JP2004270478A - エンジンのシリンダブロック構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリンダブロック3の前端壁部3cにおけるエンジン幅方向中間位置でかつウォータジャケットwの前側通路部wfの深さ方向中間に相当する高さ位置に、フロントカバー94を取付固定するためのカバー取付ボス部75を形成するとともに、上記前端壁部3cの内側面に、上記カバー取付ボス部75の高さ位置から下方に延びて上記前側通路部wfの底面に連なる縦リブ74を突出形成する。
【選択図】 図14
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の気筒が前後方向に直列に配設されたエンジンのシリンダブロック構造に関し、特にシリンダブロック内にウォータジャケットが形成されたものの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、複数の気筒が前後方向に直列に配設されたエンジンのシリンダブロックとして、例えば特許文献1に開示されているように、内部にウォータジャケットを形成したものが知られている。このシリンダブロックのウォータジャケットは、気筒の左右両側にそれぞれ前後方向に延びるように配設された左側及び右側通路部と、これら左側及び右側通路部同士をその前後両端部でそれぞれ連通する前側及び後側通路部とを有していて、全気筒の周囲を取り囲むようになされている。
【0003】
上記ウォータジャケットは、上記特許文献1では、気筒の周壁部(ボア周壁部)の上端と上下方向中央近傍位置との間の範囲に亘って設けられている。すなわち、特許文献2に開示されているように、ウォータジャケットを、ボア周壁部の上端と下死点にあるピストン上端面の近傍位置との間の範囲に亘って設けるようにすることで、熱負荷の高いボア上部側を効率良く冷却するようにしている。
【0004】
一方、上記特許文献1に開示されているように、シリンダブロックの前端壁部には、フロントカバーが取付固定されるようになっており、このフロントカバーと上記前端壁部との間に動弁系駆動のタイミングチェーンを収容するようにしている。このフロントカバーは、通常、フロントカバーの面積が比較的広いために、面振動が生じ易く、この面振動をなくすために、カバー周縁部だけでなく中央部がボルトにより取付固定される。これに対応して、上記前端壁部には、このフロントカバーの周縁部及び中央部を取付固定するために、ボルトがねじ込まれるねじ穴を有する複数のカバー取付部が設けられている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−115600号公報
【特許文献2】
特開平10−37797号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献1又は2のようなウォータジャケットの深さでは、シリンダブロックとシリンダヘッドとをヘッドボルトで締結したときに、ボアが変形する可能性がある。すなわち、シリンダブロックとシリンダヘッドとは、通常、ウォータジャケットのボアとは反対側の壁部にボルトにより締結され、このボルト締結部は、各ボアの周囲に等間隔をあけて囲むように4箇所に配置されるが、ウォータジャケットの深さが比較的浅いと、上記締結力(シリンダブロックをシリンダヘッド側へ引き寄せる力)が、ボア周囲にそれ程分散されない状態でボア周壁部に伝達されるために、ボアの変形を招くことになる。
【0007】
したがって、ウォータジャケットをある程度深くして、ボア周囲の4点での締結力をボア周囲に効果的に分散させた状態でボア周壁部に伝達させれば、ボアの変形を防ぐことができるようになる。
【0008】
しかしながら、ウォータジャケットを深くすると、上記フロントカバーを取付固定するための複数のカバー取付部のうち、カバー中央部を取付固定するためのカバー取付部が、エンジン前方から見て、ウォータジャケットと重なってしまう。すなわち、カバー中央部を取付固定するためのカバー取付部が、前端壁部におけるエンジン幅方向中間位置でかつウォータジャケットの前側通路部の深さ方向中間に相当する高さ位置に形成されることになる。この結果、この取付部の周囲における前端壁部の肉厚が、該前端壁部の内側にウォータジャケット(前側通路部)が存在するためにかなり薄くなり、これにより、フロントカバーの中央部の支持剛性が十分に得られなくなる。したがって、カバー中央部を取付固定しても、フロントカバーに面振動が生じてしまう。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウォータジャケットを深くしてシリンダブロックとシリンダヘッドとの締結によるボア変形を防止しつつ、フロントカバーの中央部の支持剛性が十分に得られるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、シリンダブロックの前端壁に縦リブ(補強リブ)を形成するようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、複数の気筒が前後方向に直列に配設されたエンジンのシリンダブロック内にウォータジャケットが形成され、該ウォータジャケットが、上記シリンダブロックの前端壁部と上記複数の気筒のうち最前部に位置する気筒の周壁部との間に配設された前側通路部を有するエンジンのシリンダブロック構造を対象とする。
【0012】
そして、上記シリンダブロックの前端壁部におけるエンジン幅方向中間位置でかつ上記前側通路部の深さ方向中間に相当する高さ位置に、フロントカバーを取付固定するためのカバー取付部が形成され、上記シリンダブロックの前端壁部の内側面に、上記カバー取付部の高さ位置から下方に延びて上記ウォータジャケットの前側通路部の底面に連なる縦リブが突出形成されているものとする。
【0013】
上記の構成により、前端壁部の内側面(前端壁部の前側通路部側の面)に、カバー取付部から前側通路部の底面にかけて上下方向に延びる縦リブが突出形成される。この前側通路部の底面を構成する部分は、通常、十分な肉厚を確保することが可能な部分であり、また、エンジン幅方向に延びるオイルギャラリを構成する壁部等と繋げることが可能な部分であるので、カバー取付部は縦リブによって十分に補強される。この結果、ウォータジャケットを深くしても、フロントカバー中央部の支持剛性が十分に得られるようになる。また、縦リブにより、前側通路部のカバー取付部よりも下側部分の幅がその上側部分よりも小さくなるので、冷却水がボア上部側へ移動し易くなり、これにより、ウォータジャケットを深くしても、熱負荷の高いボア上部側を効率良く冷却することができるようになる。したがって、ウォータジャケットを深くしてシリンダブロックとシリンダヘッドとの締結によるボア変形を防止しつつ、フロントカバーの面振動を防止することができ、しかも、シリンダの冷却効率をも高めることができる。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、縦リブの突出先端面と最前部の気筒の周壁部との間には、間隙が形成されているものとする。
【0015】
すなわち、縦リブが気筒の周壁部(ボア周壁部)に結合されると、気筒からの熱伝達により縦リブが変形する等して、フロントカバー中央部の支持剛性に対して悪影響を及ぼしたり、ボア変形が生じたりする可能性があるが、この発明のように、縦リブの突出先端面とボア周壁部との間に間隙を形成しておけば、フロントカバー中央部の支持剛性の低下やボア変形を防止することができる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、ウォータジャケットの前側通路部は、縦リブのエンジン幅方向一方の側において、該ウォータジャケットに冷却水を供給するウォータポンプの吐出口と接続されているものとする。こうすることで、冷却水のボア上部側への移動性をより一層向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、シリンダブロックの前端壁部におけるウォータジャケットの前側通路部の底面よりも下側位置に、エンジン幅方向に延びるオイルギャラリが形成され、上記シリンダブロックの前端壁部における上記前側通路部底面と上記オイルギャラリを構成する壁部との間の部分に、縦リブと一連で繋がるように上下方向に延びる補強リブが形成されているものとする。
【0018】
この発明により、縦リブが補強リブによってオイルギャラリを構成する壁部に繋げられたのと同様となり、カバー取付部が一連の縦リブ及び補強リブによってオイルギャラリを構成する壁部に繋げられることとなり、よって、フロントカバー中央部の支持剛性をより一層向上させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(エンジン全体構成)
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るエンジン1の外観を示し、このエンジン1は、4つのシリンダs1〜s4(気筒:後述のシリンダブロック3に設けられている(図8、図13及び図15参照))が、クランク軸2が延びる方向に直列に配設された直列4気筒ガソリンエンジンであって、アルミニウム合金製のシリンダブロック3と、このシリンダブロック3の上側に組み付けられた、同じくアルミニウム合金製のシリンダヘッド4とを備えている。このシリンダヘッド4の上面にはシリンダヘッドカバー5が組み付けられている一方、上記シリンダブロック3の下面にはオイルパン6が組み付けられている。また、このエンジン1は、上記4つのシリンダs1〜s4が並ぶシリンダ列方向(気筒列方向)、つまりクランク軸2が延びる方向が、図示しない車両の幅方向に概略一致するように、該車両のエンジンルームに横置きに搭載されるものである。
【0021】
この実施形態では、上記シリンダブロック3及びシリンダヘッド4の長手方向であるシリンダ列方向、つまりクランク軸2が延びる方向をエンジン1の前後方向とし、該クランク軸2の出力端側(図2の右側、図1の紙面手前側)を後側と呼ぶ一方、その反対側(図2の左側、図1の紙面奥側)を前側と呼ぶ。また、エンジン1の後側から前側を見たときの右側(エンジン右側)を、単に右側と呼び、その反対側(エンジン左側)を単に左側と呼ぶ。さらに、シリンダ列方向と垂直な左右方向をエンジン幅方向という。
【0022】
上記エンジン1の左側には、上記各シリンダs1〜s4内の燃焼室に空気を供給するための吸気マニホルド7が配設され、左前部には、Vベルト8によりそれぞれ駆動されるパワステポンプ9、ウォータポンプ10、空調装置用コンプレッサ11等の補機類が配置され、左後部には、スタータモータ12やオイルフィルタ13が配置されている。
【0023】
また、エンジン1の左前側におけるシリンダブロック3の上端部近傍には、サーモスタットハウジング15が外方に膨出するように設けられており、このサーモスタットハウジング15を覆う蓋部に一体的に設けられた冷却水導入管16には、図示しないウォータホースが接続されていて、車両のラジエータから供給される冷却水を後述するシリンダブロック3内のウォータジャケットw(図8、図10、図13等参照)に導入するようになっている。
【0024】
一方、エンジン1の後側におけるシリンダヘッド4の後端部には、冷却水導出部17が設けられており、この冷却水導出部17の導出管17aには、図示しないウォータホースが接続されていて、シリンダヘッド4のウォータジャケットから排出される冷却水をラジエータに戻すようになっている。
【0025】
上記吸気マニホルド7は、軽量化や吸気温度低減のために、例えばポリアミド樹脂を主材料として射出成形により形成した複数の部材を互いに溶着して一体化したものである。詳しくは、この吸気マニホルド7は、大きく湾曲する4本の分岐管20,20,…を有し、これら分岐管20,20,…の各下流端部に亘るように設けられた取付フランジ部(図示せず)がシリンダヘッド4の吸気側側壁部(左側側壁部)に取り付けられている。一方、4本の分岐管20,20,…の各上流端部はサージタンク21に集合していて、そこから共通吸気管22が後方の斜め上側に向かって延びている。
【0026】
上記共通吸気管22の上流端部には、図外のエアフィルタを介して吸入される空気(吸気)の流通量を調整するためのスロットル弁23が配設されているとともに、該スロットル弁23の弁体23aをバイパスする吸気のバイパス流通量を調節するための、電磁弁からなるアイドルスピードコントロール弁24(以下、ISC弁という)が配設されている。また、この共通吸気管22には、ISC弁24が取付けられている部位の裏側でシリンダヘッド4の吸気側側壁部に支持される支持部が設けられており、これにより、上記スロットル弁23やISC弁24等が確実に支持されるようになされている。
【0027】
さらに、上記吸気マニホルド7の分岐管20,20,…の上方に近接して、各分岐管20に略直交するように前後方向に延びるフューエルディスパイプ26が配設されている。このフューエルディスパイプ26の後側の端部には、図示しない燃料供給ホースが接続されており、この燃料供給ホースにより燃料ポンプから送られてくる高圧の燃料が、上記フューエルディスパイプ26を介して各シリンダs1〜s4毎のインジェクタに分配供給されるようになっている。また、フューエルディスパイプ26には、該フューエルディスパイプ26内の燃料の圧力状態を検出するための燃圧センサ27と、設定圧以上となった高圧の燃料を逃がして、燃料タンクに戻すためのリリーフ弁28とが配設されている。
【0028】
一方、上記エンジン1の右側には、図3に示すように、各シリンダs1〜s4内の燃焼室から燃焼ガスを排出させるための排気マニホルド30が取付けられている。この排気マニホルド30は、互いに長さの等しいステンレス製の薄肉丸パイプをそれぞれ曲げ加工してなる4つの分岐管31,31,…と、プレス加工により形成され、上記各分岐管31の排気上流側の端部がそれぞれ溶接された取付フランジ部32と、該分岐管31,31,…の排気下流側の端部が軸線方向を揃えて束ねられた状態で溶接された集合管33とからなっている。
【0029】
また、シリンダヘッド4の排気側側壁部(右側側壁部)には、前後方向に長い台状の突出部が形成されており、この突出部の先端面が、上記排気マニホルド30の取付フランジ部32と接合される接合面34とされている。そして、この接合面34には、前後方向に直線的に並んで、各シリンダs1〜s4と個別に連通する4つの排気ポート35,35,…の下流端がそれぞれ開口しており、これらの4つの開口部のうち、最後部に位置する第4シリンダs4の排気ポート35の開口部に隣接して、該開口部に連通しかつ接合面34に開口する異形の凹部36が形成されている。
【0030】
さらに、シリンダヘッド4の後端部には、上記第4シリンダs4の排気ポート35から排出される排気の一部を吸気マニホルド7に還流させるように、排気ガス還流通路37(以下、EGR通路という)が形成されている。このEGR通路37の上流端は、上記接合面34における後端部付近に開口しており、この開口端が上記凹部36と連通している。つまり、この凹部36は、シリンダヘッド4の排気側側壁部における接合面34に開口するとともに、上記EGR通路37の開口端とこれに隣接する排気ポート35の下流端開口部とを互いに連通させている。
【0031】
そして、上記排気マニホルド30の取付フランジ部32がガスケット38を介して上記接合面34に重ね合わされて、スタッドボルト39,39,…によりシリンダヘッド4の排気側側壁部に締結固定される。このとき、上記取付フランジ部32の後端部に形成された延出部32aが、上記凹部36とEGR通路37の開口端とを覆った状態になり、これにより、上記第4シリンダs4の排気ポート35の開口部とEGR通路37の上流端とを連通する容積室、つまりEGR導入空間が形成される。
【0032】
上記排気マニホルド30の集合管33の下端部は、図示は省略するが、鉄製パイプ部材からなる排気管の上流端部に接続され、この排気管の下流端側が車両のフロア下まで延びていて、そこに排気浄化用の触媒が接続されるようになっている。
【0033】
上記シリンダヘッド4の後端壁部には、上記EGR通路37を通って吸気マニホルド7に還流される排気ガスの流通量を調節するための排気還流制御弁41(以下、EGR弁という)が配設されている。このEGR弁41は、図示しないステッピングモータにより弁体が作動されて、排気ガスの流通量を調節するものであって、シリンダヘッド4の後端壁部に設けられた上記冷却水導出部17に隣接するとともに、この冷却水導出部17の導出管17aに取り付けられるウォータホースに取り囲まれるように配置されている。また、上記冷却水導出部17の上方近傍には、各シリンダs1〜s4毎の点火プラグ42,42,…に高圧電流を供給する点火コイルユニット43が配置されている。このようにEGR弁41や点火コイルユニット43が冷却水導出部17に近接して配置されていることによって、該EGR弁41や点火コイルユニット43の過熱が抑制されることになる。
【0034】
上記クランク軸2の出力端部(後端部)には、図外のオートマチックトランスミッション(AT)のトルクコンバータに締結固定されてエンジン1の出力を該ATに伝達するドライブプレート45が締結固定されている。
【0035】
尚、図1中、44は、エンジン1の動弁系における吸気側カム軸の回転位置を検出するためのカム角センサである。また、図2中、18は、オイルパン6内に貯溜されているエンジンオイルの量を点検するためのレベルゲージである。
【0036】
(シリンダブロックの構成)
次に、上記シリンダブロック3の構造について、図4〜図15に基づいて詳細に説明する。ここで、図4〜図15は、吸気マニホルド7やウォータポンプ10等の補機類やシリンダヘッド4を全て取り除いた状態のシリンダブロック3単体を示すものであり、図4は左側から見た吸気側側壁部3aを、図5は右側から見た排気側側壁部3bを、図6は前側から見た前端壁部3cを、図7は後側から見た後端壁部3dをそれぞれ示すものである。また、図8はシリンダブロック3のトップデッキ3eを示し、図9はシリンダブロック3を下方のクランク室58側から見た状態を示す。さらに、図10〜12は、いずれもシリンダブロック3の垂直断面構造を示すものであり、図4及び図8におけるX−X線断面、XI−XI線断面及びXII−XII線断面にそれぞれ相当する。さらにまた、図13及び図15は、シリンダブロック3の水平断面構造を示すものであり、図4のXIII−XIII線断面及びXV−XV線断面にそれぞれ相当する。また、図14は、シリンダブロック3の前端壁部3cにおける後述の第1縦リブ94が形成された部分の垂直断面を示すものであり、図6及び図13のXIV−XIV線断面に相当する。
【0037】
図4に示すように、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aには、ウォータジャケットwに冷却水を供給するウォータポンプ10を収容するウォータポンプ収容部47が、シリンダブロック3の前端側の上端部近傍においてエンジン外方に向かって膨出するように設けられているとともに、このウォータポンプ収容部47の後方に連続するようにサーモスタットハウジング15が設けられている。言い換えると、上記ウォータポンプ収容部47やサーモスタットハウジング15は、いずれも、吸気側側壁部3aの前端側でかつ後述するウォータジャケットwに対応する位置において、外方に膨出するように形成されている。また、吸気側側壁部3aにおける上記ウォータポンプ収容部47及びサーモスタットハウジング15の下方には、空調装置用コンプレッサ11を取り付けるための取付ボス部48,48,…が設けられている。
【0038】
一方、上記吸気側側壁部3aの後端側の下端部近傍には、オイルフィルタ13を取り付けるための取付台座部49が設けられており、この取付台座部49の上方には、スタータモータ12を取り付けるための取付ボス部50,50,…と、該スタータモータ12のピニオンを収容するための凹陥部51とが設けられている。
【0039】
尚、図4及び図5中、52は、シリンダブロック3の側壁部3a,3bを補強するためのリブである。また、図5中、53は、寒冷地仕様においてウォータジャケットw内に電熱ヒータを挿入するために形成されたヒータ孔であり、このエンジン1の場合は、該ヒータ孔53はプラグ53aにより閉止されている。
【0040】
図6に示すように、シリンダブロック3の前端壁部3cには、左右両側端部においてそれぞれ上端部から下端部に亘って突出する突出壁部54,54が設けられているとともに、前端壁部3c上部のエンジン幅方向中間位置(この実施形態では、エンジン幅方向略中央部)において円形状に突出する1つのカバー取付ボス部75が設けられている。これら各突出壁部54及びカバー取付ボス部75は、フロントカバー94(図14参照)を取付固定するためのカバー取付部を構成しており、各突出壁部54及びカバー取付ボス部75には、フロントカバー94の取付用ボルト95(図14参照)がねじ込まれるねじ穴76がそれぞれ形成されている(各突出壁部54には、複数のねじ穴76,76,…が、カバー取付ボス部75には1つのねじ穴76がそれぞれ形成されている)。そして、上記取付用ボルト95によって、フロントカバー94の周縁部が上記各突出壁部54に、中央部が上記カバー取付ボス部75にそれぞれ取付固定されて、該フロントカバー94と前端壁部3cとの間に動弁系駆動のタイミングチェーンを収容する扁平の空間部が形成されるようになっている。
【0041】
上記両突出壁部54,54のうち吸気側(図6の右側)の突出壁部54の上部には、上記ウォータポンプ収容部47内に形成されたポンプ室55に連通する円形の開口部が形成されており、吸気側の突出壁部54の下部のエンジン幅方向内側には、オイルポンプ56を収容するためのオイルポンプ収容空間57が開口している。
【0042】
このシリンダブロック3は、左右両側の側壁部3a,3bが共にクランク軸2の軸心Xよりも下側の位置まで延びているディープスカートタイプのものであり、これら両スカート部に囲まれた部分が、上記クランク軸2を収容するクランク室58とされている。このクランク室58には、図9に示すように、合計5つの主軸受部59,59,…が前後方向に並ぶように形成されており、該各主軸受部59にそれぞれ軸受キャップ60,60,…(図6及び図7にのみ示す)が配置され、さらに、該5つの軸受キャップ60,60,…同士がベアリングビーム61(図6及び図7にのみ示す)により連結された状態で、ボルト62,62,…(図6及び図7にのみ示す)により上記主軸受部59,59,…に対して締結固定されるようになっている。
【0043】
図7に示すように、シリンダブロック3の後端壁部3dには、図外のATが取り付けられるAT取付部63が設けられている。このAT取付部63は、上記オイルパン6の後端面と共に略円環形状をなすフランジ面により構成されている。そして、同図に仮想線で示すように、上記AT取付部63にATのケーシングのフランジ面が重ね合わされた状態で、図示しないボルトにより締結固定されるようになっている。尚、上記ATのケーシングの上端面は、シリンダブロック3のトップデッキ3e上面よりも下方に位置している。
【0044】
また、上記後端壁部3dには、上記吸気側側壁部3aに設けた凹陥部51が後端壁部3dに亘るように設けられていることにより、凹陥部51の形状に沿った切欠きが現れている。このような凹陥部51の構成により、エンジン1のドライブプレート45をATのトルクコンバータのタービンケースに締結するときに、図12にも示すように、上記凹陥部51内においてドライブプレート45を実際に確認しながら、該凹陥部51内に位置づけた締結ボルト65をドライブプレート45に締結することができ、エンジン1とATとの結合作業の容易化が図られる。
【0045】
上記シリンダブロック3には、最前部に位置する第1シリンダs1から最後部に位置する第4シリンダs4まで、4つのシリンダs1,s2,s3,s4が一体成形されており、この各シリンダs1〜s4には、それぞれ鋳鉄製ライナ66,66,…(図9、図12及び図14参照)が圧入されている。また、シリンダブロック3のトップデッキ3eには、該シリンダブロック3とシリンダヘッド4とを締結するためのヘッドボルトがねじ込まれる合計10個のヘッドボルト穴67,67,…が形成されており、このヘッドボルト穴67,67,…は、平面視で(シリンダs1,s2,…の軸心に沿って見て)、各シリンダs1〜s4の周囲を等間隔を空けて囲むように4箇所に配置されていることになる。
【0046】
図8及び図10〜図13に示すように、シリンダブロック3には、4つのシリンダs1〜s4を囲むようにウォータジャケットwが設けられている。このウォータジャケットwは、シリンダs1〜s4の左右両側(吸気側及び排気側)において該シリンダs1〜s4の外形に略沿って屈曲しながら前端壁部3cから後端壁部3dに亘ってそれぞれ形成された吸気側通路部wi及び排気側通路部weと、これら両通路部wi,we同士をその前後両端部でそれぞれ連通する前側通路部wf及び後側通路部wrとを有している。この前側通路部wfは、シリンダブロック3の前端壁部3cと最前部に位置する第1シリンダs1の周壁部(ボア周壁部)との間に配設され、後側通路部wrは、後端壁部3dと最後部に位置する第4シリンダs4の周壁部との間に配設されている。
【0047】
また、上記シリンダブロック3のトップデッキ3eには、上記ウォータジャケットwからシリンダヘッド4側のウォータジャケットへと冷却水を流通させる異形の孔部70,70,…が該トップデッキ3eを貫通して設けられている。
【0048】
上記ウォータジャケットwの各通路部wi,we,wf,wrは、図6及び図12に示すように、各シリンダs1〜s4の下端近傍に対応する深さまで形成されている。このウォータジャケットwの各通路部wi,we,wf,wrは、各シリンダs1〜s4の周壁部(ボア周壁部)の上端と下死点にあるピストン上端面の近傍位置との間の範囲に亘って設けた従来のものよりも深く形成されており、図10及び図11にも示すように、ウォータジャケットwの底面が上記ヘッドボルト穴67の底面よりも下方に位置しているとともに、上記カバー取付ボス部75の高さ位置よりも下方に位置している(上記従来のものでは、ウォータジャケットwの底面がヘッドボルト穴67の底面やカバー取付ボス部75の高さ位置よりも上側に位置する)。
【0049】
上記ウォータジャケットwの前側通路部wfは、その吸気側端部において、上記冷却水導入路71を介してウォータポンプ10の吐出口と接続され、該吐出口から吐出される冷却水は、上記冷却水導入路71を流通してウォータジャケットwの前端部、つまり前側通路部wfと吸気側通路部wiとの接続部に流入するようになっている。
【0050】
上記ポンプ室55の後端側の部分は、後方に隣接するサーモスタットハウジング15の内部に向かって延びるように形成されて、図示しないサーモスタットを収容するサーモスタット室72に連通している。そして、ウォータポンプ10のインペラが回転すると、ラジエータ側から供給される冷却水が上記サーモスタット室72からポンプ室55に吸い込まれ、その冷却水がこのポンプ室55の径方向外方に向かって流れて上記吐出口から吐出され、その後、冷却水導入路71を通って、上記ウォータジャケットwの前端部に流入するようになる。
【0051】
この実施形態では、上記の如くウォータジャケットwの前端部に流入した冷却水は、吸気側通路部wi及び排気側通路部weの両方に対して適切に分配されるようになされている。すなわち、図13に示すように、冷却水導入路71の下流端部の近傍には、ウォータジャケットwの底面から天井面に亘って、冷却水の流れを2つに分ける三角柱状ボス部73が立設されている。この三角柱状ボス部73は、内部に上記ヘッドボルト穴67が形成されたものであり、3つの側面73a,73b,73cを有している。これら3つの側面73a,73b,73cのうち、第1シリンダs1の周壁部と対峙する気筒側側面73aが、平面視で該第1シリンダs1の軸心Zとヘッドボルト穴67の軸心(図示せず)とを結んだ仮想線L1に対し略直交するように形成されている。言い換えると、上記気筒側側面73aは、ウォータジャケットw内で対峙する第1シリンダs1の周壁部と概ね平行となっており、このことにより、この間の冷却水の流れがスムーズなものとなり、第1シリンダs1の周囲の冷却性が良好になる。
【0052】
また、上記気筒側側面73aに対向する三角柱状ボス部73の稜線部(気筒側側面73a以外の2つの側面73b,73c同士が交わる角部)、すなわち、概ね上記仮想線L1の延長線上に位置する稜線部73dは、冷却水導入路71における冷却水の流線(図に白い矢印で示す)に沿って見たとき、言い換えると、エンジン幅方向から見たときに、その冷却水導入路71の下流端開口部と重なるように位置付けられている。そして、上記稜線部73dを挟む三角柱状ボス部73の2つの側面73b,73cのうちの一方は、冷却水導入路71からの冷却水の流れを吸気側通路部wiに向かうように案内する吸気側ガイド面73bとされている一方、他方の側面は、冷却水の流れを前側通路部wfないし排気側通路部weに向かうように案内する前端側ガイド面73cとされている。
【0053】
このような三角柱状ボス部73の配置構成により、ウォータポンプ10の吐出口から冷却水導入路71を通ってウォータジャケットwの前端部に導かれた冷却水の流れは、該三角柱状ボス部73の稜線部73dを境に2つに分けられて、一つの流れが上記三角柱状ボス部73の吸気側ガイド面73bにより吸気側通路部wiに向かうように案内され、もう一つの流れは三角柱状ボス部73の前端側ガイド面73cとシリンダブロック3の前端壁部3cとによって、前側通路部wfないし排気側通路部weに向かうように案内される。
【0054】
ここで、上記三角柱状ボス部73の前端側ガイド面73cとこの面に対峙するシリンダブロック3の前端壁部3cとの間の冷却水の通路幅は、平面視で、該三角柱状ボス部73の吸気側ガイド面73bとこの面に対峙するシリンダブロック3の吸気側側壁部3aとの間の冷却水の通路幅よりも大きくされており、このことで、相対的に高温になりやすい排気側通路部weへ向かう冷却水(つまり前側通路部wfへ向かう冷却水)の流量を十分に多くして、シリンダブロック3を全体として適切に冷却するようにしている。
【0055】
こうして上記ウォータジャケットwに流入した冷却水は、吸気側及び排気側通路部wi,weに対してスムーズにかつ適切に分流され、該各通路部wi,we内をそれぞれ後端側に向かって流れるとともに、シリンダブロック3のトップデッキ3eを貫通する孔部70,70,…を通って、シリンダヘッド4側のウォータジャケットに流れ、このシリンダヘッド4側のウォータジャケットにおいても前端側から後端側に向かって流れて、最後に、該シリンダヘッド4の後端部に設けられた冷却水導出部17から排出されるようになっている。
【0056】
図6及び図14に示すように、上記フロントカバー94が取付固定されるカバー取付ボス部75は、上記ウォータジャケットwの前側通路部wfの深さ方向中間に相当する高さ位置、つまり前方から見てウォータジャケットwの前側通路部wfと重なる位置に設けられている。そして、シリンダブロック3の前端壁部3cの内側面(前端壁部3cの前側通路部wf側の面)には、上記カバー取付ボス部75の高さ位置から下方に延びて上記ウォータジャケットwの前側通路部wfの底面に連なる第1縦リブ74が後方に突出形成されている。この第1縦リブ74の突出先端面は、最前部の第1シリンダs1の周壁部との間に間隙を有した状態で該周壁部と対向して上下方向に延びている。尚、カバー取付ボス部75に形成された上記ねじ穴76は、第1縦リブ74内にまで入り込んで、十分なねじ込み深さが得られるようになされている。
【0057】
上記第1縦リブ74は、図13に示すように、平面視で、上記三角柱状ボス部73と、第1シリンダs1の中心を通って前後方向に延びる仮想線L2との間に形成されている。すなわち、前側通路部wfが、第1縦リブ74のエンジン幅方向一方の側において、ウォータポンプ10の吐出口と接続されていることになり、このことにより、該吐出口から吐出された冷却水が第1縦リブ74によって直ぐに上昇流とされる。つまり、前側通路部wfの第1縦リブ74の部分では通路幅がその上側の部分よりも小さくなっているので、第1縦リブ74によって冷却水が上方へ移動し易くなり、上昇流を形成することになる。
【0058】
次に、シリンダブロック3におけるオイル通路の構造について説明する。まず、エンジン1の各摺動部にエンジンオイルを供給する供給側の通路構造から説明する。
【0059】
図4、図6、図10〜図12及び図15に示すように、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aには、前端壁部3cから後端壁部3dに亘って直線的に延びるようにメインギャラリ80が形成されているとともに、オイルポンプ56から吐出されるエンジンオイルをオイルフィルタ13に導く第1供給路81と、このオイルフィルタ13により濾過されたエンジンオイルを上記メインギャラリ80に導く第2供給路82とが形成されている。すなわち、上記第1供給路81の下流端は、上記オイルフィルタ13を取り付けるための取付台座部49に開口して、オイルフィルタ13のオイル取入口に連通している。また、上記第2供給路82の上流端も上記取付台座部49に開口して、オイルフィルタ13からのオイル吐出口に連通している。
【0060】
上記メインギャラリ80の前端部及び後端部は、それぞれ前端壁部3c及び後端壁部3dに開口しているが、その各開口は、図示しないプラグにより閉止される。また、図6及び図15に示すように、メインギャラリ80は、前端壁部3cにおいてエンジン幅方向に延びるように形成された断面円形のサブギャラリ83に連通している。このサブギャラリ83は、上記カバー取付ボス部75の下側位置で、ウォータジャケットwの前側通路部wfの底面よりも下側位置に形成されている。つまり、図14に示すように、前側通路部wfの底面を構成する部分が、サブギャラリ83を構成する壁部(サブギャラリ83の周壁部)の上部と繋がっている。また、シリンダブロック3の前端壁部3cの外側面(前側通路部wfとは反対側の面)は、できるだけ除肉されて軽量化が図られており、サブギャラリ83の周壁部の前部には、サブギャラリ83に沿ってエンジン幅方向に延びる横リブ78が形成されている。
【0061】
尚、上記サブギャラリ83は、図示しないカムシャフトに設けられる可変タイミング機構やタイミングチェーンの張力を調節する油圧式テンショナに圧油を供給するものであって、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aからドリルにより形成したものであり、該吸気側側壁部3aに開口する部分が図示しないプラグにより閉止されている。
【0062】
上記メインギャラリ80には、図9〜図12に示すように、クランク軸2を支持する主軸受部59,59,…に対して個別にエンジンオイルを供給すべく、比較的大径の分配通路84,84,…が分岐接続されている。また、図示しないが、メインギャラリ80には、エンジンオイルをシリンダヘッド4側に送るための専用のオイル通路が分岐接続されており、このオイル通路の途中には絞りが形成されていて、上記の如くクランク軸2の主軸受部59,59,…に対する供給油圧を確保しながら、シリンダヘッド4の動弁系等に十分な量のエンジンオイルを供給できるようになっている。
【0063】
次いで、エンジン1の各摺動部からオイルパン6へエンジンオイルを戻すリターン側の通路構造を説明する。
【0064】
上記したようにメインギャラリ80からクランク軸2の主軸受部59,59,…等に供給されたエンジンオイルは該各主軸受部59の摺動面からクランク室58に漏れ出て、そこから直接的にオイルパンに落下する。一方、シリンダヘッド4に供給されたエンジンオイルは、動弁系カム軸の軸受部等からシリンダヘッド4のミドルデッキ上に漏れ出て、このミドルデッキからシリンダヘッド4の底面まで貫通するオイル落とし穴を通って、シリンダブロック3のトップデッキ3e上面に至り、このシリンダブロック3に該オイル落とし穴に連通するように設けられたオイルリターン通路86,87等を通って、クランク室58やオイルパン6に戻されるようになっている。
【0065】
詳しくは、図4、図5及び図13に示すように、シリンダブロック3の吸気側及び排気側側壁部3a,3bには、それぞれ、第1シリンダs1及び第2シリンダs2間の略中央に対応する位置において上下方向に略直線状に延びる前側リターン通路86,86が設けられている。また、第3シリンダs3及び第4シリンダs4間の中間に対応する位置にも、前側リターン通路86,86と同様の後側リターン通路87,87が設けられている。この両リターン通路86,87は、図10及び図11に示すように、上流端がシリンダブロック3のトップデッキ3e上面に開口される一方、下流端がシリンダブロック3の底面においてオイルパン6の内部に臨むように開口している。
【0066】
このように各リターン通路86,87を隣接する2つのシリンダ間の中間に対応する位置において上下方向に略直線状に延びるように設けたことで、該各リターン通路86,87によるエンジンオイルの流れが極めてスムーズなものとなり、基本的に良好なオイルリターン性を得ることができる。しかも、該各リターン通路86,87を通って落下したエンジンオイルは、シリンダ間でオイルパン6内に落下するようになるので、クランク軸2のカウンターウエイトによるエンジンオイルの掻き上げも少ない。
【0067】
また、上記各リターン通路86,87の下流端側には、その途中でクランク室58に臨むように開口する開口窓部88が設けられていて、エンジン1が車両前後方向(エンジン幅方向)に揺動したり、或いは車両の前後加速度による影響を受けて、オイルパン6内の油面が大きく偏ったときでも、オイルの良好なリターン性を確保できるようになっている。
【0068】
さらに、図4及び図5に示すように、シリンダブロック3の吸気側及び排気側側壁部3a、3bには、それぞれ、上記後側オイルリターン通路87,87の途中から分岐して、この分岐点から後方の斜め上側に向かって延びる分岐通路90,90が形成されている。この各分岐通路90の上流端は、図8にも示すように、トップデッキ3e上面において、上記後側オイルリターン通路87,87の上流端開口部よりもさらに後側に離間して後端縁部近傍に開口されており、この開口部が、図示しないが、該開口部に対応位置するようにシリンダヘッド4の後端部に形成されたオイル落とし穴に連通されている。このような分岐通路90の構成により、シリンダヘッド4の後端部のオイル落とし穴から落下してきたエンジンオイルを、分岐通路90により上記後側リターン通路87の途中に合流させることができるので、この実施形態のようにエンジン1を車両に横置きに搭載したときだけでなく、エンジン1を縦置きに搭載して、シリンダブロック3の後端部が前端部よりも相対的に低い状態になっても、シリンダヘッド4の後端部にエンジンオイルが滞留することはない。
【0069】
上記した前側及び後側リターン通路86,87や分岐通路90は、いずれも閉断面構造とされていて、その周囲のシリンダブロック3の吸気側及び排気側側壁部3a、3bにおいて、図8に明らかなように、外方に膨出する膨出部内に形成されている。これにより、リターン通路86,87や分岐通路90の周囲では、吸気側及び排気側側壁部3a、3bの剛性が高くなる。
【0070】
また、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aにおいて、上記前側リターン通路86の周囲の膨出部はサーモスタットハウジング15と連続するように一体成形されている。さらに、前側リターン通路86と後側リターン通路87との間には、それらの周囲の膨出部にそれぞれ連続するように中間膨出部91(図8参照)が一体成形されており、この中間膨出部91の内部に、図8に仮想線で示すように、オイルセパレータ室92が設けられている。
【0071】
要するに、上記吸気側側壁部3aは、シリンダs1〜s4内での燃焼に伴う加振力を最も強く受ける部分において前端縁部から後端側に向かって順に、ウォータポンプ収容部47、サーモスタットハウジング15、前側リターン通路86の膨出部、中間膨出部91及び後側リターン通路87の膨出部が連続するように一体成形されているとともに、後側リターン通路87の膨出部からシリンダヘブロック3の後端縁部までが分岐通路90の膨出部によって繋がれている。このことで、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aにおいて加振力を最も強く受ける上側の部分が前端部から後端部に亘って補強され、該吸気側側壁部3aの膜振動が抑制され、振動や騒音の低減化が図られる。
【0072】
尚、上記オイルセパレータ室92は、図9にも示すように、クランク室58からのブローバイガスを導くブローバイ通路93,93に連通していて、このブローバイ通路93,93により輸送されてくるブローバイガスからオイルミストを分離させて、図示しない通路を介して吸気マニホルド7の共通吸気管22に供給するとともに、分離させたオイルミストを再びブローバイ通路92によりクランク室58に戻すようになっている。
【0073】
ここで、図6及び図14に示すように、上記シリンダブロック3の前端壁部3cの外側面(前側通路部wfとは反対側の面)には、上記ウォータジャケットwの前側通路部wfの底面と上記サブギャラリ83の周壁部ないし横リブ78との間の部分において、該サブギャラリ83に沿ってエンジン幅方向に延びる凹部79が形成されている。この凹部79における上記カバー取付ボス部75の下側位置(第1縦リブ74の下側位置)には、上下方向に延びる第2縦リブ85が形成されている。この第2縦リブ85は、上記第1縦リブ74と一連で繋がって第1縦リブ74がサブギャラリ83の周壁部に繋がるようにする補強リブを構成し、サブギャラリ83は、カバー取付ボス部75の下側位置においてエンジン幅方向に延びるように形成されたオイルギャラリを構成する。この結果、ウォータジャケットwの前側通路部wfの底面まで延びる第1縦リブ74によって前端壁部3cの面剛性が高められることで、フロントカバー94の支持剛性が向上する。しかも、カバー取付ボス部75が、第1縦リブ74及び該第1縦リブ74と一連で繋がる第2縦リブ85によって、閉断面構造で強度が比較的高いサブギャラリ83の周壁部に繋げられて、さらに補強される。
【0074】
したがって、この実施形態では、ウォータジャケットwを深くしてシリンダブロック3とシリンダヘッド4との締結によるシリンダs1〜s4の変形を防止しつつ、フロントカバー94の面振動を防止することができる。
【0075】
すなわち、ウォータジャケットwの深さが比較的浅い(上記した従来のもののように、ウォータジャケットwの底面がヘッドボルト穴67の底面やカバー取付ボス部75の高さ位置よりも上側に位置する)と、シリンダブロック3とシリンダヘッド4とを、各ヘッドボルト穴67にヘッドボルトをねじ込んで締結したときに、その締結力(シリンダブロック3をシリンダヘッド4側へ引き寄せる力)が各シリンダs1〜s4の周囲においてそれ程分散されない状態(各ヘッドボルト穴67近傍に集中した状態)で、シリンダs1〜s4の周壁部に伝達されるために、シリンダs1〜s4の変形が生じてしまう。
【0076】
しかし、この実施形態では、ウォータジャケットwを十分に深くすることで、上記締結力をシリンダs1〜s4の周囲に十分に分散させた状態でシリンダs1〜s4の周壁部に伝達させるようにしているので、シリンダs1〜s4の変形を防ぐことができる。
【0077】
一方、このようにウォータジャケットwを深くすると、カバー取付ボス部75がウォータジャケットwの前側通路部wfの深さ方向中間に相当する高さ位置に形成されることになり、カバー取付ボス部75の周囲における前端壁部3cの肉厚が薄くなって、フロントカバー94の中央部の支持剛性が十分に得られなくなり、このため、フロントカバー94に面振動が生じてしまう。
【0078】
しかし、この実施形態では、上記したように、カバー取付ボス部75が第1及び第2縦リブ74,85によって補強されるので、フロントカバー94の中央部の支持剛性が十分に得られて、フロントカバー94に面振動の発生を抑制することができる。
【0079】
また、上述の如く、第1縦リブ74により、ウォータポンプ10の吐出口から吐出された冷却水の上方移動性を向上させることができるので、ウォータジャケットwを深くしても、熱負荷の高いシリンダs1〜s4の上部側を効率良く冷却することができる。
【0080】
さらに、第1縦リブ74の突出先端面と最前部の第1シリンダs1の周壁部との間には間隙が設けられているので、第1縦リブ74を第1シリンダs1の周壁部に結合させたときのように、第1シリンダs1からの熱伝達により第1縦リブ74が変形してフロントカバー94の中央部の支持剛性が低下したり、第1シリンダs1の周壁部が変形したりするようなことはない。
【0081】
尚、上記実施形態では、シリンダブロック3の前端壁部3cの外側面に、補強リブとして第2縦リブ85を形成してが、この第2縦リブ85は必ずしも必要なものではなく、前端壁部3cの内側面における第1縦リブ74のみで補強するようにしてもよい。このようにしても、ウォータジャケットwの前側通路部wfの底面を構成する部分が、十分な肉厚がある部分であり、しかも、サブギャラリ83の周壁部と繋がる部分であるので、カバー取付ボス部75を第1縦リブ74によって十分に補強することができる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のエンジンのシリンダブロック構造によると、シリンダブロックの前端壁部におけるエンジン幅方向中間位置でかつウォータジャケットの前側通路部の深さ方向中間に相当する高さ位置に、フロントカバーを取付固定するためのカバー取付部を形成するとともに、上記前端壁部の内側面に、上記カバー取付部の高さ位置から下方に延びて上記前側通路部の底面に連なる縦リブを突出形成するようにしたので、ウォータジャケットを深くしてシリンダブロックとシリンダヘッドとの締結によるボア変形を防止しつつ、フロントカバーの面振動を防止することができ、しかも、シリンダの冷却効率をも高めることができる。
【0083】
また、シリンダブロックの前端壁部におけるウォータジャケットの前側通路部の底面よりも下側位置に、エンジン幅方向に延びるオイルギャラリを形成し、シリンダブロックの前端壁部における上記前側通路部底面と上記オイルギャラリを構成する壁部との間の部分に、縦リブと一連で繋がるように上下方向に延びる補強リブを形成するようにすることで、フロントカバー中央部の支持剛性をより一層向上させて、フロントカバーの面振動をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの外観を示す左側(吸気側)後方から見た斜視図である。
【図2】エンジンの左側側面図である。
【図3】シリンダヘッドへの排気系の取付構造を示す右側(排気側)後方から見た斜視図である。
【図4】シリンダブロックの左側面図である。
【図5】シリンダブロックの右側面図である。
【図6】シリンダブロックの正面図である。
【図7】シリンダブロックの背面図である。
【図8】シリンダブロックの平面図である。
【図9】シリンダブロックの底面図である。
【図10】図4及び図8のX−X線断面図である。
【図11】図4及び図8のXI−XI線断面図である。
【図12】図4及び図8のXII−XII線断面図である。
【図13】図4のXIII−XIII線断面図である。
【図14】図6及び図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図4のXV−XV線断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
3 シリンダブロック
3a 前端壁部
10 ウォータポンプ
74 第1縦リブ
75 カバー取付ボス部(カバー取付部)
83 サブギャラリ(オイルギャラリ)
85 第2縦リブ(補強リブ)
94 フロントカバー
s1,s2,s3,s4 シリンダ(気筒)
w ウォータジャケット
wf 前側通路部
Claims (4)
- 複数の気筒が前後方向に直列に配設されたエンジンのシリンダブロック内にウォータジャケットが形成され、該ウォータジャケットが、上記シリンダブロックの前端壁部と上記複数の気筒のうち最前部に位置する気筒の周壁部との間に配設された前側通路部を有するエンジンのシリンダブロック構造であって、
上記シリンダブロックの前端壁部におけるエンジン幅方向中間位置でかつ上記前側通路部の深さ方向中間に相当する高さ位置に、フロントカバーを取付固定するためのカバー取付部が形成され、
上記シリンダブロックの前端壁部の内側面に、上記カバー取付部の高さ位置から下方に延びて上記ウォータジャケットの前側通路部の底面に連なる縦リブが突出形成されていることを特徴とするエンジンのシリンダブロック構造。 - 請求項1記載のエンジンのシリンダブロック構造において、
縦リブの突出先端面と最前部の気筒の周壁部との間には、間隙が形成されていることを特徴とするエンジンのシリンダブロック構造。 - 請求項2記載のエンジンのシリンダブロック構造において、
ウォータジャケットの前側通路部は、縦リブのエンジン幅方向一方の側において、該ウォータジャケットに冷却水を供給するウォータポンプの吐出口と接続されていることを特徴とするエンジンのシリンダブロック構造。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンのシリンダブロック構造において、
シリンダブロックの前端壁部におけるウォータジャケットの前側通路部の底面よりも下側位置に、エンジン幅方向に延びるオイルギャラリが形成され、
上記シリンダブロックの前端壁部における上記前側通路部底面と上記オイルギャラリを構成する壁部との間の部分に、縦リブと一連で繋がるように上下方向に延びる補強リブが形成されていることを特徴とするエンジンのシリンダブロック構造。
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