JP2004256685A - 樹皮乾燥粉末を用いた土壌改良材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹皮の乾燥粉末に対しヒノキ科葉の粉末を容積比で1:1以上混合することにより、樹皮乾燥粉末の高撥水性および高C/N比を改善でき、且つ雑草抑制効果を付与した土壌改良材として有効利用することができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹皮乾燥粉末を用いた土壌改良材に関する。更に詳細には、樹皮の乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を混合してなる、保水性に乏しい土壌に適した土壌改良材に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材を採集した後に発生する樹皮と伐採現場で林地残渣として発生する枝葉は、抗菌性、殺虫性および雑草抑制効果を有することから、その有効利用法の開発が望まれてきたが、堆肥化されたものが土壌改良材として利用される程度であった。近年、ヒノキやスギの樹皮が有する抗菌性、殺虫性および雑草抑制効果といった成分を有効利用するため、マルチ資材や雑草抑制資材の開発が行われている。
【0003】
これまでに、それらの有用成分を工業的に抽出し、添加物として利用する試みがなされてきたが、抽出という煩雑な行程を経るため製品の高価格化を招き、普及の妨げとなってきた。一方、樹皮に簡単な加工を施しただけで有効利用できる方法が近年提案されてきている。
ヒノキあるいはスギの樹皮を農業あるいは造園用の土壌改良材などの資材として利用する提案としては次のようなものがある。ヒノキなどの樹皮粉砕物を芝生などに施工する方法(特許文献1)、スギ、ヒノキなどの樹皮粉砕物に燃焼灰を混合したものを土壌病害中防除組成物としてに用いる方法(特許文献2)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、このようにヒノキ、スギなどの樹皮を細切化し、農業あるいは造園用の土壌改良材等として利用する場合の課題は、以下の3点である。即ち、1)撥水性が高いため、保水性の悪い土壌には使用できない、2)C/N比が高く、土壌に混合すると窒素飢餓が起こり、作物や樹木を植えると生育不良となる、3)乾燥粉末にすると雑草抑制効果が失われる。これらの課題を改善するための手段として、次のような提案がなされている。
【0005】
撥水性の問題を解決するために、シリカを親水材として含有させる方法(特許文献3)、多孔性粉粒体・発酵物を配合する方法(特許文献4、特許文献5)、界面活性剤を添加する方法(特許文献6、特許文献7)などが提案されている。高C/N比の問題を解決するために、ヒノキ、スギなどの樹皮を発酵および/または炭化させる方法(特許文献8、特許文献9)が提案されている。
雑草抑制効果低下の問題を解決するために、炭化および/または発酵させた樹皮に生樹皮や葉を混合する方法(特許文献9)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2001−299078号公報
【特許文献2】
特開平11−116420号公報
【特許文献3】
特開平7−41号公報
【特許文献4】
特開平11−266696号公報
【特許文献5】
特開2001−78563号公報
【特許文献6】
特開2000−139205号公報
【特許文献7】
特開2002−84878号公報
【特許文献8】
特開平6−284815号公報
【特許文献9】
特開2001−31969号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、撥水性の改善については、上述した方法では有効成分を含有しない副資材を混合するため、効果が低下したりあるいは投入する資材量が増えることになり、更には化学合成物を添加するため樹皮本来が有する天然資材という特徴を損なうことになる。また、副資材を混合するため出来上がった資材の物理性及び化学性が単一でないため使用方法が複雑になるといった問題があった。
C/N比の改善については、上述した発酵や炭化といった方法により効果が得られるが、雑草抑制効果を発揮する有効成分も損なわれてしまう問題があった。特許文献9では、それを補うため炭化若しくは発酵させた樹皮に生樹皮や葉を混合させる方法が提案されているが、生樹皮を混合すると低下したC/N比が再び高くなり、C/N比が改善されるとは言い難い。また、特許文献9には生樹皮や葉を混合した後のC/N比の改善については何ら記載されていない。
更に、雑草抑制効果の低下に関する問題については、特許文献9に炭化および若しくは発酵させた樹皮に生樹皮や葉を混合させる方法が提案されているが、これはマルチ資材に関する提案であり、また敷設厚2cmでは効果がなく、5cm以上にしないと雑草抑制効果が得られないことが記載されている。敷設厚が5cm以上でないと効果が得られないのは、資材に含有される物質により雑草抑制効果が得られているのではなく、単なる物理的光遮蔽により抑制効果が発揮されているだけであり、ヒノキやスギの樹皮や葉に限定される効果ではない。
従って、本発明の課題は、生態系に優しい天然材料であり、各種の有効成分を含有する未利用材である樹皮を有効利用する際に問題となる高撥水性、高C/N比及び雑草抑制効果の低下を一括して解決した土壌改良材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記した課題を解決することを目的として鋭意研究した結果、樹皮乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を混合することにより、樹皮粉末のもつ高撥水性および高C/N比を低減でき、且つ雑草抑制効果を付与することができ、特に保水性に乏しい土壌に適した土壌改良材として利用できることを見出し本発明を完成させた。
即ち、本発明は、樹皮の乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を混合してなる土壌改良材に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で対象とする樹皮は、いずれの種類の樹皮でもよく特に限定されず、例えばスギ、クヌギ、ヒノキ、サワラ、シラカンバ、アカマツなどが挙げられる。ヒノキ科の葉としては、ヒノキ、サワラ、ニオイヒバなどの葉が挙げられる。樹皮およびヒノキ科葉は、苗木または成木から産出されるものが用いられる。樹皮および葉の採取時期は特に限定する必要はなく、春、夏、秋、冬のいずれの時期でもよい。樹皮および葉を採取する場合の樹齢や葉齢も特に限定されず、若齢木、老齢木、若葉、古葉のいずれでもよい。
樹皮の乾燥粉末は、上記の樹皮を絶乾状態まで乾燥させたものを粉砕機、製粉機または食繊機を用いて摩砕することにより得ることができる。粉末の粒経は5mm以下が好ましく、特に1mm以下が好ましい。粒経の下限値は特に限定されず、5mm以下あるいは1mm以下であればいずれでもよい。
【0010】
ヒノキ科葉の粉末は、ヒノキ、サワラ、オイヒバなどの葉を、粉砕機、製粉機または食繊機を用いて摩砕することにより得ることができる。ヒノキ科葉の粉末は、その粒経が5mm以下が好ましく、特に1mm以下が好ましい。粒経の下限値は特に限定されず、5mm以下あるいは1mm以下であればいずれでもよい。ヒノキ科葉の粉末は、その含水率は0から100%までのいずれでもよく、含水率に影響されることなく樹皮の乾燥粉末の撥水性を抑制することができる。従って、ヒノキ科葉の粉末は、加熱下に乾燥機で乾燥して絶乾状態にしたものであっても、あるいは多くの水分を含んでいてもよい。
【0011】
樹皮の乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を混合する割合は、容積比で7:3以上がよく、特に1:1以上が好ましい。混合する方法としては、樹皮の乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を、容器の中で混合するか、あるいは乾燥させた樹皮とヒノキ科葉を粉砕機の中に入れ同時に粉末化してもよい。
【0012】
このようにヒノキ科葉の粉末を混合した樹皮の乾燥粉末は、高撥水性および高C/N比が改善されるとともに、雑草抑制効果を有するようになり、土壌改良材として利用することができる。特に保水性に乏しい土壌に好適な土壌改良材として用いることができる。土壌改良材として用いるには、通常、対象となる土壌に混合して用いる。土壌改良材として土壌に混合する場合、対象とする土壌に対して5容積%以上、特に20容量%以上となる量を混合するのが好ましい。また、樹皮の乾燥粉末にヒノキ科葉の粉末を混合した後に水等を加えてペレット状に加工して土壌改良材として用いてもよい。
本発明の土壌改良材が対象とする土壌としては、保水性に乏しい土壌、即ち固相部分の体積が50〜60%以上、団粒形成が乏しい、あるいは比表面積が小さい、のいずれか一つ以上の条件を満たしている土壌が好適な対象である。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
茨城県つくば市においてヒノキ、スギ、サワラ、クヌギ、シラカンバ、アカマツから樹皮を、またヒノキ科の葉としてヒノキおよびサワラより、また比較としてアラカシおよびアオキより葉を採集した。また、北海道紋別市においてヒノキ科のニオイヒバより葉を採集し、材料として用いた。
採集した樹皮は、表面を軽く水洗した後、105℃に設定した通風乾燥機中で絶乾状態にした後、ミルを用いて粉末にした。また、採集した葉は、枝に付けた状態で、105℃に設定した通風乾燥機中で絶乾状態にした後、人力により枝から葉を採集した。その後、ミルを用いて粉末にした。
【0014】
(1)撥水性試験
上記の操作により得られた粉末を、表1に示す容積比の割合でビニール袋の中に入れ混合した。混合した各粉末1gずつを平底試験管(直径40mm×高さ130mm)に入れた後、蒸留水30mlをゆっくり注水した。注水直後、3、24時間の試験体の吸水状態を目視により、表1の下に示したように、0、+、++、+++の3段階の評価で表した。結果を表1に示した。
【0015】
【表1】
【0016】
表1の結果から明らかなように、樹皮粉末とヒノキ葉粉末を、好ましくは容積比で7:3以上で混合することにより撥水性の改善が認められ、特に5:5で混合することが効果的であった。
【0017】
(2)C/N比測定
ヒノキあるいはスギ樹皮の乾燥粉末にヒノキ葉の粉末を容積比1:1で混合した粉末について、C/Nコーダーを用いてC/N比を測定した。通常C/N比は35以上が好ましいとして評価される。結果を表2に示した。
【0018】
【表2】
【0019】
表2から分かるように、樹皮乾燥粉末単体の資材のC/N比は、ヒノキで75、スギで30であったのに対し、ヒノキ葉の粉末と樹皮乾燥粉末を混合した資材のC/N比は、ヒノキ樹皮乾燥粉末とヒノキ葉粉末の混合粉末資材で16、スギ樹皮乾燥粉末とヒノキ葉粉末の混合粉末資材で14と、C/N比が大幅に低減されている。
【0020】
(3)保水性試験
土壌改良材の一つの機能として要求される保水性について、以下の実験を行った。
上記の操作により得られたスギ樹皮乾燥粉末あるいはヒノキ樹皮乾燥粉末とヒノキ葉の粉末を、容積比で1:1の割合でビニール袋の中に入れ混合した。混合した各粉末24mlを赤玉土(小粒)56mlに混合した後、底部にステンレスメッシュ底を装着させた土壌透水試験用100ml容ステンレス管に入れ、上部から蒸留水40mlをゆっくり注水した。注水後0.5時間後の試料重を測定した。その後、全試料を60℃に設定した通風乾燥機中に入れ、絶乾状態まで乾燥させた後試料重を測定した。各試料の絶乾重量と0.5時間後の試料重から、各試料の保水量を算出し、樹皮粉末の保水性改善の指標とした。結果を図1に示した。
図1から明らかなように、樹皮乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を容積比で1:1で混合した資材は、樹皮乾燥粉末単体の資材と比較し、赤玉土とほぼ同程度の保水性を示し、保水性の改善が認められた。
【0021】
(4)植物発芽試験
各種の樹皮乾燥粉末と葉粉末を容積比で1:1に混合した混合粉末4mlを、赤玉土(小粒)16mlに混合した(赤玉土に対して25容量%の混合粉末)。混合土壌を縦6.5cm×横6.5cm×高さ5.0cmのプラスチック容器内に入れた後、水道水20mlを潅水した。その上に白クローバーの種子10粒を播種し、その上から約1mlの水道水を霧吹きを用いて噴霧した。育成は、25℃±2℃、湿度70%の恒温室内に設置した育苗棚で行い、育苗棚は3,000lux、16時間日長に設定した。また、処理区1については資材を散布せず、対照区とした。播種後14日後の発芽率を図2に示した。
図2から分かるように、樹皮乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を混合した処理区では発芽抑制効果が認められたが、樹皮乾燥粉末のみの処理区やヒノキ科以外の葉粉末を使用した処理区では発芽抑制効果が認められなかった。
【0022】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したとおり、本発明によれば、樹皮乾燥粉末にヒノキ科の葉粉末を混合することにより、樹皮を土壌改良材として利用する場合に問題であった撥水性、保水性および高C/N比を改善でき、且つ天然材料の性質を残したまま雑草抑制効果を付与することができ、破棄物であった樹皮を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、樹皮乾燥粉末にヒノキ科葉の粉末を混合することにより、樹皮乾燥粉末に保水性を付与することができることを示したグラフである。
【図2】図2は、樹皮乾燥粉末にヒノキ科葉の粉末を混合することにより、樹皮乾燥粉末に植物発芽抑制効果を付与できることを示したグラフである。
Claims (4)
- 樹皮の乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を混合してなる土壌改良材。
- 樹皮の乾燥粉およびヒノキ科葉の粉末の粒径がそれぞれ1mm以下である請求項1の土壌改良材。
- 樹皮の乾燥粉末とヒノキ科葉の粉末を容積比で7:3以上混合してなる請求項1または土壌改良材。
- 保水性に乏しい土壌に適用するための請求項1から3のいずれかの土壌改良材。
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