JP2004268758A - 車両用自動開閉装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両用自動開閉装置のクラッチ機構を改良することにより、自動開閉装置全体を小型・軽量化することである。
【解決手段】トランクリッド12は連結アーム18を介して電動アクチュエータ17の揺動アーム44に連結されており、この揺動アーム44が揺動することにより開閉される。揺動アーム44はトルクリミッタを介して電動モータ21に回転駆動される出力軸24に相対回転自在に装着されており、その基端部45には開側係合部47と閉側係合部48との間に位置する遊び部51が形成されている。また、出力軸24にはプレート部材42を介して遊び部51に配置された出力ピン43が固定されている。そして、出力軸24が回転すると出力ピン43は開側係合部47と係合して揺動アーム44を開方向に駆動するとともに閉側係合部48に係合して揺動アーム44を閉方向に駆動する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両に開閉自在に装着された開閉部材を自動的に開閉する車両用自動開閉装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両にはドア、バックドア、トランクリッド等の開閉部材が随所に設けられている。例えば、セダン車等の車両にはヒンジを介して開閉自在にトランクリッドが装着されており、荷物を積み込むためのトランクルームはこのトランクリッドにより開閉されるようになっている。
【0003】
このようなトランクリッドには、通常、その開閉操作を容易にするためにトーションバーやガスステー等の開閉装置が装着されており、ロック機構が解除されるとトランクリッドは開閉機構により僅かな操作力で開放されるようになっている。
【0004】
しかし、この開閉装置ではトランクリッドを開く時の操作力は軽減されるが、閉じる時の操作は操作者が全て手動により行うものであった。そこで、トランクリッドを開く動作のみならず閉じる動作をも自動化した自動開閉装置を搭載した車両が開発され、増加する傾向にある。また、自動開閉装置を設置すれば運転席からトランクリッドを遠隔操作できるため、この利便性からも自動開閉装置の取り付け要請は少なくない。
【0005】
このような自動開閉装置は減速機構を介して電動モータにより揺動駆動される揺動アームを有しており、この揺動アームの先端部は連結ロッド等を介してトランクリッドに連結されている。そして、電動モータにより揺動アームが揺動駆動されると、その揺動運動がトランクリッドに伝達されて開閉動作が行われるようになっている。
【0006】
しかし、このような自動開閉装置では、トランクリッドを手動により開閉操作する際にはトランクリッドの移動とともに減速機構を介して電動モータが回転されることになり、その開閉操作が重くなるという問題があった。
【0007】
そこで、従来の自動開閉装置では揺動アームと電動モータとの間に電磁摩擦式のクラッチ機構を設け、トランクリッドの開閉動作を自動や手動で容易に行い得るようにしている。つまり、トランクリッドが電動モータにより自動開閉される際には電磁クラッチは接続状態となって電動モータの動力はトランクリッドに伝達され、トランクリッドが手動で開閉される際には電磁クラッチは遮断状態となって電動モータとトランクリッドとの間の動力伝達は遮断される。したがって、手動で開閉操作する際には電動モータがトランクリッドとともに回転されることが無く、その操作感は自動開閉装置を持たない通常のトランクリッドと同程度に向上される(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、電磁摩擦式のクラッチ機構は、開閉動作中のトランクリッドに過大な負荷が加えられた場合などには、駆動側ディスクと従動側ディスクとの間に滑りを生じて自動的に動力伝達を遮断する所謂トルクリミッタとして機能する。これにより、トランクリッドに過大な負荷が加えられた場合であっても、車体や減速機構等の機構部分を保護することができるようになっている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−201854号公報(第2−3頁、第1−4図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような自動開閉装置に用いられる電磁クラッチは、駆動側ディスクと従動側ディスクとを圧着させるために磁力を生じるコイル磁気回路や鉄心を用いて構成されているが、開閉部材を自動開閉可能とするだけの動力伝達維持力を発揮させる必要があり、そのため両ディスクの圧着面の外径を小さくしたり、コイル磁気回路の厚みを薄くすることが困難であった。したがって、このような電磁クラッチを自動開閉装置に用いる場合は、装置全体の小型・軽量化の妨げとなる要因となっていた。
【0011】
本発明の目的は、車両用自動開閉装置のクラッチ機構を改良することにより、自動開閉装置全体を小型・軽量化することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両用自動開閉装置は、ヒンジを介して車両に開閉自在に設けられた開閉部材を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であって、中立位置を起点として前記開閉部材の全閉位置に対応する閉側端位置と前記開閉部材の全開位置に対応する開側端位置とに電動モータにより駆動される出力部材と、前記開閉部材に連結される連結部と前記中立位置から前記開側端位置へ移動する前記出力部材に係合する開側係合部および前記中立位置から前記閉側端位置へ移動する前記出力部材に係合する閉側係合部を備え、前記出力部材により前記開閉部材を全閉位置とする閉位置と全開位置とする開位置との間で駆動されるとともに前記出力部材が前記中立位置にあるときには前記出力部材に対して前記閉位置と前記開位置との間で遊び移動自在の移動部材と、前記電動モータと連動する駆動側摩擦板と前記出力部材と連動する従動側摩擦板および前記駆動側摩擦板と前記従動側摩擦板とを互いに圧着させるばね部材とを備え、前記開閉部材に所定値以上の負荷が加えられたときには前記電動モータと前記開閉部材との間の動力伝達を遮断する動力伝動制限手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記電動モータにより回転駆動される出力軸に前記出力部材を固定し、前記出力軸に前記移動部材を相対回転自在に装着し、前記開側係合部と前記閉側係合部との間に設けられた遊び部に前記出力部材を配置したことを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記開閉部材を全開位置に向けて付勢する付勢手段を前記車両に設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記開閉部材をトランクリッドとしたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態であるパワートランクリッド装置が設けられた車両の一部を後方から示す斜視図である。また、図2は図1に示すパワートランクリッド装置の全閉状態を示す側面図であり、図3は図1に示すパワートランクリッド装置の全開状態を示す側面図である。
【0018】
図1に示すように、この車両11の後端部には開閉部材としてのトランクリッド12が設けられている。このトランクリッド12は2つのヒンジ13を介して車両11に装着されており、このヒンジ13の開閉中心軸13aを支点として図2に示す全閉位置と図3に示す全開位置との間で車両11の上下方向に開閉自在となっている。そして、荷物等を搭載するために形成されたトランクルーム14の開口部はこのトランクリッド12により開閉される。
【0019】
ヒンジ13は、それぞれ車両11に固定される支持部13bとトランクリッド12に固定されるアーム部13cとを有しており、支持部13bとアーム部13cとの間にはそれぞれ付勢手段としてのトーションバー15が装着されている。これらのトーションバー15はそれぞれ一端が支持部13bに固定され、他端がアーム部13cに係合されており、トランクリッド12が全開位置から全閉位置へ向かう閉方向に移動されると軸回りに捻られるようになっている。したがって、トランクリッド12が全閉状態となったときにはトーションバー15は弾性力が蓄えられた状態となり、この弾性力によりトランクリッド12は全開位置に向けて付勢される。また、トーションバー15の捻りはトランクリッド12が全開状態となったときにも残留するようになっており、トランクリッド12はその弾性力により全開位置に保持される。図示する場合には、2つのトーションバー15がそれぞれのヒンジ13に対して装着されているが、トランクリッド12の重量や要求される開閉速度に応じていずれか一方のトーションバー15のみを設けるようにしても良い。また、付勢手段としてはトーションバー15に限らず、高圧ガスが封入されたガスステー等を用いてもよい。
【0020】
トランクルーム14の開口端には図示しないロック機構が設けられており、全閉状態となったトランクリッド12はこのロック機構により全閉位置に保持される。ロック機構としては、例えば、車両11に設けられたピン状のストライカにトランクリッド12に設けられたフック状のロック部材を係合させる機構のものが用いられる。ロック部材は解除ハンドルや解除レバーもしくはトランクリッド開閉スイッチなどに連動して作動され、必要に応じて解錠される。
【0021】
この車両11にはトランクリッド12を自動的に開閉するために車両用自動開閉装置としてのパワートランクリッド装置16が設けられている。このパワートランクリッド装置16はトランクルーム14内の右側側部に固定された電動アクチュエータ17を有しており、トランクリッド12の自動開閉動作はこの電動アクチュエータ17の出力が連結アーム18を介してトランクリッド12に伝達されることにより行われる。
【0022】
図4は図2、図3に示す電動アクチュエータの詳細を示す説明図であり、図5は図4に示すトルクリミッタの詳細を示す断面図である。
【0023】
図4に示すように、電動アクチュエータ17にはその駆動源として電動モータ21が設けられており、この電動モータ21の出力はトルクリミッタ22と減速機構23を介して出力軸24に伝達されるようになっている。
【0024】
電動モータ21には図示しない電子制御ユニットつまりECUが接続されている。このECUは各種制御信号を演算するマイクロプロセッサ(CPU)と、制御プログラム、演算式およびマップデータなどが格納されるROM、一時的にデータを格納するRAM等のメモリを有しており、電動モータ21の駆動制御はこのECUにより行われる。
【0025】
動力伝動制限手段であるトルクリミッタ22はケース22aに回転自在に支持された回転軸25を有しており、この回転軸25にはケース22a内に収容されたウォームホイル26が相対回転自在に装着されている。電動モータ21はこのケース22aに固定されており、電動モータ21の図示しないアマチュア軸はこのケース22a内に突出している。アマチュア軸の外周面にはウォームホイル26に噛み合う図示しないウォームが形成されており、電動モータ21が作動するとアマチュア軸の回転はウォームホイル26に減速して伝達される。
【0026】
ウォームホイル26の一側面には駆動側摩擦板27が一体的に形成されており、この駆動側摩擦板27に対向する位置には従動側摩擦板28が配置されている。従動側摩擦板28は回転軸25に対して図示しないキーもしくはスプライン等を介して接続されており、回転軸25と一体的に回転するとともに回転軸25に対して軸方向に移動自在となっている。また、回転軸25の先端部に形成された雄ねじ部25aにはナット31がネジ結合されており、このナット31と従動側摩擦板28との間にはばね部材としての板ばね32が挿入されている。従動側摩擦板28はこの板ばね32のばね力により駆動側摩擦板27に向けて付勢されており、これにより、駆動側摩擦板27と従動側摩擦板28とは互いに圧着されている。したがって、ウォームホイル26を介して電動モータ21に接続された駆動側摩擦板27が電動モータ21により回転駆動されると、その回転トルクはこれらの摩擦板27,28の間に働く摩擦力により従動側摩擦板28に伝達され、従動側摩擦板28を介して回転軸25を回転させる。また、これらの摩擦板27,28の間に所定値以上の負荷つまり過大な回転トルクが加わったときには、電動モータ21と連動する駆動側摩擦板27と従動側摩擦板28の間に滑りが生じて電動モータ21と回転軸25との間の動力伝達が自動的に遮断される。
【0027】
このトルクリミッタ22の伝達可能トルクの上限値は、ナット31の締め込み量を変化させて板ばね32の圧縮率を調整することにより所定の値に設定することができる。そして、この場合では、伝達可能トルクの上限値は電動アクチュエータ17の機構部分やヒンジ13等を破損する恐れのある過大な負荷が加えられたときに動力伝達が遮断されるように予め実験等により得られた値に設定されている。
【0028】
減速機構23は回転軸25に固定された入力ギヤ33と中間軸34に固定された大小の2つのギヤ35,36および出力軸24に固定された出力ギヤ37とを有しており、回転軸25の回転はこれらのギヤを介して減速して出力軸24に伝達される。つまり、出力軸24はトルクリミッタ22と減速機構23とを介して電動モータ21に接続されており、電動モータ21が正逆回転すると揺動運動するようになっている。なお、図4における符号38a〜38dはそれぞれ中間軸34や出力軸24をギヤケース41に回転自在に支持する軸受けである。
【0029】
出力軸24には円盤状のプレート部材42が固定されており、このプレート部材42には出力軸24から所定距離だけ離れて出力部材としての出力ピン43が固定されている。つまり、この出力ピン43はプレート部材42を介して出力軸24に固定されている。この出力ピン43は断面円形状に形成されており、その軸方向は出力軸24と平行とされている。そして、この出力ピン43は電動モータ21により出力軸24と一体的に回転駆動されて、中立位置を起点としてトランクリッド12の全閉位置に対応する閉側端位置と全開位置に対応する開側端位置との間で揺動するようになっている。なお、中立位置とは、開側端位置と閉側端位置との中間の位置である。
【0030】
また、出力軸24にはプレート部材42に隣接して移動部材としての揺動アーム44が相対回転自在に装着されている。この揺動アーム44は前述のように出力軸24に相対回転自在に装着される基端部45と基端部45から径方向に延びるアーム部46とを有しており、アーム部46の先端は連結アーム18を介してトランクリッド12に連結される連結部46aとなっている。つまり、揺動アーム44は連結アーム18を介してトランクリッド12に連結されており、トランクリッド12を全閉位置とする閉位置と全開位置とする開位置との間で出力軸24を揺動中心として揺動自在となっている。
【0031】
揺動アーム44の基端部45には、所定の角度間隔を隔てて互いに対向する開側係合部47と閉側係合部48とが設けられており、これらの係合部47,48の間には周方向に延びて切り欠かれた遊び部51が設けられている。そして、前述の出力ピン43は遊び部51に配置されている。
【0032】
開側係合部47は揺動アーム44が閉位置にあるときには中立位置にある出力ピン43に接するようになっており、閉側係合部48は揺動アーム44が開位置にあるときには中立位置にある出力ピン43に接するようになっている。
【0033】
そして、揺動アーム44が閉位置にあるときに出力ピン43が中立位置から開側端位置に向けて移動すると、開側係合部47と出力ピン43とが係合して揺動アーム44は出力ピン43に駆動されて閉位置から開位置に移動される。反対に、揺動アーム44が開位置にあるときに出力ピン43が中立位置から閉側端位置に向けて移動すると、閉側係合部48と出力ピン43とが係合して揺動アーム44は出力ピン43に駆動されて開位置から閉位置に移動される。このように、揺動アーム44は出力ピン43により開位置と閉位置との間で駆動される。
【0034】
また、出力ピン43が中立位置に停止しているときには、揺動アーム44が閉位置から開位置に移動しても開側係合部47は出力ピン43から離れる方向に移動するので、揺動アーム44の移動により出力ピン43が駆動されることがない。同様に出力ピン43が中立位置に停止しているときには、揺動アーム44が開位置から閉位置に移動しても閉側係合部48は出力ピン43から離れる方向に移動するので、揺動アーム44の移動により出力ピン43が駆動されることがない。つまり揺動アーム44はトランクリッド12の開閉範囲つまり開位置と閉位置との間で中立位置に停止した状態の出力ピン43に対して遊び移動自在となっている。
【0035】
図6(a)〜(d)はトランクリッドが自動開作動される過程を示す正面図であり、図7(a)〜(d)はトランクリッドが自動閉作動される過程を示す正面図である。また、図8(a)〜(c)はトランクリッドが手動で開かれる過程を示す正面図であり、図9(a)〜(c)はトランクリッドが手動で閉じられる過程を示す正面図である。
【0036】
次に、このような構造のパワートランクリッド装置16の作動について説明する。
【0037】
まず、全閉状態となったトランクリッド12をパワートランクリッド装置16により自動開作動させる場合について説明する。
【0038】
図6(a)に示すように、トランクリッド12が全閉状態となってロック機構により全閉位置に保持されているときには、出力ピン43は中立位置にて停止しており、揺動アーム44は開側係合部47を出力ピン43に接した状態で閉位置にて停止している。この状態から図示しないトランクリッド開閉スイッチを開側に投入することにより、電動アクチュエータ17によるトランクリッド12の自動開作動が開始される。
【0039】
自動開作動においては、まず、ECUからの指令によりロック機構が解錠される。次いで、ECUからの指令により電動モータ21が作動され、出力ピン43は中立位置から開側端位置に向けて移動を開始する。出力ピン43が移動すると開側係合部47においてこの出力ピン43に係合している揺動アーム44は、図6(b)に示すように、出力ピン43に押されながら閉位置から開位置に向けて移動し、その変位が連結アーム18を介して伝達されることによりトランクリッド12は全閉位置から全開位置に向けて開方向に移動する。そして、図6(c)に示すように、出力ピン43が開側端位置にまで移動して揺動アーム44が開位置に達するとトランクリッド12は全開状態となる。
【0040】
出力ピン43が開側端位置まで達すると電動モータ21は逆転され、出力ピン43は開側端位置から中立位置に向けて移動される。そして、図6(d)に示すように、出力ピン43は揺動アーム44の閉側係合部48に接した状態で中立位置にて停止して、自動開作動が終了される。この戻り動作においては出力ピン43は開側係合部47から離れて揺動アーム44に形成された遊び部51を移動することになるので、揺動アーム44は出力ピン43とともに閉位置に戻ることがなく開位置に停止したままである。また、出力ピン43が中立位置に戻ることにより揺動アーム44と出力ピン43との係合が解除されることになるが、トランクリッド12はトーションバー15の弾性力により開方向に付勢されているので、出力ピン43が中立位置に戻ってもトランクリッド12は全開位置に保持された状態となる。
【0041】
次に、全開状態となったトランクリッド12を自動閉作動させる場合について説明する。
【0042】
図7(a)に示すように、トランクリッド12が全開状態のときには、図6(d)に示す自動開作動の終了した状態で出力ピン43は中立位置にて停止しており、揺動アーム44は閉側係合部48を出力ピン43に接した状態で開位置にて停止している。この状態から図示しないトランクリッド開閉スイッチを閉側に投入することにより、電動アクチュエータ17によるトランクリッド12の自動閉作動が開始される。
【0043】
自動閉作動においては、まず、ECUからの指令により電動モータ21が作動され、出力ピン43は自動開作動のときとは逆に中立位置から閉側端位置に向けて移動を開始する。出力ピン43が移動すると閉側係合部48においてこの出力ピン43に係合している揺動アーム44は、図7(b)に示すように、出力ピン43に押されながら開位置から閉位置に向けて移動し、その変位が連結アーム18を介して伝達されることによりトランクリッド12は全開位置から全閉位置に向けて閉方向に移動する。そして、図7(c)に示すように、出力ピン43が閉側端位置にまで移動して揺動アーム44が閉位置に達するとトランクリッド12は全閉状態となり、ロック機構により全閉位置に保持される。
【0044】
出力ピン43が閉側端位置まで達すると電動モータ21は逆転され、出力ピン43は閉側端位置から中立位置に向けて移動される。そして、図7(d)に示すように、出力ピン43は揺動アーム44の開側係合部47に接した状態で中立位置にて停止して、自動閉作動が終了される。この戻り動作においては出力ピン43は閉側係合部48から離れて揺動アーム44に形成された遊び部51を移動することになるので、揺動アーム44は出力ピン43とともに開位置に戻ることがなく閉位置に停止したままである。
【0045】
このように、このパワートランクリッド装置16は電動モータ21を駆動源としてトランクリッド12を自動的に開閉することができる。
【0046】
一方、このパワートランクリッド装置16はトランクリッド12を自動で開閉することができるとともにトランクリッド12を手動で開閉することもできる。
【0047】
以下に、トランクリッド12を手動で開閉操作する場合について説明する。
【0048】
全閉状態のトランクリッド12は、解除レバー等の操作によりロック機構を解錠した後、トランクリッド12を上方に持ち上げることにより手動で開くことができる。
【0049】
自動開閉作動の際と同様に、トランクリッド12が全閉状態のときには、図8(a)に示すように、出力ピン43は中立位置にて停止しており、揺動アーム44は開側係合部47を出力ピン43に接した状態で閉位置にて停止している。この状態からトランクリッド12が手動により開かれると、図8(b)に示すように、揺動アーム44はトランクリッド12に連動して閉位置から開位置に向けて移動し、トランクリッド12が全開位置に達すると、図8(c)に示すように、開位置にて停止する。
【0050】
このとき、出力ピン43は、手動でトランクリッド12が操作されるときには電動モータ21は作動しないので中立位置に停止したままであり、これに対して開側係合部47は中立位置にて停止する出力ピン43から離れる方向に移動するので、出力ピン43は相対的に開側係合部47と閉側係合部48との間の遊び部51を移動することになる。つまり、手動でトランクリッド12が開かれるときには、揺動アーム44は出力ピン43との係合が解除された状態となって中立位置で停止する出力ピン43に対して遊び移動することになる。したがって、トランクリッド12を手動で開くときにはトランクリッド12の移動により出力ピン43を介して電動モータ21が回転されることがなく、このトランクリッド12を自動開閉装置を持たない通常のトランクリッド12と同様に軽い操作力で容易に開くことができる。
【0051】
次いで、全開位置にあるトランクリッド12を手動にて閉じる場合について説明する。
【0052】
全開状態のトランクリッド12は、トーションバー15の弾性力より大きな力でトランクリッド12を下方に押し下げることにより手動で閉じることができる。
【0053】
トランクリッド12が全開状態のときには、図9(a)に示すように、出力ピン43は中立位置にて停止しており、揺動アーム44は閉側係合部48を出力ピン43に接した状態で開位置にて停止している。この状態からトランクリッド12が手動により閉じられると、図9(b)に示すように、揺動アーム44はトランクリッド12に連動して開位置から閉位置に向けて移動し、トランクリッド12が全閉位置に達すると、図9(c)に示すように、閉位置にて停止する。
【0054】
このとき、出力ピン43は、手動でトランクリッド12が操作されるときには電動モータ21は作動しないので中立位置に停止したままであり、これに対して閉側係合部48は中立位置にて停止する出力ピン43から離れる方向に移動するので、手動による開作動のときと同様に、出力ピン43は相対的に開側係合部47と閉側係合部48との間の遊び部51を移動することになる。つまり、手動でトランクリッド12が閉じられるときには、揺動アーム44は出力ピン43との係合が解除された状態となって出力ピン43に対して遊び移動することになる。したがって、トランクリッド12を手動で閉じるときにはトランクリッド12の移動により出力ピン43を介して電動モータ21が回転されることがなく、このトランクリッド12を自動開閉装置を持たない通常のトランクリッド12と同様に軽い操作力で容易に閉じることができる。
【0055】
このように、このパワートランクリッド装置16では、トランクリッド12を手動で開閉する際に必要なる操作力を自動開閉装置を持たない通常のトランクリッド12と同様に軽くすることができるので、手動による開閉操作を容易にすることができる。
【0056】
また、このパワートランクリッド装置16では、電磁クラッチを用いることなく、トランクリッド12を手動にて容易に開閉操作させることができるので、このパワートランクリッド装置16を小型、軽量化することができる。
【0057】
ところで、開閉途中のトランクリッド12には、様々な要因により過大な負荷が加えられる恐れがある。そして、自動開閉作動しているトランクリッド12にこのような過大な負荷が加えられると、この負荷が電動アクチュエータ17やヒンジ13等に伝達されてこれらの部材が破損する恐れがある。
【0058】
しかし、このパワートランクリッド装置16では、電動モータ21と出力ピン43との間にトルクリミッタ22が設けられているので、トランクリッド12に加えられた所定値以上の過大な負荷をトルクリミッタ22により吸収して、電動アクチュエータ17や車両11の破損を防止することができる。つまり、トランクリッド12に過大な負荷が加えられると、電動モータ21と連動する駆動側摩擦板27と減速機構23等を介して出力ピン43と連動する従動側摩擦板28との間に滑りが生じて電動モータ21とトランクリッド12との間の動力伝達が自動的に遮断され、その負荷が吸収されるのである。
【0059】
このように、このパワートランクリッド装置16では、電動モータ21とトランクリッド12との間に過大な負荷が加えられたときには、トルクリミッタ22により電動モータ21と出力ピン43との間の動力伝達が自動的に遮断されるので、このパワートランクリッド装置16を構成する機構部分や車両11の破損を防止することができる。
【0060】
また、このパワートランクリッド装置16では、電磁クラッチに換えて、電動モータ21に接続される駆動側摩擦板27と出力ピン43に接続される従動側摩擦板28とを板ばね32により圧着させるトルクリミッタ22によってトランクリッド12に加えられる過大な負荷を吸収するようにしたので、電磁クラッチを用いる場合に比べて、このパワートランクリッド装置16を小型、軽量化することができる。
【0061】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においては、開閉部材は車両11の後端部に装着されたトランクリッド12とされているが、これに限らず、ドア、バックドア、エンジンフード等、車両11に開閉自在に装着されていれば他の開閉部材としてもよい。
【0062】
また、前記実施の形態においては、出力部材は電動モータ21により出力軸24を中心として揺動駆動される出力ピン43とされ、移動部材は出力ピン43が配置される遊び部51を有する揺動アーム44とされているが、これに限らず、例えば図10に示すように、出力部材を所定の長さの係合溝52を有する回動プレート53とし、トランクリッド12に連結される移動部材54をこの係合溝52に遊び移動自在に装着してもよい。なお、図10においては前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
【0063】
さらに、前記実施の形態においては、出力ピン43と揺動アーム44とはともに出力軸24を中心として揺動自在に設けられているが、これに限らず、出力部材と移動部材とを直線的に移動するように構成してもよい。
【0064】
さらに、前記実施の形態においては、トルクリミッタ22は電動モータ21と減速機構23との間に設けられているが、これに限らず、例えば出力軸24と出力ギヤ37との間に設けるなど、電動モータ21と出力ピン43との間に設けられていればよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、開閉部材を手動で開閉する際に必要な操作力を自動開閉装置を持たない通常の開閉部材と同様に軽くすることができるので、手動による開閉操作を容易にすることができる。
【0066】
また、本発明によれば、電動モータと開閉部材の間に過大な負荷が加えられたときには、動力伝動制限手段により電動モータと開閉部材との間の動力伝達が自動的に遮断されるので、この車両用自動開閉装置を構成する機構部分や車両の破損を防止することができる。
【0067】
さらに、本発明によれば、電磁クラッチを用いずに、手動による開閉操作時の操作力を低減し、開閉部材に加えられる過大な負荷による破損を防止する構造とすることができるので、この車両用自動開閉装置を小型、軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるパワートランクリッド装置が設けられた車両の一部を後方から示す斜視図である。
【図2】図1に示すパワートランクリッド装置の全閉状態を示す側面図である。
【図3】図1に示すパワートランクリッド装置の全開状態を示す側面図である。
【図4】図2、図3に示す電動アクチュエータの詳細を示す説明図である。
【図5】図4に示すトルクリミッタの詳細を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)はトランクリッドが自動開作動される過程を示す正面図である。
【図7】(a)〜(d)はトランクリッドが自動閉作動される過程を示す正面図である。
【図8】(a)〜(c)はトランクリッドが手動で開かれる過程を示す正面図である。
【図9】(a)〜(c)はトランクリッドが手動で閉じられる過程を示す正面図である。
【図10】図1に示すパワートランクリッド装置の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
11 車両
12 トランクリッド
13 ヒンジ
13a 開閉中心軸
13b 支持部
13c アーム部
14 トランクルーム
15 トーションバー
16 パワートランクリッド装置
17 電動アクチュエータ
18 連結アーム
21 電動モータ
22 トルクリミッタ
22a ケース
23 減速機構
24 出力軸
25 回転軸
25a 雄ねじ部
26 ウォームホイル
27 駆動側摩擦板
28 従動側摩擦板
31 ナット
32 板ばね
33 入力ギヤ
34 中間軸
35、36 ギヤ
37 出力ギヤ
38a〜38d 軸受け
41 ギヤケース
42 プレート部材
43 出力ピン
44 揺動アーム
45 基端部
46 アーム部
46a 連結部
47 開側係合部
48 閉側係合部
51 遊び部
52 係合溝
53 回動プレート
54 移動部材

Claims (4)

  1. ヒンジを介して車両に開閉自在に設けられた開閉部材を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であって、
    中立位置を起点として前記開閉部材の全閉位置に対応する閉側端位置と前記開閉部材の全開位置に対応する開側端位置とに電動モータにより駆動される出力部材と、
    前記開閉部材に連結される連結部と前記中立位置から前記開側端位置へ移動する前記出力部材に係合する開側係合部および前記中立位置から前記閉側端位置へ移動する前記出力部材に係合する閉側係合部を備え、前記出力部材により前記開閉部材を全閉位置とする閉位置と全開位置とする開位置との間で駆動されるとともに前記出力部材が前記中立位置にあるときには前記出力部材に対して前記閉位置と前記開位置との間で遊び移動自在の移動部材と、
    前記電動モータと連動する駆動側摩擦板と前記出力部材と連動する従動側摩擦板および前記駆動側摩擦板と前記従動側摩擦板とを互いに圧着させるばね部材とを備え、前記開閉部材に所定値以上の負荷が加えられたときには前記電動モータと前記開閉部材との間の動力伝達を遮断する動力伝動制限手段とを有することを特徴とする車両用自動開閉装置。
  2. 請求項1記載の車両用自動開閉装置において、前記電動モータにより回転駆動される出力軸に前記出力部材を固定し、前記出力軸に前記移動部材を相対回転自在に装着し、前記開側係合部と前記閉側係合部との間に設けられた遊び部に前記出力部材を配置したことを特徴とする車両用自動開閉装置。
  3. 請求項1または2記載の車両用自動開閉装置において、前記開閉部材を全開位置に向けて付勢する付勢手段を前記車両に設けたことを特徴とする車両用自動開閉装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用自動開閉装置において、前記開閉部材をトランクリッドとしたことを特徴とする車両用自動開閉装置。
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