JP2004269715A - 固体高分子電解質及びその製造方法並びに固体高分子型燃料電池 - Google Patents
固体高分子電解質及びその製造方法並びに固体高分子型燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】固体高分子型燃料電池等の過酷な条件下で使用される電気化学デバイスで使用する場合であっても、劣化がおきにくい耐久性に優れた固体高分子電解質及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成し、フッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られる。フッ素系電解質又はその前駆体のスルホン化には、亜硫酸ガス、濃硫酸、発煙硫酸及びクロロスルホン酸の内の少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成し、フッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られる。フッ素系電解質又はその前駆体のスルホン化には、亜硫酸ガス、濃硫酸、発煙硫酸及びクロロスルホン酸の内の少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質及びその製造方法、並びに固体高分子型燃料電池に関し、さらに詳しくは、固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等として好適な固体高分子電解質及びその製造方法、並びにこのような固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ、燃料(水素、アルコール、天然ガス等)及び酸化剤(酸素、空気)を供給し、それらが両電極(アノード、カソード)で起きる電気化学反応によって発電を行うものである。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層への反応ガスの供給と、触媒層との間で電子の授受を行うためのものであり、カーボン繊維、カーボンペーパー等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
【0003】
このような用途に用いられる固体高分子電解質は、高分子鎖内にC−F結合を含まない炭化水素系電解質と、C−F結合を含むフッ素系電解質に大別される。これらの内、フッ素系電解質(特に、高分子鎖内にC−H結合を含まない全フッ素系電解質(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)は、一般に高価であるが、耐酸化性に優れていることが知られている。
【0004】
一方、炭化水素系電解質は、安価であるが、耐酸化性に劣っており、これを固体高分子型燃料電池に用いた場合には、劣化が進むことが従来から知られていた。そのため、固体高分子電解質の低コスト化、耐酸化性の向上等を図るために、従来から種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、炭化水素系電解質の耐酸化性を向上させるために、炭化水素系電解質にリンを含む官能基を導入した高耐久性固体高分子電解質、及び炭化水素系電解質にポリビニルホスホン酸、ホスホン酸型ポリエーテルスルホン等のリンを含む化合物を混合した固体高分子電解質が本願出願人により開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、固体高分子電解質ではないが、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)共重合体の末端にある活性基が酸化、加水分解及び/又は熱分解することにより発生するHFによる金属の腐食を抑制するために、TFE/PAVE共重合体をフッ素ガスで処理する点が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−11755号公報
【特許文献2】
特開2000−11756号公報
【特許文献3】
米国特許第4,743,658号公報第3欄第37行〜第62行
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
全フッ素系電解質の一種であるパーフルオロスルホン酸ポリマは、通常、
−{CF(−Rf−SO3H)−CF2}n−{CF2−CF2}m−
(但し、Rfは、パーフルオロアルキル基)
で表される化学式を有している。すなわち、全フッ素の主鎖に側鎖がついており、かつ側鎖末端にスルホン酸基がついた構造になっている。
【0009】
パーフルオロスルホン酸ポリマは、その構造のほとんどが高耐久性のフッ素化カーボンからなるので、これを固体高分子型燃料電池に使用した場合においても、ほとんど劣化を受けないと従来は考えられていた。しかしながら、詳しく調べてみると、全フッ素系電解質であっても、固体高分子型燃料電池に使用すると劣化する場合があり、耐久性が不十分であることが分かってきた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、固体高分子型燃料電池等の過酷な条件下で使用される電気化学デバイスで使用する場合であっても、劣化がおきにくい耐久性に優れた固体高分子電解質及びその製造方法を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような耐久性に優れた固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されるフッ素系電解質と、該フッ素系電解質を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基とを備えていることを要旨とする。
【0012】
また、本発明に係る固体高分子電解質の製造方法は、酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成する第1工程と、前記フッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化する第2工程とを備えていることを要旨とする。
【0013】
さらに、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、本発明に係る固体高分子電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質として用いたことを要旨とする。
【0014】
酸基又はその前駆体を有するモノマの重合により得られるフッ素系電解質は、その高分子鎖の末端に活性基が残っている場合がある。このようなフッ素系電解質を固体高分子型燃料電池に使用すると、活性基が原因となって高分子鎖の分解を引き起こす。これに対し、活性基をスルホン酸基に変換すると、活性基に起因する高分子鎖の分解が抑制され、耐久性が向上する。また、活性基のスルホン化反応は、相対的に穏やかに進行するので、スルホン化反応の際にフッ素系電解質の物性及び/又は耐久性を悪化させることもない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されるフッ素系電解質と、フッ素系電解質を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基とを備えている。
【0016】
本発明において、「フッ素系電解質」とは、高分子鎖のいずれかにC−F結合を有しているものをいう。フッ素系電解質は、C−F結合を含み、かつC−H結合を含まないもの(以下、これを「全フッ素系電解質」という。)であっても良く、あるいは、C−F結合とC−H結合の双方を含むもの(以下、これを「部分フッ素系電解質」という。)でも良い。また、フッ素系電解質には、C−Cl結合やその他の結合(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等)が含まれていても良い。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子電解質の主要部分を構成するフッ素系電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマ(以下、これを「第1モノマ」という。)を用いて合成されたものからなる。「酸基」とは、水溶液中において酸性を呈する官能基を言う。また、「酸基の前駆体」とは、加水分解、酸化等の化学変換により、容易に酸基に変換可能な官能基を言う。
【0018】
第1モノマに含まれる酸基としては、具体的には、スルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO3H2)等が好適な一例として挙げられる。また、酸基の前駆体としては、具体的には、これらの酸基のアルカリ金属塩、ハライド体等が好適な一例として挙げられる。第1モノマには、これらの酸基又はその前駆体の内、1種類のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0019】
また、フッ素系電解質は、1種又は2種以上の第1モノマのみからなる単独重合体又は共重合体であっても良く、あるいは、1種又は2種以上の第1モノマと、1種又は2種以上の第1モノマ以外のモノマ(以下、これを「第2モノマ」という。)との共重合体であっても良い。
【0020】
第1モノマとしては、具体的には、ナフィオン(登録商標)モノマ(CF2=CF−O−(CF2CF(CF3)−O)m−CF2CF2−SO3H)又はその前駆体(アルカリ金属塩、ハライド体等)、CF2=CF−O−{CF2CF(CH3)−O}m−CF2CF2−SO2F等が好適な一例として挙げられる。
【0021】
第2モノマとしては、具体的には、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、エチレン(CH2=CH2)、CF2=CFCF3等が好適な一例として挙げられる。
【0022】
さらに、上述した第1モノマ及び第2モノマから合成されるフッ素系電解質としては、具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)等が好適な一例として挙げられる。
【0023】
「活性基」とは、重合反応性の高いモノマを順次付加して高分子化させる際に、高分子鎖の末端に形成される反応性の高い官能基又はラジカルをいう。活性基の種類は、モノマを重合する際に用いる試薬(重合開始剤、連鎖移動剤等)の種類によって異なる。一般に、全フッ素系電解質を合成する場合、高分子鎖の末端には、−COF、−COOH、−CF=CF2、−CONH2、−CH2OH、−CF2H、−CF2C2H5等の活性基が形成される。
【0024】
本発明に係る固体高分子電解質は、このような活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基を備えている。スルホン化の方法は、特に限定されるものではなく、有機物一般のスルホン化に用いられる周知の方法を用いることができる。
【0025】
さらに、本発明に係る固体高分子電解質は、高分子鎖の末端にある活性基がスルホン化されたフッ素系電解質のみからなるものであっても良く、あるいは、このようなフッ素系電解質と、これを補強する補強材との複合体であっても良い。
【0026】
補強材としては、具体的には、種々の材料からなる繊維、網、多孔体等が好適な一例として挙げられる。また、補強材の含有率は、特に限定されるものではなく、固体高分子電解質の用途、要求される特性等に応じて、最適な比率を選択すればよい。
【0027】
次に、本発明に係る固体高分子電解質の製造方法について説明する。本発明に係る固体高分子電解質は、第1工程と、第2工程とを備えている。
【0028】
第1工程は、酸基又はその前駆体を有するモノマを用いてフッ素系電解質又はその前駆体を合成する工程である。「フッ素系電解質の前駆体」とは、フッ素系電解質に含まれる酸基が酸基の前駆体になっているものをいう。モノマには、上述した1種若しくは2種以上の第1モノマ、又は、1種若しくは2種以上の第1モノマと1種若しくは2種以上の第2モノマとの混合物を用いる。
【0029】
また、モノマの重合方法は、特に限定されるものではなく、熱重合、光重合、放射線重合、ラジカル重合等、周知の方法を用いることができる。また、重合条件は、特に限定されるものではなく、第1モノマ及び第2モノマの種類、フッ素系電解質に要求される特性等に応じて、最適な条件を選択すればよい。
【0030】
第2工程は、第1工程で得られたフッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子の末端にある活性基をスルホン化する工程である。活性基をスルホン化する方法としては、具体的には、合成されたフッ素系電解質又はその前駆体と、亜硫酸ガス、濃硫酸、発煙濃硫酸及びクロロスルホン酸の内の少なくとも1つとを接触させる方法が好適である。
【0031】
スルホン化の条件は、特に限定されるものではなく、スルホン化剤の種類、フッ素系電解質又はその前駆体の組成、フッ素系電解質に要求される特性等に応じて、最適な条件を選択すればよい。
【0032】
なお、第1工程においてフッ素系電解質の前駆体が合成される場合には、前駆体を酸型に変換する必要があるが、酸型への変換は、第2工程の前に行っても良く、あるいは、第2工程の後に行っても良い。また、酸型への変換方法は、特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができる。
【0033】
また、フッ素系電解質の末端にある活性基をスルホン化した固体高分子電解質と補強材とを複合化させる場合、複合化は、いずれの段階で行っても良い。例えば、第1工程において、補強材にモノマを含浸させ、補強材内部においてフッ素系電解質又はその前駆体を合成すると同時に複合化させても良い。あるいは、フッ素系電解質又はその前駆体を合成した後であって、第2工程の前又は後のいずれかの段階で複合化させても良い。また、第1工程においてフッ素系電解質の前駆体が合成される場合には、前駆体を酸型に変換する前又は後のいずれの段階で複合化させても良い。
【0034】
複合化の方法は、特に限定されるものではなく、周知の方法を用いることができる。具体的には、フッ素系電解質又はその前駆体を熱溶融させて補強材に含浸させる方法、フッ素系電解質又はその前駆体を溶媒に溶解させて補強材に含浸させた後、溶媒を除去する方法、熱溶融又は溶媒に溶解させたフッ素系電解質と補強剤とを混合する方法等、が好適な一例として挙げられる。
【0035】
次に、本発明に係る固体高分子電解質の作用について説明する。高分子化合物は、通常、重合反応性の高いモノマを順次付加していくことによって合成されるが、高分子鎖の末端には、反応性の高い官能基又はラジカル(活性基)がそのまま残っていることがある。特に、フッ素系高分子化合物の場合には、上述した特許文献3に開示されているように、活性基が酸化、加水分解等によりHFを放出し、金属を腐食させることが知られていた。
【0036】
一方、フッ素系電解質、特に全フッ素系電解質は、化学的安定性が高く、燃料電池に使用した場合であっても、ほとんど劣化しないと考えられていた。しかしながら、全フッ素系電解質であっても、使用環境によっては劣化が起こることがわかった。さらに、詳しく調べてみると、その劣化は、高分子鎖の末端にある活性基から進行することが明らかとなった。この点は、本願発明者らによって始めて見出されたものである。
【0037】
この問題を解決するために、特許文献3に記載されているように、フッ素系電解質をフッ素ガスで処理し、不安定な活性基を安定な−CF3基で封止することも考えられる。しかしながら、特許文献3に記載の方法をフッ素系電解質に適用する場合において、フッ素ガス濃度、圧力、温度等の反応条件を調整して反応を穏やかに進めようとすると、活性基を完全に封止できないという問題がある。
【0038】
一方、反応条件を強くすると、高分子の分解、低分子化などの副反応が起き、高分子の物性及び/又は耐久性を悪化させるという問題がある。これは、それ自体極めて反応性の高いフッ素ガスを用いているため、末端の活性基が封止されるだけでなく、フッ素系電解質を構成する主鎖及び/又は側鎖においても化学結合が開裂し、その両端にフッ素が付加反応するためと考えられる。
【0039】
これに対し、末端に活性基を有するフッ素系電解質に対してスルホン化を行うと、活性基が安定なスルホン酸基に変換される。そのため、活性基に起因するフッ素系電解質の劣化を抑制することができる。また、スルホン化反応自体は、相対的に穏やかに進行し、反応時に高分子鎖を開裂させることがないので、フッ素系電解質の物性及び/又は耐久性を悪化させることもない。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(酸型)を元になる電解質とした。これをガラス製密封容器に入れ、内部のガスを亜硫酸ガス(SO3)と置換し、室温で24時間放置した。次に、発熱を抑えるために、内部のガスを乾燥空気に置換した後、得られた膜を大気中に取り出し、最後に充分に水洗した。
【0041】
(実施例2)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(Na型)を元になる電解質とした。これをガラス製密封容器に入れ、濃硫酸に浸漬し、120℃で24時間放置した。得られた膜を常法により酸型に置換し、最後に充分に水洗した。
【0042】
(実施例3)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(スルホニルフロライド型)を元になる電解質とした。これをガラス製密閉容器にいれ、発煙硫酸に浸漬し、室温で24時間放置した。次に、発熱を抑えるために、得られた膜を濃硫酸から順次濃度の低い硫酸溶液で洗浄し、最後に十分に水洗した。さらに、得られた膜を常法により加水分解(ケン化)した後、常法により酸型に変換し、最後に充分に水洗した。
【0043】
(実施例4)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(スルホニルフロライド型)を元になる電解質とした。これをガラス製密閉容器に入れ、クロロスルホン酸に浸漬し、室温で24時間放置した。次に、発熱を抑えるために、得られた膜を濃硫酸から順次濃度の薄い硫酸溶液で洗浄し、最後に十分に水洗した。さらに、得られた膜を常法により加水分解(ケン化)した後、常法により酸型に置換し、最後に充分に水洗した。
【0044】
(比較例1)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(酸型)を水洗し、試験に用いた。
【0045】
実施例1〜4及び比較例1で得られた膜を、それぞれ、過酸化水素濃度3%のフェントン試薬に浸漬し、80℃で24時間放置した。試験後の浸漬液中のフッ化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィー法により測定した。表1に、その結果を示す。表1より、比較例1の場合、フッ化物イオンが大量に溶出しているのに対し、実施例1〜4では、フッ化物イオンの溶出がほとんど抑えられているのがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
次に、実施例1〜4及び比較例1で得られた各電解質膜を用いて、膜電極接合体(MEA)を作製した。なお、触媒層内電解質には、それぞれ、電解質膜と同一の材質を用いた。得られたMEAを用いて燃料電池耐久試験を行ったところ、比較例1のMEAでは、2000時間程度から性能の劣化が見られたのに対し、実施例1〜4のMEAでは、いずれも5000時間を経ても性能の劣化は見られなかった。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0049】
例えば、上記実施例においては、本発明に係る固体高分子電解質を固体高分子型燃料電池用の電解質膜として用いた例について主に説明したが、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、各種電解装置、酸素濃縮器、水素濃縮器、センサ類等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、触媒層内電解質等としても使用することができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されたフッ素系電解質の末端にある活性基がスルホン酸基に変換されているので、活性基に起因する性能の劣化が抑制されるという効果がある。また、活性基のスルホン化反応は、相対的に穏やかに進行するので、反応時におけるフッ素系電解質の物性及び/又は耐久性の悪化を抑制できるという効果がある。さらに、末端の活性基がスルホン化されたフッ素系電解質と、補強材とを複合化させると、耐久性がさらに向上するという効果がある。
【0051】
また、本発明に係る固体高分子電解質の製造方法は、酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成し、次いで末端の活性基をスルホン化しているので、フッ素系電解質の物性及び/又は耐久性を悪化させることなく、活性基に起因する性能の劣化を抑制できるという効果がある。
【0052】
さらに、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、このようにして得られた固体高分子電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質として用いているので、従来の電解質を用いた場合に比べて、耐久性が向上するという効果がある。
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質及びその製造方法、並びに固体高分子型燃料電池に関し、さらに詳しくは、固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等として好適な固体高分子電解質及びその製造方法、並びにこのような固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ、燃料(水素、アルコール、天然ガス等)及び酸化剤(酸素、空気)を供給し、それらが両電極(アノード、カソード)で起きる電気化学反応によって発電を行うものである。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層への反応ガスの供給と、触媒層との間で電子の授受を行うためのものであり、カーボン繊維、カーボンペーパー等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
【0003】
このような用途に用いられる固体高分子電解質は、高分子鎖内にC−F結合を含まない炭化水素系電解質と、C−F結合を含むフッ素系電解質に大別される。これらの内、フッ素系電解質(特に、高分子鎖内にC−H結合を含まない全フッ素系電解質(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)は、一般に高価であるが、耐酸化性に優れていることが知られている。
【0004】
一方、炭化水素系電解質は、安価であるが、耐酸化性に劣っており、これを固体高分子型燃料電池に用いた場合には、劣化が進むことが従来から知られていた。そのため、固体高分子電解質の低コスト化、耐酸化性の向上等を図るために、従来から種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、炭化水素系電解質の耐酸化性を向上させるために、炭化水素系電解質にリンを含む官能基を導入した高耐久性固体高分子電解質、及び炭化水素系電解質にポリビニルホスホン酸、ホスホン酸型ポリエーテルスルホン等のリンを含む化合物を混合した固体高分子電解質が本願出願人により開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、固体高分子電解質ではないが、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)共重合体の末端にある活性基が酸化、加水分解及び/又は熱分解することにより発生するHFによる金属の腐食を抑制するために、TFE/PAVE共重合体をフッ素ガスで処理する点が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−11755号公報
【特許文献2】
特開2000−11756号公報
【特許文献3】
米国特許第4,743,658号公報第3欄第37行〜第62行
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
全フッ素系電解質の一種であるパーフルオロスルホン酸ポリマは、通常、
−{CF(−Rf−SO3H)−CF2}n−{CF2−CF2}m−
(但し、Rfは、パーフルオロアルキル基)
で表される化学式を有している。すなわち、全フッ素の主鎖に側鎖がついており、かつ側鎖末端にスルホン酸基がついた構造になっている。
【0009】
パーフルオロスルホン酸ポリマは、その構造のほとんどが高耐久性のフッ素化カーボンからなるので、これを固体高分子型燃料電池に使用した場合においても、ほとんど劣化を受けないと従来は考えられていた。しかしながら、詳しく調べてみると、全フッ素系電解質であっても、固体高分子型燃料電池に使用すると劣化する場合があり、耐久性が不十分であることが分かってきた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、固体高分子型燃料電池等の過酷な条件下で使用される電気化学デバイスで使用する場合であっても、劣化がおきにくい耐久性に優れた固体高分子電解質及びその製造方法を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような耐久性に優れた固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されるフッ素系電解質と、該フッ素系電解質を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基とを備えていることを要旨とする。
【0012】
また、本発明に係る固体高分子電解質の製造方法は、酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成する第1工程と、前記フッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化する第2工程とを備えていることを要旨とする。
【0013】
さらに、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、本発明に係る固体高分子電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質として用いたことを要旨とする。
【0014】
酸基又はその前駆体を有するモノマの重合により得られるフッ素系電解質は、その高分子鎖の末端に活性基が残っている場合がある。このようなフッ素系電解質を固体高分子型燃料電池に使用すると、活性基が原因となって高分子鎖の分解を引き起こす。これに対し、活性基をスルホン酸基に変換すると、活性基に起因する高分子鎖の分解が抑制され、耐久性が向上する。また、活性基のスルホン化反応は、相対的に穏やかに進行するので、スルホン化反応の際にフッ素系電解質の物性及び/又は耐久性を悪化させることもない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されるフッ素系電解質と、フッ素系電解質を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基とを備えている。
【0016】
本発明において、「フッ素系電解質」とは、高分子鎖のいずれかにC−F結合を有しているものをいう。フッ素系電解質は、C−F結合を含み、かつC−H結合を含まないもの(以下、これを「全フッ素系電解質」という。)であっても良く、あるいは、C−F結合とC−H結合の双方を含むもの(以下、これを「部分フッ素系電解質」という。)でも良い。また、フッ素系電解質には、C−Cl結合やその他の結合(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等)が含まれていても良い。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子電解質の主要部分を構成するフッ素系電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマ(以下、これを「第1モノマ」という。)を用いて合成されたものからなる。「酸基」とは、水溶液中において酸性を呈する官能基を言う。また、「酸基の前駆体」とは、加水分解、酸化等の化学変換により、容易に酸基に変換可能な官能基を言う。
【0018】
第1モノマに含まれる酸基としては、具体的には、スルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO3H2)等が好適な一例として挙げられる。また、酸基の前駆体としては、具体的には、これらの酸基のアルカリ金属塩、ハライド体等が好適な一例として挙げられる。第1モノマには、これらの酸基又はその前駆体の内、1種類のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0019】
また、フッ素系電解質は、1種又は2種以上の第1モノマのみからなる単独重合体又は共重合体であっても良く、あるいは、1種又は2種以上の第1モノマと、1種又は2種以上の第1モノマ以外のモノマ(以下、これを「第2モノマ」という。)との共重合体であっても良い。
【0020】
第1モノマとしては、具体的には、ナフィオン(登録商標)モノマ(CF2=CF−O−(CF2CF(CF3)−O)m−CF2CF2−SO3H)又はその前駆体(アルカリ金属塩、ハライド体等)、CF2=CF−O−{CF2CF(CH3)−O}m−CF2CF2−SO2F等が好適な一例として挙げられる。
【0021】
第2モノマとしては、具体的には、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、エチレン(CH2=CH2)、CF2=CFCF3等が好適な一例として挙げられる。
【0022】
さらに、上述した第1モノマ及び第2モノマから合成されるフッ素系電解質としては、具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)等が好適な一例として挙げられる。
【0023】
「活性基」とは、重合反応性の高いモノマを順次付加して高分子化させる際に、高分子鎖の末端に形成される反応性の高い官能基又はラジカルをいう。活性基の種類は、モノマを重合する際に用いる試薬(重合開始剤、連鎖移動剤等)の種類によって異なる。一般に、全フッ素系電解質を合成する場合、高分子鎖の末端には、−COF、−COOH、−CF=CF2、−CONH2、−CH2OH、−CF2H、−CF2C2H5等の活性基が形成される。
【0024】
本発明に係る固体高分子電解質は、このような活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基を備えている。スルホン化の方法は、特に限定されるものではなく、有機物一般のスルホン化に用いられる周知の方法を用いることができる。
【0025】
さらに、本発明に係る固体高分子電解質は、高分子鎖の末端にある活性基がスルホン化されたフッ素系電解質のみからなるものであっても良く、あるいは、このようなフッ素系電解質と、これを補強する補強材との複合体であっても良い。
【0026】
補強材としては、具体的には、種々の材料からなる繊維、網、多孔体等が好適な一例として挙げられる。また、補強材の含有率は、特に限定されるものではなく、固体高分子電解質の用途、要求される特性等に応じて、最適な比率を選択すればよい。
【0027】
次に、本発明に係る固体高分子電解質の製造方法について説明する。本発明に係る固体高分子電解質は、第1工程と、第2工程とを備えている。
【0028】
第1工程は、酸基又はその前駆体を有するモノマを用いてフッ素系電解質又はその前駆体を合成する工程である。「フッ素系電解質の前駆体」とは、フッ素系電解質に含まれる酸基が酸基の前駆体になっているものをいう。モノマには、上述した1種若しくは2種以上の第1モノマ、又は、1種若しくは2種以上の第1モノマと1種若しくは2種以上の第2モノマとの混合物を用いる。
【0029】
また、モノマの重合方法は、特に限定されるものではなく、熱重合、光重合、放射線重合、ラジカル重合等、周知の方法を用いることができる。また、重合条件は、特に限定されるものではなく、第1モノマ及び第2モノマの種類、フッ素系電解質に要求される特性等に応じて、最適な条件を選択すればよい。
【0030】
第2工程は、第1工程で得られたフッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子の末端にある活性基をスルホン化する工程である。活性基をスルホン化する方法としては、具体的には、合成されたフッ素系電解質又はその前駆体と、亜硫酸ガス、濃硫酸、発煙濃硫酸及びクロロスルホン酸の内の少なくとも1つとを接触させる方法が好適である。
【0031】
スルホン化の条件は、特に限定されるものではなく、スルホン化剤の種類、フッ素系電解質又はその前駆体の組成、フッ素系電解質に要求される特性等に応じて、最適な条件を選択すればよい。
【0032】
なお、第1工程においてフッ素系電解質の前駆体が合成される場合には、前駆体を酸型に変換する必要があるが、酸型への変換は、第2工程の前に行っても良く、あるいは、第2工程の後に行っても良い。また、酸型への変換方法は、特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができる。
【0033】
また、フッ素系電解質の末端にある活性基をスルホン化した固体高分子電解質と補強材とを複合化させる場合、複合化は、いずれの段階で行っても良い。例えば、第1工程において、補強材にモノマを含浸させ、補強材内部においてフッ素系電解質又はその前駆体を合成すると同時に複合化させても良い。あるいは、フッ素系電解質又はその前駆体を合成した後であって、第2工程の前又は後のいずれかの段階で複合化させても良い。また、第1工程においてフッ素系電解質の前駆体が合成される場合には、前駆体を酸型に変換する前又は後のいずれの段階で複合化させても良い。
【0034】
複合化の方法は、特に限定されるものではなく、周知の方法を用いることができる。具体的には、フッ素系電解質又はその前駆体を熱溶融させて補強材に含浸させる方法、フッ素系電解質又はその前駆体を溶媒に溶解させて補強材に含浸させた後、溶媒を除去する方法、熱溶融又は溶媒に溶解させたフッ素系電解質と補強剤とを混合する方法等、が好適な一例として挙げられる。
【0035】
次に、本発明に係る固体高分子電解質の作用について説明する。高分子化合物は、通常、重合反応性の高いモノマを順次付加していくことによって合成されるが、高分子鎖の末端には、反応性の高い官能基又はラジカル(活性基)がそのまま残っていることがある。特に、フッ素系高分子化合物の場合には、上述した特許文献3に開示されているように、活性基が酸化、加水分解等によりHFを放出し、金属を腐食させることが知られていた。
【0036】
一方、フッ素系電解質、特に全フッ素系電解質は、化学的安定性が高く、燃料電池に使用した場合であっても、ほとんど劣化しないと考えられていた。しかしながら、全フッ素系電解質であっても、使用環境によっては劣化が起こることがわかった。さらに、詳しく調べてみると、その劣化は、高分子鎖の末端にある活性基から進行することが明らかとなった。この点は、本願発明者らによって始めて見出されたものである。
【0037】
この問題を解決するために、特許文献3に記載されているように、フッ素系電解質をフッ素ガスで処理し、不安定な活性基を安定な−CF3基で封止することも考えられる。しかしながら、特許文献3に記載の方法をフッ素系電解質に適用する場合において、フッ素ガス濃度、圧力、温度等の反応条件を調整して反応を穏やかに進めようとすると、活性基を完全に封止できないという問題がある。
【0038】
一方、反応条件を強くすると、高分子の分解、低分子化などの副反応が起き、高分子の物性及び/又は耐久性を悪化させるという問題がある。これは、それ自体極めて反応性の高いフッ素ガスを用いているため、末端の活性基が封止されるだけでなく、フッ素系電解質を構成する主鎖及び/又は側鎖においても化学結合が開裂し、その両端にフッ素が付加反応するためと考えられる。
【0039】
これに対し、末端に活性基を有するフッ素系電解質に対してスルホン化を行うと、活性基が安定なスルホン酸基に変換される。そのため、活性基に起因するフッ素系電解質の劣化を抑制することができる。また、スルホン化反応自体は、相対的に穏やかに進行し、反応時に高分子鎖を開裂させることがないので、フッ素系電解質の物性及び/又は耐久性を悪化させることもない。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(酸型)を元になる電解質とした。これをガラス製密封容器に入れ、内部のガスを亜硫酸ガス(SO3)と置換し、室温で24時間放置した。次に、発熱を抑えるために、内部のガスを乾燥空気に置換した後、得られた膜を大気中に取り出し、最後に充分に水洗した。
【0041】
(実施例2)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(Na型)を元になる電解質とした。これをガラス製密封容器に入れ、濃硫酸に浸漬し、120℃で24時間放置した。得られた膜を常法により酸型に置換し、最後に充分に水洗した。
【0042】
(実施例3)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(スルホニルフロライド型)を元になる電解質とした。これをガラス製密閉容器にいれ、発煙硫酸に浸漬し、室温で24時間放置した。次に、発熱を抑えるために、得られた膜を濃硫酸から順次濃度の低い硫酸溶液で洗浄し、最後に十分に水洗した。さらに、得られた膜を常法により加水分解(ケン化)した後、常法により酸型に変換し、最後に充分に水洗した。
【0043】
(実施例4)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(スルホニルフロライド型)を元になる電解質とした。これをガラス製密閉容器に入れ、クロロスルホン酸に浸漬し、室温で24時間放置した。次に、発熱を抑えるために、得られた膜を濃硫酸から順次濃度の薄い硫酸溶液で洗浄し、最後に十分に水洗した。さらに、得られた膜を常法により加水分解(ケン化)した後、常法により酸型に置換し、最後に充分に水洗した。
【0044】
(比較例1)
市販のナフィオン(登録商標)112膜(酸型)を水洗し、試験に用いた。
【0045】
実施例1〜4及び比較例1で得られた膜を、それぞれ、過酸化水素濃度3%のフェントン試薬に浸漬し、80℃で24時間放置した。試験後の浸漬液中のフッ化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィー法により測定した。表1に、その結果を示す。表1より、比較例1の場合、フッ化物イオンが大量に溶出しているのに対し、実施例1〜4では、フッ化物イオンの溶出がほとんど抑えられているのがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
次に、実施例1〜4及び比較例1で得られた各電解質膜を用いて、膜電極接合体(MEA)を作製した。なお、触媒層内電解質には、それぞれ、電解質膜と同一の材質を用いた。得られたMEAを用いて燃料電池耐久試験を行ったところ、比較例1のMEAでは、2000時間程度から性能の劣化が見られたのに対し、実施例1〜4のMEAでは、いずれも5000時間を経ても性能の劣化は見られなかった。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0049】
例えば、上記実施例においては、本発明に係る固体高分子電解質を固体高分子型燃料電池用の電解質膜として用いた例について主に説明したが、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、各種電解装置、酸素濃縮器、水素濃縮器、センサ類等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、触媒層内電解質等としても使用することができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係る固体高分子電解質は、酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されたフッ素系電解質の末端にある活性基がスルホン酸基に変換されているので、活性基に起因する性能の劣化が抑制されるという効果がある。また、活性基のスルホン化反応は、相対的に穏やかに進行するので、反応時におけるフッ素系電解質の物性及び/又は耐久性の悪化を抑制できるという効果がある。さらに、末端の活性基がスルホン化されたフッ素系電解質と、補強材とを複合化させると、耐久性がさらに向上するという効果がある。
【0051】
また、本発明に係る固体高分子電解質の製造方法は、酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成し、次いで末端の活性基をスルホン化しているので、フッ素系電解質の物性及び/又は耐久性を悪化させることなく、活性基に起因する性能の劣化を抑制できるという効果がある。
【0052】
さらに、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、このようにして得られた固体高分子電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質として用いているので、従来の電解質を用いた場合に比べて、耐久性が向上するという効果がある。
Claims (5)
- 酸基又はその前駆体を有するモノマから合成されるフッ素系電解質と、
該フッ素系電解質を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化することにより得られるスルホン酸基とを備えた固体高分子電解質。 - 前記フッ素系電解質を補強するための補強材をさらに備えた請求項1に記載の固体高分子電解質。
- 酸基又はその前駆体を有するモノマからフッ素系電解質又はその前駆体を合成する第1工程と、
前記フッ素系電解質又はその前駆体を構成する高分子鎖の末端にある活性基をスルホン化する第2工程とを備えた固体高分子電解質の製造方法。 - 前記第2工程は、亜硫酸ガス、濃硫酸、発煙濃硫酸及びクロロスルホン酸の内の少なくとも1つを用いて、前記活性基をスルホン化するものである請求項3に記載の固体高分子電解質の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の固体高分子電解質を電解質膜及び/又は触媒層内電解質として用いた固体高分子型燃料電池。
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JP2003063138A JP2004269715A (ja) | 2003-03-10 | 2003-03-10 | 固体高分子電解質及びその製造方法並びに固体高分子型燃料電池 |
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JP2006324193A (ja) * | 2005-05-20 | 2006-11-30 | Toyota Motor Corp | 燃料電池用電解質膜の製造方法及び燃料電池用電解質膜 |
-
2003
- 2003-03-10 JP JP2003063138A patent/JP2004269715A/ja active Pending
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