JP2004267205A - 無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、およびカイコ組織用抽出キット - Google Patents

無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、およびカイコ組織用抽出キット Download PDF

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Abstract

【課題】 従来よりタンパク質の合成効率を向上できる無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法を提供する。
【解決手段】 グリセロール等の多価アルコールを含有する抽出用液を用いてカイコ組織からの抽出を行う、無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、ならびに該抽出用液を有するカイコ組織抽出用キットを提供する。本発明の調製方法により調製されたカイコ組織の抽出液を用いて無細胞系にてタンパク質合成を行うと、多価アルコールを含有しない抽出溶液を用いて調製された抽出液を用いた場合と比較して、格段にタンパク質合成量が向上される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、ならびにカイコ組織用抽出キットに関する。
近年、ヒトゲノムを始め多くの生物の遺伝情報が解読されてきている。このような中、ポストゲノム研究として、これらの遺伝情報に対応するタンパク質の機能解析やゲノム創薬が注目を集めている。これらの遺伝情報に対応するタンパク質を医薬品などに応用、利用するには、莫大な種類のタンパク質を短時間で簡単に合成することが必要となってくる。
現在、タンパク質の生産方法には、遺伝子組換え技術によって酵母や昆虫細胞などの生細胞を用いる発現系(以下、「細胞系」ということがある)が広く利用されている。しかし、生細胞は自己機能を維持するために外来タンパク質を排除する傾向があり、また生細胞で細胞毒タンパク質を発現すると細胞が生育しないなど発現が困難なタンパク質も多い。
一方、細胞系を使用しないタンパク質の生産方法として、細胞破砕液や抽出液に基質や酵素などを加えるなどして生物の遺伝情報翻訳系を試験管内に取り揃え、目的のタンパク質をコードするmRNAを用いて、アミノ酸を望みの順番に必要な残基数結合させることのできる合成系を再構築する、無細胞系のタンパク質合成が知られている。このような無細胞系タンパク質合成では、上記細胞系のタンパク質合成のような制約を受けにくく、生物の命を断つことなくタンパク質の合成を行うことができ、またタンパク質の生産に培養などの操作を伴わないため細胞系と比較して短時間にタンパク質の合成を行うことができる。さらに無細胞系タンパク質合成では、生命体が利用していないアミノ酸配列からなるタンパク質の大量生産も可能となることから、有望な発現方法であると期待されている。このような無細胞系のタンパク質合成としては、たとえば、小麦胚芽の抽出液や大腸菌の抽出液を用いる方法が知られている。
しかし、小麦胚芽の抽出液を用いた無細胞系のタンパク質合成では、抽出液の抽出操作が一般に極めて煩雑であるという欠点がある。
小麦胚芽の抽出液の調製方法の一例として、たとえば、特許文献1には、以下のような手順が記載されている。小麦種子をミルに添加し、破砕した後、篩で粗胚芽画分を得、四塩化炭素とシクロヘキサン混液(四塩化炭素:シクロヘキサン=2.5:1)を用いた浮選によって、発芽能を有する胚芽を浮上する画分から回収し、室温乾燥によって有機溶媒を除去する。この胚芽画分に混在する種皮などの不純物を静電気帯電体を用いて吸着除去する。次に、この試料から小麦胚乳成分を完全に除去するため、非イオン性界面活性剤であるNP40の0.5%溶液に懸濁し、超音波洗浄器を用いて、洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄を繰り返す。蒸留水の存在下に再度1回の超音波洗浄を行い、小麦胚芽を純化する。
このように小麦胚芽の抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成では、抽出液の調製が煩雑であり、多大な時間と労力を要するという不具合がある。
また大腸菌の抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成では、大腸菌が原核生物であるため、タンパク質への糖鎖修飾を行うことができず、糖タンパク質を合成することができないという欠点がある。上記糖鎖修飾によりタンパク質に付加される糖鎖は、物質間や細胞間の認識や接着に関与するシグナルやリガンドとして、タンパク質自身の機能調節因子として、またはタンパク質の保護や安定化因子として機能しているものと考えられる。そのため、糖鎖修飾を受けるタンパク質について生体内の機能を解析するためには、糖鎖修飾を受けたタンパク質(糖タンパク質)を取得することが必要であり、タンパク質への翻訳の後に糖鎖修飾も行えるような無細胞系のタンパク質合成が望まれている。
また、無細胞系でのタンパク質の合成効率を可及的に向上させ得ることも望まれていることであり、そのような無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、抽出用液の開発も望まれている。
特開2000−236896号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来よりタンパク質の合成効率を向上できる無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)多価アルコールを含有する抽出用液を用いてカイコ組織からの抽出を行う、無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法。
(2)多価アルコールが、グリセロール、ジグリセロール、エチレングリコール、ポリエリスリトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、スクロース、ラクトース、キシロース、マルトースおよびイノシトールのうちから選ばれる少なくともいずれかである、上記(1)に記載の方法。
(3)抽出後に遠心分離して得られた上清と、該遠心分離後の沈殿からさらに上記抽出用液を用いて抽出を行った後に遠心分離して得られた上清とを混合して、抽出液を調製することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)多価アルコールを含有する抽出用液を有するカイコ組織用抽出キット。
(5)多価アルコールが、グリセロール、ジグリセロール、エチレングリコール、ポリエリスリトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、スクロース、ラクトース、キシロース、マルトースおよびイノシトールのうちから選ばれる少なくともいずれかである、上記(4)に記載のキット。
なお本明細書において「カイコ」は、カイコガ科に属する鱗翅目昆虫(絹糸昆虫)と同義であり、その一生において「卵(胚)」(産卵直後より孵化直前までの間)、「幼虫」(孵化直後から繭の形成終了直前(1齢期〜5齢期に分けられる))、「蛹」(繭の形成終了直前から羽化する直前までの間)、ならびに「成虫(蛾)」(羽化直後より死亡までの間)の各状態を経るものであり、その一生にわたる形態のいずれをも含むものとする。
カイコは、卵より孵化した後の幼虫の状態では、桑を食べて発育する期間(齢)と、食べずに脱皮の準備をする期間(眠)を交互に繰り返す。カイコの幼虫において、孵化してから1回目の脱皮までを1齢期、1回目の脱皮から2回目の脱皮までを2齢期といい、通常、4回脱皮して5齢期で成熟する(この成熟した状態のカイコ幼虫は「熟蚕」とも呼ばれる)。カイコの幼虫は、熟蚕になると体が透明になり絹糸を吐いて繭を形成し、蛹化する。蛹の後、羽化して成虫となる。
本明細書における「絹糸腺」は、カイコ幼虫の両体側において、頭部の下唇先端に位置する吐出口から盲管にまで連なる一対の管状の外分泌腺であり、前部絹糸腺、中部絹糸腺および後部絹糸腺に大きく分けられる。後部絹糸腺は、絹糸の中心部を為すフィブロインを分泌する。また中部絹糸腺は、セリシンを分泌する。フィブロインは中部絹糸腺に蓄積されるとともに、セリシンによってその外周を覆われて、ゲル状の絹物質となる。この絹物質は、前部絹糸腺を通って吐出口から排出され、固体化して絹糸となる。
本明細書における「脂肪体」は、カイコ幼虫において、体内の至るところに分布し、白色の柔らかい扁平な帯状、ひも状あるいは葉状の組織である。脂肪体は、ヒトの肝臓に似て栄養、エネルギー源を貯蔵する役目を果たしているので、細胞内には脂肪球、タンパク質、グリコーゲンその他の新陳代謝に関係する種々の物質を含んでいる。
本明細書における「胚」は、カイコの卵の状態の組織を指すものとする。
本明細書における「無細胞系タンパク質合成」は、mRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する無細胞翻訳系のみによるタンパク質合成(翻訳系)、ならびに、外来鋳型DNAよりmRNAを転写する転写工程と、該転写工程で得られたmRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する翻訳工程とを含むタンパク質合成(転写/翻訳系)のいずれであってもよい。ここで、本発明の合成方法によって無細胞系で合成される「タンパク質」は、複数のアミノ酸残基から構成される任意の分子量のペプチド、すなわち低分子量のペプチドから高分子量のいずれをも包含するものとする。また本明細書でいう「タンパク質」は、糖鎖修飾されてなる糖タンパク質も含む。
本発明によれば、従来よりタンパク質の合成効率を向上できる無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、ならびにそのためのカイコ組織抽出用キットを提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、多価アルコールを含有する抽出用液を用いてカイコ組織からの抽出を行うことを特徴とする、無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法である。かかる抽出用液を用いて調製されたカイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液を用いて無細胞系タンパク質合成反応を行うことで、多価アルコールを含有しない抽出用液を用いて調製されたカイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液を用いて無細胞系タンパク質合成反応を行った場合と比較して、格段にタンパク質合成量が向上される。これは、その詳細は不明ではあるが、タンパク質合成に関与する成分が効率的に抽出され且つ安定化されること、ならびに多価アルコールを含有することで抽出液自体の粘性が低下するためタンパク質合成反応が進行しやすくなるなどの理由によるものと考えられる。
本発明の方法に用いる抽出用液に含有される多価アルコールとしては、同一分子内に水酸基を2個以上有するアルコールであれば特に制限はないが、タンパク質合成効率及び取扱い性の観点から、同一分子内に水酸基を2個〜50個有するものを用いるのが好ましく、同一分子内に水酸基を2個〜30個有するものを用いるのがより好ましい。
本発明の方法に使用できる多価アルコールとしては、たとえば、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、エリスリトール、ポリエリスリトール、キシリトール、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、リボース、イノシトール、スクロース、ラクトース、マルトース、セロビオース、ソルビトール、トレハロース、キシロースなどが挙げられるが、タンパク質合成効率の観点からは、グリセロール、ジグリセロール、エチレングリコール、ポリエリスリトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、スクロース、ラクトース、キシロース、マルトースおよびイノシトールのうちから選ばれる少なくともいずれかが好ましい。
上記多価アルコールのうち、ポリエリスリトール以外のものについては、従来公知の種々の方法で製造することができるし、また市販のものを適宜使用すればよい。またポリエリスリトールは、本出願人らの一人が独自に開発したエリスリトールの2量体〜6量体である。後述する製造例1に、4量体のポリエリスリトールの製造方法を例示する。4量体以外のポリエリスリトールについては、当業者であれば製造例1の記載に基づき適宜製造することが可能である。
本発明に用いる抽出用液中における多価アルコールの濃度(混合物の場合には、それら全体の濃度)は、タンパク質合成効率の観点から、1(v/v)%〜60(v/v)%であるのが好ましく、2(v/v)%〜50(v/v)%であるのがより好ましい。
本発明の方法に用いる抽出用液は、上述のように多価アルコールを含有しているならば、その他の成分については特に制限はないが、プロテアーゼインヒビターをさらに含有するのが好ましい。プロテアーゼインヒビターを含有する抽出用液を用いると、カイコ組織由来の抽出物に含有されるプロテアーゼの活性が阻害され、当該プロテアーゼによる抽出物中の活性タンパクの不所望な分解を防止でき、結果としてカイコ組織由来の抽出物が有するタンパク質合成能を有効に引き出すことができるようになるという利点がある。
上記プロテアーゼインヒビターとしては、プロテアーゼの活性を阻害し得るものであるならば特に制限はなく、たとえば、フェニルメタンスルホニルフルオリド(以下、「PMSF」ということがある。)、アプロチニン、ベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、E−64(L−trans−エポキシスクシニルロイシルアミド−4−グアニジノブタン)、エチレンジアミン四酢酸、ホスホラミドンなどを使用することができるが、カイコ組織より抽出した後の抽出液にはセリンプロテアーゼ活性が強いと推定されることから、セリンプロテアーゼに対して特異性の高いPMSFを使用するのが好ましい。また、一種類のプロテアーゼインヒビターのみならず、数種類の混合物(プロテアーゼインヒビターカクテル)を用いてもよい。
当該抽出用液中におけるプロテアーゼインヒビターの含有量に特に制限はないが、本発明の作用に必須な酵素類の分解阻害能を好適に発揮できる観点から、1μM〜50mM含有されることが好ましく、0.01mM〜5mM含有されることがより好ましい。プロテアーゼインヒビターが1μM未満であると、プロテアーゼの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またプロテアーゼインヒビターが50mMを超えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
また本発明に用いる抽出用液は、上記多価アルコールおよびプロテアーゼインヒビターに加えて、カリウム塩、マグネシウム塩、ジチオトレイトール(以下、「DTT」ということがある。)および緩衝剤をさらに含有するのが好ましい。
上記カリウム塩としては、本発明の作用を阻害するようなものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ化カリウム、フタル酸カリウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸カリウムを使用するのが好ましい。カリウム塩は、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該抽出用液中におけるカリウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸カリウムなど1価のカリウム塩である場合、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜200mM含有されることがより好ましい。カリウム塩が10mM未満または500mMを超えると、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記マグネシウム塩としては、本発明の作用を阻害するようなものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。マグネシウム塩も、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該抽出用液中におけるマグネシウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩が0.1mM未満または10mMを超えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記DTTは、酸化防止の目的で配合されるものであり、当該抽出用液中において0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。DTTが0.1mM未満または10mMを超えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記緩衝剤は、抽出用液に緩衝能を付与し、たとえば酸性または塩基性物質の添加などによって起こるpHの急激な変化による抽出物の変性を防止する目的で配合される。このような緩衝剤としては、特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。
緩衝剤は、当該抽出用液のpHが4〜10に保持されるようなものを使用するのが好ましく、pHが6〜8に保持されるようなものを使用するのがより好ましい。抽出用液のpHが4未満またはpHが10を超えると、本発明の反応に必須な成分が変性する虞があるためである。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH6〜8)を使用するのが特に好ましい。
当該抽出液中における緩衝剤の含有量に特に制限はないが、好適な緩衝能を保持する観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜50mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が5mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こし、調製後の抽出液において抽出物が変性する傾向にあるためであり、また緩衝剤が200mMを超えると、塩濃度が高くなり過ぎ、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
すなわち、本発明に用いる抽出用液は、2(v/v)%〜50(v/v)%の上記多価アルコールを含有するとともに、0.01mM〜5mMのPMSF、50mM〜200mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.5mM〜5mMのDTT、10mM〜50mMのHEPES−KOH(pH6〜8)を含有するように実現されるのが好ましい。
本発明における抽出対象であるカイコ組織は、カイコの一生のうちのどの状態(卵、幼虫(1齢期〜5齢期)、蛹、成虫)のいずれの組織であってよい。またカイコ組織は、単一の状態における単一の組織(たとえば、5齢期のカイコ幼虫における後部絹糸腺のみ)に限らず、単一の状態における複数の組織(たとえば、5齢期のカイコ幼虫における後部絹糸腺および脂肪体)であってもよく、複数の状態における単一の組織(たとえば、3齢期、4齢期、5齢期の各カイコ幼虫における後部絹糸腺)であってもよいものとする。無論、複数の状態における複数の組織であってもよい。
なおカイコ組織は、カイコ組織の全体(たとえば、後部絹糸腺全体)である必要はない。
上記カイコ組織としては、カイコ幼虫の後部絹糸腺、脂肪体およびカイコの胚から選ばれる少なくともいずれかであることが望ましい。本発明の方法により調製された抽出液中にカイコ幼虫由来の後部絹糸腺、脂肪体およびカイコの胚から選ばれる少なくともいずれか由来の抽出物が含有されているか否かは、たとえばアルドラーゼについてのアイソザイム解析を行うことによって判別することができる(Nagaokaら(1995)、Insect Biochem Mol Biol. 25, 819-825)。
カイコ幼虫の後部絹糸腺から本発明の方法にて調製を行うと、短時間で大量のタンパク質が合成可能な特に優れた利点を有する無細胞系タンパク質合成用抽出液を得ることができ、好ましい。
またカイコ幼虫の脂肪体から本発明の方法にて調製を行うと、脂肪体が柔らかい組織であるために、すり潰す作業が短時間で済み、結果として容易に抽出液を調製でき、好ましい。
なお、5齢期の脂肪体については、上記アイソザイム解析以外に、抽出液をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけて脂肪体由来のタンパク質であるSP−1、SP−2などを検出することによっても、本発明の方法で調製された抽出液中に含有されているか否かを判別することができる。
カイコの胚から本発明の方法にて調製を行うと、胚が1つの個体であるために他の組織とは異なり摘出する作業を要さず、結果として容易に抽出液を調製でき、好ましい。
なおカイコの胚については、上記アイソザイム解析以外に、抽出液をSDS−PAGEにかけて胚由来のタンパク質である30K、ESP、Vitellin(H)、Vitellin(L)などを検出することによっても、本発明の方法で調製された抽出液中に含有されているか否かを判別することができる。
カイコ幼虫の後部絹糸腺または脂肪体の場合、カイコ幼虫の1齢期〜5齢期のものであれば、特に制限なく本発明の方法にて調製できるが、当該後部絹糸腺または脂肪体は、5齢期のカイコ幼虫由来であるのが好ましい。これは、5齢期のカイコ幼虫においては、後部絹糸腺および脂肪体が1齢期〜5齢期のうちで最も成熟しており、これを用いることで他の齢期のものと比べて短時間で大量のタンパク質が合成可能な無細胞系タンパク質合成用抽出液が得られるためである。
中でも特に、絹糸の主成分である絹フィブロインを活発につくり、高いタンパク質合成能を有しているという観点から、5齢期のカイコ幼虫の後部絹糸腺、中でも5齢期の3日〜7日のカイコ幼虫の後部絹糸腺から抽出を行うことが好ましい。
所望の量の上記抽出物を含有する抽出液を得るためには、通常、複数体のカイコより抽出する必要がある。抽出に供するカイコの数は、使用するカイコの状態や個体差によっても異なるが、カイコ幼虫については、繭の形成期に近づくにつれて組織の成熟に伴って、同量の抽出物を得るために要する数は少なくて済む。特に絹糸腺は、5齢期のカイコ幼虫において日を追うごとに著しく成熟するため、たとえば、5齢期の1日で30匹程度のカイコ幼虫からと同程度の量を5齢期の7日では6匹〜7匹程度のカイコ幼虫から得ることができる。
本発明の無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法においては、多価アルコールを含有する抽出用液を用いてカイコ組織より抽出を行うならば、その他の手順には特に制限されるものではないが、たとえば、以下の手順により行うことができる。
まず、常法にしたがって、たとえばハサミ、ピンセット、メスなどの器具を使用して、カイコより所望の組織を摘出する。この摘出によって得る後述の抽出に使用する組織量としては、特に制限はないが、通常、1g〜100gの範囲内である。
次に摘出した組織を、液体窒素で凍結させた後、予め液体窒素で冷却させた乳鉢を用いてすり潰す。これに抽出用液を添加し、一旦抽出用液も凍結させた後、シャーベット状になるまで(具体的には、ウェットな黄色いシャリシャリ状態の氷になるまで)、薬さじで攪拌しながら溶解する。その後、再度液体窒素で完全に凍結させた後、シャーベット状になるまで(具体的には、ウェットな黄色いシャリシャリ状態の氷になるまで)薬さじで攪拌しながら溶解するという操作を行うことで、カイコ組織からの抽出を行う。
かかる抽出操作は、摘出したカイコ組織を、たとえば液体窒素で凍結させた後、−80℃で凍結させた乳鉢中ですり潰し、これに抽出用液を添加して抽出を行うようにしてもよいが、上記のような抽出操作を行うことで、多価アルコールを含有しており粘性の低い抽出用液を用いているためタンパク質合成反応が進行しやすくなる、ならびにタンパク質合成に関与する成分が効率的に抽出され且つ安定化されるという利点がある。
次に、上記抽出処理で得られた液状物を遠心分離にかける。該遠心分離は、当分野において通常行われている条件(10000×g〜50000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間)で行う。本発明の調製方法においては、該遠心分離を1回行った後の上清をそのまま抽出液としてもよいが、好ましくは、当該上清(第一の上清)と、上記遠心分離(1回目の遠心分離)後の沈殿からさらに上記抽出用液を用いて抽出を行った後に遠心分離(2回目の遠心分離)して得られた上清(第二の上清)とを混合して、抽出液として調製することが好ましい。上記2回目の遠心分離は、上述した1回目の遠心分離と同様の条件で行えばよい。このように第一の上清と第二の上清とを混合して抽出液を調製することで、第一の上清、第二の上清を単独で抽出液とする場合と比較して、タンパク質合成効率が向上するという利点がある。これは、タンパク質合成反応に関与する成分が第一の上清だけでなく第二の上清にも多量に存在しているため、両者を混合し抽出液とすることで、単独の場合では得られない成分を補い合うことができるためであると考えられる。
また、上記第一の上清をさらに遠心分離して(上記と同様の条件であればよい)得られた上清(第三の上清)を、上記第二の上清と混合するようにすると、上記効果はさらに増強され、より好ましい。これは、1回の遠心分離では除去しきれなかった第一の上清に含まれる不純物を除去できることによるものと考えられる。なお、上記第一〜第三の上清を混合して、抽出液を調製するようにしてもよい。
この場合、調製される混合物(抽出液)における第一の上清および/または第三の上清(両方混合する場合には、その総量)と第二の上清との混合割合に特に制限はないが、タンパク質の合成効率の観点からは、体積比で10:90〜90:10であるのが好ましく、20:80〜80:20であるのがより好ましい。
上記第一の上清〜第三の上清、ならびに上記混合物を精製する目的で、これらにゲル濾過を施し、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が最も高い画分付近を分取して抽出液として調製するようにしてもよいが、タンパク質の合成効率の観点からは、当該ゲル濾過および画分の分取を経ずに抽出液として調製するのが好ましい。これは、上記ゲル濾過および画分の分取を経ることによって、反応に必要な成分まで減少してしまうためであると考えられる。
なお、上記ゲル濾過を施し、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が最も高い画分付近を分取する場合には、具体的には以下の手順にて行えばよい。
たとえば脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)によりゲル濾過を行い、常法にしたがって、ゲル濾過用緩衝液にてカラムを平衡化した後、試料を供給し、上記抽出用液にて溶出する、というような条件にて行う。上記ゲル濾過用緩衝液は、上記抽出用液に、グリセロールをさらに添加したものであることが好ましい。グリセロールは、通常、5(v/v)%〜40(v/v)%(好ましくは、20(v/v)%)となるように添加すればよい。ゲル濾過して得られる濾液は、通常のゲル濾過で行われているように、0.1mL〜1mLを1画分とすればよく、高いタンパク質合成能を有する画分を効率よく分取するという観点より、0.4mL〜0.6mLを1画分とするのが好ましい。
次に、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する。当該処理は、たとえばUltrospec3300pro(アマシャムバイオサイエンス社製)などの機器を用いて、各画分について上記280nmにおける吸光度を測定し、この吸光度が最も高い画分付近を分取する。
本発明は、また、上述した多価アルコールを含有する抽出用液を有するカイコ組織用抽出キットをも提供する。当該カイコ組織用抽出キットにおける抽出用液中の好適な多価アルコールの種類、濃度、その他の好適な組成については、上述したとおりである。かかるカイコ組織用抽出キットは、抽出用液を収容した適宜の容器と、その他の適当な要素で構成されていればよく、特には制限されるものではない。上記抽出用液以外の他の構成要素にも特に制限はないが、たとえば、カイコ組織の摘出に用いるハサミ、ピンセット、メスなど、また、その他カイコ用解剖台、組織洗浄液などを有していてよい。
上記のように本発明の方法にて得られた抽出液を用いてタンパク質合成反応を行うことによって、如何なるタンパク質、例えば生細胞で細胞毒となるタンパク質であっても、短時間にて合成することが可能となる。また、真核生物であるカイコの組織由来の抽出物を用いているため、糖タンパク質を無細胞系で合成することも可能であり、特に制限されることなく多くの種類のタンパク質を合成することができる。なお上記タンパク質合成反応は、mRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する無細胞翻訳系のみによるタンパク質合成反応(翻訳系合成反応)、外来鋳型DNAよりmRNAを転写する転写工程と、該転写工程で得られたmRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する翻訳工程とを含むタンパク質合成反応(転写/翻訳系合成反応)のいずれであってもよい。
さらに、このような抽出液は、後述するように従来の小麦胚芽からの抽出液の調製と比較して、無細胞系タンパク質合成に供することのできる抽出液を、格段に容易に調製することができ、効率的な無細胞系タンパク質合成を実現できる。
本発明の方法で得られた抽出液中におけるカイコ組織由来の抽出物の含有量に特に制限はないが、タンパク質濃度で1mg/mL〜200mg/mLであるのが好ましく、中でも10mg/mL〜100mg/mLであるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で1mg/mL未満であると、本発明の作用に必須な成分の濃度が低くなり、充分な合成反応が行えなくなる虞があるためであり、また当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で200mg/mLを超えると、抽出液自体が高い粘性を有し、操作しづらい虞があるためである。
なお上記範囲の量のカイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液は、抽出液のタンパク質濃度測定を利用して、調製できる。当該タンパク質濃度測定は、当分野において通常行われているように、たとえばBCA Protein assay Kit(PIERCE社製)を使用し、反応試薬2mLに対してサンプルを0.1mL加え、37℃で30分間反応させ、562nmにおける吸光度を測定する、といった手順によって行う。コントロールとしては、通常、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用する。
本発明の方法で得られる抽出液を用いて、上記翻訳系合成反応、転写/翻訳系合成反応を行うために調製する反応液(それぞれ、「翻訳系用反応液」、「転写/翻訳系用反応液」と呼ぶ。)の組成に特に制限はなく、それぞれ従来公知の組成を適宜選択すればよい。
翻訳系用反応液、転写/翻訳系用反応液のいずれの場合であっても、本発明の方法で得られた抽出液を10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有するように調製されたものであるのが好ましい。すなわち、反応液の全体において、カイコ組織由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
以下、(1)翻訳系用反応液、(2)転写/翻訳系用反応液について、それぞれ説明する。
(1)翻訳系用反応液
翻訳系用反応液は、本発明の方法で得られた抽出液を除く成分として、外来mRNA、カリウム塩、マグネシウム塩、DTT、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、RNaseインヒビター、tRNA、緩衝剤を少なくとも含有するのが好ましい。かかる翻訳系用反応液を使用して翻訳系合成反応を行うことで、短時間で大量のタンパク質の合成が可能である。
上記翻訳系用反応液に用いる外来mRNAとは、カイコ組織に由来しないmRNAを指し、カイコ組織に由来しないmRNAであるならば、コードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、毒性を有するタンパク質をコードするものであってもよいし、また糖タンパク質をコードするものであってもよい。なお、翻訳系用反応液に含有されるmRNAが外来mRNAであるかカイコ組織に由来するmRNAであるかは、まず、翻訳系用反応液中より、mRNAを単離精製後、逆転写酵素によりcDNAを合成し、得られたcDNAの塩基配列を解析し、既知の外来mRNAの塩基配列と比較することで判別することができる。
なお翻訳系用反応液に用いる外来mRNAは、その塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならばmRNA全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各mRNAは、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。
翻訳系用反応液中において、外来mRNAは、タンパク質合成の速度の観点から、1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。mRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを超えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるカリウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のカリウム塩、好適には酢酸カリウム、を好ましく使用できる。カリウム塩は、上述した抽出用液におけるカリウム塩の場合と同様の観点から、当該翻訳系用反応液中において、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜150mM含有されることがより好ましい。
翻訳系用反応液中におけるマグネシウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のマグネシウム塩、好適には酢酸マグネシウム、を好ましく使用できる。マグネシウム塩は、上述した抽出用液におけるマグネシウム塩の場合と同様の観点から、当該翻訳系用反応液中において、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜3mM含有されることがより好ましい。
翻訳系用反応液中におけるDTTは、上述した抽出用液におけるDTTの場合と同様の観点から、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.2mM〜5mM含有されることがより好ましい。
翻訳系用反応液中におけるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるグアノシン三リン酸(以下、「GTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを超えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1mM未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを超えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを超えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。
本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜200μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるRNaseインヒビターは、抽出液に混在するカイコ由来のRNaseによって、本発明の無細胞系タンパク質合成の際にmRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNaseインヒビターが0.1U/μL未満であると、RNaseの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またRNaseインヒビターが100U/μLを超えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液中におけるtRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。tRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを超えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳系用反応液に含有される緩衝剤としては、上述した抽出用液に用いたものと同様のものが好適に使用でき、同様の理由から、HEPES−KOH(pH6〜8)を使用するのが好ましい。また、緩衝剤は、上述した抽出用液における緩衝剤の場合と同様の観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜50mM含有されることがより好ましい。
また翻訳系用反応液は、さらに上記多価アルコールを添加されたものであるのがより好ましい。多価アルコールを添加すると、翻訳系合成反応においてタンパク質合成に必須な成分を安定化できるという利点があるためである。多価アルコールを添加する場合、通常、5(v/v)%〜20(v/v)%となるように添加する。
さらに、翻訳系用反応液は、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(以下、「EGTA」ということがある。)を含有するのが好ましい。EGTAを含有すると、EGTAが抽出液中の金属イオンとキレートを形成することでリボヌクレアーゼ、プロテアーゼなどを不活化させることにより、本発明のタンパク質合成に必須な成分の分解を阻害することができるためである。該EGTAは、上記反応液中において、上記分解阻害能を好適に発揮し得る観点から0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。EGTAが0.01mM未満であると必須な成分の分解活性を充分に抑えることができない傾向にあるためであり、また、10mMを超えるとタンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
すなわち、本発明の方法で得られた抽出液を使用した翻訳系用反応液としては、当該抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.2mM〜5mMのDTT、5(v/v)%〜20(v/v)%の多価アルコール、0.1mM〜5mMのATP、0.1mM〜5mMのGTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜200μMのアミノ酸成分、1U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、10μg/mL〜500μg/mLのtRNA、10μg/mL〜500μg/mLの外来mRNA、10mM〜50mMのHEPES−KOH(pH6〜8)を含有するように実現されるのが好ましい。また、上記に加えてさらに0.1mM〜5mMのEGTAを含有するように実現されるのがより好ましい。
上記翻訳系用反応液を用いた無細胞系タンパク質合成反応(翻訳系合成反応)は、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行う。反応温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲内である。反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また反応温度が40℃を超えると、必須な成分が変性する傾向にあるためである。反応の時間は、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
(2)転写/翻訳系用反応液
転写/翻訳系用反応液は、本発明の方法で得られた抽出液を除く成分として、外来鋳型DNA、RNAポリメラーゼ、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン5'−三リン酸、ウリジン5'−三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分およびtRNAを少なくとも含有するのが好ましい。かかる転写/翻訳系用反応液を使用して転写/翻訳系合成反応を行うことで、短時間で大量のタンパク質の合成が可能である。
上記転写/翻訳系用反応液に用いる外来鋳型DNAは、プラスミドDNAなどの環状DNAであってもよいし、PCR産物などの直鎖状DNAであってもよい。上記外来鋳型DNAは、カイコ組織に由来しない鋳型DNAを指し、目的タンパク質をコードする塩基配列と、その5'上流側に位置するプロモーター配列とを少なくとも有する。本発明に用いる外来鋳型DNAは、カイコ組織に由来しない鋳型DNAであるならば、コードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、生細胞で細胞毒となるタンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよいし、また糖タンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよい。また本発明に用いる外来鋳型DNAにおけるプロモーター配列としては、特に制限されるものではないが、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。
なお本発明に用いる外来鋳型DNAは、塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならば鋳型DNA全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各外来鋳型DNAは、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。なお、抽出液において、含有される鋳型DNAが外来鋳型DNAであるかカイコ組織に由来する鋳型DNAであるかは、抽出液中より、フェノール−クロロホルム抽出を行ってその鋳型DNAを抽出し、その塩基配列を解析することによって判別することができる。
また、本発明に用いる外来鋳型DNAは、上記目的タンパク質をコードする塩基配列の3'下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列、および/または、合成されたmRNAの安定性などの観点からポリA配列を有しているのが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
外来鋳型DNAは、転写/翻訳系用反応液中において、0.1μg/mL〜8000μg/mL含有されることが好ましく、3μg/mL〜600μg/mL含有されることがより好ましい。外来鋳型DNAが0.1μg/mL未満または8000μg/mLを超えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液に用いるRNAポリメラーゼは、外来鋳型DNAが有するプロモーター配列に応じて適宜選択することができる。たとえば、外来鋳型DNAがT7プロモーター配列を有している場合は、その配列を認識するT7 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。また、外来鋳型DNAが、SP6またはT3プロモーター配列を有している場合は、それぞれ、SP6 RNAポリメラーゼまたはT3 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。
RNAポリメラーゼは、mRNA合成の速度およびタンパク質合成の速度の観点から、転写/翻訳系用反応液中に0.01U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、0.1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNAポリメラーゼが0.01U/μL未満であると、mRNAの合成量が少なくなり、結果としてタンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためであり、またRNAポリメラーゼが100U/μLを超えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるグアノシン三リン酸(以下、「GTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを超えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるシチジン5'−三リン酸(以下、「CTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。CTPが0.01mM未満または10mMを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるウリジン5'−三リン酸(以下、「UTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。UTPが0.01mM未満または10mMを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、転写/翻訳系用反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1mM未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを超えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、転写/翻訳系用反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを超えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。
タンパク質合成の速度の観点からは、転写/翻訳系用反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜500μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを超えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるtRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。tRNAは、タンパク質合成の速度の観点からは、転写/翻訳系用反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。tRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを超えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液は、さらに、カリウム塩、マグネシウム塩、DTT、RNaseインヒビター、スペルミジンおよび緩衝剤を含有するのが好ましい。
転写/翻訳系用反応液中におけるカリウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のカリウム塩、好適には酢酸カリウム、を好ましく使用できる。カリウム塩は、上述した抽出用液におけるカリウム塩の場合と同様の観点から、当該転写/翻訳系用反応液中において、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜150mM含有されることがより好ましい。
転写/翻訳系用反応液中におけるマグネシウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のマグネシウム塩、好適には酢酸マグネシウム、を好ましく使用できる。マグネシウム塩は、上述した抽出用液におけるマグネシウム塩の場合と同様の観点から、当該転写/翻訳系用反応液中において、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜3mM含有されることがより好ましい。
転写/翻訳系用反応液中におけるDTTは、酸化防止の目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1mM〜100mM含有されることが好ましく、0.2mM〜20mM含有されることがより好ましい。DTTが0.1mM未満または100mMを超えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液中におけるRNaseインヒビターは、抽出液に混在するカイコ由来のRNaseによって、転写/翻訳系合成反応の際にmRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で添加されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNaseインヒビターが0.1U/μL未満であると、RNaseの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またRNaseインヒビターが100U/μLを超えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
上記スペルミジンは、転写における伸張反応を促進する目的で添加されるものであり、転写/翻訳系用反応液中において0.01mM〜100mM含有されることが好ましく、0.05mM〜10mM含有されることがより好ましい。スペルミジンが0.01mM未満であると、mRNAの合成速度が低下し生成するmRNAの量が少なくなり、結果としてタンパク質合成の速度が低下するというような傾向にあるためであり、またスペルミジンが100mMを超えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
転写/翻訳系用反応液に含有される緩衝剤としては、上述した抽出用液に用いたものと同様のものが好適に使用でき、同様の理由から、HEPES−KOH(pH6〜8)を使用するのが好ましい。また、緩衝剤は、上述した抽出用液における緩衝剤の場合と同様の観点から、1mM〜200mM含有されることが好ましく、5mM〜50mM含有されることがより好ましい。
また転写/翻訳系用反応液は、さらに上記多価アルコールを添加されたものであるのがより好ましい。多価アルコールを添加すると、転写/翻訳系合成反応においてタンパク質合成に必須な成分を安定化できるという利点があるためである。多価アルコールを添加する場合、通常、5(v/v)%〜20(v/v)%となるように添加する。
すなわち、本発明の方法で得られた抽出液を使用した転写/翻訳系用反応液としては、当該抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、さらに0.1U/μL〜10U/μLのRNAポリメラーゼ、0.1mM〜5mMのATP、0.1mM〜5mMのGTP、0.1mM〜5mMのCTP、0.1mM〜5mMのUTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜500μMのアミノ酸成分、10μg/mL〜500μg/mLのtRNAを含有するのが好ましい。さらには、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.2mM〜20mMのDTT、1U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、0.05mM〜10mMのスペルミジン、5mM〜50mMのHEPES−KOH(pH7.4)、5(v/v)%〜20(v/v)%の多価アルコールを含有するように実現されるのが好ましい。
上記転写/翻訳系用反応液を用いた無細胞系タンパク質合成反応(転写/翻訳系合成反応)についても、上記翻訳系合成反応の場合と同様、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行えばよい。転写工程の反応温度は、通常、10℃〜60℃、好ましくは20℃〜50℃の範囲内である。転写工程の反応温度が10℃未満であると、転写の速度が低下する傾向にあり、また転写工程の反応温度が60℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。また翻訳工程の温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲内である。翻訳工程の反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また翻訳工程の反応温度が40℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。
転写/翻訳系合成反応では、転写、翻訳工程を連続して実施し得るという観点から両工程に好適な20℃〜30℃の範囲で反応を行うことが特に好ましい。反応の時間は、全工程あわせて、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
上記翻訳系用反応液、転写/翻訳系用反応液を使用して合成できるタンパク質に特に制限はない。合成されたタンパク質の量は、酵素の活性の測定、SDS−PAGE、免疫検定法などによって測定できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1
5齢期の6日に達したカイコ幼虫をサンプリングした。サンプリングしたカイコから、ハサミ、ピンセット、メスを使用して、後部絹糸腺を摘出し、以下の手順に従って後部絹糸腺について抽出を行った。
抽出は、まず、5齢期の6日に達したカイコ幼虫より摘出した後部絹糸腺を、液体窒素で凍結させた後、予め液体窒素で冷却された乳鉢を用いてすり潰した。これに下記組成の抽出用液を添加し、一旦抽出液も凍結させた後、シャーベット状になるまで薬さじで攪拌しながら溶解した。その後、液体窒素で完全に凍結させた後、シャーベット状になるまで再度薬さじで攪拌しながら溶解するという操作を行うことで、カイコ組織からの抽出を行った。
〔抽出用液の組成〕
・20mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・19.3(v/v)% グリセロール
・1mM DTT
・0.5mM PMSF
抽出後、得られた液状物を遠心分離機(himacCR20B3(日立工機社製))にて、30000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。遠心分離後、上清(第一の上清)のみを単離し、再び30000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行い、上清(第三の上清)を単離した。一方、上記1回目の遠心分離後の沈殿に、上記組成の抽出用液を添加し、上述したのと同様の抽出操作を行った後、30000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行い、上清(第二の上清)を単離した。こうして得られた6.25μlの第二の上清と6.25μlの第三の上清とを混合し、抽出液を調製した。
実施例2
上記実施例1で得られた12.5μlの第三の上清をそのまま抽出液として調製した以外は、実施例1と同様にして行った。
実施例3
上記実施例1で得られた12.5μlの第二の上清をそのまま抽出液として調製した以外は、実施例1と同様にして行った。
実験例1
:実施例1〜3の各抽出液を用いた無細胞系でのタンパク質合成
上記実施例1〜3で得られた各抽出液を用いて、下記の組成の反応液を調製した。
〔反応液の組成〕
・50(v/v)% 抽出液
・40μg/mL 外来mRNA
・30mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1.0mM 酢酸マグネシウム
・0.5mM DTT
・10(v/v)% グリセロール
・0.5mM ATP
・0.5mM GTP
・0.25mM EGTA
・25mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・2U/μL RNaseインヒビター
・200μg/mL tRNA
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。外来mRNAとしては、ルシフェラーゼをコードするmRNA(ルシフェラーゼコントロールRNA、プロメガ社製)を用いた。
各々調製した反応液を用いて、反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用い、無細胞系のタンパク質(ルシフェラーゼ)の合成反応を行った。反応液量は25μLとした。反応温度は25℃とし、反応時間ごとにサンプリングを行い、合成されたルシフェラーゼ量を測定した。
合成されたルシフェラーゼは、ルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ社製)を用いて各々定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Luminescencer−JNR AB−2100、アトー社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
図1は、実験例1の結果を示すグラフである。図1において、縦軸はルシフェラーゼ発光積算量を示し、横軸は反応時間(時間)を示す。
実施例4
実施例1で調製した第二の上清と第三の上清との混合物を、さらにSephadex G−25 Fine(アマシャム バイオサイエンス社製)に、抽出用液を加えカラムを平衡化した後、上記混合物を供給し、上記抽出用液にて溶出することによりゲル濾過を行った。ゲル濾過後の濾液の画分を、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、280nmにおける吸光度が最も高い画分を分取し、これを抽出液とした以外は、実施例1と同様にした。
実施例5
実施例2で得られた第三の上清を、さらにSephadex G−25 Fine(アマシャム バイオサイエンス社製)に、抽出用液を加えカラムを平衡化した後、上記混合物を供給し、上記抽出用液にて溶出することによりゲル濾過を行った。ゲル濾過後の濾液の画分を、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、280nmにおける吸光度が最も高い画分を分取し、これを抽出液とした以外は、実施例2と同様にした。
実施例6
実施例3で得られた第二の上清を、さらにSephadex G−25 Fine(アマシャム バイオサイエンス社製)に、抽出用液を加えカラムを平衡化した後、上記混合物を供給し、上記抽出用液にて溶出することによりゲル濾過を行った。ゲル濾過後の濾液の画分を、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取し、これを抽出液とした以外は、実施例3と同様にした。
実験例2
:実施例4〜6の各抽出液を用いた無細胞系でのタンパク質合成
上記実施例4〜6で得られた各抽出液を用いて、実験例1と同様にして、無細胞系タンパク質合成反応を行った。
図2は、実施例4〜6についての実験例2の結果を示すグラフである。図2において、縦軸はルシフェラーゼ発光積算量を示し、横軸は反応時間(時間)を示す。
実施例7
5齢期の6日に達したカイコ幼虫をサンプリングした。サンプリングしたカイコから、ハサミ、ピンセット、メスを使用して、後部絹糸腺を摘出し、以下の手順に従って後部絹糸腺について抽出を行った。
抽出は、まず、5齢期の6日に達したカイコ幼虫より摘出した後部絹糸腺3.0gを液体窒素で凍結した後、予め液体窒素で冷却させた乳鉢を用いてすり潰し、下記の組成の抽出用液を用いて抽出用液を添加した。
〔抽出用液の組成〕
・20mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・10(v/v)% グリセロール
・1mM DTT
・0.5mM PMSF
抽出用液の添加後、液体窒素にて凍結、解凍した後、得られた液状物を遠心分離機(himacCR20B3(日立工機社製))にて、30000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。遠心分離後、上清のみを単離し、再び30000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。この遠心分離後、上清のみを単離し、抽出液とした。
実施例8
グリセロールを20(v/v)%含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例9
グリセロールに換えて、20(v/v)%のジグリセロールを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例10
グリセロールに換えて、10(v/v)%のエチレングリコールを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
製造例1
:ポリエリスリトール(4量体)の製造
メソ−エリスリトール100.0gと水酸化ナトリウム1.0gとを二酸化炭素雰囲気下、240℃、30mmHg〜40mmHgで2時間反応させた。得られた褐色液体に水150mlを加え、希塩酸で中和し、活性炭で脱色し、カチオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイアイオンSK−112)およびアニオン交換樹脂(三菱化学(社)製、ダイアイオンWA30)にて処理し、水を留去して無色粘性の液体69.3g(含水率:5%)を得た。
得られたものをTOF−MS分析(マイクロマス社製 LCT質量分析計、イオン化方式:ESI、測定イオン:正イオン)したところ、メソ−エリスリトールに由来する104Daの繰り返し単位が観測できた。また、主なピークとして、m/z226(重合度2)から1474(重合度14)までの鎖状ポリエリスリトールのピークに加えて、それらのm/zより18Daおよび36Daの小さい脱水物のピークも観察された。同装置のLC(カラム:TSK−gel Amide−80(東ソー(株)社製)、溶離液:(アセトニトリル/水=80/20)、60℃、流速1ml/min)にて成分を分離し分子量を測定したところ、同一分子量でも直鎖状と分岐状のポリエリスリトールが観察された。なお、TOF−MSのイオン強度より算出すると、平均重合度は4であった。
実施例11
グリセロールに換えて、上記製造例1で得られたポリエリスリトールを10(v/v)%含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
比較例1
グリセロールを含有しないこと以外は実施例7で用いたのと同様の抽出用液を用いて抽出を行った以外は、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実験例3
:実施例7〜11、比較例1の各抽出液を用いた無細胞系でのタンパク質合成
上記実施例7〜11、比較例1で得られた各抽出液を用いて、下記の組成の反応液を調製した。
〔反応液の組成〕
・50(v/v)% 抽出液
・160μg/mL 外来mRNA
・30mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1.75mM 酢酸マグネシウム
・2mM DTT
・0.75mM ATP
・0.5mM GTP
・0.25mM EGTA
・25mM クレアチンリン酸
・50μg/mL クレアチンキナーゼ
・100μM アミノ酸(20種)
・2U/μL RNaseインヒビター
・100μg/mL tRNA
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。外来mRNAとしては、ルシフェラーゼをコードするmRNA(ルシフェラーゼコントロールRNA、プロメガ社製)を用いた。
各々調製した反応液を用いて、反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用い、無細胞系のタンパク質(ルシフェラーゼ)の合成反応を行った。反応液量は25μLとした。反応温度は25℃とし、反応時間ごとにサンプリングを行い、合成されたルシフェラーゼ量を測定した。
合成されたルシフェラーゼは、ルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ社製)を用いて各々定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Turner Designs TD−20/20、プロメガ社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
図3は、実験例3の反応開始より4時間後のルシフェラーゼ合成量を示すグラフである。図3において、縦軸は、比較例1で得られた抽出液を用いた場合の無細胞系タンパク質合成量に対する、実施例7〜11で得られた各抽出液を用いた場合の無細胞系タンパク質合成量の割合(相対合成量:%)を表している。図3に示すように、多価アルコールを含有する抽出用液を用いて調製した抽出液を使用した反応液は、多価アルコールを含有しない抽出用液を用いて調製した抽出液を使用した反応液と比較して、タンパク質合成量が約200%〜350%となる。
実施例12
グリセロールに換えて、10(v/v)%のエリスリトールを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例13
グリセロールに換えて、10(v/v)%のキシリトールを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例14
グリセロールに換えて、10(v/v)%のソルビトールを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例15
グリセロールに換えて、10(v/v)%のトレハロースを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例16
グリセロールに換えて、10(v/v)%のスクロースを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例17
グリセロールに換えて、10(v/v)%のラクトースを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例18
グリセロールに換えて、10(v/v)%のキシロースを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例19
グリセロールに換えて、10(v/v)%のマルトースを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
実施例20
グリセロールに換えて、10(v/v)%のイノシトールを含有すること以外は実施例7と同様の抽出用液を用いて、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
比較例2
グリセロールを含有しないこと以外は実施例7で用いたのと同様の抽出用液を用いて抽出を行った以外は、実施例7と同様にして抽出液を調製した。
参考例1
:ベクターpT N T−Lucの構築
ルシフェラーゼをコードする構造遺伝子を有するpGEM−Luc Vector(プロメガ社製)5ngを鋳型とし、配列表配列番号1に示す塩基配列を有するプライマー(Luc T7−F3−Kpn)と、配列表配列番号2に示す塩基配列を有するプライマー(Luc T7−R4−Kpn)と、KOD plus(東洋紡績社製)を用い、96℃2分で鋳型を変性させた後、96℃15秒、50℃30秒、68℃120秒、30サイクルのPCRを行い、構造遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を増幅した。エタノール沈殿によりPCR産物を精製した後、KpnIで消化した。これとは別に、pTNT Vector(プロメガ社製)をKpnIで消化した。これらの反応液をアガロースゲル電気泳動で分離した後、Gen Elute Gel Purification Kit(シグマ社製)を用いて精製した。Ligation High(東洋紡績社製)を用いて、これらをライゲーションした後、大腸菌DH5α(東洋紡績社製)を形質転換した。形質転換した大腸菌からアルカリ−SDS法により調製したプラスミドを、配列表配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー(T7 promoter)およびBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてシークエンシング反応(96℃10秒、50℃5秒、60℃4分、25サイクル)を行った。この反応液をABI PRISM 310 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)に供し、塩基配列解析を行った。pTNT Vector由来の5'−βグロビンリーダー配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子の開始コドンが挿入されたプラスミドをpTNT−Lucと命名した。
参考例2
:鋳型DNA(ベクターpSphd−Luc)の作製
上記参考例1で作成したプラスミドベクターpTNT−Lucを鋳型にして、配列表配列番号4に示す塩基配列を有するプライマー(T7p Rv)と、配列表配列番号5に示す塩基配列を有するプライマー(Luc−ATG)を用い、96℃15秒、50℃30秒、68℃5分、30サイクルのPCRを行った。反応終了後、電気泳動でPCR産物を分離した後、Gen Elute Gel Purification Kit(シグマ社製)を用いて精製し、これをライゲーション反応に用いた。このようにして、プラスミドベクターpTNT−LucからSP6プロモーター配列、5'−βグロビンリーダー配列およびルシフェラーゼをコードする構造遺伝子の5’上流側マルチクローニングサイトを欠失せしめたプラスミドベクターを得た。
配列表配列番号6に示す塩基配列を有するSfNPV(Spodoptera frugiperda nucleopolyhedrovirus)のポリへドリン遺伝子の5’UTRのセンス鎖、アンチセンス鎖をDNA合成機で合成し、T4 Polynucleotide Kinase(東洋紡績社製)によってその5’末端のリン酸化を行った。反応終了後、センス鎖とアンチセンス鎖とを混合し、95℃5分間熱処理した。これを室温になるまで静置しセンス鎖とアンチセンス鎖とをアニーリングさせた。エタノール沈殿により精製した後、水に溶解させた。SigmaSpin Post Reaction Purification Columns(シグマ社製)によって、過剰のATPを取り除いた後、再度エタノール沈殿により精製した。得られた二本鎖DNA断片をインサートとし、上記SP6プロモーター配列、βグロビンリーダー配列および構造遺伝子の5’上流側マルチクローニングサイトを欠失したpTNT−Luc由来のベクターとライゲーションし、大腸菌DH5αを形質転換させた。得られた大腸菌よりプラスミドを調製した後、塩基配列解析を行った。このようにして、SfNPVのポリへドリン遺伝子の5’UTRが順方向(5’→3’)に1個組み込まれたベクター(鋳型DNA)を選択した。このようにして、T7プロモーター配列と構造遺伝子との間にSfNPVのポリへドリン遺伝子の5’UTRが順方向に1個組み込まれたベクター(鋳型DNA)を作製した。得られた鋳型DNAを、pSphd−Lucと名付けた。
実験例4
:カイコ組織由来の抽出物を含有する反応液を用いた無細胞系タンパク質合成
(1)インビトロ転写反応およびmRNAの精製
上記参考例2で作製したベクターを、BamHIまたはBglIIで消化した後、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。得られたベクター1μgを鋳型として、RiboMax Large Scale RNA production System−T7(プロメガ社製)を用い20μlスケールで37℃4時間のインビトロ転写反応を行い、mRNAを合成した。
転写反応終了後、1UのRQ1 RNase Free DNase(プロメガ社製)を添加し、37℃15分インキュベートし、鋳型を消化した。フェノール−クロロホルム抽出によりタンパク質を除去した後、エタノール沈殿を行った。得られた沈殿を100μlの滅菌水に溶解し、Nick column(アマシャムバイオサイエンス社製)にアプライした後、滅菌水で溶出した。溶出画分に酢酸カリウムを終濃度0.3Mとなるように添加し、エタノール沈殿を行った。合成されたmRNAの定量は260nmと280nmの吸光度を測定して行った。
(2)無細胞系タンパク質合成反応
実施例12〜20及び比較例2で調製したカイコ抽出液ならびに上記(1)で得られたmRNAを用い、下記組成の反応液を調製し、無細胞系タンパク質合成反応を行った。
〔反応液の組成〕
・50(v/v)% カイコ抽出液
・160μg/mL mRNA
・30mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1.75mM 酢酸マグネシウム
・2.0mM DTT
・0.75mM ATP
・0.5mM GTP
・0.25mM EGTA
・25mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・2U/μL RNaseインヒビター
・100μg/mL tRNA
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。
反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用いた。翻訳反応は反応温度25℃で6時間行い、反応液量は25μLとした。合成されたルシフェラーゼはルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ社製)を用いて定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Tuner Designs TD−20/20、プロメガ社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
図4は、実験例4のタンパク質合成反応開始より6時間後のルシフェラーゼ合成量を示すグラフである。図4において、縦軸は、比較例2で得られた抽出液を用いた場合の無細胞系タンパク質合成量に対する、実施例12〜20で得られた各抽出液を用いた場合の無細胞系タンパク質合成量の割合(相対合成量:%)を表している。図4に示すように、多価アルコールを含有する抽出用液を用いて調製した抽出液を使用した反応液は、多価アルコールを含有しない抽出用液を用いて調製した抽出液を使用した反応液と比較して、タンパク質合成量が約200%〜300%となった。
参考例3
:鋳型DNA(ベクターpAphd−Luc)の作製
配列表配列番号7に示す塩基配列を有するAcNPV(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)のポリへドリン遺伝子の5’UTRを用いた以外は参考例2と同様にして、T7プロモーター配列と構造遺伝子との間に、配列表配列番号7に示す塩基配列を有するAcNPVのポリへドリン遺伝子の5’UTRが順方向(5’→3’)に1個組み込まれたベクター(鋳型DNA)を作製した。得られた鋳型DNAを、pAphd−Lucと名付けた。
実験例5
:カイコ組織由来の抽出物を含有する反応液を用いた無細胞系タンパク質合成
(1)インビトロ転写反応およびmRNAの精製
ベクターとして参考例3で調製したpAphd−Lucを用いた以外は、実験例4(1)と同様の方法により、mRNAを調製した。
(2)抽出液として実施例7及び比較例1で調製したカイコ抽出液を用い、mRNAとして上記(1)で得られたmRNAを用いる以外は実験例4(2)と同様の反応液を調製し、無細胞系タンパク質合成反応を行った。
反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用いた。反応液量は25μLとした。経時的にサンプリングを行い、実験例4(2)と同様に合成されたルシフェラーゼ量を定量した。
図5は、実験例5の結果を示すグラフである。図5において、縦軸は、ルシフェラーゼ合成量(μg/mL)を、横軸は反応時間(時間)を示す。図5に示すように、グリセロールを含有する抽出用液を用いて調製した抽出液を使用した反応液は、グリセロールを含有しない抽出用液を用いて調製した抽出液を使用した反応液と比較して、各時間において、タンパク質合成量が約200%〜350%となった。
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、従来よりタンパク質の合成効率を向上できる無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法、ならびにそのためのカイコ組織抽出用キットを提供することができる。
実験例1の結果を示すグラフであり、縦軸はルシフェラーゼ発光積算量を示し、横軸は反応時間(時間)を示す。 実施例4〜6についての実験例2の結果を示すグラフであり、縦軸はルシフェラーゼ発光積算量を示し、横軸は反応時間(時間)を示す。 実験例3の反応開始より4時間後のルシフェラーゼ合成量を示すグラフである。 実験例4の反応開始より6時間後のルシフェラーゼ合成量を示すグラフである。 実験例5の結果を示すグラフであり、縦軸はルシフェラーゼ合成量(μg/mL)を示し、横軸は反応時間(時間)を示す。
配列番号1:プライマー Luc T7−F3−Kpn
配列番号2:プライマー Luc T7−R4−Kpn
配列番号3:プライマー T7プロモーター
配列番号4:プライマー T7p Rv
配列番号5:プライマー Luc−ATG
配列番号6:SfNPVポリヘドリン遺伝子5’UTRの塩基配列
配列番号7:AcNPVポリヘドリン遺伝子5’UTRの塩基配列

Claims (5)

  1. 多価アルコールを含有する抽出用液を用いてカイコ組織からの抽出を行う、無細胞系タンパク質合成用抽出液の調製方法。
  2. 多価アルコールが、グリセロール、ジグリセロール、エチレングリコール、ポリエリスリトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、スクロース、ラクトース、キシロース、マルトースおよびイノシトールのうちから選ばれる少なくともいずれかである、請求項1に記載の方法。
  3. 抽出後に遠心分離して得られた上清と、該遠心分離後の沈殿からさらに上記抽出用液を用いて抽出を行った後に遠心分離して得られた上清とを混合して、抽出液を調製することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 多価アルコールを含有する抽出用液を有するカイコ組織用抽出キット。
  5. 多価アルコールが、グリセロール、ジグリセロール、エチレングリコール、ポリエリスリトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、スクロース、ラクトース、キシロース、マルトースおよびイノシトールのうちから選ばれる少なくともいずれかである、請求項4に記載のキット。
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