JP2004257985A - 車両の可能走行距離の表示装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料の残容量が所定値より少なくなったことを検知する残燃料センサ2、燃料の消費量を検知する燃料消費量センサ3、車両の走行距離を検知する走行距離センサ4、燃料消費量センサ及び前記走行距離センサからの出力信号を基に走行時の所定区間毎の区間燃費を演算し、この区間燃費の最新の値とそれより以前の過去の燃費データとから基準燃費を演算して更新し、この更新した基準燃費に燃料の残容量を乗じて車両の可能走行距離を演算するCPU1、CPUで演算された車両の可能走行距離を表示するディスプレイ8を備え、燃料の残容量が所定値より少なくなったとき、燃料の残容量で走行可能な車両の走行距離を、IDカード読取手段6より識別された運転者別に表示する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料の残容量が所定値より少なくなったとき、燃料の残容量で走行可能な車両の走行距離を表示する車両の可能走行距離の表示装置及び方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の車両の可能走行距離の表示方法として、所定燃料消費量毎に燃料消費量に対応した走行距離を、もしくは所定走行距離毎に走行距離に対応した燃料消費量を逐次記憶し、この記憶したデータを用いて現時点を基点とした、現時点の残燃料量と同等の過去の燃料消費量に対応した走行距離を求め、この走行距離を現時点からの予想走行距離として表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の車両の可能走行距離の表示方法として、燃料噴射ソレノイドの噴射量から所定時限内の燃料使用量、速度センサから所定時限内の走行距離をそれぞれ求め、同時に燃料計の出力から燃料タンク内の残燃料量を求め、マイクロンピュータによって、
今回の可能走行距離={(前回可能走行距離×m)+計算値}/(m+1)
ただし、
m:残燃料量により選択される係数
計算値=残燃料量×燃費
燃費=走行距離/燃料使用量
の式での計算を行うことで車両の可能走行距離を算出し、この算出した車両の可能走行距離を表示器にて表示するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−277019号公報(第1頁)
【特許文献2】
特許第2704561号公報(第1頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の車両の可能走行距離の表示方法のうち前者のものにあっては、基本的に、現時点を基点とした、現時点の残燃料量と同等の過去の燃料消費量に対応した走行距離を求めて表示するものであり、現時点での微小区間の燃費にあまり重きをおいていないので、急に走行状況が変わる場合、例えば登り坂から下り坂へ、逆に下り坂から上り坂へ、あるいは一般道路から高速道路等へ変わる場合に、正確な表示ができないという問題があった。
【0006】
一方、上述した従来の車両の可能走行距離の表示方法のうち後者のものにあっては、残燃料量に応じて係数mを変えることにより、現時点での微小区間の燃費から算出される計算値に重みをつけて車両の可能走行距離を求めているので、現状に近い形で可能走行距離を表示できる利点がある反面、次の問題があった。
今回の車両の可能走行距離が、車両の前回可能走行距離を前提として算出されるものであり、装置起動時において、前回可能走行距離が定まっておらず不定であるため、結果的に、可能走行距離を正確に算出することができないという問題があった。すなわち、前回可能走行距離(初回可能走行距離)として、仮に、装置起動直後の例えば1分間走行したときの燃費を基にこれに残燃料量を乗じることにより算出する値を採用すると仮定すると、微小区間の燃費は登り坂、下り坂、急加減速運転時等運転状況によって大きく変化するのは避けられず、このように不安定な燃費を基準に初回可能走行距離を表示するので、結果的に初回可能距離をベースに算出するその後の可能走行距離も正確に算出できなくなるという問題があった。
しかも、装置起動時の前回可能走行距離として採用したときの運転状況が今後の運転状況と大きく異なる場合には、その後表示される走行可能距離の変化が急激であったり、あるいは逆にほとんど変化しないなどの事態が生じ、これら走行可能距離を認識する運転者に違和感を与えるおそれがあるという問題もあった。
【0007】
さらに、上述した従来の車両の可能走行距離の表示方法にあっては、前・後者いずれも、運転者が代わる場合でも、運転者別に走行可能距離を表示する構成にはなっておらず、この点で車両の可能走行距離の表示が正確に行えない問題があった。
すなわち、実際には、同じ車両でも、運転者ごとに操縦時の固有のくせがあるため、燃費が一様とはならず、運転者が誰であれであってもそれを問題とせず一様に可能走行距離を表示する形式ものでは、表示の正確性に限界があった。
【0008】
上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的とするところは、可能走行距離の表示値が急激に変化することがなく、現実の可能走行距離に近い形で表示することができ、運転者にとって違和感の少ない車両の可能走行距離の表示方法及び装置を提供しようとすることにある。
また、運転者別に可能走行距離を表示することができ、より正確な表示が行える車両の可能走行距離の表示装置を提供することも目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の車両の可能走行距離の表示装置は、燃料の残容量が所定値より少なくなったとき、燃料の残容量で走行可能な車両の走行距離を表示する車両の可能走行距離の表示装置であって、
燃料の残容量が所定値より少なくなったことを検知する残燃料センサ(例えば、実施形態の残燃料センサ2)と、
燃料の消費量を検知する燃料消費量センサ(例えば、実施形態の燃料消費量センサ3)と、
車両の走行距離を検知する走行距離センサ(例えば、実施形態の走行距離センサ4)と、
前記燃料消費量センサ及び前記走行距離センサからのそれぞれの出力信号を基に走行時の所定区間毎の区間燃費を演算し、該区間燃費の最新の値とそれより以前の過去の燃費データとから基準燃費を所定区間毎に演算して更新し、該基準燃費に燃料の残容量を乗じて車両の可能走行距離を演算する演算手段(例えば、実施形態のCPU1)と、
該演算手段で演算された車両の可能走行距離を表示する表示手段(例えば、実施形態のディスプレイ8)とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明では、燃料の残容量が所定値より少なくなったときに、残燃料センサがその旨を検知する。そして、演算手段にて、燃料消費量センサ及び前記走行距離センサからのそれぞれの出力信号を基に走行時の所定区間毎の区間燃費を刻々演算し、該区間燃費の最新の値とそれより以前の過去の燃費データとから基準燃費を演算して更新する。そして、この更新した基準燃費に燃料の残容量を乗じて車両の可能走行距離を演算し、この値が表示手段を通して、車両の可能走行距離として表示される。運転者は、この表示をみて、燃料の残容量で車両があとどの程度走行できるかを認識することができる。
このように、走行状況に応じて変化しかつ更新される基準燃費を基に車両の可能走行距離を演算するので、現実の走行状況に即した車両の可能走行距離を表示することができる。
【0011】
請求項2記載の車両の可能走行距離の表示装置は、請求項1記載のものにおいて、前記演算手段(例えば、実施形態のCPU1)が、以下の式に基づいて車両の可能走行距離の演算が行われることを特徴とする。
車両の可能走行距離=基準燃費×燃料の残容量
基準燃費=(m×前回基準燃費+区間燃費の最新の値)/(m+1)
m: 燃料の残容量によって決定する係数
前回基準燃費:車両が所定区間走行するごとに基準燃費を更新するが、更新する直前の基準燃費
区間燃費: 燃料を所定量消費する間の平均燃費
【0012】
この発明では、走行状況に応じて変化しかつ更新される基準燃費を基に車両の可能走行距離を演算するので、現実の走行状況に即した車両の可能走行距離を表示することができるのに加え、基準燃費を演算するのに燃料の残容量の要素を係数を変化させる形で組み入れて、基準燃費に対する区間燃費の最新の値を反映させる割合(重み)を変えているので、燃料の残容量が少なくなるにつれて、最新の区間燃費をより重く評価して基準燃費を演算することができ、より現実の走行に即した車両の可能走行距離を表示できる。
【0013】
請求項3記載の車両の可能走行距離の表示装置は、請求項2記載のものにおいて、当該車両の可能走行距離の表示装置の起動時に、前記前回基準燃費として、前記演算手段に接続された記憶手段(例えば、実施形態の記憶手段7)に入力されている、車両の走行履歴から演算される所定数の区間燃費の平均値を採用することを特徴とする。
【0014】
この発明では、装置起動時に前回基準燃費として、車両の走行履歴から演算される、例えば現時点を基準としてそこから過去にさかのぼった所定数の区間燃費の平均値を採用しているので、つまり、その車両にとって平均的な燃費を基に車両の可能走行距離を演算するので、同値が現実の可能走行距離値から大きく外れることがなく、信頼性の高い可能走行距離を表示できる。
【0015】
請求項4記載の車両の可能走行距離の表示装置は、請求項2記載のものにおいて、当該車両の可能走行距離の表示装置の起動時に、前記前回基準燃費として、前記演算手段に接続された記憶手段(例えば、実施形態の記憶手段7)に入力されている、車両の走行履歴から演算される総区間燃費の平均値を採用することを特徴とする。
【0016】
この発明では、装置起動時に前回基準燃費として、車両の走行履歴から演算される総区間燃費の平均値を採用しているので、つまり、その車両にとっての生涯燃費を基に車両の可能走行距離を演算するので、同値が現実の可能走行距離値から大きく外れることがなく、信頼性の高い可能走行距離を表示できる。
【0017】
請求項5記載の車両の可能走行距離の表示装置は、請求項1または2記載のものにおいて、前記演算手段(例えば、実施形態のCPU1)には、運転者を識別する識別手段(例えば、実施形態のIDカード読取手段6)と、該識別手段により識別された運転者別に演算された区間燃費が記憶される記憶手段(例えば、実施形態の記憶手段7)が接続され、前記演算手段では、記憶手段から運転者別に記憶された区間燃費が読み込まれ、該区間燃費を基に運転者別に車両の可能走行距離の演算が行われ、その結果が表示手段(例えば、実施形態のディスプレイ8)により表示されるこ
とを特徴とする。
【0018】
この発明では、運転者別に車両の可能走行距離の演算を行なうので、より正確な車両の可能走行距離を表示できる。つまり、同じ車両を運転する場合でも、運転者はそれぞれ操縦時の固有のくせがあって燃費は一様ではなく、これら各運転手の運転時のくせに応じて、車両の可能走行距離を表示できる。
【0019】
請求項6記載の車両の可能走行距離の表示方法は、燃料の残容量が所定値より少なくなったとき、燃料の残容量で走行可能な車両の走行距離を表示する車両の可能走行距離の表示方法であって、
燃料の残容量が少なくなった時点で、その車両の過去の走行履歴から演算される燃費を基にして可能走行距離が以下の式に基づいて演算されて表示されることを特徴とする。
車両の可能走行距離=基準燃費×燃料の残容量
基準燃費=(m×前回基準燃費+区間燃費の最新の値)/(m+1)
m: 燃料の残容量によって決定する係数
前回基準燃費:車両が所定区間走行するごとに基準燃費を更新するが、更新する直前の基準燃費
区間燃費: 燃料を所定量消費する間の平均燃費
【0020】
この発明では、前述した請求項2記載の発明と同様の、車両の可能走行距離を表示できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る車両の可能走行距離の表示装置及び表示方法の実施の形態を図面を参照しつつ以下に説明する。
【0022】
図1は本発明に係る車両の可能走行距離の表示装置のブロック図である。図1において符号1は所定の処理プログラムに沿って後述する演算を行うCPUである。このCPU1は、例えば、燃料の残容量、車速、エンジン回転数等を表示する各種メータが配置されるメータケーシング内に格納される。
CPU1には、残燃料センサ2、燃料消費量センサ3、走行距離センサ4、イグニッションスイッチ5、IDカード読取手段6及び記憶手段7が電気的に接続されるとともに、ディスプレイ8も電気的に接続されている。
【0023】
前記残燃料センサ2は、図示せぬ燃料タンク内に設けられ、燃料タンク内に貯留されている燃料の残容量が所定値(例えば、5リットル)以下になったことを検知するものである。例えばサーミスタからなる液面計が利用される。
前記燃料消費量センサ3は、燃料の消費量を検知するものである。例えば、エンジンに付設される燃料噴射ノズルの噴射ソレノイドから出力される信号を基に燃料の消費量を検知するものが利用される。
【0024】
前記走行距離センサ4は、車両の走行距離を検知するものである。例えば、直接走行距離を検出するものであっても、あるいは速度センサを利用し、該速度センサか得られる速度情報を積分することによって走行距離を得るものであってもよい。
前記イグニッションスイッチ5は、当該車両の可能走行距離の表示装置を起動させるための条件設定を行うときに用いられる。すなわち、イグニッションスイッチ5がオン状態になり、かつ、燃料の残容量が所定値以下になったとき、当該車両の可能走行距離の表示装置による表示が行われる。
【0025】
前記IDカード読取手段6は、当該車両を運転する運転者に予め渡されているIDカードを読みとることによって、現在操縦している、あるいは今から操縦しようとする運転者が誰であるかを認識するために用いられるものである。
前記記憶手段7は、CPU1で、車両の可能走行距離を演算する際の制御プログラム(制御プログラムの内容は後述する)を予め記憶されるとともに、当該車両が運転されるときの、燃料を所定量消費する間の平均燃費、つまり区間燃費を運転者別に記憶するものである。
【0026】
前記CPU1は、前記制御プログラムに従って、燃料消費量センサ4及び走行距離センサ5からのそれぞれの出力信号を基に走行時の所定区間毎の区間燃費を演算し、該区間燃費の最新の値とそれより以前の過去の燃費データとから基準燃費を所定区間毎に演算して更新し、該基準燃費に燃料の残容量を乗じて車両の可能走行距離を演算するものである。
ディスプレイ8は、前述のようにCPU1で演算された車両の可能走行距離を表示するものであり、例えば液晶を用いたもの等が利用される。
【0027】
次に、上記車両の可能走行距離の表示装置を用いた表示方法について説明する。
運転者によりイグニッションキーを介してイグニッションスイッチ5がオン操作されると、このCPU1が起動される。すなわち、記憶手段7に予め記憶されている制御プログラムがCPU1によって読み込まれ、該CPU1によって、以下の演算処理が行われる。
【0028】
まず、運転者が挿入したIDカードをIDカード読取手段7が読み取り、該IDカード読取手段7からの出力信号を基に、運転者が誰であるかを認識する。
そして、運転者が車両をスタートさせると、燃料消費量センサ4及び走行距離センサ5からのそれぞれの出力信号を基に、車両走行時の所定区間毎に、走行距離を燃料消費量で除することにより区間燃費を演算し、その演算値を記憶手段7の運転者別に設けられた記憶エリア7a、7b…に記憶させる。ここで、所定区間とは、例えば燃料を10cc消費するときの走行距離であっても、あるいは予め定めた距離(例えば100M)であってもよい。
【0029】
燃料の残容量が所定値以上の場合には、このように区間燃費が運転者別に演算されて記憶手段7に記憶されるだけで、ディスプレイ8によって車両の可能走行距離を表示するわけではない。なお、この運転者別の区間燃費の記憶は、後述する車両の可能走行距離をディスプレイ8で表示するときにも続けて行う。
【0030】
そして、燃料の残容量が所定値以下になったとき、つまり、残燃料センサ3からの出力信号に基づき燃料タンク内の燃料残容量が例えば5リットル以下になったときには、CPU1で以下のような演算を行い、ディスプレイ8を通じて、車両の可能走行距離を表示する。
【0031】
すなわち、前述したように燃料消費量センサ4及び走行距離センサ5からのそれぞれの出力信号を基に走行時の所定区間毎の区間燃費を演算するが、この区間燃費の最新の値を基に基準燃費を以下の(1)式に基づき演算する。
基準燃費=(m×前回基準燃費+区間燃費の最新の値)/(m+1 …(1)
m: 燃料の残容量によって決定する係数
前回基準燃費:車両が所定区間走行するごとに基準燃費を更新するが、更新する直前の基準燃費
区間燃費: 燃料を所定量(例えば10cc)消費する間の平均燃費
【0032】
ここで、係数mを燃料の残容量によって変えることは、区間燃費の最新の値をどのような割合で基準燃費に反映するかを燃料の残容量によって決定することを意味する。
係数mの値は、種々の走行試験の繰り返しに基づく経験則から定めるもので、例えば、下の表に示す値を用いる。
【表1】
【0033】
次いで、以下の(2)式に示すように、上述の基準燃費に燃料の残容量を乗じることで、燃料の残容量で走行できる、車両の可能走行距離を演算する。
車両の可能走行距離=基準燃費×燃料の残容量 …(2)以上の演算処理により求めた車両の可能走行距離をディスプレイ8により表示する。
上述した記演算処理の中で、基準燃費を最初に求めるとき、すなわち、残燃料センサ3からの出力信号に基づき燃料タンク内の燃料残容量が例えば5リットル以下になった旨を検知した直後では、前回基準燃費を未だ求めておらず、上述の(1)式で基準燃費を求めることができない。
【0034】
このときには、前回基準燃費として、記憶手段7に入力されている、運転者別の車両の走行履歴(区間燃費履歴)から、現在運転している運転者の総区間燃費の平均値を採用する。あるいは、運転者の総区間燃費の平均値に代わり、運転者別の所定数(例えば、現時点を基準としてそこから直前の500個)の区間燃費の平均値を採用してもよい。
【0035】
このように、走行状況に応じて変化しかつ更新される基準燃費を基に車両の可能走行距離を演算して表示するので、現実の走行状況に即した車両の可能走行距離を表示することができる。しかも、基準燃費を演算するのに、燃料の残容量の要素を係数を変化させる形で組み入れて、基準燃費に対する区間燃費の最新の値を反映させる割合(重み)を変えているので、燃料の残容量が少なくなるにつれて、最新の区間燃費をより重く評価して基準燃費を演算することができ、より現実の走行に即した車両の可能走行距離を表示することができる。
【0036】
加えて、IDカード読取手段6によって運転者が誰かを識別し、運転者別に車両の可能走行距離を演算して表示するようにしているので、運転者が操縦する際の固有のくせに応じた車両の可能走行距離を表示することができ、したがって、より正確な車両の可能走行距離を表示することができる。
【0037】
上述のように実施の形態を詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明を逸脱することのない範囲で種々の設計変更可能である。
【0038】
例えば、前述の実施の形態では、運転者別に区間燃費を演算して記憶手段7に個別に記憶させていたが、これに限らず、車両が特定の一人しか乗らない場合等には、IDカード読取手段7等の運転者を識別するための認識手段を用いることなく、運転者は共通の一人として、上述の(1)式、(2)式に基づく演算処理をしてもよい。
このとき、基準燃費を最初に求めるときの表示装置起動直後の前回基準燃費としては、記憶手段7に入力されている、車両の走行履歴から演算される総区間燃費の平均値を採用するとよい。また、例えば、途中で車両の持ち主が変わるときには、車両の走行履歴から演算される総区間燃費について、リセットできるような機構を設けてもよい。
【0039】
<比較例>
次に、実際に車両を走行させて、本発明に係る車両の可能走行距離の表示装置と他の表示装置との性能を比較した例について説明する。
【0040】
図2は、車両の可能走行距離の表示装置の概略構成を示したものである。この図において符号10はメータケーシングであり、この中には、所定の処理プログラムに沿って演算を行うCPU1が収納されるとともに、このCPU1に電気的に接続された形で記憶手段7も収納されている。
また、CPU1には、図1でも説明したように、残燃料センサ2、燃料消費量センサ3、走行距離センサ4がそれぞれ電気的に接続されている。
残燃料センサ2は、例えば燃料タンク12内に取り付けられたサーミスタからなっており、燃料タンク12内の残燃料量が5リットル以下でオン信号を発するものである。また、燃料消費量センサ3は、ECU13から発せられるフューエルパルスを検出するものであり、1パスルあたり所定量例えば10ccの燃料が消費されたことを検出することができ、したがって、何パルス検出できたかで燃料の消費量を知り得るものである。また、走行距離センサ4は、車速を表示するためのSPパルスを基に車両の走行距離を検出するものである。
【0041】
車両の可能走行可能距離は、基本的に、基準燃費に燃料の残容量を乗じることによって求める。この基準燃費の求め方を、本発明に係るものと、それ以外の2つものを用意し、それらについて評価した。
【0042】
評価方法は、イ)運転者が違和感を感じないことと、ロ)表示が正確であることの2つの側面から行った。
前者のイ)運転者が違和感を感じないことは、図6〜図8に示すように後述する残距離表示の変化を図でみて、判断した。また、後者のロ)表示が正確であることは、後述する(3)式に基づき判断した。
【0043】
ここで、それら評価をする際に用いる真残距離について説明する。図3に示すように、実際に車両を走行させてそのときの走行状態を走行距離と消費燃料量との関係で記録しておく。そして、まず、燃料がなくなった個所と仮定するガス欠ポイントPを決める。すると、そこから残燃料量5リットルさかのぼった個所が定まり、これが残燃料センサ2から初めてオン信号が発せられるリザーブ(RES)点である。そして、図4に示すように、リザーブ点後のある点aを考えると、その点aからガス欠ポイントPまで走った距離がわかる。これを真残距離とする。
【0044】
そして、点aをリザーブ点からガス欠ポイントPまで移動させ、推定残距離と真残距離の差の平均を次に示す(3)式で評価する。この評価が前述のロ)表示が正確であることに対する評価である。値は少ないほどよい。
【数1】
ここで、推定残距離は、それぞれ以下の3通りの方法で求められる基準燃費にそれぞれ残燃料量を乗じて得られる計算値である。
【0045】
基準燃費の計算方法として、以下の3通りを考えた。
▲1▼ 経過時間による方法
現在の直前のx時間の平均燃費を基準燃費とする。xは0.3時間〜1.5時間まで0.3時間刻みで変化させた。
▲2▼ 消費燃料による方法
現在の直前、燃料をyリットル消費した時間の平均燃費を基準燃費とする。yは1リットル〜5リットルまで1リットル刻みで変化させた。
▲3▼ 更新前の基準燃費に重みを付ける方法
区間燃費(現在の直前、燃料を10cc消費するのにかかった時間の平均燃費)を更新する度に基準燃費も更新する。このとき、前回燃料基準(更新前の燃料基準)に重みをつけることによって算出した区間燃費をどの程度の割合で反映するかを調整する。
【0046】
すなわち、このときの基準燃費は前記(1)式で表される。
ここで、mは燃料の残容量によって決定する係数であって以下の(4)式で表される。
m=重み係数×基準重み …(4)
ここで、重み係数は以下の表2に示されるものを用いた。
【0047】
【表2】
基準重みnは、200〜1000まで200刻みで変化させた。
【0048】
走行データの採取は以下のように行った。
可能走行距離の表示は過去の走行状態を参照するため、走行状態の急変に弱い。そこで、そのような急変が普通に起こりうるような、それでいて一般的なツーリングコースを設定した。また、一般道路、峠、高速道路の走行時間が1:1:1となるようにし、それが2回繰り返されるようなコースを選んだ。
【0049】
得られた結果を図5に示す。この図において、横軸は出発を基点とした時刻、縦軸は燃費である。区間燃費は直前15秒間の平均燃費を、積算燃費はテスト開始時からの平均燃費を示す。一般道路、峠、高速道路の特徴がはっきり出ている。
【0050】
評価の結果
イ)運転者が違和感を感じないことについての評価
任意に設定したガス欠ポイントPを終点としたときの各走行可能距離の表示装置の表示を以下の図6〜図8に示す。結果的に、▲3▼の方法が最もデータのがたつきがなくベストであることがわかる。
【0051】
図6は、基準燃費の計算方法として前記▲1▼の経過時間による方法を採用したものの結果を示す。この図において横軸は車両の可能走行距離の表示装置による表示開始からの時刻、縦軸は推定残距離と真残距離である。x=0.3以外は特に大きながたつきはなかった。
【0052】
図7は基準燃費の計算方法として前記▲2▼の消費燃料による方法を採用したものの結果を示す。この図において横軸はリザーブ点からの残燃料量、縦軸は推定残距離と真残距離である。y=1以外は特に大きながたつきはなかった。
【0053】
図8は基準燃費の計算方法として前記▲3▼の更新前の基準燃費に重みを付ける方法、つまり、本願発明を採用したものの結果を示す。
横軸は可能走行距離の表示装置のよる表示開始からの消費燃料、縦軸は可能走行距離の表示装置の表示と真残距離である。大きながたつきはみられなかった。がたつきの無さでは3種類の中で一番であり、運転者にとって最も違和感がないことがわかった。
【0054】
ロ)表示が正確であることについての評価
今回の走行データ中に任意のガス欠ポイントPを5つ設定し、前述の(3)式に従って、基準燃費の計算方法が異なる前述の3つの方法についてそれぞれ評価した。その結果を以下に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0055】
評価の平均値をみると方法違いによる差は明らかであり、▲1▼の方法の平均値は0.253、▲2▼の方法の平均値は0.200、▲3▼の方法の平均値は0.149であり、▲3▼の方法がベストであることがわかった。その中でも差はわずかであるがn=400が評価0.146で最小値となったためベストであることがわかった。
つまり、▲3▼の方法でかつn=400を採用した場合が、最も車両の可能走行距離を正確に表示できることがわかった。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願発明の車両の走行距離の表示装置によれば、走行状況に応じて変化しかつ更新される基準燃費を基に車両の可能走行距離を演算するので、現実の走行状況に即した車両の可能走行距離を表示することができる。また、基準燃費を演算するのに燃料の残容量の要素を係数を変化させる形で組み入れて、基準燃費に対する区間燃費の最新の値を反映させる割合(重み)を変えるようにすれば、燃料の残容量が少なくなるにつれて、最新の区間燃費をより重く評価して基準燃費を演算することができ、より現実の走行に即した車両の可能走行距離を表示できる。また、装置起動時に前回基準燃費として、車両の走行履歴から演算される、例えば現時点を基準としてそこから過去にさかのぼった所定数の区間燃費の平均値を採用すれば、その車両にとって平均的な燃費を基に車両の可能走行距離を演算できるので、同値が現実の可能走行距離値から大きく外れることがなく、信頼性の高い可能走行距離を表示でき、また、可能走行距離の表示値が急激に変化することがなく、現実の可能走行距離に近い形で表示することができ、運転者にとって違和感の少ない表示が行える。
また、演算手段には、運転者を識別する識別手段と、識別手段により識別された運転者別に演算された区間燃費が記憶される記憶手段を接続する構成にすれば、運転者別に車両の可能走行距離の演算を行なうので、より正確な車両の可能走行距離を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両の可能走行距離の表示装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の車両の可能走行距離の表示装置の効果を説明するためのもので、当該表示装置の構成要素の一部が車両に組み込まれた状態を示す概略図である。
【図3】真残距離を説明するための図である。
【図4】真残距離を説明するための図である。
【図5】本発明の車両の可能走行距離の表示装置の効果を説明するためのもので、当該表示装置を搭載した車両が実際の走行したときの時刻と燃費の関係を示す図である。
【図6】基準燃費の計算方法として経過時間による方法を採用したときの推定残距離と真残距離との比較を示す図である。
【図7】基準燃費の計算方法として消費燃料による方法を採用したときの推定残距離と真残距離との比較を示す図である。
【図8】基準燃費の計算方法として更新前の基準燃費に重みを付ける方法を採用したときの推定残距離と真残距離との比較を示す図である。
【符号の説明】
1…CPU(演算手段)
2…残燃料センサ
3…燃料消費量センサ
4…走行距離センサ
5…イグニッションスイッチ
6…IDカード読取手段(識別手段)
7…記憶手段
8…ディスプレイ(表示手段)
Claims (6)
- 燃料の残容量が所定値より少なくなったとき、燃料の残容量で走行可能な車両の走行距離を表示する車両の可能走行距離の表示装置であって、
燃料の残容量が所定値より少なくなったことを検知する残燃料センサと、
燃料の消費量を検知する燃料消費量センサと、
車両の走行距離を検知する走行距離センサと、
前記燃料消費量センサ及び前記走行距離センサからのそれぞれの出力信号を基に走行時の所定区間毎の区間燃費を演算し、該区間燃費の最新の値とそれより以前の過去の燃費データとから基準燃費を所定区間毎に演算して更新し、該基準燃費に燃料の残容量を乗じて車両の可能走行距離を演算する演算手段と、
該演算手段で演算された車両の可能走行距離を表示する表示手段とを備えることを特徴とする車両の可能走行距離の表示装置。 - 前記演算手段では、以下の式に基づいて車両の可能走行距離の演算が行われることを特徴とする請求項1記載の車両の可能走行距離の表示装置。
車両の可能走行距離=基準燃費×燃料の残容量
基準燃費=(m×前回基準燃費+区間燃費の最新の値)/(m+1)
m: 燃料の残容量によって決定する係数
前回基準燃費:車両が所定区間走行するごとに基準燃費を更新するが、更新する直前の基準燃費
区間燃費: 燃料を所定量消費する間の平均燃費 - 当該車両の可能走行距離の表示装置の起動時に、前記前回基準燃費として、前記演算手段に接続された記憶手段に入力されている、車両の走行履歴から演算される所定数の区間燃費の平均値を採用することを特徴とする請求項2記載の車両の可能走行距離の表示装置。
- 当該車両の可能走行距離の表示装置起動時に、前記前回基準燃費として、前記演算手段に接続された記憶手段に入力されている、車両の走行履歴から演算される総区間燃費の平均値を採用することを特徴とする請求項2記載の車両の可能走行距離の表示装置。
- 前記演算手段には、運転者を識別する識別手段と、該識別手段により識別された運転者別に演算された区間燃費が記憶される記憶手段が接続され、
前記演算手段では、記憶手段から運転者別に記憶された区間燃費が読み込まれ、該区間燃費を基に運転者別に車両の可能走行距離の演算が行われ、その結果が表示手段により表示されることを特徴とする請求項1または2記載の車両の可能走行距離の表示装置。 - 燃料の残容量が所定値より少なくなったとき、燃料の残容量で走行可能な車両の走行距離を表示する車両の可能走行距離の表示方法であって、
燃料の残容量が少なくなった時点で、その車両の過去の走行履歴から演算される燃費を基にして可能走行距離が以下の式に基づいて演算されて表示されることを特徴とする車両の可能走行距離の表示方法。
車両の可能走行距離=基準燃費×燃料の残容量
基準燃費=(m×前回基準燃費+区間燃費の最新の値)/(m+1)
m: 燃料の残容量によって決定する係数
前回基準燃費:車両が所定区間走行するごとに基準燃費を更新するが、更新する直前の基準燃費
区間燃費: 燃料を所定量消費する間の平均燃費
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