JP2004268661A - シートベルト装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シートベルト装置のモータ補助プリテンショナ装置によるウエビングの引き出しを、特別のセンサやアクチュエータを必要とせずにタイミング良く行えるようにする。
【解決手段】車両の衝突が予知されたときにリトラクタ１６のモータ１７を正転駆動してシートベルトのウエビング１１を巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビング１１をリトラクタ１６から引き出し不能にロックする。衝突予知によりリトラクタ１６のモータ１７を正転駆動してシートベルトのウエビング１１の張力を増加させた後に衝突が回避された場合、車両の加速度の情報を有するシステム１９〜２３により車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタ１６のモータ１７を正転駆動することでリトラクタ１６のロックを解除してウエビング１１を緩める。
【選択図】 図１
【解決手段】車両の衝突が予知されたときにリトラクタ１６のモータ１７を正転駆動してシートベルトのウエビング１１を巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビング１１をリトラクタ１６から引き出し不能にロックする。衝突予知によりリトラクタ１６のモータ１７を正転駆動してシートベルトのウエビング１１の張力を増加させた後に衝突が回避された場合、車両の加速度の情報を有するシステム１９〜２３により車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタ１６のモータ１７を正転駆動することでリトラクタ１６のロックを解除してウエビング１１を緩める。
【選択図】 図１
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突が予知されたときにリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックするシートベルト装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
車両に所定値以上の加速度が作用したときにシートベルト装置のウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックする、いわゆるエマージェンシー・ロッキング・リトラクタは、下記特許文献１により公知である。この種のエマージェンシー・ロッキング・リトラクタは、ウエビングの巻き取り軸に設けたイナーシャギヤのラチェット歯に係合可能なラチェット爪を、センサーケースのウエイト座に揺動自在に支持したウエイトの上端に接続したもので、車両に所定値（例えば０．４Ｇ）以上の加速度が加わってウエイトが傾くと、ラチェット爪が押し上げられてイナーシャギヤのラチェット歯に係合することで、ウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックするようになっている。
【０００３】
また車両の衝突が予知されると、シートベルト装置のリトラクタの巻き取り軸をモータで駆動してウエビングを巻き取り、そのウエビングの張力を高めて衝突時の乗員拘束性能を高めるモータ補助プリテンショナ装置が、下記特許文献２により公知である。
【０００４】
【特許文献１】
特開２０００−２１１４７４号公報
【０００５】
【特許文献２】
特許第２９４６９９５号公報
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エマージェンシー・ロッキング・リトラクタにモータ補助プリテンショナ装置を組み合わせた場合、車両の衝突予知によりモータ補助プリテンショナ装置がウエビングの張力を高めて乗員を拘束した後に車両の衝突が回避されると、再びウエビングの張力を緩めて乗員の拘束を解除する必要がある。この場合、乗員は拘束状態にあるのでラチェット歯とラチェット爪との係合状態が維持されてエマージェンシー・ロッキング・リトラクタがロック状態のままになり、モータ補助プリテンショナ装置でウエビングを引き出すことができなくなる。そこで、エマージェンシー・ロッキング・リトラクタのウエイトの傾きを検出するセンサを設けておき、ウエイトの傾きがなくなってエマージェンシー・ロッキング・リトラクタのロックが解除可能な状態になったことを検出した後に、強制的にラチェット歯とラチェット爪との係合状態を外すアクチュエータが必要があった。しかしながら、このようにするとウエイトの傾きを検出するセンサと、ラチェット歯およびとラチェット爪の係合を解除するアクチュエータとが必要となり、部品点数が増加する問題がある。
【０００７】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、シートベルト装置のモータ補助プリテンショナ装置によるウエビングの引き出しを、特別のセンサやアクチュエータを必要とせずにタイミング良く行えるようにすることを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項１に記載された発明によれば、車両の衝突が予知されたときにリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックするシートベルト装置において、車両の衝突が回避され、車両の加速度の情報を有するシステムからの車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタのモータを正転駆動して前記ロックを解除することによりウエビングを緩めることを特徴とするシートベルト装置が提案される。
【０００９】
上記構成によれば、車両の衝突の予知に基づいてリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取った後に車両の衝突が回避された場合、車両の加速度の情報を有するシステムにより車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタのモータを正転駆動することでリトラクタのロックを解除してウエビングを緩めるので、前記ロックを解除するための特別のアクチュエータを必用とせずに、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態でリトラクタのモータを逆転駆動してウエビングを緩めることが不能になる事態を未然に回避することができる。また車両の加速度の情報を有するシステムからの車両の加速度信号を利用するので、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態にあるか否かを検出する特別のセンサが不要になって部品点数の削減に寄与することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【００１１】
図１〜図３は本発明の一実施例を示すもので、図１はシートベルト装置の制御系のブロック図、図２はリトラクタの構造を示す図、図３は図２の要部拡大図である。
【００１２】
図１に示すように、自動車のシートＳに着座した乗員を拘束するシートベルト装置のウエビング１１は一体に連結されたラップベルト１１ａおよびショルダーベルト１１ｂを備える。一端をアンカー１２に固定されたラップベルト１１ａは乗員の腹部を経由し、その他端はバックル１３に着脱自在に係合するタング１４を貫通してショルダーベルト１１ｂの一端に連なっている。ショルダーベルト１１ｂは乗員の胸部を斜めに経由してスルーアンカー１５を貫通し、そこから下方に延びてリトラクタ１６に巻き取られる。
【００１３】
リトラクタ１６にはウエビング１１を巻き取り、かつ引き出すことで張力を調整するモータ１７が設けられており、このモータ１７の作動を制御する電子制御ユニット１８には、ＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機（ＡＴ）２３等が車内ＬＡＮ２４を介して接続される。
【００１４】
ＡＣＣ（アダプティブ・クルーズ・コントロール）システム１９は、レーダー装置で先行車を検出したときには、先行車との車間距離を予め設定した車間距離の維持するように自車の車速を制御するとともに、先行車が存在しないときには、予め設定した車速で自車を定速走行させるものである。従って、車速から前後方向の加速度を算出して利用することができる。
【００１５】
ＶＳＡ（ビークル・スタビリティ・アシスト）システム２０は、ステアリングホイールの操舵角と車速とから目標ヨーレートを算出し、実ヨーレートが目標ヨーレートに一致するように左右の車輪の制動力を個別に制御して旋回時の車両の安定性を高めるものである。従って、操舵角および車速から横方向の加速度を算出して利用することができる。
【００１６】
ＥＰＳ（エレクトリック・パワー・ステアリング）システム２１は、ステアリングホイールに入力される操舵トルクを検出し、その操舵トルクが車速等に応じた所定の大きさになるように、アシストモータを駆動してドライバーのステアリング操作をアシストするものである。従って、上記ＶＳＡと同様に操舵角および車速から横方向の加速度を算出して利用することができる。
【００１７】
ＳＲＳ（サプリメンタル・レストレイント・システム）２２は、加速度センサで検出した車両の衝突時の加速度に基づいてエアバッグを展開するもので、加速度センサで検出した加速度をそのまま利用することができる。
【００１８】
これらのＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機２３等は、車両の前後加速度あるいは車両の横加速度の信号を使用するものであり、本発明の車両の加速度の情報を有するシステムに対応する。
【００１９】
図２および図３はリトラクタ１６の構造を示すもので、ウエビング１１のショルダーベルト１１ｂを巻き取るリール３１をケーシング３２に回転自在に支持する回転軸３３の軸端に、ケーシング３２の外部に露出するようにイナーシャギヤ３４が設けられる。イナーシャギヤ３４の外周には多数のラチェット歯３４ａ…が設けられており、ケーシング３２の下部に設けたウエイトハウジング３５の上部に支点３６を介して枢支されたロックレバー３７の先端に、イナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…に係合可能なラチェット爪３７ａが設けられる。
【００２０】
ウエイトハウジング３５の底部に設けられたカップ状のウエイト座３８に、ウエイト３９の半球状の底部３９ａが揺動自在に支持されており、ウエイト３９の頂面に形成した逆円錐状の凹部３９ｂに、ロックレバー３７の下面に設けた突起３７ｂが係合する。
【００２１】
リール３１の回転軸３３には前記モータ１７が接続されており、電子制御ユニット１８からの指令でモータ１７はウエビング１１を巻き取る正転方向（矢印Ａ方向）と、ウエビング１１を引き出す逆転方向（矢印Ｂ方向）とに回転可能である。リール３１の回転軸３３は、図示せぬスプリングでウエビング１１を巻き取る方向に付勢されている。
【００２２】
次に、上記構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【００２３】
車両に加わる加速度が小さいとき（例えば０．４Ｇ未満）はリトラクタ１６のウエイト３９は起立姿勢にあるため、ロックレバー３７は下降位置にあってラチェット爪３７ａがイナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…から離反し、リール３１の回転軸３３は自由に回転することができる。従って、シートＳに着座してシートベルトを装着した乗員が身体を動かしたとき、それに応じてウエビング１１をリトラクタ１６から引き出したり、図示せぬスプリングでウエビング１１をリトラクタ１６に引き取ることができ、乗員の身体の拘束が解除される。
【００２４】
ドライバーが危険を回避するために急制動を行ったり、ステアリングハンドルを急激に操作したりすると、車両に加わる前後方向あるいは横方向の加速度でウエイト３９が起立姿勢から傾斜するため、ウエイト３９の凹部３９ｂに突起３７ｂを押圧されたロックレバー３７が支点３６を中心に上向きに揺動し、ロックレバー３７のラチェット爪３７ａがイナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…に係合し、ウエビング１１が引き出し不能となるようにイナーシャギヤ３４（つまりリール３１）を回転不能にロックする。その結果、リトラクタ１６のリール３１は引き出し方向（矢印Ｂ方向）に回転不能にロックされ、ウエビング１１が緩み不能になって乗員を拘束する。
【００２５】
ウエビング１１をリトラクタ１６から緩み不能にしても、そのときのウエビング１１び張力が不足していると充分な乗員拘束性能を発揮できないため、車両の衝突が予知される場合に、電子制御ユニット１８からの指令でモータ１７が正転駆動されてリール３１が矢印Ａ方向に回転し、ウエビング１１がリトラクタ１６内に引き込まれて乗員を拘束する所定の張力が発生する。このとき、車両の加速度によって既にロックレバー３７のラチェット爪３７ａがイナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…に係合していても、イナーシャギヤ３４の矢印Ａ方向の回転はラチェット爪３７ａおよびラチェット歯３４ａ…がスリップする方向であるため、モータ１７は支障なく正転してウエビング１１の張力を高めることができる。
【００２６】
尚、電子制御ユニット１８による車両の衝突の予知は、ＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１等の信号に基づいて行っても良いし、専用の衝突予知装置からの加速度に基づいて行っても良い。また車両が実際に衝突した場合には、シートベルトによる乗員の拘束性能を一層高めるべく、火薬を用いたテンショナー装置でウエビング１１の張力を更に増加させても良い。また、通常は衝突予知による乗員拘束が衝突回避操作より先行する。
【００２７】
さて、回避操作により衝突が回避された場合には、電子制御ユニット１８は、車両の加速度を制御するＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機２３等からの信号に基づいて車両の加速度が所定値（例えば０．４Ｇ）未満に低下したことを確認した後に、つまりウエイト３９が起立姿勢に復帰してイナーシャギヤ６４のロックが解除されたことを確認した後に、モータ１７を正転させてリール３１およびイナーシャギヤ３４を矢印Ａ方向にラチェット歯一山分回転させる。その結果、重力でロックレバー３７が落下してラチェット爪３７ａがラチェット歯３４ａ…から外れるため、イナーシャギヤ３４が矢印Ｂ方向に回転可能にロック解除され、ウエビング１１の張力を低下させて乗員の拘束を解くことができる。
【００２８】
このように、ウエイト３９が起立姿勢に復帰したことを検出する特別のセンサを設けることなく、既存のシステムからの加速度信号に基づいてリトラクタ１６のモータ１７を正転駆動するので、特別のセンサやロック解除用のアクチュエータを不要にして部品点数を削減し、コストダウンに寄与することができる。
【００２９】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【００３０】
例えば、車両の加速度の情報を有するシステムは、実施例のＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機２３に限定されるものではない。
【００３１】
【発明の効果】
以上のように請求項１に記載された発明によれば、車両の衝突の予知に基づいてリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取った後に車両の衝突が回避された場合、車両の加速度の情報を有するシステムにより車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタのモータを正転駆動することでリトラクタのロックを解除してウエビングを緩めるので、前記ロックを解除するための特別のアクチュエータを必用とせずに、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態でリトラクタのモータを逆転駆動してウエビングを緩めることが不能になる事態を未然に回避することができる。また車両の加速度の情報を有するシステムからの車両の加速度信号を利用するので、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態にあるか否かを検出する特別のセンサが不要になって部品点数の削減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】シートベルト装置の制御系のブロック図
【図２】リトラクタの構造を示す図
【図３】図２の要部拡大図
【符号の説明】
１１ ウエビング
１６ リトラクタ
１７ モータ
１９ ＡＣＣシステム（車両の加速度の情報を有するシステム）
２０ ＶＳＡシステム（車両の加速度の情報を有するシステム）
２１ ＥＰＳシステム（車両の加速度の情報を有するシステム）
２２ ＳＲＳ（車両の加速度の情報を有するシステム）
２３ 自動変速機（車両の加速度の情報を有するシステム）
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突が予知されたときにリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックするシートベルト装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
車両に所定値以上の加速度が作用したときにシートベルト装置のウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックする、いわゆるエマージェンシー・ロッキング・リトラクタは、下記特許文献１により公知である。この種のエマージェンシー・ロッキング・リトラクタは、ウエビングの巻き取り軸に設けたイナーシャギヤのラチェット歯に係合可能なラチェット爪を、センサーケースのウエイト座に揺動自在に支持したウエイトの上端に接続したもので、車両に所定値（例えば０．４Ｇ）以上の加速度が加わってウエイトが傾くと、ラチェット爪が押し上げられてイナーシャギヤのラチェット歯に係合することで、ウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックするようになっている。
【０００３】
また車両の衝突が予知されると、シートベルト装置のリトラクタの巻き取り軸をモータで駆動してウエビングを巻き取り、そのウエビングの張力を高めて衝突時の乗員拘束性能を高めるモータ補助プリテンショナ装置が、下記特許文献２により公知である。
【０００４】
【特許文献１】
特開２０００−２１１４７４号公報
【０００５】
【特許文献２】
特許第２９４６９９５号公報
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エマージェンシー・ロッキング・リトラクタにモータ補助プリテンショナ装置を組み合わせた場合、車両の衝突予知によりモータ補助プリテンショナ装置がウエビングの張力を高めて乗員を拘束した後に車両の衝突が回避されると、再びウエビングの張力を緩めて乗員の拘束を解除する必要がある。この場合、乗員は拘束状態にあるのでラチェット歯とラチェット爪との係合状態が維持されてエマージェンシー・ロッキング・リトラクタがロック状態のままになり、モータ補助プリテンショナ装置でウエビングを引き出すことができなくなる。そこで、エマージェンシー・ロッキング・リトラクタのウエイトの傾きを検出するセンサを設けておき、ウエイトの傾きがなくなってエマージェンシー・ロッキング・リトラクタのロックが解除可能な状態になったことを検出した後に、強制的にラチェット歯とラチェット爪との係合状態を外すアクチュエータが必要があった。しかしながら、このようにするとウエイトの傾きを検出するセンサと、ラチェット歯およびとラチェット爪の係合を解除するアクチュエータとが必要となり、部品点数が増加する問題がある。
【０００７】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、シートベルト装置のモータ補助プリテンショナ装置によるウエビングの引き出しを、特別のセンサやアクチュエータを必要とせずにタイミング良く行えるようにすることを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項１に記載された発明によれば、車両の衝突が予知されたときにリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビングをリトラクタから引き出し不能にロックするシートベルト装置において、車両の衝突が回避され、車両の加速度の情報を有するシステムからの車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタのモータを正転駆動して前記ロックを解除することによりウエビングを緩めることを特徴とするシートベルト装置が提案される。
【０００９】
上記構成によれば、車両の衝突の予知に基づいてリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取った後に車両の衝突が回避された場合、車両の加速度の情報を有するシステムにより車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタのモータを正転駆動することでリトラクタのロックを解除してウエビングを緩めるので、前記ロックを解除するための特別のアクチュエータを必用とせずに、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態でリトラクタのモータを逆転駆動してウエビングを緩めることが不能になる事態を未然に回避することができる。また車両の加速度の情報を有するシステムからの車両の加速度信号を利用するので、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態にあるか否かを検出する特別のセンサが不要になって部品点数の削減に寄与することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【００１１】
図１〜図３は本発明の一実施例を示すもので、図１はシートベルト装置の制御系のブロック図、図２はリトラクタの構造を示す図、図３は図２の要部拡大図である。
【００１２】
図１に示すように、自動車のシートＳに着座した乗員を拘束するシートベルト装置のウエビング１１は一体に連結されたラップベルト１１ａおよびショルダーベルト１１ｂを備える。一端をアンカー１２に固定されたラップベルト１１ａは乗員の腹部を経由し、その他端はバックル１３に着脱自在に係合するタング１４を貫通してショルダーベルト１１ｂの一端に連なっている。ショルダーベルト１１ｂは乗員の胸部を斜めに経由してスルーアンカー１５を貫通し、そこから下方に延びてリトラクタ１６に巻き取られる。
【００１３】
リトラクタ１６にはウエビング１１を巻き取り、かつ引き出すことで張力を調整するモータ１７が設けられており、このモータ１７の作動を制御する電子制御ユニット１８には、ＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機（ＡＴ）２３等が車内ＬＡＮ２４を介して接続される。
【００１４】
ＡＣＣ（アダプティブ・クルーズ・コントロール）システム１９は、レーダー装置で先行車を検出したときには、先行車との車間距離を予め設定した車間距離の維持するように自車の車速を制御するとともに、先行車が存在しないときには、予め設定した車速で自車を定速走行させるものである。従って、車速から前後方向の加速度を算出して利用することができる。
【００１５】
ＶＳＡ（ビークル・スタビリティ・アシスト）システム２０は、ステアリングホイールの操舵角と車速とから目標ヨーレートを算出し、実ヨーレートが目標ヨーレートに一致するように左右の車輪の制動力を個別に制御して旋回時の車両の安定性を高めるものである。従って、操舵角および車速から横方向の加速度を算出して利用することができる。
【００１６】
ＥＰＳ（エレクトリック・パワー・ステアリング）システム２１は、ステアリングホイールに入力される操舵トルクを検出し、その操舵トルクが車速等に応じた所定の大きさになるように、アシストモータを駆動してドライバーのステアリング操作をアシストするものである。従って、上記ＶＳＡと同様に操舵角および車速から横方向の加速度を算出して利用することができる。
【００１７】
ＳＲＳ（サプリメンタル・レストレイント・システム）２２は、加速度センサで検出した車両の衝突時の加速度に基づいてエアバッグを展開するもので、加速度センサで検出した加速度をそのまま利用することができる。
【００１８】
これらのＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機２３等は、車両の前後加速度あるいは車両の横加速度の信号を使用するものであり、本発明の車両の加速度の情報を有するシステムに対応する。
【００１９】
図２および図３はリトラクタ１６の構造を示すもので、ウエビング１１のショルダーベルト１１ｂを巻き取るリール３１をケーシング３２に回転自在に支持する回転軸３３の軸端に、ケーシング３２の外部に露出するようにイナーシャギヤ３４が設けられる。イナーシャギヤ３４の外周には多数のラチェット歯３４ａ…が設けられており、ケーシング３２の下部に設けたウエイトハウジング３５の上部に支点３６を介して枢支されたロックレバー３７の先端に、イナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…に係合可能なラチェット爪３７ａが設けられる。
【００２０】
ウエイトハウジング３５の底部に設けられたカップ状のウエイト座３８に、ウエイト３９の半球状の底部３９ａが揺動自在に支持されており、ウエイト３９の頂面に形成した逆円錐状の凹部３９ｂに、ロックレバー３７の下面に設けた突起３７ｂが係合する。
【００２１】
リール３１の回転軸３３には前記モータ１７が接続されており、電子制御ユニット１８からの指令でモータ１７はウエビング１１を巻き取る正転方向（矢印Ａ方向）と、ウエビング１１を引き出す逆転方向（矢印Ｂ方向）とに回転可能である。リール３１の回転軸３３は、図示せぬスプリングでウエビング１１を巻き取る方向に付勢されている。
【００２２】
次に、上記構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【００２３】
車両に加わる加速度が小さいとき（例えば０．４Ｇ未満）はリトラクタ１６のウエイト３９は起立姿勢にあるため、ロックレバー３７は下降位置にあってラチェット爪３７ａがイナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…から離反し、リール３１の回転軸３３は自由に回転することができる。従って、シートＳに着座してシートベルトを装着した乗員が身体を動かしたとき、それに応じてウエビング１１をリトラクタ１６から引き出したり、図示せぬスプリングでウエビング１１をリトラクタ１６に引き取ることができ、乗員の身体の拘束が解除される。
【００２４】
ドライバーが危険を回避するために急制動を行ったり、ステアリングハンドルを急激に操作したりすると、車両に加わる前後方向あるいは横方向の加速度でウエイト３９が起立姿勢から傾斜するため、ウエイト３９の凹部３９ｂに突起３７ｂを押圧されたロックレバー３７が支点３６を中心に上向きに揺動し、ロックレバー３７のラチェット爪３７ａがイナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…に係合し、ウエビング１１が引き出し不能となるようにイナーシャギヤ３４（つまりリール３１）を回転不能にロックする。その結果、リトラクタ１６のリール３１は引き出し方向（矢印Ｂ方向）に回転不能にロックされ、ウエビング１１が緩み不能になって乗員を拘束する。
【００２５】
ウエビング１１をリトラクタ１６から緩み不能にしても、そのときのウエビング１１び張力が不足していると充分な乗員拘束性能を発揮できないため、車両の衝突が予知される場合に、電子制御ユニット１８からの指令でモータ１７が正転駆動されてリール３１が矢印Ａ方向に回転し、ウエビング１１がリトラクタ１６内に引き込まれて乗員を拘束する所定の張力が発生する。このとき、車両の加速度によって既にロックレバー３７のラチェット爪３７ａがイナーシャギヤ３４のラチェット歯３４ａ…に係合していても、イナーシャギヤ３４の矢印Ａ方向の回転はラチェット爪３７ａおよびラチェット歯３４ａ…がスリップする方向であるため、モータ１７は支障なく正転してウエビング１１の張力を高めることができる。
【００２６】
尚、電子制御ユニット１８による車両の衝突の予知は、ＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１等の信号に基づいて行っても良いし、専用の衝突予知装置からの加速度に基づいて行っても良い。また車両が実際に衝突した場合には、シートベルトによる乗員の拘束性能を一層高めるべく、火薬を用いたテンショナー装置でウエビング１１の張力を更に増加させても良い。また、通常は衝突予知による乗員拘束が衝突回避操作より先行する。
【００２７】
さて、回避操作により衝突が回避された場合には、電子制御ユニット１８は、車両の加速度を制御するＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機２３等からの信号に基づいて車両の加速度が所定値（例えば０．４Ｇ）未満に低下したことを確認した後に、つまりウエイト３９が起立姿勢に復帰してイナーシャギヤ６４のロックが解除されたことを確認した後に、モータ１７を正転させてリール３１およびイナーシャギヤ３４を矢印Ａ方向にラチェット歯一山分回転させる。その結果、重力でロックレバー３７が落下してラチェット爪３７ａがラチェット歯３４ａ…から外れるため、イナーシャギヤ３４が矢印Ｂ方向に回転可能にロック解除され、ウエビング１１の張力を低下させて乗員の拘束を解くことができる。
【００２８】
このように、ウエイト３９が起立姿勢に復帰したことを検出する特別のセンサを設けることなく、既存のシステムからの加速度信号に基づいてリトラクタ１６のモータ１７を正転駆動するので、特別のセンサやロック解除用のアクチュエータを不要にして部品点数を削減し、コストダウンに寄与することができる。
【００２９】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【００３０】
例えば、車両の加速度の情報を有するシステムは、実施例のＡＣＣシステム１９、ＶＳＡシステム２０、ＥＰＳシステム２１、ＳＲＳ２２、自動変速機２３に限定されるものではない。
【００３１】
【発明の効果】
以上のように請求項１に記載された発明によれば、車両の衝突の予知に基づいてリトラクタのモータを正転駆動してシートベルトのウエビングを巻き取った後に車両の衝突が回避された場合、車両の加速度の情報を有するシステムにより車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタのモータを正転駆動することでリトラクタのロックを解除してウエビングを緩めるので、前記ロックを解除するための特別のアクチュエータを必用とせずに、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態でリトラクタのモータを逆転駆動してウエビングを緩めることが不能になる事態を未然に回避することができる。また車両の加速度の情報を有するシステムからの車両の加速度信号を利用するので、ウエビングがリトラクタから引き出し不能にロックされた状態にあるか否かを検出する特別のセンサが不要になって部品点数の削減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】シートベルト装置の制御系のブロック図
【図２】リトラクタの構造を示す図
【図３】図２の要部拡大図
【符号の説明】
１１ ウエビング
１６ リトラクタ
１７ モータ
１９ ＡＣＣシステム（車両の加速度の情報を有するシステム）
２０ ＶＳＡシステム（車両の加速度の情報を有するシステム）
２１ ＥＰＳシステム（車両の加速度の情報を有するシステム）
２２ ＳＲＳ（車両の加速度の情報を有するシステム）
２３ 自動変速機（車両の加速度の情報を有するシステム）
Claims (1)
- 車両の衝突が予知されたときにリトラクタ（１６）のモータ（１７）を正転駆動してシートベルトのウエビング（１１）を巻き取るとともに、車両に所定値以上の加速度が作用したときにウエビング（１１）をリトラクタ（１６）から引き出し不能にロックするシートベルト装置において、
車両の衝突が回避され、車両の加速度の情報を有するシステム（１９〜２３）からの車両の加速度が所定値未満になったことが検出されると、リトラクタ（１６）のモータ（１７）を正転駆動して前記ロックを解除することによりウエビング（１１）を緩めることを特徴とするシートベルト装置。
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