JP2004270584A - 二次空気供給装置付き多気筒内燃機関及び多気筒内燃機関の制御方法 - Google Patents
二次空気供給装置付き多気筒内燃機関及び多気筒内燃機関の制御方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】コストの低減、レイアウトの自由度を向上し、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代を最小限にし、アイドル運転時のエンジン回転安定性も確保する二次空気供給装置付き多気筒内燃機関を提供する。
【解決手段】二次空気供給口35より一部の気筒が属する排気通路にのみ二次空気を供給し、二次空気供給の気筒の燃料供給量を増加すると共に二次空気供給の気筒の点火時期を遅らせ、二次空気供給中の各気筒の発生トルクの均一化を図る。
【選択図】 図2
【解決手段】二次空気供給口35より一部の気筒が属する排気通路にのみ二次空気を供給し、二次空気供給の気筒の燃料供給量を増加すると共に二次空気供給の気筒の点火時期を遅らせ、二次空気供給中の各気筒の発生トルクの均一化を図る。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌で使用される多気筒内燃機関および多気筒内燃機関の制御方法に関し、特に、排気系に二次空気を供給する型式の多気筒内燃機関および多気筒内燃機関の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関(エンジン)において、排気系触媒の昇温特性の向上等のために、機関排気系に二次空気を供給し、未燃焼ガスを含んだ排気を二次燃焼させる二次空気供給装置が知られている。一般的な二次空気供給装置は、専用のエアポンプ等を備え付けて排気管内部へ圧縮空気を供給している(例えば、特許文献1)。
【0003】
二次空気供給装置は、気筒から排出される排気と、エアポンプによって排気系に送り込まれる空気とを混合して二次燃焼させる。二次燃焼の原理は、排気の熱エネルギと排気系に新規に供給される空気(二次空気)を用いて排気中の未燃焼ガス成分を燃焼させるものである。この二次燃焼によって排気管内部のガス温度が上昇し、結果として、排気管や排気浄化装置(触媒など)が急速に昇温し、急速暖機が行われる。
【0004】
二次空気供給装置を自動車等の車輌で多く使用される複数の気筒を備えた多気筒内燃機関に適用した場合、従来、一般的には、二次空気供給通路は、複数気筒全ての排気ポート出口や排気マニホールドの集合部あるいは排気管等に接続され、全気筒に対して二次空気を供給している。排気の熱エネルギを最大限に有効利用するためには、二次空気は各気筒の排気ポートや各排気ポート毎の排気枝管に対して供給することが好ましい。
【0005】
【特許文献1】
実開平03−087912号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の二次空気供給装置では、二次空気供給通路が全気筒の排気ポートや排気通路に対して配設されるため、コスト高になり、レイアウトの自由度などでも問題がある。また、排気系に供給される二次空気量に応じて全気筒の空燃比を過多化しなければならないので、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代が大きいことや、アイドル運転時のエンジン回転安定性の確保が難しいなどの懸念がある。
【0007】
この発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、コストの低減、レイアウトの自由度を向上し、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代を最小限にし、アイドル運転時のエンジン回転安定性も確保する二次空気供給装置付き多気筒内燃機関および多気筒内燃機関の制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関は、複数気筒を有する多気筒内燃機関において、一部の気筒に対してのみ二次空気を供給する二次空気供給手段と、前記二次空気供給手段による二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するトルク均一制御手段とを有する。
【0009】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関によれば、一部の気筒に対してのみ二次空気を供給するから、二次空気供給に伴う燃料増量が全気筒に対して二次空気を供給する場合に比して少なくて済み、二次空気供給中における各気筒の発生トルクがトルク均一制御手段によって均一化され、アイドル運転時のエンジン回転の安定性が得られる。
【0010】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関における前記トルク均一制御手段は、エンジンの運転状態に応じて複数気筒の燃料供給量をそれぞれ独立調整する燃料量調整手段と、前記複数気筒の点火時期をそれぞれ独立調整する点火時期調整手段とを備える。
【0011】
これにより、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)と二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とで、燃料供給量、点火時期を個別に制御することができる。
【0012】
この場合、燃料量調整手段は、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)に供給する燃料量を、二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とは異なる値、具体的には、二次空気を供給する対象気筒に供給する燃料量を二次空気を供給しない対象外気筒と比べて理論空燃比より過多に設定する。これにより、二次空気を供給する対象気筒の排気ガスの未燃焼成分が増加し、二次空気供給による排気温度の上昇が効果的に行われる。
【0013】
点火時期調整手段は、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)の点火時期を、二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とは異なる値に調整、具体的には、二次空気を供給する対象気筒に供給する点火時期を二次空気を供給しない対象外気筒と比べて遅角点火時期に設定する。
【0014】
これにより、理論空燃比より過多の空燃比を設定されたことによる対象気筒の発生トルクの増加が相殺され、気筒相互で発生トルクの均一化が図られ、二次空気供給中のアイドル運転時のエンジン回転の安定性が得られる。
【0015】
遅角量は各気筒の発生トルクに応じてリアルタイムに適正値に設定することができ、各気筒の発生トルクは、エンジンの運転状態のうち、エンジン回転速度から複数気筒間の回転速度偏差を演算することによって簡便に推定することができる。
【0016】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関における二次空気供給手段は、前記複数気筒のうち、1個の気筒に属する排気通路にのみ二次空気を供給する二次空気供給口を有し、1個の気筒に属する排気通路に限って二次空気を供給する。また、二次空気供給手段は、二次空気供給対象の気筒に属する排気ポートに近接して配設された二次空気供給口を有する。これにより高温の排気ガスに対して二次空気を噴射して排気ガス中の未燃焼成分を効果的に燃焼させることができる。
【0017】
また、二次空気供給手段は、二次空気流量を調整する二次空気調整弁を有しており、二次空気調整弁は、エンジンの運転状態あるいは排気浄化装置の状態に応じて二次空気流量を最適値に調整することができる。
【0018】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関は、運転安定性の確保や排気浄化装置の劣化防止のために、エンジンの運転状態あるいは排気浄化装置の状態に応じて前記二次空気供給手段、前記トルク均一制御手段の動作を停止する。
【0019】
この発明による多気筒内燃機関の制御方法は、多気筒内燃機関の一部の気筒に対してのみ二次空気を供給し、二次空気供給対象の気筒の燃料量を二次空気を供給しない気筒の燃料量より増加させ、二次空気供給対象の気筒の点火時期を二次空気を供給しない気筒の点火時期より遅角させる。
【0020】
これにより、二次空気供給に伴う燃料増量が全気筒に対して二次空気を供給する場合に比して少なくて済み、二次空気供給中における各気筒の発生トルクが点火時期によって均一化され、アイドル運転時のエンジン回転の安定性が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施形態を詳細に説明する。
図1、図2は、本実施形態の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関を示している。本実施形態の多気筒内燃機関は直列4気筒の内燃機関である。
【0022】
多気筒内燃機関は、エンジン本体1に、4個の燃焼室(シリンダ)1a、1b1c、1dを有している。以下、燃焼室1aは第1気筒、燃焼室1bは第2気筒、燃焼室1cは第3気筒、燃焼室1dは第4気筒として説明することがある。
【0023】
エンジン本体1には、各気筒1a〜1d毎に個別に、吸気ポート2、排気ポート3が各々形成されている。吸気ポート2は吸気弁4によって開閉され、排気ポート3は排気弁5によって開閉される。エンジン本体1には各気筒1a〜1d毎に点火プラグ15が取り付けられている。
【0024】
エンジン本体1には、各気筒1a〜1dに空気を供給するために、各気筒1a〜1dの吸気ポート2に連通する吸気通路(吸気マニホールド、吸気管)6が接続されている。吸気通路6には、エアクリーナ7、吸入空気量を調整するスロットル弁8、スロットル弁8の上流側と下流側とを連結するバイパス通路9、バイパス通路9を流れる吸入空気量を調整するISCバルブ10が設置されている。なお、スロットル弁8は、電子制御式モータ駆動スロットル弁でもよく、この場合には、バイパス通路9、ISCバルブ10を省略することも可能である。
【0025】
エンジン本体1には、燃料量調整手段として、各吸気ポート2毎に燃料噴射弁11が取り付けられている。燃料噴射弁11は、気筒数と同数設けられており、各気筒1a〜1dに対して燃料を個別に噴射供給する。これにより、各気筒1a〜1dの燃料供給量をそれぞれ独立調整することができる。
【0026】
また、吸気通路6には、スロットル弁8の開度を検出するスロットル開度センサ12、スロットル弁8の下流の吸気管内圧力を検出する吸気圧力センサ13、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサ14が設けられている。エンジン本体1には、クランク角度を検出するクランク角センサ16、エンジン冷却水温を検出する水温センサ17が取り付けられている
点火時期調整手段として、通電電流を遮断するイグナイタと高電圧を発生する点火コイル18と、点火コイル18で発生した高電圧を各気筒の点火プラグ15に配電するディストリビュータ19とが設けられている。なお、点火コイル18およびディストリビュータ19は、多気筒内燃機関の場合、気筒毎の点火コイルと配電時間を制御するトランジスタを備えた直接配電式としてもよい。
【0027】
エンジン本体1には各気筒1a〜1dの排気ポート3に連通する排気通路(排気マニホールド、排気管)20が接続されている。排気通路20には機関燃焼室から排出される排気ガスを浄化・還元する排気浄化装置(触媒コンバータ)21が接続されている。
【0028】
排気通路20には、排気ガスの酸素濃度を検出する排気センサ(O2センサ或いは排気ガスの空燃比を直接測定する空燃比センサ、或いはその組合せ)22、排気ガス温度を検出する排気温度センサ23が取り付けられている。排気センサ22は、排気浄化装置21の上流側あるいは下流側に設置されるものであり、その組合せや配置位置を限定しない。ただし、本実施形態においては、排気浄化装置21の上流側にO2センサを設置した例について説明する。
【0029】
多気筒内燃機関はマイクロコンピュータによる電子制御方式のエンジン制御装置(ECU)24を有する。ECU24は、バッテリ25から電源を受給し、前述の各種検出装置(センサ)より検出信号を入力し、演算処理を行い、制御信号をISCバルブ10、燃料噴射弁11、点火コイル18へ出力し、エンジン制御(空燃比制御、点火時期制御)を行う。
【0030】
吸気通路6より導入された空気は、スロットル弁8により調整された流量と、バイパス通路9に配設されたISCバルブ10により調整された流量とを含めて各燃焼室1a〜1dに供給される。
【0031】
吸気通路6に設置された吸気圧力センサ13および吸気温度センサ14からの情報とクランク角センサ16からの情報(エンジン回転速度)により、ECU24内で燃料噴射量の最適値が計算され、その結果に基づいて燃料噴射弁11より燃料が供給される。燃料は、空気と混じり合い、混合気として燃焼室1a〜1d内に供給される。
【0032】
また、クランク角センサ16からの情報によってECU24内で点火時期の最適値が計算され、その結果に基づいて点火コイル18に点火信号が出力される。点火信号はディストリビュータ19(或いはイグナイタ)により気筒毎に分配され、最適点火時期にて各気筒の点火プラグ15の火花放電が行われる。
【0033】
各燃焼室1a〜1dで燃焼した混合気は、排気通路20より排気ガスとなって外部に排出される。この時、排気センサ22により検出される排気ガス中の酸素量と、排気温度センサ23により検出される排気温度に基づいて、ECU24の演算処理により燃料噴射量の補正制御が行われる。
【0034】
エンジン本体1には、二次空気供給手段として、二次空気供給通路31が設けられている。二次空気供給通路31には、空気圧縮を行うエアポンプ32と、二次空気調整弁33が接続されている。エアポンプ32には吸気通路6から分岐した空気取入通路34が接続されている。二次空気調整弁33は、エンジンの運転状態、あるいは排気浄化装置の状態に応じて二次空気供給のオン・オフ、および二次空気流量を制御する。
【0035】
エアポンプ32によって圧縮された空気は、二次空気調整弁33により流量を計量され、二次空気供給通路31を通り、二次空気供給口35より二次空気として排気通路20へ噴射供給される。
【0036】
二次空気供給通路31の先端がなす二次空気供給口35は、本実施形態では、図2によく示されているように、二次空気を第1気筒1aに属する排気通路にのみ供給する。したがって、本実施形態では、二次空気を供給する気筒(以下、対象気筒)は第1気筒1aで、二次空気を供給しない気筒(以下、対象外気筒)は第2気筒1b、第3気筒1c、第4気筒1dとなる。
【0037】
二次空気供給口35は、できるだけ高温の排気ガスに対して二次空気を噴射して排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させるために、図2に示されているように、可能な限り排気ポート3に近接した位置に設置されることが望ましい。
【0038】
なお、二次空気供給対象の気筒は第1気筒1aに限定されたものではなく、他の気筒でもよく、また、二次空気供給対象の気筒を2〜3気筒に増加させてもよい。ただし、特定気筒(一部気筒)にのみ、二次空気を供給するために、二次空気供給通路31は、各気筒1a〜1dの排気ポート3から、排気通路20における他気筒との集合部20Aまでの間に接続するものとする。
【0039】
エアポンプ32は、空気を圧縮生成可能であれば、電動、エンジン駆動、気筒休止などによる生成であってもよい。また、二次空気取入通路34は吸気通路6とは別に空気取入口を設けられているものでもよい。また、二次空気調整弁33はリードバルブ機構のような単純な構造としてもよい。
【0040】
ECU24は、二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するトルク均一制御手段として、二次空気供給時には、二次空気を供給する対象気筒(第1気筒1a)に供給する燃料量を、二次空気を供給しない対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)と比べて理論空燃比より過多に設定する燃料量制御を行うと共に、対象気筒(第1気筒1a)の点火時期を対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)と比べて遅角設定する制御を行う。
【0041】
これにより、二次空気供給中は、第2気筒1b〜第4気筒1dには理論空燃比の混合気が供給され、第1気筒1aには理論空燃比より濃いリッチ空燃比の混合気が供給される。なお、二次空気供給停止時には、全ての気筒1a〜1dに対して理論空燃比の混合気が供給される。
【0042】
各気筒1a〜1dの発生トルクは、エンジンの運転状態のうち、エンジン回転速度から複数気筒間の回転速度偏差を演算することによって推定することができ、これに応じて二次空気供給中の対象気筒(第1気筒1a)の点火時期の遅角量を設定することができる。
【0043】
本発明による多気筒内燃機関の具体的な制御方法の一例を図3の制御チャートを参照して説明する。なお、図3において、#1〜#4は第1気筒1a〜第4気筒1dの個別の特性を示している。
【0044】
エンジン始動直後、時点T1で、符合Aで示されているように、全気筒1a〜1dの点火時期の遅角制御を行う。これは、エンジンの排気温度を上昇させる既知の技術であり、全気筒1a〜1dに対して実施する。
【0045】
次いで、対象気筒(第1気筒1a)に対する二次空気の供給を開始する。所定量の二次空気供給が行われた時点T2において、符合Bで示されているように、対象気筒(第1気筒1a)に限って燃料量を増加すると共に、符合Cで示されているように、対象気筒(第1気筒1a)に限って点火時期を現在の点火遅角制御値よりさらに遅角させる制御を行う。
【0046】
なお、二次空気供給の開始時期は、時点T2において、対象気筒の燃料量調整および点火時期調整と同時期としてもよく、時点T1と時点T2に制御の開始時期を限定するものでもない。
【0047】
二次空気供給、燃料量調整や点火時期遅角制御は、エンジン回転速度の変化代、例えば急激な点火時期変化に伴う回転変動などの現象に応じて段階動作とすることが望ましく、これによりアイドル時の回転安定性を確保する。つまり、燃料、点火、二次空気の変化が、エンジン回転速度に対し影響が大きい場合には、これらを徐々に動作させ、逆に影響が小さい場合には、これらの急激に動作させてもよい。
【0048】
また、燃料量調整と点火時期遅角制御の調整値(制御値)は、失火限界近くで可能な量の未燃焼ガスを排気管に供給可能な値とする。これにより、多量の未燃焼ガスと二次空気が混合して二次燃焼し、排気管内で大きな熱エネルギーを生成し、排気系の暖機を効果的に早めることができる。
【0049】
なお、図3の最下段に前記制御中における触媒温度の推移を示す。破線はエンジン始動後に全気筒に対して既知技術の点火時期遅角制御のみを実施した場合の特性を、実線は同様の制御に加え、本実施形態に示した二次空気供給を適用した場合の特性を示している。本実施形態に示した二次空気供給を適用すると、二次空気供給を行わない場合に比して触媒温度が経過時間に伴って上昇する度合いが大きいこと、すなわち、触媒温度の上昇が速いことがわかる。
【0050】
また、二次空気供給後に、対象気筒の点火時期の遅角量を増加することにより、燃料量の増加に伴い発生するであろう対象気筒のトルク増加分を相殺することができる。
【0051】
図4(a)は燃料量(空燃比)とエンジンの発生トルクとの関係を、図4(b)は点火時期とエンジンの発生トルクとの関係を各々示している。一般的には、空燃比が理論空燃比よりも濃厚になると、エンジン発生トルクは増加する傾向にある。また、点火時期がピストン上死点よりも遅角側になると、エンジン発生トルクは減少する傾向にある。
【0052】
本実施形態によれば、二次空気を供給する対象気筒(第1気筒1a)には排気系へ未燃焼分を供給するために、対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)に比べ、燃料量を過多にする必要がある。これにより、対象気筒(第1気筒1a)の発生トルクは増加する。燃料量過多によるトルク増加は対象気筒(第1気筒1a)のみであるため、対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)とで相互のトルクバランスが崩れ、結果として、アイドル時などでは、回転安定性が損なわれて不快な振動が発生してしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、対象気筒(第1気筒1a)の点火時期を、対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)に比べ、遅角側に調整することで、発生トルクを減少させ、全気筒で発生されるトルクを均一化するように制御を行う。この結果、対象気筒、即ち本実施形態における1番気筒1aと、対象外気筒、即ち本実施形態における第2番気筒1b〜第4番気筒1dとのトルクバランスが図られ、アイドル時の回転安定性が確保される。
【0054】
排気浄化装置(触媒コンバータ)21の上流側に排気温度センサ23が設置されているから、触媒温度を排気温度センサ23の出力値で代用することができる。そこで、触媒がある所定温度以上で急激に劣化が促進されることを抑制するため、あらかじめ排気温度センサ23の出力値と実際の触媒温度との相関を取っておき、触媒温度が所定温度以上となる前に、二次空気供給を停止し、触媒の劣化を事前に防ぐことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、排気温度センサ23を設置して触媒温度を代用しているが、排気温度センサ23を持たない場合には、その他エンジンの運転状態を検出する手段を用いて触媒温度を推定し、同様に触媒の高温劣化を未然に防止するも考えられる。触媒温度の推定は、エンジン始動後経過時間、エンジン水温、吸気温度、圧力センサ出力を元に演算されるエンジン吸入空気量の積算値、あるいはエンジン運転状態検出値の組合せなどにより行うことができる。
【0056】
また、二次空気供給は、本実施形態では、エンジン始動から所定時間内のアイドル状態での実施を提案している。二次空気供給中に、走行状態へ移行した場合には、エンジンの運転状態が大きく変化することが予測され、先に述べた二次空気供給の対象気筒と対象外気筒とのトルクバランスの均一化が困難となることが考えられるので、直ちに二次空気供給を停止することが望ましい。ただし、走行状態に至っても、緩慢あるいは定常的なエンジンの運転状態であれば実施可能であることも予測されるので、この限りではない。
つぎに、ECU24によるエンジン制御を図5に示しているフローチャートを参照して説明する。
【0057】
(ステップ1)
エンジンの運転状態検出結果より、二次空気供給が実施可能な状態か否かを判定する。例えば、エンジン回転数=所定値以内、エンジン水温≦所定値、排気温度≦所定値、エンジン始動後経過時間≧所定値、アイドリング状態であるか、などの条件を判定するようにし、エンジンの運転状態が、定常で、かつ排気浄化装置21の温度が低い状態を検出できるように設定する。
【0058】
例えば、三元触媒の活性温度以下とほぼ等価な運転状態を包括できるように設定することが望ましい。ここで、ほぼ等価な運転状態とは、触媒の温度を直接検出できない場合に、エンジン水温や排気温度、またエンジン始動後の経過時間などで推測した運転状態(≒触媒温度)とすることを指す。また、実測された排気温度、あるいは前記推定した運転状態により触媒温度が過度に高温となった場合には、即座に前記二次空気供給装置の実行を停止することとする。
【0059】
ステップ1で二次空気供給装置が実施可能であると判定されれば、ステップ2へ、実施不可能であると判定されれば、ステップ6へ移行し、ステップ6では、二次空気供給中であれば、その制御を停止し、制御フローを終了する。
【0060】
(ステップ2)
既知技術の点火時期遅角制御により全気筒の点火時期遅角を行う。具体的には、図2で示した直列4気筒内燃機関の場合、第1気筒1a〜〜第4気筒1dの全ての気筒の点火時期を遅角する。例えば、該点火時期は、アイドルの安定性を確保できる範囲で、排気温度が最大となるように設定する。エンジンの圧縮行程以降に燃焼時期を遅らせ、通常よりも後燃えをさせることが重要であるので、ATDC点火となるような設定が好ましい。
【0061】
しかし、急激に点火時期を遅角させると、エンジン回転速度の落ち込みが発生する場合があるので、段階的に遅角量を増加させることが望ましい。また、すでに述べたが、アイドルの安定性を損なわないためにも、失火を伴うような大幅な点火時期の遅角は避けなければならない。
【0062】
なお、本実施形態では説明を省いているが、点火時期の遅角に伴うエンジン回転速度の低下を補うために、ISCバルブ10よるアイドル空気量の増加補正が必要である。その後、ステップ3へ進む。
【0063】
(ステップ3)
二次空気供給を実施する。具体的には、二次空気調整弁33により調整された流量の圧縮空気(二次空気)を二次空気供給通路31の先端の二次空気供給口35より排気通路20へ供給する。この二次空気供給は、本実施形態の場合、図2で示したように、第1気筒1aに属する排気通路に対してのみ行われ、他の気筒に属する排気通路へは供給を行わないものとする。この二次空気の供給は、直接的にアイドル安定性への影響が考えられないので、ステップ2と同一時刻に実施してもよい。
【0064】
(ステップ4)
排気通路20への未燃焼ガス排出量を増加させるために燃料量を増加させる。具体的には、ステップ3で述べた通り、二次空気が供給される気筒は第1気筒1aに属する排気通路のみであるので、該燃料増量は同じく第1気筒1aに対して燃料供給を行う燃料噴射弁11にのみ適用する。例えば、より多くの未燃焼分を含んだ排気ガスを排気通路20へ供給するため、他の気筒へ供給される燃料量と比べ、10〜20%程度の増量を行う。
【0065】
以上、ステップ1からステップ4にかけて述べた制御を行うことで、二次空気を供給される排気通路へ未燃焼ガスと空気を供給することで行われ、排気通路内で二次燃焼が行われる。その結果、排気通路の下流側に設置された排気浄化装置(触媒コンバータ)21を急速に昇温させることが可能となる。
【0066】
(ステップ5)
燃料の増量により変化したトルク変化を抑制するために、点火時期を調整する。図4を用いて述べたトルク特性に基づき、対象気筒である第1気筒1aに燃料増量を実施した場合、他の気筒に比べて混合比(空燃比)が変化するために発生トルクが変化する。具体的には、同一の点火時期で燃料量が増加すると、トルクが増加し、その結果、アイドルの安定性が損なわれるという懸念があるので、燃料増量に併せて点火時期を遅角制御し、対象気筒である第1気筒1aの発生トルクを下げることにより、他の対象外気筒とのトルク差を平滑化する。これによりアイドル安定性が向上する。
【0067】
より具体的な実施例としては、ステップ5の点火時期調整は、エンジン本体1に配設された各種センサにより検出される運転状態を用いてECU24による演算処理により、対象気筒である第1気筒1aの点火時期を最適値に調整する。具体的には、クランク角センサ16の出力より気筒間のエンジン回転速度の偏差を求め、間接的に全気筒のトルク変化を演算する。その後、特にエンジン回転速度の偏差が大きい、即ち、第1気筒1aに当たる気筒のトルク変化が小さくなるように点火時期を演算し、第1気筒1aの点火時期を調整する。その結果、対象気筒に行われた燃料増量によるトルク増加が抑制され、対象外気筒との回転速度偏差も小さくなり、アイドル安定性が確保された運転状態が得られる。
【0068】
なお、点火時期調整は、前述のように失火を伴う点火時期にならないよう調整する必要があり、クランク角センサ16より求められたエンジン回転速度の偏差により帰還制御することが望ましく、該帰還制御によりエンジン毎の特性差や、失火限界の差を吸収することができる。
【0069】
また、点火時期の帰還制御をもってしても、エンジン回転速度偏差が平滑化されない場合には、燃料増量値を調整してアイドル安定性を向上させる方法も考えられる。なお、二次空気供給を実施してもアイドル安定性が確保される場合には、帰還制御を省き、制御構成を簡略化してもよい。
【0070】
以上、ステップ1の二次空気供給装置実施判定部で実施可能であると判定されている間は、ステップ2の点火時期遅角制御と、ステップ3の二次空気供給と、ステップ4の燃料量調整と、ステップ5の点火時期調整を実行することにより、対象気筒から排出される燃料過多の排気ガス、即ち未燃焼成分を多く含んだ未燃ガスと、エアポンプ32から供給される二次空気が排気通路で混合され、対象気筒からの排出ガスに含まれる未燃焼ガスが排気通路内で二次燃焼し、この二次燃焼によって、未燃ガスと二次空気が混合される領域より下流側に位置する排気浄化装置(触媒コンバータ)21の温度が上昇し、触媒の活性時間を短縮できる。
【0071】
本実施形態では、二次燃焼のための燃料増加量は、全気筒の排気通路に対して二次空気供給を行うことに応じて全気筒の燃料供給量を増加する場合に比して少なくて済み、また、対象気筒に対する燃料増量を実施したことにより発生するトルク変化は、点火時期の帰還制御により平滑化するから、特に、冷機時に、エンジンを始動した場合に、少ない燃料増量で、触媒の早期活性が実現可能となり、アイドルの安定化も確保できる。
【0072】
上述したように、本発明による二次空気供給装置付き二次空気供給装置は、特に、冷機時エンジン始動後に、一部の気筒に供給される燃料量を増加させ、また点火時期を遅角させ、該気筒に属する排気管に二次空気を供給することで、排気ガスに含まれる未燃焼ガスを二次燃焼させることが可能となり、排気浄化装置(触媒コンバータ)の温度を急速に高めて活性化し、排気ガス浄化性能を早期に発揮させることができる。
【0073】
また、該気筒の点火時期を最適化することで、燃料増量に伴うトルク変化を抑制させることが可能となり、アイドル安定性を損なわないエンジン運転性を得ることができる。また、前記二次空気供給通路の設置を最小限に収めることができるので、コストの低減、及びレイアウトの自由度も向上できる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、他例のエンジンにも適用が可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
【0075】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明による二次空気供給装置付き二次空気供給装置は、一部の気筒にのみ二次空気を供給し、二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するから、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代を最小限にし、アイドル運転時時のエンジン回転安定性を確保して排気浄化装置の温度を急速に高めて活性化し、排気ガス浄化性能を早期に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の二次空気供給装置を備えた多気筒内燃機関の全体構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態の二次空気供給装置を備えた多気筒内燃機関の気筒配列をを示す図。
【図3】二次空気供給装置を備えた4気筒内燃機関の制御チャート。
【図4】(a)は空燃比とエンジンの発生トルクの関係を示すグラフ、(b)は点火時期とエンジンの発生トルクの関係を示すグラフ。
【図5】本発明の一実施形態の二次空気供給装置を備えた多気筒内燃機関の制御フローを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 エンジン本体
1a 第1気筒
1b 第2気筒
1c 第3気筒
1d 第4気筒
2 吸気ポート
3 排気ポート
6 吸気通路
11 燃料噴射弁
15 点火プラグ
18 点火コイル
19 ディストリビュータ
20 排気通路
21 排気浄化装置
24 エンジン制御装置(ECU)
32 エアポンプ
31 二次空気供給通路
33 二次空気調整弁
35 二次空気供給口
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌で使用される多気筒内燃機関および多気筒内燃機関の制御方法に関し、特に、排気系に二次空気を供給する型式の多気筒内燃機関および多気筒内燃機関の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関(エンジン)において、排気系触媒の昇温特性の向上等のために、機関排気系に二次空気を供給し、未燃焼ガスを含んだ排気を二次燃焼させる二次空気供給装置が知られている。一般的な二次空気供給装置は、専用のエアポンプ等を備え付けて排気管内部へ圧縮空気を供給している(例えば、特許文献1)。
【0003】
二次空気供給装置は、気筒から排出される排気と、エアポンプによって排気系に送り込まれる空気とを混合して二次燃焼させる。二次燃焼の原理は、排気の熱エネルギと排気系に新規に供給される空気(二次空気)を用いて排気中の未燃焼ガス成分を燃焼させるものである。この二次燃焼によって排気管内部のガス温度が上昇し、結果として、排気管や排気浄化装置(触媒など)が急速に昇温し、急速暖機が行われる。
【0004】
二次空気供給装置を自動車等の車輌で多く使用される複数の気筒を備えた多気筒内燃機関に適用した場合、従来、一般的には、二次空気供給通路は、複数気筒全ての排気ポート出口や排気マニホールドの集合部あるいは排気管等に接続され、全気筒に対して二次空気を供給している。排気の熱エネルギを最大限に有効利用するためには、二次空気は各気筒の排気ポートや各排気ポート毎の排気枝管に対して供給することが好ましい。
【0005】
【特許文献1】
実開平03−087912号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の二次空気供給装置では、二次空気供給通路が全気筒の排気ポートや排気通路に対して配設されるため、コスト高になり、レイアウトの自由度などでも問題がある。また、排気系に供給される二次空気量に応じて全気筒の空燃比を過多化しなければならないので、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代が大きいことや、アイドル運転時のエンジン回転安定性の確保が難しいなどの懸念がある。
【0007】
この発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、コストの低減、レイアウトの自由度を向上し、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代を最小限にし、アイドル運転時のエンジン回転安定性も確保する二次空気供給装置付き多気筒内燃機関および多気筒内燃機関の制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関は、複数気筒を有する多気筒内燃機関において、一部の気筒に対してのみ二次空気を供給する二次空気供給手段と、前記二次空気供給手段による二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するトルク均一制御手段とを有する。
【0009】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関によれば、一部の気筒に対してのみ二次空気を供給するから、二次空気供給に伴う燃料増量が全気筒に対して二次空気を供給する場合に比して少なくて済み、二次空気供給中における各気筒の発生トルクがトルク均一制御手段によって均一化され、アイドル運転時のエンジン回転の安定性が得られる。
【0010】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関における前記トルク均一制御手段は、エンジンの運転状態に応じて複数気筒の燃料供給量をそれぞれ独立調整する燃料量調整手段と、前記複数気筒の点火時期をそれぞれ独立調整する点火時期調整手段とを備える。
【0011】
これにより、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)と二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とで、燃料供給量、点火時期を個別に制御することができる。
【0012】
この場合、燃料量調整手段は、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)に供給する燃料量を、二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とは異なる値、具体的には、二次空気を供給する対象気筒に供給する燃料量を二次空気を供給しない対象外気筒と比べて理論空燃比より過多に設定する。これにより、二次空気を供給する対象気筒の排気ガスの未燃焼成分が増加し、二次空気供給による排気温度の上昇が効果的に行われる。
【0013】
点火時期調整手段は、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)の点火時期を、二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とは異なる値に調整、具体的には、二次空気を供給する対象気筒に供給する点火時期を二次空気を供給しない対象外気筒と比べて遅角点火時期に設定する。
【0014】
これにより、理論空燃比より過多の空燃比を設定されたことによる対象気筒の発生トルクの増加が相殺され、気筒相互で発生トルクの均一化が図られ、二次空気供給中のアイドル運転時のエンジン回転の安定性が得られる。
【0015】
遅角量は各気筒の発生トルクに応じてリアルタイムに適正値に設定することができ、各気筒の発生トルクは、エンジンの運転状態のうち、エンジン回転速度から複数気筒間の回転速度偏差を演算することによって簡便に推定することができる。
【0016】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関における二次空気供給手段は、前記複数気筒のうち、1個の気筒に属する排気通路にのみ二次空気を供給する二次空気供給口を有し、1個の気筒に属する排気通路に限って二次空気を供給する。また、二次空気供給手段は、二次空気供給対象の気筒に属する排気ポートに近接して配設された二次空気供給口を有する。これにより高温の排気ガスに対して二次空気を噴射して排気ガス中の未燃焼成分を効果的に燃焼させることができる。
【0017】
また、二次空気供給手段は、二次空気流量を調整する二次空気調整弁を有しており、二次空気調整弁は、エンジンの運転状態あるいは排気浄化装置の状態に応じて二次空気流量を最適値に調整することができる。
【0018】
この発明による二次空気供給装置付き多気筒内燃機関は、運転安定性の確保や排気浄化装置の劣化防止のために、エンジンの運転状態あるいは排気浄化装置の状態に応じて前記二次空気供給手段、前記トルク均一制御手段の動作を停止する。
【0019】
この発明による多気筒内燃機関の制御方法は、多気筒内燃機関の一部の気筒に対してのみ二次空気を供給し、二次空気供給対象の気筒の燃料量を二次空気を供給しない気筒の燃料量より増加させ、二次空気供給対象の気筒の点火時期を二次空気を供給しない気筒の点火時期より遅角させる。
【0020】
これにより、二次空気供給に伴う燃料増量が全気筒に対して二次空気を供給する場合に比して少なくて済み、二次空気供給中における各気筒の発生トルクが点火時期によって均一化され、アイドル運転時のエンジン回転の安定性が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施形態を詳細に説明する。
図1、図2は、本実施形態の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関を示している。本実施形態の多気筒内燃機関は直列4気筒の内燃機関である。
【0022】
多気筒内燃機関は、エンジン本体1に、4個の燃焼室(シリンダ)1a、1b1c、1dを有している。以下、燃焼室1aは第1気筒、燃焼室1bは第2気筒、燃焼室1cは第3気筒、燃焼室1dは第4気筒として説明することがある。
【0023】
エンジン本体1には、各気筒1a〜1d毎に個別に、吸気ポート2、排気ポート3が各々形成されている。吸気ポート2は吸気弁4によって開閉され、排気ポート3は排気弁5によって開閉される。エンジン本体1には各気筒1a〜1d毎に点火プラグ15が取り付けられている。
【0024】
エンジン本体1には、各気筒1a〜1dに空気を供給するために、各気筒1a〜1dの吸気ポート2に連通する吸気通路(吸気マニホールド、吸気管)6が接続されている。吸気通路6には、エアクリーナ7、吸入空気量を調整するスロットル弁8、スロットル弁8の上流側と下流側とを連結するバイパス通路9、バイパス通路9を流れる吸入空気量を調整するISCバルブ10が設置されている。なお、スロットル弁8は、電子制御式モータ駆動スロットル弁でもよく、この場合には、バイパス通路9、ISCバルブ10を省略することも可能である。
【0025】
エンジン本体1には、燃料量調整手段として、各吸気ポート2毎に燃料噴射弁11が取り付けられている。燃料噴射弁11は、気筒数と同数設けられており、各気筒1a〜1dに対して燃料を個別に噴射供給する。これにより、各気筒1a〜1dの燃料供給量をそれぞれ独立調整することができる。
【0026】
また、吸気通路6には、スロットル弁8の開度を検出するスロットル開度センサ12、スロットル弁8の下流の吸気管内圧力を検出する吸気圧力センサ13、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサ14が設けられている。エンジン本体1には、クランク角度を検出するクランク角センサ16、エンジン冷却水温を検出する水温センサ17が取り付けられている
点火時期調整手段として、通電電流を遮断するイグナイタと高電圧を発生する点火コイル18と、点火コイル18で発生した高電圧を各気筒の点火プラグ15に配電するディストリビュータ19とが設けられている。なお、点火コイル18およびディストリビュータ19は、多気筒内燃機関の場合、気筒毎の点火コイルと配電時間を制御するトランジスタを備えた直接配電式としてもよい。
【0027】
エンジン本体1には各気筒1a〜1dの排気ポート3に連通する排気通路(排気マニホールド、排気管)20が接続されている。排気通路20には機関燃焼室から排出される排気ガスを浄化・還元する排気浄化装置(触媒コンバータ)21が接続されている。
【0028】
排気通路20には、排気ガスの酸素濃度を検出する排気センサ(O2センサ或いは排気ガスの空燃比を直接測定する空燃比センサ、或いはその組合せ)22、排気ガス温度を検出する排気温度センサ23が取り付けられている。排気センサ22は、排気浄化装置21の上流側あるいは下流側に設置されるものであり、その組合せや配置位置を限定しない。ただし、本実施形態においては、排気浄化装置21の上流側にO2センサを設置した例について説明する。
【0029】
多気筒内燃機関はマイクロコンピュータによる電子制御方式のエンジン制御装置(ECU)24を有する。ECU24は、バッテリ25から電源を受給し、前述の各種検出装置(センサ)より検出信号を入力し、演算処理を行い、制御信号をISCバルブ10、燃料噴射弁11、点火コイル18へ出力し、エンジン制御(空燃比制御、点火時期制御)を行う。
【0030】
吸気通路6より導入された空気は、スロットル弁8により調整された流量と、バイパス通路9に配設されたISCバルブ10により調整された流量とを含めて各燃焼室1a〜1dに供給される。
【0031】
吸気通路6に設置された吸気圧力センサ13および吸気温度センサ14からの情報とクランク角センサ16からの情報(エンジン回転速度)により、ECU24内で燃料噴射量の最適値が計算され、その結果に基づいて燃料噴射弁11より燃料が供給される。燃料は、空気と混じり合い、混合気として燃焼室1a〜1d内に供給される。
【0032】
また、クランク角センサ16からの情報によってECU24内で点火時期の最適値が計算され、その結果に基づいて点火コイル18に点火信号が出力される。点火信号はディストリビュータ19(或いはイグナイタ)により気筒毎に分配され、最適点火時期にて各気筒の点火プラグ15の火花放電が行われる。
【0033】
各燃焼室1a〜1dで燃焼した混合気は、排気通路20より排気ガスとなって外部に排出される。この時、排気センサ22により検出される排気ガス中の酸素量と、排気温度センサ23により検出される排気温度に基づいて、ECU24の演算処理により燃料噴射量の補正制御が行われる。
【0034】
エンジン本体1には、二次空気供給手段として、二次空気供給通路31が設けられている。二次空気供給通路31には、空気圧縮を行うエアポンプ32と、二次空気調整弁33が接続されている。エアポンプ32には吸気通路6から分岐した空気取入通路34が接続されている。二次空気調整弁33は、エンジンの運転状態、あるいは排気浄化装置の状態に応じて二次空気供給のオン・オフ、および二次空気流量を制御する。
【0035】
エアポンプ32によって圧縮された空気は、二次空気調整弁33により流量を計量され、二次空気供給通路31を通り、二次空気供給口35より二次空気として排気通路20へ噴射供給される。
【0036】
二次空気供給通路31の先端がなす二次空気供給口35は、本実施形態では、図2によく示されているように、二次空気を第1気筒1aに属する排気通路にのみ供給する。したがって、本実施形態では、二次空気を供給する気筒(以下、対象気筒)は第1気筒1aで、二次空気を供給しない気筒(以下、対象外気筒)は第2気筒1b、第3気筒1c、第4気筒1dとなる。
【0037】
二次空気供給口35は、できるだけ高温の排気ガスに対して二次空気を噴射して排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させるために、図2に示されているように、可能な限り排気ポート3に近接した位置に設置されることが望ましい。
【0038】
なお、二次空気供給対象の気筒は第1気筒1aに限定されたものではなく、他の気筒でもよく、また、二次空気供給対象の気筒を2〜3気筒に増加させてもよい。ただし、特定気筒(一部気筒)にのみ、二次空気を供給するために、二次空気供給通路31は、各気筒1a〜1dの排気ポート3から、排気通路20における他気筒との集合部20Aまでの間に接続するものとする。
【0039】
エアポンプ32は、空気を圧縮生成可能であれば、電動、エンジン駆動、気筒休止などによる生成であってもよい。また、二次空気取入通路34は吸気通路6とは別に空気取入口を設けられているものでもよい。また、二次空気調整弁33はリードバルブ機構のような単純な構造としてもよい。
【0040】
ECU24は、二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するトルク均一制御手段として、二次空気供給時には、二次空気を供給する対象気筒(第1気筒1a)に供給する燃料量を、二次空気を供給しない対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)と比べて理論空燃比より過多に設定する燃料量制御を行うと共に、対象気筒(第1気筒1a)の点火時期を対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)と比べて遅角設定する制御を行う。
【0041】
これにより、二次空気供給中は、第2気筒1b〜第4気筒1dには理論空燃比の混合気が供給され、第1気筒1aには理論空燃比より濃いリッチ空燃比の混合気が供給される。なお、二次空気供給停止時には、全ての気筒1a〜1dに対して理論空燃比の混合気が供給される。
【0042】
各気筒1a〜1dの発生トルクは、エンジンの運転状態のうち、エンジン回転速度から複数気筒間の回転速度偏差を演算することによって推定することができ、これに応じて二次空気供給中の対象気筒(第1気筒1a)の点火時期の遅角量を設定することができる。
【0043】
本発明による多気筒内燃機関の具体的な制御方法の一例を図3の制御チャートを参照して説明する。なお、図3において、#1〜#4は第1気筒1a〜第4気筒1dの個別の特性を示している。
【0044】
エンジン始動直後、時点T1で、符合Aで示されているように、全気筒1a〜1dの点火時期の遅角制御を行う。これは、エンジンの排気温度を上昇させる既知の技術であり、全気筒1a〜1dに対して実施する。
【0045】
次いで、対象気筒(第1気筒1a)に対する二次空気の供給を開始する。所定量の二次空気供給が行われた時点T2において、符合Bで示されているように、対象気筒(第1気筒1a)に限って燃料量を増加すると共に、符合Cで示されているように、対象気筒(第1気筒1a)に限って点火時期を現在の点火遅角制御値よりさらに遅角させる制御を行う。
【0046】
なお、二次空気供給の開始時期は、時点T2において、対象気筒の燃料量調整および点火時期調整と同時期としてもよく、時点T1と時点T2に制御の開始時期を限定するものでもない。
【0047】
二次空気供給、燃料量調整や点火時期遅角制御は、エンジン回転速度の変化代、例えば急激な点火時期変化に伴う回転変動などの現象に応じて段階動作とすることが望ましく、これによりアイドル時の回転安定性を確保する。つまり、燃料、点火、二次空気の変化が、エンジン回転速度に対し影響が大きい場合には、これらを徐々に動作させ、逆に影響が小さい場合には、これらの急激に動作させてもよい。
【0048】
また、燃料量調整と点火時期遅角制御の調整値(制御値)は、失火限界近くで可能な量の未燃焼ガスを排気管に供給可能な値とする。これにより、多量の未燃焼ガスと二次空気が混合して二次燃焼し、排気管内で大きな熱エネルギーを生成し、排気系の暖機を効果的に早めることができる。
【0049】
なお、図3の最下段に前記制御中における触媒温度の推移を示す。破線はエンジン始動後に全気筒に対して既知技術の点火時期遅角制御のみを実施した場合の特性を、実線は同様の制御に加え、本実施形態に示した二次空気供給を適用した場合の特性を示している。本実施形態に示した二次空気供給を適用すると、二次空気供給を行わない場合に比して触媒温度が経過時間に伴って上昇する度合いが大きいこと、すなわち、触媒温度の上昇が速いことがわかる。
【0050】
また、二次空気供給後に、対象気筒の点火時期の遅角量を増加することにより、燃料量の増加に伴い発生するであろう対象気筒のトルク増加分を相殺することができる。
【0051】
図4(a)は燃料量(空燃比)とエンジンの発生トルクとの関係を、図4(b)は点火時期とエンジンの発生トルクとの関係を各々示している。一般的には、空燃比が理論空燃比よりも濃厚になると、エンジン発生トルクは増加する傾向にある。また、点火時期がピストン上死点よりも遅角側になると、エンジン発生トルクは減少する傾向にある。
【0052】
本実施形態によれば、二次空気を供給する対象気筒(第1気筒1a)には排気系へ未燃焼分を供給するために、対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)に比べ、燃料量を過多にする必要がある。これにより、対象気筒(第1気筒1a)の発生トルクは増加する。燃料量過多によるトルク増加は対象気筒(第1気筒1a)のみであるため、対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)とで相互のトルクバランスが崩れ、結果として、アイドル時などでは、回転安定性が損なわれて不快な振動が発生してしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、対象気筒(第1気筒1a)の点火時期を、対象外気筒(第2気筒1b〜第4気筒1d)に比べ、遅角側に調整することで、発生トルクを減少させ、全気筒で発生されるトルクを均一化するように制御を行う。この結果、対象気筒、即ち本実施形態における1番気筒1aと、対象外気筒、即ち本実施形態における第2番気筒1b〜第4番気筒1dとのトルクバランスが図られ、アイドル時の回転安定性が確保される。
【0054】
排気浄化装置(触媒コンバータ)21の上流側に排気温度センサ23が設置されているから、触媒温度を排気温度センサ23の出力値で代用することができる。そこで、触媒がある所定温度以上で急激に劣化が促進されることを抑制するため、あらかじめ排気温度センサ23の出力値と実際の触媒温度との相関を取っておき、触媒温度が所定温度以上となる前に、二次空気供給を停止し、触媒の劣化を事前に防ぐことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、排気温度センサ23を設置して触媒温度を代用しているが、排気温度センサ23を持たない場合には、その他エンジンの運転状態を検出する手段を用いて触媒温度を推定し、同様に触媒の高温劣化を未然に防止するも考えられる。触媒温度の推定は、エンジン始動後経過時間、エンジン水温、吸気温度、圧力センサ出力を元に演算されるエンジン吸入空気量の積算値、あるいはエンジン運転状態検出値の組合せなどにより行うことができる。
【0056】
また、二次空気供給は、本実施形態では、エンジン始動から所定時間内のアイドル状態での実施を提案している。二次空気供給中に、走行状態へ移行した場合には、エンジンの運転状態が大きく変化することが予測され、先に述べた二次空気供給の対象気筒と対象外気筒とのトルクバランスの均一化が困難となることが考えられるので、直ちに二次空気供給を停止することが望ましい。ただし、走行状態に至っても、緩慢あるいは定常的なエンジンの運転状態であれば実施可能であることも予測されるので、この限りではない。
つぎに、ECU24によるエンジン制御を図5に示しているフローチャートを参照して説明する。
【0057】
(ステップ1)
エンジンの運転状態検出結果より、二次空気供給が実施可能な状態か否かを判定する。例えば、エンジン回転数=所定値以内、エンジン水温≦所定値、排気温度≦所定値、エンジン始動後経過時間≧所定値、アイドリング状態であるか、などの条件を判定するようにし、エンジンの運転状態が、定常で、かつ排気浄化装置21の温度が低い状態を検出できるように設定する。
【0058】
例えば、三元触媒の活性温度以下とほぼ等価な運転状態を包括できるように設定することが望ましい。ここで、ほぼ等価な運転状態とは、触媒の温度を直接検出できない場合に、エンジン水温や排気温度、またエンジン始動後の経過時間などで推測した運転状態(≒触媒温度)とすることを指す。また、実測された排気温度、あるいは前記推定した運転状態により触媒温度が過度に高温となった場合には、即座に前記二次空気供給装置の実行を停止することとする。
【0059】
ステップ1で二次空気供給装置が実施可能であると判定されれば、ステップ2へ、実施不可能であると判定されれば、ステップ6へ移行し、ステップ6では、二次空気供給中であれば、その制御を停止し、制御フローを終了する。
【0060】
(ステップ2)
既知技術の点火時期遅角制御により全気筒の点火時期遅角を行う。具体的には、図2で示した直列4気筒内燃機関の場合、第1気筒1a〜〜第4気筒1dの全ての気筒の点火時期を遅角する。例えば、該点火時期は、アイドルの安定性を確保できる範囲で、排気温度が最大となるように設定する。エンジンの圧縮行程以降に燃焼時期を遅らせ、通常よりも後燃えをさせることが重要であるので、ATDC点火となるような設定が好ましい。
【0061】
しかし、急激に点火時期を遅角させると、エンジン回転速度の落ち込みが発生する場合があるので、段階的に遅角量を増加させることが望ましい。また、すでに述べたが、アイドルの安定性を損なわないためにも、失火を伴うような大幅な点火時期の遅角は避けなければならない。
【0062】
なお、本実施形態では説明を省いているが、点火時期の遅角に伴うエンジン回転速度の低下を補うために、ISCバルブ10よるアイドル空気量の増加補正が必要である。その後、ステップ3へ進む。
【0063】
(ステップ3)
二次空気供給を実施する。具体的には、二次空気調整弁33により調整された流量の圧縮空気(二次空気)を二次空気供給通路31の先端の二次空気供給口35より排気通路20へ供給する。この二次空気供給は、本実施形態の場合、図2で示したように、第1気筒1aに属する排気通路に対してのみ行われ、他の気筒に属する排気通路へは供給を行わないものとする。この二次空気の供給は、直接的にアイドル安定性への影響が考えられないので、ステップ2と同一時刻に実施してもよい。
【0064】
(ステップ4)
排気通路20への未燃焼ガス排出量を増加させるために燃料量を増加させる。具体的には、ステップ3で述べた通り、二次空気が供給される気筒は第1気筒1aに属する排気通路のみであるので、該燃料増量は同じく第1気筒1aに対して燃料供給を行う燃料噴射弁11にのみ適用する。例えば、より多くの未燃焼分を含んだ排気ガスを排気通路20へ供給するため、他の気筒へ供給される燃料量と比べ、10〜20%程度の増量を行う。
【0065】
以上、ステップ1からステップ4にかけて述べた制御を行うことで、二次空気を供給される排気通路へ未燃焼ガスと空気を供給することで行われ、排気通路内で二次燃焼が行われる。その結果、排気通路の下流側に設置された排気浄化装置(触媒コンバータ)21を急速に昇温させることが可能となる。
【0066】
(ステップ5)
燃料の増量により変化したトルク変化を抑制するために、点火時期を調整する。図4を用いて述べたトルク特性に基づき、対象気筒である第1気筒1aに燃料増量を実施した場合、他の気筒に比べて混合比(空燃比)が変化するために発生トルクが変化する。具体的には、同一の点火時期で燃料量が増加すると、トルクが増加し、その結果、アイドルの安定性が損なわれるという懸念があるので、燃料増量に併せて点火時期を遅角制御し、対象気筒である第1気筒1aの発生トルクを下げることにより、他の対象外気筒とのトルク差を平滑化する。これによりアイドル安定性が向上する。
【0067】
より具体的な実施例としては、ステップ5の点火時期調整は、エンジン本体1に配設された各種センサにより検出される運転状態を用いてECU24による演算処理により、対象気筒である第1気筒1aの点火時期を最適値に調整する。具体的には、クランク角センサ16の出力より気筒間のエンジン回転速度の偏差を求め、間接的に全気筒のトルク変化を演算する。その後、特にエンジン回転速度の偏差が大きい、即ち、第1気筒1aに当たる気筒のトルク変化が小さくなるように点火時期を演算し、第1気筒1aの点火時期を調整する。その結果、対象気筒に行われた燃料増量によるトルク増加が抑制され、対象外気筒との回転速度偏差も小さくなり、アイドル安定性が確保された運転状態が得られる。
【0068】
なお、点火時期調整は、前述のように失火を伴う点火時期にならないよう調整する必要があり、クランク角センサ16より求められたエンジン回転速度の偏差により帰還制御することが望ましく、該帰還制御によりエンジン毎の特性差や、失火限界の差を吸収することができる。
【0069】
また、点火時期の帰還制御をもってしても、エンジン回転速度偏差が平滑化されない場合には、燃料増量値を調整してアイドル安定性を向上させる方法も考えられる。なお、二次空気供給を実施してもアイドル安定性が確保される場合には、帰還制御を省き、制御構成を簡略化してもよい。
【0070】
以上、ステップ1の二次空気供給装置実施判定部で実施可能であると判定されている間は、ステップ2の点火時期遅角制御と、ステップ3の二次空気供給と、ステップ4の燃料量調整と、ステップ5の点火時期調整を実行することにより、対象気筒から排出される燃料過多の排気ガス、即ち未燃焼成分を多く含んだ未燃ガスと、エアポンプ32から供給される二次空気が排気通路で混合され、対象気筒からの排出ガスに含まれる未燃焼ガスが排気通路内で二次燃焼し、この二次燃焼によって、未燃ガスと二次空気が混合される領域より下流側に位置する排気浄化装置(触媒コンバータ)21の温度が上昇し、触媒の活性時間を短縮できる。
【0071】
本実施形態では、二次燃焼のための燃料増加量は、全気筒の排気通路に対して二次空気供給を行うことに応じて全気筒の燃料供給量を増加する場合に比して少なくて済み、また、対象気筒に対する燃料増量を実施したことにより発生するトルク変化は、点火時期の帰還制御により平滑化するから、特に、冷機時に、エンジンを始動した場合に、少ない燃料増量で、触媒の早期活性が実現可能となり、アイドルの安定化も確保できる。
【0072】
上述したように、本発明による二次空気供給装置付き二次空気供給装置は、特に、冷機時エンジン始動後に、一部の気筒に供給される燃料量を増加させ、また点火時期を遅角させ、該気筒に属する排気管に二次空気を供給することで、排気ガスに含まれる未燃焼ガスを二次燃焼させることが可能となり、排気浄化装置(触媒コンバータ)の温度を急速に高めて活性化し、排気ガス浄化性能を早期に発揮させることができる。
【0073】
また、該気筒の点火時期を最適化することで、燃料増量に伴うトルク変化を抑制させることが可能となり、アイドル安定性を損なわないエンジン運転性を得ることができる。また、前記二次空気供給通路の設置を最小限に収めることができるので、コストの低減、及びレイアウトの自由度も向上できる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、他例のエンジンにも適用が可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
【0075】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明による二次空気供給装置付き二次空気供給装置は、一部の気筒にのみ二次空気を供給し、二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するから、燃料経済性の悪化、排気性能の悪化代を最小限にし、アイドル運転時時のエンジン回転安定性を確保して排気浄化装置の温度を急速に高めて活性化し、排気ガス浄化性能を早期に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の二次空気供給装置を備えた多気筒内燃機関の全体構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態の二次空気供給装置を備えた多気筒内燃機関の気筒配列をを示す図。
【図3】二次空気供給装置を備えた4気筒内燃機関の制御チャート。
【図4】(a)は空燃比とエンジンの発生トルクの関係を示すグラフ、(b)は点火時期とエンジンの発生トルクの関係を示すグラフ。
【図5】本発明の一実施形態の二次空気供給装置を備えた多気筒内燃機関の制御フローを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 エンジン本体
1a 第1気筒
1b 第2気筒
1c 第3気筒
1d 第4気筒
2 吸気ポート
3 排気ポート
6 吸気通路
11 燃料噴射弁
15 点火プラグ
18 点火コイル
19 ディストリビュータ
20 排気通路
21 排気浄化装置
24 エンジン制御装置(ECU)
32 エアポンプ
31 二次空気供給通路
33 二次空気調整弁
35 二次空気供給口
Claims (14)
- 複数気筒を有する多気筒内燃機関において、一部の気筒に対してのみ二次空気を供給する二次空気供給手段と、前記二次空気供給手段による二次空気供給中に各気筒の発生トルクを均一化するトルク均一制御手段と、を有することを特徴とする二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記トルク均一制御手段は、エンジンの運転状態に応じて複数気筒の燃料供給量をそれぞれ独立調整する燃料量調整手段と、前記複数気筒の点火時期をそれぞれ独立調整する点火時期調整手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記燃料量調整手段は、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)に供給する燃料量を、二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とは異なる値に調整することを特徴とする請求項2に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記燃料供給量調整手段は、二次空気を供給する対象気筒に供給する燃料量を二次空気を供給しない対象外気筒と比べて理論空燃比より過多に設定することを特徴とする請求項3に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記点火時期調整手段は、二次空気を供給する一部の気筒(対象気筒)の点火時期を、二次空気を供給しない気筒(対象外気筒)とは異なる値に調整することを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記点火時期調整手段は、二次空気を供給する対象気筒に供給する点火時期を二次空気を供給しない対象外気筒と比べて遅角点火時期に設定する請求項5記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 各気筒の発生トルクに応じて遅角量を設定することを特徴とする請求項6に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 各気筒の発生トルクは、エンジンの運転状態のうち、エンジン回転速度から複数気筒間の回転速度偏差を演算することによって推定することを特徴とする請求項7に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記二次空気供給手段は、前記複数気筒のうち、1個の気筒に属する排気通路にのみ二次空気を供給する二次空気供給口を有することを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記二次空気供給手段は、二次空気供給対象の気筒に属する排気ポートに近接して配設された二次空気供給口を有することを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記二次空気供給手段は、二次空気流量を調整する二次空気調整弁を有していることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 前記二次空気調整弁は、エンジンの運転状態あるいは排気浄化装置の状態に応じて流量を調整することを特徴とする請求項11に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- エンジンの運転状態あるいは排気浄化装置の状態に応じて前記二次空気供給手段、前記トルク均一制御手段の動作を停止することを特徴とする請求項1から12の何れか一項に記載の二次空気供給装置付き多気筒内燃機関。
- 多気筒内燃機関の一部の気筒に対してのみ二次空気を供給し、二次空気供給対象の気筒の燃料量を二次空気を供給しない気筒の燃料量より増加させ、二次空気供給対象の気筒の点火時期を二次空気を供給しない気筒の点火時期より遅角させることを特徴とする多気筒内燃機関の制御方法。
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CN105275651A (zh) * | 2014-06-23 | 2016-01-27 | 福特环球技术公司 | 用于二次空气喷射与排气背压阀协调的方法和系统 |
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2003
- 2003-03-10 JP JP2003063729A patent/JP2004270584A/ja active Pending
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