JP2004263006A - ゴムの分解方法および分解ゴム組成物 - Google Patents

ゴムの分解方法および分解ゴム組成物 Download PDF

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Takashi Shikakubo
隆志 鹿久保
Motofumi Sai
源文 崔
Takeshi Endo
剛 遠藤
Tomozo Nagasawa
智三 長澤
Koki Yamazaki
弘毅 山崎
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Abstract

【課題】短時間でゴム等を分解でき、分解ゴムの回収率が高く、再利用可能な分解ゴムを得ることができるゴムの分解方法、および、該方法により得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物の提供。
【解決手段】有機溶媒と酸との共存下で、ゴムまたはゴム組成物を酸分解するゴムの分解方法、および、該方法により得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムの分解方法およびそれにより得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物に関する。特に、ゴムを効率良く分解でき再利用可能な分解ゴムが得られるゴムの酸分解方法およびそれにより得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄物、特に産業廃棄物からの原材料回収またはそれらの再利用は重要な社会的課題である。排出量の多いタイヤ等のゴム廃材についても、原材料回収または再利用が望まれるが、加硫安定化されたゴム廃材から原料として再利用可能な品質のゴム等を回収することは容易ではない。
【0003】
ゴム廃材からゴムを回収する方法として、例えば、高温下(通常500℃以上)または高圧下(通常2MPa以上)でゴム廃材を分解する方法が一般的であり、該方法に用いる触媒、溶媒等も種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
これらの方法では、ゴム成分はガス状の低分子量炭化水素またはオイルとして回収することができるが、ゴム原料としてそのまま利用し得るような高分子量のゴムとして回収することは困難である。すなわち、該方法では、加硫ゴム中のゴム成分はほぼ完全に低分子量の炭化水素に転換されてしまう。このような回収炭化水素は、主に軽質燃料として再利用されるに留まり、ある程度の高分子量が要求されるゴム組成物のゴム原料として再利用することはできない。
【0004】
ところで、ゴム組成物の分析において、該ゴムの同定または添加剤(特にカーボンブラック)等の定量を目的とするため、該ゴム組成物を硝酸等の酸化剤で処理する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかし、これらの方法は、いずれも上記ゴムの同定等を目的とするため、同定しやすく、添加剤等と容易に分離しやすくするという観点から、分解されるゴムのフラグメントは低分子量であることが求められる。したがって、これらの方法では、酸化剤で分解したゴムを回収するということは想定されてなく、高分子量で効率良く(回収率が高く)ゴムを回収するということはできない。
【0005】
また一方で、接着力改善等を目的としてゴムの表面に化学的な処理が施される場合がある。例えば、加硫ゴムを硫酸や硝酸に5〜10分浸せきまたは塗布してゴムの表面に環化ゴムを生成させる方法(環化法)が挙げられる(例えば、非特許文献2参照。)。
環化ゴムを得るための該方法はゴム表面を折り曲げて細かなひび割れが生ずる程度に処理するのが最もよく、その処理時間は短時間でゴムの表面特性を所望する特性に容易に改善できる。したがって、上記した処理条件で行うこれらの方法では、ゴムを分解することは想定されてなく、また該方法の条件ではゴムの分解はまったく生じず、ゴムを回収することはできない。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第3,704,108号明細書
【特許文献2】
米国特許第3,996,022号明細書
【特許文献3】
欧州特許第71789号明細書
【特許文献4】
特開昭60−40193号公報
【特許文献5】
特開平7−310076号公報
【非特許文献1】
「ゴム工業便覧<新版>」、社団法人日本ゴム協会、昭和48年11月、p.1202
【非特許文献2】
奥山道夫ら、「ゴムの事典」、株式会社朝倉書店、2000年11月、初版第1刷、p.344
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ゴム原料としてゴムを回収できる技術として、例えば、過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せき攪拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法が、本出願人により提案されている(国際公開第00/69953号パンフレット等。)。
該分離方法は、ゴムの回収という観点からは産業上非常に有益な技術であるが、回収率を高めるには比較的低温(室温程度)で浸せき時間を長く(具体的には、60〜70時間程度)するのが好ましく、製造工程の簡素化、短縮化等の製造効率の向上等が求められる近年の産業界においては、さらなる製造効率の向上が求められる場合がある。
【0008】
したがって、本発明は、ゴムを効率的に分解処理し、ゴム組成物等から原料として再利用可能な品質のゴムを回収することを目的とし、具体的には、短時間でゴムを分解でき回収率が高く、再利用可能な分解ゴムを得ることができるゴムの分解方法を提供することを目的とする。
また、該方法により得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、再利用可能なゴムを得ることができるゴムの分解方法について、鋭意検討したところ、従来では検討されていない分解条件を選択すると、ゴムを分解、回収でき、該分解されたゴムが原料として再利用可能な品質、特に従来の分解方法では得られなかったほぼ1:1のcis/trans比を有することを知見した。さらに具体的に検討したところ、ゴムを膨潤する有機溶媒を含有する系でゴムの分解を行うと、該分解が効率的に行われ、短時間でゴムを分解でき回収率が高く、再利用可能なゴムを得ることができることを知見した。
また、分解処理されるゴム組成物がカーボンブラックを含有していると、分解されたゴムの分子量が大きく、かつ分子量分布が狭くなり、該分解されたゴムが再利用により適した品質を有することを知見した。
本発明は、上記知見を基になされたものであり、以下の(1)〜(9)を提供する。
【0010】
(1)有機溶媒と酸との共存下で、ゴムを酸分解するゴムの分解方法。
ここで、分解処理として、例えば、有機溶媒と酸との共存下にゴムを浸せきする方法または浸せき撹はんする方法、あるいは、ゴムの表面に有機溶媒と酸とを多量に流す方法またはスプレー塗布する方法等が挙げられるが、有機溶媒と酸との共存下にゴムを浸せきする方法または浸せき撹はんする方法が好ましい。
【0011】
(2)有機溶媒と酸との混合液に、ゴムを浸せきまたは浸せき撹はんして(有機溶媒と酸との共存下で)ゴムを酸分解するゴムの分解方法。
【0012】
(3)ゴムを有機溶媒に浸せきまたは浸せき撹はんして膨潤させ、
該膨潤したゴムを酸に浸せきまたは浸せき撹はんして、(有機溶媒と酸との共存下で)ゴムを酸分解するゴムの分解方法。
【0013】
(4)前記ゴムが、ゴム組成物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴムの分解方法。
すなわち、(4−1)有機溶媒と酸との共存下で、ゴム組成物を酸分解するゴム(組成物)の分解方法、(4−2)有機溶媒と酸との混合液に、ゴム組成物を浸せきまたは浸せき撹はんして(有機溶媒と酸との共存下で)ゴム組成物を酸分解するゴム(組成物)の分解方法、および、(4−3)ゴム組成物を有機溶媒に浸せきまたは浸せき撹はんして膨潤させ、該膨潤したゴム組成物を酸に浸せきまたは浸せき撹はんして、(有機溶媒と酸との共存下で)ゴム組成物を酸分解するゴム(組成物)の分解方法である。
なお、本発明において、「ゴム」とは、加硫されていても、加硫されていなくてもよく、部分的に加硫されているもの、加硫度が充分でないものも含まれる。また、「ゴム組成物」とは、上記ゴムを含有する組成物であれば、その他の添加剤等は特に限定されず、また、ゴム成形品であってもよい。
【0014】
(5)前記ゴム組成物が、カーボンブラックを含有するゴム組成物である上記(4)に記載のゴムの分解方法。
分解されるゴム組成物がカーボンブラックを含有することにより、分解されたゴムの分子量が大きくかつ分子量分布が狭くなり、該分解されたゴムは再利用により適した品質を有する。
【0015】
(6)前記ゴムが、ジエン系ゴムである上記(1)〜(5)のいずれかに記載のゴムの分解方法。
前記ジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR、NIR、NBIR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)であるのが好ましく、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)であるのがより好ましい。また、これらのブレンドゴムであってもよい。
【0016】
(7)前記有機溶媒が、前記ゴムを膨潤できる有機溶媒である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のゴムの分解方法。
該有機溶媒は、前記ゴムを膨潤できかつ高沸点のものであれば特に限定されない。好ましくは前記ゴムを30%以上膨潤できるものであり、また、沸点が80℃以上である。具体的には、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)およびテトラリン(テトラヒドロナフタレン)からなる群から選択される1種以上であるのが好ましい。
ここで、ゴムの膨潤度は、JIS K6258−1993に規定されている加硫ゴムの浸せき試験方法による体積変化率である。その測定方法、条件等は該規定に従って行う。
【0017】
(8)前記酸が、無機酸である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のゴムの分解方法。
前記酸は、無機酸であるのが好ましく、硫酸、硝酸および塩酸からなる群から選択される1種以上であるのがより好ましく、硝酸であるのが特に好ましい。
【0018】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のゴムの分解方法により得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、有機溶媒と酸との共存下でゴムを酸分解するゴムの分解方法およびそれにより得られる分解されたゴム(本発明において、「分解ゴム」という。)を含有するゴム組成物である。
すなわち、本発明のゴムの分解方法(以下、「本発明の方法」という。)は、有機溶媒と酸とを用い、それらを共存させることを特徴の1つとする。
「共存」とは、ゴムの分解が行われる際に有機溶媒と酸とがともに該ゴムの近傍に存在していることをいう。有機溶媒と酸とを共存させる方法は、特に限定されず、例えば、後述する方法1)および2)等が挙げられる。
有機溶媒と酸との共存下でゴムを酸分解することにより、該ゴムの分解が効率的に行われ、短時間でゴムを分解でき回収率が高く、再利用可能なゴムを得ることができる。
【0020】
本発明で用いる、分解されるゴムは、特に制限されず、加硫されていても、加硫されていなくてもよく、部分的に加硫されているもの、加硫度が充分でないものも含まれる。
該ゴムとしては、ジエン系ゴムが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR、NIR、NBIR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
この中でも、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)であるのが、反応時間が短く副反応等による副生物の生成量が少ない点で、より好ましい。
上記ゴムは、単独で用いても、2種以上を併用して用いても、また、これらをブレンドして用いてもよい。
【0021】
本発明では、上記ゴムを単独で酸分解してもよく、また、上記ゴムを含有する組成物を酸分解してもよく、ゴム組成物は成形されたものであってもよい。
該ゴム組成物は、上記ゴムの他に、充填剤、加硫剤、公知の樹脂、他のエラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、各種配合剤として、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤等が挙げられる。
上記ゴム副資材としては、例えば、スチールコード等の鋼材、ポリエステルカーカスコード等の繊維等が挙げられる。
これらの各成分の含有量も特に限定されない。
【0022】
本発明においては、ゴム組成物に含有される充填剤として、カーボンブラックを含有しているのが好ましい。
カーボンブラックを含有していると、分解ゴムの分子量が大きくかつその分子量分布が狭くなり、該分解ゴムが再利用により適した品質を有する。これは、今日普及している工業用ゴムの大半にカーボンブラック等の充填剤が配合されているという現実を考慮すると、本発明の分解方法の産業上の利用価値が絶大なものであるということが理解できる。
該分解されるゴム組成物中のカーボンブラックの含量は特に限定されないが、それに含まれるゴム100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。
【0023】
上記ゴム組成物が成形されたものとしては、具体的に、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナー等の自動車用ゴム部品;ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキン等のゴム製品;および精錬屑、加工屑等の成形屑ゴム等を挙げることができる。これらは、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることが望ましい。
未使用のゴム廃材としては、例えば、タイヤ等のゴム製品を製造する際に、混練り、成形工程等で排出される早期加硫、加硫むら(焼け、スコーチ)を起こしたゴム破材、加硫工程で排出されるいわゆるだれ等を起こした不良ゴム製品、加硫部分と未加硫部分とが混在したもの、全体的に架橋の程度が低いもの、鋼材、有機繊維等の他部材が付着したもの等の様々な形態の成形屑を挙げることができる。
これらのうちでも、タイヤあるいはその成形屑ゴムは、天然ゴムおよびイソプレンを高純度で回収しうるゴム廃材であり、好ましい。またブチルゴム原料の自動車用ゴム部品廃材等も好ましい。
【0024】
上記ゴムまたはゴム組成物(以下、単に「ゴム等」という。)の形状は、特に限定されないが、酸による分解効率等を考慮して適当な大きさに切断し細分化するのが好ましい。
【0025】
本発明の分解方法は、上記ゴム等を有機溶媒と酸との共存下で分解する方法である。該方法では、ゴム等が分解されるときにはその近傍に有機溶媒と酸とが共存しており、これにより、ゴムの分解が効率良く行われる。
【0026】
本発明の分解方法に用いられる有機溶媒は、上記ゴム等を膨潤でき、かつ高沸点溶媒であれば特に限定されない。該有機溶媒を用いると、ゴム等の分解が効率良く行われる。
該溶媒における上記ゴム等の膨潤度は、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。また、該溶媒の沸点は、80℃以上であるのが好ましく、90℃以上であるのがより好ましい。これらの条件を満足する有機溶媒を用いると、ゴム等の分解が速やかに進行し分解がより効率よくなる。
これらの条件を満足する有機溶媒として、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)等が挙げられる。該有機溶媒は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ここで、ゴム等の膨潤度は、JIS K6258−1993に規定されている加硫ゴムの浸せき試験方法による体積変化率である。その測定方法、条件等は該規定に従って行う。
【0027】
本発明の方法に用いられる酸は、特に限定されないが、無機酸であるのが好ましく、硫酸、硝酸、塩酸およびこれらの混酸がより好ましく、硝酸であるのが特に好ましい。これらの酸を用いると、ゴム等の分解が効率良く行われる。
また、これらの酸は、そのまま用いても、溶液(水溶液、有機溶液)として用いてもよい。上記酸の水溶液であるのが、分解後に該酸を上記有機溶媒と分離(分液)しやすく好ましい。溶液として用いる場合の濃度は特に限定されないが、一般的に、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。該濃度が20%未満であると、ゴム等の分解時間が長くなり、製造上あまり好ましくない場合がある。
これらの酸は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記有機溶媒と上記酸との好ましい組み合わせは、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)およびテトラリン(テトラヒドロナフタレン)からなる群から選択される1種と、硫酸、硝酸、塩酸からなる群から選択される1種との組み合わせであり、特に好ましくは、トルエンまたはキシレンと硝酸との組み合わせである。
【0029】
なお、上記有機溶媒と上記酸とは、反応する場合もあるが、本発明者らが確認したこところ、ゴムの分解反応およびその後の処理等に特に影響するものではなかった。
【0030】
上記方法におけるゴム等の分解条件は、以下に説明するとおりである。
上記有機溶媒および上記酸の使用量は、ゴム等の近傍に存在させられる程度であれば、特に限定されない。
【0031】
該分解の温度(分解処理温度)は、特に限定されず、分解処理時間、得られる分解ゴムの分子量、回収率等を考慮して適宜選択できる。一般に、20℃以上であればよく、50℃以上であるのが好ましく、分解が速やかに進行する点で、80℃以上であるのが特に好ましい。その上限も特に限定されないが、作業性等を考慮すると、150℃以下であるのが好ましい。
【0032】
該分解の時間(分解処理時間)は、上記分解処理温度、得られる分解ゴムの分子量、回収率等を考慮して適宜選択できる。一般に、上記分解処理温度に大きく依存し該温度により異なる。上記分解処理温度を80℃程度にすると分解処理時間は6〜30時間であるのが好ましい。
【0033】
本発明の方法では、分解処理として、例えば、有機溶媒と酸との共存下にゴム等を浸せきする方法または浸せき撹はんする方法、あるいは、ゴム等の表面に有機溶媒と酸とを多量に流す方法またはスプレー塗布する方法等が挙げられるが、有機溶媒と酸との共存下にゴム等を浸せきする方法または浸せき撹はんする方法が、確実にゴム等を分解でき作業性に優れるため好ましい。また該浸せきする方法においては、その系内を撹はんしてもしなくてもよいが、該系を均一にでき分解が速やかに進行する点で、撹はんするのが好ましい。ここで、撹はんは、系が均一になる程度で充分である。一方、該ゴム等を裁断すれば、系内を撹はんせず、ゴム等を浸せきさせるだけでも、充分にゴム等を分解できる。
【0034】
また、本発明においては、上記分解処理は、空気中、窒素ガス中等の不活性雰囲気下のいずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合等には不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0035】
本発明の方法は、上記有機溶媒と上記酸の共存下でゴム等を分解する方法であるが、その後、該有機溶媒と該酸とを分離し、該有機溶媒部分の有機溶媒を除去するのが好ましい。具体的には、上記有機溶媒と上記酸の共存下にゴム等を浸せきまたは浸せき撹はんして酸分解し、その後、上記有機溶媒と上記酸とを分液して該分液された有機溶媒相を水洗し、(乾燥して)、該有機溶媒相の有機溶媒を除去し乾燥する方法が好ましい。より好ましくは、上記水洗後に、順に、中和、水洗する方法である。
【0036】
上記条件でゴム等を分解した後は、上記したように該有機溶媒と該酸とを分離(分液)するのが好ましい。
本発明で用いる該有機溶媒と該酸は、一般に混合しにくいものであるため、分解処理終了後、反応系を静置することにより、該有機溶媒と該酸は分離し、定法に従い分離(分液)すればよい。
ここで、上記酸として酸そのものまたは該酸の有機溶液を用いる場合、上記有機溶媒と酸とが分離(分液)しにくい場合等には、通常採られる処置、例えば、系内に水等を投入する処置等により分離(分液)させればよい。
分離(分液)は、分液ロートを用いる方法、傾斜法(デカンテーション)等の一般的な方法を選択できる。
【0037】
次に、該分離(分液)して得られた有機溶媒部分(有機溶媒相)の有機溶媒を除去し、乾燥させるのが好ましい。
該有機溶媒の除去手段は、特に限定されず、各種蒸留等の通常行われる除去手段を選択できる。このとき、系内を均一にするため撹はんするのが好ましい。
上記乾燥は、特に限定されず、例えば、室温下または加熱下における常圧乾燥または減圧乾燥、風乾等の通常行われる各種乾燥手段を選択できる。このときの加熱温度、乾燥時間等の条件は、残存する有機溶媒を除去できる程度であれば特に限定されない。
【0038】
本発明は、上記方法により分解ゴムを回収できるが、上記工程の他に、他の工程、例えば、上記酸と分液した有機溶媒相を水洗する工程、該有機溶媒相と分液した酸相を有機溶媒で洗浄(酸相に残存する分解ゴムを抽出)する工程、酸と分液した有機溶媒相を中和する工程、酸と分液した有機溶媒相を乾燥剤で乾燥する工程、有機溶媒を除去して得られる分解ゴムを精製する工程等を施してもよい。これらの工程は通常行われる条件等を選択できる。
【0039】
このようにして、本発明の方法により後述する特性を有する分解ゴムを回収できる。
本発明の方法において、有機溶媒と酸とを共存させる手段として、より具体的には、例えば、1)上記有機溶媒と酸とを混合して混合液とする手段、および2)ゴム等をあらかじめ上記有機溶媒で膨潤させ、該膨潤させたゴム等を酸に投入等する手段等が挙げられるが、該手段に限られない。
上記1)の混合液とする手段は、分解処理工程が少ない点で、上記2)のあらかじめ膨潤させる手段は、上記有機溶媒の使用量が少ない点で優れる。
【0040】
上記1)の方法は、上記有機溶媒と上記酸との混合液に、ゴム等を浸せきまたは浸せき撹はんして(有機溶媒と酸との共存下で)ゴム等を酸分解する方法である。より好ましくは、上記有機溶媒と上記酸との混合液に、ゴム等を浸せきまたは浸せき撹はんして(有機溶媒と酸との共存下で)ゴム等を酸分解し、その後、上記有機溶媒と上記酸とを分液して該分液された有機溶媒相を水洗し、(乾燥して)、該有機溶媒相の有機溶媒を除去する方法である。さらに好ましくは、上記水洗後に、順に、中和、水洗する方法である。
【0041】
上記1)の手段において、上記有機溶媒と上記酸との使用量は、特に限定されず、分解させるゴム等100gに対して、上記有機溶媒と上記酸との合計量が、50mL以上であるのが好ましく、200mL以上であるのがより好ましく、500mL以上であるのが特に好ましい。その上限は、多量の混合液を使用することによる作業工程の簡素化、コスト高を抑える点で、20000mL以下であるのが好ましい。
また、上記混合液の有機溶媒と酸との比率は、特に限定されず、また上記酸の濃度にも依存し一概にいえないが、上記した濃度の酸を用いる場合には、一般的には、上記有機溶媒と上記酸との体積比(有機溶媒/酸)で0.5/1以上であればよい。回収率が向上する点で、好ましくは1/1以上であり、特に好ましくは2/1以上である。その上限は、多量の有機溶媒を使用することによるコスト高を抑える点で、20/1であるのが好ましい。
上記1)の手段においては、有機溶媒と酸との混合液を用いる点以外は、上記した条件、方法で行うことができる。
【0042】
上記2)の方法は、ゴム等を有機溶媒に浸せきまたは浸せき撹はんして膨潤させ、該膨潤したゴム等を酸に浸せきまたは浸せき撹はんして、(有機溶媒と酸との共存下で)ゴム等を酸分解する方法である。より好ましくは、ゴム等を有機溶媒に浸せきまたは浸せき撹はんして(所望の膨潤度になるように)膨潤させ、該膨潤したゴム等を酸に浸せきまたは浸せき撹はんして、(有機溶媒と酸との共存下で)ゴム等を酸分解し、その後、有機溶媒を添加して該有機溶媒と上記酸とを分液し、該分液された有機溶媒相を水洗し、(乾燥して)、該有機溶媒相の有機溶媒を除去する方法である。さらに好ましくは、上記水洗後に、順に、中和、水洗する方法である。
該方法において、膨潤させたゴム等の表面に付着した有機溶媒をふき取って酸に浸せきまたは浸せき撹はんさせてもよい。
【0043】
上記2)の手段においては、ゴム等をあらかじめ有機溶媒で膨潤させて酸に浸せき等する以外は、上記した条件、方法で行うことができる。
該方法における、ゴム等の膨潤方法は、特に限定されず一般的な方法を選択でき、例えば、有機溶媒中にゴム等を浸せきまたは浸せき撹はんさせる方法が挙げられる。
この場合の浸せき時間は、特に限定されず、上記した膨潤度になる時間であればよく、一般的には2時間以上が好ましい。浸せき温度も特に限定されない。
【0044】
上記2)の手段において、上記有機溶媒の使用量は、上記したゴム等の膨潤度を満足できる量であれば、特に限定されない。ゴム等の膨潤度にもより一概にはいえないが、好ましくは、分解させるゴム等100gに対して、上記有機溶媒50mL以上であるのが好ましく、100mL以上であるのがより好ましく、300mL以上であるのが特に好ましい。上記2)の手段は、ゴム等を膨潤させた後の有機溶媒は再利用できるので、該有機溶媒の使用量の上限は、特に規定する必要はない。
浸せきは、JIS K6258−1993に規定されている加硫ゴムの浸せき試験方法に記載された方法、条件等にしたがって行ってもよい。
【0045】
ゴム等を有機溶媒に浸せきまたは浸せき撹はんした後は、膨潤したゴム等を、上記した分解条件下、酸に浸せきまたは浸せき撹はんする。
上記酸の使用量は、ゴム等が分解できる量であれば特に限定されず、また上記酸の濃度にも依存し一概にいえないが、上記した濃度の酸を用いる場合には、一般的には、分解させるゴム等100gに対して、50mL以上であるのが好ましく、200mL以上であるのがより好ましく、300mL以上であるのが特に好ましい。その上限は、多量の混合液を使用することによる作業工程の簡素化、コスト高を抑える点で、1000mL以下であるのが好ましい。
【0046】
なお、上記2)の方法において、ゴム等をあらかじめ膨潤させた後、該ゴム等を浸せきまたは浸せき撹はんする酸の代わりに、有機溶媒と酸との混合液を用いてもよい。
上記酸に浸せきまたは浸せき撹はんしてゴム等を分解した後は、有機溶媒(上記膨潤に用いた有機溶媒と同一であっても異なってもよい)を添加して酸と分液するのが好ましく、上記した方法等により分解ゴムを回収できる。
【0047】
本発明の方法を実施する際に使用する装置等は特に限定されず一般的に用いられる反応器、加熱手段と撹はん装置を備えた反応器、分液装置、乾燥機等の装置等を用いることができる。上記反応器は、酸に対して耐性を有するのが好ましい。
【0048】
本発明の方法は、上記した国際公開第00/69953号パンフレットに記載の加硫ゴム組成物の分離方法に比して、ゴム等を短時間で分解でき、分解ゴムの回収率が高い(副生物、不純物が少なく)という利点を有する。
【0049】
また、本発明の方法により得られる分解ゴムは、原料として再利用可能な品質を有する。
該方法により分子量が10000程度で、分子量分布が2.5以下の分解された液状ゴムが得られる。該分子量と分子量分布は、本発明の方法の条件、特に分解処理温度と分解処理時間を選択することにより、任意に調整することができる。
特に、分解されるゴム組成物として、カーボンブラックを含有していると、得られる分解ゴムの分子量が大きくなり、分子量分布が狭くなるという傾向を有する。これは、今日普及している工業用ゴムの大半にカーボンブラック等の充填剤が配合されているという現実を考慮すると、本発明の分解方法の産業上の利用価値は絶大である。
【0050】
また、本発明の方法により得られる分解ゴムのcis/trans比は、従来の分解方法または回収方法では実現できなかった値を持つ。具体的には、cis/trans比は、40〜60/60〜40であり、ほぼ1:1となる。したがって、本発明の方法により得られる分解ゴムは、ガラス転移点(Tg)が、分解する前のゴムよりも高くなり、再利用される用途が広くなる。
【0051】
次に、上記方法により得られた分解ゴムを含有する分解ゴム組成物(以下、「本発明のゴム組成物」という。)について説明する。
本発明のゴム組成物は、上記の分解ゴムを1種以上含有する組成物であれば、それ以外の添加剤等は特に限定されない。
該添加剤として、例えば、上記分解ゴム以外のゴム、充填剤、加硫剤、公知の樹脂、他のエラストマー、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤等が挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、特に限定されず、該組成物が用いられる用途、または該組成物に要求される特性等を考慮して一般的な配合量とすることができる。
【0052】
本発明のゴム組成物は、上記分解ゴム1種以上と、所望により上記添加剤とを混合し通常の方法、例えば、2軸押出機、バンバリミキサー、ニーダー等を用いて、50℃〜180℃程度に加熱下、混練して製造することができる。
【0053】
本発明で得られる分解ゴムは上記した特性を有するため、それを含有する本発明のゴム組成物は、例えば、自動車等のタイヤ、ケーブル、シート、パッキン、成形屑ゴム、ホース、ベルト等の各種ゴム製品等として利用でき、Tgが高いという特性を生かして、温度特性が特殊な可塑剤、シーリング材料等として好ましく利用できる。
これら用途で用いられる際には、さらに他の構成材料と複合化されていてもよい。
なお、本発明のゴム組成物の用途は、上記した用途に限定されないのはもちろんである。
【0054】
【実施例】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<ゴム組成物の調製>
天然ゴムおよび第1表に示す添加剤を、第1表に示す配合(質量部)で混合し、160℃で20分間加熱し、加硫されたゴム組成物1および2を得た。
【0055】
【表1】
Figure 2004263006
【0056】
上記ゴム組成物に用いた成分を以下に示す。
天然ゴムはRSS#3、カーボンブラックはショウブラックS118(昭和キャボット社製)、亜鉛華は酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)、ステアリン酸はビーズステアリン酸(日本油脂社製)、老化防止剤1はサントフレックス6PPD(フレキシス社製)、老化防止剤2はノクラック224(大内新興化学工業社製)、パラフィンワックスはサンノックス(大内新興化学工業社製)、硫黄は油処理硫黄(軽井沢精錬所製)および加硫促進剤はノクセラーNS−P(大内新興化学工業社製)であった。
【0057】
<ゴム組成物の分解処理>
<実施例1および2>
60%硝酸水溶液20mLとトルエン100mLとを混合して混合液を調製した。
上記で得られたゴム組成物1または2、10.0gを5mm角に切断してサイコロ状とし、上記混合液に投入し、80℃で24時間浸せき撹はんした。
その後、撹はんを止め硝酸水溶液とトルエン相を分液し、トルエン相を水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してさらに水で洗浄した。
得られたトルエン相を減圧濃縮してトルエンを除去し、80℃で6時間減圧乾燥して、分解ゴムを得た。
なお、カーボンブラックは、上記の分液時に不溶物をろ取して回収した。
【0058】
<実施例3>
上記で得られたゴム組成物1、10.0gを5mm角に切断してサイコロ状とし、トルエン100mLに投入し、室温で6時間浸せきして膨潤させた。
膨潤したゴム組成物をデカンテーションにより取り出し、組成物の表面に付着しているトルエンをろ紙でふき取った。
該ゴム組成物を、60%硝酸水溶液20mLに投入し、80℃で24時間浸せき撹はんした。
その後、トルエン50mLを投入して撹はんを止め、硝酸水溶液とトルエン相を分液し、トルエン相を水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してさらに水で洗浄した。
得られたトルエン相を減圧濃縮してトルエンを除去し、80℃で6時間減圧乾燥して、分解ゴムを得た。
なお、カーボンブラックは、上記の分液時に不溶物をろ取して回収した。
【0059】
<比較例1>
上記で得られたゴム組成物1、10.0gを5mm角に切断してサイコロ状とし、60%硝酸水溶液20mLに投入し、80℃で24時間浸せき撹はんした。
その後、トルエン50mLを投入して撹はんを止め、硝酸水溶液とトルエン相を分液し、トルエン相を水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してさらに水で洗浄した。
得られたトルエン相を減圧濃縮してトルエンを除去したところ、トルエン相の濃縮残渣(分解されたゴム成分)は得られなかった。
【0060】
なお、本発明において、上記ゴム組成物10.0gのトルエン膨潤量は、ゴム組成物1が23.4mL(ゴム組成物1の膨潤度204%)、ゴム組成物2が13.8mL(ゴム組成物2の膨潤度120%)であった。
【0061】
<回収率(%)>
各実施例および比較例におけるゴムの回収率を、ゴム組成物中の天然ゴムの含量(質量換算)に基づいて次式により算出した。その結果を第2表に示す。
ゴム組成物1を用いた場合:
回収率(%)=(得られた分解ゴムの質量)/[10.0×(100/113)]×100
ゴム組成物2を用いた場合:
回収率(%)=(得られた分解ゴムの質量)/[10.0×(100/163)]×100
【0062】
<分子量等の測定>
各実施例で得られた分解ゴムをテトラヒドロフランに溶解し、均一な0.5質量%濃度のTHF溶液を調製した。得られた各THF溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析した。別途作成した検量線と比較して、各THFに含有される分解ゴムの分子量および分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を求めた。その結果を第2表に示す。
なお、比較例1では分解ゴムが得られなかったので分解ゴムの分子量等の測定ができず、第2表中「−」で示した。
【0063】
<cis/trans比の算出>
各実施例で得られた分解ゴムを重水素化クロロホルムに溶解し、均一な1質量%濃度の溶液を調製した。各溶液をH−NMR測定し、得られたスペクトルの水素分率からcis/trans比を求めた。その結果を第2表に示す。
なお、比較例1では分解ゴムが得られなかったので分解ゴムのcis/trans比の算出ができず、第2表中「−」で示した。
【0064】
【表2】
Figure 2004263006
【0065】
第2表から分かるように、有機溶媒と酸との共存下でゴムを酸分解する本発明の方法(実施例1〜3)では、短時間でゴム組成物を分解でき分解ゴムの回収率が高く、再利用可能な分解ゴムを得ることができる。また、有機溶媒と酸との共存下であれば、それらを共存させる手段は、限定されず、1)有機溶媒と酸とを混合液とする手段(実施例1および2)、2)あらかじめ膨潤させる手段(実施例3)のいずれにおいても、短時間でゴム組成物を分解でき分解ゴムの回収率が高く、再利用可能な分解ゴムを得ることができる。
さらに、分解するゴム組成物にカーボンブラックが含まれていると、得られる分解ゴムの分子量が大きく、かつその分子量分布が狭くなり、該分解ゴムが再利用により適した品質を有する(実施例2)。
対して、濃硝酸を希釈した酸のみを用いて分解する方法では(比較例1)、ゴム組成物中のゴムの分解反応が進行せず、分解ゴムを回収できなかった。
なお、有機溶媒のみを用いて上記ゴム組成物1および2を浸せき撹はんしてみたが、加硫成形されたバルクゴムは、有機溶媒に浸せきしても膨潤する程度か実質的に変化がないことが周知であるように、ゴム組成物が膨潤するだけで、ゴム組成物の分解は確認できなかった。また、上記ゴム組成物1および2を、上記60%硝酸水溶液に20〜80℃で10分間浸せき撹はんしてみたが、比較例1と同様に該組成物の分解は確認できなかった。
【0066】
【発明の効果】
有機溶媒と酸との共存下でゴムを酸分解する本発明の方法は、短時間でゴム等を分解でき、分解ゴムの回収率が高く、再利用可能な分解ゴムを得ることができる。
また、該方法により得られる分解ゴムのcis/trans比は、40〜60/60〜40であり、該分解ゴムは、ガラス転移点(Tg)が高く再利用される用途が広くなる。
さらに、分解するゴム組成物にカーボンブラックが含まれていると、得られる分解ゴムの分子量が大きく、かつ分子量分布が狭くなり、今日普及している工業用ゴムの大半にカーボンブラック等の充填剤が配合されているという現実を考慮すると、本発明の方法の産業上の利用価値は絶大である。
さらにまた、本発明の方法により得られる分解ゴムを用いるゴム組成物は、該分解ゴムの特性を活かし、温度特性が特殊な可塑剤、シーリング材料等への再利用に好適である。

Claims (9)

  1. 有機溶媒と酸との共存下で、ゴムを酸分解するゴムの分解方法。
  2. 有機溶媒と酸との混合液に、ゴムを浸せきまたは浸せき撹はんしてゴムを酸分解するゴムの分解方法。
  3. ゴムを有機溶媒に浸せきまたは浸せき撹はんして膨潤させ、
    該膨潤したゴムを酸に浸せきまたは浸せき撹はんして、ゴムを酸分解するゴムの分解方法。
  4. 前記ゴムが、ゴム組成物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴムの分解方法。
  5. 前記ゴム組成物が、カーボンブラックを含有するゴム組成物である請求項4に記載のゴムの分解方法。
  6. 前記ゴムが、ジエン系ゴムである請求項1〜5のいずれかに記載のゴムの分解方法。
  7. 前記有機溶媒が、前記ゴムを膨潤できる有機溶媒である請求項1〜6のいずれかに記載のゴムの分解方法。
  8. 前記酸が、無機酸である請求項1〜7のいずれかに記載のゴムの分解方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のゴムの分解方法により得られる分解ゴムを含有する分解ゴム組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017039860A (ja) * 2015-08-20 2017-02-23 日立造船株式会社 ポリイソプレン分解物の製造方法

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