をもつシートであり、このシートを使用することにより、バックライトからの光を効率よく正面方向へ集めることができるため、正面の輝度が向上する。
【0005】
ところが、プリズムシートの表面のプリズム列は非常に微細で頂角の尖った構造であるため、その製造時や取り扱い時に、表面を傷つけやすいという問題点がある。そのため最近では、シート内部に、光拡散性の多孔質相と実質的に空隙を含まない透明相を交互に配列させて集光機能を発現させた光学機能性シートが開発されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−214411号公報(全頁)
【特許文献2】特開2002−277613号公報(全頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の光拡散性の多孔質相と実質的に空隙を含まない透明相を交互に配列させた光学機能性シートにおいて、上記特許文献1及び2等に記載された従来の条件をとる場合では、未だ十分な輝度向上効果は得られ難かった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、表面形状による集光機能を利用しなくても、内部の形態によって集光機能を発揮することができる光学機能性シートであって、液晶ディスプレイのバックライト用途などに用いた場合に正面の輝度を十分に大きくすることができる光学機能性シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる目的を達成するために、次の手段を採用するものである。すなわち、本発明の光学機能性フィルムは、膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなる光学機能性シートであって、壁相の膜面方向の相厚さが5〜100μmであり、かつ膜面方向における平均気固界面数が0.4〜5層/μmであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光学機能性フィルムにおいて、以下のような要件をさらに具備することが好ましい。
(a) 多孔質の壁相の断面における空隙の平均孔密度が10〜1000個/100μm2である。
(b) 多孔質の壁相に含まれる空隙の数平均孔径が0.1〜10μmである。
(c) 多孔質の壁相内の空隙率が10〜70%である。
(d) 液晶ディスプレイのバックライト用の光学機能性シートである。
【0011】
このように、本発明は、光拡散性の多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が、膜面方向に交互に配列してなるシート構造をとることによって集光機能を発揮することができる光学機能性シートの場合、その集光機能は、壁相の膜面方向における気固界面数に依存するものであって、その気固界面数を0.4〜5層/μmという特定範囲内にすることが十分な輝度向上効果を発揮するために有効であるという新規な知見に基づくものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
(多孔質パターン)
本発明の光学機能性シートは、膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなるシート構造をとるものであり、該シート構造の一例を、図1(a)〜(g)に模式的に示す。即ち、図1中の各図は、本発明のシートの横断面における多孔質壁相1の形状を例示するための模式的横断面図である。断面にて観察される多孔質壁相1の形状としては、矩形(図1(a),(f),(g)参照)、台形(図1(b)参照)、三角形(図1(c)参照)、これらが変形したもの(図1(d),(e)参照)、およびこれらの組み合わせ形状が好ましく挙げられるが、これら以外の形状も用いることができる。つまり、横断面形状が矩形の多孔質壁相1がほぼシート面に対して垂直な方向に配された図1(a)の他に、図1(b)〜(e)のような形態も含まれる。また、図1(f)や(g)に示すように、光学機能性シートの上面近傍部分及び/又は下面近傍部分には多孔質壁相1が存在せず、光学機能性シートの上面及び/又は下面は透明相2で覆われていてもよい。
【0013】
ここで本発明の光学機能性シートにおいて、多孔質壁相1の膜面方向の相厚さtは5〜100μmである。多孔質壁相1の膜面方向の相厚さが5μm未満であると、入射した光線が十分に散乱されず、壁相での光拡散機能が不十分となる。また、多孔質壁相1の膜面方向の相厚さが100μmを超えると目視で隔壁が確認されるうえ、壁相内に入射した光線が迷光となり失活してしまう割合が多くなる。従って、多孔質壁相1内で光線が失活することなく高い光拡散性を得るためには、その多孔質壁相1の膜面方向の相厚さtを5〜100μmの範囲とすることが必要である。
【0014】
多孔質壁相1と透明相2は、空隙を含有するか否かにより区別されるものであり、空隙の有無の点を除けば、同じ素材で構成されてもよい。透明相2には空隙が含まれないため、光が実質的にまっすぐに透過することができる。一方、多孔質壁相1には、多くの空隙が含まれ、その空隙中の空気の屈折率は1.0と非常に小さいので、どのような透明な樹脂素材を用いても、その樹脂素材と空隙とは大きな屈折率差を有するものとなる。その結果、多孔質壁相1内での気固界面における反射及び屈折散乱の効率が大きくなり、薄い多孔質壁相でも高い光拡散機能を発揮することができる。
【0015】
(空隙(孔)の形状)
多孔質壁相1中に存在する空隙の断面形状は、図2(a)〜(d)に模式的に示すように種々の形状をとることができる。図2(a)〜(d)は、本発明のシートにおける多孔質壁相1内の空隙の断面形状を模式的に示すためのシート横断面の一部拡大断面図である。この空隙の断面形状としては、図2(a)に示される真円状、図2(b)に示される、膜面に垂直な方向に長軸をもつ楕円状、または、図2(c)のような水平方向に長軸をもつ楕円状、等が挙げられるが、これらの変形したもの、または楕円方向が異なるもの、混合されたもの等も好ましく用いられる。また、気泡の立体形状としては、真球状、回転楕円体状、扁平体形状等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。なお、多孔質壁相1内に存在する個々の空隙は、独立した気泡により形成されていてもよいし、図2(d)に示すように、二次元的あるいは三次元的に変形した連続孔であってもよい。
【0016】
本発明の光学機能性シートにおいて、多孔質壁相1内での膜面方向における平均気固界面数は0.4〜5層/μmである。図3は、図1(a)のシート構造における多孔質壁相1の部分を拡大して示す横断面図である。膜面方向における気固界面数とは、図3に模式的に示すような任意の多孔質壁相1の断面拡大観察像において、多孔質壁相1と透明相2との界面上の一点からもう一方の界面上の一点に向かって膜面と平行に、多孔質壁相1を通過する直線をひいたとき、この直線上に存在する気相部(空隙)と固相部との界面(気固界面)の数(層/μm)のことであり、その平均値を平均気固界面数という。本発明ではかかる手法で求められた多孔質壁相1内における平均気固界面数が、0.4〜5層/μmであり、より好ましくは0.7〜4層/μmがよい。多孔質壁相1内の平均気固界面数が0.4層/μmに満たないと、入射した光線が十分に散乱されず、壁相内における光拡散性が不十分となる。また、5層/μmを越えると、壁相内に入射した光線が迷光となり失活してしまう割合が多くなる。従って、多孔質壁相1内で光線が失活することなく高い光拡散性を得るためには、その多孔質壁相1内での平均気固界面数を0.4〜5層/μmとすることが必要である。なお、多孔質壁相1内における空隙は、その相厚さ方向のみならず、シート厚さ方向にも何層にも重なり合って存在しているものである。
【0017】
また、多孔質壁相1の断面に観察される空隙の存在密度、即ち平均孔密度は10〜1000個/100μm2であることが好ましい。空隙の平均孔密度が10個/100μm2より低い場合には、光線が多孔質壁相1を通過する際に気固界面に衝突する確率が低くなり、光拡散機能が不十分となる。またその平均孔密度が1000個/100μm2より高いと、空隙の径が非常に小さくなり、光拡散性、光反射性が波長によって変動するため好ましくない。上記範囲内の空隙の平均孔密度にすることにより光拡散特性をさらに高めることができる。
【0018】
また本発明の光学機能性シートは、多孔質壁相1内に含まれる空隙の数平均孔径が0.1〜10μmであることが好ましい。ここでいう空隙の数平均孔径とは、多孔質壁相1の断面観察像において観察される空隙の径のことであり、その形状が真円でない場合には同面積の真円に変換した値とする。この空隙の数平均孔径は、後述するように、空隙の平均孔密度と空隙率とから算出することができる値である。空隙の数平均孔径が0.1μmより小さい場合には、散乱、反射現象が波長に依存することがあり、その結果シートを透過する光が着色するため好ましくなく、また10μmより大きくなると光拡散効率が悪くなる上、必要な気固界面数を確保するために壁相の厚みをかなり厚くしなければならなくなるため好ましくない。上記範囲内の空隙の数平均孔径にすることにより、散乱効率をさらに高めることができる。
【0019】
また多孔質壁相1内での空隙率は10〜70%であることが好ましく、より好ましくは15〜50%である。空隙率が10%より小さい場合には、光線が気固界面に衝突する確率が低くなり、光拡散機能が不十分となるため好ましくなく、また空隙率が70%より大きい場合には、機械的強度が不足して多孔質膜としての形態保持性に劣る傾向があるため好ましくない。上記範囲内の空隙率にすることにより、十分な光拡散特性と機械的強度を兼ね備えることができる。
【0020】
本発明の光学機能性シートの膜面方向断面における多孔質壁相1の配列構造(シート面上方から観察した場合の、シート面上および内部に見られる多孔質パターンのこと)においては、多孔質壁相1は、線状、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有することが好ましい。図4(a)〜(h)は、それぞれ、光学機能性シートをその膜面と平行に切断した場合の断面における、多孔質壁相1と透明相2との配置を模式的に示す断面図である。図4(a)〜(c)は透明相2がストライプ状である場合、図4(d)は透明相2の断面が円形状である場合、図4(e)は三角形状である場合、図4(f)〜(g)は四角形状である場合、図4(h)は六角形状である場合を、それぞれ例示するものである。これらの変形したもの等も好ましく用いることができ、これらに制限されるものではない。この透明相2は、図示した場合のように整列していてもよいし、ランダムに配列していてもよい。
【0021】
また、本発明のシートにおいて、シート膜厚方向における透明相2の厚さLと、シート断面における膜面方向の透明相2の短巾長さpとの比率(L/p、アスペクト比)が1〜10であることが好ましい。この比率を1〜10とすることが、光線の利用効率を低下させずに多孔質壁相1による十分な輝度向上効果を得るために好ましい。
【0022】
ここで、透明相2の短巾長さpは、図1(a)に示したように、シート断面において、多孔質壁相1と透明相2とが交互に繰返し配列する方向での透明相2の1つの相あたりの長さである。なお、図4(a)のようにストライプ状パターンの場合は壁相1間の最短距離が、透明相2が図4(d)のように円形の場合はその直径が、楕円の場合はその短径が、また、図4(e)〜(h)のように三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径が、透明相2の短巾長さpに相当する。また、シート厚み方向における透明相の厚さLは図1(a)に示すように、透明相2の厚みを指す。なお、図1(f)〜(g)のように多孔質壁相1の上下に透明相がある場合は、シート厚み方向における多孔質壁相1の厚さをLとする。
【0023】
また、本発明の光学機能性シートは、透明相2の短巾長さpが5〜250μmであることが好ましい。この範囲とすることで、液晶ディスプレイ用途へ使用した場合に、目視でシート上の繰り返しパターンが確認されず、画素パターンとの干渉が生じないため好ましい。また、繰り返しパターンのピッチは一定であってもよいし、規則的に変化しても、またランダムであってもよい。なお、透明相の長さ単位pは、図1(b)等のようにその長さ単位が膜厚方向で異なる場合はその平均値でもって表す。
【0024】
また、図4に示すようなシート面方向断面において、透明相2の面積と多孔質壁相1との面積比率(=透明相2の面積/多孔質壁相1の面積)は、50/1〜1/3であることが好ましく、さらには40/1〜1/2であることが好ましい。上記の面積比率とすることにより、光線の利用効率を低下させずに多孔質壁相1による十分な輝度向上効果を発揮させることができるため好ましい。
【0025】
また、本発明の光学機能性シートのシート厚さは、十分な集光効果を得るためのパターンの形成しやすさ(プロセス面)、および薄型化への対応等を考慮した場合、10〜500μmが好ましい。
【0026】
本発明の光学機能性シートの製造方法の例を以下に示す。その製造方法はここに挙げた方法に制限されない。
一つの方法として、少なくとも、バインダー樹脂、感光性化合物、光重合開始剤からなる組成物を、基材シート上に塗設し、その上を所望のパターンのフォトマスクで覆った状態で電磁波照射を行った後、バインダー樹脂に対する貧溶媒に浸漬し、その後、内部に浸透した貧溶媒を揮発させることにより、照射または未照射のいずれかの部分を多孔質化する方法などがある。
【0027】
例えば、エチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、メチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを始めとする(メタ)アクリレート類など、光照射により架橋し、高分子量化する感光性化合物と、光重合開始剤とを、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に均一分散させた組成物を、基材シート上に所定の厚さで塗布する。次いで、透明相となる部分が露光されるようなパターンのフォトマスクで覆い、このフォトマスクを通して露光する。このパターン露光により、露光部では感光性化合物が架橋して高分子量化する。続いて、熱可塑性樹脂の貧溶媒に浸積して、未露光部分の感光性化合物を抽出除去すると同時に貧溶媒と熱可塑性樹脂を相分離させ、その後、該貧溶媒を蒸発させることで、貧溶媒が存在していた部分が多孔質化する。この結果、露光されなかった部分には多数の気泡が分散含有される多孔質壁相1が形成され、また、露光部分には気泡を実質的に含有しない透明相2が形成される。
【0028】
また別の方法として、電磁波照射により分解して気体を発生させ得る感光性化合物を含有させた熱可塑性樹脂組成物を、基材シート上に塗布した後、所望のパターンに応じた電磁波照射を行い、加熱処理を施して熱可塑性樹脂を軟化させ、同時に、塗膜中の気体を熱膨張させる方法などもある。
【0029】
例えば、p−ジエチルアミノベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛塩又はホウフッ化塩、p−ジメチルアミノベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛塩又はホウフッ化塩、4−モルホリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛塩又はホウフッ化塩等のジアゾニウム塩類及びそれらの樹脂化合物といった、光照射により分解して気体を発生させ得る感光性化合物を、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に均一分散させた組成物を、基材シート上に所定の厚さで塗布する。次いで、透明相となる部分が遮光されるようなパターンのフォトマスクで覆い、このフォトマスクを通して露光する。このパターン露光により、露光部では、塗膜中で感光性化合物が分解し、塗膜中に微小な気体が生成する。続いて、加熱処理を施して熱可塑性樹脂を軟化させ、同時に、塗膜中の気体を熱膨張させる。この結果、露光部分には多数の気泡が分散含有される多孔質壁相1が形成され、露光されなかった部分は、気泡を実質的に含有しない透明相2となる。
【0030】
本発明の光学機能性シートは、単層シートであってもよいが、シート自体の機械的強度、耐熱性、取り扱いやすさ等を補う点から基材シート上に光学機能性膜層が形成された積層シート構造であることが好ましい。積層シート構造の場合、基材シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等に代表されるようなポリエステル系樹脂等からなるシートが好ましく用いられる。また、この基材シートは透明であってもよいが、拡散シートを用いるのがより好ましい。この場合の拡散シートは、透明マトリックス成分中に、マトリックス成分とは屈折率の異なる微粒子が分散されて存在することにより、シート内部で光拡散機能が発揮されるシートである。基材シートとして拡散シートを用いることにより、従来から用いられてきた拡散シートとプリズムシートの機能を一枚で達成することができるようになる。
【0031】
基材シートの厚みは、機械的強度等の面から20〜500μm、より好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜200μmである。
【0032】
本発明の光学機能性シートは、膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列しているものであるが、このような構造をとることによって、例えば、液晶ディスプレイのバックライト用途に好適に使用でき、この場合、導光板の上に重ねたり、または拡散シートの上に重ねることにより、液晶ディスプレイのバックライト用シートとして後方からの光線を効率よく正面に集光することができる。
【0033】
本発明の光学機能性シートを液晶ディスプレイのバックライト用のフィルムとして使用した場合に輝度向上効果が発揮されるメカニズムについて説明する。
【0034】
図5は、液晶ディスプレイに光を入射させるためのバックライトにおける各構成部材の相対的な位置関係を示す概略横断面図であり、バックライトとして用いる時にはそれら各構成部材同士は接している。
【0035】
図5において、導光板5の上面側に拡散シート4が配置され、さらにその上に本発明の光学機能性シート3が配置され、また、導光板5の下面側には反射シート7が配置されている。さらに、導光板5の側面には蛍光管6が配置されている。蛍光管6から照射される光は、導光板5の側面から導光板5内に入り、導光板5の上面から拡散シート4、本発明の光学機能性シート3を経て上方に出射する。
【0036】
このようなバックライトにおいて、本発明の光学機能性シートによる正面集光のメカニズムを図6に沿って説明する。図6は、図1(a)に示す本発明の光学機能性シートの横断面を、さらに拡大して概念的に示すシート横断面図である。本発明の光学機能性シート3に、その表面方向から(図5、図6では下方から)入射した光線λ0のうち、正面方向(図5、図6の上方方向)以外に逃げていってしまう側面方向(図5、図6の水平方向)への光線が多孔質壁相1へ当たり、拡散透過(λ2)または拡散反射(λ3)する。これにより、側面方向(図5、図6の水平方向)への出射が抑制され、正面方向(図5、図6の上方方向)への散乱確率が増え、正面における輝度が向上するものである。
【0037】
また、本発明の光学機能性シートの場合、図4(a)に示すストライプ状の一次元パターンとするよりも、図4(d)〜(h)の様に、透明相2の周囲を多孔質壁相1で覆った二次元パターンとする方が、全方向の入射光線を効率よく正面方向に集光させるために好ましい。また、該二次元パターンの方が所望の集光特性とするために好ましい。
【0038】
従来から使用されているプリズムシートの場合では、1枚では縦横のどちらか一方向分の光しか集光できず、縦横二次元の集光効果を発揮させるためには、プリズムシート2枚を使いそれぞれのプリズムの配列が直交するように重ね合わせる必要がある。これに対し、本発明の光学機能性シートでは、前記したような二次元パターンとすることによって一枚でもって縦横二次元の集光効果を発揮することができるので、高い集光効果を発揮させることができる。
【0039】
また、本発明の光学機能性シートでは、その集光機能が、シート内部に存在する相構造により発揮されるため、表面が平滑であるという特徴を併せ持つ。このため、その表面に帯電防止層、反射防止層、ハードコート層を形成するなどができる。また、他の機能を有する基材等との貼り合わせが可能となり、多機能を有する機能統合高性能シートの製造も可能になる。例えば、表面の平滑な拡散シートと一体化することにより、薄型でも高拡散機能と高輝度機能とを併せ持つシートが得られる。
【0040】
[特性の評価方法]
A.透明相のアスペクト比、多孔質壁相の膜面方向の相厚さ
シート横断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い400倍で写真を撮影し、断面観察を行ない、その透明相の幅p、透明相の厚さLを測定した。それらの比(透明相の幅p/厚さL)を求め、透明相のアスペクト比とした。
また、その電子顕微鏡写真から壁相の膜面方向の相厚さtを測定した。
【0041】
B.多孔質壁相内での平均気固界面数
シート横断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い、500〜2000倍の倍率のうち、多孔質壁相の断面全体が画面に入るような倍率で拡大観察する。得られた画像を用いて、多孔質壁相と透明相との界面上の一点からもう一方の界面上の一点に向かって膜面方向と平行に、多孔質壁相を通過する直線を引き、かかる直線が交差する気相部(空隙)と固相部の界面、即ち気固界面の数を数えた。同様の作業を任意の場所について10回行い、それらの平均値を算出して平均気固界面数(層/μm)とした。
【0042】
C.多孔質壁相内の空隙率、空隙の平均孔密度、数平均孔径
シート横断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い、2000〜10000倍の倍率のうち、1つの壁相の内部構造が十分観察できる倍率で拡大観察する。その画像を用いて、単位断面積当たりの空隙の面積を求め、空隙の面積占有率を算出した。これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を多孔質壁相内の空隙率(A%)とした。また、単位断面積内に存在する空隙の数を求めた。これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を面積100μm2あたりの数に換算して空隙の平均孔密度(B個/100μm2)とした。得られた空隙率(A%)と平均孔密度(B/100μm2)を用いて以下の式により空隙の数平均孔径(μm)を求めた。
(π:円周率)
【0043】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
ポリエステル樹脂(“エリーテル”UE3600:ユニチカ(株)製)100重量部、感光性モノマー(“ネオマー”BA−641:三洋化成(株)製)80重量部、別の感光性モノマー(“KAYARAD”DPCA−30:日本化薬(株)製)10重量部、さらに別の感光性モノマー(“RHMA”RHMA−M:日本触媒(株)製)50重量部、光重合開始剤(“イルガキュア”651:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)1.7重量部、及び、別の光重合開始剤(“イルガキュア”819:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.8重量部をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン混合溶媒(1/1,重量比)100重量部に溶解させた。この溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(“ルミラー”100 T60:東レ(株)製)上にブレードコーターを用いて塗布し、80℃で30分乾燥させた後、冷却して、その上に、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(“ルミラー”100U42:東レ(株)製)をカバーフィルムとして貼り合わせて、フィルム間に塗膜厚150μmの層が形成された樹脂シートを作製した。
【0045】
室温で透明状態のこの樹脂シートに、ピッチ95μm幅20μmのストライプパターンのフォトマスクを重ね、超高圧水銀灯を用いて30mJ/cm2の光を照射した後、85℃で2分間加熱して室温まで放冷した。カバーフィルムを剥離して、40℃のエタノールに3時間浸漬した後、室温まで放冷し、その後、エタノール中から取り出し、そのまま超高圧水銀灯を用いて、塗膜表面側、及び基板フィルム側の両表面に、それぞれ1000mJ/cm2の光を照射した後、真空乾燥によりエタノールを除去した。
【0046】
得られた塗膜の横断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が60μmの透明相となり、パターン未露光部は相厚さ(t)が35μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.0である光学パターンが形成できていた。
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は1.9層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は352個/100μm2、数平均孔径は0.29μm、空隙率は29.3%であった。
【0047】
得られた光機能性シートを、図5に示すような相対的位置関係となるようにパソコンモニター用直管4灯型バックライト上に配置し、色彩輝度計BM−7(トプコン(株)製)を用いて正面輝度を測定した。光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べ、正面輝度が13%向上していた。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同様にして塗膜厚が150μmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0049】
エタノール浸漬条件を、50℃のエタノールに5時間浸漬と変更した以外は、実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が45μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.0である光学パターンが形成できていた。
【0050】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は0.77層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は17個/100μm2個、数平均孔径は0.25μm、空隙率は33.9%であった。得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べ、正面輝度が10%向上していた。
【0051】
(実施例3)
フィルム間の塗膜厚を200μmと変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0052】
パターン露光量を40mJ/cm2と変更し、エタノール浸漬条件を、室温のエタノールに5時間浸漬と変更した以外は、実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が45μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.6である光学パターンをが形成できていた。
【0053】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は3.7層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は309個/100μm2、数平均孔径は0.16μm、空隙率は8.0%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べ、正面輝度が13%向上していた。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様にして塗膜厚が150μmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0055】
浸漬する溶媒をオクタノールに変更した以外は実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が50μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が2.0である光学パターンが形成できていた。
【0056】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は0.16層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は4個/100μm2、数平均孔径は1.2μm、空隙率は50.9%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べての輝度向上は認められなかった。
【0057】
(比較例2)
実施例1と同様にして塗膜厚が150μmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
パターン露光量を50mJ/cm2と変更した以外は実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成た。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が50μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が50μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.0である光学パターンが形成できていた。
【0058】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は0.13層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は17個/100μm2、数平均孔径は0.13μm、空隙率は50.9%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べての輝度向上は認められなかった。
【0059】
(比較例3)
塗膜厚を250μmと変更した以外は実施例1と同様に樹脂シートを作製した。この樹脂シートは実施例1と同様、室温で透明状態であった。
【0060】
パターン露光量を90mJ/cm2と変更して、フォトマスクをピッチ200μm幅100μmとした以外は実施例1と同様の操作でストライプパターンを形成した。得られた塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン露光部は相厚さ(p)が180μmの透明相に、パターン未露光部は相厚さ(t)が120μmの多孔質壁相となり、それら相が交互に配列し、かつ透明相のアスペクト比が3.1である光学パターンが形成できていた。
【0061】
また、得られたパターンの多孔質壁相の膜面厚み方向における平均気固界面数は2.3層/μm、多孔質壁相の断面に観察される空隙の平均孔密度は125個/100μm2、数平均孔径は0.32μm、空隙率は40.2%であった。
得られた光機能性シートを、実施例1と同様にして正面輝度を測定したところ、光学機能性シートをのせずに測定した場合に比べての輝度向上は認められなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、内部の形態によって、十分に大きな集光機能を発揮することができる光学機能性シートが得られる。また、表面加工することや他機能シートと張合せることが可能な平らな表面形状をもつ光学機能性シートとすることもできる。さらにまた、一枚のシートで画面の上下方向に広がる光も左右方向に広がる光も同時に集光することができる内部集光機能を有する光学機能性シートとすることもできる。
【0063】
従って、本発明の光学機能性シートは液晶ディスプレイ部材におけるバックライト等の用途に有用である。
【0064】
さらに、本発明の光学機能性シートは、表面が平滑な他機能シート(例えば拡散シート)と一体化することによって、集光機能と上記他機能とを併せ持つ高輝度薄型一体化シートにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(g)はそれぞれ、本発明の光学機能性シートの横断面を模式的に示す横断面図であり、横断面における多孔質壁相1の形状を模式的に例示する。
【図2】(a)〜(d)はそれぞれ、本発明の光学機能性シートの横断面の一部分を拡大して模式的に示す横断面図であり、多孔質壁相1内の空隙(気泡)形状を模式的に例示する。
【図3】図1(a)に示す本発明の光学機能性シートの横断面の一部分を拡大して模式的に示す横断面図であり、多孔質壁相1内を模式的に例示する。
【図4】(a)〜(h)はそれぞれ、本発明の光学機能性シートのシート面と平行な断面における相パターンを模式的に示す断面図であり、透明相2の形状を模式的に例示する。
【図5】光学機能性シートの集光性能を評価するために用いたバックライトでの各部材の相対的位置関係を示す装置構造の概略断面図である。
【図6】本発明の光学機能性シートによる集光作用のメカニズムを模式的に示すためのシート横断面図である。
【符号の簡単な説明】
1 多孔質壁相
2 透明相
3 本発明の光学機能性シート
4 拡散シート
5 導光板
6 蛍光管
7 反射シート
L 透明相の長さ
p 透明相の短軸長さ
t 多孔質壁相の相厚さ
λ0 入射光線
λ1 直進透過光線
λ2 壁相を拡散透過した光線
λ3 壁相で拡散反射した光線
Claims (5)
- 膜面方向に、多孔質の壁相と実質的に空隙を含まない透明相が交互に配列してなる光学機能性シートであって、壁相の膜面方向の相厚さが5〜100μmであり、かつ膜面方向における平均気固界面数が0.4〜5層/μmであることを特徴とする光学機能性シート。
- 多孔質の壁相の断面における空隙の平均孔密度が10〜1000個/100μm2であることを特徴とする請求項1記載の光学機能性シート。
- 多孔質の壁相に含まれる空隙の数平均孔径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1または2記載の光学機能性シート。
- 多孔質の壁相内の空隙率が10〜70%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学機能性シート。
- 液晶ディスプレイのバックライト用の光学機能性シートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学機能性シート。
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JP2003066138A JP2004272153A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 光学機能性シート |
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Country | Link |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013524295A (ja) * | 2010-04-14 | 2013-06-17 | スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー | パターン付き勾配ポリマーフィルム及び方法 |
KR101822672B1 (ko) * | 2010-01-13 | 2018-01-26 | 쓰리엠 이노베이티브 프로퍼티즈 컴파니 | 점탄성 도광체를 구비한 조명 장치 |
JP7573422B2 (ja) | 2020-11-20 | 2024-10-25 | 株式会社日本触媒 | 空孔形成剤 |
-
2003
- 2003-03-12 JP JP2003066138A patent/JP2004272153A/ja active Pending
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