JP2004269742A - ノルボルネン系樹脂の表面処理方法 - Google Patents

ノルボルネン系樹脂の表面処理方法 Download PDF

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高裕 三浦
Hiromasa Hashimoto
弘昌 橋本
Akira Terai
章 寺井
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Abstract

【課題】被塗装面、接着面の研磨や長期放置をする必要がなく、塗装に際して塗膜ののりを良くし、また、他の被着体との接合を施したときに、十分な接着性能を効率よく発現させる、生産性の高いノルボルネン系樹脂の表面処理方法を提供する。
【解決手段】反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面処理方法であって、前記ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、必要に応じて前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程とを備え、前記反応射出成形終了後120時間以内に、全ての工程を完了する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応射出成形法(Reaction Injection Molding 、以下において「RIM成形法」という。)によって成形されるノルボルネン系樹脂成形品の表面処理方法、及び接着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
RIM成形法によって得られるノルボルネン系樹脂成形品は、低温衝撃に強く、高い耐熱性を有しており、かつ厚肉成形に適していることから、水槽や浄化槽などの筐体、自動車や建農機のハウジング、ボディー等に広く利用されている。該成形品は成形の後に成形品同士、あるいは他の被着体と接着されて使用されることが多い。また、成形品の表面に塗装が施されることもある。しかし、RIM成形法によって得られるノルボルネン系樹脂成形品は成形直後においては、未反応モノマーのゲル化物や残留モノマーが原因となって、接着を行うことや塗装に際して塗膜がのり難いことが一般に知られている。このため、通常ノルボルネン系樹脂成形品に塗装、あるいは接着を施す場合は、成形品表面を研磨するか、または成形後1週間程度空気中に放置してから塗装、接着を実施してきた。仮に、研磨または1週間程度空気中に放置しない場合、塗膜ののりが悪く、最悪の場合には塗膜が剥離してしまうことがあった。また、接着剤の硬化速度が遅れたり、接着界面の強度が低下したりするため、水槽あるいは浄化槽に水を張ったときに接着界面が剥がれ、水漏れが発生することがあるという欠点があった。
【0003】
被塗装面、被接着面の研磨、または成形後1週間程度空気中に放置しなくてもノルボルネン系樹脂の塗料や接着剤との接着性を向上させる方法として、特許文献1には、重合体成形物を水溶性酸化剤の少なくとも一種の水溶液に接触処理する方法が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品にスチーム処理を施し、次いで塗装を行う塗装方法が開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、反応射出成形法によって得られるノルボルネン系樹脂成形品同士及びまたはノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤で接着するのに際し、ノルボルネン系樹脂成形品の表面を前もって、炭素数4以上のケトン系溶剤または炭素数2以上のカルボン酸エステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する方法が提案されている。
【0006】
一方、通常難接着性であるオレフィン系樹脂の接着の前処理としてコロナ放電若しくはプラズマ放電などの表面処理が公知である。例えば、特許文献4には、接着強度に優れ、高い硬度を持つ硬化層を備えたノルボルネン系樹脂成形品を得るため、成形品の表面に予めプラズマ処理を行った後、紫外線硬化剤を塗布し、次いで紫外線を照射して硬化層を形成する方法が開示されている。
【特許文献1】
特開平2−6524号公報
【特許文献2】
特開平8−103723号公報
【特許文献3】
特開平11−71554号公報
【特許文献4】
特開平4−348139号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らの検討した結果では、ノルボルネン系樹脂を成形直後に塗装、接着するのに際し、水溶性酸化剤により処理する方法、スチーム処理による方法、あるいは、ケトン、エステルなどで溶剤処理する方法によっても、十分な塗装、接着性能が発現されなかった。また、コロナ処理若しくはプラズマ処理は、被塗装面、被接着面の表面状態、処理速度若しくは処理時間により、表面処理の効果が十分に発揮できない場合があり、現実には実施されていないのが実情である。
【0008】
そこで本発明は、被塗装面、被接着面の研磨や長期放置をする必要がなく、塗装に際して塗膜ののりを良くし、成形品同士や他の被着体との接合を施したときに、十分な接着性能を効率よく発現させる、生産性の高いノルボルネン系樹脂の表面処理方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、反応射出成形終了後からの経過時間に着目し、
a. ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤による処理
b. 樹脂成形品の表面にエネルギー線照射を行う処理、及び
c. 必要に応じて樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する処理
d. さらに接着の場合には成形品と他の被着体とを接着剤により接合する処理を、反応射出成形終了後所定時間以内に完了することにより、塗装に際して塗膜ののりがよく、また、成形品同士や他の被着体との接合を施したときに、十分な接着性能を効率よく発現させる、生産性の高いノルボルネン系樹脂の表面処理方法を提供することが可能になることを見出し、この知見より本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして第1の本発明によれば、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面処理方法であって、前記ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、を備え、前記反応射出成形終了後120時間以内に、全ての工程を完了する、表面処理方法が提供される。
【0011】
前記第2工程の後に、さらに前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程を備えることが好ましい。この場合、プライマーを塗布する工程も含めて120時間以内にすべての工程が完了される。
【0012】
また、前記エネルギー線照射処理は、プラズマジェット処理であることが好ましい。この場合、前記プラズマジェット処理は、出力0.1〜2.0kW、プラズマジェット照射ヘッド送り速度1〜200mm/秒、前記ヘッドと前記樹脂成形品の表面との距離1〜50mmの条件のもとに行われることが好ましい。
【0013】
第2の本発明によれば、上記第1発明にかかる方法により表面処理を施されたノルボルネン系樹脂成形品が提供される。
【0014】
第3の本発明によれば、上記第2の本発明にかかるノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤により接合することを特徴とするノルボルネン系樹脂成形品の接着方法が提供される。
【0015】
第4の本発明によれば、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着する方法であって、前記ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、前記ノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤により接合する第3工程と、を備え、前記反応射出成形終了後120時間以内に、全ての工程を完了する、接着方法が提供される。なお、上記120時間には、接着剤の硬化時間は含まれないものとする。
【0016】
前記第2工程と第3工程との間に、さらに前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記エネルギー線照射処理はプラズマジェット処理であることが好ましい。この場合に、前記プラズマジェット処理は、出力0.1〜2.0kW、プラズマジェット照射ヘッド送り速度1〜200mm/秒、前記ヘッドと前記樹脂成形品の表面との距離1〜50mmの条件のもとに行われることが好ましい。
【0018】
また、前記接着剤は、ポリウレタン系接着剤であり、前記プライマーは、イソシアナート基を含有するものであることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面処理方法、または接着方法であって、前記ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する工程と、前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う工程と、必要に応じて樹脂成形品表面にプライマーを塗布する工程とを備え、さらに接着方法の場合には、前記ノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤により接合する工程を含み、前記反応射出成形終了後120時間以内に、全ての工程を完了する、表面処理方法または接着方法である。
【0020】
(1)ノルボルネン系樹脂成形品
本発明の表面処理方法、または接着方法が適用されるノルボルネン系樹脂成形品を得るために用いられるノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を有するシクロオレフィンであって、その代表例としては、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0021】
これらのモノマーを反応射出成形によって塊状重合するには、メタセシス触媒と活性剤が用いられる。塊状重合において用いられるメタセシス触媒は、六塩化タングステンや、トリドデシルアンモニウムモリブデート、トリ(トリデシルアンモニウム)モリブデートなど、有機モリブデン酸アンモニウム塩などのノルボルネン系モノマーの塊状重合用触媒として公知のメタセシス触媒が用いられるが、これらのうち有機モリブデン酸アンモニウム塩が特に好ましい。
【0022】
また、メタセシス触媒として、公知のルテニウムカルベン錯体(特表平11−510807号公報、特表平10−508891号公報、特開平11−322953号公報参照)を適用することもできる。
【0023】
また活性剤としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドなどのアルキルアルミニウムハライド、これらのアルキルアルミニウムハライドの、アルキル基の一部をアルコキシ基で置換したアルコキシアルキルアルミニウムハライド、有機スズ化合物などが挙げられる。なお、メタセシス触媒としてルテニウムカルベン錯体を使用する場合には、活性剤を用いても、用いなくても良い。ノルボルネン系樹脂は、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)等のエラストマーをモノマーに予め添加することにより成形品の衝撃強度等を改良することができる。
【0024】
反応射出成形の前準備としてノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒、及び活性剤を主材とする反応射出成形用材料を、ノルボルネン系モノマーとメタセシス触媒からなる液と、ノルボルネン系モノマーと活性剤からなる液との安定な2液に分けて別の容器に入れておく。この2液を混合した反応液を、金型内に射出して塊状重合させる。
【0025】
金型温度は10〜150℃が好ましい。金型温度が低すぎると重合反応速度が遅くなり効率が悪く、高すぎると樹脂の炭化がおこることがある。金型圧力は通常0.01〜10MPaの範囲で行う。反応液の重合終了時間は、反応液の各成分、種類、濃度によって調整することができ、適宜選択することができるが、通常、反応液の注入終了後30秒〜20分である。
【0026】
(2)溶剤による処理
本発明は、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する工程を備える。ケトン系溶剤は特に限定されるものではないが、好ましくは、脂肪族ケトンであるか、若しくは脂環式ケトンである。全炭素数が3〜17であるものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、メシチルオキシド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシル(フェニル)メタノン、ホロン等を使用することができる。ケトン系溶剤は使用後に揮発して、成形品がすぐに乾いた状態になることが好ましい。揮発性の点から全炭素数は3〜10が好ましく、3〜6がさらに好ましい。このうち、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)が特に好ましく用いられる。
【0027】
エステル系溶剤は、特に限定されるものではないが、好ましくは全炭素数が2〜16のものである。例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸−n−ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸第二へキシル、酢酸−2−エチルブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−ブチル、酪酸イソアミル等が挙げられる。ケトン系溶剤の場合と同様に揮発性の点から全炭素数2〜10が好ましく、3〜6がさらに好ましい。このうち酢酸エチルが特に好ましく用いられる。
【0028】
本発明においては、上述したケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤を使用することができる。本発明において溶剤で処理するとは、これら溶剤を含浸させたウェットスポンジ、ペーパータオル、脱脂綿、布等でノルボルネン系成形品の表面を拭く等してその表面の汚染物を除去することをいう。
【0029】
(3)エネルギー線照射処理
本発明におけるエネルギー線照射処理方法としては、特に限定されるものではなく、レーザービーム、イオンビーム、電子ビーム等のビーム処理、及びプラズマ処理を使用することができる。これらの中でも、本発明においてより良い塗装、接着性を得るためにプラズマ処理、中でもプラズマジェット処理が好ましく使用される。プラズマジェット処理は、大容量アーク放電によって、プラズマを空気中にジェット状に取り出して表面処理を行う方法である。プラズマジェット処理は、ドライプロセスであり、短時間で効果があるため生産性に優れている。
【0030】
図1に本発明で用いることのできる、プラズマジェットの発生装置の一例を示す。このプラズマジェットの発生装置10は、プラズマジェットを照射する照射ノズル1と、電源部2と、これらを接続するケーブル3とを備えている。また、照射ノズル1は、空気流発生部11と本体部12とを備えている。本体部12には電極ロッド13と電極板14とが内蔵されている。これら、電極ロッド13と電極板14とには、電源部2から高電圧を供給するための高電圧供給ケーブル31が接続されている。プラズマジェット照射ノズル1の本体部12には、ファン19で発生させた空気流を絞り込む流路16が形成されている。
【0031】
空気流発生部11にはモータ15、及びこのモータ15により駆動されるファン19が備えられている。モータ15には、電源ケーブル32が接続されている。さらに、空気流発生部11は、このファン19を取り巻く渦室(不図示)と、空気取り入れ口22が形成されている。
次に図1を参照しつつ、上記のように構成されたプラズマジェット発生装置10において、プラズマジェットを樹脂成形品20の表面21に照射する様子を説明する。本体部12の電極ロッド13と電極板14との間に、電源部2で発生した高電圧を印加すると、電極ロッド13と電極板14の空間にはアーク放電26が起こり、プラズマが発生する。このとき上記空間に、空気流発生部11から、高速の空気流を供給する。かくして、高速のプラズマジェット27がノズル1から照射され、樹脂成形品20の表面21に到達する。
【0032】
本発明に用いるプラズマジェット処理によれば、大気中において発生させたプラズマを利用するので、処理する樹脂成形品の表面に対して、熱的な影響を与えずに処理することが可能であり、処理した後、洗浄工程や乾燥工程が不要であり、すぐに別の処理を施すことができる。また、ドライプロセスであり、他の表面処理方法に比べて、制御や操作が簡単であるという利点がある。
【0033】
プラズマジェット処理のメカニズムとしては、プラズマ粒子により樹脂成形品の表面の分子結合が分解されることが挙げられる。処理された表面には、プラズマ粒子により分子レベルの凹凸が形成され、表面活性が向上する。また、その後に施す処理において、アンカー(投錨)効果も期待できる。
【0034】
プラズマジェットの処理能力は、プラズマジェットの照射出力、ヘッドと被処理面の距離、ヘッド送り速度と、処理回数によって決まる。本発明における処理条件としては、処理回数を1回とした場合、プラズマジェット照射出力が、0.1〜2.0kW、ヘッドと被処理面の距離は1〜50mmが好ましく、さらに好ましくは、1〜10mmである。この距離が1mm未満では、樹脂成形品の表面に熱的影響が及ぶ可能性があるので好ましくない。一方、50mmを超えると、プラズマジェットの処理効率が悪くなるので、これも好ましくない。
【0035】
また、ヘッド送り速度は、1〜200mm/秒の範囲が好ましく、さらに好ましくは1〜50mm/秒の範囲である。ヘッド送り速度が200mm/秒を超えると、処理能力が不足し、十分な処理効果が得られない。一方、ヘッド送り速度を1mm/秒未満にすると、処理面積を稼ぐことができず、効率的、経済的な処理ができなくなる。
【0036】
(4)プライマー
塗装や接着の前に、ノルボルネン系樹脂成形品の表面にプライマーを塗布してもよい。プライマーの種類は特に限定されるものではないが、例えば、塩素化ポリエチレン系プライマー、ウレタン系プライマー、エポキシ系プライマー、シリコーン系プライマー、アクリレート系プライマー等が挙げられる。これらの中でも、接着剤としてポリウレタン系接着剤を用いる場合は、ウレタン系プライマー等のイソシアナート基を含有するものが好ましく使用される。
【0037】
(5)接着
反応射出成形されたノルボルネン系樹脂成形品と接着させるべき被着体は、特に限定されるものではないが、例えば、別のノルボルネン系樹脂成形品、塩化ビニル樹脂成形品、ウレタン系樹脂成形品、エポキシ系樹脂成形品等が挙げられる。接着剤としては、通常の合成樹脂接着用のものでよく、例えば、ポリウレタン系接着剤(1液型又は2液型)、エポキシ樹脂系接着剤(1液型又は2液型)、ポリサルファイド系接着剤、シリコーン系樹脂接着剤(1液型又は2液型)、変成シリコーン系接着剤、エポキシ−変成シリコーン系接着剤、ブチルゴム系接着剤等を挙げることができる。このうちコストや作業性に優れ、また特に成形品を水槽や浄化槽に使用する場合には、シール性、強度、応力緩和性に優れるとの観点からポリウレタン系接着剤が好ましく用いられる。
【0038】
(6)塗装
塗装は常法により行うことができる。使用される塗料としては、表面張力3〜3.5×10−2N/m程度のものが用いられ、通常、アクリル・ウレタン系塗料が好ましく用いられる。
【0039】
(7)処理時間
本発明の表面処理方法においては、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、必要に応じて前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程を備え、前記反応射出成形終了後120時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは1時間以内に、これらの全ての工程を完了することが必須である。
【0040】
また、本発明の接着方法では、反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、必要に応じて前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程と、前記樹脂成形品同士、または該ノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤により接合する第3工程とを備え、前記反応射出成形終了後120時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは1時間以内に、これらの全ての工程を完了することが必須である。反応射出成形後120時間を越えてこれらの工程を実施しても本発明の効果を得ることができない。なお、上記120時間には、接着剤を塗布する工程までが含まれ、接着剤の硬化時間は含まれない。
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
反応射出成形法によって成形されたポリジシクロペンタジエンを幅25mm、長さ100mm、厚さ6mmの板状に切り出した。成形から10分後に、切り出した板(試験片)をアセトンで2回拭き、下記条件にてプラズマジェット照射による表面処理を施した。この処理面のぬれ張力をJIS K6768に準じて測定した結果を表1に示す。
<プラズマジェット処理の条件>
使用機種:Enercon社製三次元表面処理機「DYNE−A−MITE」
出力 :0.4kW
処理速度(ヘッド送り速度):20mm/秒
ヘッドと被処理面との距離:5mm
続いて、ウレタン系プライマー(イソシアナート基含有プライマー;横浜ゴム製M(RC−50E)J)を100μmの厚さで塗布し、10分間放置して乾燥させた。次いで、図2(A)に示すように、上記のアセトンによる処理、及びプラズマジェット処理を施しプライマーを塗布した2枚の試験片131、132の間に厚さ1mmのPP(ポリプロピレン)板133、134を2箇所配置し、接着剤(ウレタン系接着剤;横浜ゴム製JKS−100)135を接着面積が25mm×25mmになるように塗布した。そして図2(B)に示すように、PP板133、134を取り除いて、図3に示す接着試験サンプルを作成した。これらアセトンによる処理、プラズマジェット処理、プライマーの塗布、及び接着剤の塗布は、反応射出成形後約25分間に全てを実施した。接着剤が浮き上がらないように養生して、温度23℃、湿度50%の環境下で7日間硬化させたものを接着試験サンプルとした。
【0042】
(実施例2)
アセトンの代わりに酢酸エチルを用いて被接着面を拭いたこと以外は、実施例1と同様にして接着試験サンプルを作成した。
【0043】
(実施例3)
アセトンの代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いて被接着面を拭いたこと以外は、実施例1と同様にして接着試験サンプルを作成した。
【0044】
(比較例1)
アセトン処理及びプラズマジェット処理を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして接着試験サンプルを作成し、接着試験サンプルを作成した。
【0045】
(比較例2)
アセトン処理を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして接着試験サンプルを作成し、接着試験サンプルを作成した。
【0046】
(比較例3)
プラズマジェット処理を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして接着試験サンプルを作成した。
【0047】
(参考例)
アセトンによる処理、プライマーの塗布、及び接着剤の塗布を反応射出成形後成形品を屋外に140時間放置してから実施した。プラズマジェット処理は行わなかった。
【0048】
(評価試験)
これら実施例1〜3、比較例1〜3、及び参考例の接着試験サンプルを温度23℃、湿度50%の環境下で、図2の矢印の方向に5mm/秒の速度で引張り試験を行い、試験力を得た。引張り剪断強度は、得られた試験力を接着面積で割り返して算出した。また、接着剤の凝集破壊率は引張り試験を行った後の接着剤の剥がれ方を(凝集破壊面積/(凝集破壊面積+界面破壊面積))で表される、全接着面積に対する凝集破壊面積の割合として評価した。ここで、凝集破壊とは両方の試験片に接着剤が残っている状態をいい、界面破壊とはポリジシクロペンタジエンとプライマーとの界面、あるいはプライマーと接着剤との界面で剥がれている状態をいう。凝集破壊率が高いほど各々の界面における接着力が強いことを示す。以上の評価結果をまとめて表1に記載した。
【表1】
Figure 2004269742
【0049】
実施例1〜3では、反応射出成形後25分間に溶剤処理とプラズマジェット処理を併用して実施することにより、被処理面のぬれ張力が増大し、表面活性が向上していることが分かる。また、接着試験サンプルの引張り剪断強度及び接着剤の凝集破壊率が向上し、良好な接着性能が発現されている。これに対し、比較例1では、溶剤処理とプラズマジェット処理を行っていないため、引張り剪断強度及び接着剤の凝集破壊率が実施例よりもそれぞれ約25%、及び40%低下した。また、比較例2では、反応射出成形後25分以内に全ての処理を行っているものの、溶剤処理を行っていないため、引張り剪断強度及び接着剤の凝集破壊率が実施例の値よりもそれぞれ約20%及び15%低下した。また、比較例3では、反応射出成形後25分以内に全ての処理を行っているものの、プラズマジェット処理を行っていないため、引張り剪断強度及び接着剤の凝集破壊率が実施例の値よりもそれぞれ約10%及び5%低下した。
【0050】
また、参考例では、本発明の値と同程度に引張り剪断強度及び接着剤の凝集破壊率が得られている。したがって、従来十分な接着強度を得るのに120時間を超える時間を要していたが、本発明の方法により反応射出成型後120時間以内に、ケトン系溶剤またはエステル系溶剤による処理およびプラズマジェット処理を実施すれば、従来と同等の接着強度を得ることができ、生産時間を短縮できることが確認された。
【0051】
以上、現時点においてもっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態、実施例に関連して説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で変更可能である。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被塗装面、接着面の研磨や長期放置をする必要がなく、塗装に際して塗膜ののりを良くし、成形品同士や他の被着体との接合を施したときに、十分な接着性能を効率よく発現させる、生産性の高いノルボルネン系樹脂の表面処理方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマジェットの発生装置を示す図である。
【図2】接着試験サンプルの作成方法を示す図である。
【図3】接着試験サンプルを示す図である。
【符号の説明】
1 照射ノズル
2 電源部
3 ケーブル
10 プラズマジェットの発生装置
11 空気流発生部
12 本体部
13 電極ロッド
14 電極板
15 モータ
16 流路
19 ファン
20 樹脂成形品
21 表面
22 空気取り入れ口
26 アーク放電
27 プラズマジェット
31 高電圧供給ケーブル
32 電源ケーブル
131、132 試験片
133、134 ポリプロピレン板
135 接着剤

Claims (11)

  1. 反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品の表面処理方法であって、
    前記ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、
    前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、を備え、
    前記反応射出成形終了後120時間以内に、全ての工程を完了する、表面処理方法。
  2. 前記第2工程の後に、さらに前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
  3. 前記エネルギー線照射処理は、プラズマジェット処理である請求項1または2に記載の表面処理方法。
  4. 前記プラズマジェット処理は、出力0.1〜2.0kW、プラズマジェット照射ヘッド送り速度1〜200mm/秒、前記ヘッドと前記樹脂成形品の表面との距離1〜50mmの条件のもとに行われる請求項3に記載の表面処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により表面処理を施されたノルボルネン系樹脂成形品。
  6. 請求項5に記載のノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤により接合することを特徴とするノルボルネン系樹脂成形品の接着方法。
  7. 反応射出成形により得られたノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着する方法であって、
    前記ノルボルネン系樹脂成形品の表面をケトン系溶剤、またはエステル系溶剤の少なくとも一種を含む有機溶剤で処理する第1工程と、
    前記樹脂成形品の表面にエネルギー線照射処理を行う第2工程と、
    前記ノルボルネン系樹脂成形品と他の被着体とを接着剤により接合する第3工程と、を備え、
    前記反応射出成形終了後120時間以内に、全ての工程を完了する、接着方法。
  8. 前記第2工程と第3工程との間に、さらに前記樹脂成形品の表面にプライマーを塗布する工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の接着方法。
  9. 前記エネルギー線照射処理はプラズマジェット処理である請求項7または8に記載の接着方法。
  10. 前記プラズマジェット処理は、出力0.1〜2.0kW、プラズマジェット照射ヘッド送り速度1〜200mm/秒、前記ヘッドと前記樹脂成形品の表面との距離1〜50mmの条件のもとに行われる請求項9に記載の接着方法。
  11. 前記接着剤は、ポリウレタン系接着剤であり、前記プライマーは、イソシアナート基を含有するものであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の接着方法。
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