JP2004256721A - 含フッ素樹脂成形品の表面処理方法及び弾性ロール、並びにチューブ内面の処理装置 - Google Patents
含フッ素樹脂成形品の表面処理方法及び弾性ロール、並びにチューブ内面の処理装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】含フッ素樹脂成形品の表面をアルカリ金属含有液に接触させて表面処理する工程と、表面処理された表面をコロナ放電処理する工程と、コロナ放電処理された表面を次式:(R1)n Si(OR2)4−nで表される化合物を含有する溶液に接触させて処理する工程とを有する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チューブ等の含フッ素樹脂成形品の表面処理方法及び弾性ロール、並びにチューブ内面の処理装置に関し、特に、弾性ゴム等の被接着物との接着性を改善するための含フッ素樹脂成形品の表面処理方法及び弾性ロール、並びにチューブ内面の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
含フッ素樹脂は、耐薬品性、耐熱性、離型性等の特性が極めて優れているため、従来から複写機やレーザプリンタの定着ロールの外層材等の種々の用途に広く使用されている。ここで、上記定着ロールは、金属ロールである芯金の外面にシリコーンゴム弾性体(Si系接着剤層)を設け、さらにその外側に含フッ素樹脂チューブを接着し、この含フッ素樹脂チューブが離型層として機能する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、含フッ素樹脂は、その化学構造に起因して他の材料と難接着性であるという特性がある。従って、定着ロールにおける含フッ素樹脂チューブとシリコーンゴムとの接着性を改善すべく、以下の技術が報告されている。第1の技術は、チューブ表面をアルカリ金属の溶液でエッチング処理し、フッ素原子を化学反応で遊離させて表面を極性化し、次いで表面を真空コロナ放電処理する技術である(特許文献2参照)。第2の技術は、チューブ表面をアルカリ金属の溶液でエッチング処理した後、アルコキシシランを含有する溶液に浸漬する技術である(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−127816号公報
【特許文献2】
特開平5−96657号公報
【特許文献3】
特開平6−16839号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術を用いたとしても、弾性ゴム等の被接着物との接着性の改善効果は依然として不充分であった。特に、銀行業務等ではレーザビームプリンタを用いて帳票類を高速かつ連続印刷する必要があり、200万枚を超える印字を行ってもトラブルの生じないことが求められている。この場合、長期に渡って定着ロールを高温下で使用することになるが、このような高温環境下で長期にわたって接着強度を確保する技術は実現されていない。
【0006】
また、上記従来技術の場合、含フッ素樹脂チューブのコロナ放電処理を確実かつ容易に行う装置の開発には至っていない。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、含フッ素樹脂成形品の表面をアルカリ金属含有液で表面処理し、次いでコロナ放電処理し、次いで所定の化合物の含有溶液で処理することで、初めて含フッ素樹脂成形品の接着性を長期かつ高温環境下で維持できることを見出した。特に、上記処理は、含フッ素樹脂成形品と弾性ゴムとの界面での剥離を防止するのに有効であることが判明した。従って、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、特に高温環境下での被接着物との接着性を改善することができる含フッ素樹脂成形品の表面処理方法及び弾性ロール、並びにチューブ内面の処理装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明によれば、含フッ素樹脂成形品の表面をアルカリ金属含有液に接触させて表面処理する工程と、前記表面処理された表面をコロナ放電処理する工程と、前記コロナ放電処理された表面を次式:(R1)nSi(OR2)4−n(式中、R1は同一でも異なっていてもよく、アクリロキシル基、メタクリロキシル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する有機基、置換又は非置換の一価炭化水素基、及び水素原子の群から選ばれる少なくとも1種;R2は炭素原子数1から6のアルキル基;nは0〜3の整数)で表される化合物を含有する溶液に接触させて処理する工程とを有することを特徴とする含フッ素樹脂成形品の表面処理方法が提供される。
このようにすると、アルカリ金属含有液による表面処理、コロナ放電処理、アルコキシシランによる後処理のすべてをこの順で行う相乗効果により、含フッ素樹脂成形品の表面と弾性ゴム等の被接着物との接着性が著しく向上する。
【0009】
前記コロナ放電処理工程におけるコロナ放電電圧が5kV〜60kVである場合や、前記改質工程におけるコロナ放電を複数回施す場合に、含フッ素樹脂成形品の表面と、弾性ゴム等の被接着物との接着性がさらに向上する。
【0010】
また、本発明によれば、前記含フッ素樹脂成形品の表面処理方法によって内面が表面処理された含フッ素樹脂チューブを、弾性ゴムを介して芯金ロールの外側に接着してなる弾性ロールであって、前記含フッ素樹脂チューブと前記弾性ゴム間の初期の接着強度として、JIS―K6259に規定する180度剥離強度が40N/cm以上であることを特徴とする弾性ロールが提供される。
【0011】
さらに、230℃で14日経過後の前記含フッ素樹脂チューブと前記弾性ゴム間の接着強度として、前記180度剥離強度値が20N/cm以上であることを特徴とする弾性ロールが提供される。
【0012】
本発明によれば、前記含フッ素樹脂成形品の表面処理方法に用いるチューブ内面の処理装置であって、平行配置された2本のガイドロールと、前記ガイドロール間に配置され該ガイドロールの軸方向に延びるコロナ放電電極と、前記コロナ放電電極に対向しその軸方向が前記ガイドロールの軸方向と平行な電極ロールとを備え、含フッ素樹脂チューブが、長手方向を前記ガイドロールの軸方向と平行にして該ガイドロール間に掛け渡されて張力を負荷され、前記電極ロールは、前記含フッ素樹脂チューブの径方向に進退して該含フッ素樹脂チューブの外面と接することにより、前記コロナ放電電極と前記含フッ素樹脂チューブの内面との距離を調整するとともに、前記含フッ素樹脂チューブに対し径方向への回転力を与えることを特徴とするチューブ内面の処理装置が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る含フッ素樹脂成形品の表面処理方法の実施の形態について説明する。
【0014】
まず、本発明が適用される含フッ素樹脂成形品としては、特に限定されないが、含フッ素樹脂をチューブ状に成形した熱収縮型及び非収縮型のものを挙げることができる。チューブの厚さも特に限定されないが、処理作業性の面から30μm〜400μm、好ましくは70μm〜250μmとするのがよい。厚さが30μmより薄い場合は、処理中にチューブの変形等が見られ本発明の処理に適さない場合がある。一方、400μmより厚い場合にはコストが高くなる恐れがある。
【0015】
そして、含フッ素樹脂としては、アルカリエッチングにより接着性の向上が期待されるテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等を例示することができる。
【0016】
本発明の表面処理方法においては、まず、上記した含フッ素樹脂成形品の表面をアルカリ金属含有液に接触させて表面処理する(表面処理工程)。この工程は、従来公知のアルカリエッチング処理であり、成形品の表面からフッ素原子が遊離し、極性化した活性基が形成されると考えられる。アルカリ金属含有液は、例えば金属ナトリウムと液体アンモニア、又は金属ナトリウムとナフタレンを、エーテル系溶剤、又はグリコール系溶剤とエーテル系溶剤の混合溶剤に溶解することにより調整されたものの他、或いは市販のフッ素樹脂表面処理液(金属ナトリウムを含む)を用いることができる。
【0017】
表面処理を施す方法としては、含フッ素樹脂チューブの場合は、その一端部をポリエチレン、ポリプロピレン等のアルカリ金属含有液で冒されない栓で封止し、他端からアルカリ金属含有液を注ぐ方法が挙げられる。処理温度は、通常は室温で行えばよく、処理時間は1秒〜3分でよい。
【0018】
表面処理が終了すると、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤で適宜洗浄し、さらにアセトン、エチルメチルケトン等のケトン系溶剤で洗浄し、次いで仕上げ水洗を行い、表面処理の際に生成した塩や塩基等の水溶性成分を除去するのがよい。
【0019】
次に、表面処理された表面を大気中でコロナ放電処理する(コロナ放電処理工程)。この処理により、表面はさらに活性化し、極性化した活性基が急激に形成されると考えられる。又、コロナ放電処理すると、後述する後処理工程で用いるアルコキシシランと表面との接着性が良好になり、上記活性基とアルコキシシランが結合し易くなるものと考えられる。又、コロナ放電処理により、上記表面に微小な凹凸が形成され、くさび効果によってアルコキシシランと表面との接着性が良好になることも考えられる。特に、大気中でコロナ放電処理すると、空気中の酸素が上記表面に取り込まれるので、極性化した活性基の形成がより顕著となり、アルコキシシランと表面との接着性がさらに向上する。なお、アルコキシシランは活性基を保護し、活性基が消失するのを抑制する機能を有する。
【0020】
コロナ放電処理は、含フッ素樹脂成形品にアースとなる対向電極を接近又は接触させるとともに、成形品の表面側に放電電極を離間配置し、各電極間に高周波電圧を印加することで、放電電極に対向した成形品の表面にコロナ放電を生じさせる。
【0021】
コロナ放電処理の条件は特に限定されないが、コロナ放電電極と含フッ素樹脂成形品の表面との距離を好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは1mm〜2mmとする。又、対向電極は含フッ素樹脂成形品に密着させるのが好ましいが、1mm程度まで離間させてもよい。コロナ放電の際の印加電圧としては5kV〜60kV、好ましくは10kV〜40kVであるのがよい。なお、大気中では真空中に比べて電導度が低いため、コロナ放電電圧を5kV以上としている。印加電圧が5kV未満では、有効なコロナ放電が発生し難く処理効果が乏しくなる場合があり60kVを越えるとスパークが発生しやすくなるからである。印加する高周波電圧の出力は好ましくは50〜1000W、より好ましくは100〜500Wである。
【0022】
又、コロナ放電処理の回数は、1回でも構わないが、2〜10回、より好ましくは3〜5回の複数回施すとよい。この理由は明確ではないが、放電処理した際に空気中の酸素と含フッ素樹脂成形品の活性部位とが反応し、酸素を含む活性基を形成するものと考えられる。なお、処理回数が10回を越えても改質効果の向上はあまり期待できない。
【0023】
コロナ放電処理を行う方法、装置は特に限定されないが、含フッ素樹脂チューブを処理する場合は、以下に示す処理装置を用いると、処理を確実かつ容易に行うことができる。処理装置の構成及び処理の態様について図1、図2を参照して簡単に説明する。
【0024】
図1において処理装置10は、基台2と、互いに平行配置され軸が鉛直方向に延びる2本のガイドロール4a、4bと、ガイドロール4a、4b間に配置され鉛直方向に延びるコロナ放電電極8と、コロナ放電電極に対向し軸が鉛直方向に延びる電極ロール6とを備えている。
【0025】
そして、含フッ素樹脂チューブ20は、長手方向を鉛直にした状態でガイドロール4a、4b間に掛け渡されて張力を負荷されている。又、電極ロール6は、含フッ素樹脂チューブ20の外面と接し、コロナ放電電極8とチューブ20の内面との距離を保持している。なお、コロナ放電電極8の長さは含フッ素樹脂チューブ20の長さより若干長く、又、ガイドロール4a、4b及び電極ロール6の長さはコロナ放電電極8の長さより長い。又、電極ロール6の径はガイドロール4a、4bの径より大きい。
【0026】
次に、図2を参照して処理装置10によるコロナ放電処理について説明する。まず、各ガイドロール4a、4bを図のL1方向に移動させ、ガイドロール4a、4bの間隔を狭める。さらに電極ロール6を図のL2方向(図の下側方向)に移動させ、ガイドロール4a、4bから離間させる。そして、この状態で含フッ素樹脂チューブ20をガイドロール4a、4b間に掛け渡す。次いで、ガイドロール4a、4bの間隔を広げてチューブに張力を負荷するとともに、電極ロール6を図のL2方向(図の上側方向)に移動させ、含フッ素樹脂チューブ20の外面に接しさせる。この際、電極ロール6の移動量を調整することにより、コロナ放電電極8とチューブの内面との距離dを調整して一定値に保持することができる。
【0027】
そして、電極ロール6を回転させて、含フッ素樹脂チューブ20に対し径方向への回転力を与えつつ、コロナ放電電極8と電極ロール6の間に電圧を印加してチューブ内面を順次コロナ放電処理する。なお、図2に示す実施形態では、電極ロール6を右回りに回転させ、含フッ素樹脂チューブ20の内面を図に左から右へ向かってコロナ放電処理する。処理の際の回転速度は、好ましくは0.5〜2m/分である。0.5m/分未満ではコスト的に不利であり、2m/分を越えると充分な処理効果が得られないからである。より好ましくは0.6〜1.6m/分、さらに好ましくは0.6〜1m/分とする。なお、この処理装置を用いて放電処理を複数回行うには、チューブを所定回数だけ回転させればよい。
【0028】
このように、本実施形態の処理装置によれば、装置に含フッ素樹脂チューブを容易に装着することができ、装着作業が容易になるとともに、電極ロールによってコロナ放電電極とチューブ内面の距離を調整したり一定値に保持するのが容易である。その結果、種々の径のチューブの処理にも対応できる。
【0029】
次に、コロナ放電処理された表面を以下の化合物を含有する溶液に接触させて処理する(後処理工程)。この化合物は、次式:(R1)nSi(OR2)4−n
(式中、R1は同一でも異なっていてもよく、アクリロキシル基、メタクリロキシル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する有機基、置換又は非置換の一価炭化水素基、及び水素原子の群から選ばれる少なくとも1種;R2は炭素原子数1から6のアルキル基;nは0〜3の整数)で表されるアルコキシシランである。アルコキシシランは、表面処理工程及びコロナ放電処理工程によって生成した活性基を保護し、活性基が消失するのを抑制する。
【0030】
R1におけるアクリロキシル基、メタクリロキシル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する有機基としては、例えば下記式
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
で表されるものを挙げることができる。
【0031】
R1における非置換の一価炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアリール基が挙げられる。また、置換の一価炭化水素基としては、上記非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン等で置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を挙げることができる。
【0032】
R2の具体例としては、、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。
【0033】
アルコキシシランの代表的な例としては、
H−Si−(OCH3)3、Si−(OC2H5)4、H−Si−(OC2H5)3、
CH3−Si−(OC2H5)3、(CH3)2−Si−(OCH3)2、
CH2=CH−Si−(OCH3)3、CH2=CH−Si−(OC2H5)3、H2N−C2H4−NH−C3H6−Si−(OC2H5)3、
及び下記式
【化5】
【化6】
で表されるものを挙げることができ、これらのアルコキシシランは1種単独、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
アルコキシシランを含有する溶液としては、アルコキシシランをトルエン、キシレン、ヘキサン等の有機溶剤で希釈した溶液、又はチタン系縮合触媒、白金触媒、有機溶剤等を含有するプライマーにアルコキシシランを希釈した溶液を用いることができる。そして、後処理工程は、例えば含フッ素樹脂成形品の表面に刷毛、ガーゼ等により上記溶液を塗布することにより行うことができる。塗布時間は通常1〜5分であり、塗布温度は通常室温でよい。塗布後、風乾等により表面を適宜乾燥し、処理を終了する。
【0035】
以上のようにして、表面処理が終了した含フッ素樹脂成形品は、表面処理工程及びコロナ放電処理工程によって表面に極性化した活性基(OH基やO等)が顕著に形成され、さらに後処理工程によってこれらの基がアルコキシシランと結合して保護されている。従って、この後に弾性ゴムや樹脂等の被接着物と接着した場合、これらの基が被接着物の分子構造と結合し、接着性が良好となる。特に縮合硬化型、付加硬化型、有機過酸化物硬化型等の各種シリコーンゴムに対する接着性、とりわけ高温使用での耐熱接着性に優れたものとなる。
【0036】
なお、表面処理工程とコロナ放電処理工程との間の時間間隔はかなり長期(〜半年)としてもよいが、コロナ放電処理工程と後処理工程との間の時間間隔はこれより短期(〜2週間)とし、さらに、後処理工程と被接着物の接着作業との間の時間間隔はさらに短期(〜2日)とするのがよい。
【0037】
そして、表面処理が終了した含フッ素樹脂成形品を弾性ゴム等の被接着物と接着して各種製品を製造することができる。例えば、内面が表面処理された含フッ素樹脂チューブを、弾性ゴムを介して芯金ロールの外側に接着して製造した弾性ロールは、含フッ素樹脂チューブと弾性ゴム間の接着強度に優れたものとなる。特に、この弾性ロールを高温で使用しても、長期にわたって接着強度を確保することができる。
【0038】
ここで、芯金ロールとしては公知のものを使用できるが、例えば鉄、ステンレススチール,アルミニウムを用いることができる。又、弾性ゴムとしては、例えば縮合硬化型、付加硬化型、有機過酸化物硬化型等の各種シリコーンゴムを用いることができる。
【0039】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
実施例1.
(A)表面処理工程
テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体(PFA)からなるフッ素樹脂熱収縮チューブ(収縮前内径100mm、肉厚240μm、長さ520mm)の一方の端をポリエチレン製の栓で封止し、他端から内部にフッ素樹脂表面処理液(株式会社潤工社製、商品名:テトラエッチB)を注ぎ込み2分間静置した。チューブからテトラエッチBを排出し、イソプロピルアルコールとアセトンでチューブに付着している有機物を洗い落とし、次に水洗してナトリウム塩等を除去した後、風乾した。
【0041】
(B)コロナ放電処理工程
次に、このチューブを図1に示した処理装置に装着し、電極ロールをチューブ外面へ密着させてコロナ放電電極とチューブ内面との間隔を1mmとし、回転速度毎分1m、高周波電圧出力300Wとして放電電圧25kVで電圧を印加し、チューブ内面にコロナ放電処理を行った。放電処理回数(回転数)は1回とした。
【0042】
(C)後処理工程
コロナ放電処理したチューブ内面に、メチルトリメトキシシラン20重量部、ビニルトリエトキシシラン2.0重量部、テトラブトキチタン5.0重量部、塩化白金酸のイソプロパノール溶液(白金濃度1重量%)1.5重量部、及びn−ヘプタン70.5重量部を混合して調整したプライマー溶液を塗布し、風乾した。
【0043】
(D)弾性ロールの製造
芯金ロール(アルミニウム製、外径97mm、長さ500mm)の外面にシリコーン系プライマーX−93−805(信越化学工業株式会社製、商品名)を塗布した後、このロールを回転させながら以下の組成の液状ゴムをスプレーガンによりロール外面に塗布した。この液状ゴムを1時間室温で風乾すると、厚さが1mmの未硬化シリコーンゴム層が形成された。液状ゴムは、シリコーンゴムコンパウンドKE−164U(信越化学工業株式会社製、商品名)100重量部、付加型硬化剤C−19A(信越化学工業株式会社製、商品名)0.5重量部、及び付加型硬化剤C−19B(信越化学工業株式会社製、商品名)2.5重量部を混合し、トルエン400重量部に均一溶解させて調製した。
【0044】
次に、このゴム層付芯金ロールを上記フッ素樹脂熱収縮チューブに挿入し、チューブをホットエアーガンで加熱収縮させて被覆させた。さらに、このロール体を200℃の乾燥機内に2時間放置し、未硬化シリコーンゴムの硬化を行うと共にシリコーンゴムとフッ素樹脂熱収縮チューブを接着させ、フッ素樹脂熱収縮チューブ/シリコーンゴム複合ロール(弾性ロール)を製造した。
【0045】
(E)接着性の評価
弾性ロールから、シリコーンゴムとフッ素樹脂熱収縮チューブの積層体を所定の大きさの試験片に切り出し、JIS―K6259に規定する180度剥離強度試験により接着強度を測定した。試験片は、弾性ロールの製造直後、弾性ロールを高温乾燥機に230℃×168時間の条件で放置後、及び230℃×336時間の条件で放置後にそれぞれ切り出した。
【0046】
(F)実機試験
得られた弾性ロールを所定の高速レーザービームプリンタの定着ロールとして装着し、定着温度220℃、A−4サイズ普通紙により所定文字を印字した際の印字耐久性試験を行った。シリコーンゴムとフッ素樹脂熱収縮チューブ間で剥離が発生するまでに印字できた枚数(印字耐久枚数)と、その時までの日数(耐久日数)を評価した。
【0047】
実施例2.
放電処理回数(回転数)を3回としたこと以外は、実施例1と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0048】
実施例3.
放電処理回数(回転数)を5回としたこと以外は、実施例1と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0049】
実施例4.
放電処理回数(回転数)を10回としたこと以外は、実施例1と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0050】
実施例5.
放電処理回数(回転数)を5回とし、コロナ放電電圧を10kVとしたこと以外は、実施例1と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0051】
実施例6.
放電処理回数(回転数)を5回とし、コロナ放電電圧を40kVとしたこと以外は、実施例1と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0052】
比較例1.
コロナ放電処理を行わなかったこと以外は、実施例1と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0053】
比較例2.
アルカリ金属含有液による表面処理を行わなかったこと以外は、実施例3と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0054】
比較例3.
アルカリ金属含有液による表面処理を行わなかったこと以外は、実施例4と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0055】
比較例4.
アルコキシシランによる後処理を行わなかったこと以外は、実施例3と全く同様にして弾性ロールを製造した。
【0056】
得られた結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、各実施例はいずれも、製造直後(初期)の接着強度に優れるだけでなく、長期にわたる高温環境下(230℃×168時間及び230℃×336時間)に放置後も接着強度の低下が少なかった。特に、コロナ放電処理を3回以上行った場合、高温環境下に放置後も接着強度が30N/cm以上に維持された。そして、各実施例はいずれも実機試験での印字耐久枚数、耐久日数が多く、200万枚を超える印字を行ってもシリコーンゴムからのフッ素樹脂熱収縮チューブの剥離がなかった。なお、各実施例におけるコロナ放電電圧は10kV〜40kVの範囲にあった。又、各実施例において、含フッ素樹脂チューブと弾性ゴム間の初期の接着強度として、JIS―K6259に規定する180度剥離強度が40N/cm以上であるとともに、230℃で14日間経過後の180度剥離強度値が20N/cm以上であった。つまり、各実施例は、含フッ素樹脂チューブと弾性ゴム間の接着強度が長期の高温使用後でも充分高い値を示した。
【0059】
一方、比較例1〜4の場合、高温環境下に放置すると接着強度が大幅に低下し、又、実機試験では印字耐久枚数が200万枚未満であり、実機での実用的な使用に耐えなかった。以上のことから、アルカリ金属含有液による表面処理、コロナ放電処理、アルコキシシランによる後処理のいずれを欠いても、長期にわたる高温環境下に放置後の接着強度の低下を防止できず、又、印字耐久枚数が少ないことから本発明の表面処理方法の優位性が明らかである。
【0060】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の表面処理方法によれば、アルカリ金属含有液による表面処理、コロナ放電処理、アルコキシシランによる後処理のすべてをこの順で行う相乗効果により、含フッ素樹脂成形品の表面と弾性ゴム等の被接着物との接着性が著しく向上し、とりわけ長期で高温使用しても接着性が低下しない。特に、縮合硬化型、付加硬化型、有機過酸化物硬化型等の各種シリコーンゴムに対する接着性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の処理装置の構成を示す上面図である。
【符号の説明】
2 基台
4a、4b ガイドロール
6 電極ロール
8 コロナ放電電極
10 処理装置
20 含フッ素樹脂成形品(含フッ素樹脂チューブ)
Claims (6)
- 含フッ素樹脂成形品の表面をアルカリ金属含有液に接触させて表面処理する工程と、前記表面処理された表面をコロナ放電処理する工程と、前記コロナ放電処理された表面を次式:
(R1)nSi(OR2)4−n
(式中、R1は同一でも異なっていてもよく、アクリロキシル基、メタクリロキシル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する有機基、置換又は非置換の一価炭化水素基、及び水素原子の群から選ばれる少なくとも1種;R2は炭素原子数1から6のアルキル基;nは0〜3の整数)で表される化合物を含有する溶液に接触させて処理する工程とを有することを特徴とする含フッ素樹脂成形品の表面処理方法。 - 前記コロナ放電処理工程におけるコロナ放電電圧が5kV〜60kVであることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素樹脂成形品の表面処理方法。
- 前記改質工程におけるコロナ放電を複数回施すことを特徴とする請求項1に記載の含フッ素樹脂成形品の表面処理方法。
- 請求項1又ないし3のいずれかに記載の含フッ素樹脂成形品の表面処理方法によって内面が表面処理された含フッ素樹脂チューブを、弾性ゴムを介して芯金ロールの外側に接着してなる弾性ロールであって、
前記含フッ素樹脂チューブと前記弾性ゴム間の初期の接着強度として、JIS―K6259に規定する180度剥離強度が40N/cm以上であることを特徴とする弾性ロール。 - さらに、230℃で14日間経過後の前記含フッ素樹脂チューブと前記弾性ゴム間の接着強度として、前記180度剥離強度値が20N/cm以上であることを特徴とする請求項4に記載の弾性ロール。
- 請求項1又ないし3のいずれかに記載の含フッ素樹脂成形品の表面処理方法に用いるチューブ内面の処理装置であって、
平行配置された2本のガイドロールと、前記ガイドロール間に配置され該ガイドロールの軸方向に延びるコロナ放電電極と、前記コロナ放電電極に対向しその軸方向が前記ガイドロールの軸方向と平行な電極ロールとを備え、
含フッ素樹脂チューブが、長手方向を前記ガイドロールの軸方向と平行にして該ガイドロール間に掛け渡されて張力を負荷され、
前記電極ロールは、前記含フッ素樹脂チューブの径方向に進退して該含フッ素樹脂チューブの外面と接することにより、前記コロナ放電電極と前記含フッ素樹脂チューブの内面との距離を調整するとともに、前記含フッ素樹脂チューブに対し径方向への回転力を与えることを特徴とするチューブ内面の処理装置。
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