JP2004260122A - ウェーハ研削装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】砥石および砥石に接触する被研削面を実質的には乾いた状態で維持する。
【解決手段】ウェーハ10を保持する回転テーブル20と、回転テーブル20に保持されたウェーハ10の被研削面11に対面して回転自在に軸支され化学的作用のある砥石31と、ウェーハ10を清浄維持しウェーハ10を冷却する洗浄冷却媒体42を供給する給送部と、を備えたウェーハ研削装置において、化学的作用を生ずる箇所へ洗浄冷却媒体42の液が浸入することを規制する液浸入規制手段1,4を備えることによりケミカル仕上げ砥石の化学作用をする箇所へ、水を主体とする液体が侵入しないようにして、化学作用する箇所の乾燥状態を維持する。
【選択図】 図1
【解決手段】ウェーハ10を保持する回転テーブル20と、回転テーブル20に保持されたウェーハ10の被研削面11に対面して回転自在に軸支され化学的作用のある砥石31と、ウェーハ10を清浄維持しウェーハ10を冷却する洗浄冷却媒体42を供給する給送部と、を備えたウェーハ研削装置において、化学的作用を生ずる箇所へ洗浄冷却媒体42の液が浸入することを規制する液浸入規制手段1,4を備えることによりケミカル仕上げ砥石の化学作用をする箇所へ、水を主体とする液体が侵入しないようにして、化学作用する箇所の乾燥状態を維持する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェーハを精密研削加工して鏡面仕上げするウェーハ研削装置において、研削加工に伴って発生する削り屑等をウェーハの周辺、特に研削加工面および回転テーブルの平坦面から除去して清浄維持し、かつ摩擦熱が蓄積して過熱しないように冷却する洗浄冷却媒体となる洗浄冷却媒体の液を被研削面に注出しながら、化学的作用のある砥石により、鏡面仕上げ加工を行う装置に関する。
また、ミラーウェーハを作成する工程に使用できる外、デバイス作成後の裏面研削工程での裏面鏡面仕上げにも使用可能である。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来のウェーハ研削装置の要部を示す説明図であり、同図(a)はその斜視図であり、同図(b)はその概略縦断面図である。
図5に示すように、ウェーハ研削装置に洗浄冷却媒体の液供給装置が付設されている。(図示せぬ)前工程で、例えばシリコン単結晶の円柱を薄い円盤状にスライスしたウェーハ10が、回転テーブル20上に載置され、真空吸着により保持され、矢印J方向に毎分約10〜150回転で回転している。
【0003】
回転テーブル20の回転軸Cから、回転半径の長さくらい離れた位置に平行に配設された主軸ヘッドの回転軸Zに軸支された砥石ホルダ(以下、単に「ホルダ」ともいう)32に取付けられた環状またはカップ状の砥石30が、回転テーブル20上のウェーハ10に対して、充分に面接触させるため、部分的に砥石30が覆い被さるような位置関係に配設されている。
【0004】
そして、ウェーハ10の被研削面11の一部に、砥石30の下側の砥石面31が、その一部を摺接し、図示せぬモータにより矢印K方向に回転する。
【0005】
また、被研削面11と砥石面31を適宜に摺接させるため、またウェーハ10が回転テーブル20上で研削工程の進捗に合わせて間欠的に載置・吸着・保持・離脱されるように、回転テーブル20と主軸ヘッドのスピンドルの下端面に固定された砥石30の少なくとも何れか一方は、その軸方向に昇降可能な昇降機構(図示せず)がある。
【0006】
すなわち回転テーブル20のテーブル面と砥石面31の間隔を大きく広げて、前記テーブル面と砥石面31の間に、ウェーハ10を挿入するようにセットしてから、隙間を閉じて所定の切り込みを与え、押圧力を静かに加えながら研削加工する。なお、回転テーブル20と砥石30のそれぞれの回転制御も適宜になされる。
【0007】
このとき、給送部40から給送管41を介し、少量の洗浄冷却媒体42の液が、ウェーハ10の被研削面11と砥石面31に向かって供給される。この洗浄冷却媒体42の液によって砥石30の砥石面31を湿潤させながら、被研削面11の研削が行われる。
従来、被研削面11を鏡面仕上げする場合、研削加工後にポリッシングやエッチングを行っていた。しかし、ポリッシングやエッチングは時間がかかり、ポリッシングスラリー、ポリッシングパッドおよびエッチャントといった消耗品が高価なため、コストアップの原因となる上、環境への負担が大きいという欠点があった。
【0008】
近年の、半導体大容量メモリ、ICカード、半導体大容量メモリを備えた高速処理可能なパソコン等に内蔵される超小型ICになる25μmの極薄のウェーハ10を研削加工するウェーハ研削装置には、品質管理上、塵埃の付着を防止し、被研削面11を清浄にして適温に維持することが必須の要件である。この要件はウェーハ10の極薄化が進む程に高度で厳密な管理を要求される。
【0009】
特に、鏡面仕上げにおいては、ウェーハの研磨面に生じたストレス、マイクロクラック等をエッチング手段で除去できるようにしたものがあった(例えば特許文献1)。詳しくは、ウェーハの面を研磨する研磨装置であって、この研磨装置はウェーハの面を砥石によって研磨する研磨手段と、ウェーハの研磨面に生じたストレス、マイクロクラック等をエッチング液によってエッチング除去するエッチング手段と、を少なくとも含む研磨装置である。
【0010】
この種のエッチング機能付き研磨装置として、従来からポリッシングやエッチングの加工法がある。その代替に、例えばシリカ等の軟質砥粒を固定砥粒とした化学的作用のある砥石が開発され、砥石による鏡面仕上げ加工が試みられている。
これは、軟質砥粒と被加工物との接触点に生ずるメカノケミカル現象(すなわち加えられた機械エネルギーにより誘起される化学反応)を利用して、極微小単位の表面研磨を行うものである。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−223680号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような化学的作用のある砥石を用いて研削する場合、研削加工に伴って発生する微細な削り屑や、脱落した砥粒が直接ウェーハに吸着されること、融着が生じること、あるいは、空中に飛散し、空中から降りてくる塵埃がウェーハに付着することがありえる。これらを除去して清浄に保つ機能と、研削に伴う摩擦熱を除去する冷却機能を兼ね備えた洗浄冷却媒体として優れた物性を有する純水等を洗浄冷却媒体42の液に用いて、砥石30および被研削面11を洗い流しながら研削加工する方法もあるが、水で流せば砥石面31は当然に濡れる。
【0014】
このように、砥石30に直接洗浄冷却媒体42の液がかかったり、濡れた被研削面11が砥石30に接触すると、砥石面31が当然に濡れ、湿潤した砥石面31が適温から下がり過ぎて、メカノケミカル現象が阻害され、鏡面仕上げの効果が弱められる。これを防止するには、砥石30および砥石30に接触するウェーハ10の被研削面11を実質的に乾いた状態で維持することが望まれる。すなわち、メカノケミカル現象の維持には、該当部分を乾いた状態に保つことが必要であり、洗浄冷却媒体42の液で洗浄冷却することに対して二律背反するという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、純水等の洗浄冷却媒体を用いて、被研削面11を清浄に保ちながら冷却し、しかも、砥石30による鏡面仕上げの効果が低減されないように、砥石30および砥石30に接触するウェーハ10の被研削面11を実質的に乾いた状態で維持できるようにしたウェーハ研削装置を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ウェーハを吸着保持する回転テーブルと、前記回転テーブルに保持された前記ウェーハの被研削面に対面して回転自在に軸支され化学的作用のある砥石と、前記ウェーハを清浄維持し冷却する洗浄冷却媒体を供給する給送部と、を備えたウェーハ研削装置において、前記化学的作用を生ずる箇所へ前記洗浄冷却媒体の液が浸入することを規制する液浸入規制手段を備えたことを特徴とするウェーハ研削装置である。
【0017】
請求項1に係る発明によれば、前記ウェーハの被研削面におけるメカノケミカル仕上げ砥石の化学的作用を妨げる原因となる水濡れを阻止する液浸入規制手段が奏効するので、鏡面仕上げの効率を低下させない。すなわち、水を主体とする液体が、化学的作用する箇所へ浸入しないように、化学的作用する箇所の乾燥状態を維持することができる。
【0018】
一方、研削に伴って発生する削り屑は、給送部により供給または循環される洗浄冷却媒体により洗浄され、前記被研削面を清浄維持し、同時に前記ウェーハも冷却され、製品の品質と加工効率を確保し、砥石の磨耗を低減できる。
例えば、所定段階の加工済み面を保護するために被覆しているUVテープ等が、過熱することにより望まない変質する害、あるいは接着剤の残滓等による害の外、UVテープ等が剥離現象を起こすことによる品質劣化も避けられる。
【0019】
前記UVテープとは、強力な粘着力を備える一方、紫外線(UV)を照射すると粘着力が急激に弱くなる性質を持った粘着テープをいう。ウェーハの加工において、この性質が活用されている。ウェーハのダイシング加工中には強力な粘着力でウェーハを確実に固定し、加工終了後にはUV照射により粘着力を弱め、剥離を容易にし、この特性により、半導体デバイス製造の品質向上・コストダウンを可能とするものである。
【0020】
このような理由で、前記洗浄冷却媒体の液が、化学的作用する箇所へ浸入することを阻止する液浸入規制手段を備えたことにより、前記化学的作用を阻害する事なく前記ウェーハを清浄を維持し冷却できる。
【0021】
請求項2に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の外周面に周設された防水スカートと、前記防水スカートの外周より外側のみに前記洗浄冷却媒体を注出するノズルと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ研削装置である。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、前記防水スカートにより、化学的作用する箇所へ前記洗浄冷却媒体の液体成分が浸入することを遮断できる。
【0023】
請求項3に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の回転に伴って前記砥石の回転中心から外向きの流体排出力を発生する渦巻き模様の溝を、砥石面に刻設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ研削装置である。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、前記砥石と共に前記渦巻き状の渦巻き模様が回転して、中心から外向き方向の力が発生する例えばロータリーポンプの原理に基づく流体排出力により、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等を洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体の液は、周辺の空気と共に前記砥石の外縁より外側に吹き飛ばされる。そのため、前記洗浄冷却媒体の液は、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤することなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0025】
請求項4に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の回転中心から外向きに空気を吹き出す送風手段を配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等は、前記送風手段により前記砥石の回転軸の近傍から外周へ向かう方向に吹き飛ばされるので、清浄を維持し冷却できる。また、前記送風手段の冷却機能に不足があれば、前記洗浄冷却媒体による強力な冷却機能により、必要十分な冷却を確保し、かつ前記化学的作用する箇所への前記洗浄冷却媒体の液の浸入を遮断できる。
【0027】
請求項5に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の周辺部から液体を吸引し除去する吸引手段を配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体の液は、周辺の空気と共に、前記吸引手段により前記砥石の周辺部から、吸引され除去されるので、清浄を維持し冷却できる。しかも、前記化学的作用する箇所へ前記洗浄冷却媒体の液が浸入し浸潤させる以前に吸引してしまうことができる。
【0029】
請求項6に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記洗浄冷却媒体の液を必要最小量に限定して噴霧するノズルを備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0030】
請求項6に係る発明によれば、必要最小量の前記洗浄冷却媒体の液に限定しても、ノズルから対象箇所に、まんべんなく噴霧する噴霧作用により前記ウェーハを効率良く清浄維持し冷却することが可能であり、前記洗浄冷却媒体の液を供給する給送部を小規模にして小型軽量化し、設備費と運転経費の両面から経費節減できる。また、濡らし過ぎない程度の少量に限定して前記洗浄冷却媒体を対象箇所に噴霧できる。
【0031】
請求項7に係る発明は、前記防水スカートの材料として、発泡ウレタンまたは発泡PVAのスポンジを用いたことを特徴とする請求項2に記載のウェーハ研削装置であり、例えばPVA(Poly Vinyl Alcohol)系耐水性樹脂等による発泡スポンジは、柔軟性と強靭性を併せ持つ材料なので、その発泡スポンジで前記防水スカートを形成すれば、前記防水スカートの裾(すそ)が前記ウェーハの前記被研削面に摺動しながらも密接でき、前記防水スカートの外側に注出された前記洗浄冷却媒体の液が、前記防水スカートの内側にまで浸入することを阻止できる。
【0032】
請求項7に係る発明によれば、前記ウェーハを洗浄冷却することと前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することを両立できる。また、発泡ウレタンや発泡PVAのスポンジは、柔軟性を持つ材料なので、前記被研削面に密着しながら摺動しても前記被研削面を傷付けない。
【0033】
請求項8に係る発明は、前記洗浄冷却媒体は純水であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置としたので、高い洗浄冷却効果を得られる。
【0034】
請求項9に係る発明は、前記洗浄冷却媒体は純水を噴霧化したミストであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置としたので、高い洗浄冷却効果を得られて、前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することと両立できる。
【0035】
請求項10に係る発明は、前記砥石は固定砥粒としてシリカを用いてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0036】
請求項11に係る発明は、前記砥石は砥粒結合体としてPVA(ポリビニルアルコール)を用いてなることを特徴とする請求項10に記載のウェーハ研削装置である。
【0037】
請求項10および請求項11に係る発明によれば、鏡面仕上げを進める砥石の化学的作用を効率良く発揮する。しかも、砥石のシリカを取り巻くPVAの吸水性の働きにより、シリカ自体を濡らすことが極力防止でき、鏡面仕上げの効果が洗浄冷却媒体の液で弱められることもなく、化学的作用が阻害されずに済む。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明による実施の形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態を示すウェーハ研削装置の要部断面図であり、メカノケミカル仕上げ砥石(以下、単に「砥石」ともいう)の外周面34に防水スカート1を周接し、砥石の内周面37に補助スカート4を配設したものである。
なお、図ではスカート1または補助スカート4と、砥石面31との間に隙間はないが、隙間が明いていても構わない。
【0039】
ここでは、例えば#325の粗砥石、#1000の中仕上げ砥石、#20000の仕上げ砥石等による物理的研削を経た後の、メカノケミカル砥石による鏡面仕上げの段階に関する説明をする。
なお、実施例として、アイオン(株)のベルイーターY(R)またはアイオン(株)のウェットロン(R)を使用した。
【0040】
最終完成段階に近づいたウェーハ10の被研削面11は、メカノケミカル現象を伴う砥石の化学的作用により、高品位の鏡面に仕上げる。また、研削加工に伴って発生する削り屑6(図2参照)の他、空中から降りてくる塵埃を除去して清浄に保つ洗浄機能と、摩擦熱を冷却する冷却機能を兼ね備えた洗浄冷却媒体として優れた物性を有する純水をまたは純水を成分にしたミスト42を用いて、被研削面11を洗い流しながら研削加工する。
なお、図では砥石の外周面34にミスト42をかけているが、砥石の内周面37から補助スカート4に向かってミスト42をかけるような構成でも構わない。
【0041】
このとき、洗浄冷却媒体42の液体成分により被研削面11が濡れた状態で砥石30に接触した場合、砥石30の砥石面31も洗浄冷却媒体42の液体成分で湿潤して低温化することになり、前記化学的作用が進まなくなるような弊害を生じる。これを避けられるように、ウェーハ10の被研削面11を実質的に乾いた状態に維持することが望ましい。
【0042】
ウェーハ10の被研削面11の一部にシリカを固定砥粒とした化学的作用のある砥石30が、その砥石面31の一部を摺接し、最終完成段階に近づいたウェーハ10の被研削面11を、高品位の鏡面に仕上げる。
【0043】
また、砥石30は砥粒結合体としてPVA(ポリビニルアルコール)を用い、その親水性、吸水性、柔軟性を生かした砥石構造となっている。
【0044】
図1において、異なる2軸Z,Cでそれぞれ回転自在に軸支された回転体の一方がウェーハ、他方が砥石であり、ウェーハの被研削面をまんべんなく精密に研削する。一方のウェーハ10は、回転テーブル20上に載置され、真空吸着により保持され、矢印J方向に毎分約10〜150回転で回転している。他方のホルダ32の下面に貼着等により一体的に配設された環状の砥石30の周縁を、隙間なく取り囲むように防水スカート1が周設され、防水スカート1の外周から内周の方向に対しては、洗浄冷却媒体42の液が浸入することを規制し、液浸入規制手段を構成している。
【0045】
また、被研削面11のうち、防水スカート1の外周より外側のみに純水を成分にしたミスト42を注出する噴霧ノズル2が配設されている。噴霧ノズル2から噴出された洗浄冷却媒体42の液は、研削工程に伴って発生する摩擦熱を除去しながら、ウェーハ10の被研削面11に発生した削り屑6(図2参照)を洗浄する。ここで、純水は、洗浄冷却するのに必要最小量に限定して噴霧ノズル2からミスト42となって噴霧される。
【0046】
噴霧ノズル2から注出されたミスト42は、防水スカート1の外周より外側のみに噴霧され、防水スカート1の環状の内側まではミスト42を浸入させない。従って、砥石30によるメカノケミカル現象等の化学的作用を洗浄冷却媒体の液で阻害されずに研削できるため、高品位の鏡面仕上げが効率良くできる。
【0047】
防水スカート1の材料として、本実施形態では、柔軟性と強靭性を併せ持つ材料である発泡ウレタンや発泡PVAスポンジを用いている。このように、柔軟性をもつ防水スカート1の裾(すそ)がウェーハ10の被研削面11に傷付けることなく摺動しながらも、密接できるので、防水スカート1の外側に注出されたミスト42が、防水スカート1の内側にまで浸入することを確実に阻止できる。
【0048】
なお、発泡ウレタンや発泡PVAスポンジは、柔軟性を持つ材料なので、被研削面11に密着しながら摺動しても被研削面11を傷付けない。
【0049】
また、砥石30の内周面37には防水スカート1と同一の材料により、補助スカート4を配設し、吸水層を構成している。後述するように、砥石30の外周に周設された防水スカート1により、外周側から内周側へミスト42の液体成分が浸入することを規制されているので、砥石30の内周側は実質的には乾いている。
【0050】
しかし、防水スカート1の裾(すそ)の下を通過して、濡らしたくない箇所まで、わずかに浸入した洗浄冷却媒体42の液があれば、スポンジ状の吸水層を形成する補助スカート4で、拭い取ることにより、防水スカート1の液浸入規制効果を補完できる。
なお、防水スカート1および補助スカート4の材料は、発泡ウレタンや発泡PVAスポンジに限定する必要もなく、材料技術の進歩に応じて、適宜に選定しても構わない。
【0051】
また、防水スカート1があれば、液浸入規制手段としての効果は確実であるが、防水スカート1がなくとも、洗浄冷却するのに純水を必要最小量に限定し、ミスト状にして注出していることにより、液浸入規制手段としての目的に沿った効果が得られる。すなわち、ウェーハ10を清浄維持し冷却するために最小限のミストを霧吹きすることだけでも、化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することを両立できるのである。
【0052】
図5を示して説明したように、給送部40は、給送管41から純水を、洗浄冷却の必要な箇所に供給する。すなわち、研削加工中の被研削面11で、砥石30の外周から所定の間隔をおいた位置に、ミスト42を供給または純水をそのまま流出する。その際にメカノケミカル現象等の化学的作用を阻害しないように、ミスト42または純水は必要最小限の分量に止める。当然に給送部40は、小型軽量にして設備費用と運転費用を軽減できる。
【0053】
このように、洗浄冷却媒体となる純水やミストの液成分が砥石30に直接かかることなく、砥石30から離れた被研削面11に対して、ウェーハ10の研削加工に伴って発生する削り屑6の他、空中から降りてくる塵埃等をウェーハ10の表面および周辺から除去し、かつ蓄積する摩擦熱を冷却し、防護用のUVテープが過熱により剥離することを防止できるので、ウェーハ10の鏡面が品質劣化することを防止できる外、砥石30の磨耗を阻止する効果もある。
【0054】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態を示し、渦巻き模様3を刻設したメカノケミカル仕上げ砥石の砥石面33を示す平面図である。渦巻き模様3は、請求項3でいう「前記液浸入規制手段として、砥石30の回転に伴って砥石30の回転中心から外向きの排出力を発生する渦巻き模様3の溝5を、砥石面33に刻設した」ものである。
【0055】
図2から読み取れるように、K方向に砥石30が回転すれば、渦巻き模様3の溝5は渦巻きが外周方向へと広がるように、砥石30の回転中心から外向きのロータリーポンプのような流体排出力を発生し、洗浄冷却媒体42の液は砥石30に直接かかることなく、砥石30から遠ざかる。このとき、砥石30の近辺に発生した削り屑6も吹き飛ばされるので、被研削面11を清浄維持できる。
【0056】
このように、ロータリーポンプの原理に基づき、砥石30と共に渦巻き模様が回転して発生する中心から外向き方向の流体排出力により、研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して被研削面11(図1参照)に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した洗浄冷却媒体42は、周辺の空気と共に砥石30の外縁より外側に吹き飛ばされる。そのため、洗浄冷却媒体42の液体成分が、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤することなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0057】
[第3の実施形態]
図3は、第3の実施形態を示し、砥石ホルダ32の回転軸Zの近傍に根元が配管接続され、当該配管の末端開口部は、砥石30の内周から外周方向に空気を吹き出す送風手段を構成するように、送風通路7を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。送風通路7は図示せぬ空気圧縮機から圧縮空気の供給を受け、砥石30の回転中心から外向きの気流を発生させる。すなわち、送風手段を構成している。そのため、前記化学的作用する箇所へ浸入しようとする洗浄冷却媒体42の液体成分は、砥石30の外周の外方向へと、送風圧力により押し戻される。従って、当該箇所を洗浄冷却媒体42の液が濡らすことなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0058】
ここで、前述の送風手段に併せて、図2で説明した渦巻き模様3の溝5が回転することによる排出作用を加え、濡らしたくない箇所に、空気の吹きつけの外、吸引を併用すれば、実質的に乾いた状態を維持する条件を設定し難い場合でも、例えば、鏡面仕上げの程度が最終段階より手前で、被研削面11に傷が多くて、砥石面31との間に流体の浸入する隙間のある場合も、前記化学的作用する箇所を濡らそうとする洗浄冷却媒体42の液体成分を、送風により吹き飛ばし、実質的に乾いた状態を容易に維持できる。
【0059】
[第4の実施形態]
図4は、第4の実施形態を示し、砥石ホルダ32の回転軸Zの近傍に根元が配管接続され、当該配管の末端開口部は、砥石30の周辺部35,36から液体成分を吸引し除去する吸引手段を構成するようにバキューム通路8,9を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。
研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して被研削面11に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した洗浄冷却媒体42の液は、砥石30の周辺の空気と共に、砥石30の周辺部35,36から、バキューム通路8,9へと吸引される。従って、洗浄冷却媒体42の液が、被研削面11を清浄維持し冷却しながらも、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤する以前に吸引されてしまうので、化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持できる。
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、洗浄冷却媒体として優れた純水を成分とするミスト42を用いて、被研削面11を清浄に保ちながら効率的に冷却し、しかも、鏡面仕上げを進める砥石30の化学的作用による鏡面仕上げの効果がミスト42の液で阻害されないように、液成分の浸入を防止して、砥石30に接触する被研削面11は実質的に乾いた状態を維持できる。
従って、砥石30にメカノケミカル現象による、化学反応を起こすのに十分な温度を維持しながら、被研削面11の洗浄冷却も効率良くできる。
【0061】
また、砥石30のシリカを取り巻くPVAの吸水性の働きにより、シリカ自体を濡らすことが極力防止でき、高いメカノケミカル効果を持続できる。
【0062】
なお、本発明は、その技術思想の範囲内で種々の改良が可能であり、前述した実施の一形態の他にも多様な実施形態が考えられる。それらにおいて、鏡面仕上げを進める砥石30の化学的作用による鏡面仕上げの効果が洗浄冷却媒体で弱められないように、砥石30を極力濡らさず、また、砥石30に接触する被研削面11を実質的に乾いた状態で維持するため、被研削面11が濡れないように、前記化学的作用を生ずる箇所へ洗浄冷却媒体の液が浸入することを規制する液浸入規制手段を配設した場合、全て本発明に属することは当然である。
【0063】
そして、洗浄冷却媒体はミストでなく、純水または他の液体をそのままかけても良く、さらに、砥石はカップ状のものに限らず、円盤状の下面全面を砥石面としたものでも構わない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように構成したので、請求項1に係る発明によれば、前記ウェーハの被研削面におけるメカノケミカル仕上げ砥石の化学的作用を妨げる原因となる水濡れを阻止する液浸入規制手段が奏効するので、鏡面仕上げの効率を低下させない。すなわち、水を主体とする液体が、化学的作用する箇所へ浸入しないように、化学的作用する箇所の乾燥状態を維持することができる。
【0065】
一方、研削に伴って発生する削り屑6は、給送部40により供給または循環される洗浄冷却媒体42により洗浄され、前記被研削面を清浄維持し、同時に前記ウェーハ10も冷却され、製品の品質と加工効率を確保し、砥石の磨耗を低減できる。
【0066】
例えば、所定段階の加工済み面を保護するために被覆しているUVテープ等が、過熱することにより望まない変質する害、あるいは接着剤の残滓等による害の外、UVテープ等が剥離現象を起こすことによる品質劣化も避けられる。
【0067】
このような理由で、洗浄冷却媒体42の液が、化学的作用する箇所へ浸入することを阻止する液浸入規制手段を備えたことにより、化学的作用を阻害する事なくウェーハ10を清浄維持し冷却できる。
【0068】
請求項2に係る発明によれば、防水スカート1により、化学的作用する箇所へ洗浄冷却媒体42の液が浸入することを遮断できる。
【0069】
請求項3に係る発明によれば、前記砥石と共に前記渦巻き状の渦巻き模様が回転して、中心から外向き方向の力が発生する例えばロータリーポンプの原理に基づく流体排出力により、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等を洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体の液は、周辺の空気と共に前記砥石の外縁より外側に吹き飛ばされる。そのため、前記洗浄冷却媒体の液は、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤することなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0070】
請求項4に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して被研削面11に付着する塵埃等は、送風手段7により砥石30の回転軸Zの近傍から外周へ向かう方向に吹き飛ばされるので、清浄を維持し冷却できる。また、送風手段7の冷却機能に不足があれば、洗浄冷却媒体42による強力な冷却機能により、必要十分な冷却を確保し、かつ前記化学的作用する箇所への洗浄冷却媒体42の液の浸入を遮断できる。
【0071】
請求項5に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して前記被研削面11に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体42の液は、周辺の空気と共に、液吸引手段、すなわちバキューム通路8,9により砥石30の周辺部35,36から、吸引され除去されるので、清浄を維持し冷却できる。しかも、前記化学的作用する箇所へ洗浄冷却媒体42の液が浸入し浸潤させる以前に吸引してしまうことができる。
【0072】
請求項6に係る発明によれば、必要最小量の洗浄冷却媒体42の液に限定しても、ノズル2から対象箇所に、まんべんなく噴霧する噴霧作用によりウェーハ10を効率良く清浄維持し冷却することが可能であり、洗浄冷却媒体42の液を供給する給送部40を小規模にして小型軽量化し、設備費と運転経費の両面から経費節減できる。また、濡らし過ぎない程度の少量に限定して前記洗浄冷却媒体を対象箇所に噴霧できる。
【0073】
請求項7に係る発明によれば、ウェーハ10を洗浄冷却することと前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することを両立できる。また、発泡ウレタンまたは発泡PVAのスポンジは、柔軟性を持つ材料なので、被研削面11に密着しながら摺動しても被研削面11を傷付けない。
【0074】
請求項9に係る発明によれば、高い洗浄冷却効果を得られて、前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することと両立できる。
【0075】
請求項10および請求項11に係る発明によれば、鏡面仕上げを進める砥石の化学的作用を効率良く発揮する。しかも、砥石のシリカを取り巻くPVAの吸水性の働きにより、シリカ自体を濡らすことが極力防止でき、鏡面仕上げの効果が洗浄冷却媒体の液で弱められることもなく、化学的作用が阻害されずに済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すウェーハ研削装置の要部断面図であり、メカノケミカル仕上げ砥石の外周側に防水スカートを、内周側に補助スカートを配設したものである。
【図2】本発明の第2の実施形態を示し、渦巻き模様の溝を刻設したメカノケミカル仕上げ砥石の砥石面を示す平面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態を示し、砥石の内周から外周方向に空気を吹き出す送風通路を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態を示し、砥石の周辺部から液を吸引し除去するバキューム通路を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。
【図5】従来のウェーハ研削装置の要部を示す説明図であり、同図(a)はその斜視図、同図(b)はその概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 防水スカート
2 噴霧ノズル
3 渦巻き模様
4 補助スカート
5 溝
6 削り屑
7 送風通路
8,9 バキューム通路
10 ウェーハ
11 被研削面
20 回転テーブル
30 砥石
31,33 砥石面
32 (砥石)ホルダ
34 砥石の外周面
35,36 砥石の周辺部
37 砥石の内周面
40 給送部
41 給送管
42 洗浄冷却媒体としてのミスト
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェーハを精密研削加工して鏡面仕上げするウェーハ研削装置において、研削加工に伴って発生する削り屑等をウェーハの周辺、特に研削加工面および回転テーブルの平坦面から除去して清浄維持し、かつ摩擦熱が蓄積して過熱しないように冷却する洗浄冷却媒体となる洗浄冷却媒体の液を被研削面に注出しながら、化学的作用のある砥石により、鏡面仕上げ加工を行う装置に関する。
また、ミラーウェーハを作成する工程に使用できる外、デバイス作成後の裏面研削工程での裏面鏡面仕上げにも使用可能である。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来のウェーハ研削装置の要部を示す説明図であり、同図(a)はその斜視図であり、同図(b)はその概略縦断面図である。
図5に示すように、ウェーハ研削装置に洗浄冷却媒体の液供給装置が付設されている。(図示せぬ)前工程で、例えばシリコン単結晶の円柱を薄い円盤状にスライスしたウェーハ10が、回転テーブル20上に載置され、真空吸着により保持され、矢印J方向に毎分約10〜150回転で回転している。
【0003】
回転テーブル20の回転軸Cから、回転半径の長さくらい離れた位置に平行に配設された主軸ヘッドの回転軸Zに軸支された砥石ホルダ(以下、単に「ホルダ」ともいう)32に取付けられた環状またはカップ状の砥石30が、回転テーブル20上のウェーハ10に対して、充分に面接触させるため、部分的に砥石30が覆い被さるような位置関係に配設されている。
【0004】
そして、ウェーハ10の被研削面11の一部に、砥石30の下側の砥石面31が、その一部を摺接し、図示せぬモータにより矢印K方向に回転する。
【0005】
また、被研削面11と砥石面31を適宜に摺接させるため、またウェーハ10が回転テーブル20上で研削工程の進捗に合わせて間欠的に載置・吸着・保持・離脱されるように、回転テーブル20と主軸ヘッドのスピンドルの下端面に固定された砥石30の少なくとも何れか一方は、その軸方向に昇降可能な昇降機構(図示せず)がある。
【0006】
すなわち回転テーブル20のテーブル面と砥石面31の間隔を大きく広げて、前記テーブル面と砥石面31の間に、ウェーハ10を挿入するようにセットしてから、隙間を閉じて所定の切り込みを与え、押圧力を静かに加えながら研削加工する。なお、回転テーブル20と砥石30のそれぞれの回転制御も適宜になされる。
【0007】
このとき、給送部40から給送管41を介し、少量の洗浄冷却媒体42の液が、ウェーハ10の被研削面11と砥石面31に向かって供給される。この洗浄冷却媒体42の液によって砥石30の砥石面31を湿潤させながら、被研削面11の研削が行われる。
従来、被研削面11を鏡面仕上げする場合、研削加工後にポリッシングやエッチングを行っていた。しかし、ポリッシングやエッチングは時間がかかり、ポリッシングスラリー、ポリッシングパッドおよびエッチャントといった消耗品が高価なため、コストアップの原因となる上、環境への負担が大きいという欠点があった。
【0008】
近年の、半導体大容量メモリ、ICカード、半導体大容量メモリを備えた高速処理可能なパソコン等に内蔵される超小型ICになる25μmの極薄のウェーハ10を研削加工するウェーハ研削装置には、品質管理上、塵埃の付着を防止し、被研削面11を清浄にして適温に維持することが必須の要件である。この要件はウェーハ10の極薄化が進む程に高度で厳密な管理を要求される。
【0009】
特に、鏡面仕上げにおいては、ウェーハの研磨面に生じたストレス、マイクロクラック等をエッチング手段で除去できるようにしたものがあった(例えば特許文献1)。詳しくは、ウェーハの面を研磨する研磨装置であって、この研磨装置はウェーハの面を砥石によって研磨する研磨手段と、ウェーハの研磨面に生じたストレス、マイクロクラック等をエッチング液によってエッチング除去するエッチング手段と、を少なくとも含む研磨装置である。
【0010】
この種のエッチング機能付き研磨装置として、従来からポリッシングやエッチングの加工法がある。その代替に、例えばシリカ等の軟質砥粒を固定砥粒とした化学的作用のある砥石が開発され、砥石による鏡面仕上げ加工が試みられている。
これは、軟質砥粒と被加工物との接触点に生ずるメカノケミカル現象(すなわち加えられた機械エネルギーにより誘起される化学反応)を利用して、極微小単位の表面研磨を行うものである。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−223680号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような化学的作用のある砥石を用いて研削する場合、研削加工に伴って発生する微細な削り屑や、脱落した砥粒が直接ウェーハに吸着されること、融着が生じること、あるいは、空中に飛散し、空中から降りてくる塵埃がウェーハに付着することがありえる。これらを除去して清浄に保つ機能と、研削に伴う摩擦熱を除去する冷却機能を兼ね備えた洗浄冷却媒体として優れた物性を有する純水等を洗浄冷却媒体42の液に用いて、砥石30および被研削面11を洗い流しながら研削加工する方法もあるが、水で流せば砥石面31は当然に濡れる。
【0014】
このように、砥石30に直接洗浄冷却媒体42の液がかかったり、濡れた被研削面11が砥石30に接触すると、砥石面31が当然に濡れ、湿潤した砥石面31が適温から下がり過ぎて、メカノケミカル現象が阻害され、鏡面仕上げの効果が弱められる。これを防止するには、砥石30および砥石30に接触するウェーハ10の被研削面11を実質的に乾いた状態で維持することが望まれる。すなわち、メカノケミカル現象の維持には、該当部分を乾いた状態に保つことが必要であり、洗浄冷却媒体42の液で洗浄冷却することに対して二律背反するという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、純水等の洗浄冷却媒体を用いて、被研削面11を清浄に保ちながら冷却し、しかも、砥石30による鏡面仕上げの効果が低減されないように、砥石30および砥石30に接触するウェーハ10の被研削面11を実質的に乾いた状態で維持できるようにしたウェーハ研削装置を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ウェーハを吸着保持する回転テーブルと、前記回転テーブルに保持された前記ウェーハの被研削面に対面して回転自在に軸支され化学的作用のある砥石と、前記ウェーハを清浄維持し冷却する洗浄冷却媒体を供給する給送部と、を備えたウェーハ研削装置において、前記化学的作用を生ずる箇所へ前記洗浄冷却媒体の液が浸入することを規制する液浸入規制手段を備えたことを特徴とするウェーハ研削装置である。
【0017】
請求項1に係る発明によれば、前記ウェーハの被研削面におけるメカノケミカル仕上げ砥石の化学的作用を妨げる原因となる水濡れを阻止する液浸入規制手段が奏効するので、鏡面仕上げの効率を低下させない。すなわち、水を主体とする液体が、化学的作用する箇所へ浸入しないように、化学的作用する箇所の乾燥状態を維持することができる。
【0018】
一方、研削に伴って発生する削り屑は、給送部により供給または循環される洗浄冷却媒体により洗浄され、前記被研削面を清浄維持し、同時に前記ウェーハも冷却され、製品の品質と加工効率を確保し、砥石の磨耗を低減できる。
例えば、所定段階の加工済み面を保護するために被覆しているUVテープ等が、過熱することにより望まない変質する害、あるいは接着剤の残滓等による害の外、UVテープ等が剥離現象を起こすことによる品質劣化も避けられる。
【0019】
前記UVテープとは、強力な粘着力を備える一方、紫外線(UV)を照射すると粘着力が急激に弱くなる性質を持った粘着テープをいう。ウェーハの加工において、この性質が活用されている。ウェーハのダイシング加工中には強力な粘着力でウェーハを確実に固定し、加工終了後にはUV照射により粘着力を弱め、剥離を容易にし、この特性により、半導体デバイス製造の品質向上・コストダウンを可能とするものである。
【0020】
このような理由で、前記洗浄冷却媒体の液が、化学的作用する箇所へ浸入することを阻止する液浸入規制手段を備えたことにより、前記化学的作用を阻害する事なく前記ウェーハを清浄を維持し冷却できる。
【0021】
請求項2に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の外周面に周設された防水スカートと、前記防水スカートの外周より外側のみに前記洗浄冷却媒体を注出するノズルと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ研削装置である。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、前記防水スカートにより、化学的作用する箇所へ前記洗浄冷却媒体の液体成分が浸入することを遮断できる。
【0023】
請求項3に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の回転に伴って前記砥石の回転中心から外向きの流体排出力を発生する渦巻き模様の溝を、砥石面に刻設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ研削装置である。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、前記砥石と共に前記渦巻き状の渦巻き模様が回転して、中心から外向き方向の力が発生する例えばロータリーポンプの原理に基づく流体排出力により、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等を洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体の液は、周辺の空気と共に前記砥石の外縁より外側に吹き飛ばされる。そのため、前記洗浄冷却媒体の液は、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤することなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0025】
請求項4に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の回転中心から外向きに空気を吹き出す送風手段を配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等は、前記送風手段により前記砥石の回転軸の近傍から外周へ向かう方向に吹き飛ばされるので、清浄を維持し冷却できる。また、前記送風手段の冷却機能に不足があれば、前記洗浄冷却媒体による強力な冷却機能により、必要十分な冷却を確保し、かつ前記化学的作用する箇所への前記洗浄冷却媒体の液の浸入を遮断できる。
【0027】
請求項5に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記砥石の周辺部から液体を吸引し除去する吸引手段を配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体の液は、周辺の空気と共に、前記吸引手段により前記砥石の周辺部から、吸引され除去されるので、清浄を維持し冷却できる。しかも、前記化学的作用する箇所へ前記洗浄冷却媒体の液が浸入し浸潤させる以前に吸引してしまうことができる。
【0029】
請求項6に係る発明は、前記液浸入規制手段として、前記洗浄冷却媒体の液を必要最小量に限定して噴霧するノズルを備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0030】
請求項6に係る発明によれば、必要最小量の前記洗浄冷却媒体の液に限定しても、ノズルから対象箇所に、まんべんなく噴霧する噴霧作用により前記ウェーハを効率良く清浄維持し冷却することが可能であり、前記洗浄冷却媒体の液を供給する給送部を小規模にして小型軽量化し、設備費と運転経費の両面から経費節減できる。また、濡らし過ぎない程度の少量に限定して前記洗浄冷却媒体を対象箇所に噴霧できる。
【0031】
請求項7に係る発明は、前記防水スカートの材料として、発泡ウレタンまたは発泡PVAのスポンジを用いたことを特徴とする請求項2に記載のウェーハ研削装置であり、例えばPVA(Poly Vinyl Alcohol)系耐水性樹脂等による発泡スポンジは、柔軟性と強靭性を併せ持つ材料なので、その発泡スポンジで前記防水スカートを形成すれば、前記防水スカートの裾(すそ)が前記ウェーハの前記被研削面に摺動しながらも密接でき、前記防水スカートの外側に注出された前記洗浄冷却媒体の液が、前記防水スカートの内側にまで浸入することを阻止できる。
【0032】
請求項7に係る発明によれば、前記ウェーハを洗浄冷却することと前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することを両立できる。また、発泡ウレタンや発泡PVAのスポンジは、柔軟性を持つ材料なので、前記被研削面に密着しながら摺動しても前記被研削面を傷付けない。
【0033】
請求項8に係る発明は、前記洗浄冷却媒体は純水であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置としたので、高い洗浄冷却効果を得られる。
【0034】
請求項9に係る発明は、前記洗浄冷却媒体は純水を噴霧化したミストであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置としたので、高い洗浄冷却効果を得られて、前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することと両立できる。
【0035】
請求項10に係る発明は、前記砥石は固定砥粒としてシリカを用いてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置である。
【0036】
請求項11に係る発明は、前記砥石は砥粒結合体としてPVA(ポリビニルアルコール)を用いてなることを特徴とする請求項10に記載のウェーハ研削装置である。
【0037】
請求項10および請求項11に係る発明によれば、鏡面仕上げを進める砥石の化学的作用を効率良く発揮する。しかも、砥石のシリカを取り巻くPVAの吸水性の働きにより、シリカ自体を濡らすことが極力防止でき、鏡面仕上げの効果が洗浄冷却媒体の液で弱められることもなく、化学的作用が阻害されずに済む。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明による実施の形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態を示すウェーハ研削装置の要部断面図であり、メカノケミカル仕上げ砥石(以下、単に「砥石」ともいう)の外周面34に防水スカート1を周接し、砥石の内周面37に補助スカート4を配設したものである。
なお、図ではスカート1または補助スカート4と、砥石面31との間に隙間はないが、隙間が明いていても構わない。
【0039】
ここでは、例えば#325の粗砥石、#1000の中仕上げ砥石、#20000の仕上げ砥石等による物理的研削を経た後の、メカノケミカル砥石による鏡面仕上げの段階に関する説明をする。
なお、実施例として、アイオン(株)のベルイーターY(R)またはアイオン(株)のウェットロン(R)を使用した。
【0040】
最終完成段階に近づいたウェーハ10の被研削面11は、メカノケミカル現象を伴う砥石の化学的作用により、高品位の鏡面に仕上げる。また、研削加工に伴って発生する削り屑6(図2参照)の他、空中から降りてくる塵埃を除去して清浄に保つ洗浄機能と、摩擦熱を冷却する冷却機能を兼ね備えた洗浄冷却媒体として優れた物性を有する純水をまたは純水を成分にしたミスト42を用いて、被研削面11を洗い流しながら研削加工する。
なお、図では砥石の外周面34にミスト42をかけているが、砥石の内周面37から補助スカート4に向かってミスト42をかけるような構成でも構わない。
【0041】
このとき、洗浄冷却媒体42の液体成分により被研削面11が濡れた状態で砥石30に接触した場合、砥石30の砥石面31も洗浄冷却媒体42の液体成分で湿潤して低温化することになり、前記化学的作用が進まなくなるような弊害を生じる。これを避けられるように、ウェーハ10の被研削面11を実質的に乾いた状態に維持することが望ましい。
【0042】
ウェーハ10の被研削面11の一部にシリカを固定砥粒とした化学的作用のある砥石30が、その砥石面31の一部を摺接し、最終完成段階に近づいたウェーハ10の被研削面11を、高品位の鏡面に仕上げる。
【0043】
また、砥石30は砥粒結合体としてPVA(ポリビニルアルコール)を用い、その親水性、吸水性、柔軟性を生かした砥石構造となっている。
【0044】
図1において、異なる2軸Z,Cでそれぞれ回転自在に軸支された回転体の一方がウェーハ、他方が砥石であり、ウェーハの被研削面をまんべんなく精密に研削する。一方のウェーハ10は、回転テーブル20上に載置され、真空吸着により保持され、矢印J方向に毎分約10〜150回転で回転している。他方のホルダ32の下面に貼着等により一体的に配設された環状の砥石30の周縁を、隙間なく取り囲むように防水スカート1が周設され、防水スカート1の外周から内周の方向に対しては、洗浄冷却媒体42の液が浸入することを規制し、液浸入規制手段を構成している。
【0045】
また、被研削面11のうち、防水スカート1の外周より外側のみに純水を成分にしたミスト42を注出する噴霧ノズル2が配設されている。噴霧ノズル2から噴出された洗浄冷却媒体42の液は、研削工程に伴って発生する摩擦熱を除去しながら、ウェーハ10の被研削面11に発生した削り屑6(図2参照)を洗浄する。ここで、純水は、洗浄冷却するのに必要最小量に限定して噴霧ノズル2からミスト42となって噴霧される。
【0046】
噴霧ノズル2から注出されたミスト42は、防水スカート1の外周より外側のみに噴霧され、防水スカート1の環状の内側まではミスト42を浸入させない。従って、砥石30によるメカノケミカル現象等の化学的作用を洗浄冷却媒体の液で阻害されずに研削できるため、高品位の鏡面仕上げが効率良くできる。
【0047】
防水スカート1の材料として、本実施形態では、柔軟性と強靭性を併せ持つ材料である発泡ウレタンや発泡PVAスポンジを用いている。このように、柔軟性をもつ防水スカート1の裾(すそ)がウェーハ10の被研削面11に傷付けることなく摺動しながらも、密接できるので、防水スカート1の外側に注出されたミスト42が、防水スカート1の内側にまで浸入することを確実に阻止できる。
【0048】
なお、発泡ウレタンや発泡PVAスポンジは、柔軟性を持つ材料なので、被研削面11に密着しながら摺動しても被研削面11を傷付けない。
【0049】
また、砥石30の内周面37には防水スカート1と同一の材料により、補助スカート4を配設し、吸水層を構成している。後述するように、砥石30の外周に周設された防水スカート1により、外周側から内周側へミスト42の液体成分が浸入することを規制されているので、砥石30の内周側は実質的には乾いている。
【0050】
しかし、防水スカート1の裾(すそ)の下を通過して、濡らしたくない箇所まで、わずかに浸入した洗浄冷却媒体42の液があれば、スポンジ状の吸水層を形成する補助スカート4で、拭い取ることにより、防水スカート1の液浸入規制効果を補完できる。
なお、防水スカート1および補助スカート4の材料は、発泡ウレタンや発泡PVAスポンジに限定する必要もなく、材料技術の進歩に応じて、適宜に選定しても構わない。
【0051】
また、防水スカート1があれば、液浸入規制手段としての効果は確実であるが、防水スカート1がなくとも、洗浄冷却するのに純水を必要最小量に限定し、ミスト状にして注出していることにより、液浸入規制手段としての目的に沿った効果が得られる。すなわち、ウェーハ10を清浄維持し冷却するために最小限のミストを霧吹きすることだけでも、化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することを両立できるのである。
【0052】
図5を示して説明したように、給送部40は、給送管41から純水を、洗浄冷却の必要な箇所に供給する。すなわち、研削加工中の被研削面11で、砥石30の外周から所定の間隔をおいた位置に、ミスト42を供給または純水をそのまま流出する。その際にメカノケミカル現象等の化学的作用を阻害しないように、ミスト42または純水は必要最小限の分量に止める。当然に給送部40は、小型軽量にして設備費用と運転費用を軽減できる。
【0053】
このように、洗浄冷却媒体となる純水やミストの液成分が砥石30に直接かかることなく、砥石30から離れた被研削面11に対して、ウェーハ10の研削加工に伴って発生する削り屑6の他、空中から降りてくる塵埃等をウェーハ10の表面および周辺から除去し、かつ蓄積する摩擦熱を冷却し、防護用のUVテープが過熱により剥離することを防止できるので、ウェーハ10の鏡面が品質劣化することを防止できる外、砥石30の磨耗を阻止する効果もある。
【0054】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態を示し、渦巻き模様3を刻設したメカノケミカル仕上げ砥石の砥石面33を示す平面図である。渦巻き模様3は、請求項3でいう「前記液浸入規制手段として、砥石30の回転に伴って砥石30の回転中心から外向きの排出力を発生する渦巻き模様3の溝5を、砥石面33に刻設した」ものである。
【0055】
図2から読み取れるように、K方向に砥石30が回転すれば、渦巻き模様3の溝5は渦巻きが外周方向へと広がるように、砥石30の回転中心から外向きのロータリーポンプのような流体排出力を発生し、洗浄冷却媒体42の液は砥石30に直接かかることなく、砥石30から遠ざかる。このとき、砥石30の近辺に発生した削り屑6も吹き飛ばされるので、被研削面11を清浄維持できる。
【0056】
このように、ロータリーポンプの原理に基づき、砥石30と共に渦巻き模様が回転して発生する中心から外向き方向の流体排出力により、研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して被研削面11(図1参照)に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した洗浄冷却媒体42は、周辺の空気と共に砥石30の外縁より外側に吹き飛ばされる。そのため、洗浄冷却媒体42の液体成分が、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤することなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0057】
[第3の実施形態]
図3は、第3の実施形態を示し、砥石ホルダ32の回転軸Zの近傍に根元が配管接続され、当該配管の末端開口部は、砥石30の内周から外周方向に空気を吹き出す送風手段を構成するように、送風通路7を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。送風通路7は図示せぬ空気圧縮機から圧縮空気の供給を受け、砥石30の回転中心から外向きの気流を発生させる。すなわち、送風手段を構成している。そのため、前記化学的作用する箇所へ浸入しようとする洗浄冷却媒体42の液体成分は、砥石30の外周の外方向へと、送風圧力により押し戻される。従って、当該箇所を洗浄冷却媒体42の液が濡らすことなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0058】
ここで、前述の送風手段に併せて、図2で説明した渦巻き模様3の溝5が回転することによる排出作用を加え、濡らしたくない箇所に、空気の吹きつけの外、吸引を併用すれば、実質的に乾いた状態を維持する条件を設定し難い場合でも、例えば、鏡面仕上げの程度が最終段階より手前で、被研削面11に傷が多くて、砥石面31との間に流体の浸入する隙間のある場合も、前記化学的作用する箇所を濡らそうとする洗浄冷却媒体42の液体成分を、送風により吹き飛ばし、実質的に乾いた状態を容易に維持できる。
【0059】
[第4の実施形態]
図4は、第4の実施形態を示し、砥石ホルダ32の回転軸Zの近傍に根元が配管接続され、当該配管の末端開口部は、砥石30の周辺部35,36から液体成分を吸引し除去する吸引手段を構成するようにバキューム通路8,9を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。
研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して被研削面11に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した洗浄冷却媒体42の液は、砥石30の周辺の空気と共に、砥石30の周辺部35,36から、バキューム通路8,9へと吸引される。従って、洗浄冷却媒体42の液が、被研削面11を清浄維持し冷却しながらも、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤する以前に吸引されてしまうので、化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持できる。
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、洗浄冷却媒体として優れた純水を成分とするミスト42を用いて、被研削面11を清浄に保ちながら効率的に冷却し、しかも、鏡面仕上げを進める砥石30の化学的作用による鏡面仕上げの効果がミスト42の液で阻害されないように、液成分の浸入を防止して、砥石30に接触する被研削面11は実質的に乾いた状態を維持できる。
従って、砥石30にメカノケミカル現象による、化学反応を起こすのに十分な温度を維持しながら、被研削面11の洗浄冷却も効率良くできる。
【0061】
また、砥石30のシリカを取り巻くPVAの吸水性の働きにより、シリカ自体を濡らすことが極力防止でき、高いメカノケミカル効果を持続できる。
【0062】
なお、本発明は、その技術思想の範囲内で種々の改良が可能であり、前述した実施の一形態の他にも多様な実施形態が考えられる。それらにおいて、鏡面仕上げを進める砥石30の化学的作用による鏡面仕上げの効果が洗浄冷却媒体で弱められないように、砥石30を極力濡らさず、また、砥石30に接触する被研削面11を実質的に乾いた状態で維持するため、被研削面11が濡れないように、前記化学的作用を生ずる箇所へ洗浄冷却媒体の液が浸入することを規制する液浸入規制手段を配設した場合、全て本発明に属することは当然である。
【0063】
そして、洗浄冷却媒体はミストでなく、純水または他の液体をそのままかけても良く、さらに、砥石はカップ状のものに限らず、円盤状の下面全面を砥石面としたものでも構わない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように構成したので、請求項1に係る発明によれば、前記ウェーハの被研削面におけるメカノケミカル仕上げ砥石の化学的作用を妨げる原因となる水濡れを阻止する液浸入規制手段が奏効するので、鏡面仕上げの効率を低下させない。すなわち、水を主体とする液体が、化学的作用する箇所へ浸入しないように、化学的作用する箇所の乾燥状態を維持することができる。
【0065】
一方、研削に伴って発生する削り屑6は、給送部40により供給または循環される洗浄冷却媒体42により洗浄され、前記被研削面を清浄維持し、同時に前記ウェーハ10も冷却され、製品の品質と加工効率を確保し、砥石の磨耗を低減できる。
【0066】
例えば、所定段階の加工済み面を保護するために被覆しているUVテープ等が、過熱することにより望まない変質する害、あるいは接着剤の残滓等による害の外、UVテープ等が剥離現象を起こすことによる品質劣化も避けられる。
【0067】
このような理由で、洗浄冷却媒体42の液が、化学的作用する箇所へ浸入することを阻止する液浸入規制手段を備えたことにより、化学的作用を阻害する事なくウェーハ10を清浄維持し冷却できる。
【0068】
請求項2に係る発明によれば、防水スカート1により、化学的作用する箇所へ洗浄冷却媒体42の液が浸入することを遮断できる。
【0069】
請求項3に係る発明によれば、前記砥石と共に前記渦巻き状の渦巻き模様が回転して、中心から外向き方向の力が発生する例えばロータリーポンプの原理に基づく流体排出力により、研削加工に伴って発生する削り屑や空中から降下して前記被研削面に付着する塵埃等を洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体の液は、周辺の空気と共に前記砥石の外縁より外側に吹き飛ばされる。そのため、前記洗浄冷却媒体の液は、前記化学的作用する箇所へ浸入し浸潤することなく、洗浄および冷却の機能を果たし得る。
【0070】
請求項4に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して被研削面11に付着する塵埃等は、送風手段7により砥石30の回転軸Zの近傍から外周へ向かう方向に吹き飛ばされるので、清浄を維持し冷却できる。また、送風手段7の冷却機能に不足があれば、洗浄冷却媒体42による強力な冷却機能により、必要十分な冷却を確保し、かつ前記化学的作用する箇所への洗浄冷却媒体42の液の浸入を遮断できる。
【0071】
請求項5に係る発明によれば、研削加工に伴って発生する削り屑6や空中から降下して前記被研削面11に付着する塵埃等を、洗浄して汚濁した前記洗浄冷却媒体42の液は、周辺の空気と共に、液吸引手段、すなわちバキューム通路8,9により砥石30の周辺部35,36から、吸引され除去されるので、清浄を維持し冷却できる。しかも、前記化学的作用する箇所へ洗浄冷却媒体42の液が浸入し浸潤させる以前に吸引してしまうことができる。
【0072】
請求項6に係る発明によれば、必要最小量の洗浄冷却媒体42の液に限定しても、ノズル2から対象箇所に、まんべんなく噴霧する噴霧作用によりウェーハ10を効率良く清浄維持し冷却することが可能であり、洗浄冷却媒体42の液を供給する給送部40を小規模にして小型軽量化し、設備費と運転経費の両面から経費節減できる。また、濡らし過ぎない程度の少量に限定して前記洗浄冷却媒体を対象箇所に噴霧できる。
【0073】
請求項7に係る発明によれば、ウェーハ10を洗浄冷却することと前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することを両立できる。また、発泡ウレタンまたは発泡PVAのスポンジは、柔軟性を持つ材料なので、被研削面11に密着しながら摺動しても被研削面11を傷付けない。
【0074】
請求項9に係る発明によれば、高い洗浄冷却効果を得られて、前記化学的作用する箇所を実質的に乾燥状態として維持することと両立できる。
【0075】
請求項10および請求項11に係る発明によれば、鏡面仕上げを進める砥石の化学的作用を効率良く発揮する。しかも、砥石のシリカを取り巻くPVAの吸水性の働きにより、シリカ自体を濡らすことが極力防止でき、鏡面仕上げの効果が洗浄冷却媒体の液で弱められることもなく、化学的作用が阻害されずに済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すウェーハ研削装置の要部断面図であり、メカノケミカル仕上げ砥石の外周側に防水スカートを、内周側に補助スカートを配設したものである。
【図2】本発明の第2の実施形態を示し、渦巻き模様の溝を刻設したメカノケミカル仕上げ砥石の砥石面を示す平面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態を示し、砥石の内周から外周方向に空気を吹き出す送風通路を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態を示し、砥石の周辺部から液を吸引し除去するバキューム通路を配設したウェーハ研削装置の要部断面図である。
【図5】従来のウェーハ研削装置の要部を示す説明図であり、同図(a)はその斜視図、同図(b)はその概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 防水スカート
2 噴霧ノズル
3 渦巻き模様
4 補助スカート
5 溝
6 削り屑
7 送風通路
8,9 バキューム通路
10 ウェーハ
11 被研削面
20 回転テーブル
30 砥石
31,33 砥石面
32 (砥石)ホルダ
34 砥石の外周面
35,36 砥石の周辺部
37 砥石の内周面
40 給送部
41 給送管
42 洗浄冷却媒体としてのミスト
Claims (11)
- ウェーハを吸着保持する回転テーブルと、
前記回転テーブルに保持された前記ウェーハの被研削面に対面して回転自在に軸支され化学的作用のある砥石と、
前記ウェーハを清浄維持し冷却する洗浄冷却媒体を供給する給送部と、を備えたウェーハ研削装置において、
前記化学的作用を生ずる箇所へ前記洗浄冷却媒体の液が浸入することを規制する液浸入規制手段を備えたことを特徴とするウェーハ研削装置。 - 前記液浸入規制手段として、
前記砥石の外周面に周設された防水スカートと、
前記防水スカートの外周より外側のみに前記洗浄冷却媒体を注出するノズルと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ研削装置。 - 前記液浸入規制手段として、
前記砥石の回転に伴って前記砥石の回転中心から外向きの流体排出力を発生する渦巻き模様の溝を、砥石面に刻設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ研削装置。 - 前記液浸入規制手段として、
前記砥石の回転中心から外向きに空気を吹き出す送風手段を配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置。 - 前記液浸入規制手段として、
前記砥石の周辺部から液体を吸引し除去する吸引手段を配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置。 - 前記液浸入規制手段として、
前記洗浄冷却媒体の液を必要最小量に限定して噴霧するノズルを備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置。 - 前記防水スカートの材料として、発泡ウレタンまたは発泡PVAのスポンジを用いたことを特徴とする請求項2に記載のウェーハ研削装置。
- 前記洗浄冷却媒体は純水であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置。
- 前記洗浄冷却媒体は純水を噴霧化したミストであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置。
- 前記砥石は固定砥粒としてシリカを用いてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のウェーハ研削装置。
- 前記砥石は砥粒結合体としてPVA(ポリビニルアルコール)を用いてなることを特徴とする請求項10に記載のウェーハ研削装置。
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JP2003052293A JP2004260122A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | ウェーハ研削装置 |
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JP2003052293A Pending JP2004260122A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | ウェーハ研削装置 |
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JP2007173487A (ja) * | 2005-12-21 | 2007-07-05 | Disco Abrasive Syst Ltd | ウエーハの加工方法および装置 |
CN104858737A (zh) * | 2014-02-25 | 2015-08-26 | 光洋机械工业株式会社 | 工件的平面磨削方法 |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003052293A patent/JP2004260122A/ja active Pending
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