JP2004261511A - 生体組織補填材および生体組織補填体 - Google Patents
生体組織補填材および生体組織補填体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】比較的大きな欠損部に補填されても、細胞を健全に成長させ、均一かつ十分なリモデリングを可能とする。
【解決手段】容器状の補填材片2と、その内部に充填される顆粒状の補填材片3とからなり、これら補填材片2,3が、生体に適合した材料により構成されている生体組織補填材1を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】容器状の補填材片2と、その内部に充填される顆粒状の補填材片3とからなり、これら補填材片2,3が、生体に適合した材料により構成されている生体組織補填材1を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体組織補填材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨の欠損部に、骨補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
【0003】
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨を使用することが提案されている。培養されることにより骨補填材を足場にして増殖した多くの骨髄間葉系細胞を含む培養骨を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
このような培養骨は、一般に、患者から採取した骨髄細胞をフラスコ内で一次培養して必要細胞数まで増加させた後に、トリプシンのような蛋白質分解酵素を用いて細胞をフラスコから剥離する。そして、これを骨補填材に付着させて骨形成培地内に留置して二次培養を行うことにより製造される(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第30巻,第10号,p.46−49
【非特許文献2】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
骨補填材のような生体組織補填材は、一般に、顆粒状またはブロック状に形成されており、補填すべき生体組織の欠損部の大きさに適合する大きさのものが選択される。したがって、特に、補填すべき欠損部が大きい場合には、比較的大きなブロック状の生体組織補填材が使用される。
しかしながら、生体組織補填材が大きくなると、外面に播種された細胞が内部まで浸透せず、その結果、生体組織の欠損部内に補填されても、十分なリモデリングが行われない不都合が考えられる。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、比較的大きな欠損部に補填されても、細胞を健全に成長させ、均一かつ十分なリモデリングを行うことができる生体組織補填材および生体組織補填体を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、容器状の補填材片と、その内部に充填される顆粒状の補填材片とからなり、これら補填材片が、生体に適合した材料により構成されている生体組織補填材を提供する。
この発明によれば、容器状の補填材片内に顆粒状の補填材片が充填されているので、全体として比較的大きな生体組織欠損部に補填可能な比較的大きな生体組織補填材が構成される。この場合において、内部を顆粒状の補填材片により構成することで、比較的大きな生体組織補填材の内部まで十分に細胞を浸透させることが可能である。また、中心部まで浸透した細胞に対しても十分な栄養分の補給と老廃物の排出を可能とし、健全な成長を図ることが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填材において、前記容器状の補填材片と前記顆粒状の補填材片とが、気孔率の異なる多孔質材料により構成されている生体組織補填材を提供する。
この発明によれば、外部に配される容器状の補填材片の気孔率を内部の補填材片の気孔率より小さくすることで、外側に比較的硬質の生体組織を再生したい部位に補填するのに適した生体組織補填材が提供される。また、容器状の補填材片の気孔率を内部の補填材片の気孔率より大きくすることで、外部から生体組織補填材に接触する細胞が生体組織を再生し易くすることができる。すなわち、この発明によれば、再生したい生体組織に合わせて適正な生体組織補填材を簡易に提供することが可能となる。また、生体組織補填材内部における生体組織の再生方向を簡易にコントロールすることが可能となる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の生体組織補填材において、前記容器状の補填材片に、局部的に強度を低く設定した易分割ラインが設けられている生体組織補填材を提供する。
この発明によれば、内部に顆粒状の補填材片を充填した容器状の補填材片に、あるいは、該補填材に細胞を付着させて分化させた生体組織補填体に、外力を加えることで、容器状の補填材片に設けられた易分割ラインに沿って生体組織補填材あるいは生体組織補填体を簡易に分割することが可能となる。その結果、補填すべき生体組織欠損部等の大きさに合わせて生体組織補填材あるいは生体組織補填体の大きさを簡易に調整することが可能となる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体組織補填材に細胞を付着させてなる生体組織補填体を提供する。
この発明によれば、付着させた細胞を内部にまで十分に成長させることができ、全体的な生体組織形成作用を生じさせ、早期に生体組織を再生することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態に係る生体組織補填材について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織補填材1は、図1に示されるように、シャーレ状に形成された第1の補填材片2と、該第1の補填材片2の内部に充填された顆粒状の第2の補填材片3とから構成されている。第1の補填材片2および第2の補填材片3は、いずれも、例えば、β−TCPのような生体に適合した多孔質材料により構成されている。図中、第2の補填材片3は模式的に、球形に示されているが、その形状は不規則な形状であり、また大きさも揃っていなくてよい。
【0013】
各補填材片2,3を構成する多孔質材料の気孔率は、第2の補填材片3において、約30〜80%の範囲、例えば、50%となるように調整されており、第1の補填材片2においては、それよりも低い約10〜30%の範囲、例えば20%程度の気孔率を有するように調整されている。また、第1の補填材片2の厚さ寸法は十分に薄く、例えば、2〜5mm程度に形成され、第2の補填材3の外形は、その最大寸法が、1000μm〜5000μmの範囲、例えば、5000μmとなるように、十分に小さく形成されている。
【0014】
また、前記第1の補填材片2の外面には、図2に示されるように、該第1の補填材片2の厚さ寸法を局部的に薄く形成した複数の分割溝4(易分割ライン)が形成されている。これによって、分割溝4における第1の補填材片2の強度は局部的に低く設定されており、外力を加えることにより、当該分割線4に沿って割れ、容易に分割することができるようになっている。
【0015】
このように構成された本実施形態に係る生体組織補填材1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織補填材1に細胞を付着させて、所定の培地内において培養することにより、生体組織補填材1を足場として生体組織を形成した生体組織補填体を製造することができる。
【0016】
この場合に、第2の補填材片3が顆粒状に形成されているので、該第2の補填材片3に付着した細胞は、各第2の補填材片3間に形成された隙間を通して生体組織補填材1の内部まで浸透しやすく、内部においても十分に生体組織形成作用を生じさせることができる。その結果、本実施形態に係る生体組織補填材1を使用することにより、内部まで十分に細胞を成長させた比較的大きな生体組織補填体を簡易に得ることができる。
【0017】
また、このような第2の補填材片3を収容する第1の補填材片2が、第2の補填材片3よりも低い気孔率を有する多孔質材料により構成されているので、これを用いて得られる生体組織補填体は、第1の補填材片2部分、すなわち周囲において強度が高く、第2の補填材片3部分、すなわち内部においてそれよりも強度が低いものとなる。例えば、生体組織補填材1に付着させる細胞を間葉系幹細胞とし、ヘキサメタゾンのような分化誘導因子を導入して間葉系幹細胞に骨形成作用を生じさせた場合には、生体組織補填材1の各部において骨基質が形成されて骨補填体が製造されることになる。この場合に、本実施形態に係る生体組織補填材1を用いれば、外周において強度が高く内部において強度が低い骨補填体が製造されるので、従来、皮質骨を移植していた部位等への適用に適した骨補填体を製造することができる。
【0018】
また、本実施形態に係る生体組織補填材1は、複数の分割溝4を備えているので、例えば、生体組織欠損部が小さい生体組織補填材1よりも小さい場合や、生体組織欠損部の形状に生体組織補填体を適合させたい場合に、外部から力を加えることで、分割溝4に沿って容易に分割することができる。したがって、必要に応じて小片を作り、あるいは、部分的に切除した形状の生体組織補填体とすることにより、生体組織欠損部に容易に適合させることが可能となる。
【0019】
なお、上記実施形態においては、第1の補填材片2を有底低背円筒状のシャーレ状に構成したが、その形態には制限されるものではなく、他の任意の形態の容器状に形成してよい。例えば、箱状、球状に形成してもよく、また、入口において狭く絞られた形状の第1の補填材片2を採用することにしてもよい。また、生体組織欠損部の形状に合わせた任意の形態の容器状に構成してもよい。
【0020】
また、第1、第2の補填材片2,3の材料としてβ−TCPの多孔質材料を例示したが、これに限定されるものではない。また、生体組織として骨組織を例に挙げて説明したが、これに代えて、骨以外の軟骨細胞や表皮細胞、真皮細胞、角膜細胞、消化管上皮や内皮細胞、神経細胞等を対象としてもよい。
【0021】
また、生体組織補填材1としては、β−TCPに代えて、ハイドロキシアパタイトなどの他のリン酸カルシウム、コラーゲンやキチンなどの天然高分子材料、ポリ乳酸やε−カプロラクタンのような合成高分子材料、チタン合金やステンレス鋼316およびタンタル合金のような金属材料や金属繊維およびこれらの材料の少なくとも2種類以上の複合材などを採用してもよい。また、生体組織補填材1に生着させる細胞としては骨髄細胞に含まれる間葉系幹細胞の他、末梢血、臍帯血から分離した間葉系幹細胞を用いて生体組織補填体を製造することにしてもよい。また、間葉系幹細胞に代えて、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞あるいは神経細胞等を採用してもよい。また、自家細胞に限らず他家細胞でもよい。
【0022】
また、第2の補填材片3として第1の補填材片2内に充填する顆粒状の補填材片は、第1の補填材片2内の下方に下がるに従って、漸次その粒径を小さくし、あるいは、漸次その気孔率を低下させて行くことにしてもよい。このようにすることで、細胞が最初に付着する第2の補填材片3の上面においては、気孔率を高くして、生体組織形成作用を生じやすくし、下方に成長していくに従って、細胞が接触する第2の補填材片3の気孔率を低くするようにすることができる。すなわち、細胞の成長に合わせて、適正な気孔率の第2の補填材片3を細胞に提供することができる。
【0023】
また、第1の補填材片2に設ける易分割ラインとして、外面に形成した分割溝4を例に挙げて説明したが、これに代えて、内面に形成した分割溝であってもよい。また、溝に限られず、局部的に気孔率を向上させるなど、局部的に強度を低下させて割れる方向を誘導する他の任意の方法を採用してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る生体組織補填材および生体組織補填体によれば、比較的大きな生体組織補填材の内部まで十分に細胞を浸透させることができ、また、中心部まで浸透した細胞に対しても十分な栄養分の補給と老廃物の排出を可能とし、健全な成長を図ることができるので、生体組織欠損部に補填されることにより、早期に生体組織を再生して生体組織欠損部の迅速に修復することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る生体組織補填材を示す模式的な縦断面図である。
【図2】図1の生体組織補填材の底面に形成された分割溝を示す底面図である。
【符号の説明】
1 生体組織補填材
2 第1の補填材片
3 第2の補填材片
4 分割溝(易分割ライン)
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体組織補填材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨の欠損部に、骨補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
【0003】
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨を使用することが提案されている。培養されることにより骨補填材を足場にして増殖した多くの骨髄間葉系細胞を含む培養骨を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
このような培養骨は、一般に、患者から採取した骨髄細胞をフラスコ内で一次培養して必要細胞数まで増加させた後に、トリプシンのような蛋白質分解酵素を用いて細胞をフラスコから剥離する。そして、これを骨補填材に付着させて骨形成培地内に留置して二次培養を行うことにより製造される(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第30巻,第10号,p.46−49
【非特許文献2】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
骨補填材のような生体組織補填材は、一般に、顆粒状またはブロック状に形成されており、補填すべき生体組織の欠損部の大きさに適合する大きさのものが選択される。したがって、特に、補填すべき欠損部が大きい場合には、比較的大きなブロック状の生体組織補填材が使用される。
しかしながら、生体組織補填材が大きくなると、外面に播種された細胞が内部まで浸透せず、その結果、生体組織の欠損部内に補填されても、十分なリモデリングが行われない不都合が考えられる。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、比較的大きな欠損部に補填されても、細胞を健全に成長させ、均一かつ十分なリモデリングを行うことができる生体組織補填材および生体組織補填体を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、容器状の補填材片と、その内部に充填される顆粒状の補填材片とからなり、これら補填材片が、生体に適合した材料により構成されている生体組織補填材を提供する。
この発明によれば、容器状の補填材片内に顆粒状の補填材片が充填されているので、全体として比較的大きな生体組織欠損部に補填可能な比較的大きな生体組織補填材が構成される。この場合において、内部を顆粒状の補填材片により構成することで、比較的大きな生体組織補填材の内部まで十分に細胞を浸透させることが可能である。また、中心部まで浸透した細胞に対しても十分な栄養分の補給と老廃物の排出を可能とし、健全な成長を図ることが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填材において、前記容器状の補填材片と前記顆粒状の補填材片とが、気孔率の異なる多孔質材料により構成されている生体組織補填材を提供する。
この発明によれば、外部に配される容器状の補填材片の気孔率を内部の補填材片の気孔率より小さくすることで、外側に比較的硬質の生体組織を再生したい部位に補填するのに適した生体組織補填材が提供される。また、容器状の補填材片の気孔率を内部の補填材片の気孔率より大きくすることで、外部から生体組織補填材に接触する細胞が生体組織を再生し易くすることができる。すなわち、この発明によれば、再生したい生体組織に合わせて適正な生体組織補填材を簡易に提供することが可能となる。また、生体組織補填材内部における生体組織の再生方向を簡易にコントロールすることが可能となる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の生体組織補填材において、前記容器状の補填材片に、局部的に強度を低く設定した易分割ラインが設けられている生体組織補填材を提供する。
この発明によれば、内部に顆粒状の補填材片を充填した容器状の補填材片に、あるいは、該補填材に細胞を付着させて分化させた生体組織補填体に、外力を加えることで、容器状の補填材片に設けられた易分割ラインに沿って生体組織補填材あるいは生体組織補填体を簡易に分割することが可能となる。その結果、補填すべき生体組織欠損部等の大きさに合わせて生体組織補填材あるいは生体組織補填体の大きさを簡易に調整することが可能となる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体組織補填材に細胞を付着させてなる生体組織補填体を提供する。
この発明によれば、付着させた細胞を内部にまで十分に成長させることができ、全体的な生体組織形成作用を生じさせ、早期に生体組織を再生することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態に係る生体組織補填材について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織補填材1は、図1に示されるように、シャーレ状に形成された第1の補填材片2と、該第1の補填材片2の内部に充填された顆粒状の第2の補填材片3とから構成されている。第1の補填材片2および第2の補填材片3は、いずれも、例えば、β−TCPのような生体に適合した多孔質材料により構成されている。図中、第2の補填材片3は模式的に、球形に示されているが、その形状は不規則な形状であり、また大きさも揃っていなくてよい。
【0013】
各補填材片2,3を構成する多孔質材料の気孔率は、第2の補填材片3において、約30〜80%の範囲、例えば、50%となるように調整されており、第1の補填材片2においては、それよりも低い約10〜30%の範囲、例えば20%程度の気孔率を有するように調整されている。また、第1の補填材片2の厚さ寸法は十分に薄く、例えば、2〜5mm程度に形成され、第2の補填材3の外形は、その最大寸法が、1000μm〜5000μmの範囲、例えば、5000μmとなるように、十分に小さく形成されている。
【0014】
また、前記第1の補填材片2の外面には、図2に示されるように、該第1の補填材片2の厚さ寸法を局部的に薄く形成した複数の分割溝4(易分割ライン)が形成されている。これによって、分割溝4における第1の補填材片2の強度は局部的に低く設定されており、外力を加えることにより、当該分割線4に沿って割れ、容易に分割することができるようになっている。
【0015】
このように構成された本実施形態に係る生体組織補填材1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織補填材1に細胞を付着させて、所定の培地内において培養することにより、生体組織補填材1を足場として生体組織を形成した生体組織補填体を製造することができる。
【0016】
この場合に、第2の補填材片3が顆粒状に形成されているので、該第2の補填材片3に付着した細胞は、各第2の補填材片3間に形成された隙間を通して生体組織補填材1の内部まで浸透しやすく、内部においても十分に生体組織形成作用を生じさせることができる。その結果、本実施形態に係る生体組織補填材1を使用することにより、内部まで十分に細胞を成長させた比較的大きな生体組織補填体を簡易に得ることができる。
【0017】
また、このような第2の補填材片3を収容する第1の補填材片2が、第2の補填材片3よりも低い気孔率を有する多孔質材料により構成されているので、これを用いて得られる生体組織補填体は、第1の補填材片2部分、すなわち周囲において強度が高く、第2の補填材片3部分、すなわち内部においてそれよりも強度が低いものとなる。例えば、生体組織補填材1に付着させる細胞を間葉系幹細胞とし、ヘキサメタゾンのような分化誘導因子を導入して間葉系幹細胞に骨形成作用を生じさせた場合には、生体組織補填材1の各部において骨基質が形成されて骨補填体が製造されることになる。この場合に、本実施形態に係る生体組織補填材1を用いれば、外周において強度が高く内部において強度が低い骨補填体が製造されるので、従来、皮質骨を移植していた部位等への適用に適した骨補填体を製造することができる。
【0018】
また、本実施形態に係る生体組織補填材1は、複数の分割溝4を備えているので、例えば、生体組織欠損部が小さい生体組織補填材1よりも小さい場合や、生体組織欠損部の形状に生体組織補填体を適合させたい場合に、外部から力を加えることで、分割溝4に沿って容易に分割することができる。したがって、必要に応じて小片を作り、あるいは、部分的に切除した形状の生体組織補填体とすることにより、生体組織欠損部に容易に適合させることが可能となる。
【0019】
なお、上記実施形態においては、第1の補填材片2を有底低背円筒状のシャーレ状に構成したが、その形態には制限されるものではなく、他の任意の形態の容器状に形成してよい。例えば、箱状、球状に形成してもよく、また、入口において狭く絞られた形状の第1の補填材片2を採用することにしてもよい。また、生体組織欠損部の形状に合わせた任意の形態の容器状に構成してもよい。
【0020】
また、第1、第2の補填材片2,3の材料としてβ−TCPの多孔質材料を例示したが、これに限定されるものではない。また、生体組織として骨組織を例に挙げて説明したが、これに代えて、骨以外の軟骨細胞や表皮細胞、真皮細胞、角膜細胞、消化管上皮や内皮細胞、神経細胞等を対象としてもよい。
【0021】
また、生体組織補填材1としては、β−TCPに代えて、ハイドロキシアパタイトなどの他のリン酸カルシウム、コラーゲンやキチンなどの天然高分子材料、ポリ乳酸やε−カプロラクタンのような合成高分子材料、チタン合金やステンレス鋼316およびタンタル合金のような金属材料や金属繊維およびこれらの材料の少なくとも2種類以上の複合材などを採用してもよい。また、生体組織補填材1に生着させる細胞としては骨髄細胞に含まれる間葉系幹細胞の他、末梢血、臍帯血から分離した間葉系幹細胞を用いて生体組織補填体を製造することにしてもよい。また、間葉系幹細胞に代えて、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞あるいは神経細胞等を採用してもよい。また、自家細胞に限らず他家細胞でもよい。
【0022】
また、第2の補填材片3として第1の補填材片2内に充填する顆粒状の補填材片は、第1の補填材片2内の下方に下がるに従って、漸次その粒径を小さくし、あるいは、漸次その気孔率を低下させて行くことにしてもよい。このようにすることで、細胞が最初に付着する第2の補填材片3の上面においては、気孔率を高くして、生体組織形成作用を生じやすくし、下方に成長していくに従って、細胞が接触する第2の補填材片3の気孔率を低くするようにすることができる。すなわち、細胞の成長に合わせて、適正な気孔率の第2の補填材片3を細胞に提供することができる。
【0023】
また、第1の補填材片2に設ける易分割ラインとして、外面に形成した分割溝4を例に挙げて説明したが、これに代えて、内面に形成した分割溝であってもよい。また、溝に限られず、局部的に気孔率を向上させるなど、局部的に強度を低下させて割れる方向を誘導する他の任意の方法を採用してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る生体組織補填材および生体組織補填体によれば、比較的大きな生体組織補填材の内部まで十分に細胞を浸透させることができ、また、中心部まで浸透した細胞に対しても十分な栄養分の補給と老廃物の排出を可能とし、健全な成長を図ることができるので、生体組織欠損部に補填されることにより、早期に生体組織を再生して生体組織欠損部の迅速に修復することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る生体組織補填材を示す模式的な縦断面図である。
【図2】図1の生体組織補填材の底面に形成された分割溝を示す底面図である。
【符号の説明】
1 生体組織補填材
2 第1の補填材片
3 第2の補填材片
4 分割溝(易分割ライン)
Claims (4)
- 容器状の補填材片と、その内部に充填される顆粒状の補填材片とからなり、これら補填材片が、生体に適合した材料により構成されている生体組織補填材。
- 前記容器状の補填材片と前記顆粒状の補填材片とが、気孔率の異なる多孔質材料により構成されている請求項1に記載の生体組織補填材。
- 前記容器状の補填材片に、局部的に強度を低く設定した易分割ラインが設けられている請求項1または請求項2に記載の生体組織補填材。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体組織補填材に細胞を付着させてなる生体組織補填体。
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JP2003057253A JP2004261511A (ja) | 2003-03-04 | 2003-03-04 | 生体組織補填材および生体組織補填体 |
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JP2009106214A (ja) * | 2007-10-31 | 2009-05-21 | Tsuneo Takahashi | 培養軟骨製造方法および培養軟骨 |
JP2014023544A (ja) * | 2013-11-08 | 2014-02-06 | Tsuneo Takahashi | 培養軟骨製造方法および培養軟骨 |
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2003
- 2003-03-04 JP JP2003057253A patent/JP2004261511A/ja not_active Withdrawn
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