JP2004257978A - 使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置 - Google Patents

使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】長期間にわたって使用済原子燃料貯蔵容器を監視する装置を提供する。
【解決手段】保管庫12内に収容された使用済原子燃料貯蔵容器40に状態センサ20を配設する。また保管庫12外にデータ収集部30を設ける。そして、前記使用済原子燃料貯蔵容器40が使用済燃料の崩壊熱により加熱されると、前記使用済原子燃料貯蔵容器40に配設された状態センサ20が熱を感知して電力を発生させる。このとき状態センサ20は前記使用済原子燃料貯蔵容器40の状態を計測する。この計測した結果をデータ収集部30へ出力する。データ収集部30は状態センサ20から出力される信号を時間的に連続して監視する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置に係り、特に燃料貯蔵の状態を長期間にわたって監視する使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所から出る使用済燃料はウランやプルトニウムを回収し、燃料として再利用するために再処理される。この使用済燃料が再処理されるまでの間は貯蔵施設において貯蔵される。この貯蔵にはプール貯蔵方式又は金属キャスク乾式貯蔵方式が用いられている。プール貯蔵方式は水中に設置された金属製の枠組みに使用済燃料を収納して、使用済燃料からの発熱をプールの水により除去している。また、金属キャスク乾式貯蔵方式は金属製の燃料貯蔵容器(以下、キャスクという)に使用済燃料を収納して、使用済燃料からの発熱をキャスク周辺の空気により冷却している。そして、使用済燃料から放射される放射線はキャスク及び保管庫により遮蔽している。この金属キャスク乾式貯蔵方式に用いられる容器は様々な構造があり、その中でもコスト低減効果が期待できるコンクリートキャスク方式が注目されている。
【0003】
ところで貯蔵施設では、使用済燃料を金属製のキャニスタ内に密封してキャスク内に収納配置し、このキャスクを保管庫内に多数個収容した状態で一般に40年から60年の間、長期間保存している。このため、使用済燃料の貯蔵期間中は、高温の使用済燃料にキャニスタが加熱されてクラックが生じ、そこから放射線が放射されないように、キャニスタ表面やキャスクの吸排気口の温度及び保管庫内外の放射線量などをセンサにより測定・監視を行っている。
【0004】
また、他の監視方法として、キャスクの排気口近傍にパルスレーザ光を照射して、排気口から排出された気体を励起させる。そして、この励起された気体にレーザ光を照射して吸収波長を測定してキャスクから排出された気体を特定し、放射線漏洩を監視する方法がある(特許文献1)。
【0005】
また、キャニスタの上部に設けられた一次蓋と二次蓋との間にヘリウムガスを加圧封入して二次蓋に光線定盤を配置し、キャスク外部から二次蓋へ光を照射して光線定盤に生じる縞模様の変化を監視する方法がある。これによれば、キャニスタが正常であれば二次蓋は外側に膨らみ、キャニスタにクラック等が発生してキャニスタ内の圧力が低下すると二次蓋が平坦な状態となるので、正常時と異常時とで光線定盤に生じる縞模様が変化する。従ってこの縞模様の変化を監視することによって、キャニスタ内の充填ガス漏洩の有無を監視している(特許文献2)。
さらに、作業員が保管庫内を巡回・点検作業をして監視する場合もある。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−48899号公報
【特許文献2】
特開2002−116293号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法ではセンサで計測した信号は保管庫外に出力しなければならず、この場合センサからの出力はケーブルにより行われるので、ケーブルの数が膨大になり、このケーブルが断線する虞がある。また、保管庫内に計測装置を配置すると保管庫内の設備が複雑となり、さらに計測装置を保守・点検するために作業者が保管庫内に入らなければならず放射線を浴びる虞があった。また、作業員が保管庫内を巡回、点検作業をする場合でも、放射線の蓄積を避けるために巡回、点検作業の頻度は限られてしまう。
【0008】
本発明は従来技術の欠点を解消するためになされたもので、保管庫内に複数個収容されたキャスクと、キャスク内部に収納配置されるキャニスタとの状態を連続して長期間にわたり監視し、異常を検知した場合には、放射線を浴びることのない安全な外部より異常状態をリアルタイムに監視する使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法は、保管庫内に収容された使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法であって、前記使用済原子燃料貯蔵容器に配設された状態センサが熱を感知するとゼーベック効果により電力を発生させて前記使用済原子燃料貯蔵容器の状態を計測し、当該計測の結果を保管庫外にあるデータ収集部へ出力して使用済原子燃料貯蔵容器の状態を時間的に連続して監視することを特徴としている。
【0010】
この場合、状態センサは使用済原子燃料貯蔵容器表面の温度を計測する構成とできる。また、状態センサは使用済原子燃料貯蔵容器から漏洩した放射線量を計測する構成とでき、さらに放射線量及び温度を計測する構成とできる。
【0011】
また、本発明の使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視装置は、保管庫内に収容された使用済原子燃料貯蔵容器の監視装置であって、温度差が生じるとゼーベック効果により電力を発生させる電源と、前記使用済原子燃料貯蔵容器の状態を計測して計測信号を出力する信号出力手段とを一チップ化した状態センサを、使用済原子燃料貯蔵容器と大気との間で温度差が取れるように前記使用済原子燃料貯蔵容器へ配設し、前記計測信号を入力して前記使用済原子燃料貯蔵容器の状態を監視するデータ収集部を前記保管庫外に設けてなることを特徴としている。
【0012】
【作用】
上記のごとく構成した本発明は、使用済原子燃料貯蔵容器が使用済燃料の崩壊熱等により加熱される。この加熱により前記貯蔵容器に配設された状態センサの電源が熱電発電をする。この電源は燃料貯蔵容器が前記崩壊熱により加熱される間中発電し続ける。この電力により状態センサが燃料貯蔵容器の状態を計測してデータ収集部へ出力する。これにより、燃料貯蔵容器から離れた位置からリアルタイムで燃料貯蔵容器の状態を長期間にわたり異常を監視できる。
【0013】
また、前記状態センサに温度センサを設ければ、燃料貯蔵容器の表面温度をリアルタイムで監視できる。
また、状態センサに放射線量を計測するセンサを設ければ、燃料貯蔵容器から漏洩した放射線量をリアルタイムで監視できる。さらに、状態センサに温度センサ及び放射線量計測センサを設ければ、燃料貯蔵容器の状態をより詳しく監視することができる。
【0014】
また、燃料貯蔵容器に貯蔵された使用済燃料の崩壊熱により前記貯蔵容器が加熱される間は、状態センサが熱電発電を行う。そして、前記貯蔵容器の状態を計測し、この計測結果をデータ収集部に出力する。これにより、前記燃料貯蔵容器の状態を長期間にわたって連続して異常の監視を行うことができる。また、前記データ収集部は保管戸外に設けられているので、放射線等の影響がない安全な場所から燃料貯蔵容器の状態を監視できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。本実施の形態に係る使用済原子燃料貯蔵容器の監視装置の概略図を図1に示す。図1は燃料貯蔵容器40の監視装置10を保管庫12内に収容されたコンクリートキャスク40に配設した状態を示し、監視装置10は状態センサ20及びデータ収集部30から構成されている。図2に状態センサ20及びデータ収集部30の構成図を示す。
【0016】
状態センサ20はセンサ22、電源24、信号処理回路26及び信号送信アンテナ28から構成され、一のチップに形成されている。また、信号処理回路26及び信号送信アンテナ28で信号出力手段を構成している。電源24はゼーベック効果を生じる半導体素子からなり、熱電発電を行う構成である。この半導体素子では、温度差が1℃あたり数mVしか電圧を生じることができないため、複数の前記半導体素子を直列接続してセンシング、信号処理及び信号送信を行うための電力を発電している。この電力はセンサ22及び信号処理回路26に供給される。また、この電源24は状態センサ20の表裏で温度差を取るように配設されている。
【0017】
センサ22は温度センサからなり、状態センサ20が配設されたコンクリートキャスク40等の温度を計測できるように状態センサ内に配置されている。前記温度センサは電源24から電力を供給されると計測を開始する構成である。また、前記温度センサには計測された信号の出力側に信号処理回路26が接続されている。この信号処理回路26は前記信号を無線送信するための処理を行う構成である。また、信号処理回路26の信号出力側に信号送信アンテナ28が接続されている。
【0018】
データ収集部30は信号受信アンテナ32、信号処理回路34及びデータ処理部36から構成されている。信号受信アンテナ32には信号処理回路34が接続され、信号処理回路34の信号出力側にはデータ処理部36が接続されている。信号処理回路34は前記信号受信アンテナ32において受信した信号をデータ処理部36でデータ処理できるように信号処理を行う構成である。また、データ処理部36は状態センサ20で計測した計測値を読み取り、時間毎に前記計測値を表示し、また計測値を保存する構成である。
【0019】
このような監視装置10の状態センサ20は、保管庫12内に設置されたコンクリートキャスク40及びキャニスタ42の表面に配設される。図3にコンクリートキャスク40の断面図を示す。コンクリートキャスク40には使用済燃料を密封したキャニスタ42が収納配置されている。また、キャニスタ42とコンクリートキャスク40との間にはキャニスタ42を空冷する通気路44が設けられる。コンクリートキャスク40には通気路44へ空気を供給・排出する冷却空気入口46及び冷却空気出口48が設けられ、使用済燃料の崩壊熱は自然対流により除去される。状態センサ20をキャニスタ42表面に配設するときは、状態センサ20に設けられた温度センサをキャニスタ42側に向け、さらに状態センサ20の表裏をキャニスタ42表面と通気路44を流れる冷却空気側とに向けて、キャニスタ42表面と前記冷却空気側とで温度差を感知するように配設する。また、状態センサ20をキャスク40表面に配設するときは、キャニスタ42に配設するときと同様にして配設する。状態センサ20を配設する箇所は任意の箇所でよく、例えばキャニスタ42の冷却空気入口46・出口48の近傍、及びコンクリートキャスク40の冷却空気出口48近傍に配設すればよい。また、状態センサ20を配設する箇所に複数の状態センサ20を配設してもよい。
【0020】
また、監視装置10のデータ収集部30は保管庫12外部に設けられている。
このように構成した燃料貯蔵容器の監視装置10において、燃料貯蔵容器を監視する動作は次のようになる。キャニスタ42は使用済燃料の崩壊熱により加熱される。また、使用済燃料が臨界反応を起した場合は、キャニスタ42及びコンクリートキャスク40が加熱される。このとき、状態センサ20の電源24ではキャニスタ42表面と冷却空気と、及びコンクリートキャスク40と空気との間で温度差が生じて電力を発生する。発生した電力はセンサ22及び信号処理回路26に供給され、センサ22はキャニスタ42及びコンクリートキャスク40の表面温度を計測する。計測された温度の信号は信号処理回路26に出力され、この信号処理回路26で信号を無線送信するための処理が行われる。この処理された信号は信号送信アンテナ28に出力され、信号送信アンテナ28からデータ収集部30の信号受信アンテナ32へ無線送信される。
【0021】
信号受信アンテナ32で受信した信号は信号処理回路34へ出力され、データ処理部36で処理を行える信号に変換された後にデータ処理部36へ出力される。データ処理部36は信号を入力して状態センサ20で計測した計測値を読み取るとともに、計測時間毎に前記計測値を表示し、前記計測値を保存する。また、データ処理部36は前記計測値を読み取るとともに、予め設定してある値を超えた異常の場合に監視者へ警報を発する構成としてもよい。
【0022】
状態センサ20による計測はキャニスタ42、コンクリートキャスク40が使用済燃料の崩壊熱により加熱されている間行われ、計測データをデータ収集部30へ送信し続けて燃料貯蔵容器の状態を時間的に連続して監視している。
【0023】
そして、使用済燃料を貯蔵して数十年が経つと使用済燃料から崩壊熱等が発生しなくなり、キャニスタ42及びコンクリートキャスク40が加熱されなくなる。このため、状態センサ20へ熱が伝わらず、電源24の半導体素子に温度差が生じなくなるので熱電発電を行わない。また、データ収集部30への計測データの送信が行われなくなる。この状態になると熱に起因する燃料貯蔵容器の異常の監視が不要になったと判断する。
【0024】
このような実施形態の燃料貯蔵容器の監視装置10は、コンクリートキャスク40、キャニスタ42の温度が上昇して空気との間に温度差が生じると熱電発電をするので、バッテリ又は外部からの電力供給を必要とせず、作業者によるバッテリ交換又は電力供給配線のメンテナンスの必要がない。このため、異常時においても状態センサで計測中にバッテリ切れ等を起すことなく連続して監視することができ、また正常時においても長期間にわたり連続して監視を行うことができる。
【0025】
また、状態センサ20のセンサ22及び信号処理回路26は熱電発電により発生した電力により起動して、センサ22の計測値をデータ収集部30に無線送信するので、キャニスタ42やコンクリートキャスク40に異常が発生した場合には、すぐに監視者が異常発生を知ることができる。
【0026】
また、状態センサ20で計測した信号は無線送信されるので保管庫12内がケーブルで複雑になることがなく、さらに断線の虞もないので確実に信号をデータ収集部30へ送信することができ、安全な保管庫12外部から監視を行うことができる。
【0027】
また、状態センサ20を配設する箇所に複数の状態センサ20を配設しておけば、一の状態センサ20が故障しても他の状態センサ20で監視を続けることができ、作業者が状態センサ20の修理・交換のために保管庫12内に入って作業をすることがなくなり、作業者に対する安全性が向上する。また、複数の状態センサ20により監視を行うことにより、使用済燃料の貯蔵に対する安全性も向上する。
【0028】
本実施の形態では、センサ22を温度センサとする構成としたが、他の実施の形態として放射線量を測定するセンサ又は音響センサを用いる構成とできる。また、これらのセンサを組み合わせた構成にもできる。これにより、キャニスタ42より漏洩した放射線量を計測してデータ収集部30へ無線送信し、監視者が放射線量を知ることができる。また複数のセンサ22を組み合わせることにより、キャニスタ42及びコンクリートキャスク40の状態を詳しく知ることができる。
【0029】
また、本実施の形態ではコンクリートキャスク40を用いた例として説明したが、金属製のキャスクなどの乾式貯蔵方式にも利用できる。
また、状態センサ20とデータ収集部30との距離が遠い場合、及び電波の送信受信の状態が悪い場合は、中継機を介して計測データを送信するように構成すればよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明の使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法及び装置は、保管庫内に収容された燃料貯蔵容器の異常監視方法であって、前記燃料貯蔵容器に配設された状態センサが熱を感知するとゼーベック効果により電力を発生させて前記燃料貯蔵容器の状態を計測し、当該計測の結果を保管庫外にあるデータ収集部へ出力して燃料貯蔵容器の状態を時間的に連続して監視する構成とした。この構成により、保管庫内に複数個収容されたキャスクと、キャスク内部に収納配置されるキャニスタとの状態を連続して長期間にわたり監視でき、異常を検知した場合には、放射線を浴びることのない安全な外部より異常状態をリアルタイムに監視できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る使用済原子燃料貯蔵容器の監視装置の概略図である。
【図2】本実施の形態に係る使用済原子燃料貯蔵容器の構成図である。
【図3】コンクリートキャスクの断面図である。
【符号の説明】
10………監視装置、12………保管庫、20………状態センサ、22………センサ、24………電源、26………信号処理回路、28………信号送信アンテナ、30………データ収集部、32………信号受信アンテナ、34………信号処理回路、36………データ処理部、40………コンクリートキャスク(燃料貯蔵容器)、42………キャニスタ。

Claims (4)

  1. 保管庫内に収容された使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法であって、前記使用済原子燃料貯蔵容器に配設された状態センサが熱を感知するとゼーベック効果により電力を発生させて前記使用済原子燃料貯蔵容器の状態を計測し、当該計測の結果を保管庫外にあるデータ収集部へ出力して使用済原子燃料貯蔵容器の状態を時間的に連続して監視することを特徴とする使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法。
  2. 請求項1に記載の使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法であって、前記状態センサは使用済原子燃料貯蔵容器表面の温度を計測することを特徴とする使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法であって、前記状態センサは使用済原子燃料貯蔵容器から漏洩した放射線量を計測することを特徴とする使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視方法。
  4. 保管庫内に収容された使用済原子燃料貯蔵容器の監視装置であって、温度差が生じるとゼーベック効果により電力を発生させる電源と、前記使用済原子燃料貯蔵容器の状態を計測して計測信号を出力する信号出力手段とを一チップ化した状態センサを、使用済原子燃料貯蔵容器と大気との間で温度差が取れるように前記使用済原子燃料貯蔵容器へ配設し、前記計測信号を入力して前記使用済原子燃料貯蔵容器の状態を監視するデータ収集部を前記保管庫外に設けてなることを特徴とする使用済原子燃料貯蔵容器の異常監視装置。
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