JP2004255912A - 蓄熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱させる。
【解決手段】放熱要求が停止するまで、過冷却材6bに蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、過冷却材6bの温度が過冷却材の融点以下となったときには過冷却材6bの過冷却状態を解除する。これにより、過冷却材6bに蓄えられた顕熱は勿論のこと潜熱も放熱することができるので、過冷却材6bに蓄えられた熱を効率よく放熱することができる。
【選択図】 図6
【解決手段】放熱要求が停止するまで、過冷却材6bに蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、過冷却材6bの温度が過冷却材の融点以下となったときには過冷却材6bの過冷却状態を解除する。これにより、過冷却材6bに蓄えられた顕熱は勿論のこと潜熱も放熱することができるので、過冷却材6bに蓄えられた熱を効率よく放熱することができる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材を用いた蓄熱装置に関するもので、車両用暖房装置に用いて有効である。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの暖機促進又はエンジン始動直後等のエンジン冷却水温度が低いときの暖房能力を向上させるために、従来は、エンジン冷却水経路内に、過冷却特性を持った蓄熱物質を封入した蓄熱装置を配置し、前回エンジン運転時の排熱の一部を蓄熱材に蓄えておき、エンジン始動時に蓄熱材の過冷却状態を必要に応じて解除(発核)させて、発生する潜熱によって冷却水を昇温していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−093660号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、発明者は、特許文献1に記載の発明と同様に、エンジン冷却水経路内に過冷却特性を持った蓄熱物質を封入した蓄熱装置を配置したエンジン冷却水回路を検討したところ、以下のような問題が発生した。
【0005】
すなわち、蓄熱物質である過冷却材は、エンジン運転時に排熱により加熱されて固相から液相となって融解潜熱を蓄えるとともに、液相状態にてさらに加熱されることにより顕熱を蓄え、次回のエンジン始動時に備える。
【0006】
そして、エンジン停止後、過冷却材は雰囲気との温度差に応じて徐々に温度が低下していくが、過冷却材は断熱材に保温されているため、比較的に温度が低下し難い。このため、次回のエンジン始動時に、過冷却材の温度が融点(凝固点)より高い場合がある。
【0007】
一方、過冷却材に蓄えられた熱のうち融解潜熱は、融点(凝固点)以下まで相変化せずに温度が低下した過冷却材に機械的な衝撃を与える等してその過冷却状態を解除することにより放出されるが、過冷却材の温度が融点(凝固点)より高い場合に過冷却状態を解除させる過冷却解除手段を作動させても無駄であるので、通常、過冷却解除手段を作動させる前に、過冷却材が過冷却状態にあるか否か、つまり過冷却材の温度が融点より低いか否かを判定し、過冷却材の温度が融点より低い場合に限り、過冷却解除手段を作動させて過冷却材に蓄えられた融解潜熱を放出させている。
【0008】
しかし、この蓄熱装置では、放熱要求があった時、つまりエンジン始動時のみ、過冷却材の温度が融点より低いか否かを判定しているので、前述のごとく、エンジン始動時に過冷却材の温度が融点より高い場合には、過冷却解除手段が作動せず、過冷却材に蓄えられた熱のうち顕熱のみが放熱され、過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱することができない。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、第1には、従来と異なる新規な蓄熱装置を提供し、第2には、過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材を断熱的に収納した蓄熱器(6a)と、過冷却材の過冷却状態を解除する過冷却解除手段(6c)と備え、過冷却材に蓄熱された熱を放熱させる放熱要求を受けたときには、放熱要求が停止するまで、過冷却材に蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、過冷却材の温度が過冷却材の融点以下のときには、過冷却解除手段(6c)を作動させることを特徴とする。
【0011】
これにより、過冷却材に蓄えられた顕熱は勿論のこと潜熱も放熱することができ得るので、過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、過冷却材に蓄熱された熱を放熱させる放熱要求を受けた時から過冷却材の温度を計測し始めることを特徴とする。
【0013】
これにより、放熱要求の有無に係わらず過冷却材の温度を測定する場合に比べて制御処理負荷を低減できる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)から放熱された熱を用いて室内に吹き出す空気を加熱する即効暖房モードを有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載の発明では、エンジン冷却水を熱源として室内に吹き出すヒータ(5)と、請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)とを備え、蓄熱装置(6)にて加熱されたエンジン冷却水をヒータ(5)を供給する即効暖房モードを有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)から放熱された熱を用いて、ATF、CVTF、PSF及びギヤオイルのうち少なくとも1つを加熱することを特徴とするものである。
【0017】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る蓄熱装置を車両用暖房装置に用いたもので、図1は本実施形態に係る車両用暖房装置の模式図である。
【0019】
エンジン1は走行用の動力を発生させる駆動源をなす熱機関であり、ラジエータ2はエンジン1で発生した廃熱を回収したエンジン冷却水と大気とを熱交換してエンジン冷却水を冷却する放熱器である。
【0020】
サーモスタット3はラジエータ2を流れるエンジン冷却水量を調節する流量を制御することによりエンジン冷却水の温度、つまりエンジン1の温度を調節するバルブである。なお、図1では、バイパス通路3aがエンジン1に内蔵されていないが、実際の車両では、バイパス通路3aはエンジン1に内蔵されており、ウォータポンプ4及びサーモスタット3はエンジン1に組み付けられている。
【0021】
ヒータ5はエンジン冷却水を熱源として室内に吹き出す空気を加熱するもので、蓄熱装置6はエンジン冷却水回路のうちエンジン1の冷却水流入側に設置されて、エンジン冷却水から吸熱した熱を蓄えるとともに、その蓄えた熱を必要に応じてエンジン冷却水に向けて放熱するものである。
【0022】
次に、蓄熱装置6について、図2、3に基づいて述べる。
【0023】
蓄熱装置6は、潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材6bを断熱的に収納した蓄熱器6a、過冷却材6bに電圧を印加することにより過冷却材6bの過冷却状態を解除する過冷却解除手段をなす電極6c、及び過冷却材6bの温度を測ることにより過冷却材6bの状態、つまり過冷却状態にあるか否かを検出する温度センサ6d等からなるものである。
【0024】
ここで、蓄熱器6aは、図3に示すように、複数本の冷却水通路6e周りに過冷却材6bを充填したキャプセル6f、及びキャプセル6f全体を覆う断熱容器6g等からなるもので、断熱容器6gは真空断熱層又は発泡スチロール等で構成されている。
【0025】
そして、蓄熱装置6内に流入したエンジン冷却水は、図2に示すように、キャプセル6fの略中央部に設けられた冷却水通路6eから紙面上側の空間6hに流れ込み、空間6hから各冷却水通路6eに分配されて各冷却水通路6eにて過冷却材6bと熱交換し、その後、紙面下側の空間6jにて集合した後、蓄熱装置6外に流出する。
【0026】
また、冷却水通路6e内外にフィン6k(図3参照)を設けてエンジン冷却水と過冷却材6bとの熱交換を促進しているとともに、電極6cをキャプセル6fの略中央部に配置して、過冷却状態の解除(発核)がキャプセル6f全体に均等に伝わるようにしている。
【0027】
因みに、本実施形態では、過冷却材6bとして、酢酸ナトリウム3水塩を主成分にしたものが用いられる。そして、この過冷却材6bは、図4に示すように、常温(25℃)において固体であるが、58℃以上に加熱されると、液体となり潜熱を蓄える。このように潜熱を蓄えると、その後、例えば常温まで冷却されても、この過冷却材6bは凝固することなくゲル状のまま、一旦蓄えた潜熱を放出することなく温度が低下するため、常温時においても、潜熱を保持した過冷却状態となる(図5参照)。そして、この過冷却状態にある過冷却材6bに適当な刺激を加えて過冷却状態を解除すると、蓄えていた融解潜熱を凝固熱として放出して凝固する。
【0028】
また、電極6cへの電圧の印加は、電子制御装置7(図1参照)により制御されており、この電子制御装置7は、エンジン1の点火装置や燃料噴射装置等を制御するエンジン制御装置や空調装置(暖房装置)を制御するエアコン制御装置との間で信号の授受を行いながら予め設定されたプログラムに従って電極6cへの電圧の印加を制御する。
【0029】
次に、図6に基づいて電子制御装置7の制御作動を述べる。
【0030】
電子制御装置7は、放熱要求信号、つまりエンジン冷却水温度が低く、エンジン冷却水を蓄熱装置6にて加熱することを要求する信号が、エンジン制御装置又はエアコン制御装置からの放熱要求信号が入力されたときには、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1より低いか否かを判定する(S1〜S3)。
【0031】
そして、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1より低い場合には、電極6cに電圧を印加して過冷却状態を解除してからS1に戻り(S4)、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1以上の場合には、電極6cに電圧を印加することなく、S1に戻る。
【0032】
このため、放熱要求が停止するまで、過冷却材6bに蓄えられた熱がエンジン冷却水に与え続けられるとともに、過冷却材6bの温度が過冷却材の融点以上の場合には、過冷却材6bに顕熱として蓄えられた熱がエンジン冷却水に与え続けられ、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1より低い場合には、過冷却材6bに潜熱として蓄えられた熱がエンジン冷却水に与え続けられる。
【0033】
なお、電極6cに電圧を印加しているときに、エンジン冷却水の温度が上昇して暖機運転が終了する等して放熱要求が停止した場合、又は過冷却材6bが完全に凝固して潜熱の放熱が終了した場合には、電極6cへの電圧印加及び温度センサ6dによる温度測定を停止する。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0035】
本実施形態では、放熱要求が停止するまで、過冷却材6bに蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、過冷却材6bの温度が過冷却材の融点以下となったときには過冷却材6bの過冷却状態を解除するので、過冷却材6bに蓄えられた顕熱は勿論のこと潜熱も放熱することができ、過冷却材6bに蓄えられた熱を効率よく放熱することができる。
【0036】
また、過冷却材6bに蓄えられた熱を効率よく放熱することができるので、暖機運転時間を短縮することができるとともに、蓄熱装置6から放熱された熱を用いて室内に吹き出す空気を加熱する即効暖房モードを実施することができる。
【0037】
また、放熱要求があったときのみ過冷却材6bの温度を測定するので、放熱要求の有無に係わらず過冷却材6bの温度を測定する場合に比べて、電子制御装置7の負荷を低減できる。
【0038】
(第2実施形態)
第1実施形態では、蓄熱装置6がヒータ5の冷却水出口側に設けられていたので、蓄熱装置6から放熱された熱の多くは、エンジン1に吸収されてしまう。そこで、本実施形態では、図7に示すように、蓄熱装置6をヒータ5の冷却水入口側に設けて蓄熱装置6から放熱された熱の多くが暖房に利用されるようにしたものである。
【0039】
(第3実施形態)
第1実施形態(図6参照)では、放熱要求があったときのみ過冷却材6bの温度を測定したが、本実施形態は、図8に示すように、放熱要求の有無に係わらず、過冷却材6bの温度を測定するものである。
【0040】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、処理をループさせて連続的に過冷却材6bの温度を測定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1秒後、5秒後、10秒後といったように時間をおいて電極6cに電圧を印加するか否か、つまり過冷却状態を解除するか否かを判定してもよい。そして、このようにすれば、電子制御装置7の負荷を減らすことができる。
【0041】
また、上述の実施形態では、エンジン冷却水の加熱に本発明に係る蓄熱装置6を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばエンジンオイル、ATF(Automatic Transmission Fluid、自動変速機用オイル)、CVTF(Continuously Variable Transmission Fluid、無段階変速機用オイル)、PSF(Power Steering Fluid、パワーステアリング用オイル)、ギアオイル等の加熱に用いてもよい。
【0042】
また、上述の実施形態では、過冷却材6bの温度のみに基づいて過冷却材6bの状態を検出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のパラメータも考慮して多次元的に過冷却材6bの状態を検出してもよい。
【0043】
また、過冷却材6bは上述の実施形態に示されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用暖房装置の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る蓄熱装置の断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】過冷却材の特性図である。
【図5】過冷却材及び冷却水の温度変化を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る蓄熱装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両用暖房装置の模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る蓄熱装置の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、2…ラジエータ、3…サーモスタット、
4…ポンプ、5…ヒータ、6…蓄熱装置、7…電子制御装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材を用いた蓄熱装置に関するもので、車両用暖房装置に用いて有効である。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの暖機促進又はエンジン始動直後等のエンジン冷却水温度が低いときの暖房能力を向上させるために、従来は、エンジン冷却水経路内に、過冷却特性を持った蓄熱物質を封入した蓄熱装置を配置し、前回エンジン運転時の排熱の一部を蓄熱材に蓄えておき、エンジン始動時に蓄熱材の過冷却状態を必要に応じて解除(発核)させて、発生する潜熱によって冷却水を昇温していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−093660号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、発明者は、特許文献1に記載の発明と同様に、エンジン冷却水経路内に過冷却特性を持った蓄熱物質を封入した蓄熱装置を配置したエンジン冷却水回路を検討したところ、以下のような問題が発生した。
【0005】
すなわち、蓄熱物質である過冷却材は、エンジン運転時に排熱により加熱されて固相から液相となって融解潜熱を蓄えるとともに、液相状態にてさらに加熱されることにより顕熱を蓄え、次回のエンジン始動時に備える。
【0006】
そして、エンジン停止後、過冷却材は雰囲気との温度差に応じて徐々に温度が低下していくが、過冷却材は断熱材に保温されているため、比較的に温度が低下し難い。このため、次回のエンジン始動時に、過冷却材の温度が融点(凝固点)より高い場合がある。
【0007】
一方、過冷却材に蓄えられた熱のうち融解潜熱は、融点(凝固点)以下まで相変化せずに温度が低下した過冷却材に機械的な衝撃を与える等してその過冷却状態を解除することにより放出されるが、過冷却材の温度が融点(凝固点)より高い場合に過冷却状態を解除させる過冷却解除手段を作動させても無駄であるので、通常、過冷却解除手段を作動させる前に、過冷却材が過冷却状態にあるか否か、つまり過冷却材の温度が融点より低いか否かを判定し、過冷却材の温度が融点より低い場合に限り、過冷却解除手段を作動させて過冷却材に蓄えられた融解潜熱を放出させている。
【0008】
しかし、この蓄熱装置では、放熱要求があった時、つまりエンジン始動時のみ、過冷却材の温度が融点より低いか否かを判定しているので、前述のごとく、エンジン始動時に過冷却材の温度が融点より高い場合には、過冷却解除手段が作動せず、過冷却材に蓄えられた熱のうち顕熱のみが放熱され、過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱することができない。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、第1には、従来と異なる新規な蓄熱装置を提供し、第2には、過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材を断熱的に収納した蓄熱器(6a)と、過冷却材の過冷却状態を解除する過冷却解除手段(6c)と備え、過冷却材に蓄熱された熱を放熱させる放熱要求を受けたときには、放熱要求が停止するまで、過冷却材に蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、過冷却材の温度が過冷却材の融点以下のときには、過冷却解除手段(6c)を作動させることを特徴とする。
【0011】
これにより、過冷却材に蓄えられた顕熱は勿論のこと潜熱も放熱することができ得るので、過冷却材に蓄えられた熱を効率よく放熱することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、過冷却材に蓄熱された熱を放熱させる放熱要求を受けた時から過冷却材の温度を計測し始めることを特徴とする。
【0013】
これにより、放熱要求の有無に係わらず過冷却材の温度を測定する場合に比べて制御処理負荷を低減できる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)から放熱された熱を用いて室内に吹き出す空気を加熱する即効暖房モードを有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載の発明では、エンジン冷却水を熱源として室内に吹き出すヒータ(5)と、請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)とを備え、蓄熱装置(6)にて加熱されたエンジン冷却水をヒータ(5)を供給する即効暖房モードを有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)から放熱された熱を用いて、ATF、CVTF、PSF及びギヤオイルのうち少なくとも1つを加熱することを特徴とするものである。
【0017】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る蓄熱装置を車両用暖房装置に用いたもので、図1は本実施形態に係る車両用暖房装置の模式図である。
【0019】
エンジン1は走行用の動力を発生させる駆動源をなす熱機関であり、ラジエータ2はエンジン1で発生した廃熱を回収したエンジン冷却水と大気とを熱交換してエンジン冷却水を冷却する放熱器である。
【0020】
サーモスタット3はラジエータ2を流れるエンジン冷却水量を調節する流量を制御することによりエンジン冷却水の温度、つまりエンジン1の温度を調節するバルブである。なお、図1では、バイパス通路3aがエンジン1に内蔵されていないが、実際の車両では、バイパス通路3aはエンジン1に内蔵されており、ウォータポンプ4及びサーモスタット3はエンジン1に組み付けられている。
【0021】
ヒータ5はエンジン冷却水を熱源として室内に吹き出す空気を加熱するもので、蓄熱装置6はエンジン冷却水回路のうちエンジン1の冷却水流入側に設置されて、エンジン冷却水から吸熱した熱を蓄えるとともに、その蓄えた熱を必要に応じてエンジン冷却水に向けて放熱するものである。
【0022】
次に、蓄熱装置6について、図2、3に基づいて述べる。
【0023】
蓄熱装置6は、潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材6bを断熱的に収納した蓄熱器6a、過冷却材6bに電圧を印加することにより過冷却材6bの過冷却状態を解除する過冷却解除手段をなす電極6c、及び過冷却材6bの温度を測ることにより過冷却材6bの状態、つまり過冷却状態にあるか否かを検出する温度センサ6d等からなるものである。
【0024】
ここで、蓄熱器6aは、図3に示すように、複数本の冷却水通路6e周りに過冷却材6bを充填したキャプセル6f、及びキャプセル6f全体を覆う断熱容器6g等からなるもので、断熱容器6gは真空断熱層又は発泡スチロール等で構成されている。
【0025】
そして、蓄熱装置6内に流入したエンジン冷却水は、図2に示すように、キャプセル6fの略中央部に設けられた冷却水通路6eから紙面上側の空間6hに流れ込み、空間6hから各冷却水通路6eに分配されて各冷却水通路6eにて過冷却材6bと熱交換し、その後、紙面下側の空間6jにて集合した後、蓄熱装置6外に流出する。
【0026】
また、冷却水通路6e内外にフィン6k(図3参照)を設けてエンジン冷却水と過冷却材6bとの熱交換を促進しているとともに、電極6cをキャプセル6fの略中央部に配置して、過冷却状態の解除(発核)がキャプセル6f全体に均等に伝わるようにしている。
【0027】
因みに、本実施形態では、過冷却材6bとして、酢酸ナトリウム3水塩を主成分にしたものが用いられる。そして、この過冷却材6bは、図4に示すように、常温(25℃)において固体であるが、58℃以上に加熱されると、液体となり潜熱を蓄える。このように潜熱を蓄えると、その後、例えば常温まで冷却されても、この過冷却材6bは凝固することなくゲル状のまま、一旦蓄えた潜熱を放出することなく温度が低下するため、常温時においても、潜熱を保持した過冷却状態となる(図5参照)。そして、この過冷却状態にある過冷却材6bに適当な刺激を加えて過冷却状態を解除すると、蓄えていた融解潜熱を凝固熱として放出して凝固する。
【0028】
また、電極6cへの電圧の印加は、電子制御装置7(図1参照)により制御されており、この電子制御装置7は、エンジン1の点火装置や燃料噴射装置等を制御するエンジン制御装置や空調装置(暖房装置)を制御するエアコン制御装置との間で信号の授受を行いながら予め設定されたプログラムに従って電極6cへの電圧の印加を制御する。
【0029】
次に、図6に基づいて電子制御装置7の制御作動を述べる。
【0030】
電子制御装置7は、放熱要求信号、つまりエンジン冷却水温度が低く、エンジン冷却水を蓄熱装置6にて加熱することを要求する信号が、エンジン制御装置又はエアコン制御装置からの放熱要求信号が入力されたときには、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1より低いか否かを判定する(S1〜S3)。
【0031】
そして、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1より低い場合には、電極6cに電圧を印加して過冷却状態を解除してからS1に戻り(S4)、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1以上の場合には、電極6cに電圧を印加することなく、S1に戻る。
【0032】
このため、放熱要求が停止するまで、過冷却材6bに蓄えられた熱がエンジン冷却水に与え続けられるとともに、過冷却材6bの温度が過冷却材の融点以上の場合には、過冷却材6bに顕熱として蓄えられた熱がエンジン冷却水に与え続けられ、温度センサ6dの検出温度が過冷却材6bの融点Tm1より低い場合には、過冷却材6bに潜熱として蓄えられた熱がエンジン冷却水に与え続けられる。
【0033】
なお、電極6cに電圧を印加しているときに、エンジン冷却水の温度が上昇して暖機運転が終了する等して放熱要求が停止した場合、又は過冷却材6bが完全に凝固して潜熱の放熱が終了した場合には、電極6cへの電圧印加及び温度センサ6dによる温度測定を停止する。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0035】
本実施形態では、放熱要求が停止するまで、過冷却材6bに蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、過冷却材6bの温度が過冷却材の融点以下となったときには過冷却材6bの過冷却状態を解除するので、過冷却材6bに蓄えられた顕熱は勿論のこと潜熱も放熱することができ、過冷却材6bに蓄えられた熱を効率よく放熱することができる。
【0036】
また、過冷却材6bに蓄えられた熱を効率よく放熱することができるので、暖機運転時間を短縮することができるとともに、蓄熱装置6から放熱された熱を用いて室内に吹き出す空気を加熱する即効暖房モードを実施することができる。
【0037】
また、放熱要求があったときのみ過冷却材6bの温度を測定するので、放熱要求の有無に係わらず過冷却材6bの温度を測定する場合に比べて、電子制御装置7の負荷を低減できる。
【0038】
(第2実施形態)
第1実施形態では、蓄熱装置6がヒータ5の冷却水出口側に設けられていたので、蓄熱装置6から放熱された熱の多くは、エンジン1に吸収されてしまう。そこで、本実施形態では、図7に示すように、蓄熱装置6をヒータ5の冷却水入口側に設けて蓄熱装置6から放熱された熱の多くが暖房に利用されるようにしたものである。
【0039】
(第3実施形態)
第1実施形態(図6参照)では、放熱要求があったときのみ過冷却材6bの温度を測定したが、本実施形態は、図8に示すように、放熱要求の有無に係わらず、過冷却材6bの温度を測定するものである。
【0040】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、処理をループさせて連続的に過冷却材6bの温度を測定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1秒後、5秒後、10秒後といったように時間をおいて電極6cに電圧を印加するか否か、つまり過冷却状態を解除するか否かを判定してもよい。そして、このようにすれば、電子制御装置7の負荷を減らすことができる。
【0041】
また、上述の実施形態では、エンジン冷却水の加熱に本発明に係る蓄熱装置6を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばエンジンオイル、ATF(Automatic Transmission Fluid、自動変速機用オイル)、CVTF(Continuously Variable Transmission Fluid、無段階変速機用オイル)、PSF(Power Steering Fluid、パワーステアリング用オイル)、ギアオイル等の加熱に用いてもよい。
【0042】
また、上述の実施形態では、過冷却材6bの温度のみに基づいて過冷却材6bの状態を検出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のパラメータも考慮して多次元的に過冷却材6bの状態を検出してもよい。
【0043】
また、過冷却材6bは上述の実施形態に示されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用暖房装置の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る蓄熱装置の断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】過冷却材の特性図である。
【図5】過冷却材及び冷却水の温度変化を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る蓄熱装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両用暖房装置の模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る蓄熱装置の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、2…ラジエータ、3…サーモスタット、
4…ポンプ、5…ヒータ、6…蓄熱装置、7…電子制御装置。
Claims (5)
- 潜熱を蓄えたまま相変化せずに過冷却状態となる過冷却材を断熱的に収納した蓄熱器(6a)と、
前記過冷却材の過冷却状態を解除する過冷却解除手段(6c)と備え、
前記過冷却材に蓄熱された熱を放熱させる放熱要求を受けたときには、前記放熱要求が停止するまで、前記過冷却材に蓄えられた熱を放熱させ得る状態とするとともに、前記過冷却材の温度が過冷却材の融点以下のときには、前記過冷却解除手段(6c)を作動させることを特徴とする蓄熱装置。 - 前記過冷却材に蓄熱された熱を放熱させる放熱要求を受けた時から前記過冷却材の温度を計測し始めることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
- 請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)から放熱された熱を用いて室内に吹き出す空気を加熱する即効暖房モードを有することを特徴とする車両用暖房装置。
- エンジン冷却水を熱源として室内に吹き出すヒータ(5)と、
請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)とを備え、
前記ヒータ(5)に供給されるエンジン冷却水を前記蓄熱装置(6)にて加熱する即効暖房モードを有することを特徴とする車両用暖房装置。 - 請求項1又は2に記載の蓄熱装置(6)から放熱された熱を用いて、ATF、CVTF、PSF及びギヤオイルのうち少なくとも1つを加熱することを特徴とする車両。
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JP2003045980A JP2004255912A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 蓄熱装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009103340A (ja) * | 2007-10-22 | 2009-05-14 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | 蓄熱装置及びその熱管理方法 |
JP2014178082A (ja) * | 2013-03-15 | 2014-09-25 | Toshiba Corp | 冷却装置及び冷却方法 |
CN114571949A (zh) * | 2022-01-25 | 2022-06-03 | 江苏开沃汽车有限公司 | 一种混合动力汽车带乘员舱加热串联控制的热管理系统 |
-
2003
- 2003-02-24 JP JP2003045980A patent/JP2004255912A/ja active Pending
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