JP2004269551A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents

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裕俊 宮島
Shinya Nakatani
真也 中谷
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Abstract

【課題】優れた音響耐久性を転動装置に付与することが可能なグリース組成物を提供する。
【解決手段】基油と増ちょう剤と極圧添加剤とを含有するグリース組成物において、前記極圧添加剤は下記式(I)〜(IV)に示す化合物のうちの少なくとも1種であるとともに、その含有量は組成物全体の0.5〜2.5質量%であることを特徴とするグリース組成物。
Figure 2004269551

(ここで、式(I)〜(IV)中のR〜Rはアルキル基又はアリール基である)
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた音響耐久性を転動装置に付与することが可能なグリース組成物に関する。また、本発明は、音響寿命に優れる転動装置に係り、特に、エアコンディショナ,扇風機,ファン等の家庭用電器に組み込まれるモータや、コンパクトディスクドライブ(CDD)等の情報機器に組み込まれるモータに使用される転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
前述のような情報機器,家庭用電器には多くの小型モータが内蔵されており、このモータには小径,ミニアチュアの転がり玉軸受がモータ回転軸の支持用途で組み込まれている。このような用途に用いられる玉軸受に要求される性能は機器に応じて様々であり多岐にわたるが、情報機器,家庭用電器は身の回りで使用される機器であるだけに、軸受の回転に伴って発生する騒音はなるべく小さいことが好ましい。また、転がり軸受は回転時間の経過に従って、回転中に発生する騒音が次第に増大していく傾向があるが、情報機器,家庭用電器は数年間以上使用されることが殆どであるので、その使用期間中にはなるべく音響上昇せず、低騒音であり続けることが要求される。
【0003】
軸受の寿命というと、通常は焼き付いて軸受がもはや回転不能となるまでの時間を考えるが、情報機器,家庭用電器の場合は軸受の使用条件がさほど厳しくないことが多いので、軸受が焼き付くまでには相当の長期間を要し、機器の種類にもよるが焼付き寿命が実際に問題となることは少ない。むしろ、生活空間において快適に使用し続けるために、機器の使い始めから廃棄されるまで低騒音であり続けること、すなわち音響寿命が長いことが実際の市場の要求に即している。
【0004】
また、転がり軸受の動摩擦トルクは軸受の内部諸元に依存するほか、封入されたグリース組成物の粘性抵抗に依存することが知られている。グリース組成物の粘性抵抗は基油の動粘度の影響を主に受けるので、基油の動粘度を低くすることが転がり軸受の動摩擦トルクを低下させる有効な方法である。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−26875号公報
【特許文献2】
特開2000−144162号公報
【特許文献3】
特開2000−239689号公報
【特許文献4】
特開2001−123190号公報
【特許文献5】
特開2001−81492号公報
【特許文献6】
特開平11−325086号公報
【特許文献7】
特開2002−47499号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、基油の動粘度を低くすると、音響耐久性に問題が生じてしまう。なぜなら、例えばエアコンディショナのファンモータの場合にはインバータ制御により比較的低速で運転されることがあるため、軸受の摺動面間に形成される油膜の厚さを確保することが難しくなるからである。また、小型化,高性能化が進む機器においては、軸受が従来以上の高温雰囲気に曝されることも少なくない。このような場合に低粘度の基油を使用していると、油膜の厚さを確保することができず、十分な音響耐久性が得られない可能性がある。
【0007】
このように、基油の動粘度を低くすることには限度があるとともに、軸受の音響耐久性と低トルク性とは、いずれか一方を優先すると他方を犠牲にせざるを得ないという性格を有していた。
このような技術的問題を解決して、相反する2つの性能をともに優れたものとした技術が開示されている。例えば、特開2002−47499号公報には、長繊維構造の金属石けんをグリース組成物の増ちょう剤として用いることによってトルクを低減するとともに、エステル油のような極性基を有する潤滑油を基油として用いることによって優れた音響耐久性を実現した例が開示されている。
【0008】
特開2002−47499号公報に記載のグリース組成物の製造方法は、分子構造中に極性基を有していない潤滑油中で金属石けんを生成し、その後に分子構造中に極性基を有する潤滑油を添加するというものである。
そこで、本発明は前述のような従来技術が有する問題点を解決し、優れた音響耐久性を転動装置に付与することが可能なグリース組成物及び音響寿命に優れる転動装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう剤と極圧添加剤とを含有するグリース組成物において、前記極圧添加剤は下記式(I)〜(IV)に示す化合物のうちの少なくとも1種であるとともに、その含有量は組成物全体の0.5〜2.5質量%であることを特徴とする。
【0010】
【化5】
Figure 2004269551
Figure 2004269551
【0011】
【化6】
Figure 2004269551
Figure 2004269551
【0012】
【化7】
Figure 2004269551
Figure 2004269551
【0013】
【化8】
Figure 2004269551
Figure 2004269551
【0014】
ここで、式(I)〜(IV)中のR〜Rはアルキル基又はアリール基である。そして、R〜Rは全て同種の基であってもよいし、全て異種の基であってもよい。
式(I),(II)のようなイオウ−リン系極圧添加剤や式(III ),(IV)のようなリン系極圧添加剤を含有するグリース組成物は、転動装置の耐摩耗性を向上させることができるので、優れた音響耐久性を転動装置に付与することが可能である。
【0015】
例えば、軸受の音響劣化は、内外輪,転動体,保持器等の軸受構成部品の摺動面に形成されるEHL油膜が断続的に破断するために摩擦二面間の直接接触が起こり、その結果、軸受構成部品が摩耗して変形することによって生じる。しかしながら、前記式(I)〜(IV)の極圧添加剤は、反応性が高く摺動面の摩耗防止に効果的であるので、軸受構成部品の形状が初期状態に近い状態に保たれ、優れた音響寿命が実現される。
【0016】
極圧添加剤の含有量は組成物全体の0.5〜2.5質量%であることが好ましく、この範囲を外れると、転動装置に十分に優れた音響耐久性を付与することができないおそれがある。
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記R〜Rのうち少なくとも1つは、アルキル基で置換されたフェニル基であることを特徴とする。
【0017】
グリース組成物中には空気中の湿気に由来して0.1%以下程度の水分が含まれているので、この水分によって前記式(I)〜(IV)の極圧添加剤が加水分解され、チオリン酸,リン酸等の酸性物質が生成する場合がある(下記の化学反応式を参照)。そうすると、前記酸性物質によって転動装置に錆や腐食が生じるおそれがある。しかしながら、アルキル基で置換されたフェニル基は立体障害が大きいので、前記極圧添加剤が加水分解しにくい。
【0018】
立体障害の大きさはアルキル基の置換位置によって異なり、チオリン酸基,リン酸基が結合している位置に対してオルト位が最も大きく、次いでメタ位,パラ位の順である。そして、両側のオルト位にアルキル基を有する場合が、立体障害が最も大きい。
なお、後述するIRGALUBE TPPTのようにR〜Rの全てがフェニル基である場合には、アルキル基で置換されていなくてもフェニル基の立体障害が大きいため加水分解しにくい。ただし、アルキル基で置換されたフェニル基を有している方が、基油に対する溶解性が大きいという利点がある。例えば、アルキル基で置換されていないフェニル基を有する添加剤の例であるIRGALUBE TPPTの場合は、添加量の推奨値は0.5%以下であるとカタログに記載されている。これに対して、アルキル基で置換されたフェニル基を有する添加剤の例であるIRGALUBE 211及びIRGALUBE 232の場合は、添加量の推奨値はそれぞれ1.0%以下及び2%以下である(後者の方がアルキル基の鎖長が長い)。
【0019】
【化9】
Figure 2004269551
【0020】
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、塩基性を有する有機化合物を含有するとともに、その含有量は組成物全体の0.3〜3.0質量%であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項3に記載のグリース組成物において、前記塩基性を有する有機化合物は、アミン及び金属スルフォネートの少なくとも一方であることを特徴とする。
【0021】
前述したように、グリース組成物中の水分によって前記式(I)〜(IV)の極圧添加剤が加水分解する場合がある。しかしながら、塩基性を有する有機化合物は前記酸性物質と反応して塩を生成し(下記の化学反応式を参照)、前記酸性物質の腐食性を消失させるので、転動装置に錆や腐食が生じにくい。その結果、転動装置の耐摩耗性が向上し、転動装置の音響耐久性が優れたものとなる。
【0022】
【化10】
Figure 2004269551
【0023】
塩基性を有する有機化合物の含有量は組成物全体の0.3〜3.0質量%であることが好ましく、この範囲を外れると、転動装置に十分に優れた音響耐久性を付与することができないおそれがある。
なお、このような反応によって生じた塩は摩耗防止性能を有するので、本発明のグリース組成物は、転動装置に錆や腐食が生じることを抑制するとともに、転動装置に優れた音響耐久性を付与することができる。
【0024】
塩基性を有する有機化合物であるアミンは、その種類は特に限定されるものではないが、基油への溶解性を考えると、第2級アミン又は第3級アミンが好ましい。特に、第2級アミンは酸化防止剤としての機能も有しているため、より好ましい。第1級アミンでは、置換基の種類によっては基油への溶解性が不十分な場合がある。
【0025】
また、塩基性を有する有機化合物である金属スルフォネートは、その種類は特に限定されるものではないが、塩基性カルシウムスルフォネート等が好ましい。
さらに、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物において、前記基油はエステル系合成油であり、その40℃における動粘度は20〜80mm/sであることを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明に係る請求項6のグリース組成物は、請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤はリチウム石けんであり、その含有量は組成物全体の5〜40質量%であることを特徴とする。
リチウム石けんは、他の増ちょう剤と比較して静音性に優れる点で好ましい。また、エステル系合成油は、前記極圧添加剤の溶解性が高いため前記極圧添加剤が結晶として析出しにくい点、耐熱性を有する点、流動性が高い点で好ましい。これら4つの点は、転動装置をモータに適用する場合に必要とされる特性である。
【0027】
なお、エステル系合成油の40℃における動粘度が20mm/s未満であると、油膜の膜厚が不十分となるので、前記極圧添加剤を含有していても、転動装置に十分に優れた音響耐久性を付与することができないおそれがある。一方、80mm/s超過であると、転動装置のトルクが過大となるおそれがある。
また、リチウム石けんの含有量が組成物全体の5質量%未満であると、グリース状態を維持することが困難となる。一方、40質量%超過であると、グリース組成物が硬化しすぎて十分な潤滑性を発揮することが困難となる。
【0028】
ただし、耐摩耗性及びトルク特性を考慮すると、10〜35質量%であることがより好ましい。本発明のグリース組成物は極圧添加剤を含有することに特徴があり、それにより耐摩耗性が優れたものとなるが、増ちょう剤を10質量%以上含有することにより、耐摩耗性がさらに優れたものとなる。特に、増ちょう剤がリチウム石けんである場合は、増ちょう剤の含有量が少ないとグリース組成物が転動装置から漏出しやすいという問題があるが、含有量が10質量%以上であればこのような問題はほとんどない。
【0029】
また、増ちょう剤の含有量が多いとグリース組成物が硬くなり、25質量%を超えると混和ちょう度が200以下になるという問題が生じやすいが、極圧添加剤を含有することによってこのような問題は生じにくく、混和ちょう度を230〜350の範囲とすることができる。ただし、35質量%を超えると、グリース組成物が硬くなり過ぎて混和ちょう度の低下を抑えることができない場合があるので、トルク特性から35質量%以下とすることがより好ましい。
【0030】
さらに、本発明に係る請求項7の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜6のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0031】
このような構成の転動装置は、前述したような理由により、音響寿命に優れている。
本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
なお、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
この玉軸受(呼び番号6202ZZ、内径15mm,外径35mm,幅11mm)は、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在に配設された複数の玉3と、複数の玉3を保持する保持器4と、外輪2のシール溝2a,2aに取り付けられたシールド5,5と、で構成されている。また、内輪1と外輪2とシールド5,5とで囲まれた空隙部内には該空隙部の容積の30体積%のグリース組成物6が充填され、シールド5により玉軸受内に密封されている。そして、このようなグリース組成物6により、前記両輪1,2の軌道面と玉3との接触面が潤滑されている。
【0033】
このグリース組成物6には、ステアリン酸リチウムが増ちょう剤として使用されており、40℃における動粘度が25mm/sであるポリオールエステル油が基油として使用されている。さらに、このグリース組成物6には、極圧添加剤としてトリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のIRGALUBE 232)が含有され、塩基性を有する有機化合物としてN−フェニル−1−ナフチルアミンが含有されている。
【0034】
増ちょう剤の含有量は組成物全体の18質量%、極圧添加剤の含有量は組成物全体の1質量%、塩基性を有する有機化合物の含有量は組成物全体の1質量%であり、残部は基油である。また、グリース組成物6の混和ちょう度は240である。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、基油,増ちょう剤,極圧添加剤,及び塩基性を有する有機化合物の種類,含有量は上記のものに限定されるものではなく、また、グリース組成物6には上記以外の各種添加剤を添加してもよい。
使用可能なイオウ−リン系極圧添加剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のIRGALUBE 63,IRGALUBE 211,IRGALUBE TPPT等があげられる。また、リン系極圧添加剤としては、例えば、城北化学工業株式会社製のJP360,JP351,JP355,JP308,JP313,JP613Mや、トリクレジルフォスフェート等があげられる。さらに、塩基性を有する有機化合物としては、松村石油研究所製のスルホールCa−45,スルホール1040等のカルシウムスルフォネートがあげられる。
【0036】
また、本実施形態においては転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0037】
また、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
次に、種々のグリース組成物を封入した玉軸受を用意して、その音響寿命を評価した。玉軸受は前述した呼び番号6202ZZの玉軸受と同様の構成であり、表1〜3に示すような組成のグリース組成物が前記空隙部の容積の30体積%封入されている。
【0038】
【表1】
Figure 2004269551
【0039】
【表2】
Figure 2004269551
【0040】
【表3】
Figure 2004269551
【0041】
これらのグリース組成物には、増ちょう剤としてステアリン酸リチウム(各表においては「StLi」と表記してある),12−ヒドロキシステアリン酸リチウム(同じく「HStLi」),又はジウレアが使用されており、基油としてポリオールエステル油(同じく「POE」),ジエステル油,又はポリα−オレフィン油(同じく「PAO」)が使用されている。
【0042】
また、極圧添加剤としては、トリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(IRGALUBE 232),トリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(IRGALUBE 211),トリフェニルフォスフォロチオネート(IRGALUBE TPPT),無灰ジチオフォスフェート(IRGALUBE 63),トリクレジルフォスフェート,トリスノニルフェニルホスファイト(JP360),トリデシルホスファイト(JP310),トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(JP308),又はペンタクロロジフェニルが使用されている。これらは、各表においては、それぞれ極圧添加剤1〜9と表記してある。例えば、トリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(IRGALUBE 232)は極圧添加剤1であり、トリクレジルフォスフェートは極圧添加剤5であり、ペンタクロロジフェニルは極圧添加剤9である。
【0043】
さらに、塩基性を有する有機化合物としては、N−フェニル−1−ナフチルアミン,ジ(オクチル化フェニル)アミン,カルシウムスルフォネート(スルホールCa−45),又はカルシウムスルフォネート(スルホール1040)が使用されている。これらは、各表においては、それぞれ有機化合物1〜4と表記してある。例えば、N−フェニル−1−ナフチルアミンは有機化合物1であり、ジ(オクチル化フェニル)アミンは有機化合物2である。
【0044】
なお、表1〜3には記載されていないが、使用した基油の40℃における動粘度は、基油の種類にかかわらず全て25mm/sである。また、全てのグリース組成物の混和ちょう度は、240である。
次に、音響寿命の評価方法について説明する。まず、玉軸受の音響寿命を評価する回転試験装置の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0045】
一対の玉軸受20,20が、シャフト21と円筒状のケーシング22との間に介装されている。このとき、玉軸受20は、49Nの予圧(アキシアル荷重)が負荷された状態で回転試験装置に組み込まれている。そして、シャフト21の外周面に固定されたロータ23と、該ロータ23にギャップを介して周面対向するようにケーシング22の内周面に固定されたステータ24と、で形成された駆動モータ25によって、シャフト21が回転駆動されるようになっている。
【0046】
このような回転試験装置を、温度90℃,湿度95%RHに保持した恒温恒湿槽内に設置し、回転速度1000min−1で回転(内輪回転)させた。一定時間毎に玉軸受20を回転試験装置から取り外し、アンデロンメータでアンデロン値(ハイバンド)を測定し、再び回転試験装置に取り付けて回転試験を続行した。このような操作を繰り返してアンデロン値の経時変化を観測し、アンデロン値が5アンデロンに達するまでの回転時間を音響寿命とした。ただし、1種の玉軸受につき10個試験を行い、その平均値を音響寿命とした。
【0047】
評価結果を表1〜3に併せて示す。なお、表1〜3に記載の音響寿命の数値は、比較例1の玉軸受の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。
表1〜3から分かるように、実施例1〜9の玉軸受は、極圧添加剤と塩基性を有する有機化合物とを含有するグリース組成物が充填されているので、比較例1,2の3倍以上の優れた音響寿命を示した。なお、イオウ−リン系極圧添加剤(実施例1〜5)とリン系極圧添加剤(実施例6〜9)とを比較すると、前者の方が長寿命であった。また、実施例10,11の玉軸受は、グリース組成物に塩基性を有する有機化合物が含有されていないものであるが、実施例1〜9の玉軸受と比べるとやや低いものの比較例1,2よりも優れた音響寿命を示した。
【0048】
また、音響寿命の評価が終了した後に玉軸受の内部を調べたところ、実施例1〜9の玉軸受には錆の発生は認められなかったのに対して、実施例10,11の玉軸受には錆の発生がわずかに認められた。このことから、塩基性を有する有機化合物が、極圧添加剤の加水分解によって生じた酸と反応して中和し、腐食を防いだことことが分かる。
【0049】
次に、グリース組成物中の極圧添加剤及び塩基性を有する有機化合物の含有量について検討した。すなわち、実施例1において極圧添加剤及び塩基性を有する有機化合物の含有量を種々変更したグリース組成物を封入した玉軸受を用意して、音響寿命を前述と同様にして評価した。
これらの評価結果を図3のグラフにまとめて示す。なお、グラフの音響寿命の値は、前述の比較例1の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。
【0050】
グラフから、イオウ−リン系極圧添加剤の含有量は、0.5〜2.5質量%が好ましく、0.7〜2.5質量%がより好ましいことが分かる。2.5質量%を超えると、塩基性を有する有機化合物の量が不足して前述の中和が完全には行われなくなるため、音響寿命が若干低下した。
また、塩基性を有する有機化合物の含有量は、0.3質量%以上であれば音響寿命を向上させる効果があり、0.6質量%以上でその効果が大きい。0.3質量%未満であると、極圧添加剤の加水分解により生じる酸を完全に中和することができず、錆が発生しやすくなる。また、3.5質量%の場合は、含有量が多すぎるためグリース組成物の性状が変化して潤滑性能が損なわれ、音響寿命が若干低下した。これらのことから、塩基性を有する有機化合物の含有量は、0.3〜3.0質量%が好ましく、0.6〜3.0質量%がより好ましいと言える。
【0051】
次に、ボールオンディスク摩擦摩耗試験機を用いて往復動摩擦摩耗試験を行い、グリース組成物の耐摩耗性を評価した。まず、該試験機の構成及び試験方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。
試験台31上に設置された試験平板32に、ホルダー33に取り付けられた試験球34(直径10mm)を載置し、試験平板32と試験球34との間にグリース組成物を介在させた。そして、ホルダー33に垂直荷重を負荷することにより、試験球34で試験平板32を押圧しながら(最大面圧1.1GPa)、カム35によりホルダー33を揺動させた。試験台31にはヒータ36と熱電対37とが備えられており、試験平板32の温度を制御できるようになっている。また、試験台31にはロードセル38が備えられており、前述の揺動を観測できるようになっている。
【0052】
なお、試験平板32は軸受鋼SUJ2製で、硬さはHRC58〜62、表面粗さは0.007μmRaである。また、試験球34は軸受鋼SUJ2製で、硬さはHRC62〜67、表面粗さは0.009μmRaである。さらに、試験温度は60〜140℃、揺動周波数は10Hz、揺動幅は約0.7mm、揺動時間は10minである。
【0053】
図5に示すように、試験平板32には略楕円形の摩耗痕が刻み付けられるので、揺動方向に対して直角方向の径(摩耗痕径)の大きさによって、使用したグリース組成物の耐摩耗性を評価した。
まず、添加した極圧添加剤によるグリース組成物の耐摩耗性の変化を調査した。このグリース組成物は、基油がポリオールエステル油(40℃における動粘度は32mm/s)、増ちょう剤がステアリン酸リチウム、極圧添加剤がトリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(IRGALUBE 211)又はトリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(IRGALUBE 232)である。そして、これらの含有量は、それぞれ80質量%,19質量%,1質量%である。なお、比較のため、極圧添加剤を含有していないベースグリースについても同様に評価した。ベースグリースの基油及び増ちょう剤の含有量は、それぞれ80質量%,20質量%である。
【0054】
結果を図6のグラフに示す。グラフから分かるように、極圧添加剤を含有するグリース組成物は、含有していないベースグリースと比較して、耐摩耗性が優れていた。
次に、増ちょう剤の含有量とグリース組成物の耐摩耗性との相関性を調査した。このグリース組成物は、基油がポリオールエステル油(40℃における動粘度は45mm/s)、増ちょう剤がステアリン酸リチウム、極圧添加剤がトリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(IRGALUBE 232)、塩基性を有する有機化合物がN−フェニル−1−ナフチルアミンである。極圧添加剤及び塩基性を有する有機化合物の含有量は、いずれも1質量%である。そして、増ちょう剤の含有量を0〜20質量%の間で変化させ、基油の含有量は残部とした。
結果を図7のグラフに示す。グラフから分かるように、増ちょう剤の含有量が0〜20質量%の範囲においては、含有量が多いほど耐摩耗性が優れていた。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグリース組成物は、優れた音響耐久性を転動装置に付与することが可能である。また、本発明の転動装置は音響寿命に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
【図2】玉軸受の音響寿命を評価する回転試験装置の断面図である。
【図3】極圧添加剤の含有量と音響寿命との相関を示すグラフである。
【図4】ボールオンディスク摩擦摩耗試験機の構成を示す説明図である。
【図5】試験平板に刻み付けられた摩耗痕を示す概念図である。
【図6】グリース組成物中の極圧添加剤とグリース組成物の耐摩耗性との相関を示すグラフである。
【図7】グリース組成物中の増ちょう剤の含有量とグリース組成物の耐摩耗性との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 玉
6 グリース組成物
20 玉軸受

Claims (7)

  1. 基油と増ちょう剤と極圧添加剤とを含有するグリース組成物において、
    前記極圧添加剤は下記式(I)〜(IV)に示す化合物のうちの少なくとも1種であるとともに、その含有量は組成物全体の0.5〜2.5質量%であることを特徴とするグリース組成物。
    Figure 2004269551
    Figure 2004269551
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    Figure 2004269551
    Figure 2004269551
    Figure 2004269551
    Figure 2004269551
    ここで、式(I)〜(IV)中のR〜Rはアルキル基又はアリール基である。
  2. 前記R〜Rのうち少なくとも1つは、アルキル基で置換されたフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 塩基性を有する有機化合物を含有するとともに、その含有量は組成物全体の0.3〜3.0質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物。
  4. 前記塩基性を有する有機化合物は、アミン及び金属スルフォネートの少なくとも一方であることを特徴とする請求項3に記載のグリース組成物。
  5. 前記基油はエステル系合成油であり、その40℃における動粘度は20〜80mm/sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物。
  6. 前記増ちょう剤はリチウム石けんであり、その含有量は組成物全体の5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物。
  7. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜6のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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