JP2004269620A - 粉体塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた貯蔵安定性、および優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料を提供する。
【解決手段】反応性基を有する硬化型粉体塗料用樹脂および該樹脂の反応性基と反応し得る硬化剤が主成分である粉体塗料であって、粉体塗料中、該硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μm、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であり、かつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることを特徴とする粉体塗料。
【選択図】 無し
【解決手段】反応性基を有する硬化型粉体塗料用樹脂および該樹脂の反応性基と反応し得る硬化剤が主成分である粉体塗料であって、粉体塗料中、該硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μm、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であり、かつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることを特徴とする粉体塗料。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた貯蔵安定性、ならびに優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、焼き付け時に揮発性有機物質の発生が無く、大気汚染等の環境問題を生じないことから、溶液型塗料に代わり広い分野で用いられている。
このような粉体塗料として、例えばグリシジル基を有する硬化型アクリル樹脂と脂肪族二塩基酸に代表される硬化剤を含有するアクリル系粉体塗料が知られている。
【0003】
また、粉体塗料は、一般に、硬化型樹脂、硬化剤、塗料用添加剤及び顔料を乾式混合した後、溶融混練機で混練分散し、次いで粉砕、分級させることにより製造されている。しかしながら、これまでの粉体塗料から得られる塗膜は、不均一な硬化により、外観、特に平滑性に欠け、硬度など諸物性に劣るといった問題点を有している。
【0004】
そこで、このような問題点を改善する方法として、体積平均粒径0.3〜7μmであって、粒径20μm以上の粒子が全粒子の10重量%以下である硬化剤を原料として用いて製造されたものであることを特徴とする粉体塗料が提案されている(特許文献1参照。)。しかし、小粒径の硬化剤を原料として用いると、凝集しやすくドライブレンドや溶融混練においても凝集状態を維持する。そのため、粉体塗料に含有される硬化剤の粒径は原料の粒径よりも大きくなってしまい、得られる塗膜は平滑性及び諸物性において満足できるものではない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−179790号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の粉体塗料における上記課題を解決し、優れた貯蔵安定性、および優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、優れた貯蔵安定性、ならびに優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料を見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明は、反応性基を有する硬化型粉体塗料用樹脂および該樹脂の反応性基と反応し得る硬化剤が主成分である粉体塗料であって、粉体塗料中、該硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μm、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であり、かつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることを特徴とする粉体塗料に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される硬化型粉体塗料用樹脂は、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基等の反応基を有する、常温で固体のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれら2種以上の変性樹脂又は混合樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
硬化型粉体塗料用樹脂は、数平均分子量が2000〜20000、好ましくは2500〜10000、更に好ましくは2500〜8000の範囲にあるのがよく、そのガラス転移温度は、30〜90℃、好ましくは35〜80℃、更に好ましくは35〜70℃の範囲にあるのがよい。数平均分子量やガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、得られる粉体塗料の保存安定性が低下し、かかる塗料により得られる塗膜が、可撓性のないものとなるおそれがある。また、数平均分子量やガラス転移温度が上記範囲よりも高いと、焼き付け時の溶融粘度が大きくなり仕上がり性が低下するばかりでなく、混練時の樹脂と硬化剤との混和性が低下し、均一な粉体塗料組成物を得ることが出来ない。
【0010】
尚、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定する。具体的には、測定試料はテトラヒドロフラン100重量部に対して硬化型粉体塗料用樹脂0.3重量部を溶解したテトラヒドロフラン溶液とし、これをGPC、例えば東ソー(株)製8020型GPC等により測定し、ポリスチレン換算により数平均分子量を算出する。
【0011】
また、ガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定法、昇温速度10℃/min)により測定し、中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度(Tg)とする。
【0012】
硬化型粉体塗料樹脂の種類は限定されるものではないが、特に、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位として15〜50モル%、及びメタクリル酸メチルを20〜50モル%、好ましくはグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物を25〜45モル%、及びメタクリル酸メチルを25〜45モル%を含む、硬化型アクリル樹脂であることが好ましい。
【0013】
上記原料としてのグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位が15モル%未満では、得られる塗膜の耐食性や硬度が低下し、一方、50モル%を越えると、粉体塗料の貯蔵安定性や塗膜の平滑性が低下し、外観が劣る。
【0014】
上記原料としてのメタクリル酸メチルに由来する構成単位が20モル%未満では、得られる塗膜の耐侯性や高級感(深みのある透明感)が低下し、50モル%を越えると得られる塗膜の平滑性が低下し、外観が劣る。
【0015】
更に必要により、他の不飽和化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。
グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物およびメタクリル酸メチルの共重合に際して必要により用いられる他の不飽和化合物としては、これに限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン、αメチルスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
上記の他の不飽和化合物は、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物及びメタクリル酸メチルに由来する構成単位量が前述した範囲内となる限り、その使用量は特に制限されないが、一般的には、全モノマー当たり20〜60モル%の範囲であるのがよい。
【0016】
本発明において使用される硬化剤としては、結晶性の硬化剤が挙げられ、例えば二塩基酸化合物およびその無水物、三塩基酸以上の多塩基酸化合物およびその無水物、ジアミン化合物、アミン化合物、アミド化合物、メラミン化合物、ヒドラジン化合物、マレイミド化合物、ならびにシアネート化合物から選ばれる1種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記した中でもグリシジル基を有する硬化型アクリル樹脂を硬化型粉体塗料用樹脂に用い、1,8−オクタンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、または1,12−ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸を硬化剤に用いる場合が好ましい。
硬化剤は、通常、硬化型粉体塗料用樹脂の反応性基当たり、0.7〜1.3倍当量、好ましくは0.8〜1.2倍当量、さらに好ましくは0.8〜1.1倍当量で使用される。硬化剤の量が上記の範囲よりも大きい場合は、粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、上記の範囲よりも小さい場合は得られる塗膜の強度が低下する。
【0017】
硬化型粉体塗料用樹脂や硬化剤に加えて、それ自体公知の塗料用添加剤、例えば、溶融流動調節剤、ピンホール防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化触媒、可塑剤、耐ブロッキング性向上剤、粉体流動付与剤、脱泡剤等を、必要により使用することができる。
このような塗料用添加剤は、粉体塗料の塗膜形成能などの特性を損なわずに所定の機能が発揮される程度の量で使用される。例えば、樹脂100重量部当たり、0.1〜10重量部の量で使用される。
【0018】
粉体塗料の用途に応じて、更に顔料が使用される。顔料としては、これに限定されるものではないが、酸化チタン、ベン柄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。かかる顔料は、通常、樹脂100重量部当たり、200重量部以下の量で使用される。
【0019】
粉体塗料の製造方法は特に限定されないが、硬化型粉体塗料用樹脂、硬化剤などの粉体塗料原料と硬化剤を溶解し得る溶剤とを硬化反応温度以下で湿式混合する方法を用いた製造法が好ましい。このとき、粉体塗料に含有される硬化剤の粒子をより小さくするために硬化剤は溶剤に完全に溶解することが好ましい。例えば、硬化剤として1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)に代表される多塩基酸を用いる場合は、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール類を溶剤として使用することが好ましい。溶剤を除去する方法として、ベント付き押出機等で混練しながら溶剤を除去する方法や湿式混合後に噴霧乾燥装置で溶剤を除去する方法が挙げられる。ベント付き押出機等で溶剤を除去した場合は、粉砕、分級し粉体塗料を得ることができる。噴霧乾燥装置で溶剤を除去した場合は、そのまま粉体塗料として用いることもできるし、分級して目的の粒度分布にして用いることもできる。
結晶性の硬化剤を用いる場合や硬化剤の配合割合が高い場合は、硬化剤を大きく成長させないために速やかに溶剤を除去した方が好ましい。非結晶性の硬化剤を用いる場合や硬化剤の配合割合が低い場合は、硬化剤の平均体積粒径が0.5μm以下となりやすいので緩やかに溶剤を除去した方が好ましい。
【0020】
この場合、使用する溶剤としては常圧における沸点が120℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは90℃以下である。常圧における沸点が120℃以下の溶剤は、容易に脱揮・除去可能であり、押出機やニーダーや噴霧乾燥装置などを用いて容易に脱揮・除去することができる。硬化型粉体塗料用樹脂、硬化剤などの粉体塗料原料と硬化剤を溶解し得る溶剤と混合する温度は、硬化型粉体塗料用樹脂の反応性基と硬化剤との架橋反応を抑制するため80℃以下が好ましいが、硬化剤の溶液と硬化型粉体塗料用樹脂の溶液とをラインミキサー等を用いて短時間で湿式混合する場合は、80℃以上でも行なうことができる。溶剤を脱揮・除去する温度は、硬化型粉体塗料用樹脂の反応性基と硬化剤の架橋反応を抑制するため130℃以下であることが望ましい。溶剤を脱揮・除去する圧力は特に限定されないが、溶剤を速やかに脱揮・除去し粉体塗料に含有される硬化剤の粒子のうち、粒径20μm以上の粒子を10重量%以下にするために、減圧下で溶剤を脱揮・除去する方が好ましい。
【0021】
粉体塗料に含有される硬化剤の粒径を測定する方法としては、粉体塗料を硬化剤のみ溶解しない溶剤に仕込んで懸濁液を調製し、粒度分布測定装置を用いることができる。粒度分布測定装置として、例えば、堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−910」が例示される。その他の測定方法として、顕微鏡を用いて得られる顕微鏡画像等を、実測あるいは、画像解析装置を用いることができる。特に結晶性の硬化剤の粒径を測定する場合は、ニコルプリズムあるいは偏光板を備えている顕微鏡を用い明瞭に観察することができる。偏光顕微鏡として、例えば、ニコン社製の「OPTIPHOT−POL」(粒径の測定限界は1μm)が例示される。
【0022】
粉体塗料に含有される硬化剤の粒度特性のうち、体積平均粒径は0.5〜12μmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmである。体積平均粒径が12μmを超えることは、塗膜形成時に不均一な架橋となり艶びけや縮み肌の原因となり、塗膜の平滑性及び諸物性を損なうこととなり好ましくない。体積平均粒径が0.5μmより小さい場合は、粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、塗膜の平滑性を損なうこととなる。また、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下でありかつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることが好ましい。粒径20μm以上の硬化剤粒子が10重量%を超えることは、塗膜形成時に不均一な架橋となり艶びけや縮み肌の原因となり、塗膜の平滑性及び諸物性を損なうこととなり好ましくない。粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が30重量%を超えると粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、塗膜の平滑性を損なうこととなる。さらに好ましくは粒径20μm以上の硬化剤粒子が7重量%以下でありかつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が20重量%以下である。
【0023】
【実施例】
本発明を、以下の実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみ限定されるものではないのはいうまでもない。また、これらの例において、配合量はすべて重量基準で示した。
尚、粉体塗料の物性等は以下のようにして評価した。
(1)塗膜外観(平滑性):粉体塗料を燐酸亜鉛処理鋼板に静電塗装し、150℃のオーブン中で20分硬化させて得た塗膜の表面平滑性を目視により評価判定した。
○:へこみ、凹凸などがほとんど無く、平滑性が良好である。
×:へこみ、凹凸が認められ、平滑性が劣る。
(2)中心線平均粗さRa:塗装・硬化後の塗膜の表面を(株)東京精密製、サーフコム(SURFCOM)蝕針式表面粗さ計を用い、凹凸の平均値を数値化した。カットオフは0.8mmであり、数値が小さい程、塗膜が平滑である。
(3)粉体塗料に含有される硬化剤の粒度特性:粉体塗料をトルエンと混合し、硬化剤のみ不溶の懸濁液を調製し、(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(型式:LA−910)を用いて測定した。
(4)貯蔵安定性:製造直後の粉体塗料の酸濃度をA、40℃で10日間貯蔵した後の粉体塗料の酸濃度をBとし以下のように判定した。
○:B/Aが0.95以上
×:B/Aが0.95未満
(5)膜厚:塗装・硬化後の塗膜の膜厚を(株)ケット科学研究所製、膜厚測定器(型式:LZ−300C)を用いて測定した。
【0024】
実施例1
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素による圧力調整装置および底部抜き出し管を備えた反応器中にイソプロパノール120部を仕込んで110℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル4部を4時間かけて加え、同温度に6時間保持して硬化型粉体塗料用樹脂溶液を調製した。これとは別に、硬化剤として1,10−デカンジカルボン酸22部、ベンゾイン0.6部、PL−540(楠本化成社製流動調節剤)0.6部にイソプロパノール70部を加えて硬化剤のアルコール溶液を調製した。上記で調製された硬化型粉体塗料用樹脂溶液と硬化剤溶液とを80℃に保温されているインラインミキサーで湿式混合し、90℃に保温されている脱溶剤ベント付き二軸押出機に通して溶剤を脱揮・除去し、衝撃式粉砕機を用いて粉砕後、さらに分級し粉体塗料を得た。
得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は3μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であった。
得られた粉体塗料を燐酸亜鉛処理鋼板に静電塗装し、150℃のオーブン中で20分硬化させて塗膜を得た。得られた塗膜について物性を評価し、結果を表1に記した。
【0025】
実施例2
実施例1と同様な反応器中にメタノール120部を仕込んで80℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル4部を4時間かけて加え、同温度に6時間保持して硬化型粉体塗料用樹脂溶液を調製した。これとは別に、硬化剤として1,10−デカンジカルボン酸22部、ベンゾイン0.6部、PL−540(楠本化成社製流動調節剤)0.6部にメタノール100部を加えて硬化剤のメタノール溶液を調製した。上記で調製された硬化型粉体塗料用樹脂溶液と硬化剤溶液とを70℃に保温されているインラインミキサーで湿式混合した後、噴霧乾燥装置に通し、分級する事により粉体塗料を得た。得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は6μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であった。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【0026】
比較例1
実施例1と同様な反応器中にイソプロピルアルコール120部を仕込んで110℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル4部を4時間かけて加え、同温度に6時間保持した後、150℃、0.1kPaで溶剤が留出しなくなるまで脱溶剤した。得られたアクリル樹脂50部を粉砕機で粗粉砕した後、体積平均粒径20μmの1,10−デカンジカルボン酸22部、ベンゾイン0.6部、PL−540(楠本化成社製流動調節剤)0.6部を添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。その後、100℃に調整された押出機で溶融混練して粉体塗料を得た。
得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は21μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の52重量%、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であった。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【0027】
比較例2
平均粒径6μmの1,10−デカンジカルボン酸を用いた以外は比較例1と同様にして粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は14μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が38重量%、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が10重量%以下であった。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【0028】
比較例3
1,10−デカンジカルボン酸を22部の代わりに、1,10−デカンジカルボン酸を15部用い、二軸押出機に供給する速度を半分にした以外は実施例1と同様にして粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は1μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以上であった。粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以上であったため、40℃での貯蔵安定性は低下していた。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料は、粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μmであって、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下でありかつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であるので、粉体塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の平滑性、硬度を向上することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた貯蔵安定性、ならびに優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、焼き付け時に揮発性有機物質の発生が無く、大気汚染等の環境問題を生じないことから、溶液型塗料に代わり広い分野で用いられている。
このような粉体塗料として、例えばグリシジル基を有する硬化型アクリル樹脂と脂肪族二塩基酸に代表される硬化剤を含有するアクリル系粉体塗料が知られている。
【0003】
また、粉体塗料は、一般に、硬化型樹脂、硬化剤、塗料用添加剤及び顔料を乾式混合した後、溶融混練機で混練分散し、次いで粉砕、分級させることにより製造されている。しかしながら、これまでの粉体塗料から得られる塗膜は、不均一な硬化により、外観、特に平滑性に欠け、硬度など諸物性に劣るといった問題点を有している。
【0004】
そこで、このような問題点を改善する方法として、体積平均粒径0.3〜7μmであって、粒径20μm以上の粒子が全粒子の10重量%以下である硬化剤を原料として用いて製造されたものであることを特徴とする粉体塗料が提案されている(特許文献1参照。)。しかし、小粒径の硬化剤を原料として用いると、凝集しやすくドライブレンドや溶融混練においても凝集状態を維持する。そのため、粉体塗料に含有される硬化剤の粒径は原料の粒径よりも大きくなってしまい、得られる塗膜は平滑性及び諸物性において満足できるものではない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−179790号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の粉体塗料における上記課題を解決し、優れた貯蔵安定性、および優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、優れた貯蔵安定性、ならびに優れた平滑性及び諸物性を与える粉体塗料を見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明は、反応性基を有する硬化型粉体塗料用樹脂および該樹脂の反応性基と反応し得る硬化剤が主成分である粉体塗料であって、粉体塗料中、該硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μm、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であり、かつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることを特徴とする粉体塗料に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される硬化型粉体塗料用樹脂は、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基等の反応基を有する、常温で固体のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれら2種以上の変性樹脂又は混合樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
硬化型粉体塗料用樹脂は、数平均分子量が2000〜20000、好ましくは2500〜10000、更に好ましくは2500〜8000の範囲にあるのがよく、そのガラス転移温度は、30〜90℃、好ましくは35〜80℃、更に好ましくは35〜70℃の範囲にあるのがよい。数平均分子量やガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、得られる粉体塗料の保存安定性が低下し、かかる塗料により得られる塗膜が、可撓性のないものとなるおそれがある。また、数平均分子量やガラス転移温度が上記範囲よりも高いと、焼き付け時の溶融粘度が大きくなり仕上がり性が低下するばかりでなく、混練時の樹脂と硬化剤との混和性が低下し、均一な粉体塗料組成物を得ることが出来ない。
【0010】
尚、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定する。具体的には、測定試料はテトラヒドロフラン100重量部に対して硬化型粉体塗料用樹脂0.3重量部を溶解したテトラヒドロフラン溶液とし、これをGPC、例えば東ソー(株)製8020型GPC等により測定し、ポリスチレン換算により数平均分子量を算出する。
【0011】
また、ガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定法、昇温速度10℃/min)により測定し、中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度(Tg)とする。
【0012】
硬化型粉体塗料樹脂の種類は限定されるものではないが、特に、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位として15〜50モル%、及びメタクリル酸メチルを20〜50モル%、好ましくはグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物を25〜45モル%、及びメタクリル酸メチルを25〜45モル%を含む、硬化型アクリル樹脂であることが好ましい。
【0013】
上記原料としてのグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位が15モル%未満では、得られる塗膜の耐食性や硬度が低下し、一方、50モル%を越えると、粉体塗料の貯蔵安定性や塗膜の平滑性が低下し、外観が劣る。
【0014】
上記原料としてのメタクリル酸メチルに由来する構成単位が20モル%未満では、得られる塗膜の耐侯性や高級感(深みのある透明感)が低下し、50モル%を越えると得られる塗膜の平滑性が低下し、外観が劣る。
【0015】
更に必要により、他の不飽和化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。
グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物およびメタクリル酸メチルの共重合に際して必要により用いられる他の不飽和化合物としては、これに限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン、αメチルスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
上記の他の不飽和化合物は、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物及びメタクリル酸メチルに由来する構成単位量が前述した範囲内となる限り、その使用量は特に制限されないが、一般的には、全モノマー当たり20〜60モル%の範囲であるのがよい。
【0016】
本発明において使用される硬化剤としては、結晶性の硬化剤が挙げられ、例えば二塩基酸化合物およびその無水物、三塩基酸以上の多塩基酸化合物およびその無水物、ジアミン化合物、アミン化合物、アミド化合物、メラミン化合物、ヒドラジン化合物、マレイミド化合物、ならびにシアネート化合物から選ばれる1種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記した中でもグリシジル基を有する硬化型アクリル樹脂を硬化型粉体塗料用樹脂に用い、1,8−オクタンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、または1,12−ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸を硬化剤に用いる場合が好ましい。
硬化剤は、通常、硬化型粉体塗料用樹脂の反応性基当たり、0.7〜1.3倍当量、好ましくは0.8〜1.2倍当量、さらに好ましくは0.8〜1.1倍当量で使用される。硬化剤の量が上記の範囲よりも大きい場合は、粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、上記の範囲よりも小さい場合は得られる塗膜の強度が低下する。
【0017】
硬化型粉体塗料用樹脂や硬化剤に加えて、それ自体公知の塗料用添加剤、例えば、溶融流動調節剤、ピンホール防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化触媒、可塑剤、耐ブロッキング性向上剤、粉体流動付与剤、脱泡剤等を、必要により使用することができる。
このような塗料用添加剤は、粉体塗料の塗膜形成能などの特性を損なわずに所定の機能が発揮される程度の量で使用される。例えば、樹脂100重量部当たり、0.1〜10重量部の量で使用される。
【0018】
粉体塗料の用途に応じて、更に顔料が使用される。顔料としては、これに限定されるものではないが、酸化チタン、ベン柄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。かかる顔料は、通常、樹脂100重量部当たり、200重量部以下の量で使用される。
【0019】
粉体塗料の製造方法は特に限定されないが、硬化型粉体塗料用樹脂、硬化剤などの粉体塗料原料と硬化剤を溶解し得る溶剤とを硬化反応温度以下で湿式混合する方法を用いた製造法が好ましい。このとき、粉体塗料に含有される硬化剤の粒子をより小さくするために硬化剤は溶剤に完全に溶解することが好ましい。例えば、硬化剤として1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)に代表される多塩基酸を用いる場合は、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール類を溶剤として使用することが好ましい。溶剤を除去する方法として、ベント付き押出機等で混練しながら溶剤を除去する方法や湿式混合後に噴霧乾燥装置で溶剤を除去する方法が挙げられる。ベント付き押出機等で溶剤を除去した場合は、粉砕、分級し粉体塗料を得ることができる。噴霧乾燥装置で溶剤を除去した場合は、そのまま粉体塗料として用いることもできるし、分級して目的の粒度分布にして用いることもできる。
結晶性の硬化剤を用いる場合や硬化剤の配合割合が高い場合は、硬化剤を大きく成長させないために速やかに溶剤を除去した方が好ましい。非結晶性の硬化剤を用いる場合や硬化剤の配合割合が低い場合は、硬化剤の平均体積粒径が0.5μm以下となりやすいので緩やかに溶剤を除去した方が好ましい。
【0020】
この場合、使用する溶剤としては常圧における沸点が120℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは90℃以下である。常圧における沸点が120℃以下の溶剤は、容易に脱揮・除去可能であり、押出機やニーダーや噴霧乾燥装置などを用いて容易に脱揮・除去することができる。硬化型粉体塗料用樹脂、硬化剤などの粉体塗料原料と硬化剤を溶解し得る溶剤と混合する温度は、硬化型粉体塗料用樹脂の反応性基と硬化剤との架橋反応を抑制するため80℃以下が好ましいが、硬化剤の溶液と硬化型粉体塗料用樹脂の溶液とをラインミキサー等を用いて短時間で湿式混合する場合は、80℃以上でも行なうことができる。溶剤を脱揮・除去する温度は、硬化型粉体塗料用樹脂の反応性基と硬化剤の架橋反応を抑制するため130℃以下であることが望ましい。溶剤を脱揮・除去する圧力は特に限定されないが、溶剤を速やかに脱揮・除去し粉体塗料に含有される硬化剤の粒子のうち、粒径20μm以上の粒子を10重量%以下にするために、減圧下で溶剤を脱揮・除去する方が好ましい。
【0021】
粉体塗料に含有される硬化剤の粒径を測定する方法としては、粉体塗料を硬化剤のみ溶解しない溶剤に仕込んで懸濁液を調製し、粒度分布測定装置を用いることができる。粒度分布測定装置として、例えば、堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−910」が例示される。その他の測定方法として、顕微鏡を用いて得られる顕微鏡画像等を、実測あるいは、画像解析装置を用いることができる。特に結晶性の硬化剤の粒径を測定する場合は、ニコルプリズムあるいは偏光板を備えている顕微鏡を用い明瞭に観察することができる。偏光顕微鏡として、例えば、ニコン社製の「OPTIPHOT−POL」(粒径の測定限界は1μm)が例示される。
【0022】
粉体塗料に含有される硬化剤の粒度特性のうち、体積平均粒径は0.5〜12μmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmである。体積平均粒径が12μmを超えることは、塗膜形成時に不均一な架橋となり艶びけや縮み肌の原因となり、塗膜の平滑性及び諸物性を損なうこととなり好ましくない。体積平均粒径が0.5μmより小さい場合は、粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、塗膜の平滑性を損なうこととなる。また、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下でありかつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることが好ましい。粒径20μm以上の硬化剤粒子が10重量%を超えることは、塗膜形成時に不均一な架橋となり艶びけや縮み肌の原因となり、塗膜の平滑性及び諸物性を損なうこととなり好ましくない。粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が30重量%を超えると粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、塗膜の平滑性を損なうこととなる。さらに好ましくは粒径20μm以上の硬化剤粒子が7重量%以下でありかつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が20重量%以下である。
【0023】
【実施例】
本発明を、以下の実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみ限定されるものではないのはいうまでもない。また、これらの例において、配合量はすべて重量基準で示した。
尚、粉体塗料の物性等は以下のようにして評価した。
(1)塗膜外観(平滑性):粉体塗料を燐酸亜鉛処理鋼板に静電塗装し、150℃のオーブン中で20分硬化させて得た塗膜の表面平滑性を目視により評価判定した。
○:へこみ、凹凸などがほとんど無く、平滑性が良好である。
×:へこみ、凹凸が認められ、平滑性が劣る。
(2)中心線平均粗さRa:塗装・硬化後の塗膜の表面を(株)東京精密製、サーフコム(SURFCOM)蝕針式表面粗さ計を用い、凹凸の平均値を数値化した。カットオフは0.8mmであり、数値が小さい程、塗膜が平滑である。
(3)粉体塗料に含有される硬化剤の粒度特性:粉体塗料をトルエンと混合し、硬化剤のみ不溶の懸濁液を調製し、(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(型式:LA−910)を用いて測定した。
(4)貯蔵安定性:製造直後の粉体塗料の酸濃度をA、40℃で10日間貯蔵した後の粉体塗料の酸濃度をBとし以下のように判定した。
○:B/Aが0.95以上
×:B/Aが0.95未満
(5)膜厚:塗装・硬化後の塗膜の膜厚を(株)ケット科学研究所製、膜厚測定器(型式:LZ−300C)を用いて測定した。
【0024】
実施例1
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素による圧力調整装置および底部抜き出し管を備えた反応器中にイソプロパノール120部を仕込んで110℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル4部を4時間かけて加え、同温度に6時間保持して硬化型粉体塗料用樹脂溶液を調製した。これとは別に、硬化剤として1,10−デカンジカルボン酸22部、ベンゾイン0.6部、PL−540(楠本化成社製流動調節剤)0.6部にイソプロパノール70部を加えて硬化剤のアルコール溶液を調製した。上記で調製された硬化型粉体塗料用樹脂溶液と硬化剤溶液とを80℃に保温されているインラインミキサーで湿式混合し、90℃に保温されている脱溶剤ベント付き二軸押出機に通して溶剤を脱揮・除去し、衝撃式粉砕機を用いて粉砕後、さらに分級し粉体塗料を得た。
得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は3μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であった。
得られた粉体塗料を燐酸亜鉛処理鋼板に静電塗装し、150℃のオーブン中で20分硬化させて塗膜を得た。得られた塗膜について物性を評価し、結果を表1に記した。
【0025】
実施例2
実施例1と同様な反応器中にメタノール120部を仕込んで80℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル4部を4時間かけて加え、同温度に6時間保持して硬化型粉体塗料用樹脂溶液を調製した。これとは別に、硬化剤として1,10−デカンジカルボン酸22部、ベンゾイン0.6部、PL−540(楠本化成社製流動調節剤)0.6部にメタノール100部を加えて硬化剤のメタノール溶液を調製した。上記で調製された硬化型粉体塗料用樹脂溶液と硬化剤溶液とを70℃に保温されているインラインミキサーで湿式混合した後、噴霧乾燥装置に通し、分級する事により粉体塗料を得た。得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は6μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であった。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【0026】
比較例1
実施例1と同様な反応器中にイソプロピルアルコール120部を仕込んで110℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル4部を4時間かけて加え、同温度に6時間保持した後、150℃、0.1kPaで溶剤が留出しなくなるまで脱溶剤した。得られたアクリル樹脂50部を粉砕機で粗粉砕した後、体積平均粒径20μmの1,10−デカンジカルボン酸22部、ベンゾイン0.6部、PL−540(楠本化成社製流動調節剤)0.6部を添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。その後、100℃に調整された押出機で溶融混練して粉体塗料を得た。
得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は21μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の52重量%、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であった。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【0027】
比較例2
平均粒径6μmの1,10−デカンジカルボン酸を用いた以外は比較例1と同様にして粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は14μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が38重量%、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が10重量%以下であった。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【0028】
比較例3
1,10−デカンジカルボン酸を22部の代わりに、1,10−デカンジカルボン酸を15部用い、二軸押出機に供給する速度を半分にした以外は実施例1と同様にして粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径は1μmであり、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下、粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以上であった。粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以上であったため、40℃での貯蔵安定性は低下していた。
得られた粉体塗料実施例1と同様な条件で塗膜化し、物性を評価した。結果を表1に記した。
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料は、粉体塗料に含有される硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μmであって、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下でありかつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であるので、粉体塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の平滑性、硬度を向上することができる。
Claims (8)
- 反応性基を有する硬化型粉体塗料用樹脂および該樹脂の反応性基と反応し得る硬化剤が主成分である粉体塗料であって、粉体塗料中、該硬化剤の体積平均粒径が0.5〜12μm、粒径20μm以上の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の10重量%以下であり、かつ粒径0.5μm以下の硬化剤粒子が全硬化剤粒子の30重量%以下であることを特徴とする粉体塗料。
- 硬化型粉体塗料樹脂が、数平均分子量が2000〜20000であり、かつガラス転移温度が30〜90℃である請求項1記載の粉体塗料。
- 硬化剤が、硬化型粉体塗料樹脂の反応性基当たり、0.7〜1.3倍当量の官能基を含む量で使用される請求項1記載の粉体塗料。
- 硬化型粉体塗料樹脂が、グリシジル基および/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位を15〜50モル%、およびメタクリル酸メチルに由来する構成単位を20〜50モル%含む原料モノマーを重合して得られた、硬化型アクリル樹脂である請求項1記載の粉体塗料。
- 硬化剤が、二塩基酸化合物およびその無水物、三塩基酸以上の多塩基酸化合物およびその無水物、ジアミン化合物、アミン化合物、アミド化合物、メラミン化合物、ヒドラジン化合物、マレイミド化合物、ならびにシアネート化合物から選ばれる1種以上である請求項1〜4記載の粉体塗料。
- 硬化型粉体塗料樹脂、硬化剤、および常圧における沸点が120℃以下である溶剤とを、130℃以下の温度で混合し、次いで、溶剤を減圧下に130℃以下の温度で脱揮・除去して得られる請求項1記載の粉体塗料。
- 溶剤が、硬化剤を溶解し得る溶剤である請求項6記載の粉体塗料。
- 溶剤が、アルコールである請求項6〜7記載の粉体塗料。
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