JP2004270583A - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】筒内に噴射される燃料量と吸気ポートに噴射される燃料量との割合を適切に制御して燃料の気化潜熱による充填効率の向上を十分に発揮させつつ燃料混合気の均質度を高めて出力向上を図ることが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁5と、吸気ポート6に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁7とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の燃料が第1の燃料噴射弁5から噴射されるように、第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する。
【選択図】 図2
【解決手段】筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁5と、吸気ポート6に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁7とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の燃料が第1の燃料噴射弁5から噴射されるように、第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の筒内及び吸気ポートの双方へ燃料を噴射可能な燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の燃料噴射装置として、筒内へ燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備え、低負荷時には第1の燃料噴射弁から燃料を噴射して成層燃焼を実現し、高負荷時には第2の燃料噴射弁から燃料を噴射して均質燃焼を実現し、中負荷時には両噴射弁から燃料を噴射する装置が知られている(特許文献1参照)。その他に、本発明に関連する先行技術として特許文献2〜5が存在する。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−237854号公報
【特許文献2】
特開平7−103048号公報
【特許文献3】
特開昭63−230920号公報
【特許文献4】
特開平11−30142号公報
【特許文献5】
特開平11−241626号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の燃料噴射装置では、吸気行程において火炎伝播に必要な量の燃料を第1の燃料噴射弁から噴射し、かつ圧縮行程において燃料の着火に必要な量の燃料を第1の燃料噴射弁から噴射している。しかしながら、筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の改善効果については特に考慮されておらず、筒内噴射の利点を十分に享受できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、筒内に噴射される燃料量と吸気ポートに噴射される燃料量との割合を適切に制御して燃料の気化潜熱による充填効率の向上を十分に発揮させつつ燃料混合気の均質度を高めて出力向上を図ることが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、前記筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の燃料が前記第1の燃料噴射弁から噴射されるように、前記第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する噴射制御手段を備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
筒内へ燃料を噴射した場合には燃料が気化する際の潜熱で吸気温度が低下して吸気の充填効率が向上するが、その効果は吸気ポートが開いている間に限定され、吸気ポートが閉じた後に筒内に燃料を噴射しても吸気効率の改善には結び付かない。一方、筒内に燃料を噴射した場合には吸気ポートへ燃料を噴射した場合と比較して空気との混合にばらつきが生じ易い。このため、充填効率の向上が見込める範囲を越えて大量の燃料を筒内に噴射したならば、燃料混合気の均質度の低下による影響が無視できないほど大きくなり、燃焼悪化による出力低下を招くことがある。これに対して、本発明によれば、第1の燃料噴射弁から筒内に噴射する燃料量を気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内に制限しているので、充填効率の向上に結び付かない燃料の筒内噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止することができる。第1の燃料噴射弁から噴射可能な燃料量が内燃機関の運転状態に基づいて定められる要求燃料噴射量に対して不足する場合には、その不足分に相当する量の燃料を第2の燃料噴射弁から噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給することができる。
【0008】
本発明の他の内燃機関の燃料噴射装置は、筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、前記内燃機関の回転数に基づいて、前記第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する噴射制御手段を備えることにより、上述した課題を解決する(請求項2)。
【0009】
内燃機関の回転数(回転速度)が高いときは吸気ポートが開いている時間が相対的に短くなり、これに伴って、燃料の気化潜熱による充填効率の向上効果が見込める期間も短くなる。つまり、第1の燃料噴射弁から筒内に噴射すべき燃料量の適正値は回転数に応じて変化する。そこで、内燃機関の回転数に応じて第1の燃料噴射弁からの燃料噴射量を増減させることにより、回転数の変化に拘わりなく適正量の燃料を筒内に噴射させ、それにより筒内へ噴射される燃料の気化潜熱を利用した充填効率の向上効果を十分に発揮させつつ、燃料の過剰な噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止できる。また、第1の燃料噴射弁から噴射可能な燃料量が内燃機関の運転状態に基づいて定められる要求燃料噴射量に対して不足する場合には、その不足分に相当する量の燃料を第2の燃料噴射弁から噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給することができる。
【0010】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置において、前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定レベルよりも高い領域では、前記回転数が高いほど前記第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を大きく設定することが好ましい(請求項3)。上記の通り、筒内に噴射された燃料の気化潜熱によって充填効率を向上させることができる期間は内燃機関の回転数が高いほど短くなるため、回転数が高いほど第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を増加させて筒内への燃料噴射量を制限することにより、両燃料噴射弁の燃料噴射量の割合を適正に維持できる。なお、所定レベルよりも高い領域を対象としたのは、回転数が十分に低い領域では筒内への燃料噴射が可能な時間が相対的に長くなるため、内燃機関の運転状態に基づいて定められる燃料の全量を回転数の変化に拘わりなく筒内に噴射することが考えられ、回転数の上昇に伴って筒内噴射量の割合を増加させるという関係が必ずしも適当にはならないからである。
【0011】
前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定レベルよりも低い領域では、前記回転数が低いほど前記第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を大きく設定してもよい(請求項4)。回転数が十分に低い場合には筒内の燃料混合気と内燃機関の気筒壁等との間で熱交換が行われ、気化潜熱によって冷やされた混合気の温度が上昇して充填効率の向上効果が十分に発揮されないことがある。このような場合には、回転数の低下に応じて筒内への燃料噴射量を制限し、第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を増加させることにより、燃料の均質度を向上させて燃焼改善を図ることが好適である。
【0012】
また、前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定レベルよりも低い領域の少なくとも一部において、前記第1の燃料噴射弁による燃料噴射時期を遅角させてもよい(請求項5)。燃料噴射時期を遅角すれば、筒内に噴射された燃料の気化潜熱による吸気温度の低下作用の出現時期も遅くなり、気筒壁等からの熱による吸気温度の上昇が抑えられる。これにより筒内噴射燃料の気化潜熱による充填効率の向上効果を十分に発揮させることができる。
【0013】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置においては、ノッキングを検出するノッキング検出手段を具備し、前記噴射制御手段は前記ノッキング検出手段にてノッキングが検出された場合には、前記第1の燃料噴射弁による燃料噴射開始時期を進角させて前記第1の燃料噴射弁からの燃料の割合を増加させてもよい(請求項6)。
【0014】
この場合には、第1の燃料噴射弁から筒内に噴射される燃料量が増えることにより、その増量分の気化潜熱を利用して筒内の燃料混合気の温度をより低下させてノッキングを抑制することができる。燃料開始時期を進角させているので、増量された燃料が筒内で蒸発する時間を十分に確保できる。なお、前記噴射制御手段は前記燃料噴射開始時期の進角量を所定の限度内に制限してもよい(請求項7)。燃料噴射開始時期を過度に進角させるとピストンへの燃料付着量が許容範囲を越えて増加し、気化潜熱で吸気よりもピストンが冷やされて充填効率の向上効果が損なわれる。また、ピストンへの燃料付着によって黒煙が発生し、あるいは燃料混合気の均質度が低下することもある。そこで、適当な範囲に進角を制限すれば、筒内への燃料噴射開始時期の過度の進角を防止して上記の不都合を防止することができる。ノッキング発生時における筒内への燃料噴射開始時期の進角は、充填効率の向上が見込まれる範囲内に限って行われてもよいし、例外的に当該範囲を越えるか否かに拘わりなく行われてもよい。換言すれば、進角量の限度は充填効率の向上が見込まれる範囲内に設定されてもよいし、当該範囲を越えて進角側に設定されてもよい。但し、後者の場合にはピストンへの燃料付着量が許容範囲に収まるように限度を設定することが望ましい。
【0015】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置においては、吸気温度を検出する吸気温度検出手段を具備し、前記噴射制御手段は、検出された吸気温度が上昇すると前記第1の燃料量噴射弁の燃料噴射終了時期を遅らせて前記第1の燃料噴射弁からの燃料の割合を増加させてもよい(請求項8)。
【0016】
吸気温度が高いとそれだけ燃料の気化に要する時間が短くなり、燃料噴射終了時期を遅らせても点火時期までに燃料を十分に気化させて均質度の高い燃料混合気を生成することができる。そこで、吸気温度が高いときには筒内への燃料噴射開始時期を遅らせることにより、黒煙の発生を抑えつつ筒内へより多くの燃料を噴射し、気化潜熱を最大限に利用することが可能となる。
【0017】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置において、前記噴射制御手段は、均質燃焼が要求される高負荷運転時において、前記筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の最大量とほぼ等しい燃料が前記第1の燃料噴射弁から噴射され、残りの燃料が前記第2の燃料噴射弁から噴射されるように前記割合を制御してもよい(請求項9)。この場合には、均質燃焼が要求される高負荷時において本発明の作用効果を十分に発揮させることができる。特にWOT(Wide Open Throttleの略)とも称される全負荷運転時において、本発明に従って各燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を制御すれば、筒内へ噴射された燃料の気化潜熱を利用した充填効率の向上効果を最大限に発揮させつつ、全負荷運転時に要求される大量の燃料を筒内に確実に供給でき、内燃機関の出力を最大限に高めることができて好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は本発明の燃料噴射装置の要部を示す。この燃料噴射装置は、気筒2内で圧縮された燃料混合気に点火プラグ3で着火して燃焼を生じさせ、その燃焼エネルギでピストン4を往復運動させる4サイクルレシプロ式のガソリンエンジン1に適用されるものであって、気筒2内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁5と、吸気ポート6に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁7とを備えている。また、この実施形態の燃料噴射装置は、燃料噴射弁5、7の燃料噴射動作を制御する噴射制御手段としてエンジンコントロールユニット(ECU)8を利用する。なお、周知のようにエンジン1の吸気ポート6は吸気弁9で、排気ポート10は排気弁11にてそれぞれ開閉される。エンジン1には複数の気筒が設けられるが、図1では単一の気筒2のみを代表して示している。他の気筒2についても同様の構成である。
【0019】
ECU8はマイクロプロセッサ及びその動作に必要な主記憶装置としてのRAM、ROM、クロック回路等の周辺装置を備えたコンピュータとして構成されている。ECU8は、クランク軸の回転数に対応した信号を出力するクランク角センサ12、吸入空気量を検出する不図示のエアフローメータ、排気通路に設けられた不図示の空燃比センサ等の各種のセンサの出力を参照してエンジン1の運転状態を判別し、その判別結果に基づいて、所定の空燃比を実現するために必要な燃料噴射量を要求燃料噴射量として演算する。要求燃料噴射量を演算する手順は公知の各種の燃料噴射装置と同様でよく、詳細は省略する。なお、図1のエンジン1では、ECU8に対する情報の入力手段として、気筒2内におけるノッキングの発生を検出するノッキングセンサ13及び吸気ポート6の吸気温度を検出する吸気温センサ14が設けられている。これらのセンサ13、14は後述する第2の実施形態にて参照されるものであり、第1の実施形態においては省略可能である。
【0020】
本実施形態では2つの燃料噴射弁5、7が設けられているため、ECU8は要求燃料噴射量の演算の他に、その要求燃料噴射量に占める各燃料噴射弁5、7燃料噴射量の割合を決定し、その決定された割合に従って各燃料噴射弁5、7の燃料噴射動作を制御する。例えばエンジン1の低負荷運転時には第1の燃料噴射弁5から全燃料を噴射して成層燃焼を実現する。一方、エンジン1の高負荷運転時には均質燃焼が実現されるように各燃料噴射弁5、7の燃料噴射動作を制御するが、特にアクセルペダルの踏み込み量が最大となる全負荷運転時において、ECU8は図2の燃料噴射量割合制御ルーチンを所定の周期で繰り返し実行して燃料噴射量の割合を制御する。
【0021】
図2の燃料噴射量割合制御ルーチンにおいて、ECU8はまずステップS1でクランク角センサ12の出力を参照してエンジン1の回転数を取得する。続くステップS2では、ROM内に記録された所定のマップを参照して、エンジン回転数に対応した燃料噴射量の割合を取得する。このときに参照されるマップの一例を図3に示す。
【0022】
図3のマップでは、気筒2内に噴射した燃料の気化潜熱による吸気の充填効率の向上が見込める範囲の最大量に相当する量の燃料を第1の燃料噴射弁5から噴射(筒内噴射)させ、要求噴射量から第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量を減算した残りの燃料、つまり要求燃料噴射量に対する第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量の不足分に相当する量の燃料を第2の燃料噴射弁7から噴射(ポート噴射)させるように各燃料噴射弁5、7からの燃料噴射量の割合が定められている。その結果として、所定値Ne1よりもエンジン回転数が高い領域においては、回転数が上昇するにつれて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量の割合が漸次減少し、かつ第2の燃料噴射弁7の燃料噴射量の割合が漸次増加している。回転数が上昇すれば吸気ポート6が開いている期間が短くなり、それに伴って気化潜熱による充填効率の向上に貢献できる燃料量が減少するためである。また、所定値Ne1よりもエンジン回転数が低い領域においては、回転数が低下するにつれて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量の割合が漸次減少し、かつ第2の燃料噴射弁7の燃料噴射量の割合が漸次増加している。回転数が十分に低い領域では吸気行程から圧縮行程を経て点火に至る迄の時間が燃料噴射時間に比して十分に長くなり、気筒2内へ噴射された燃料の気化潜熱により吸気が一旦冷まされても、その後に気筒2の壁面等から伝熱により吸気温度が上昇して充填効率の向上効果が十分に得られないためである。なお、回転数Ne1はエンジン1の構成や仕様に則して適宜に定めてよいが、一例として2000r.p.m.付近に設定される。
【0023】
図2に戻って、ECU8はステップS3でエンジン回転数が所定値Ne1未満か否か判断し、所定値Ne1以上のときは今回の燃料噴射量割合制御ルーチンを終える。一方、エンジン回転数が所定値Ne1未満のときはステップS4に進んで第1の燃料噴射弁5からの燃料噴射開始時期を遅角させ、その後に今回の燃料噴射量割合制御ルーチンを終える。ステップS4における燃料噴射開始時期の遅角は例えば図4に示すマップに従って行われる。この例では、エンジン回転数が所定値Ne1以上のときは、燃料噴射開始時期を圧縮上死点前(BTDC)のクランク角300〜250°の範囲に設定し、エンジン回転数が所定値Ne1未満のときは燃料噴射開始時期を圧縮上死点前のクランク角250〜180°の範囲に設定する。このように燃料噴射開始時期を遅角すれば燃料の気化潜熱による吸気温度の低下作用も遅れて出現するので、一旦冷やされた吸気が点火までの間に気筒2から受ける熱量が減少し、吸気温度の上昇が抑えられる。なお、ここでは図3の所定値Ne1を閾値として燃料噴射開始時期の遅角を実施しているが、回転数Ne1未満の領域の少なくとも一部で遅角が行われていればよい。従って、回転数がNe1よりもさらに低い領域に限って遅角を実施してもよいし、回転数が所定値Ne1よりも幾らか高い領域においても遅角が実施されてもよい。
【0024】
以上の燃料噴射量割合制御ルーチンにて各燃料噴射5、7の燃料噴射量が決定された後にECU8は所定の燃料噴射制御ルーチンを実行し、与えられた燃料噴射量が燃料噴射弁5、7からそれぞれ噴射されるように各燃料噴射弁5、7の燃料噴射開始時期、終了時期及び噴射圧力を制御する。
【0025】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は図1に示した燃料噴射装置において、図2の燃料噴射割合制御ルーチンに代え、ECU8に図5の燃料噴射割合制御ルーチンを所定の周期で繰り返し実行させるものである。従って、以下の説明において燃料噴射装置の構成は図1を参照する。また、図5のルーチンは図2のルーチンと同じくエンジン1の全負荷運転中に所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0026】
図5の燃料噴射割合制御ルーチンおいて、ECU8はまずステップS11でエンジン回転数を取得し、ステップS12でROM内のマップを参照してエンジン回転数に対応した噴射量割合を取得する。この際に参照されるマップの一例を図6に示す。図6において、エンジン回転数が所定値Ne2未満の領域では要求燃料噴射量の全量が筒内噴射、すなわち第1の燃料噴射弁5から噴射されるように噴射量割合が設定され、所定値Ne2以上の領域ではエンジン回転数が上昇するほど筒内噴射量の割合が漸次減少し、ポート噴射、すなわち第2の燃料噴射弁7からの燃料噴射量が漸次増加するように噴射量割合が設定されている。このようなマップは以下のようにして作成される。
【0027】
まず、図7に示すように、第1の燃料噴射弁5からの燃料噴射終了時期について、筒内に噴射された燃料が点火前に確実に気化できる時間が確保されるようにそのリミットを設定する。このリミットは、それ以上には燃料噴射終了時期を遅くできないという意味におけるリミットである。気化に必要な時間は一定のため、燃料噴射終了時期のリミットはエンジン回転数が上昇するほどに進角される。このように燃料噴射終了時期を定めることにより黒煙の発生を防止することができる。
【0028】
次に、筒内への燃料噴射開始時期について燃料の気化潜熱による充填効率の向上が最も高くなるようにそのリミットを設定する。例えば、図8に示すように燃料噴射開始時期と充填効率とが相関している場合、A点を燃料噴射開始時期のリミットとして設定する。このリミットはそれ以上には燃料噴射開始時期を早くできないという意味におけるリミットである。図8の点Aを越えて燃料噴射開始時期を進角するとピストン4に燃料が付着して気化潜熱でピストン4が冷やされる影響で充填効率が低下し、図8のB点を越えて燃料噴射開始時期を遅角すると吸気ポート6が吸気弁9にて閉じられる影響で充填効率が低下する。なお、燃料噴射開始時期のリミットは図9に実線で示すようにエンジン回転数が上昇するほど進角側に変化する。第1の実施形態で説明したように、エンジン回転数が低下すると筒内燃料噴射に許される時間的余裕が長くなり、必要以上に早期に燃料を噴射すると気筒2の壁面等からの熱を受けて吸気温度が上昇し、充填効率が低下するからである。なお、エンジン回転数と燃料噴射開始時期のリミットとの関係は図9に一点鎖線又は破線で示したように変化させてもよい。ちなみに図9の破線は図4に対応するものである。
【0029】
以上のようにして第1の燃料噴射弁5からの燃料の噴射開始時期及び噴射終了時期についてそれぞれリミットを決定し、これらのリミットから筒内へ噴射可能な燃料の最大量を求める。つまり、両リミット間において許容される最大圧力で燃料を連続して噴射した場合の燃料量を最大量として求める。そして、ECU8が演算した要求燃料噴射量が最大量以内であればその全量を第1の燃料噴射弁5の噴射量に振り分け、第2の燃料噴射弁7の燃料噴射量は0とする。要求噴射量が最大量よりも大きい場合には第1の燃料噴射弁5の噴射量を上記の最大量に設定し、要求燃料噴射量に対する不足分に相当する燃料量を第2の燃料噴射弁7の噴射量に設定する。以上のように燃料噴射量の割合を設定することにより、図6のマップが得られる。
【0030】
図5に戻って燃料噴射量割合制御ルーチンの説明を続ける。ステップS12において噴射量割合を取得した後はステップS13に進み、ノッキングセンサ13の出力を参照してノッキングの発生の有無を判別する。ノッキングが発生していればステップS14に進み、第1の燃料噴射弁5の燃料噴射開始時期の設定値が所定の進角限界に達しているか否かを判別する。
【0031】
ここでいう進角限界は図8のA点に設定してもよいし、A点よりもさらに進角側に設定してもよい。なお、ステップS11にて取得したエンジン回転数が図6の所定値Ne2以上であったときには第1の燃料噴射弁5の燃料噴射開始時期が図8のA点まで進角されていることになるから、ステップS14の限界をA点に設定しているときはステップS14が必ず肯定されることになる。これに対してエンジン回転数が所定値Ne2未満の場合には燃料噴射開始時期が必ずしもA点に設定されるとは限らず、充填効率からみて図8のA〜B点の間に燃料噴射開始時期が制御されていればよい。従って、ステップS14の進角限界を図8のA点に設定しても、エンジン回転数によってはステップS14が否定される場合があり得る。一方、ステップS14の進角限界を図8のA点よりもさらに進角側に設定する場合にはステップS14が否定判断される頻度が増えるが、噴射開始時期の進角によってピストン4への燃料付着の影響で充填効率が低下する。この充填効率の低下が許容できる範囲、例えばピストン4への燃料付着が急増しない範囲でステップS14の進角限界を設定することが望ましい。
【0032】
ステップS14で進角限界に達していないと判断した場合、ECU8はステップS15にて第1の燃料噴射弁5による筒内への燃料噴射開始時期の設定値を所定量だけ進角させてからステップS16へ進む。これにより、ノッキングの検出に対応して第1の燃料噴射弁5から筒内への燃料噴射量が増量され、その増量された燃料の気化潜熱で筒内の混合気温度が低下してノッキングの抑制作用が生じる。ステップS13でノッキングが検出されない場合にはステップS14及びS15がスキップされ、ステップS14で進角限界と判断された場合もステップS15がスキップされる。
【0033】
ステップS16では吸気温センサ14の出力を参照して吸気温度を取得し、続くステップS17では吸気温度に応じて燃料噴射量の割合を補正する。すなわち、吸気温度が高ければ気筒2内で燃料が気化し易くなり、図7に示した噴射終了時期のリミットを遅角側にずらすことが可能となる。そこで、図6のマップに対応する標準的な吸気温度よりも実際の吸気温度が高い場合には、吸気温度のずれ量に応じて筒内への燃料噴射終了時期のリミットを遅角させ、それに合わせて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射終了時期の設定値を遅角させて筒内への燃料噴射量の割合を増加させる。但し、要求燃料噴射量の全量が第1の燃料噴射弁5に対して割り当てられている場合には増量は行われない。一方、ステップS16で検出した吸気温度が図6のマップにおける標準温度よりも低い場合には吸気温度のずれ量に応じて筒内への燃料噴射終了時期のリミットを進角させ、それに合わせて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射終了時期の設定値も進角させて筒内への燃料噴射量の割合を減少させる。なお、吸気温度のずれ量と燃料噴射量の割合の補正量との対応関係は、吸気温度を変数とするシミュレーションやベンチ適合試験で予め取得しておくことができる。その対応関係をECU8のROMにマップとして用意し、ステップS17でこれを参照して補正量を決定すればよい。
【0034】
そして、ステップS17で吸気温度に応じた燃料噴射量の割合の補正を実行した後は今回の燃料噴射量割合制御ルーチンを終える。そして、本実施形態においても、以上の燃料噴射量割合制御ルーチンにて各燃料噴射5、7の燃料噴射量が決定された後、ECU8は所定の燃料噴射制御ルーチンを実行して、与えられた燃料噴射量が燃料噴射弁5、7からそれぞれ噴射されるように各燃料噴射弁5、7の燃料噴射開始時期、終了時期及び噴射圧力を制御する。
【0035】
本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。図3、図4、図6〜図9に示した線図はあくまで一例であり、これらは適宜に変更してよい。エンジン1内の構成も適宜に変更可能であり、燃料噴射弁5や点火プラグ3の位置は図示のものに限らない。エンジン1は4サイクル式に限らず、2サイクルであってもよい。ノッキング検出手段はノッキングセンサ13に限らず適宜の手段を用いてよい。ノッキングの発生に伴う物理的現象、例えばクランク軸の回転速度の変動からノッキングの有無をECU8に判定させることにより、ECU8をノッキング検出手段として機能させてもよい。吸気温度検出手段も吸気温センサ14に限らず適宜の手段を用いてよい。例えば吸入空気量と吸気管圧力とに基づいてECU8により吸気温を演算することにより、ECU8を吸気温検出手段として機能させてもよい。本発明による燃料噴射割合の制御は全負荷運転時に限らず、均質燃焼が要求される運転状態、特には高負荷運転時において適宜実施してよい。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の燃料噴射装置によれば、筒内に噴射する燃料量を気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内に制限することにより、充填効率の向上に結び付かない燃料の筒内噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止できる。また、筒内へ噴射される燃料のみでは燃料量が不足する場合に不足分相当の燃料を吸気ポートに噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給できる。
【0037】
本発明の燃料噴射装置によれば、内燃機関の回転数に応じて筒内への燃料噴射量の割合を増減させることにより、回転数の変化に拘わりなく適正量の燃料を筒内に噴射させ、それにより筒内へ噴射される燃料の気化潜熱を利用した充填効率の向上効果を十分に発揮させつつ、燃料の過剰な噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止できる。また、筒内へ噴射される燃料のみでは燃料量が不足する場合に不足分相当の燃料を吸気ポートに噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置の要部の構成を示す図。
【図2】図1のECUが実行する燃料噴射弁の燃料噴射量割合制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図3】エンジン回転数と燃料噴射量割合とを対応付けたマップの一例を示す図。
【図4】エンジン回転数と筒内噴射開始時期との対応関係の一例を示す図。
【図5】第2の実施形態においてECUが実行する燃料噴射弁の燃料噴射量割合制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図6】エンジン回転数と燃料噴射量割合とを対応付けたマップの一例を示す図。
【図7】図6のマップの作成時に参照されるエンジン回転数と筒内噴射終了時期との対応関係の一例を示す図。
【図8】図6のマップの作成時に参照される燃料噴射開始時期と充填効率との対応関係の一例を示す図。
【図9】図6のマップの作成時に参照されるエンジン回転数と筒内燃料噴射開始時期との対応関係の一例を示す図。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 気筒
5 第1の燃料噴射弁
6 吸気ポート
7 第2の燃料噴射弁
8 エンジンコントロールユニット(噴射制御手段)
12 クランク角センサ
13 ノッキングセンサ(ノッキング検出手段)
14 吸気温センサ(吸気温度検出手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の筒内及び吸気ポートの双方へ燃料を噴射可能な燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の燃料噴射装置として、筒内へ燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備え、低負荷時には第1の燃料噴射弁から燃料を噴射して成層燃焼を実現し、高負荷時には第2の燃料噴射弁から燃料を噴射して均質燃焼を実現し、中負荷時には両噴射弁から燃料を噴射する装置が知られている(特許文献1参照)。その他に、本発明に関連する先行技術として特許文献2〜5が存在する。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−237854号公報
【特許文献2】
特開平7−103048号公報
【特許文献3】
特開昭63−230920号公報
【特許文献4】
特開平11−30142号公報
【特許文献5】
特開平11−241626号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の燃料噴射装置では、吸気行程において火炎伝播に必要な量の燃料を第1の燃料噴射弁から噴射し、かつ圧縮行程において燃料の着火に必要な量の燃料を第1の燃料噴射弁から噴射している。しかしながら、筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の改善効果については特に考慮されておらず、筒内噴射の利点を十分に享受できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、筒内に噴射される燃料量と吸気ポートに噴射される燃料量との割合を適切に制御して燃料の気化潜熱による充填効率の向上を十分に発揮させつつ燃料混合気の均質度を高めて出力向上を図ることが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、前記筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の燃料が前記第1の燃料噴射弁から噴射されるように、前記第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する噴射制御手段を備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
筒内へ燃料を噴射した場合には燃料が気化する際の潜熱で吸気温度が低下して吸気の充填効率が向上するが、その効果は吸気ポートが開いている間に限定され、吸気ポートが閉じた後に筒内に燃料を噴射しても吸気効率の改善には結び付かない。一方、筒内に燃料を噴射した場合には吸気ポートへ燃料を噴射した場合と比較して空気との混合にばらつきが生じ易い。このため、充填効率の向上が見込める範囲を越えて大量の燃料を筒内に噴射したならば、燃料混合気の均質度の低下による影響が無視できないほど大きくなり、燃焼悪化による出力低下を招くことがある。これに対して、本発明によれば、第1の燃料噴射弁から筒内に噴射する燃料量を気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内に制限しているので、充填効率の向上に結び付かない燃料の筒内噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止することができる。第1の燃料噴射弁から噴射可能な燃料量が内燃機関の運転状態に基づいて定められる要求燃料噴射量に対して不足する場合には、その不足分に相当する量の燃料を第2の燃料噴射弁から噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給することができる。
【0008】
本発明の他の内燃機関の燃料噴射装置は、筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、前記内燃機関の回転数に基づいて、前記第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する噴射制御手段を備えることにより、上述した課題を解決する(請求項2)。
【0009】
内燃機関の回転数(回転速度)が高いときは吸気ポートが開いている時間が相対的に短くなり、これに伴って、燃料の気化潜熱による充填効率の向上効果が見込める期間も短くなる。つまり、第1の燃料噴射弁から筒内に噴射すべき燃料量の適正値は回転数に応じて変化する。そこで、内燃機関の回転数に応じて第1の燃料噴射弁からの燃料噴射量を増減させることにより、回転数の変化に拘わりなく適正量の燃料を筒内に噴射させ、それにより筒内へ噴射される燃料の気化潜熱を利用した充填効率の向上効果を十分に発揮させつつ、燃料の過剰な噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止できる。また、第1の燃料噴射弁から噴射可能な燃料量が内燃機関の運転状態に基づいて定められる要求燃料噴射量に対して不足する場合には、その不足分に相当する量の燃料を第2の燃料噴射弁から噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給することができる。
【0010】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置において、前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定レベルよりも高い領域では、前記回転数が高いほど前記第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を大きく設定することが好ましい(請求項3)。上記の通り、筒内に噴射された燃料の気化潜熱によって充填効率を向上させることができる期間は内燃機関の回転数が高いほど短くなるため、回転数が高いほど第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を増加させて筒内への燃料噴射量を制限することにより、両燃料噴射弁の燃料噴射量の割合を適正に維持できる。なお、所定レベルよりも高い領域を対象としたのは、回転数が十分に低い領域では筒内への燃料噴射が可能な時間が相対的に長くなるため、内燃機関の運転状態に基づいて定められる燃料の全量を回転数の変化に拘わりなく筒内に噴射することが考えられ、回転数の上昇に伴って筒内噴射量の割合を増加させるという関係が必ずしも適当にはならないからである。
【0011】
前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定レベルよりも低い領域では、前記回転数が低いほど前記第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を大きく設定してもよい(請求項4)。回転数が十分に低い場合には筒内の燃料混合気と内燃機関の気筒壁等との間で熱交換が行われ、気化潜熱によって冷やされた混合気の温度が上昇して充填効率の向上効果が十分に発揮されないことがある。このような場合には、回転数の低下に応じて筒内への燃料噴射量を制限し、第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を増加させることにより、燃料の均質度を向上させて燃焼改善を図ることが好適である。
【0012】
また、前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定レベルよりも低い領域の少なくとも一部において、前記第1の燃料噴射弁による燃料噴射時期を遅角させてもよい(請求項5)。燃料噴射時期を遅角すれば、筒内に噴射された燃料の気化潜熱による吸気温度の低下作用の出現時期も遅くなり、気筒壁等からの熱による吸気温度の上昇が抑えられる。これにより筒内噴射燃料の気化潜熱による充填効率の向上効果を十分に発揮させることができる。
【0013】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置においては、ノッキングを検出するノッキング検出手段を具備し、前記噴射制御手段は前記ノッキング検出手段にてノッキングが検出された場合には、前記第1の燃料噴射弁による燃料噴射開始時期を進角させて前記第1の燃料噴射弁からの燃料の割合を増加させてもよい(請求項6)。
【0014】
この場合には、第1の燃料噴射弁から筒内に噴射される燃料量が増えることにより、その増量分の気化潜熱を利用して筒内の燃料混合気の温度をより低下させてノッキングを抑制することができる。燃料開始時期を進角させているので、増量された燃料が筒内で蒸発する時間を十分に確保できる。なお、前記噴射制御手段は前記燃料噴射開始時期の進角量を所定の限度内に制限してもよい(請求項7)。燃料噴射開始時期を過度に進角させるとピストンへの燃料付着量が許容範囲を越えて増加し、気化潜熱で吸気よりもピストンが冷やされて充填効率の向上効果が損なわれる。また、ピストンへの燃料付着によって黒煙が発生し、あるいは燃料混合気の均質度が低下することもある。そこで、適当な範囲に進角を制限すれば、筒内への燃料噴射開始時期の過度の進角を防止して上記の不都合を防止することができる。ノッキング発生時における筒内への燃料噴射開始時期の進角は、充填効率の向上が見込まれる範囲内に限って行われてもよいし、例外的に当該範囲を越えるか否かに拘わりなく行われてもよい。換言すれば、進角量の限度は充填効率の向上が見込まれる範囲内に設定されてもよいし、当該範囲を越えて進角側に設定されてもよい。但し、後者の場合にはピストンへの燃料付着量が許容範囲に収まるように限度を設定することが望ましい。
【0015】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置においては、吸気温度を検出する吸気温度検出手段を具備し、前記噴射制御手段は、検出された吸気温度が上昇すると前記第1の燃料量噴射弁の燃料噴射終了時期を遅らせて前記第1の燃料噴射弁からの燃料の割合を増加させてもよい(請求項8)。
【0016】
吸気温度が高いとそれだけ燃料の気化に要する時間が短くなり、燃料噴射終了時期を遅らせても点火時期までに燃料を十分に気化させて均質度の高い燃料混合気を生成することができる。そこで、吸気温度が高いときには筒内への燃料噴射開始時期を遅らせることにより、黒煙の発生を抑えつつ筒内へより多くの燃料を噴射し、気化潜熱を最大限に利用することが可能となる。
【0017】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置において、前記噴射制御手段は、均質燃焼が要求される高負荷運転時において、前記筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の最大量とほぼ等しい燃料が前記第1の燃料噴射弁から噴射され、残りの燃料が前記第2の燃料噴射弁から噴射されるように前記割合を制御してもよい(請求項9)。この場合には、均質燃焼が要求される高負荷時において本発明の作用効果を十分に発揮させることができる。特にWOT(Wide Open Throttleの略)とも称される全負荷運転時において、本発明に従って各燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を制御すれば、筒内へ噴射された燃料の気化潜熱を利用した充填効率の向上効果を最大限に発揮させつつ、全負荷運転時に要求される大量の燃料を筒内に確実に供給でき、内燃機関の出力を最大限に高めることができて好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は本発明の燃料噴射装置の要部を示す。この燃料噴射装置は、気筒2内で圧縮された燃料混合気に点火プラグ3で着火して燃焼を生じさせ、その燃焼エネルギでピストン4を往復運動させる4サイクルレシプロ式のガソリンエンジン1に適用されるものであって、気筒2内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁5と、吸気ポート6に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁7とを備えている。また、この実施形態の燃料噴射装置は、燃料噴射弁5、7の燃料噴射動作を制御する噴射制御手段としてエンジンコントロールユニット(ECU)8を利用する。なお、周知のようにエンジン1の吸気ポート6は吸気弁9で、排気ポート10は排気弁11にてそれぞれ開閉される。エンジン1には複数の気筒が設けられるが、図1では単一の気筒2のみを代表して示している。他の気筒2についても同様の構成である。
【0019】
ECU8はマイクロプロセッサ及びその動作に必要な主記憶装置としてのRAM、ROM、クロック回路等の周辺装置を備えたコンピュータとして構成されている。ECU8は、クランク軸の回転数に対応した信号を出力するクランク角センサ12、吸入空気量を検出する不図示のエアフローメータ、排気通路に設けられた不図示の空燃比センサ等の各種のセンサの出力を参照してエンジン1の運転状態を判別し、その判別結果に基づいて、所定の空燃比を実現するために必要な燃料噴射量を要求燃料噴射量として演算する。要求燃料噴射量を演算する手順は公知の各種の燃料噴射装置と同様でよく、詳細は省略する。なお、図1のエンジン1では、ECU8に対する情報の入力手段として、気筒2内におけるノッキングの発生を検出するノッキングセンサ13及び吸気ポート6の吸気温度を検出する吸気温センサ14が設けられている。これらのセンサ13、14は後述する第2の実施形態にて参照されるものであり、第1の実施形態においては省略可能である。
【0020】
本実施形態では2つの燃料噴射弁5、7が設けられているため、ECU8は要求燃料噴射量の演算の他に、その要求燃料噴射量に占める各燃料噴射弁5、7燃料噴射量の割合を決定し、その決定された割合に従って各燃料噴射弁5、7の燃料噴射動作を制御する。例えばエンジン1の低負荷運転時には第1の燃料噴射弁5から全燃料を噴射して成層燃焼を実現する。一方、エンジン1の高負荷運転時には均質燃焼が実現されるように各燃料噴射弁5、7の燃料噴射動作を制御するが、特にアクセルペダルの踏み込み量が最大となる全負荷運転時において、ECU8は図2の燃料噴射量割合制御ルーチンを所定の周期で繰り返し実行して燃料噴射量の割合を制御する。
【0021】
図2の燃料噴射量割合制御ルーチンにおいて、ECU8はまずステップS1でクランク角センサ12の出力を参照してエンジン1の回転数を取得する。続くステップS2では、ROM内に記録された所定のマップを参照して、エンジン回転数に対応した燃料噴射量の割合を取得する。このときに参照されるマップの一例を図3に示す。
【0022】
図3のマップでは、気筒2内に噴射した燃料の気化潜熱による吸気の充填効率の向上が見込める範囲の最大量に相当する量の燃料を第1の燃料噴射弁5から噴射(筒内噴射)させ、要求噴射量から第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量を減算した残りの燃料、つまり要求燃料噴射量に対する第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量の不足分に相当する量の燃料を第2の燃料噴射弁7から噴射(ポート噴射)させるように各燃料噴射弁5、7からの燃料噴射量の割合が定められている。その結果として、所定値Ne1よりもエンジン回転数が高い領域においては、回転数が上昇するにつれて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量の割合が漸次減少し、かつ第2の燃料噴射弁7の燃料噴射量の割合が漸次増加している。回転数が上昇すれば吸気ポート6が開いている期間が短くなり、それに伴って気化潜熱による充填効率の向上に貢献できる燃料量が減少するためである。また、所定値Ne1よりもエンジン回転数が低い領域においては、回転数が低下するにつれて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射量の割合が漸次減少し、かつ第2の燃料噴射弁7の燃料噴射量の割合が漸次増加している。回転数が十分に低い領域では吸気行程から圧縮行程を経て点火に至る迄の時間が燃料噴射時間に比して十分に長くなり、気筒2内へ噴射された燃料の気化潜熱により吸気が一旦冷まされても、その後に気筒2の壁面等から伝熱により吸気温度が上昇して充填効率の向上効果が十分に得られないためである。なお、回転数Ne1はエンジン1の構成や仕様に則して適宜に定めてよいが、一例として2000r.p.m.付近に設定される。
【0023】
図2に戻って、ECU8はステップS3でエンジン回転数が所定値Ne1未満か否か判断し、所定値Ne1以上のときは今回の燃料噴射量割合制御ルーチンを終える。一方、エンジン回転数が所定値Ne1未満のときはステップS4に進んで第1の燃料噴射弁5からの燃料噴射開始時期を遅角させ、その後に今回の燃料噴射量割合制御ルーチンを終える。ステップS4における燃料噴射開始時期の遅角は例えば図4に示すマップに従って行われる。この例では、エンジン回転数が所定値Ne1以上のときは、燃料噴射開始時期を圧縮上死点前(BTDC)のクランク角300〜250°の範囲に設定し、エンジン回転数が所定値Ne1未満のときは燃料噴射開始時期を圧縮上死点前のクランク角250〜180°の範囲に設定する。このように燃料噴射開始時期を遅角すれば燃料の気化潜熱による吸気温度の低下作用も遅れて出現するので、一旦冷やされた吸気が点火までの間に気筒2から受ける熱量が減少し、吸気温度の上昇が抑えられる。なお、ここでは図3の所定値Ne1を閾値として燃料噴射開始時期の遅角を実施しているが、回転数Ne1未満の領域の少なくとも一部で遅角が行われていればよい。従って、回転数がNe1よりもさらに低い領域に限って遅角を実施してもよいし、回転数が所定値Ne1よりも幾らか高い領域においても遅角が実施されてもよい。
【0024】
以上の燃料噴射量割合制御ルーチンにて各燃料噴射5、7の燃料噴射量が決定された後にECU8は所定の燃料噴射制御ルーチンを実行し、与えられた燃料噴射量が燃料噴射弁5、7からそれぞれ噴射されるように各燃料噴射弁5、7の燃料噴射開始時期、終了時期及び噴射圧力を制御する。
【0025】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は図1に示した燃料噴射装置において、図2の燃料噴射割合制御ルーチンに代え、ECU8に図5の燃料噴射割合制御ルーチンを所定の周期で繰り返し実行させるものである。従って、以下の説明において燃料噴射装置の構成は図1を参照する。また、図5のルーチンは図2のルーチンと同じくエンジン1の全負荷運転中に所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0026】
図5の燃料噴射割合制御ルーチンおいて、ECU8はまずステップS11でエンジン回転数を取得し、ステップS12でROM内のマップを参照してエンジン回転数に対応した噴射量割合を取得する。この際に参照されるマップの一例を図6に示す。図6において、エンジン回転数が所定値Ne2未満の領域では要求燃料噴射量の全量が筒内噴射、すなわち第1の燃料噴射弁5から噴射されるように噴射量割合が設定され、所定値Ne2以上の領域ではエンジン回転数が上昇するほど筒内噴射量の割合が漸次減少し、ポート噴射、すなわち第2の燃料噴射弁7からの燃料噴射量が漸次増加するように噴射量割合が設定されている。このようなマップは以下のようにして作成される。
【0027】
まず、図7に示すように、第1の燃料噴射弁5からの燃料噴射終了時期について、筒内に噴射された燃料が点火前に確実に気化できる時間が確保されるようにそのリミットを設定する。このリミットは、それ以上には燃料噴射終了時期を遅くできないという意味におけるリミットである。気化に必要な時間は一定のため、燃料噴射終了時期のリミットはエンジン回転数が上昇するほどに進角される。このように燃料噴射終了時期を定めることにより黒煙の発生を防止することができる。
【0028】
次に、筒内への燃料噴射開始時期について燃料の気化潜熱による充填効率の向上が最も高くなるようにそのリミットを設定する。例えば、図8に示すように燃料噴射開始時期と充填効率とが相関している場合、A点を燃料噴射開始時期のリミットとして設定する。このリミットはそれ以上には燃料噴射開始時期を早くできないという意味におけるリミットである。図8の点Aを越えて燃料噴射開始時期を進角するとピストン4に燃料が付着して気化潜熱でピストン4が冷やされる影響で充填効率が低下し、図8のB点を越えて燃料噴射開始時期を遅角すると吸気ポート6が吸気弁9にて閉じられる影響で充填効率が低下する。なお、燃料噴射開始時期のリミットは図9に実線で示すようにエンジン回転数が上昇するほど進角側に変化する。第1の実施形態で説明したように、エンジン回転数が低下すると筒内燃料噴射に許される時間的余裕が長くなり、必要以上に早期に燃料を噴射すると気筒2の壁面等からの熱を受けて吸気温度が上昇し、充填効率が低下するからである。なお、エンジン回転数と燃料噴射開始時期のリミットとの関係は図9に一点鎖線又は破線で示したように変化させてもよい。ちなみに図9の破線は図4に対応するものである。
【0029】
以上のようにして第1の燃料噴射弁5からの燃料の噴射開始時期及び噴射終了時期についてそれぞれリミットを決定し、これらのリミットから筒内へ噴射可能な燃料の最大量を求める。つまり、両リミット間において許容される最大圧力で燃料を連続して噴射した場合の燃料量を最大量として求める。そして、ECU8が演算した要求燃料噴射量が最大量以内であればその全量を第1の燃料噴射弁5の噴射量に振り分け、第2の燃料噴射弁7の燃料噴射量は0とする。要求噴射量が最大量よりも大きい場合には第1の燃料噴射弁5の噴射量を上記の最大量に設定し、要求燃料噴射量に対する不足分に相当する燃料量を第2の燃料噴射弁7の噴射量に設定する。以上のように燃料噴射量の割合を設定することにより、図6のマップが得られる。
【0030】
図5に戻って燃料噴射量割合制御ルーチンの説明を続ける。ステップS12において噴射量割合を取得した後はステップS13に進み、ノッキングセンサ13の出力を参照してノッキングの発生の有無を判別する。ノッキングが発生していればステップS14に進み、第1の燃料噴射弁5の燃料噴射開始時期の設定値が所定の進角限界に達しているか否かを判別する。
【0031】
ここでいう進角限界は図8のA点に設定してもよいし、A点よりもさらに進角側に設定してもよい。なお、ステップS11にて取得したエンジン回転数が図6の所定値Ne2以上であったときには第1の燃料噴射弁5の燃料噴射開始時期が図8のA点まで進角されていることになるから、ステップS14の限界をA点に設定しているときはステップS14が必ず肯定されることになる。これに対してエンジン回転数が所定値Ne2未満の場合には燃料噴射開始時期が必ずしもA点に設定されるとは限らず、充填効率からみて図8のA〜B点の間に燃料噴射開始時期が制御されていればよい。従って、ステップS14の進角限界を図8のA点に設定しても、エンジン回転数によってはステップS14が否定される場合があり得る。一方、ステップS14の進角限界を図8のA点よりもさらに進角側に設定する場合にはステップS14が否定判断される頻度が増えるが、噴射開始時期の進角によってピストン4への燃料付着の影響で充填効率が低下する。この充填効率の低下が許容できる範囲、例えばピストン4への燃料付着が急増しない範囲でステップS14の進角限界を設定することが望ましい。
【0032】
ステップS14で進角限界に達していないと判断した場合、ECU8はステップS15にて第1の燃料噴射弁5による筒内への燃料噴射開始時期の設定値を所定量だけ進角させてからステップS16へ進む。これにより、ノッキングの検出に対応して第1の燃料噴射弁5から筒内への燃料噴射量が増量され、その増量された燃料の気化潜熱で筒内の混合気温度が低下してノッキングの抑制作用が生じる。ステップS13でノッキングが検出されない場合にはステップS14及びS15がスキップされ、ステップS14で進角限界と判断された場合もステップS15がスキップされる。
【0033】
ステップS16では吸気温センサ14の出力を参照して吸気温度を取得し、続くステップS17では吸気温度に応じて燃料噴射量の割合を補正する。すなわち、吸気温度が高ければ気筒2内で燃料が気化し易くなり、図7に示した噴射終了時期のリミットを遅角側にずらすことが可能となる。そこで、図6のマップに対応する標準的な吸気温度よりも実際の吸気温度が高い場合には、吸気温度のずれ量に応じて筒内への燃料噴射終了時期のリミットを遅角させ、それに合わせて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射終了時期の設定値を遅角させて筒内への燃料噴射量の割合を増加させる。但し、要求燃料噴射量の全量が第1の燃料噴射弁5に対して割り当てられている場合には増量は行われない。一方、ステップS16で検出した吸気温度が図6のマップにおける標準温度よりも低い場合には吸気温度のずれ量に応じて筒内への燃料噴射終了時期のリミットを進角させ、それに合わせて第1の燃料噴射弁5の燃料噴射終了時期の設定値も進角させて筒内への燃料噴射量の割合を減少させる。なお、吸気温度のずれ量と燃料噴射量の割合の補正量との対応関係は、吸気温度を変数とするシミュレーションやベンチ適合試験で予め取得しておくことができる。その対応関係をECU8のROMにマップとして用意し、ステップS17でこれを参照して補正量を決定すればよい。
【0034】
そして、ステップS17で吸気温度に応じた燃料噴射量の割合の補正を実行した後は今回の燃料噴射量割合制御ルーチンを終える。そして、本実施形態においても、以上の燃料噴射量割合制御ルーチンにて各燃料噴射5、7の燃料噴射量が決定された後、ECU8は所定の燃料噴射制御ルーチンを実行して、与えられた燃料噴射量が燃料噴射弁5、7からそれぞれ噴射されるように各燃料噴射弁5、7の燃料噴射開始時期、終了時期及び噴射圧力を制御する。
【0035】
本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。図3、図4、図6〜図9に示した線図はあくまで一例であり、これらは適宜に変更してよい。エンジン1内の構成も適宜に変更可能であり、燃料噴射弁5や点火プラグ3の位置は図示のものに限らない。エンジン1は4サイクル式に限らず、2サイクルであってもよい。ノッキング検出手段はノッキングセンサ13に限らず適宜の手段を用いてよい。ノッキングの発生に伴う物理的現象、例えばクランク軸の回転速度の変動からノッキングの有無をECU8に判定させることにより、ECU8をノッキング検出手段として機能させてもよい。吸気温度検出手段も吸気温センサ14に限らず適宜の手段を用いてよい。例えば吸入空気量と吸気管圧力とに基づいてECU8により吸気温を演算することにより、ECU8を吸気温検出手段として機能させてもよい。本発明による燃料噴射割合の制御は全負荷運転時に限らず、均質燃焼が要求される運転状態、特には高負荷運転時において適宜実施してよい。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の燃料噴射装置によれば、筒内に噴射する燃料量を気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内に制限することにより、充填効率の向上に結び付かない燃料の筒内噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止できる。また、筒内へ噴射される燃料のみでは燃料量が不足する場合に不足分相当の燃料を吸気ポートに噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給できる。
【0037】
本発明の燃料噴射装置によれば、内燃機関の回転数に応じて筒内への燃料噴射量の割合を増減させることにより、回転数の変化に拘わりなく適正量の燃料を筒内に噴射させ、それにより筒内へ噴射される燃料の気化潜熱を利用した充填効率の向上効果を十分に発揮させつつ、燃料の過剰な噴射による燃料混合気の均質度の悪化を防止できる。また、筒内へ噴射される燃料のみでは燃料量が不足する場合に不足分相当の燃料を吸気ポートに噴射させることにより、燃料混合気の均質度を低下させることなく必要十分な量の燃料を筒内に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置の要部の構成を示す図。
【図2】図1のECUが実行する燃料噴射弁の燃料噴射量割合制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図3】エンジン回転数と燃料噴射量割合とを対応付けたマップの一例を示す図。
【図4】エンジン回転数と筒内噴射開始時期との対応関係の一例を示す図。
【図5】第2の実施形態においてECUが実行する燃料噴射弁の燃料噴射量割合制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図6】エンジン回転数と燃料噴射量割合とを対応付けたマップの一例を示す図。
【図7】図6のマップの作成時に参照されるエンジン回転数と筒内噴射終了時期との対応関係の一例を示す図。
【図8】図6のマップの作成時に参照される燃料噴射開始時期と充填効率との対応関係の一例を示す図。
【図9】図6のマップの作成時に参照されるエンジン回転数と筒内燃料噴射開始時期との対応関係の一例を示す図。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 気筒
5 第1の燃料噴射弁
6 吸気ポート
7 第2の燃料噴射弁
8 エンジンコントロールユニット(噴射制御手段)
12 クランク角センサ
13 ノッキングセンサ(ノッキング検出手段)
14 吸気温センサ(吸気温度検出手段)
Claims (9)
- 筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、
前記筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の燃料が前記第1の燃料噴射弁から噴射されるように、前記第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する噴射制御手段を備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。 - 筒内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、吸気ポートに燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射装置において、
前記内燃機関の回転数に基づいて、前記第1及び第2の燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量の割合を制御する噴射制御手段を備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。 - 前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定レベルよりも高い領域では、前記回転数が高いほど前記第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を大きく設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
- 前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定レベルよりも低い領域では、前記回転数が低いほど前記第2の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合を大きく設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
- 前記噴射制御手段は、前記内燃機関の回転数が前記所定レベルよりも低い領域の少なくとも一部において、前記第1の燃料噴射弁による燃料噴射時期を遅角させることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
- ノッキングを検出するノッキング検出手段を具備し、
前記噴射制御手段は前記ノッキング検出手段にてノッキングが検出された場合には、前記第1の燃料噴射弁による燃料噴射開始時期を進角させて前記第1の燃料噴射弁からの燃料の割合を増加させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料噴射装置。 - 前記噴射制御手段は前記燃料噴射開始時期の進角量を所定の限度内に制限することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
- 吸気温度を検出する吸気温度検出手段を具備し、
前記噴射制御手段は、検出された吸気温度が上昇すると前記第1の燃料量噴射弁の燃料噴射終了時期を遅らせて前記第1の燃料噴射弁からの燃料の割合を増加させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料噴射装置。 - 前記噴射制御手段は、均質燃焼が要求される高負荷運転時において、前記筒内に噴射された燃料の気化潜熱による充填効率の向上が見込まれる範囲内の最大量とほぼ等しい燃料が前記第1の燃料噴射弁から噴射され、残りの燃料が前記第2の燃料噴射弁から噴射されるように前記割合を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
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