JP2004269697A - 有機エレクトロルミネッセンス素子材料およびそれを使用した有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平面光源や表示に使用される有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などに用いられる発光材料および高輝度の発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機物質を使用したEL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般にEL素子は、発光層および該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入され、電子が発光層において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0003】
従来の有機EL素子は、無機EL素子に比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。
近年、10V以下の低電圧で発光する高い蛍光量子効率を持った有機化合物を含有した薄膜を積層した有機EL素子が報告され、関心を集めている(非特許文献1参照)。この方法は、金属キレート錯体を発光層、アミン系化合物を正孔注入層に使用して、高輝度の緑色発光を得ており、6〜7Vの直流電圧で輝度は数1000cd/m2に達している。しかしながら、有機化合物の蒸着操作を伴うEL素子作成は、生産性に問題が有り、製造工程の簡略化、大面積化の観点から、塗布方式の素子作成が望ましい。
【0004】
生産性に有利な塗布方式のEL素子作成で使用されるEL素子の発光材料としては、ポリフェニレンビニレン系ポリマーが知られているが、(非特許文献2および3参照)、発光部をポリマー主鎖に持つため、発光材料の濃度制御が難しく、色調、発光強度の微妙な制御が難しい等の問題があった。同じく、塗布方式を用いるEL素子として、例えばポリビニルカルバゾール中に、低分子量色素を分散する素子(特許文献1参照)がある。色素種、色素濃度を任意に変更出来るので、色調、発光強度の調整が比較的容易であるが、駆動電圧が高く、連続駆動時の耐久性に問題がある。
【0005】
塗布方式に用いる有機発光素子材料として溶解性に優れた発光ポリマー(特許文献2〜4参照)を、また塗布方式に用いる電荷輸送材料として電荷輸送性ポリエーテルの提案がある(特許文献5参照)。これらの材料は塗布による薄膜化が可能であり、エレクトロルミネセンス素子の発光が開示されている。しかしながら、発光特性に乏しく、耐久性にも問題があった。
赤色発光する発光材料としては、DPP(ジケトピロロピロール)骨格を含有する発光ポリマー(特許文献6参照)がある。しかし、このポリマーはDPPと1:1で重合すると汎用性溶媒に対する溶解性が乏しくなり、製膜性も悪い。従って、EL素子の発光面に、輝度ムラが見られる。
【0006】
【非特許文献1】アプライド・フィジクス・レターズ、51巻、913ページ、1987年
【非特許文献2】アドバンストマテーリアルズ 2巻、4ページ 1992年
【非特許文献3】アドバンストマテーリアルズ 9巻、551ページ 1997年
【特許文献1】特開平4−212286号公報
【特許文献2】特開平5−320635号公報
【特許文献3】特開平10−335065号公報
【特許文献4】特開平8−259678号公報
【特許文献5】特開2002−75654号公報
【特許文献6】特開2001−98054号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、発光輝度が高く、長い発光寿命を持つ有機EL素子用発光材料およびそれを用いた有機EL素子の提供にある。本発明者らが鋭意検討した結果、一般式[1]で示される特定の共役ユニットを有するポリマーを発光材料として使用する事により、有機EL素子は発光輝度および発光効率が飛躍的に向上することを見いだした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、共役ユニットと、非共役ユニットからなる重量平均分子量1000以上のポリマーからなる有機エレクトロルミネッセンス素子材料であって、非共役ユニットが、下記一般式[1]で示されるユニットを含む有機エレクトロルミネッセンス素子材料に関する。
一般式[1]
【0010】
【化3】
【0011】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、アルキル基、炭素数6から30のアリール基又は複素環式基を表す。]
【0012】
また、本発明は、非共役ユニットが、さらに、一般式[1]以外の下記一般式[2]で示されるユニットのいずれかを含む上記エレクトロルミネッセンス素子材料に関する。
一般式[2]
【0013】
【化4】
【0014】
[式中、Xは、−O−,−S−、−Se−、−NR3−、−S(=O)2−、炭素数3以上のシクロアルキル基、−C(=O)−、−C(=O)O−を表し、
R3は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。]
【0015】
また、本発明は、共役ユニットが、アリール基もしくは複素環式基で示されるユニットとからなる上記エレクトロルミネッセンス素子材料に関する。
【0016】
また、本発明は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネセンス素子において、前記有機層のうち少なくとも1層が、上記材料を単独もしくは混合物として含有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0017】
また、本発明は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層が、上記材料を単独もしくは混合物として含有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層に、一般式[1]で示されるポリマーが新規な有機発光材料として含まれることを特徴とする。
【0019】
本発明は、共役ユニット(A)と、非共役ユニットからなる、分子量1000以上のポリマーを含む有機エレクトロルミネッセンス素子材料に関する。
本発明において、共役ユニット(A)は、アリール基、複素環式基、エテニル基などを含む。また、非共役ユニットは、一般式[1]で示されるDPP骨格のユニットと、一般式[2]で示される非共役ユニット(B)を含む。
本発明における一般式[1]および一般式[2]のR1〜R3で示されるアルキル基としては、好ましくは炭素数6から30であり、置換もしくは無置換の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等がある。
アルコキシ基としては、好ましくは炭素数6から30であり、置換もしくは無置換の、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基等がある。
チオアルコキシ基としては、好ましくは炭素数6から30であり、置換もしくは無置換の、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0020】
本発明における一般式[1]および一般式[2]のR1〜R3で示される、炭素数6から30のアリール基としては、置換もしくは無置換の、フェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。
【0021】
複素環式基としては、置換もしくは無置換の、チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等がある。
【0022】
本発明における共役ユニット(A)は、前記置換もしくは無置換の、アリール基もしくは複素環式基から水素原子を1個除いた二価の基を上げる事が出来る。さらに、エテニル基、エチニル基などが挙げられる。また、同種または異種の共役ユニットが連続していても良い。
【0023】
更に詳しくは、本発明における共役ユニット(A)の代表例を具体的に表1に例示するが、これらに限定されるものではない。
表1
【0024】
【表1】
【0025】
【0026】
【0027】
次に、一般式[2]で示される非共役ユニット(B)の代表例を具体的に表2に例示するが、これらに限定されるものではない。
表2
【0028】
【表2】
【0029】
【0030】
【0031】
本発明における置換基とは、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカルト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基が挙げられ、また置換基は、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換の環を形成しても良い。
【0032】
置換もしくは未置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などがある。
【0033】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等がある。
【0034】
置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0035】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等がある。
【0036】
置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等がある。
【0037】
モノまたはジ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等がある。
【0038】
好ましい置換基しては、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、もしくはアルコキシ基である。また、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環を形成してもよく、これらの環の任意の位置にさらに置換基を有してもよい。
【0039】
なお、本発明の高分子EL発光材料はランダム、ブロック、またはグラフト共重合体であってもよく、それらの中間的な構造を有する高分子たとえばブロック性をもつランダム共重合体であってもよい。発光効率の高い共重合体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりもブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。
【0040】
ポリマー中に含まれる共役ユニットと、非共役ユニットとの比率については、重量比で非共役ユニット1に対して共役ユニット1〜50が好ましい。
また、本発明のエレクトロルミネッセンス素子材料は、重量平均分子量が1000以上が汎用性有機溶媒に対する溶解性の点で好ましい。
本発明のエレクトロルミネッセンス素子材料は主鎖に剛直な共役部分と柔軟な連結部分を有するため基本的には溶剤に溶解させて製膜することは困難ではないがより溶解性に優れ製膜性のよい重合体を得るためにはポリマー1分子あたり少なくとも一つ一般式[2]で表されるユニットを含むことが好ましい。
【0041】
本発明で使用されるポリマーの製造方法について述べる。本発明で使用されるポリマーは種々の方法で合成が可能である。たとえばアリールハライドをニッケルまたは銅誘導体存在下ホモカップリングし、炭素炭素結合を生成する重合法、アリールハライド誘導体とビニルベンゼン誘導体をパラジウム触媒下反応させ炭素炭素結合を生成する重合法、ホウ酸誘導体またはホウ酸エステル誘導体とアリールハライド誘導体をパラジウム触媒存在下反応させて炭素炭素結合を生成する重合法、アリールスズ誘導体とアリールハライド誘導体をパラジウム触媒存在下反応させて炭素炭素結合を生成する重合法が挙げられるが、ホウ酸誘導体またはホウ酸エステル誘導体とアリールハライド誘導体をパラジウム触媒存在下反応させて炭素炭素結合を生成する重合法およびアリールハライドをニッケルまたは銅誘導体存在下ホモカップリングし、炭素炭素結合を生成する重合法が特に好ましい。
【0042】
ホウ酸誘導体としては置換または未置換アリールホウ素誘導体、置換または未置換へテロアリールホウ素誘導体があり、置換または未置換アリールホウ素誘導体としては1、4−フェニルジホウ酸、4、4’−ビフェニルジホウ酸等が挙げられ、置換または未置換へテロアリールホウ素誘導体としてはピリジルジホウ酸、チエニルジホウ酸等が挙げられる。ホウ酸エステル誘導体としては置換または未置換のアリールホウ酸エステル誘導体、置換または未置換のヘテロアリールホウ酸エステル誘導体があり、例えば置換または未置換のアリールホウ酸エステル誘導体ではフェニルジホウ酸ピナコールエステル、置換または未置換のヘテロアリールホウ酸エステル誘導体ではチエニルジホウ酸ピナコールエステル等が挙げられる。
【0043】
アリールハライド誘導体としてはハロゲン原子として塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があり、好ましくは臭素原子である。アリールハライド誘導体としてはジブロモベンゼン誘導体、ジブロモフルオレン誘導体、ジブロモナフタレン誘導体等が挙げられ、ヘテロアリールハライド誘導体としてはジブロモチオフェン誘導体、ジブロモピリジン誘導体等が挙げられる。
【0044】
本発明においてパラジウム触媒としてはテトラキストリフェニルホスフフィンパラジウム、パラジウムカーボン、パラジウムジクロライド1,1’−ビスジフェニルホスフィノフェロセン等が挙げられる。トリフェニルホスフィンなどの配位子を同時に添加してもよい。また、本反応は塩基を用いることが好ましい。塩基としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0045】
本発明において、ニッケル触媒としてはビスシクロオクタジエンニッケル等があり、同時に2−2’−ビピリジンやシクロオクタジエンなどの配位子を同時に添加してもよい。
【0046】
本発明で使用されるポリマーの代表例を表3に具体的に示すが、本発明で使用されるポリマーは以下の代表例に限定されるものではない。なお、表の構造式は、組成比を示すものであって、必ずしもブロック共重合体の配列を取っているものではない。
【0047】
【表3】
【0048】
本発明の発光材料は、同一層中で他の発光材料、正孔もしくは電子輸送性化合物と混合して使用してもさしつかえない。本発明の発光材料は発光性、正孔輸送性に優れているので、正孔輸送性発光材料としても有効に使用することができる。
【0049】
本発明の発光材料と共に発光層に使用できる発光材料またはドーパント材料としては、ポリアルキルフルオレン誘導体、およびポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、その他発光性高分子を使用できる。また、この他に、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレンおよび色素レーザー用や増感用の蛍光色素等があるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の発光材料および共に発光層に使用できる上記の化合物の発光層中での存在比率はどれが主成分であってもよい。つまり、上記の化合物および本発明における化合物のそれぞれの組み合わせにより、本発明における化合物は発光層を形成する主材料にも他の主材料中へのドーパント材料にも成り得る。
【0051】
本発明でいうドーピング材料には含まれる共役系高分子とは、炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子を含む二重結合(または、三重結合)が単結合と交互に長く連なった共役系を分子骨格とした共役系高分子である。さらに詳しくは、炭素−炭素の単結合と二重結合が交互に長く連なった脂肪族共役系であるポリアセチレン、芳香族炭化水素が長く結合する事により共役が発達した芳香族共役系であるポリ(パラフェニレン)、ポリ(アルキルフルオレン)誘導体、複素環化合物が結合して共役系が発達した複素環式共役系であるポリピロール、ポリチオフェン、脂肪族または芳香族の共役系をヘテロ原子で結合した含ヘテロ原子共役系であるポリアニリン、上記各種共役系の構成単位が交互に結合した混合型共役系であるポリ(フェニレンビニレン)等が上げられる。
【0052】
本発明の一般式[1]で表される化合物の発光層中での存在比率はどれが主成分であってもよい。つまり、発光層を形成する主材料にも他の主材料中へのドーピンク材料にも成り得る。上記共役系高分子に、本発明の一般式[1]で表される化合物を混合させる条件としては、両者全体に対して、1〜90重量%の割合で用いる。この含有比率が1重量%未満では、一般式[1]で表される化合物の効果が充分に発揮されず、本発明の目的が達成されない。此処で言う効果とは、一般式[1]で表される化合物を加えたことにより、ELの発光輝度の向上、効率に向上、発光開始電圧の低電圧化を示している。両者を混合する方法は、公知の方法が用いられ、例えば、上記共役系高分子と、一般式[1]で表される化合物を正確に秤量し、遮光密閉容器中で混合し、これに、トルエン、キシレンのような汎用性有機溶媒を両者全体に対して0.5〜5.0重量%になる割合で加え、超音波もしくは緩い加熱により溶解させる。
【0053】
発光層には、必要があれば、本発明の発光材料に加えて、さらなる正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。有機EL素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、ドーパント材料、正孔注入材料や電子注入材料を組み合わせて使用することが出来る。また、ドーパント材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や青色の発光を得ることもできる。また、正孔注入帯域、発光層、電子注入帯域は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。その際には、正孔注入帯域の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入帯域の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0054】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入帯域または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が挙げられる。具体的には、PEDOT、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入帯域への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が挙げられる。例えば、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0056】
本発明の発光材料は、ガラス転移点や融点が高い為、電界発光時における有機層中、有機層間もしくは、有機層と金属電極間で発生するジュール熱に対する耐性(耐熱性)が向上するので、有機EL素子材料として使用した場合、高い発光輝度を示し、長時間発光させる際にも有利である。
【0057】
本発明の高分子の成膜方法としては、特に限定はなく、例えば粉末状態からの真空蒸着法、溶媒に溶解した後、塗布する方法(例えばインクジェット法、スプレイ法、印刷法、スピンコーテング法、キャスチング法、デッピング法、バーコート法、ロールコート法など)などを用いることが出来るが、素子製造工程の簡略化、加工性、大面積化の観点から塗布方式が好ましい。塗布方式で成膜する場合に用いる溶媒としては、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、などの有機ハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1.4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、またはこれらの混合溶媒であっても良い。高分子の構造、分子量によっても異なるが、通常溶媒の0.01から10重量%、好ましくは0.1から5重量%溶解した溶液を用いて成膜する。
【0058】
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機薄膜を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔、もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために、正孔注入材料もしくは電子注入材料を含有しても良い。多層型は、(陽極/正孔注入帯域/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入帯域/陰極)、(陽極/正孔注入帯域/発光層/電子注入帯域/陰極)の多層構成で積層した有機EL素子がある。
【0059】
有機EL素子の陽極に使用される導電性物質としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが好適であり、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板と称される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが好適であり、マグネシウム、バリウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0060】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや、平面発光体として、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、その工業的価値は非常に大きい。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。説明中、部は重量部、%は重量%を表す。
製造例1
化合物1の合成方法
【0062】
反応モノマーとして以下の化合物(7)を用いた。
化合物(7)
【0063】
【化5】
【0064】
四つ口フラスコに2mlのDMFと2, 2’−ビピリジン(0.34g, 2.16mmol)とNi(cod)2 (0.6g, 2.16mmol) を加え、撹拌した。Ni(cod)2(bpy) の生成に伴い、反応溶液は黄色から褐色に変化した。あらかじめDMFに溶かしておいた9, 9’−(2−エチルヘキシル)ジブロモフルオレン (0.82g, 1.5 mmol)、化合物(7)(0.5g, 0.6mmol)、ビス(4−ブロモフェニル)エーテル(0.2g0.6mmol)を滴下した。滴下終了後、四つ口フラスコに冷却管を装着し、80℃で24時間撹拌させた。反応終了後、大過剰のメタノールに注ぎ、3時間洗浄した。沈殿物をろ過した後、沈殿物を少量のTHFに溶かし、再び大過剰のメタノールに注いだ。24時間撹拌した後、沈殿物をろ過し、真空乾燥して目的物を得た。生成物は元素分析、IRスペクトル、NMRにより目的物であることを確認した。収率は61%であった。
化合物2の合成方法
【0065】
反応モノマーとして以下の化合物(8)を用いた。
化合物(8)
【0066】
【化6】
【0067】
四つ口フラスコに冷却管をつけ、化合物(8)(0.71g, 1.00mmol)、9, 9’−(ヘキシル)フルオレン−2,7−ボロニックアシッド 1, 3−プロパンジオールジエステル (1.00g, 2.00mmol) 、ビス(4−ブロモフェニル)エーテル(0.33g、1.00mmol)にTHF (30ml) を加えて撹拌した。ここにNaHCO3 (3.17g, 37.8mmol) およびH2O (30ml) を加えた。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)
(Pd(PPh3)) (43.7mg, 37.8mmol) およびTHF (60ml) を加え、80℃で72時間環留した。目的物をメタノールで洗浄した。収率は65%であった。化合物(2)の、フイルムの蛍光スペクトルを、図1に示す。
【0068】
以下に本発明の発光材料を用いた実施例を具体的に示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT(ポリエチレンオキシチオフェン ポリスチレンスルホネート共重合体)をスピンコート法で50nmの膜厚に製膜し、次に、表3の化合物(1)を2%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。その上に、Caを40nm、Alを80nmの膜厚の電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧6Vで、発光を開始し、最大発光輝度180cd/m2、発光効率0.031m/Wが得られた。この素子の発光スペクトルを図2に示す。
【0069】
実施例2
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOTをスピンコート法で50nmの膜厚に製膜し、次に、表3の化合物(2)と4Me−TPD(N,N‘−ジフェニル−N,N’−ジ−m−トリル−3,3‘−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン)を6:4の割合で混合した2%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により60nmの膜厚の発光層を得た。その上に、Caを40nm、Alを80nmの膜厚の電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧5Vで、発光を開始し、最大発光輝度600cd/m2、発光効率0.061m/Wが得られた。この素子の発光スペクトルを図3にしめす。
【0070】
実施例3−7
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOTをスピンコート法で50nmの膜厚に製膜し、次に、60mgのポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、38mgの2−(4‘−t−ブチルフェニル)−5−(4“−(フェニル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、2mgの表3に示した化合物を15gの1,2−ジクロロエタンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。その上に、Caを40nm、Alを80nmの膜厚の電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧10Vで、表4に示した発光輝度を得た。
【0071】
【表4】
【0072】
比較例1
実施例1において化合物(1)の代わりに化合物(9)を発光層に使用し、そのほかは実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。
【0073】
化合物(9)
【化7】
【0074】
発光層に化合物(9)のみを使用した実施例1の有機EL素子を作成した。この素子は、直流電圧8Vで発光輝度約40cd/m2発光効率0.009lm/Wが得られた。
この素子の発光スペクトルを図4に示す。
【0075】
本実施例で示された全ての有機EL素子について、連続発光させたところ、1000時間以上初期輝度の50%以上の輝度を観測出来たが、比較例1および2の素子を同様の条件で連続発光させたところ、10時間で初期感度の50%以下の輝度になり、ダークスポットの数も極めて多くなった。本発明の発光性ドーパントは、共役高分子発光材料と組み合わせることにより、そのEL特性が大きく改良されていることがわかる。
本発明の有機EL素子は発光効率、発光輝度の向上と長寿命化を達成するものであり、併せて使用される発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、増感剤、樹脂、電極材料等および素子作製方法を限定するものではない。
【0076】
【発明の効果】
本発明により、従来に比べて高発光効率、高輝度であり、長寿命の有機EL素子を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物(2)のフイルムの蛍光スペクトル図
【図2】実施例1の素子の、発光スペクトル図
【図3】実施例2の素子の、発光スペクトル図
【図4】比較例1の素子の、発光スペクトル図
Claims (5)
- 共役ユニットが、アリール基もしくは複素環式基で示されるユニットとからなる請求項1または2記載のエレクトロルミネッセンス素子材料。
- 一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネセンス素子において、前記有機層のうち少なくとも1層が、請求項1〜3いずれか記載の材料を単独もしくは混合物として含有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
- 一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層が、請求項1〜3いずれか記載の材料を単独もしくは混合物として含有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
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