JP2004263076A - α−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒及びそれを用いるα−オレフィンの重合方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする固体成分、フルオロ基置換芳香族化合物成分、及び、任意成分としての電子供与性化合物、有機珪素化合物、ジエーテル化合物、有機アルミニウム化合物からなる固体触媒成分、(B)有機アルミニウム化合物、任意成分としての(C)アルコキシ珪素化合物、ジエーテル化合物などを組み合わせてなるα−オレフィン重合用触媒、及びそれを用いてα−オレフィンを重合する方法。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒、及びそれを用いるα−オレフィンの重合方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は固体触媒成分に特定のフルオロ系化合物を使用して、高い立体規則性の重合体を得る、高活性のオレフィン重合用触媒、及びそれを用いるα−オレフィンの重合方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンなどのα−オレフィン重合体の重合技術の発展の基礎となったチーグラー系触媒は、よく知られているように、チタン化合物、マグネシウム化合物、ハロゲン及び電子供与体を必須成分とするものであって、重合体に立体規則性をもたらし、良好な触媒活性などに特徴を有するものであり、それらの特徴をさらに向上させる研究開発が、いまなお続けられている。
そして、チーグラー系の触媒において有機アルミニウム成分を併用して、上記の特徴を向上させる実用性の高い触媒が開発され(例えば、特許文献1を参照)、続いてハロゲン化マグネシウム担持体の使用による触媒活性と立体規則性の向上、分岐アルキル基を有する珪素ドナーやビニルシラン化合物などの有機珪素化合物の使用による触媒活性と立体規則性のさらなる向上など重要な改良がなされている(特許文献2及び3を参照)。
また、珪素化合物以外の電子供与体を利用する提案として、金属フェノキシ化合物を共存させる方法(特許文献4を参照)や、ジエーテル化合物を電子供与体として用いる提案(特許文献5を参照)などもなされている。
さらに、最近では例えば、フルオロ系アルキルアルコキシ珪素化合物(特許文献6)やコハク酸ジエステルを使用する方法(特許文献7)など、立体規則性や触媒活性についての多くの改良技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、本発明者らが知るところでは、これらのいずれの触媒系においても生成するα−オレフィン重合体の立体規則性はなお十分とは言えないし、重合活性や重合持続性という点についても、工業的にはそのコストという観点からも、決して十分とは言えない。特に最近の高結晶性α−オレフィン重合体におけるきわめて高い結晶性の要望を満たすためには、立体規則性制御剤や分子量制御剤を多く使用するなどのかなり厳しい重合条件をとる必要があり、その場合には重合活性という点でも更なる改善が望まれている。
【0004】
【前記した従来技術における各特許文献の一括表示】
特許文献1:特開昭58−138711号公報(特許請求の範囲の請求項1及び第1頁右下欄)
特許文献2:特開昭62−187707号公報(特許請求の範囲の請求項1及び第1頁右下欄)
特許文献3:特開平03−234707号公報(特許請求の範囲の請求項1及び第2頁右上欄)
特許文献4:特開平03−243604号公報(特許請求の範囲の請求項1及び第2頁右下欄)
特許文献5:特開平03−62805号公報(特許請求の範囲の請求項8及び第3頁左下欄)
特許文献6:特開平07−252312号公報(特許請求の範囲の請求項1及び要約)
特許文献7:WO00/63261国際公開パンフレット(要約、クレーム1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
チーグラー系触媒によるα−オレフィン、特にプロピレンの重合において、重合体の高い立体規則性と優れた触媒活性は最も基本的でかつ重要な機能であるが、上述したように従来では、これらの機能において非常に優れ十分に満足されるチーグラー系触媒は未だに開発されていず、普遍的に常に改良され解決されるべき課題となっている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を受けて、チーグラー系触媒によるα−オレフィン、特にプロピレンの重合において、従来の触媒よりもさらに、高い立体規則性と優れた触媒活性を得ることを目指して、すなわち従来よりも、生成するα−オレフィン重合体の結晶性が十分に高く、かつ重合活性を十分に向上させた触媒を開発することを目的とするものである。
【0007】
本発明者などは、チーグラー系触媒における基本的で普遍的な上記問題点を解決するために、チーグラー触媒における各種の触媒成分の性質や化学構造などについて全般的な思考及び検索を巡らし、多種の触媒成分について検討及び実験を重ね、触媒の活性点において立体規則性やモノマーの関与に関わる触媒成分を探索した。
その結果として、特定のフルオロ系化合物、特にフルオロ基置換芳香族化合物を採用して、チーグラー系触媒の固体成分と接触処理させると、重合体の立体規則性と触媒活性の双方が著しく向上されることを新しく知見した。すなわち、後述する実施例と比較例との対比からも明らかなように、従来よりも、生成するα−オレフィン重合体の結晶性が非常に高く、かつ重合効率も著しく向上した触媒を開発することを実現することができた。
【0008】
本発明においては、基本的に、チタン化合物とマグネシウム化合物及びハロゲンからなるチーグラー系の固体成分に、フルオロ基置換芳香族化合物を接触処理させて触媒成分となし、必要に応じて任意に、電子供与性化合物や有機珪素化合物などをさらに接触させた固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを組み合わせてチーグラー系の触媒とするものである。さらに、この触媒にアルコキシ珪素化合物やジエーテル化合物などを組み合わせてもよく、かかる触媒活性の著しく高い触媒の存在下にα−オレフィンを重合させて、立体規則性の非常に高い、すなわち結晶性に優れたα−オレフィン重合体を製造するものである。
【0009】
上記のようにして創作された本発明を総括的に記載すると、次の発明群から構成される。(全ての発明群を包含して、「本発明」と総称する。)
[1]チタン、ハロゲン、マグネシウムを必須とする成分(I)及びフルオロ基置換芳香族化合物からなる成分(II)を含有することを特徴とする、α−オレフィン重合用固体触媒成分。
[2]フルオロ基置換芳香族化合物が2個以上のフルオロ基を有することを特徴とする、上記[1]の固体触媒成分。
[3]フルオロ基置換芳香族化合物が電子供与性置換基でさらに置換されていることを特徴とする、上記[2]の固体触媒成分。
[4]電子供与性置換基でさらに置換されたフルオロ基置換芳香族化合物が、ペンタフルオロフェノール又はペンタフルオロスチレンであることを特徴とする、上記[3]の固体触媒成分。
[5]さらに、電子供与性化合物成分(III)を含有することを特徴とする、上記[1]〜[4]の固体触媒成分。
[6]さらに、有機珪素化合物及び/又は少なくとも2個以上のエーテル結合を有する化合物からなる成分(IV)、及び有機アルミニウム化合物成分(V)を含有することを特徴とする、上記[1]〜[5]の固体触媒成分。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物成分(B)を含有することを特徴とする、α−オレフィン重合用触媒。
[8]さらに、アルコキシ珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物からなる成分(C)を含有することを特徴とする、上記[7]のα−オレフィン重合用触媒。
[9]上記[7]又は[8]のα−オレフィン重合用触媒の存在下に、α−オレフィンを重合又は共重合することを特徴とする、α−オレフィンの重合方法。
【0010】
なお、本発明の最も特徴とするところは、前述のように特定のフルオロ系化合物、すなわちフルオロ基が置換された芳香族化合物を従来のチーグラー系触媒の固体成分に接触させることであるが、最終のオレフィン重合触媒成分中に、フルオロ基置換芳香族化合物が必ずしも残存していることを意味していない。
ところで、本発明において、フルオロ基置換芳香族化合物を従来のチーグラー系触媒の固体成分と接触させ触媒成分とすることによる、重合体の立体規則性と触媒活性の双方が著しく向上される、本発明の驚くべきかつ新しい触媒機能の発現理由は未だ定かではないが、フルオロ基置換の芳香族化合物におけるフッ素基の電子吸引性により、芳香環あるいは芳香環に置換されているビニル基やフェノール基などの電子供与性に少なからず影響が及ぼされ、それを共存状態で成分(I)と接触させることで、触媒の活性種となるチタン原子の担持状態及びチタン原子の電子状態を変化させることになり、立体規則性が影響を受け、また、その結果として重合されるべきモノマーの活性点への挿入が容易となり、それにより重合反応がより起こりやすくなって、触媒活性の向上が図られているものと推定される。
したがって、フルオロ基置換の芳香族化合物においては、フルオロ置換基の数が多いほど好ましく、また、ビニル基やフェノール基などの電子供与性置換基が芳香環に置換されているものがより好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明群における発明の詳細を実施の形態として、各成分及び調製法などについて具体的に詳述する。
(1)固体触媒成分(A)について
本発明に用いられる触媒は、特定の固体触媒成分(A)と成分(B)及び任意成分(C)を含有する、つまり、組み合わせてなるものである。ここで「組み合わせてなる」ということは、成分が挙示のもの、すなわち成分(A)と成分(B)及び任意成分(C)のみであるということを意味するものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分が共存することを許容する。
【0012】
本発明における固体触媒成分(A)は、特定の固体成分(成分(I))及び特定のフルオロ基置換芳香族化合物(成分(II))を含有し、さらに必要に応じて任意成分として電子供与性化合物(成分(III))、有機珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物(成分(IV))、有機アルミニウム化合物(成分(V))を接触させてなる生成物である。このような本発明の成分(A)は、上記必須の2成分、及び任意の3成分以外の合目的的な他の成分の共存を許容する。
【0013】
1.固体成分−成分(I)
本発明で用いられる固体成分(I)は、チーグラー系触媒において従来から汎用されているものであり、チタンとマグネシウム及びハロゲンを必須成分として含有してなる、α−オレフィン重合用触媒の固体成分である。チタンとマグネシウムは通常は化合物として使用され、ハロゲンは化合物や単体あるいはチタンとマグネシウムの両化合物に内在して使用される。なお、ここで「必須成分として含有し」ということは、挙示の三成分以外に合目的的な他元素を含んでいてもよいこと、これらの元素はそれぞれが合目的的な任意の化合物として存在してもよいこと、ならびにこれら元素は相互に結合したものとして存在してもよいことを示すものである。
【0014】
a.マグネシウム化合物
本発明において使用されるマグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライド、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムのカルボン酸塩などが挙げられる。これらの中でもマグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウムなどのMg(OR1)2−pXp(ここで、R1は炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、pは0≦p≦2である。)で表されるマグネシウム化合物が好ましい。
【0015】
b.チタン化合物
チタン源となるチタン化合物としては、一般式Ti(OR2)4−qXq(ここで、R2は炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、qは0≦q≦4である。)で表される化合物が例示される。具体例としては、TiCl4、TiBr4、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(O−i−C3H7)Cl3、Ti(O−n−C4H9)Cl3、Ti(O−n−C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)Br3、Ti(OC2H5)(O−n−C4H9)2Cl、Ti(O−n−C4H9)3Cl、Ti(OC6H5)Cl3、Ti(O−i−C4H9)2Cl2、Ti(OC5H11)Cl3、Ti(OC6H13)Cl3、Ti(OC2H5)4、Ti(O−n−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−i−C4H9)4、Ti(O−n−C6H13)4、Ti(OC6H5)4、Ti(O−n−C8H17)4、Ti(OCH2CH(C2H5)C4H9)4 などが挙げられる。
また、TiX´4(ここで、X´はハロゲンである。)に後述する電子供与体を反応させた分子化合物をチタン源として用いることもできる。そのような分子化合物の具体例としては、TiCl4・CH3COC2H5、TiCl4・CH3CO2C2H5、TiCl4・C6H5NO2、TiCl4・CH3COCl、TiCl4・C6H5COCl、TiCl4・C6H5CO2C2H5、TiCl4・ClCOC2H5、TiCl4・C4H4Oなどが挙げられる。
さらに、TiCl3(TiCl4を水素で還元したもの、アルミニウム金属で還元したもの、あるいは有機金属化合物で還元したものなどを含む)、TiBr3、Ti(OC2H5)Cl2、TiCl2なども使用され、また、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、(Me2N)2TiCl2、(Me2N)4Ti、(Et2N)2TiCl2などの有機チタン化合物の使用も可能である。
これらのチタン化合物の中でもTiCl4、Ti(OC4H9)4、Ti(OC2H5)Cl3などが好ましい。
【0016】
c.ハロゲン
ハロゲンは、上述のマグネシウム及び(又は)チタンのハロゲン化合物から供給されるのが普通であるが、他のハロゲン源、例えば、Cl2、Br2、ICl3、などのハロゲン、インターハロゲン、AlCl3などのアルミニウムのハロゲン化物、BCl3などの硼素のハロゲン化物、SiCl4などの珪素のハロゲン化物、PCl3やPCl5などのリンのハロゲン化物、WCl6などのタングステンのハロゲン化物、MoCl5などのモリブデンのハロゲン化物といった公知のハロゲン化剤から供給することもできる。触媒成分中に含まれるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物であってもよく、特に塩素が好ましい。
(なお、均質な成分(I)の球状粒子を得るために、助剤としてエーテル、アルコール、有機酸エステル、無機酸エステルなどの電子供与体を含んでいるものを除外するものではない。)
【0017】
2.フルオロ基置換芳香族化合物−成分(II)
本発明において必須な成分(II)であるフルオロ基置換芳香族化合物は、芳香族化合物のフッ素置換化合物であり、本発明の特徴を顕すものであって、前述したようにフッ素置換数は、1以上芳香族基の置換部位全て、好ましくは2〜芳香族基の置換部位全て、さらに好ましくは4〜芳香族基の置換部位のうち一箇所を除いた全てである。
主体となる芳香族化合物は、好ましくは、炭素数が6〜30、好ましくは6〜20であり、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、ジベンジル、インデン、アズレン、フルオレン、ピリジン、キノリン、ピロール、チオフェンなどが例示される。さらに該芳香族化合物は置換基としてアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン基、シロキシ基、ニトロ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基などを有してもよく、芳香族炭化水素、フェノール系化合物、ビニル芳香族化合物、窒素含有芳香族化合物、カルボニル基含有芳香族化合物などの置換化合物が例示される。
【0018】
具体的には、(イ)フルオロ置換ベンゼン、フルオロ置換トルエン、フルオロ置換ビフェニル、フルオロ置換ジベンジル、フルオロ置換ナフタレン、フルオロ置換アントラセン、フルオロ置換ピレン、フルオロ置換インデン、フルオロ置換アズレンなどのフルオロ置換芳香族炭化水素、(ロ)フルオロ置換フェノール、フルオロ置換ナフトール、フルオロ置換クレゾール、フルオロ置換カテコール、フルオロ置換レゾルシン、フルオロ置換ハイドロキノンなどのフルオロ置換フェノール系化合物、(ハ)フルオロ置換クロロベンゼン、フルオロ置換ブロモベンゼンなどのフルオロ置換芳香族ハロゲン化合物、(ニ)フルオロ置換スチレン、フルオロ置換ジビニルベンゼン、フルオロ置換ビニルナフタレンなどのフルオロ置換ビニル芳香族化合物、(ホ)フルオロ置換アニリン、フルオロ置換ニトロベンゼン、フルオロ置換ベンジルアミド、フルオロ置換ナフチルアミドなどの窒素含有フルオロ置換芳香族化合物、(ヘ)フルオロ置換ベンゾフェノン、フルオロ置換安息香酸、フルオロ置換安息香酸エステル、フルオロ置換ジベンゾイルなどのカルボニル基含有フルオロ置換芳香族化合物、(ト)フルオロピリジン、フルオロチオフェンなどのフルオロ置換ヘテロ芳香族化合物、等々が例示される。
前述したように、フルオロ基の電子吸引性による、活性点におけるモノマー種の挿入への影響からして、これらのうち好ましくは、電子供与性基を有すフルオロ置換フェノール系化合物、フルオロ置換ビニル芳香族化合物のような電子供与性基を有する化合物である。さらに好ましくは、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロスチレンである。
【0019】
3.電子供与性化合物−成分(III)
電子供与性化合物−成分(III)は、固体成分(成分(I)、成分(II)を必須とする固体成分)に接触させて用いられる。ここで「接触させて」ということは、接触回数が1回に限られることを意味するのではない。また、成分(I)と成分(II)を接触するときに同時に使用してもよいし、どちらかと予め接触させておくことも可能である。
本発明における任意成分(III)の電子供与性化合物(いわゆる触媒成分における内部ドナー)としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸類のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類、酸ハライド類のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートのような含窒素電子供与体、スルホン酸エステルのような含硫黄電子供与体などを例示することができる。
【0020】
具体的には、(イ)メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、フェニルエチルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1ないし18のアルコール類、(ロ)フェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ナフトールなどのアルキル基を有してよい炭素数6ないし25のフェノール類、(ハ)アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどの炭素数3ないし15のケトン類、(ニ)アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2ないし15のアルデヒド類、(ホ)ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、ステアリン酸エチル、クロル酢酸メチル、メタクリル酸メチル、シクロへキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸セロソルブ、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン、クマリン、フタリドなどの有機酸モノエステル、または、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、コハク酸ジエチル、酒石酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、ノルボルナンジエニル−1,2−ジカルボン酸ジメチル、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ヘキシル、1,1−シクロブタンジカルボン酸ジエチルなどの炭素数2ないし20の有機多価カルボン酸エステル類、(ヘ)ケイ酸エチル、ケイ酸ブチルなどのケイ酸エステル及び炭酸エチレンのような無機酸エステル類、(ト)アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリド、塩化フタロイル、イソ塩化フタロイルなどの炭素数2ないし15の酸ハライド類、(チ)エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、フラン、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2ないし30のエーテル類、(リ)酢酸アミド、安息香酸アミド、トルイル酸アミド、尿素などの酸アミド類、(ヌ)メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、(ル)アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類、(ヲ)2−(エトキシメチル)−安息香酸エチル、2−(t−ブトキシメチル)−安息香酸エチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−s−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルなどのアルコキシエステル化合物類、(ワ)2−ベンゾイル安息香酸エチル、2−(4´−メチルベンゾイル)安息香酸エチル、2−ベンゾイル−4,5−ジメチル安息香酸エチルなどのケトエステル化合物類、(カ)ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸イソプロピル、p−トルエンスルホン酸−n−ブチルなどのスルホン酸エステル類、等々を挙げることができる。
【0021】
これらの電子供与体は、二種類以上用いることができる。これらの中で好ましいのは有機酸エステル化合物、酸ハライド化合物およびエーテル化合物であり、特に好ましいのはフタル酸ジエステル化合物、フタル酸ジハライド化合物、酒石酸エステル化合物、コハク酸エステル化合物、環状エーテル化合物である。
【0022】
4.有機珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物−成分(IV)
有機珪素化合物及び/又は少なくとも2つ以上のエーテル結合を有する化合物−成分(IV)は、固体成分(成分(I)、成分(II)を必須とする固体成分)に接触させて用いられる。ここで「接触させて」ということは、接触回数が1回に限られることを意味するのではない。また、成分(I)と成分(II)を接触するときに同時に使用してもよいし、どちらかと予め接触させておくことも可能である。
有機珪素化合物としては, ビニルシラン化合物やアルコキシ珪素化合物が例示される。
【0023】
a.ビニルシラン化合物
ビニルシラン化合物としては、モノシラン(SiH4)中の少なくとも一つの水素原子がビニル基(CH2=CH−)に置き換えられ、そして残りの水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
【0024】
具体的には、CH2=CH−SiH3、CH2=CH−SiH2(CH3)、CH2=CH−SiH(CH3)2、CH2=CH−Si(CH3)3、CH2=CH−Si(OCH3)3、CH2=CH−SiCl3、CH2=CH−SiCl2(CH3)、CH2=CH−SiCl(CH3)2、CH2=CH−SiH(Cl)(CH3)、CH2=CH−Si(C2H5)3、CH2=CH−SiCl(C2H5)2、CH2=CH−SiCl2(C2H5)、CH2=CH−Si(CH3)2(C2H5)、CH2=CH−Si(CH3)(C2H5)2、CH2=CH−Si(n−C4H9)3、CH2=CH−Si(C6H5)3、CH2=CH−Si(OC6H5)3、CH2=CH−Si(CH3)(C6H5)2、CH2=CH−Si(CH3)2(C6H5)、CH2=CH−Si(CH3)2(C6H4CH3)、(CH2=CH)(CH3)2Si−O−Si(CH3)2(CH=CH2)、(CH2=CH)2SiH2、(CH2=CH)2SiCl2、(CH2=CH)2Si(CH3)2、(CH2=CH)2Si(C6H5)2、(CH2=CH)2Si(OC6H5)2などを例示することができる。
この中で好ましい化合物は、ビニルトリメチルシラン、ビニルジメチルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシシラン、ビニルトリフェニルシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルジフェニルシランが例示される.
【0025】
b.アルコキシ珪素化合物
アルコキシ珪素化合物としては, 一般式R3 mSi(OR4)4−m(ここで、R3及びR4は炭素数が1以上の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度であり、mは0≦m<4である。)で代表されるものである。
【0026】
アルコキシ珪素化合物の具体例としては、(イ)(CH3)3CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH(CH3)2)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)3CSi(C2H5)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C3H7)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C6H13)(OCH3)2、(CH3)3CSi(C5H9)(OCH3)2、(C2H5)3CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)(C2H5)CHSi(CH3)(OCH3)2、((CH3)2CHCH2)2Si(OCH3)2、(C2H5)(CH3)2CSi(CH3)(OCH3)2、(C2H5)(CH3)2CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)3CSi(OCH3)3、(CH3)3CSi(OC2H5)3、(CH3)(C2H5)CHSi(OCH3)3、((CH3)3C)2Si(OCH3)2、(CH3)3CSi(OC(CH3)3)(OCH3)2、((CH3)2CH)2Si(OCH3)2、((CH3)2CH)2Si(OC2H5)2、(C5H9)2Si(OCH3)2、(C5H9)2Si(OC2H5)2、(C5H9)(CH3)Si(OCH3)2、(C5H9)((CH3)2CHCH2)Si(OCH3)2、(C6H11)Si(CH3)(OCH3)2、(C6H11)2Si(OCH3)2、(C6H11)((CH3)2CH)Si(OCH3)2、(C6H11)((CH3)2CHCH2)Si(OCH3)2、((CH3)2CHCH2)((C2H5)(CH3)CH)Si(OCH3)2、(CH3)2CH(CH3)2CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)2CH(CH3)2CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)2CH(CH3)2CSi(OCH3)3、(CH3)3CSi(OCH(CH3)2)(OCH3)2、(CH3)3CSi(OC(CH3)3)(OCH3)2などのアルキルアルコキシ珪素化合物、(ロ)(C4H8N)2Si(OCH3)2、(2−CH3C4H7N)2Si(OCH3)2、(3−CH3C4H7N)2Si(OCH3)2、(C5H10N)2Si(OCH3)2、(2−CH3C5H9N)2Si(OCH3)2、(3−CH3C5H9N)2Si(OCH3)2、(4−CH3C5H9N)2Si(OCH3)2、(2,2,6,6−(CH3)4C5H6N)2Si(OCH3)2、(2,6−(CH3)2C5H8N)2Si(OCH3)2、(1−C9H17N)2Si(OCH3)2、(2−C9H17N)2Si(OCH3)2などのアミノ基を含むケイ素化合物、(ハ)(CH3)2PSi(OCH3)3、(C6H5)2PSi(OC2H5)3、(CH3)2PCH2Si(CH3)(OCH3)2、((CH3)2P)2Si(OCH3)2などのフォスフィノ基含有のケイ素化合物、(ニ)(n−C3H7O)2Si(OCH3)2、(i−C3H7O)2Si(OCH3)2、(t−C4H9O)2Si(OCH3)2、(s−C4H9O)2Si(OCH3)2、(n−C4H9O)2Si(OCH3)2、(i−C4H9O)2Si(OCH3)2、(n−C3H7O)(n−C4H9O)Si(OCH3)2、(i−C3H7O)(n−C4H9O)Si(OCH3)2、(n−C3H7O)(t−C4H9O)Si(OCH3)2、(t−C4H9O)(n−C4H9O)Si(OCH3)2、(s−C4H9O)(i−C4H9O)Si(OCH3)2などのテトラアルコシキ珪素化合物が挙げられる。
【0027】
これらの中で好ましいのは、分岐を有するアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアルコキシシランである。さらに好ましくは、α位に分岐を有するアルキル置換基を少なくとも1個有し、炭素数1〜3個のアルコキシ基を少なくとも2個有するアルキルアルコキシシランである。
これらの好ましい具体的化合物は、(CH3)3CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH(CH3)2)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)3CSi(C2H5)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C3H7)(OCH3)2、(CH3)3CSi(C5H9)(OCH3)2、(CH3)3CSi(C6H11)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C6H13)(OCH3)2、(C5H9)2Si(OCH3)2、(C5H9)2Si(OC2H5)2、(C6H11)Si(CH3)(OCH3)2、(C6H11)2Si(OCH3)2などが挙げられる。
【0028】
b.2つ以上のエーテル結合を有する化合物
2つ以上のエーテル結合を有する化合物としては、鎖状炭化水素系ジエーテル、環状脂環式炭化水素系ジエーテル、芳香族ジエーテルなどが例示される。
好ましくは、1,3−ジエーテル、1,2−ジアルコキシ置換脂環式炭化水素、1,2−置換芳香族ジエーテル、2,2´−置換芳香族ジエーテルである。さらに好ましくは、2,2−ジ置換1,3−ジエーテル、1,2−ジメトキシシクロアルカン、2,2´−ジメトキシ芳香族ジエーテルである。
【0029】
具体的には、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパンなどの1,3−ジエーテル、1,2−ジメトキシシクロペンタン、1,2−ジメトキシシクロヘキサン、1,2−ジメトキシシクロオクタン、1,2−ジエトキシシクロヘキサンなどの1,2−ジ置換脂環式炭化水素、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−メチルベンゼンなどの1,2−置換芳香族ジエーテル、2,2´−ジメトキシビフェニル、2,2´−ジメトキシビナフチルなどの芳香族ジエーテルである。
【0030】
5.有機アルミニウム化合物−成分(V)
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物(成分(V))は固体成分(成分(I)、成分(II)を必須とする固体成分)に接触させて用いられる。ここで「接触させて」ということは、接触回数が1回に限られることを意味するのではなく、本発明の効果を損なわない範囲で有機アルミニウム化合物(成分(V))を繰り返し接触させることを許容する。なお、有機アルミニウム化合物(成分(V))は成分(IV)と共存で固体成分と接触させると、より効果的である。
【0031】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(成分(V))の具体例としては、AlR5R6R7、R8 2−nR9AlXn(ここでR5、R6、R7、R8及びR9は各々独立に炭素数が1から20の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度であり、Xは水素、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはハロゲンであり、nは0<n≦2で表されるものである。)、あるいはアルモキサン類である。
これらの内で、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライド、ジアルキルアルミニウムハライド、およびアルモキサン類である。さらに好ましくは、トリアルキルアルミニウムである。
【0032】
具体的には、(イ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジイソプロピルメチルアルミニウム、イソプロピルジメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−s−ブチルアルミニウム、ジ−s−ブチルメチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、ジ−t−ブチルメチルアルミニウム、ジ−t−ブチルエチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、(ロ)ジメチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、ジプロピルアルミニウムモノクロライド、ジイソプロピルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジプロピルアルミニウムモノブロマイドなどのアルキルアルミニウムハライド、(ハ)ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルオクチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、(ニ)ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、(ホ)メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンなどのアルモキサン類、等々が挙げられる。
これらの中で特に好ましい具体的化合物はトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソプロピルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン及びそれらの混合物である。
【0033】
(2)固体触媒成分(A)の製造について
1.成分(A)の製造
成分(A)は、成分(A)を構成する各成分(I)と(II)を、または必要により前記任意成分(III)、(IV)、(V)を段階的にあるいは一時的に相互に接触させて、その中間及び/又は最後に有機溶媒、例えば炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒で洗浄することによって製造することができる。
前記の成分(A)を構成する各成分の製法及び各成分の接触条件は、酸素の不存在下で実施する必要があるものの、本発明の効果が認められる限り任意のものでありうるが、一般的には、次の条件が好ましい。接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜120℃である。接触方法としては、回転ボールミル、振動ミル、ジェットミル、媒体撹拌粉砕機などによる機械的な方法、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法などがある。このとき使用する不活性希釈剤としては、脂肪族または芳香族の炭化水素、ハロ炭化水素及びポリシロキサンなどが挙げられる。
【0034】
2.成分(A)における量比
成分(A)を構成する各成分使用量の量比は本発明の効果が認められる限り任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物の使用量は、使用するマグネシウム化合物の使用量に対してmol比で0.0001〜1000の範囲内がよく、好ましくは0.01〜10の範囲内である。
ハロゲン源としてそのための化合物を使用する場合は、その使用量はチタン化合物及び(又は)マグネシウム化合物がハロゲンを含む、含まないにかかわらず、使用するマグネシウムの使用量に対してmol比で0.01〜1000の範囲内がよく、好ましくは0.1〜100の範囲内である。
成分(II)のフルオロ基置換芳香族化合物の使用量は前記の成分(I)中のマグネシウム化合物の含有量に対してmol比で0.00001〜10の範囲内がよく、好ましくは0.005〜5の範囲内である。
成分(III)の電子供与体の使用量は任意であるが、好ましくは前記のマグネシウム化合物の使用量に対してmol比で0.001〜10の範囲内がよく、より好ましくは0.01〜5の範囲内である。
成分(IV)の有機珪素化合物及び/又は少なくとも2つ以上のエーテル結合を有する化合物成分の使用量は任意であるが、好ましくは成分(I)中のチタン化合物の含有量に対してmol比で0.001〜100の範囲内がよく、より好ましくは0.01〜20の範囲内である。
成分(V)の有機アルミニウムの使用量は、好ましくは成分(I)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム/チタン)で0.1〜100mol/molが一般的であり、より好ましくは、Al/Ti=1〜50mol/molの範囲内である。
【0035】
3.成分(I)の製造
成分(I)は必要により他成分を用いて、例えば以下のような製造方法により製造される。
(イ)ハロゲン化マグネシウムと電子供与体及びチタン含有化合物を接触させる方法。
(ロ)アルミナ又はマグネシアをハロゲン化リン化合物で処理し、それにハロゲン化マグネシウム、電子供与体、チタンハロゲン含有化合物を接触させる方法。
(ハ)ハロゲン化マグネシウムとチタンテトラアルコキシド及び特定のポリマー珪素化合物を接触させて得られる固体成分に、チタンハロゲン化合物及び/又は珪素のハロゲン化合物と電子供与体を接触させた反応生成物を不活性有機溶媒で洗浄する方法。
このポリマー珪素化合物としては、下式で示されるものが適当である。
【0036】
【化1】
(ここで、R10は炭素数1〜10程度の炭化水素基であり、xはこのポリマー珪素化合物の粘度が1〜100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、シクロヘキシルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンなどが好ましい。
(ニ)マグネシウム化合物をチタンテトラアルコキシド及び/又はアルコール、燐酸エステルなどの電子供与体で溶解させて、ハロゲン化剤又はチタンハロゲン化合物で析出させた固体成分に、チタン化合物及び電子供与体を接触させるか、又は、各々別に接触させる方法。
(ホ)グリニャール試薬などの有機マグネシウム化合物をハロゲン化剤や還元剤などと作用させた後、これに必要に応じて電子供与体を接触させ、次いでチタン化合物及び電子供与体を接触させるか、又は、各々別に接触させる方法。
(ヘ)アルコキシマグネシウム化合物にハロゲン化剤及び/又はチタン化合物を電子供与体の存在下もしくは不存在下に接触させるか、又は、各々別に接触させる方法。
これらの製造方法の中でも(ハ)、(ニ)、(ホ)及び(ヘ)が好ましい。成分(I)は、その製造の中間及び/又は最後に不活性有機溶媒、例えば脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサンなど)、あるいはハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、塩化−n−ブチル、1,2−ジクロロエチレン、四塩化炭素、クロルベンゼンなど)で洗浄することができる。
【0037】
4.成分(I)と他の成分との接触
成分(I)と他の必須成分(II)などとの接触は、任意であるが、(イ)成分(I)と成分(II)を共粉砕する方法、(ロ)成分(I)の粒子形成の際にあらかじめ共存する方法、(ハ)不活性溶媒中で成分(I)と成分(II)を接触させる方法、(ニ)成分(I)、(II)、(III)を同時接触する方法、(ホ)成分(I)と(III)を接触させた後に、成分(II)を追加接触処理する方法、(ヘ)成分(I)と(III)を接触し、その後に成分(II)と(VI)と(V)を追加で同時接触させる方法などが例示される。なお、(ト)成分(I)の製造過程で、成分(II)を入れて、一度に成分(I)と(II)の接触を行うことも可能である。これらの中でも、(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)が好ましい。特に、(ホ)(ヘ)が好ましい。
【0038】
各接触工程の条件は、溶媒不存在下、あるいは存在下に、任意の反応温度、一般には−50℃〜140℃の範囲で、1分から数日間、一般には合理的製造の観点から5分から24時間の範囲で接触される。各工程の中間に炭化水素やハロゲン化炭化水素などの不活性溶媒による洗浄工程を取り入れてもよい。また、各成分を複数回使用しても問題はない。
【0039】
5.予備重合処理
本発明で使用する成分(A)は、ビニル基含有化合物、例えばオレフィン類、ジエン化合物、スチレン類などと接触させて重合させることからなる予備重合工程を経たものとして使用することもできる。予備重合を行う際に用いられるオレフィン類の具体例としては、例えば炭素数2〜20程度のもの、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−エイコセンなどがあり、ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、2,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘプタジエン、ノルボルナジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、o−ジビニルベンゼンなどがある。
また、スチレン類の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロルスチレンなどがある。
【0040】
成分(A)中のチタン成分と上記のビニル基含有化合物の反応条件は、本発明の効果が認められるかぎり任意のものでありうるが、一般的には次の範囲内が好ましい。ビニル基含有化合物の予備重合量は、チタン固体成分1グラムあたり0.001〜100グラム、好ましくは0.1〜50グラム、さらに好ましくは0.5〜10グラムの範囲内である。
予備重合時の反応温度は150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、「本重合」、すなわちα−オレフィンの重合のときの重合温度よりも低い重合温度が好ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒を存在させることもできる。
また、成分(I)、成分(II)及び必要に応じて成分(III)と接触した化合物と、成分(VI)及び/又は成分(V)の接触時に予備重合を行うこともできる。
【0041】
(3)有機アルミニウム化合物成分(B)について
成分(B)は重合時に使用する有機アルミニウム化合物であり、前記の固体触媒成分(A)との組み合わせにより、本発明のα−オレフィン重合触媒を構成する、必須の成分である。一方、前記の有機アルミニウム化合物成分(V)は、任意成分として固体成分(I)と接触される内部ドナーであり、固体触媒成分(A)を形成するものである。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物成分(B)の具体例としては、AlR5R6R7、R8 2−nR9AlXn(ここでR5、R6、R7、R8及びR9は各々独立に炭素数が1から20の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度であり、Xは水素、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはハロゲンであり、nは0<n≦2で表されるものである。)、あるいはアルモキサン類である。
【0042】
具体的には、(イ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、(ロ)ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、(ハ)ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、(ニ)ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、(ホ)メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンなどのアルモキサン類などが挙げられる。
【0043】
これら(イ)〜(ホ)の有機アルミニウム化合物を複数使用することも可能であり、また他の有機金属化合物、例えばジエチル亜鉛、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ブチルリチウムなどを共存させることも可能である。
これらのうちで、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、アルモキサンなどが好ましく、さらに好ましくは、トリアルキルアルミニウム、あるいはトリアルキルアルミニウムとアルキルアルミニウムハライドの混合物、トリアルキルアルミニウムとアルキルアルミニウムアルコキシドの混合物、さらにはアルモキサンである。
【0044】
(4)アルコキシ珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物の成分(C)について
成分(C)は重合時に触媒成分として使用するアルコキシ珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物であり、前記の固体触媒成分(A)との組み合わせにより、本発明のα−オレフィン重合触媒を構成する、任意の成分である。一方、前記の有機珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物成分(IV)は、任意成分として固体成分(I)と接触される内部ドナーであり、固体触媒成分(A)を形成するものである。
【0045】
1.アルコキシ珪素化合物
本発明で用いられるアルコキシ珪素化合物は、成分(A)において任意成分として使用する成分(IV)のアルコキシ珪素化合物から選択可能である。すなわち、前記の一般式R3 mSi(OR4)4−m(ここで、R3およびR4は炭素数が1〜20、好ましくは炭素数1〜10程度の炭化水素基、窒素含有炭化水素基、燐含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基であり、mは0≦m<4である。)で代表されるものである。
【0046】
本発明で使用できるアルコキシ珪素化合物の具体例としては、(イ)(CH3)3CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH(CH3)2)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)3CSi(C2H5)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C3H7)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C6H13)(OCH3)2、(CH3)3CSi(C5H9)(OCH3)2、(C2H5)3CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)(C2H5)CHSi(CH3)(OCH3)2、((CH3)2CHCH2)2Si(OCH3)2、(C2H5)(CH3)2CSi(CH3)(OCH3)2、(C2H5)(CH3)2CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)3CSi(OCH3)3、(CH3)3CSi(OC2H5)3、(CH3)(C2H5)CHSi(OCH3)3、((CH3)3C)2Si(OCH3)2、(CH3)3CSi(OC(CH3)3)(OCH3)2、((CH3)2CH)2Si(OCH3)2、((CH3)2CH)2Si(OC2H5)2、(C5H9)2Si(OCH3)2、(C5H9)2Si(OC2H5)2、(C5H9)(CH3)Si(OCH3)2、(C5H9)((CH3)2CHCH2)Si(OCH3)2、(C6H11)Si(CH3)(OCH3)2、(C6H11)2Si(OCH3)2、(C6H11)((CH3)2CH)Si(OCH3)2、(C6H11)((CH3)2CHCH2)Si(OCH3)2、((CH3)2CHCH2)((C2H5)(CH3)CH)Si(OCH3)2、(CH3)2CH(CH3)2CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)2CH(CH3)2CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)2CH(CH3)2CSi(OCH3)3、(CH3)3CSi(OCH(CH3)2)(OCH3)2、(CH3)3CSi(OC(CH3)3)(OCH3)2などのアルキルアルコキシ珪素化合物、(ロ)(C4H8N)2Si(OCH3)2、(2−CH3C4H7N)2Si(OCH3)2、(3−CH3C4H7N)2Si(OCH3)2、(C5H10N)2Si(OCH3)2、(2−CH3C5H9N)2Si(OCH3)2、(3−CH3C5H9N)2Si(OCH3)2、(4−CH3C5H9N)2Si(OCH3)2、(2,2,6,6−(CH3)4C5H6N)2Si(OCH3)2、(2,6−(CH3)2C5H8N)2Si(OCH3)2、(1−C9H17N)2Si(OCH3)2、(2−C9H17N)2Si(OCH3)2などのアミノ基を含む珪素化合物、(ハ)(CH3)2PSi(OCH3)3、(C6H5)2PSi(OC2H5)3、(CH3)2PCH2Si(CH3)(OCH3)2、((CH3)2P)2Si(OCH3)2などのフォスフィノ基含有の珪素化合物、(ニ)(n−C3H7O)2Si(OCH3)2、(i−C3H7O)2Si(OCH3)2、(t−C4H9O)2Si(OCH3)2、(s−C4H9O)2Si(OCH3)2、(n−C4H9O)2Si(OCH3)2、(i−C4H9O)2Si(OCH3)2、(n−C3H7O)(n−C4H9O)Si(OCH3)2、(i−C3H7O)(n−C4H9O)Si(OCH3)2、(n−C3H7O)(t−C4H9O)Si(OCH3)2、(t−C4H9O)(n−C4H9O)Si(OCH3)2、(s−C4H9O)(i−C4H9O)Si(OCH3)2などのテトラアルコシキ珪素化合物が挙げられる。
【0047】
(イ)〜(ニ)の中で好ましいのは、分岐を有するアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアルコキシシランである。さらに好ましくは、α位に分岐を有するアルキル置換基を少なくとも1個有し、炭素数1〜3個のアルコキシ基を少なくとも2個有するアルキルアルコキシシランである。
好ましい具体的化合物は、(CH3)3CSi(CH3)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH(CH3)2)(OCH3)2、(CH3)3CSi(CH3)(OC2H5)2、(CH3)3CSi(C2H5)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C3H7)(OCH3)2、(CH3)3CSi(C5H9)(OCH3)2、(CH3)3CSi(C6H11)(OCH3)2、(CH3)3CSi(n−C6H13)(OCH3)2、(C5H9)2Si(OCH3)2、(C5H9)2Si(OC2H5)2、(C6H11)Si(CH3)(OCH3)2、(C6H11)2Si(OCH3)2などが挙げられる。
【0048】
2.2つ以上のエーテル結合を有する化合物
少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物(ジエーテル化合物など)は、成分(A)における成分(IV)に既に示した、少なくとも2個以上のエーテル結合を有する化合物から選択することが出来る。
すなわち、エーテル結合を2つ以上有する化合物としては、鎖状炭化水素系ジエーテル、環状脂環式炭化水素系ジエーテル、芳香族ジエーテルなどが例示される。
好ましくは、1,3−ジエーテル、1,2−ジアルコキシ置換脂環式炭化水素、1,2−置換芳香族ジエーテル、2,2´−置換芳香族ジエーテルである。さらに好ましくは、2,2−ジ置換−1,3−ジエーテル、1,2−ジメトキシシクロアルカン、2,2´−ジメトキシ芳香族ジエーテルである。
【0049】
具体的には、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1、3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパンなどの1,3−ジエーテル、及び1,2−ジメトキシシクロペンテン、1,2−ジメトキシシクロヘキサンなどの1,2−ジアルコキシ環状炭化水素、さらに1,2−ジメトキシベンゼン、2,2´−ジメトキシビフェニル、2,2´−ジメトキシビナフチルなどの芳香族ジエーテルである。
この中で好ましいものは、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシシクロヘキサン、1,2−ジメトキシベンゼン、2,2´−ジメトキシビナフチルである。
【0050】
(5)α−オレフィン重合について
本発明におけるα−オレフィン重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合又は気相重合に適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素溶媒が用いられる。採用しうる重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合などいかなる方法でもよい。重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、そのとき分子量調節剤として水素や有機金属化合物を用いることができる。
【0051】
本発明の触媒系で重合するα−オレフィンは、一般式R−CH=CH2(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、分枝基を有してもよい。)で表されるものである。具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィン類がある。これらのα−オレフィンの単独重合のほかに、α−オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン類、スチレン類など)との共重合も行うことができる。これらの共重合性モノマーはランダム共重合においては15重量%まで、ブロック共重合においては50重量%まで使用することができる。
【0052】
【実施例】
以下において、本発明を実施例により、及び実施例と比較例の対比により、具体的に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明における各物性値の測定方法および装置を以下に示す。
1.メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210−1995に準拠し、タカラ社製メルトインデクサーを用いて230℃、21.18Nの条件で測定を行った。
2.ポリマー嵩密度(BD)
パウダー試料の嵩密度をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
3.アタック量
スラリー重合により製造されたα−オレフィン重合体において、重合終了後に得られたポリマースラリーを濾過により分離し、濾過液を乾燥して得られるポリマーの量を測定して、濾過液中に溶解しているポリマー量の全ポリマー量に対する割合を算出し、これをアタック量(重量%)とした。
4.全製品I.I[T−I.I]
スラリー重合により製造されたα−オレフィン重合体において、重合終了後に得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥しこの部分の沸騰ペプタン不溶分の量を測定する。全ポリマー量として濾過液に溶解しているアタック量を考慮にいれてポリマースラリー中の全ポリマー量を算出し、沸騰ヘプタン不溶分量の全ポリマー量に対する割合を求め、これを全製品I.I(T−I.I)とした。
【0053】
【実施例−1】
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いでn−ヘプタン125mlに、SiCl40.1molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006molを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄した。次いで、TiCl425mlを追加し、95℃で3時間反応した。反応終了後n−ヘプタンで洗浄した。さらに、n−ヘプタン150ml、ペンタフルオロフェノール0.6ml、TiCl4を5ml導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して固体触媒成分(A1)とした。このもののチタン含量は2.66重量%、フタル酸ブチルが11.01重量%であった。
【0054】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(C)として(t−C4H9)Si(CH3)(OCH3)2を17mg、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mg及び上記で製造した固体触媒成分(A1)を15mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。
その結果、233.8gのポリマーが得られた。従って、触媒(固体触媒成分(A1))1gに対して生成したポリマー量(以下、「触媒収率」とする。)は、15,600(g−PP/g−触媒)である。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは0.4重量%であり、アタック量としての副生成物は極めて少量であった。(前記のとおり、濾過液から得られたポリマー量のことをアタック量と略する。)
沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.I(前記のとおり、T−I.Iと略す)は98.4重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが14.2(g/10分)、ポリマー嵩密度が0.43(g/cc)であった。
【0055】
【実施例−2】
実施例−1の固体触媒成分(A1)4gを300mlフラスコに小分けし,ヘプタン100ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウム25ml(15mmol)を導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄し固体触媒成分(A2)を得た。この固体触媒成分(A2)中には、チタンが1.83重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが5.3重量%、フタル酸ジブチルが0.63重量%含まれていた。
【0056】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mgおよび上記で製造した固体触媒成分(A2)を10mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。
その結果、195.0gのポリマーが得られた。従って、触媒(固体触媒成分(A2))1gに対して生成したポリマー量(触媒収率)は、19,500(g−PP/g−触媒)である。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは0.35重量%であり、副生成物は極めて少量であった。
沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.I(T−I.I)は、98.4重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが22.9(g/10分)、ポリマー嵩密度が0.45(g/cc)であった。
【0057】
【実施例−3】
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いでn−ヘプタン125mlに、SiCl40.1molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006molを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄した。次いで、TiCl425mlを追加し、95℃で3時間反応した。反応終了後n−ヘプタンで洗浄した。さらに、n−ヘプタン150ml、ペンタフルオロフェノール0.1ml導入して70℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して固体成分を得た。このもののチタン含量は2.26重量%、フタル酸ブチルが10.21重量%であった。ついでこの固体成分4gを300mlフラスコに小分けし、n−ヘプタン100ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウム25ml(15mmol)を導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄し固体触媒成分(A3)を得た。この固体触媒成分(A3)中にはチタンが1.68重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.6重量%、フタル酸ジブチルが0.72重量%含まれていた。
【0058】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mg及び上記で製造した固体触媒成分(A3)を10mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。
その結果、229.5gのポリマーが得られた。従って、触媒(固体触媒成分(A3))1gに対して生成したポリマー量(触媒収率)は、23,000(g−PP/g−触媒)である。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは0.47重量%であり、副生成物は極めて少量であった。
沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.I(T−I.I)は98.1重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが25.9(g/10分)、ポリマー嵩密度が0.432(g/cc)であった。
【0059】
【実施例−4】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(C)として(t−C4H9)Si(CH3)(OCH3)2を17mg、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mgおよび上記で製造した固体触媒成分(A3)を10mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。
その結果、209.2gのポリマーが得られた。従って、触媒(固体触媒成分(A3))1gに対して生成したポリマー量(触媒収率)は、20,900(g−PP/g−触媒)である。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは0.31重量%であり、副生成物は極めて少量であった。
沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.I(T−I.I)は98.7重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが22.5(g/10分)、ポリマー嵩密度が0.42(g/cc)であった。
【0060】
【比較例−1】
実施例−1における[成分(A)の製造]において、最後の処理のペンタフルオロフェノール0.6mlを導入する操作を除外する以外は、実施例−1と同じ処理をして、固体成分(a1)を得た。この固体成分(a1)中には、チタンが2.68重量%、フタル酸ジブチルが9.48重量%含まれていた。
【0061】
[プロピレンの重合]
上記の成分(a1)を用いる以外は全て実施例−1と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0062】
【比較例−2】
実施例−2において固体触媒成分(A1)を用いる代わりに上記の成分(a1)を用いる以外は全て実施例−2と同一条件で製造し固体成分(a2)を得た。この成分(a2)中にはチタンが2.44重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.2重量%、フタル酸ジブチルが、0.98重量%含まれていた。
【0063】
[プロピレンの重合]
上記の成分(a2)を用いる以外は全て実施例−2と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0064】
【比較例−3】
実施例−3において、ペンタフルオロフェノール0.1ml用いる代わりに2,6−ジメチルフェノールを60mg用いる以外は、全て実施例−3と同一条件で製造し固体成分(a3)を得た。この固体成分(a3)中にはチタンが1.39重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.5重量%、フタル酸ジブチルが0.91重量%含まれていた。
【0065】
[プロピレンの重合]
上記の成分(a3)を用いる以外は全て実施例−3と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0066】
【実施例−5】
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いでn−ヘプタン125mlに、SiCl40.15molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。ついで、n−ヘプタン150ml、ペンタフルオロフェノール0.6ml、TiCl4を5ml導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して固体触媒成分(A4)とした。このもののチタン含量は3.14重量%であった。
【0067】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(C)として(t−C4H9)Si(CH3)(OCH3)2を17mg、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mgおよび上記で製造した固体触媒成分(A4)を15mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。
その結果、125gのポリマーが得られた。従って、触媒(固体触媒成分(A4))1gに対して生成したポリマー量(触媒収率)は、8,300(g−PP/g−触媒)である。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは0.8重量%であり、副生成物は極めて少量であった。
沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.I(T−I.I)は97.1重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが21.5(g/10分)、ポリマー嵩密度が0.40(g/cc)であった。
【0068】
【実施例−6】
実施例−5の固体触媒成分(A4)4gを300mlフラスコに小分けし、ヘプタン100ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウム25ml(15mmol)導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄し固体触媒成分(A5)を得た。この固体触媒成分(A5)中にはチタンが2.87重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが7.5重量%含有されていた。
【0069】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mg及び上記で製造した固体触媒成分(A5)を10mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。
その結果、132.0gのポリマーが得られた。従って、触媒(固体触媒成分(A5))1gに対して生成したポリマー量(触媒収率)は、13,200(g−PP/g−触媒)である。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは0.48重量%であり、副生成物は極めて少量であった。
沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.I(T−I.I)は98.0重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが27.5(g/10分)、ポリマー嵩密度が0.42(g/cc)であった。
【0070】
【比較例−4】
実施例−5の固体触媒成分(A4)の製造において、ペンタフルオロフェノールを添加しない以外はすべ実施例−4に従って製造し成分(a3)を得た。このもののチタン含量は3.54重量%であった。
【0071】
[プロピレンの重合]
実施例−5と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0072】
【比較例−5】
比較例−4の成分(a3)を4g用いる以外はすべて実施例−6と同一条件で製造し成分(a4)を得た。この成分(a4)中にはチタン含量は3.25重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが6.5重量%含有されていた。
【0073】
[プロピレンの重合]
実施例−5と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0074】
【実施例−7】
[成分(A)の製造]
比較例−1で製造した固体成分(a1)4gを300mlフラスコに小分けし、ヘプタン100ml、ペンタフルオロフェノール0.2ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウム25ml(15mmol)を導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄し固体触媒成分(A6)を得た。この固体触媒成分(A6)中にはチタンが1.87重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが5.5重量%、フタル酸ジブチルが0.66重量%含有されていた。
【0075】
[プロピレンの重合]
実施例−2と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0076】
【実施例−8】
[成分(A)の製造]
無水MgCl275mmol、デカン37.5mlおよび2−エチルヘキシルアルコール225mmolを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に、無水フタル酸11.3mmolを添加し、130℃でさらに1時間攪拌混合して溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温まで冷却した後、−20℃に保持されたTiCl41.8mol中に1時間にわたって全量滴下装入した。得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)を18.8mmolを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。次いで、熱濾過して固体部を採取し、この固体部を275mlのTiCl4に再懸濁させた後ペンタフルオロフェノールを2ml導入し、得られた懸濁液を再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過により固形部を採取し、110℃デカンおよび室温ヘキサンを用いて、洗浄液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで十分洗浄し、固体触媒成分(A7)を得た。この固体触媒成分(A7)中にはチタンが2.7重量%、フタル酸イソブチルが9.2重量%、フタル酸2−エチルヘキシルが1.2重量%含まれていた。
【0077】
[プロピレンの重合]
上記の固体触媒成分(A7)を用いる以外は全て実施例−1と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0078】
【実施例−9】
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したトルエン100mlを導入し、次いでMg(OEt)2 10グラムを導入し懸濁状態とした。次いで、TiCl4 20mlを導入し、90℃に昇温して2,2−ジイソプロピル1,3−ジメトキシプロパン2.5mlを導入し、さらに110℃に昇温して3時間反応させた。反応終了後、トルエンで洗浄した。次いで、ペンタフルオロフェノール1.0ml、TiCl4 20ml及びトルエン100mlを導入し、110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して固体成分(A8)を得た。このもののチタン含量は2.6重量%であった。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分を5グラム導入し、(C5H9)2Si(OCH3)2 1.5ml及びAl(C2H5)3 1.7グラムを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し固体触媒成分(A8)を得た。このもののチタン含量は2.3重量%であった。
【0079】
[プロピレンの重合]
上記の固体触媒成分(A8)を用いる以外は実施例−2同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0080】
【実施例−10】
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いでn−ヘプタン125mlに、SiCl40.1molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006molを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄した。次いで、TiCl425mlを追加し、95℃で3時間反応した。反応終了後n−ヘプタンで洗浄した。さらに、n−ヘプタン150ml、ペンタフルオロスチレン0.6ml、TiCl4を5ml導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して固体触媒成分(A9)とした。このもののチタン含量は2.66重量%、フタル酸ブチルが11.01重量%であった。
【0081】
[プロピレンの重合]
上記の固体触媒成分(A9)を用いる以外は実施例−1と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0082】
【実施例−11】
実施例−10の固体触媒成分(A9)4gを300mlフラスコに小分けし、n−ヘプタン100ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウム25ml(15mmol)導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄し固体触媒成分(A10)を得た。この固体触媒成分(A10)中には、チタンが1.83重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが5.3重量%、フタル酸ジブチルが0.63重量%含まれていた。
【0083】
[プロピレンの重合]
上記の固体触媒成分(A10)を用いる以外は実施例−2と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0084】
【実施例−12】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(C)として(t−C4H9)Si(CH3)(OC2H5)2を20mg、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mg及び上記で製造した固体触媒成分(A9)を15mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。その結果を表1に示す。
【0085】
【実施例−13】
[プロピレンの重合]
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(C)として2,2−ジイソプロピル1,3−ジメトキシプロパンを20mg、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを125mg及び上記で製造した固体触媒成分(A9)を15mg、次いで水素を390ml導入して昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。その結果を表1に示す。
【0086】
【実施例−14】
[成分(A)の製造]
ペンタフルオロフェノール0.2mlの代わりに、ペンタフルオロスチレン0.2ml使用する以外は実施例−7と同一条件で触媒を製造し、固体触媒成分(A11)を得た。この固体触媒成分(A11)には、チタンを1.95重量%、t−ブチルメチルメトキシシランを4.1重量%、フタル酸ジブチルを0.51重量%含有していた。
【0087】
[プロピレンの重合]
上記の固体触媒成分(A11)を用いる以外は実施例−2と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0088】
【実施例−15】
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いでn−ヘプタン125mlに、SiCl40.1molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006molを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄した。次いで、TiCl425mlを追加し、95℃で3時間反応した。反応終了後n−ヘプタンで洗浄した。さらに、n−ヘプタン150ml、ヘキサフルオロベンゼン5ml、TiCl4を5ml導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して固体触媒成分(A12)とした。このもののチタン含量は2.31重量%、フタル酸ブチルが9.55重量%であった。
【0089】
[プロピレンの重合]
上記の固体触媒成分(A12)を用いる以外は実施例−1と同一条件で重合した。その結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の各実施例及び各比較例を対照し考察することによって、本発明では、従来のチーグラー系触媒(各比較例に相当)に比べて、立体規則性と触媒活性が顕著に向上していることが理解できる。
具体的には、実施例1と、成分(II)のペンタフルオロフェノールを使用せず、その他は実施例1と同じ条件の比較例1とを対比すると、実施例1が触媒活性において著しく優れ、立体規則性の指標となる低立体規則性のアタック量においても著しく優れている。立体規則性(結晶性)の指標となるT−I.Iの差は小さいが、従来のチーグラー系触媒も一般に結晶性などに優れているのであるから、小さな差でも実質的な向上がなされたといえる。嵩密度においても同様に若干の改善効果が観察される。すなわち、本技術を用いると触媒の粒子性状が改善され、得られるポリマーの嵩密度は0.01〜0.04程度高くなり、生産性向上に寄与する。
実施例2と対応する比較例2、実施例5と対応する比較例4,及び実施例6と対比する比較例5とを対照しても、本発明において触媒活性と立体規則性が非常に向上していることが明白である。なお、実施例5,6は一見すると比較例1より、性能が低いように見えるが、触媒中にフタル酸エステルを含まない点で、衛生性が優れたタイプ゜の触媒であり、その種の触媒系でも比較例4との対比では、性能向上が得られているので、本技術の効果は十分得られている。実施例3と対応する比較例3の対照では、実施例3の立体規則性の向上は認められないが、触媒活性が格段に改良されている。比較例3も成分(II)のペンタフルオロフェノールの代わりにジメチルフェノールを使用しているので、立体規則性の点では本発明に少し類似した作用効果が生じていると推定される。
実施例7〜15の結果を概観しても、同様に本発明において触媒活性と立体規則性が非常に向上していることが明示されている。また、実施例15はヘキサフルオロベンゼンを成分(II)として使用し、これは、フェノール基のような電子供与基を有しないので、ペンタフルオロフェノールなどを使用する他の実施例に比べて、触媒活性と立体規則性の向上の機能において少し低くなるのではと推察できる。
さらに、表1には掲載していないが、本発明における任意成分である電子供与性化合物などの使用も、各実施例の吟味によって、触媒活性と立体規則性の向上に関わるものであることも示唆されている。
【0092】
【発明の効果】
本発明によると、顕著な立体規則性をもたらし非常に高い活性を有する、α−オレフィン重合用触媒が得られ、その触媒によって、極めて高い立体規則性を持つα−オレフィン重合体を高収率で得ることが可能となる。そして極めて高い立体規則性により重合体の高剛性化や高耐熱性化が実現できる。
その結果として、α−オレフィン重合体の高剛性化や高耐熱性化が求められている、自動車部品や家電部品あるいは包装材料などの用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チーグラー系触媒に関する本発明の技術内容の理解を助けるためのフローチャート図である。
Claims (9)
- チタン、ハロゲン、マグネシウムを必須とする成分(I)及びフルオロ基置換芳香族化合物からなる成分(II)を含有することを特徴とする、α−オレフィン重合用固体触媒成分。
- フルオロ基置換芳香族化合物が2個以上のフルオロ基を有することを特徴とする、請求項1に記載された固体触媒成分。
- フルオロ基置換芳香族化合物が電子供与性置換基でさらに置換されていることを特徴とする、請求項2に記載された固体触媒成分。
- 電子供与性置換基でさらに置換されたフルオロ基置換芳香族化合物が、ペンタフルオロフェノール又はペンタフルオロスチレンであることを特徴とする、請求項3に記載された固体触媒成分。
- さらに、電子供与性化合物成分(III)を含有することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載された固体触媒成分。
- さらに、有機珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物からなる成分(IV)、及び有機アルミニウム化合物成分(V)を含有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された固体触媒成分。
- 請求項1〜請求項6のいずれかに記載された固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物成分(B)を含有することを特徴とする、α−オレフィン重合用触媒。
- さらに、アルコキシ珪素化合物及び/又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物からなる成分(C)を含有することを特徴とする、請求項7に記載されたα−オレフィン重合用触媒。
- 請求項7又は請求項8に記載されたα−オレフィン重合用触媒の存在下に、α−オレフィンを重合又は共重合することを特徴とする、α−オレフィンの重合方法。
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WO2007026903A1 (ja) * | 2005-08-31 | 2007-03-08 | Toho Catalyst Co., Ltd. | オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒並びにこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 |
JP2008163325A (ja) * | 2006-12-08 | 2008-07-17 | Sumitomo Chemical Co Ltd | オレフィン共重合用触媒の製造方法およびオレフィン共重合体の製造方法 |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003055032A patent/JP2004263076A/ja active Pending
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