JP2004260028A - 圧電アクチュエータおよびインクジェット記録ヘッド - Google Patents

圧電アクチュエータおよびインクジェット記録ヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】ランド部下の圧電セラミック層に電界が作用して変形するのを防止して変位精度を高め、かつ圧電セラミック層の破損を防止し、信頼性の高い圧電アクチュエータとインクジェット記録ヘッドを提供することである。
【解決手段】振動板8上に、共通電極2、厚さが100μm以下の圧電セラミック層1および表面電極5とがこの順に積層され、前記表面電極5が圧電セラミック層1の表面に複数配列されたものであって、前記表面電極5が駆動部4と、この駆動部4の一端に接続された駆動電圧印加用のランド部3とを備え、このランド部3が電界遮断層7を介して前記圧電セラミック層1上に設けられた圧電アクチュエータ9であり、流路部材11上に積層して記録ヘッド20が形成される。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細な変位を発生させることにより、各種デバイスの位置決めや加圧などに用いられる圧電アクチュエータおよびこれを利用したインクジェット記録ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種装置の小型化及び高精度化に伴い、微細な制御や応答を可能とする各種圧電アクチュエータの利用が拡大している。このような微細な圧電アクチュエータとしては、例えば、図2(a)および(b)に示すように、共通電極層22、圧電セラミック層21及び複数の表面電極25を順次積層してなる駆動素子26を、振動板27上に具備する圧電アクチュエータ28が挙げられる。表面電極25はランド部23と駆動部24からなる。
インクジェット記録ヘッドの場合、複数のインク室29(加圧室)およびインク吐出口31を設けた流路部材30上に圧電アクチュエータ28が積層接着される。
【0003】
このような圧電アクチュエータ28では、圧電セラミック層21を介して表面電極25と共通電極層22との間に電圧を作用させることにより、表面電極25下の圧電セラミック層21が面内に収縮し、圧電セラミック層21と振動板27との収縮差によって、表面電極25、圧電セラミック層21及び共通電極22とともに振動板27が屈曲変形するものである。これによって、インクジェット記録ヘッド40では、インク室29の体積が変化して、上記インク吐出孔31よりインク滴を吐出させる。
【0004】
また、従来の圧電アクチュエータ28では振動板27の変形を阻害しないように、表面電極25を、変位にかかわる駆動部24と、はんだ付けやワイヤーボンディングによって駆動電圧信号を入力する配線を結線するランド部23とに分けていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図2に示すような従来の圧電アクチュエータ28では、表面電極25に駆動電圧信号を印加した際に、表面電極25下の圧電セラミック層21が一律に収縮していた。
【0006】
このように、駆動素子26の駆動に直接関係の無いランド部23と共通電極層22とで挟まれる部分(図2(b)に符号Aで示す)の圧電セラミック層21も同時に変形する。このとき、圧電セラミック層21が十分に厚い場合には、表面電極25と共通電極層22との距離が長くなり、圧電セラミック層21に作用する電界が弱くなるため、ランド部23下の圧電セラミック層21の変形が駆動素子26及び振動板27の変形に及ぼす影響は軽微なものである。
【0007】
しかしながら、アクチュエータの微細化及び高効率化に伴って、圧電セラミック層21は薄くなる傾向にある。このため、駆動電圧信号を印加した際に、圧電セラミック層21に作用する電界の強度が高くなり、ランド部23と共通電極層22とで挟まれる部分Aの圧電セラミック層21の収縮変形によって駆動素子26及び振動板27の変位精度が低下する場合があった。
【0008】
特に、インクジェット記録ヘッドのように、独立した表面電極25を多数設けたアクチュエータ28の場合、ランド部23の面積やこのランド部23への配線の結線等の形成状態が不均一であると、駆動素子26の変位にばらつきが発生するという問題があった。
【0009】
また、ランド部23には樹脂配線基板やワイヤーボンディング等により、駆動信号電圧を印加する配線が結線される。しかし、結線時に、ランド部23下の圧電セラミック層21に応力が作用するため、圧電セラミック層21が薄い場合、結線工程において圧電セラミック層21が破損しやすいという問題があった。
【0010】
さらに、長期間にわたって圧電アクチュエータ28を繰り返し駆動すると、ランド部23下の圧電セラミック層21の変形によって、ランド部23が疲労し、結線が劣化して電気抵抗が上昇したり、駆動部24とランド部23との間で表面電極25が断線したり、ランド部23が圧電セラミック層21から剥離する場合等があり、著しい場合には断線によって駆動素子26が停止するという問題があった。
【0011】
また、インクジェット記録ヘッド40のように、表面電極25を高い集積度で多数使用する場合、隣接する表面電極25毎に独立して駆動電圧信号を印加すると、相互に機械的変形や電界が影響しあうことにより、変位精度に影響を及ぼす、いわゆるクロストークの問題がある。このため、特にランド部23から発生する電界や機械的変形が隣接する他の駆動素子26に影響するのを抑制するために、隣接する駆動素子26間の間隙を広くしなければならなかった。従って、駆動素子26の集積度の高い小型高性能ヘッドを実現することは困難であった。
【0012】
よって、本発明の主たる目的は、表面電極を構成する駆動部への駆動電圧を印加するためのランド部下の圧電セラミック層に電界が作用して変形するのを抑制し、変位精度を高めた圧電アクチュエータを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、駆動部に駆動信号を印加するための配線をランド部に施す際に、圧電セラミック層に作用する負荷を軽減し、圧電セラミック層の破損を抑制することができる圧電アクチュエータを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、ランド部下の圧電セラミック層の疲労破壊やランド部の剥離を防ぎ、信頼性の高い圧電アクチュエータを提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、インク滴吐出速度のばらつきやクロストークが抑制され、かつ長期信頼性に優れた小型高性能なインクジェット記録ヘッドを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は以下の構成からなる。
【0017】
(1)振動板上に、共通電極、厚さが100μm以下の圧電セラミック層および表面電極とがこの順に積層され、前記表面電極が圧電セラミック層の表面に複数配列されたものであって、前記表面電極が駆動部と、この駆動部の一端に接続された駆動電圧印加用のランド部とを備え、このランド部が電界遮断層を介して前記圧電セラミック層上に設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
(2)前記電界遮断層の比誘電率が、前記圧電セラミック層の比誘電率よりも小さいことを特徴とする前記(1)記載の圧電アクチュエータ。
(3)前記電界遮断層の比誘電率が50以下であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の圧電アクチュエータ。
(4)前記電界遮断層の厚さが0.1〜5μmであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
(5) 前記電界遮断層の表面で駆動部とランド部とが接続され、かつ電界遮断層は圧電セラミック層の変位部にほぼ隣接して設けられていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【0018】
(6)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の圧電アクチュエータを、インク吐出口を有する複数のインク室が配列された流路部材上に、前記振動板を下にしてかつインク室と前記駆動部との位置を揃えて積層接着したことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【0019】
前記(1)〜(5)に記載の圧電アクチュエータによれば、駆動電圧印加用のランド部が電界遮断層を介して前記圧電セラミック層上に設けられているため、ランド部下では表面電極と共通電極層との間に印加される電圧のうち、電界遮断層にかかる電圧が大部分で、圧電セラミック層にかかる電圧はきわめて小さくなるため、このランド部下の圧電セラミック層に電界が作用して変形するのが抑制され、またランド部の変形は無視できる。このため、活性部下の圧電セラミック層が振動板の変位に影響を与えることが無くなり、変位精度が向上する。
【0020】
また、駆動信号を印加するための配線をランド部に接合する際に、電界遮断層によって圧電セラミック層に作用する負荷が軽減されるため、圧電セラミック層の破損を防ぐことができる。
しかも、本発明の圧電アクチュエータではランド部下の圧電セラミック層の変形を抑止し、従来の圧電アクチュエータにおいて見られたランド部下の圧電セラミック層の疲労破壊や活性部の剥離を抑制することができる。
前記(6)に記載のインクジェット記録ヘッドによれば、インク滴吐出速度のばらつきやクロストークの発生が抑制される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の圧電アクチュエータ及びこれを用いたインクジェット記録ヘッドの一例を示しており、(a)はインクジェット記録ヘッドの一部破断斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
このインク記録ヘッド20はインクを通す流路部材11の上面に圧電アクチュエータ9を積層接着したものである。圧電アクチュエータ9は、振動板8上に、共通電極層2、圧電セラミック層1、ランド部3と駆動部4とから成る表面電極5を順次積層して形成されている。ランド部3は圧電セラミック層上に電界遮断層7を介して設けられている。なお、圧電セラミック層1上に形成された駆動部4が、本発明の圧電アクチュエータの変位部4aとなる。
【0022】
流路部材11は複数のインク室10及びこのインク室10に連通するインク吐出孔12を備え、インク室10上に対応する駆動部4が位置するように、流路部材11の上面に圧電アクチュエータ9が積層され、接着等によって一体化されている。
圧電アクチュエータ9のランド部3と共通電極層2は配線基板13(フレキシブル回路)の配線を介して駆動電圧信号を供給するドライブ回路(図示せず)とグランド電位に接続されている。
【0023】
上記圧電アクチュエータ9において、圧電セラミック層1には、例えばチタン酸ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛アンチモン酸鉛、ニッケルテルル酸鉛等から選ばれる少なくとも1種の複合酸化物を主成分とする圧電材料が使用される。圧電セラミック層1の厚さは100μm以下、好ましくは5〜50μmである。
また、共通電極層2は、例えば銀、白金、銅、パラジウム又はこれらを主成分とする合金等からなり、厚さは約0.5〜3μmであるのが良い。表面電極5のランド部3は、例えば金、銀、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、クロム等からなり、厚さは約0.1〜2μmであるのが良い。駆動部4としては、例えば金、銀、アルミニウム等からななり、厚さは約0.1〜1μmであるのが良い。振動板8には圧電セラミック層1と同じ圧電材料を使用するのが好ましいが、これに限定されず、他のセラミックス材料を使用しても良い。
【0024】
本発明のアクチュエータ9では、ランド部3にはんだ接合やワイヤーボンディングにより結線した配線を通じてアクチュエータ9を駆動する電圧信号を印加するが、ランド部3下に圧電セラミック層1よりも誘電率の低い材料からなる電界遮断層7を設けることにより、圧電セラミック層1に電界が及び難くなり、ランド部3下の圧電セラミック層1にひずみが発生し、圧電セラミック層1が変形するのを抑制することができる。
【0025】
これによってランド部3につながるランド部4下の圧電セラミック層1が収縮変形する際に、従来のアクチュエータのようにランド部3下の圧電セラミック層1も変形し、振動板の変位精度に影響を及ぼすことを防ぎ、ランド部3の形成状態のばらつきに関わりなく圧電セラミック層1および振動板8の均一な変位量を確保できるようになる。
【0026】
しかも、本発明のアクチュエータ9では、ランド部3下の圧電セラミック層1に電界が及びにくいために、駆動部4同士を近接して配置しても、相互に電界が影響を及ぼし合うことが無くなり、表面電極5,5間の距離を狭めることが可能となり、インクジェット記録ヘッド等に使用する場合に実装密度の高く、しかも信頼性の高い小型高性能アクチュエータを実現することができる。具体的には、表面電極5,5間の間隙は0.01〜0.3mm、好ましくは0.05〜0.18mmであるのがよい。
【0027】
ランド部3下に設けられた電界遮断層7で効果的に電界を遮断するためには、前記電界遮断層7の比誘電率が、前記圧電セラミック層1の比誘電率よりも小さいことが好ましく、特に比誘電率が50以下の材料を用いて電界遮断層7を形成することが好ましい。このような材料としては、例えばアルミニウム、硼素、アルカリ土類金属などから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を主成分とし、さらに必要に応じて窒化珪素などを含有したガラス膜、または窒化珪素、アルミナから選ばれる少なくとも1種の薄膜があげられる。
【0028】
ここで、ガラス膜の場合、成分および組成は、SiOが70〜99体積%、Bが0〜10体積%、Alが0〜10体積%、アルカリ土類金属酸化物(Mg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも1種)が5〜30体積%であることが望ましい。なお、本ガラス膜には、比誘電率を上げるために、圧電セラミック層1との共材としてPbやBiの金属酸化物を含有したり、圧電セラミック層と主成分が同一の粉体を混合してもよい。
【0029】
圧電セラミック層1の表面には、セラミックスを構成する結晶粒に起因する凹凸が存在するが、上記電界遮断層7によって効果的に圧電セラミック層1の変形を防ぐ為には、電界遮断層7の厚さが0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であるのがよく、これによって圧電セラミック層1の表面凹凸を埋めることができる。一方、電界遮断層7の表面に形成される表面電極5が電界遮断層7の端部の段差で断線することを防ぐ為には、電界遮断層7の厚さを5μm以下、好ましくは4μm以下とするのがよい。
【0030】
次に、図1(a)、(b)に示す圧電アクチュエータ9とこれを用いたインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。
まず、引き上げ法やドクターブレード法等によって、圧電セラミック層1および振動板8となる厚さ10〜60μm程度の圧電セラミックスのグリーンシートを、それぞれ離型剤を塗布したポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)フィルムや紙等の支持体上に成形した後、所定の寸法に裁断する。
【0031】
次に、裁断されたグリーンシートの半数には共通電極層2となる金属ペーストをスクリーン印刷法などによって形成し、ついで、金型などの冶具を用いて開口部等を含む所定の形状に加工する。上記金属ペーストとしては、銀、パラジウム、白金、銅などの微粉末の1種または2種以上の混合物をバインダー樹脂及び溶媒と共に混合したものを用いる。
【0032】
裁断された上記グリーンシートの残りの半数と、上記共通電極層2を形成したグリーンシートとを共通電極層2を内側にして重ね合わせ、振動板8、共通電極層2および圧電セラミック層1の順からなる積層体を形成する。圧電セラミック層1となるグリーンシートを積層するにあたっては、60〜100℃の温度で3〜10MPaの圧力で熱圧着すれば良い。
【0033】
上記積層体を300℃の温度で脱脂した後、900〜1100℃の温度で焼成することにより焼結一体化する。しかる後、上記圧電セラミック層1の表面電極5形成位置の端部、すなわち圧電セラミック層1の変位部である駆動部4の形成位置に隣接して電界遮断層7を設ける。このとき、電界遮断層7は上記変位部4aに高精度に隣接していることは必要でなく、わずかに変位部4aと重複していてもよく、あるいは変位部4aから少し離隔していてもよい。
【0034】
この電界遮断層7は、スクリーン印刷法にてSiOを主成分とするガラスペースト膜を印刷した後に600〜800℃で焼結させるか、所定の開口部を設けた金属マスクで焼結体表面を覆った後に真空成膜法(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、CVD法など)によって窒化珪素やアルミナ等の膜を形成することによって得られる。
【0035】
さらに、得られた電界遮断層7上に、所定のパターンで金属ペースト膜をスクリーン印刷法にて形成し、これを600〜800℃の温度で焼き付けて厚さ0.1〜2μmの表面電極5のランド部3を形成する。
【0036】
最後に、駆動部4が、圧電セラミック層1に設けられた開口部(図示せず)より露出した共通電極2の一部及び上記電界遮断層7上のランド部3と接続されるように、所定のパターンで金属ペースト膜をスクリーン印刷法にて形成し、これを500〜700℃で焼き付けることにより駆動部4を形成する。かくして本発明の圧電アクチュエータ9が得られる。
【0037】
一方、流路部材12は、厚さ30〜100μm程度の金属箔14,15,16の積層体からなり、各金属箔14,15,16にエッチングや金型による打ち抜き等によってインク室10、インク吐出孔11、インク流路17等がそれぞれ形成される。使用する金属箔としては、例えばステンレス箔、鉄−ニッケル系合金箔、チタン箔などがあげられる。
【0038】
上記アクチュエータ9の駆動部4と流路部材12のインク室10とが対応するように位置を揃えて、アクチュエータ9と流路部材12とを接合し、さらにアクチュエータ9のランド部3に、グランド及び駆動信号配線をそれぞれ形成した配線基板13を接合する。このとき、ランド部3下に電界遮断層7を設けることにより、駆動部4に配線する際に圧電セラミック層1に作用する荷重を緩和し、結線時に圧電セラミック層1が破損するのを抑制することができる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例)
図1に示すような圧電アクチュエータ9とこれを用いたインクジェット記録ヘッド20を製作した。
まず、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする粒径が0.5〜3.0μmの圧電セラミック粉体100質量部に対し、アクリル系樹脂8質量部および純水20質量部を添加し、平均粒径が10mmのセラミックボール200質量部を用いたボールミルで30時間混合した。得られたスラリーを用いて引き上げ法により厚さ30μmのPETフィルム上に、圧電セラミック層1となる厚さ35〜37μmのグリーンシートを成形した。
【0041】
次に、得られたグリーンシートをPETフィルムと共に50mm×50mmに裁断して2枚1組に分類した後、2枚1組のうち1枚のグリーンシートの略全面に共通電極層2となる金属ペーストをスクリーン印刷法によって印刷し、乾燥機を用いて50℃で20分間乾燥させた。残りの1枚のグリーンシートには金型を用いて直径200μmの丸穴(スルーホール)を一箇所開口した。金属ペーストには、平均粒径が2〜4μmの銀粉末とパラジウム粉末を7対3の比率で混合したものを有機ビヒクルに分散させたものを用いた。
【0042】
そして、上記金属ペーストを印刷した面に、他の1枚のグリーンシートを重ね合わせた後、60℃の温度で5MPaの圧力を加えながら60秒間保持することにより熱圧着してグリーンシートの積層体を形成した。しかる後、予め形成したスルーホール内に金属ペーストを充填し、乾燥機中で100〜300℃まで毎時8℃の昇温レートで25時間加熱して脱脂した後,室温まで冷却し、さらに焼成炉でピーク温度1100℃で2時間保持して焼成し、厚さ58μm、比誘電率2500の圧電セラミック層1を有する圧電セラミック積層板を得た。
【0043】
次に、得られた圧電セラミック積層板表面の所定部位に、表1に示す成膜材料および成膜法を用いて同表に示す厚さおよび比誘電率を有する電界遮断層7を形成した。各サンプルの電界遮断層は以下の通りである。
【0044】
サンプルNo.1:平均粒径1μmの前記ガラス粉に平均粒径2μmのAl粉を総量に対して5体積%の割合で混合し、さらにこの混合物100質量部に対してバインダー(セルロース樹脂)5質量部とテルピネオール40質量部とを加えたガラスペーストを印刷し、ピーク温度700℃の連続炉を30分で通過させて焼き付けて電界遮断層を形成した。
サンプルNo.2:平均粒径3μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電セラミック粉を、サンプルNo.1で用いたガラス粉末の総量に対して1.3体積%の割合で混合したほかは、サンプルNo.1と同様にして電界遮断層を形成した。
サンプルNo.3:電界遮断層の形成部位以外を金属(Al)マスクで覆った後、スパッタリング法(ターゲット:Al、スパッタガス:Ar)にて電界遮断層を形成した。
サンプルNo.4:電界遮断層を設けない対照である。
【0045】
電界遮断層7を形成後、金属ペースト(金及びガラスフリットからなる)を上記電界遮断層7上に印刷し、ピーク温度600℃の連続炉を30分で通過させて厚さ3〜5μmのランド部3を形成した。
【0046】
共通電極層2と同じ金属を含有する金属ペーストで駆動部4を電界遮断層7上で前記ランド部3と接続するように印刷し、ピーク温度800℃の連続炉を30分で通過させて焼き付けし、厚さ0.2〜0.8μmの駆動部4を形成させた。しかる後、ダイシングソーで外辺を切断し、外形33mm×6mmの圧電アクチュエータ9を得た。
【0047】
一方、長さ2mm、幅0.18mmのインク室10を、金型プレスを用いた打ち抜き加工によって形成した厚さ100μmの金属箔14(ステンレス箔)と、該インク室10に連通するインク流路17及びインク吐出口12をそれぞれエッチングや金型プレスを用いた打ち抜き加工によって形成した厚さ100μm及び40μmのステンレス箔15,16を接着剤にて貼り合わせることにより流路部材11を形成した。
【0048】
次に、上記アクチュエータ9のランド部4と流路部材12のインク室10との位置を揃えてアクチュエータ9と流路部材12とを接着剤によって接合した。しかる後、配線基板13の接点上のハンダをランド部3に加圧しながら溶着させて接合することによりインクジェット記録ヘッド20を得た。
【0049】
しかる後、配線基板32をランド部3にはんだ接合した。この時、ランド部3下の圧電セラミック層21が破損するか否かを調べた。その結果を表1に示す。同表に示す「破損箇所数」は、アクチュエータ1個当りの圧電セラミック層1、21の平均破損発生個数を示す。なお、アクチュエータ1個当りのランド部4の全個数は196個である。
【0050】
次に、各インクジェット記録ヘッド20,40にそれぞれインクを導入し、配線基板13及び32を介して駆動信号電圧を印加することによりインク滴を吐出させながら、該駆動信号と同期させて高速度カメラによってインク滴の飛翔状態を観察し、インク滴吐出速度の測定を行うことにより、圧電アクチュエータ9、28の性能比較を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0051】
表1に示す吐出性能は、各インクジェット記録ヘッド20、40において、それぞれ30ヶ所の相隣接する表面電極5,25に1ヶ所ずつ駆動信号電圧を印加した場合と、同時に駆動信号電圧を印加した場合とのそれぞれについて測定したインク滴吐出速度(単位:m/秒)の平均値と幅(最大値−最小値)を示している。
【0052】
また、各インクジェット記録ヘッドにおいて、圧電アクチュエータに連続して駆動信号電圧を印加し続けて、駆動部における配線基板の断線によるインク滴の未吐出部の個数を確認した。その結果を表1に示す。
【表1】
Figure 2004260028
【0053】
表1に示すように、サンプルNo.1〜3の圧電アクチュエータでは、電界遮断層7を形成したことにより、配線基板13の接合時にランド部3を加圧してもランド部3下の圧電セラミック層1が該電界遮断層7によって保護されているために、圧電セラミック層1の厚さが28μmと薄いにも拘らず、圧電セラミック層1の破損を防ぐことができた。
【0054】
また、サンプルNo.1〜3の圧電アクチュエータ9を用いたインクジェット記録ヘッド20では、サンプルNo.4に比べて、30ヶ所の吐出速度のばらつき幅が小さかった。これは、電界遮断層7によりランド部3下の圧電セラミック層1の変形を防ぎ、各表面電極5下の圧電セラミック層1の変位が均一となったためである。
【0055】
サンプルNo.1〜3のインクジェット記録ヘッドでは、複数ヶ所を同時駆動しても相互作用により変位が低下したり、変位のばらつきが拡大することがなかった。これにより、いわゆるクロストークの少ないインクジェット記録ヘッドを実現できた。
【0056】
さらに、表1に示すように、サンプルNo.4のインクジェット記録ヘッドでは、駆動回数の増加に伴って、圧電セラミック層の表面からランドが剥離したり、電圧印加時にランド部下の圧電セラミック層の変形が強く、高い応力が発生して磁器が疲労破壊を起こす場合が見られた。これに対して、サンプルNo.1〜3のインクジェット記録ヘッドでは、配線基板の断線によるインク滴の未吐出部は殆ど発生していない。これは、電界遮断層7下の圧電セラミック層1の変形を防ぐことにより、電界遮断層7を介して圧電セラミック層1とランド部3の密着が低下することを防ぎ、かつ、ランド部3下における圧電セラミック層の疲労破壊が防止されているためであり、また、特に、ガラス成分を含む電界遮断層7をランド部下に設けたサンプル1及び2では、ランド部3の圧電セラミック層1への密着が強まっているためと考えられる。これにより、長期信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを実現することができた。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、圧電セラミック層の厚さを100μm以下と薄くした高効率の圧電アクチュエータにおいて、駆動信号電圧をランド部へ印加するランド部下に電界遮断層を設けることにより、ランド部下の圧電セラミック層にかかる電圧がきわめて小さくなるため、このランド部下の圧電セラミック層に電界が作用して変形するのが抑制され、その結果、ランド部下の圧電セラミック層が振動板の変位に影響を与えることが無くなり、変位精度が向上するという効果がある。
また、ランド部に駆動信号を印加するための配線を接続する際に、電界遮断層によって圧電セラミック層に作用する負荷を軽減することができるので、圧電セラミック層の破損が防止される。
【0058】
しかも、本発明の圧電アクチュエータではランド部下の圧電セラミック層の変形を抑止することにより、従来の圧電アクチュエータにおいて見られたランド部下の圧電セラミック層の疲労破壊やランド部の剥離を防止することができるため、圧電アクチュエータの信頼性が向上する。
【0059】
さらに、上記圧電アクチュエータを用いる本発明のインクジェット記録ヘッドは、インク滴吐出速度のばらつきやクロストークが少なく、かつ長期信頼性に優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録ヘッドの一例を示す図で、(a)は一部破断斜視図、(b)は(a)のX−X線の拡大断面図である。
【図2】従来のインクジェット記録ヘッドの一例を示す図で、(a)は一部破断斜視図、(b)は(a)のX−X線の拡大断面図である。
【符号の説明】
1:圧電セラミック層、2:共通電極層、3:ランド部、4:駆動部、5:表面電極、9:圧電アクチュエータ、11:流路部材、20:インクジェット記録ヘッド、28:圧電アクチュエータ、40:インクジェット記録ヘッド

Claims (6)

  1. 振動板上に、共通電極、厚さが100μm以下の圧電セラミック層および表面電極とがこの順に積層され、前記表面電極が圧電セラミック層の表面に複数配列された圧電アクチュエータであって、
    前記表面電極が、駆動部と、この駆動部の一端に接続された駆動電圧印加用のランド部とを備え、前記ランド部が電界遮断層を介して前記圧電セラミック層上に設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
  2. 前記電界遮断層の比誘電率が、前記圧電セラミック層の比誘電率よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
  3. 前記電界遮断層の比誘電率が50以下であることを特徴とする請求項1または2記載の圧電アクチュエータ。
  4. 前記電界遮断層の厚さが0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
  5. 前記電界遮断層の表面でランド部と駆動部とが接続され、かつ電界遮断層は圧電セラミック層の変位部にほぼ隣接して設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の圧電アクチュエータを、インク吐出口を有する複数のインク室が配列された流路部材上に、前記振動板を下にしてかつインク室と前記駆動部との位置を揃えて積層接着したことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
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